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元スレ京太郎「夢の彼方」
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京太郎「…」スタスタ ストッ
京太郎「ふー…結構重かったな、コレ」
そういう少年の顔は満足気のようでもあり、得意げでもある。
優希「えー?京太郎ならこのくらいは余裕だろー?」
京太郎「いやいや、流石に山の上まで望遠鏡を持ってくのはキツかった」
京太郎が持ってきたものはおよそ8kgほど。天体望遠鏡の中では、重い方の部類だ。
優希「そっかー。そりゃご苦労さん、だじぇ」
優希は軽く彼を労うが、そもそもこうなったのは彼女の思い付きだ。
6月24日。
この日はUFO記念日、あるいは空飛ぶ円盤記念日と呼ばれている。
それを和に聞いた優希は、その辺の小山からでもUFOを捜してみようと考えたのだ。
京太郎はそれにつき合わされたのだ。
はじめは「え、何で俺が?」と言っていた彼だが、何だかんだで彼女に付き合っている訳だ。
付き合いがいいからか、面倒見がいいからか。なんにしても嫌々付いて来てはいない。
京太郎「それにしてもUFOねぇ…俺はどうもピンと来ないわ」
優希「夢のない奴だじょ」
京太郎「そんなんじゃねーよ。いるかどうかも分からんもんに、興味なんか持てやしないだけだ」
優希「…もしUFOから、のどちゃんみたいな可愛い子が出て来たら?」
京太郎「そんときゃお前、精一杯アプローチをかけていくまでよ!」
優希(…出来ないだろうなー)
いかんせん、京太郎はヘタれている。
アプローチをかけてみても、あのへっぴり腰では空振り三振が精々だろうと優希は思う。
実際その通りなのだから。
優希(こんな所で二人きりなのに、そのことに触れもしないとは気が利かない奴)
多少なりとも、優希は京太郎を異性として意識している。
そういう仲かどうかはさておき、自分だけが意識するのは何となくバカらしいとも思っている。
優希(女として意識されないのって、やっぱり嫌だじぇ)
優希(のどちゃんと一緒にいると、色々大きさに差を感じるから尚更…張り合っても仕方ないんだけどな)
中学当時、優希は和との差をここまで意識してはいなかった。
気にはしていたし、憧れもしていたが、それでも対抗意識を持つまでには至らなかった。
優希「欲しいなあ、成長期」
京太郎「ならさ、星にでも願ってみるか?」
優希「…それもいいかもしれないじょ」
優希「…」
優希「…でっかいオッパイがほしいじょー!」ホシイジョー ホシイジョ-...
何となく鬱屈した気持ちでいるのが嫌になって、優希は叫ぶ。
ウジウジなんてしてられるか。
得意の麻雀でも、決して思うようにはいかなかったけど、負けるもんか。そんな気持ちで。
優希「…ふう」
京太郎「ふう、じゃねーよ。こんな夜中に叫んだら迷惑だろうが…」
優希「ははは、すまんすまん!」
京太郎「まったく…でもさ、そっちの方がお前らしいと思うよ。タコス娘」
優希「うむ!」
とりあえず、今はこれでいい。そう思って、優希は空を仰ぎ見る。
優希「…」
京太郎「…」
優希「…」ソワソワ
京太郎「…」
優希「…なあ、京太郎」
京太郎「…ん?」
優希「…今日の夜空は、結構綺麗だじぇ」
京太郎「そうだなー。お目当てのUFOは見えねぇけど…」
優希「…」
京太郎「…」
京太郎「…なあ優希」
優希「まだ帰らないじょ!」
京太郎「えぇぇぇ…俺さ、正直もう眠いんだけど」
優希「…悪いけど、も少し我慢しろ!」
京太郎「…へいへい」
京太郎「…」
京太郎(…いつだったか、誰かとこんな風にしてたような気がする)
京太郎(あれはいつだったろうか。誰と一緒に、夜空を見上げていただろうか)
京太郎は、それを全く覚えていない。
それはきっと大切なことで、忘れずにいれば良かっただろう。
優希「もし宇宙人に遇ったら、のどちゃんみたいなグラマー体形に…」
京太郎「お前も飽きないなぁ」
もし忘れずにいられたら。
忘れずに済めば、今彼の隣にいたのは…果たして誰だったろうか。
「…」
「…こんな所にいたのか」
「うん!UFOってのが見たくてさー!」
「夜空ならいつも見てるだろうに」
「たとえUFOが見れなくても、曇りでないなら星が見えるしモーマンタイ!」
「そうか。それならいいが、夜更かしだけはするんじゃないぞ」
「夜更かしは美容の大敵だからね。ふふん、それくらいわかってるよー」
「…おやすみ、淡」
「うん。おやすみなさい、お養父さん」
―――大星淡は、両親と血が繋がってはいない。所謂養子だ。
無論それで親子仲が悪くなったりはしていない。淡がそれを知ってからも、関係は良好なままだ。
元の両親は事故で亡くなっている。その父方の弟夫妻が、天涯孤独となった彼女を引き取ったのだ。
淡(…もしテルーに会えてなきゃ、星だけが私の友達だったかもね)
テルーこと宮永照は、麻雀で独りになった淡を…その心ごと拾ってくれた恩人だ。
彼女が居なければ、大星淡は今でも孤独に苛まれていたに違いない。
…だが、
淡(どうしてだろう。私、何か大事なものから遠ざかったような気がする)
淡(…とても、とても大事な誰か。星ではなくて、星じゃない誰かから)
その誰かを思い出せず、淡は少しもどかしい思いをしていた。
亡くなった淡の両親。
二人には養子がいた。込み入った事情から、引き取らざるを得なかった男の子が。
両親はその子を疎みはしなかったし、むしろ淡と同じ位に愛した。
―――淡と男の子は、とても仲のいい姉弟だった。
二人は夜空が大好きだった。
夜空を眺め、その輝きに目を光らせている姿を、両親は愛おしく思っていた。
だが両親は、事故で帰らぬ人となった。
淡は天涯孤独になった。
ならば、養子であった男の子は…淡の弟は、一体どこに消えてしまったのか。
…なお、記録上では失踪宣告を出されている。
京太郎「俺が、養子?」
「そうだ」
京太郎「…じゃあ俺、二人のことをなんて呼べばいいんだ?」
「今までどおりでもいいさ」
「急な話で何だけど、後で知られてもややこしいだけだしね」
京太郎「あのなー…ま、変な勘ぐりとかしなくていいのは確かだよ」
京太郎「俺が二人に育ててもらったのは変わらねーし…とりあえず今はそれでいいよ」
「そうしてくれると助かる」
「元の家族については…そうね、京太郎が聞きたい時に話すわ」
京太郎「じゃあ、今で」
「…いいの?」
京太郎「変にもったいぶられても、それはそれでなんかなーって思うし」
「…それもそうね」
「まず、前の両親だけど…事故で二人とも亡くなってるわ」
京太郎「…そっか」
「それと京太郎、お前は引き取られる前から養子だった」
京太郎「え?」
「前の両親と言ったのはそういうことだ。お前の元の両親は、お前を手放すことにしたんだよ」
京太郎「…なんでさ」
「さあな。詳しい事情は分からんが、どうにもきな臭かったのは確かだ」
「確かなことは、アンタには義理の姉がいて…その子とは別にこちらで引き取られたということよ」
京太郎「へー…俺にねーちゃんっていたんだ」
「確か歳はお前と同じくらいだったはずだ。生きていれば、そのうちどこかで会えるかもな」
京太郎「ふーん。どんな人なんだろ」
「美人なのは確かね。亡くなったご両親は、かなりの美男美女だったし」
京太郎「……」
「…義理だからって、変な気起こそうとするなよ?」
京太郎「しねーって!」
「けど今は、名実共に赤の他人に戻ってるわけだし…それはそれで面白いかもね♪」
京太郎「…それはそれでどうかと」
―――きょー、ちゃん?
京太郎お前、あの大星とどんな関係なんだじょ!?
お、俺が知るかよ!むしろ俺が聞きたいくらいだし…
おかしいな…京ちゃんをそう呼ぶのって、私だけなのに
お、嫉妬か咲ちゃん?無理もねえ、旦那が浮気したかも知れないんだもんなー
さ、咲さん…
ふふ…これはどうにもこうにも、面白くなりそうねっ!
そんなん言うとる場合じゃないじゃろう、部長…
―――――――あなたは、誰と星を見ますか?
star☆gazer
~宇宙(そら)が落ちる夢~
原画:とものり H・Gi-
シナリオ:嶺上に咲く花
OS:XP/vista/7/8日本語版
価格:2.940円
20XX年6月24日 発売予定!
そのうち誰かが京太郎と淡の義理兄妹設定で書いてくれると信じて
では
では
乙
最初のと話が続いているかと思い、いきなり話が変わってびっくりしたけど時系列が違ってたの巻
最初のと話が続いているかと思い、いきなり話が変わってびっくりしたけど時系列が違ってたの巻
■
京太郎「…」
嫁田に愚痴を聞いてもらったが、京太郎は未だ鬱屈としていた。それもそのはず…
京太郎(よく考えたら、今は部活に行きたくても行けないじゃん!)
そういうことである。
過労で倒れたばかりなのに、その一因である部活などさせられないのだ。
京太郎「……」
京太郎(…わーヒマだー。ヒマ過ぎるとかえって落ちつかねーわー)
部員たちの気遣いは、どちらかと言うと無駄になっていた。
どうにもままならない。
京太郎(つってもなー…この前みたいに倒れでもしたら色々マズい)
京太郎(過労で倒れるくらいに扱き使われてる部員がいる。そんな話を広められたら…)
そう、事態は京太郎が思っていたより深刻だったのだ。
どうして彼が倒れてしまったのか、その原因は当然だが追求される。
あの場はハギヨシがどうにか収拾をつけてくれたため、悪いようにはならなかった。
…だからといって安心は出来ない。
もし同じことがもう一度起こってしまえば、事実などお構いなしに醜聞がはびこる可能性は高まるだろうから。
京太郎(雑用したい、って言っても今の皆は聞いてくれないだろうな)
京太郎(時々は面倒臭くも思っていたけど、いざ出来なくなってしまうとそれはそれで)
もっとも当人は、それとはまた別の問題に直面していたのだが。
■
「ん、君は…まだ校内に残っていたのか」
京太郎「あ、内木副会長」
一太「会長からも言われているだろう。休部している人間なら、早く帰った方がいいよ」
京太郎「頭じゃそれが分かっているんですけど…どうも」
一太「…雑用しないと落ち着かないかい?」
京太郎「ええまあ」
一太「その言葉、間違っても会長達の前では口にしちゃいけないよ?」
一太「みんな君がワーカーホリックになってないかって、気が気でないらしいからね」
京太郎「ま、マジっすか…」
一太「今のは聞かなかったことにしておく。だからさ、今日の所は聞き分けてくれないかな」
京太郎「はい、ありがとうございます。ところで…」
一太「何かな?」
京太郎「ひょっとして副会長、部長に言われてわざわざ俺を捜しに来たんですか?」
一太「さて、どうだろうな。でもまあ気にしなくたっていいさ」
一太「別に僕は嫌がっちゃいないし、気にかけてもらって嬉しいくらいに思っていればいいんだ」
一太「それじゃあね。身体には気をつけるんだよ」
副会長はそれだけ言って去っていった。
京太郎「……」
気にかけてもらって嬉しいと、そう思っていればいい。
その言葉で京太郎はいくらか気が楽になった。
このところ部活の中で、彼が孤独感を感じる時間は次第に増えていた。
自分は仲間外れなのだと思ってしまうのが嫌で、必要以上に張り切りすぎてしまうくらいには。
…雑用による過労は事実だが、それは京太郎自身の力みすぎにも原因はあったのである。
京太郎(柄にもなく、真面目ちゃんになり過ぎてたのかな)
時たま物事を重く考える癖はあるが、京太郎は元々軽いノリの男だ。
麻雀部だって深い考えがあって入った訳ではない。楽しそうだからやってみようと思っただけだ。
京太郎(みんなは全国に行って、すげー活躍して…けど、俺は俺でしかないよな)
京太郎(どっかで始めて数ヶ月の子が、麻雀の大会でチャンピオンになったなんて話もあるけど)
京太郎(…ちょっとずつでもいい。俺は俺で前に進んでいこう)
ほんの少し、けれど確実な一歩。
置いて行かれた事実は変わらないだろうが、京太郎は仲間の後を追いかけていこうとする―――。
前スレ>>954の続き(?)
京太郎「部長…いつまでも自炊出来ないのってどう思いますか?」
久「何よ急に」
京太郎「余計なお世話でしょうけど、作れるようになった方がいいっすよ」
京太郎「外食頼りになっちゃうとついつい食が偏っちゃいますし…」
久「須賀君…それって多分、少し前までのあなたでしょ」
京太郎「…そうとも言います」
久「外食を抑えちゃったら、レディースランチのあんなメニューもこんなメニューも…」
京太郎「あ、それならご心配なく。ある程度は作れますから」
久「…え?」
京太郎「そういや部長は知らなかったんでしたっけ。ああ、あれは部長が引退した後からだったからな…」
京太郎「実は俺達、月に一度はハギヨシさんから料理の手ほどきを受けているんです」
久「え、なにそれ…なにそれ」
京太郎「最初は俺一人のはずだったんですけど、なんやかんやで全員参加になっちゃいました」
京太郎「けどそれはそれでよかったですね。みんなの料理を食べ比べたりなんかしましたし」
久「…へえ」
京太郎「…こんなタイミングで言うのもアレですけど、よければ今度部長も一緒に」
久「今度っていつ?」
京太郎「えっと…大体は毎月の末頃に」
久「いや、今でしょ」
京太郎「へっ?」
久「言葉が足りなかったわね。残念だけど、私に料理をする気は無いわ!」エヘンプイ
京太郎「いや、あの…そんなのをどや顔で言われても…」
久「だけど食べ比べなら出来るわ。上手いか不味いか、ただそれだけなんだからね」
京太郎「…部長、まさかアンタ」
久「丁度ここにおあつらえなものが沢山あるじゃない。私達が貰った、大事な大事なプレゼントがね」
京太郎「えぇー……」
久「と・に・か・く、よ。チョコの食べ比べ…いってみましょうか!」
久「…」パクパク
京太郎「…」ムシャムシャ
久「…どう?」
京太郎「どうって言われても…その、普通のチョコとしか」
久「そうじゃなくて!どう美味しいか、あるいは不味いか評価しなさい!」
京太郎「いや…凝り性の人でもなければ、市販のチョコを溶かしたりして作るものですし」
久「そうなのよねぇ…」
京太郎「それより部長、さっきから俺ら全部のプレゼントを半分こにして食べてますよね?」
久「そうね」
京太郎「これってどうなんでしょう?」
久「捨てたりせず、そのまま美味しく食べれるんだしいいんじゃないかしら」
京太郎「…それもそうですね」
京太郎「味はさておき、思ってたよりも結構バリエーションが多かったですね」
久「あれには驚いたわ。どうしてああなったのかしら?」
京太郎「ふーむ…ああ、これはネットにレシピが多く公開されてるからか」
久「レシピ?」
京太郎「チョコの販売各社がチョコの正しい溶かし方から、その後の調理についてまで書いてますね」
京太郎「へぇ…さっきのカップケーキはこうやってつくるのか。勉強になるなー」
久「…」
京太郎「これとかなら俺にも作れそうだな…あれ、部長どうかしました?」
久「いやその…面白そうにスマホを眺めていたものだから」
京太郎「…」
京太郎「部長…よかったら俺と一緒に作ってみたりします?よかったらですけど」
久「…うーん」
京太郎「食べるのもいいですけど、自分で美味いものを作れたらそりゃもう最高ですし!」
久「そうねえ…はあ、どうしようかしら……」
■
京太郎(にしても部長が料理かー)
京太郎(前出されたのは食べ物じゃなくて食品サンプルだったんだが)
京太郎(アレって一体どこから調達したんだ…見た目じゃ全然判別できなかったし)
京太郎(…謎だ)
京太郎(部長の人間関係ってホント謎が多い。カツ丼、じゃなくて藤田プロとも知り合いだし)
京太郎(聞けば結構前から付き合いがあったらしい。きっと早くに目をかけられてたんだろうな)
京太郎(考えてみれば、部長のプライベートなんか知らないことだらけだ…)
京太郎(説教と指図がよく似合うのは知ってるが、それだけ)
京太郎(思いつきとはいえ、ちょっとばかし考えが足りなかったかなー?)
■
そんなこんなで後日。
京太郎「それでは部長、今日はよろしくお願いします」
久「こちらこそ。美味しいのを期待してるわね」
京太郎「いやいやいや、部長も一緒に作るんですよ!?」
久「えー…」
京太郎「えー…じゃありません。誘いに乗ったのそっちでしょうに」
久「乗ったんじゃないわ。乗ってあげたのよ」
京太郎「…傲慢!」
久「野依プロみたいに言うのやめなさい」
久「…部活じゃないのに学校行くのって、なんだか新鮮ね」
京太郎「今日は日曜ですしね」
久「生徒会がワガママ聞いてくれてよかったわ。私的利用で家庭科室を貸し切れるから」
京太郎「権力様様ですよねー。流石に材料とかは自前ですけど」
久「ご苦労様。えっと、代金はどうしようかしら?」
京太郎「うーん…じゃあ半分で」
久「半分でいいの?」
京太郎「出した金が多い少ないとかってなんていうか…その、色々面倒臭いですし」
久「なるほど、それは一理あるかもしれないわ。じゃあ、半分だけ」
京太郎「あざっす」
■
久「で、準備の方はもう出来てるみたいだけど…これは」
京太郎「何かおかしいですか?」
久「おかしいって言うか、種類が少し多すぎるんじゃないかしら…」
京太郎「一品だけじゃないですからね」
久「なるほどねー…って!」
京太郎「難しいもんじゃありませんし、そう焦らなくても」
久「こんなの聞いてないわよ…」
京太郎「言ってませんからね。もし言ったら断られてたでしょうし」
久「…意地の悪い」
京太郎「そりゃお互い様ってもんです」
久「…こうなったら仕方ないわね。須賀君、よろしくお願いね」
京太郎「まかせてください。麻雀以外でしたら何でも!」
久「仮にも麻雀部員でしょうに…」
京太郎「ハギヨシさん直伝の技、とくとごらんあれ!」
久(聞いてないし)
京太郎「…ってのは嘘で、今からは部長に料理してもらいます」
久「!?」
京太郎「もし無理でしたら、俺が全部やってもいいですけどね」
久(むう…馬鹿にしちゃって!)
久「いいわよ。上手くやってあげようじゃない」
■
京太郎「…ではまず、オクラに塩をふって板刷りしていきましょう」
久「板刷り?」
京太郎「素材に塩をふってから、まな板の上でこすりつけるように転がすことですね」
京太郎「最初は指先、塩がなじんできたら手のひらで押し付けるのがベターです」
久「ふむふむ」シャカシャカ
京太郎「用語は覚えておいた方が楽ですね。その辺は麻雀とかでも一緒ですけど」
久「…それでも面倒ねえ」コロコロー
京太郎「そう言いつつも、中々楽しそうにしてますよ?」
久「だんだん綺麗になってきてるのを見ていると、化粧をしているみたいで」
京太郎「素材の色をよくして、表面のでこぼこを均一にならしていくのが板刷りですから…」
京太郎「化粧と言うのは言いえて妙ですね」
京太郎「じゃあ次はパプリカを切っていきましょう。と、その前に」ゴソゴソ
久「一体何を…」
京太郎「あはは…すみません、まな板に滑り止めを使うのを忘れてまして」
久「ああ、まな板がぐらついちゃうから?」
京太郎「そうですね。いっぺんそれで指先を切っちゃいましたし」
久「痛そうな話ね」
京太郎「最初に切ったのは咲ですけど。で、ああはなるまいと思ってたら俺も切っちゃったと」
久「あのねえ…」
京太郎「けどホント怖かったのは確かですよ。もし指をざっくりいってたら、って思うと余計に」
久「あの…須賀君?やる前から怖がらせないでくれるかしら…」
久「…で、包丁はどんな風に握ればいいのかしら」
京太郎「ちょっと貸してください…ほら、こんな感じっすね」
京太郎「親指と人差し指で刃元の中央を握って、他3本で柄を握ります」
久「えっと…こうかしら?」
京太郎「ええ、バッチリです。そのまままな板に対しては平行に立って…」
久「…」
京太郎「で、材料の握り方は指先を立てるようにして…」
■
京太郎「あ、オクラを水洗いするの忘れてた」
久「しっかりしてよ…あ」ポロッ
ファサァァッ
久「あらら…塩の山が出来ちゃったわね」
京太郎「あららじゃなくて、どうすんですかこれ」
久「須賀君が何とかしてよ。先生でしょ」
京太郎「にしても限度がありますよ…」
ジュワー
久「いい匂いねえ」
京太郎「それなりにいい肉ですから、そりゃあね」
久「…」
久「…火加減を強めたらどうなるかしら?」
京太郎「え?」
クイッ ボッ! ジュワァァァッ!
久「おお、焼けてる焼けてる…って熱っ!油が、油がっ!」
京太郎「言わんこっちゃない…」
久「…はー熱かったわー」
京太郎「いや、熱くしたのは部長っすよ」
久「油が多すぎたんじゃないかしら」
京太郎「え、俺のせいですか?」
久「教える側が教わる側に責任を持つのって、当たり前の事だと思うの」
京太郎「腑に落ちない気がするのは気のせいっすかね」
久「気のせいよ。一応だけど、インハイ終わった後には指導したはずだし」
京太郎「それ以上に扱き使われた気もしますが…」
久「嫌なら断ってもよかったのよー?」
京太郎「そう言われりゃそうなんですけど。ほんと、どうしてなんでしょうねえ」
サクサクサクサク....
京太郎「よし出来た。後はこれをレタスに盛り付けて…完成!」
久「おおー」パチパチパチパチ
京太郎「写真のよりもいい彩りに見えるなぁ」
久「真面目にやってきたからよ」
京太郎「別に大きくなったりはしませんけど…それじゃあ早速いただきましょうか」パクッ
久「そうね。お腹がすいて仕方なかったし」パクリ
モグモグ...
京太郎「うむ、美味しい」
久「ちょっと塩辛いけどね」
京太郎「自虐ですか?」
久「そうじゃないけど、もう少し上手くやれたかなって」
京太郎「確かに。もっと美味く出来ただろうとは思いますね…でも」
久「そう思えるのが楽しいことなのよ。何をするにも」
京太郎「ええ…」
久「自分で作るのと、人に作ってもらうのとではやっぱり違う」
久「…いい勉強になったわね」
京太郎「どうやって作ったら美味しいだろう…そう考えられるのがいいんですよ」
久「見ているだけなら、絶対こんな風にはならなかったわね」
京太郎「そうですね。ただ、見ているだけなら」
久「……」
久「ひょっとしてだけど、インターハイのことでも思い出したかしら?」
京太郎「…はい」
京太郎「俺も今じゃ多少は打てるようになりました。毎回ラスを引かなくなる程度には」
京太郎「だからこそ、あの時を思い出すともどかしくなっちゃうんですよね」
久「…もし須賀君が初心者じゃなくて、それこそ、個人で全国を目指せるレベルだったら」
京太郎「ああももどかしくはならなかったでしょう。そうに違いない」
久「その貴方がここに来ていれば、みんなで全国を目指すことだって出来たわね」
京太郎「男女混合ではないですけどね。それでも、健闘を祈りあうくらいは…」
京太郎「そして…一緒に強くなろうとするくらいは、出来たかもしれませんね」
久「…でもね」
久「でもね、そんなに打てるなら…須賀君はここに居なかったかもしれない」
久「かもしれない、なんて考えるのは不毛だわ。それでも貴方は思い出しちゃうんだろうけど」
京太郎「不毛ですよね。ええ、分かってるつもりなんですけど」
京太郎「…でもやっぱり気にはなります。ええ、もうすぐ部長がいなくなっちゃいますから」
久「…」
京太郎「俺に麻雀を、その楽しさを知るきっかけをくれたのはこの麻雀部でした」
京太郎「部長がいなくなったら、それが変わってしまうかもしれないのは…ちょっと怖いかな」
久「…今みたいな居心地ではないでしょう」
京太郎「はい。だから未練がましくなって」
久「でも私は居なくなるし、須賀君だって先輩になっちゃうのよ?」
京太郎「そうなんですよね。俺、麻雀そんなに強くはないのに」
久「強い子ばかりがくるとは限らないし、そもそも新入部員が来るかどうかも分からない」
久「心配するなら、まずは勧誘の仕方でも考えるべきね」
京太郎「…咲の時みたく、半ば無理やりで済めばいいんですが」
久「…まあ、それはそれでアリかもしれないけど」
京太郎「いずれにしろ、俺はどうならなきゃいけないのかなーって思います」
久「そう重く考えないで。せいぜい『どうなりたいか』くらいでいいのよ?」
京太郎「どうなりたい、か」
京太郎「それなら俺は部長みたいに、何だかんだで道を示せる人になりたい」
久「…へえ」
京太郎「あ、でも色々語りだしたくはないかな…」
久「誰が年寄り臭いって?」
京太郎「言ってませんから。ええ、言ってませんから」
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