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    元スレ八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「これで最後、だね」

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    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 : ★★★×5
    タグ : - キモガイル + - タグ荒すなハゲ + - モバマス + - 予備軍って何?予備役なの? + - 俺ガイル + - 気持ち悪い + - 犯罪者予備軍の妄想 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    701 = 1 :



    未央「……ありがとね、プロデューサー」

    八幡「えっ? あ、あぁ……」



    不意に声をかけられるもんだから、思わず変な声を出してしまう。
    俺は何とか取り繕い、言葉を続ける。



    八幡「別に気にすんなよ。こんくらいなら千葉県民として当然のことだ」

    未央「あはは、そっちじゃなくってさ。……まぁ、それもあるんだけど、それとはまた別のこと」

    八幡「別のこと?」



    何だろう。何かお礼を言われるような事をしただろうか。
    この間凛のブロマイドあげたけど……でも代わりに凛の写メ貰ったしなぁ。あれじゃないか。



    未央「忘れてないよね? 宣材写真だよ」

    八幡「宣材写真って……あの、初めて会った時の事か?」

    未央「うんっ。しぶりんとしまむーと……私たちの、初めてのアイドル活動」



    初めてのアイドル活動。

    確かに今にして思えば、あれが俺にとっても最初のプロデュースだった。



    八幡「そういや、お前らが初の臨時プロデュースだったな。つっても写真撮っただけだが」

    702 = 1 :



    思わず、俺も懐かしむように思い出す。

    あれをきっかけに、奉仕部のデレプロ支部として活動するようになったんだよな。
    まぁ最初の臨時プロデュースと言っても、俺は精々見てたくらいだが。

    しかし本田はと言うと、俺の言葉に対し首を振る。



    未央「ううん。確かに写真を撮っただけだったけど……でも、私たちにとっては大切な第一歩だったんだよ」

    八幡「……第一歩、ね」

    未央「うん! しまむーも、同じことを感じてると思う」



    そう言う本田の言葉に、妙に納得してしまう。
    確かに、島村なら同じような事を言いそうだ。



    未央「そりゃプロデューサーにとっては、たくさん臨時プロデュースしてきたアイドルの一人かもしれないけど……私たちにとっては、ただ一人のプロデューサーなんだよ?」



    俺の目を見つめて、そんな事を平然と宣う。



    未央「たぶんこれは、臨時プロデュースしてもらったアイドルみんなが感じてると思う」



    そう言って、本田はまた微笑んだ。



    ……中学の時にこいつに出会わなくて良かったな。
    危なく、勘違いで好きになってしまいそうだ。

    703 = 1 :



    八幡「……その内、お前らにも新しいプロデューサーがつくさ」

    未央「フフフ……実は私たちがそれを断ってるって言ったら……?」

    八幡「えっ」



    ニヤリ、という擬音がこれでもかと思うほど似合う表情。
    いやいや、まさか、ねぇ。



    八幡「……冗談だよな?」

    未央「さて、どうだろうね♪」



    いやそんな可愛く舌出しても騙されんぞ。
    まぁでもさすがに冗談だろ。あいつらがプロデューサー断ってるとか……冗談だよね? ね。

    と、俺が悶々と深みに嵌っていると、本田が思い出したように口にする。



    未央「そうだ、プロデューサーにお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」

    八幡「お願い?」



    お願い。なんだろう、ついこの間もそのワードを聞いた気がする。
    しかし俺が思い出す暇もなく、本田は俺に面と向かって口を開く。

    704 = 1 :




    未央「しぶりんの事、よろしくね」



    そして言われたのは、ある意味では予想通りのものだった。
    まさにデジャヴ。



    八幡「……それ、この間も別の奴に言われたぞ」

    未央「え、ホント? そっかぁ、やっぱり私だけじゃなかったんだね」



    そう言う本田は、納得したように一人でうんうん頷いている。
    いやどういうわけよ。



    未央「なんだろうね。二人を見てると、頑張ってほしいなって思うというか、心配になるっていうか……」

    八幡「オカンかお前は」



    そんな親心みたいな心境で見られてたのか俺たちは。
    なんとも恥ずかしいものである。



    未央「まぁそういうわけで、よろしくお願いね。それと……」



    スッ、と。不意に右手が差し出される。
    それは小さく奇麗な本田の手で、握手を求められているという事に気付くのに、数瞬かかった。

    705 = 1 :



    未央「私たち臨時アイドルの事も、これからもよろしくね♪」

    八幡「…………おう」



    それは、これからも奉仕部として頑張ってくださいという意味でいいのだろうか。
    そう思うと中々に複雑な心境であったが、まぁ、ここは良しとしておこう。

    ただ恥ずかしいものは恥ずかしいので、握手した後はすぐに手を離した。
    やべぇな。手汗とか大丈夫だろうか。


    とりあえず、平静を装って話題を変える。
    幸いにも、到着まで間もなくだ。



    八幡「ほら、そろそろ着くぞ。安倍さんは……なんかブツブツ言ってるから起きてるな。本田、奈緒のこと起こしてやってくれ」

    未央「むむむ……」



    と、ここで何故かしかめっ面の本田。



    未央「プロデューサー、もっかい言ってくれる?」

    八幡「あ? いやだから、奈緒を起こしてくれって…」

    未央「……そうじゃなくて、もっかい呼んでみて」

    八幡「呼んでみろって…………本田?」

    706 = 1 :



    俺が若干困惑気味に呼ぶと、本田はあからさまに肩をすくめながら溜め息を吐く。
    今にもやれやれだぜと言いそうな雰囲気だ。何だオイ。



    未央「そうかぁ……やっぱり私としまむーは、まだその段階まで達してないって事か。道のりは長そうだなぁ……」

    八幡「何の話だ?」



    一人でブツブツ言っている本田に俺が訊くと、一度だけこっちをチラッと見る。
    そしてその後、フッと鼻で笑う。え、何この子。



    未央「あーいいよいいよ~その感じ。正にラノベ主人公って感じ? きゃーモッテモテー☆」ふっふー♪

    八幡「バカにしてんだろオイ」






    その後ヒートアップした会話のうるささで奈緒が起きるのだが、まぁ手間が省けたという事にしておこう。
    スタッフさんには迷惑をかけたので、後で菓子折りでも送っておく。


    けど、今日はやっぱ同行して良かったな。


    こうして臨時プロデュースしたアイドルたちの現状を知れるという意味では、貴重な機会だ。
    もちろん、本人たちの前では口が割けても言わんがな。


    しっかし、本田には困ったもんだ。どっちが鈍感なのやら。



    ………………改めて呼び方変えるの、恥ずかしいだろ。察しろっつーの。





    707 = 1 :

    次回は土曜! 一週間も残す所、土日のみ。

    最近、パーフェクトスターちゃんみおゲットしてはしゃいでしまった。

    710 :

    乙!
    生更新に初めて会ったわ。

    残りの土日分楽しみにしてるよー

    711 :

    乙乙
    次はきのこか姉妹かそれとも蘭子か
    土日も楽しみに待ってます。

    712 :

    順レギュラー→準レギュラー
    安倍さん→安部さん

    じゃなかろか。
    ともかく乙乙

    713 :

    アッキーさんとジョーズ矢口はサブ扱いなのか。

    714 :

    ちゃんみおはナナさんのことウサミンって呼んでなかったか
    まぁ些細なことなんだけど面白いのにはかわりないから応援してるよ

    715 :

    俺ガイル6.5巻のぼーなすとらっくに激寒ダジャレお姉さんネタがあって草生えた

    716 :

    >>715
    あ? 布団ふっ飛ばすぞテメエ

    717 :

    >>715
    まだ聴いてないからネタバレやめてくれ…

    718 :

    またそのくだりやんのかよw
    新刊未読ならスレ覗くのは我慢しよう
    ネタバレ雑談、感想投稿もなるべくそれ専用のスレでやろう

    719 :

    まあここに感想言いに来てどうすんだよって感じはする

    720 :

    そんな深く考えてした発言じゃないだろ
    <細けえことはいいんだよ!

    721 :

    あべななさんじゅうななさい可愛い

    722 :

    今夜更新しますよぉ。

    まぁネタバレに関しては難しい所ですな。
    面白かったとか、こんな感じの話とか、詳しく内容を言わない程度なら大丈夫かと。

    そんで、前回はやけに誤字とか間違いが多かったようで申し訳ない……
    眠いと色んな所で確認怠ったり妥協したりしちゃうので反省。ウサミンごめんなさい。

    723 :

    気にしないで

    そんなことより今年は誕生日どうすんの?
    タイムリープするの?

    724 = 1 :

    >>723

    理想としてはヒッキーか凛ちゃんの誕生日に最終回を迎えたいですな。
    今の所は番外編は特に予定してないよ。

    725 = 723 :

    なるほど期待して待っときます

    726 :

    そろそろ投下するよー

    727 :

    まってた

    728 = 1 :




    ー 土曜 saturday ー









    東京都内にそびえ立つ一つのビル。


    総勢200人以上ものアイドルと社員を抱える、ご存知シンデレラプロダクションだ。

    その姿はコンクリートジャングルの景観の中、周りにとけ込み過ぎる程にとけ込んでいる。
    しかしそれは如何せん地味という意味であり、別に立派だとか、外観が美しいとかいう意味ではない。

    しかも一階は喫茶店。小奇麗で良い店ではあるのだが、それがまた芸能プロダクションらしさを打ち消しているような気もする。
    コーヒーも美味いし、ウェイトレスさんも可愛い。けれど、何だか締まらない。ちなみに可愛いウェイトレスさんはこの間社長にスカウトされてアイドルになりました。もう提携でも結んどけ。


    だがそんな何とも言えないうちの会社も、その地味さから未だファンからあまり場所が特定されていない。
    いや、ホームページとかに普通に住所は載っているんだけどな。ファンが押し掛けてきたりもあんましない。

    たぶん実際にアイドルに会いに来ても「あれ? ここであってる、よな……?」とかってなって、いまいち確信が持てないのかもしれない。やったね。良いカモフラージュになってるね。


    とまぁ、そんなお世辞にも豪華な装いとは言えないシンデレラプロダクション本社だが(別に支店とかは無い)、それでも俺は評価している点はある。

    729 = 1 :



    例えば、冬場はコタツが出る。今はソファーだが、これも中々良い。時系列とかは気にしちゃいけない。
    休憩所は奪い合いになるからな。杏あたりに奪われると5時間は動かない事を覚悟せねばならない。でも俺が座ってると皆座ろうとしなくなるんだよね。不思議ダネ。

    例えば、嫌な上司がいない。というか、俺は一般Pだから直属の上司がそもそもいない。金銭面にがめつい事に目を瞑れば、奇麗な事務員さんはいるよ。
    ちなみによく求人票とかに「アットホームな職場です!」とか書いてあるけど気をつけろよ。あれは嘘だ。


    そして俺が最も評価している点。それは……






    ガコンッ、と。一本の缶が取り出し口に落ちてくる。



    その黄色く細長い。特徴的な缶。
    俺のマイフェイバリットドリンク。



    八幡「やっぱこれだね。MAXコーヒー」



    一口飲み、口の中いっぱいに広がるその甘さ。
    こいつを買える自販機が置いてあるんだから、分かってる会社だぜ。

    心の中でサムズアップをし、社内へと戻るのであった。



    ……外に無ければもっと良いんだがな。

    730 = 1 :



    今日は土曜日。

    一般Pとしてこの会社へやってくる前であれば、今頃は家で休日を満喫していただろう。

    だが、今では立派な社畜。
    当時の俺からすれば、目を疑うような状況だ。
    が、それに慣れてしまったのだからそれが一番恐ろしい。

    階段を上りながらそんな事を考えていたら、心なし足が重くなっていうような気がした。
    やべぇな、俺もう歳じゃね? アンチエイジングしなきゃなんじゃね? 平塚先生なんじゃね? ……いや、俺はまだ大丈夫だな。

    そんな失礼な事を考えて少し楽になり、俺は会社への扉を開く。


    会社の中へと戻ると、そこにはソファーでくつろぐアイドルの姿が。

    一応言っておくが、杏ではない。



    美嘉「おっ、プロデューサーじゃん。お疲れ~★」

    卯月「お疲れ様です、プロデューサーさん♪」



    こちらを見るやヒラヒラと手を振ってくる美嘉に、ペコッと軽く礼をしてくる島村。
    この組み合わせがいるって事は……



    八幡「お疲れさん。お前らはデレラジの収録帰りか?」

    美嘉「うん。今さっき帰ってきた所」

    卯月「今日も楽しかったです」

    731 = 1 :



    満面の笑みの島村。

    その反応を見れば、建前とかではなく本当に楽しかった事が伝わってくる。
    うむ。仕事を楽しめるというのは良い事だ。杏に爪の垢でも煎じて飲ませたれ。



    八幡「…………」



    しかし、あれだな。
    このメンバーだと、ついついアイツがいないかと思っちまうな。

    そんな事はありえないと分かっていつつ、俺はなんとなしに空いたソファーを見てしまう。
    そしてふと、視線を戻した時に美嘉と目が合った。



    美嘉「? 凛ならいないよ?」

    八幡「……いや、知ってるが」



    え、なに。今の視線の動きだけで察したの?



    八幡「そんな事言われんでも、あいつのスケジュールくらい把握してる」

    美嘉「ふーん? まぁ別にいいけどさ。なんか凛いないのかなーって顔してたから」

    八幡「なに言ってんだ。しちぇるわけねーだろ」

    卯月「かみかみですね」



    女の勘って怖い。
    改めてそう思いました。


    ちなみに今頃凛は海の向こうへ行っているだろう。いや、別に世界レベルさんとかじゃなく。

    今回は輝子と一緒に海外ロケ。あの例のキノコ採取番組のゲストとかで、輝子が嬉しそうにしていたのを思い出す。
    それに対し凛の表情は複雑そうだったがな。南無三。

    732 = 1 :



    八幡「そういや凛がいない代わりに代行としてデレラジに一人着くって聞いたが、誰だったんだ?」

    卯月「ちひろさんですよ」

    八幡「…………は?」



    え? 今なんて言った?



    八幡「鬼?」

    美嘉「いやだから、ちひろさん」

    八幡「あ、そうか悪魔か。なに、蘭子の奴ついに召還術でも会得したのか」

    卯月「そろそろ怒られますよ?」



    さすがに呆れた様子の島村。

    いやだって、ねぇ?

    当然アイドルが代わりに出ると思ってたのに、まさかの事務員ちひろさん。
    いや、確かに美人だけどね? 確かにサトリナボイスだけどね?

    さすがにこれは予想外である。



    美嘉「スケジュール的に代わりに出てくれそうなアイドルがいなくってさ。もうこの際アイドルじゃなくてもいいかって話になって」

    卯月「そこで、普段お世話になってるデレプロ関係の人って事で…」

    八幡「ちひろさんが選ばれたわけ、ね」



    まぁ確かにアイドル意外でとなれば無難な選択と言えるな。
    アニメのラジオとかでも原作者や監督が呼ばれる事は多々ある事だ。面白いかどうかは別として。

    733 = 1 :



    八幡「けど、よくちひろさんもOKしたな」



    断言は出来ないが、あの人はあまり目立つのは好きそうにないと思ったんだがな。
    俺の疑問に、美嘉は何とも言えない表情をする。



    美嘉「あー……ちひろさんもね、最初はしぶってたんだけど…………お給料を弾むよって社長に言われたら…」

    卯月「快く引き受けてくれました♪」

    八幡「さすが、さすがだちひろさん……!」



    やっぱブレねぇなあの人は!
    もはやここまでくれば、平塚先生とは別の意味で心配になってくる。誰か早く養ってあげてよぉ!



    美嘉「でも今思えば、プロデューサーでも良かったかもね」

    八幡「は?」



    俺でも良かったって、それはつまりデレラジのゲストって事だよな。



    卯月「あ、それもいいね! どうですか? プロデューサーさんもその内ゲストととして出演するのは」

    八幡「いや、無理だろ。普通に考えて」



    一体何を妙案みたいな感じで言っているんだコイツらは。
    俺が? ラジオのゲスト? どう考えたってあり得ないだろ。



    八幡「十時のプロデューサーとかならともかく、俺みたいな捻くれ卑屈プロデューサーの話聞いたってなんも面白くないだろ」

    美嘉「あ、自覚はちゃんとあるんだ」



    今この子サラッと酷い事言いませんでした?
    いや自分で言った事だから別に良いんだけどさ。

    734 = 1 :



    美嘉「んーでも、プロデューサーの話もそれはそれで面白いと思うけどなぁ」

    卯月「そうですよ。前のライブの時みたいに、凛ちゃんの魅力を沢山話してくれれば!」

    八幡「もうその話はよしてくれ……」



    そういやこいつ総武高校のライブ見に来てたんだったな。
    確かにあれのせいで俺の事を知ってる一部の奴らはいるかもしれんが、それでもほんの一握りだ。需要があるとは思えん。


    八幡「大体、そのせいでリスクを増やす必要もない」

    卯月「リスク?」

    八幡「俺と凛の事だよ」



    決して多くはないだろうが、それでもつまらない因縁をつけてくるファンは少なからずいるだろう。
    つまり、俺と凛の関係を勘繰る奴らだ。



    八幡「アイドルのファンって奴は、少しでも男の陰を見ると疑ってかかるもんなんだよ。俺みたいな若い男が凛のプロデューサーだと広めて、いらん誤解を招くのも面倒だろ」

    美嘉「はーなるほどね。そんなものかぁ」

    八幡「そんなもんなんだよ」



    よくブログやらツイッターで「弟と~」とか言ってるアイドルがいるが、あんなん疑ってくれと言ってるようなもんだ。どんだけアイドルの皆さんは弟と仲良いの? 弟とそんなしょっちゅう遊びに行くの? 絶対嘘だろ。ただしやよいちゃんには当て嵌まらないがな!



    八幡「お前らも気をつけろ。不用意に男の名前とか出すなよ」

    美嘉「心配しなくても、そんな相手いないよ」

    卯月「……」

    735 = 1 :



    しかし俺の忠告に対し、美嘉とは違い島村は俯き無言のままだった。
    え、もしかしてそういう相手いんの?


    と、俺が若干不安になっていると、突如軽快なメロディがその場に流れ出す。
    恐らくはケータイの着信。もちろん俺ではない。



    美嘉「あ、ごめんアタシだ。……って、嘘!? もうそんな時間!?」

    卯月「美嘉ちゃん?」

    美嘉「ゴメン卯月、プロデューサー! アタシ莉嘉の迎え行かなきゃだから、もう行くね!」



    言うや否や、美嘉はカバンを引っ掴むと慌てて事務所を後にした。
    大方、莉嘉からの催促のメールでも来たのだろう。相変わらず仲の良い姉妹である。



    八幡「ったく、あんな変装も碌にしないで帰りやがって。もう少し自分の知名度を自覚しろよな」

    卯月「そ、そうですね。あはは……」



    俺の呟きに対し、島村は言葉を返すもどこかぎこちない。
    ……なんなんだ一体。

    いつもの天真爛漫を絵に描いたような島村を知っている為、今の状態はどうもやり辛い。
    やっぱ、さっきの話が原因か?


    まぁそうだとしても、俺にはどうする事も出来ないし、どうしようとする気もない。
    仮にそんな相手がいた所で、それは島村の問題だ。俺がどうこう言う理由もないしな。

    あくまで俺は、凛のプロデューサーだ。









    ふとーー




    そこで、一瞬だけ頭を過った。


    736 = 1 :




    もしも。



    もしも凛に、そんな相手がいたら?

    いる事を知ってしまったら?



    そんな考えが一瞬だけ思い浮かんで、そして、直ぐに頭から追いやった。

    そんな事を考えた所で、意味は無い。
    例え現実逃避だと言われようと、その時に考えればいい事だ。



    だから。



    だから、一瞬胸の内に宿った黒い感情は、気のせいだ。



    きっとこれも、ただの気の迷いで、無視していい感情だから。






    八幡「お前も気をつけて帰れよ」



    そう一言だけ言い残し、俺は事務スペースへと戻る事にする。
    余計な事に気を割く余裕は無い。さっさと事務処理を終わらせて、今日は帰って寝るとしよう。



    卯月「ーープロデューサーさん」



    だが、そんな俺を島村は呼び止めた。

    737 = 1 :



    振り返り、島村へと視線を向ける。
    その表情は、以前として暗いままだった。



    八幡「どうした?」

    卯月「プロデューサーさんは、さっき自分はラジオには出ない方が良いって言いましたよね」

    八幡「……ああ」

    卯月「私は、そうは思いません」



    そう言った島村の顔は、さっきまでの暗い表情から一転、強い意志を感じさせるものとなる。
    まるで俺の言葉は間違っていると、そんな想いが込められているように見えた。



    卯月「プロデューサーさんは凛ちゃんの事を大事にしてて、いつだって一生懸命にプロデュースしてて、だからきっと、ファンの皆さんも分かってくれるはずです。だって」



    だって、私がそうだからーー

    島村は、そう言った。


    けれどそれは、都合の良い理想だろう。
    エゴと言ってもいい。自分の考えが、全て周りに分かってもらえるなど勘違いもいいところだ。


    彼女は優しい。

    優しいから、それだけに他の者とは違う。


    皆そんな風にはなれないんだ。
    そんな風に優しくなれないから、彼女の優しさは特別で、分かってもらえない。

    そうあれたらいいとは思う。
    けどきっと多くの人は、思うだけなんだ。


    だから俺は、ゆっくりと首を振った。

    738 = 1 :


    八幡「……悪いな。お前がそう言ってくれても、皆そうじゃないんだよ。諦めてくれ」

    卯月「そんな……」



    あからさまに落ち込んだ様子の島村。
    こいつも本田も、どうしてこんなに気遣ってくれんのかね。



    八幡「……けどまぁ、その言葉はありがたく受け取っとくよ」



    らしくもなく、フォローを入れてしまう。
    そんな顔をずっとされてたんじゃ、こっちの気が滅入っちまうからな。

    それで幾分かは立ち直ったのか、島村はコクンと頷いた。

    未だ納得はしていない様子だったが、それでも折り合いはつけられたようだ。
    やがて島村を顔を上げ、口を開いた。



    卯月「じゃあ、これだけは言わせてください」



    ここに来て、一体何を言うというのか。
    俺は少々身構えつつ、島村に聞き返す。



    八幡「なんだ?」

    卯月「あの時は、ありがとうございました」

    739 = 1 :



    そう言って、島村は頭を下げた。
    いきなりの行動だったので、俺は思わずぎょっとする。


    あ、あの時? あの時ってーと、やっぱ初めて臨時プロデュースした時の事か?
    昨日の本田との会話を思い出し、その件だろうと見切りをつける。

    だが、実際はそうではなかった。



    八幡「あ、あぁ。宣材写真の時の事か? 別に礼を言われるような事は…」

    卯月「それもありますけど……私が言ってるのは、個性の話の時のことです」



    そう言って、島村は微笑んだ。

    個性の話……?
    そう言えば、なんかそんな話をした時もあったような……

    俺が頭を捻っていると、島村は胸に手を当て、目を閉じ、思い出すように呟いた。



    卯月「『お前が普段通りに振る舞って、普段通りに笑っていれば、それはもうお前の個性で、魅力なんだよ』……って、プロデューサーさん言ってくれましたよね」

    八幡「……俺、そんなこっぱずかしい事言ったのか?」

    卯月「はい♪」



    嫌になるくらいの笑顔だった。



    八幡「悪い、よく覚えてない……」

    卯月「いいんです。何気ない会話の中だったですし、あの後色々あったみたいですから」

    740 = 1 :



    「でも……」と、島村は続ける。



    卯月「あの時、ああ言ってくれたから私は自信が持てたんです。私は、私のままで良いんだって。私のままで頑張れば、それが魅力になるんだって」

    八幡「……」

    卯月「だから、ありがとうございます」



    そうして、島村はまた笑った。


    その言葉を聞いて、俺は素直に受け取る事が出来なかった。

    正直に言えば、買い被りもいい所だと思う。
    実際俺はよく覚えていないし、その時大した意味も無くそう言ったんだろう。

    けれど、島村はそれでもいいと言うだろう。
    そんな事はどうでもよく、自分が元気付けられたのだと。

    彼女は、そう言ってくれる。


    いつだったか、「自分の言葉に責任を持て」と言われた事がある。
    プロデューサーという仕事は、正にその言葉の通りなのではないだろうか。


    俺の発言が、その言葉が。

    アイドルという他の誰かの糧ともなり、枷ともなる。

    だから、責任を持たなければならない。



    その言葉に。

    741 = 1 :



    八幡「……ラジオは無理だ」

    卯月「え?」

    八幡「ラジオは無理だが…………まぁ、雑誌のインタビューくらいなら、まだいいかもな」



    俺は明後日の方向へ視線を向け、言う。



    八幡「俺なんかがプロデューサーをやってるって、わざわざ伝える必要もないけどよ。それでもまぁ、俺がプロデューサーだって知られて、お前らが恥ずかしくないような奴には、なろうと……思う……なれたらいいなぁ」



    最後の方はちょっと願望になってしまったが、今はこれが精一杯。
    何より、恥ずかし過ぎる。



    八幡「……お前らが胸を張れるようなプロデューサーになるから…………それまで待っといてくれ」



    もう聞こえないんじゃないかというくらいの小声で、なんとかそこまで言葉に出来た。
    なんぞこれ。何の羞恥プレイ? 絶対帰ったら枕に顔埋めて足パタパタコースだよ……


    そして島村はと言えば、最初はぱちぱちと目を瞬かせていたものの、その後すぐに笑顔になり、元気に応えた。






    卯月「ーーはいっ♪」






    ほんと、これだから優しい女の子はダメなんだ。


    柄にもなく頑張ろうとか考えちゃってるのだから、我ながら情けない。


    742 = 1 :



    八幡「じゃ、じゃあ俺はまだ仕事が残ってっから」



    とりあえずこの場に留まるのは限界だったので、俺は逃げるようにそそくさとその場を後にする、
    が、島村はなおも着いてくる。



    卯月「あっ、プロデューサーさん! それともう一つお願いがあって…」

    八幡「どうせ凛のことだろう」

    卯月「え! なんで分かったんですか!?」

    八幡「そのくだりはもう既にさんざんやった」



    というかなんで着いてくるんですかねぇこの子は!


    その後もうっかり島村と呼んでしまったせいで、本田の時みたく名前呼びがどーのという話になってしまった。
    いい加減俺に仕事をさせてくれ。いややりたくはないんですけどね!

    ……でも、淹れてくれたお茶は美味かったな。

    最近、俺の思考回路が単純になってきている気がする。



    全くもって、アイドルというのは面倒くさい。
    誰よりも面倒くさい俺が言うのだから、きっと間違いないんだろう。


    けどそれ以上に、彼女たちは純真で、懸命で、本物だ。


    誰よりも腐った目の俺が言うのだから、きっとそれも、真実なのだろう。


    743 = 1 :




    だから俺は今日も、プロデューサーとして仕事をし、家に帰って休息を取る。

    明日は日曜日。相も変わらず休みは無いが、一週間も明日で終わり。



    明日を乗り切れば、凛とも、また会える。



    会社を出て、階段を降りる。
    自販機の前を通り過ぎようとして、ふと立ち止まる。

    俺は財布から小銭を取り出し、MAXコーヒーを買う。


    一口飲めば、その甘さが、一日の疲れを癒してくれるようだった。



    ……なんだ、やっぱ良い会社じゃねぇか。





    744 = 1 :

    次回、日曜で一週間も終わりです。

    前日にあんだけ番組に出せって言ってたよね? とかは言わない約束。

    745 :

    乙!出せって言ったのはヒッキーの千葉愛が強いだけだから(震え声
    次の次の更新ぐらいにはしぶりん出るのかな?

    もうすぐ1000行きそうだから最後の書込みにする。頑張って完結させてください!

    746 :

    乙乙
    全アイドル中でもしまむらさんの可愛さは常に3位以内には入ってると思うんです。

    747 :

    千葉のためなら(社会的に)[ピーーー]るってことですね、わからないわ

    748 :

    乙!リアルタイムで見たのは初めてだわ
    本当に楽しませてもらってるよ
    次も期待してる

    749 :

    乙 しぶりん成分が足りないって!

    750 :

    乙!次の更新も楽しみに待ってます!


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