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元スレ八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「その3だよ」
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>>754
とりあえずsageようか
とりあえずsageようか
ごめんなさいお待たせしてしまって。いつもながら遅くて申し訳ない。
投下していきます!
投下していきます!
*
奈緒「比企谷。これの次の巻は?」
そう言って眼前へと突き出すは、一冊の漫画本。
早く続きが読みたいとばかりに目を輝かせ、神谷奈緒は見て取れるくらい期待に胸を膨らませ、俺に訊いてきた。
それに対しての俺の台詞は「そこの戸棚の隅」でも「小町に貸してる」でもない。
自分でも分かるくらいの憮然とした表情で、俺はこう言った。
八幡「……お前ら、何しに来たんだ?」
既に察しはついてるやもしれんが、場所は私こと比企谷八幡の自室。
普段は主以外は足を踏み入れる事すら困難なこの場所に、今は他に二人もその侵入を許していた。
……ホント、難攻不落な八幡城はどこへいったのやら。
奈緒「あのなぁ、質問に質問で返すなって荒木先生に教わらなかったのか?」
やれやれと言った風に嘆息する奈緒。
生憎だが、質問されること自体が他の人より多くなかったんでね。質問されたらキョドっちゃうのが俺である。
それに、お前なら爆弾にされる心配はなさそうだし。
加蓮「? 八幡さんって比奈さんとも知り合いなの?」
と、そこで不思議そうに訊いてきたのはテレビの前に座りスーファミをやっている北条加蓮。
比奈さん? 誰だそれは。二人の共通の知り合いってことはアイドル絡みなんだろうが、覚えは無いな。
というか今気付いたが、制服姿の加蓮って今日が初めてだな。やっぱりアn…
奈緒「あー比奈さんじゃなくってだな。歳をとる程に若返る漫画家がいて…」
加蓮「何それ怖い。ってあ! あーやられちゃった。折角ヨーヨーコピー出来たのに」
八幡「いやそんな事はどうでもいいから。それよりも、何でここにいるかをだな…」
奈緒・加蓮「「遊びに来ただけだけど?」」
八幡「……さいですか」
うーむ、なんか最近コイツら遠慮無くなってきてねぇか?
家に押し掛けてくる頻度が最近心無しか多くなってきてる気がすんぞ。
八幡「まさか、その内麻倉家の食卓みたいに増えてったりしないだろうな……」
奈緒「この部屋にあの人数は入らないだろうなー」
加蓮「奈緒、刹那の見斬りやらない?」
ホントに自由な奴らであった。
八幡「……そういや、凛は来てないんだな」
正直、この面子ならアイツがいないのが不自然に感じてしまう。
いや別に来いってんじゃないよ? ただほら、トライアド・プリムスとしてどうなんかなってね?
奈緒「あーなんか、今日は家の手伝いがあんだってさ。比企谷の家行くって言ったら悔しそうにしてたぜ……あっ!?」
加蓮「またつまらぬ物を斬ってしまった……」
奈緒「ちょっ、今のはズリィだろ! もう一回!」
なるほどな。そういやアイツの家は花屋をやってるんだったか。
店番なのか棚出し(花屋がこう言うのかは知らん)なのか知らんが、実家が店を開いてるってのも中々大変そうだ。
つーかアイドル活動がこのまま忙しくなってったら、あまりそんな風に手伝えなくなってくんじゃないか?
いや待てよ。むしろ逆手にとって、花屋の看板娘みたいな感じの路線で、親しみ易いアイドルを目指していくってのも……
加蓮「八幡さーん。聞いてる?」
八幡「え?」
加蓮「一緒にやらない? 別にミニゲームじゃなくてもいいし」
見れば、コントローラーをコチラに差し出している加蓮。
奈緒はと言うと、飽きたのか再び漫画を読み始めている。勝てなかったんだね。
しょうがない、折角だしやってやるとしますかね。
……しかし友達とゲームなんて、よく考えたら初めてじゃないか? 俺。
八幡「……」
加蓮「八幡さん?」
八幡「……言っておくが、銀河に願いをクリアまで終わらせんからな」
加蓮「えっ!?」
妙に上がったテンションを落ち着かせつつ、三人でゲームに興じる。
そんなこんなで、日もとっぷりと暮れた頃。
八幡「やっぱタック一択だな」
奈緒「えーベタ過ぎないか? アタシはプラズマ好きだなー」ガチャガチャ
加蓮「コック可愛いんだけどなぁ。一回しか出来ないってのが…」
交代交代でやってきたが、さすがに疲れてきたな。
つーかこんな時間までアイドルを自宅に連れ込んで良いのだろうか。
……良くない気がしてきた。
八幡「お前ら、そろそろ帰らなくていいのか?」
奈緒「え? 今なn…」
ガッ
奈緒「あ」
八幡「お」
加蓮「……へ?」
さらば、今までの時間。
奈緒「おおおおおぉぉぉぁぁぁあああああ!! やっちまったーーー!!??」
加蓮「き、消えたよ。データが全部……ははっ……」
注意。スーファミはデリケートです。間違っても足で蹴るような事は控えましょう。
奈緒「うぅ……まだ洞窟大作戦までしかクリアしてなかったのに……スマン……」
八幡「まぁ気にすんな。データが消えやすいのもこのゲームの醍醐味だし」
正直ここまで消えやすいゲームも中々無いと思う。
でもそれでも繰り返し遊べちゃうんだから任天堂って偉大だよね(ステマ)。
加蓮「軽くぶつかっただけなのにねー残念……あれ?」ピッ
と、そこで加蓮がテレビ画面をデジタル放送へと戻した所で、おもむろに声を出す。
つられて視線を向けてみれば、画面に映っていたのはとある音楽番組だった。
紹介されているのは、765プロのアイドルたち。
奈緒「おっ、これから歌うみたいだな」
加蓮「うん。どうせだから見ていこっか」
リモコンを置き、画面へと集中する二人。
……やっぱ、駆け出しとは言えアイドルだな。
その目にはただの憧れじゃない、ライバルを見る競争心が見えるように思えた。
八幡「……ふむ」
加蓮「? どうしたの八幡さん。紙とペンなんて出して」
八幡「いや、どうせなら何か得られるもんがないかと思ってよ」
実は最近、アイドル系のアーティストを取り扱っている番組を、出来るだけチェックしている。765プロは特にな。
何の役に立つかは分からないが、何もしないよりはマシだろうという魂胆である。
奈緒「へー、すっかりプロデューサーって感じだな」
八幡「はっ、バカにするなよ? これからは他のアイドル全てが敵ってくらいの覚悟で…」
加蓮「あ、やよいちゃんだ」
八幡「やよいちゃんキタァーーーーーーーーーーーッ!!!!」
奈緒「……」
うぉぉおおおお!! マジか!
くそ、俺としたことが……まさかやよいちゃんの出演番組をチェックし損ねるとは……!
いや待て、まだ歌い出しまで時間はある。とりあえずは録画して……
奈緒「なぁ、やっぱコイツやばいんじゃねえ?」
加蓮「ア、アハハ……」
若干引いた顔で言う奈緒に、引きつった笑みを浮かべる加蓮。
失礼な奴らだ。俺にあるのは父性。娘を見る父親の気持ちなのだ。邪な気持ちなどこれっぽっちも無い! たぶん!
加蓮「しょうがないんじゃない? ほら、やよいちゃんは八幡さんにとっての味方だから」
奈緒「味方?」
八幡「おう。最強の味方だぜ」
そういや加蓮には話してたな。
ホント不思議だよなぁ。あの笑顔を見てると、こっちまで頬が緩んじまう。
幸せを分け与えてくれると言うか、なんと言うか。とにかく、見ているだけで元気になれるのだ。
八幡「やよいちゃんがついててくれれば、何だって頑張れるね」
俺が自信満々にそう言うと、しかし奈緒はどこか不機嫌そうに言う。
奈緒「ふーん……まぁそれは良いんだけどよ」
八幡「けど、なんだよ?」
奈緒「お前は、凛のプロデューサーだろ? あんまそういう事、アイツの前で言ってやんなよな」
うっ……
正直、今の奈緒の指摘は少し効いたな。
確かに担当アイドルがいるのに、他のアイドルに現を抜かすのはあまり良い行為とは言えないだろう。というか最悪と言ってもいい。
ここは素直に反省しておく事にする。
八幡「……確かにな。気をつけとく」
奈緒「ホントだよ。ったく……コッチの気持ちも考えろよな……」ブツブツ
八幡「何がだよ」
奈緒「うるせっ! こういう時は聞こえないフリしとけ難聴系主人公!」
また凄い罵倒を受けてしまった。
しかしその称号は俺には合うまい。アレはモテる事と引き換えに鈍感と難聴になる病気だからな。俺には一生縁が無いだろう。
加蓮「ほらほら、そろそろ曲が始まるよ?」
加蓮に促され、画面へと視線を戻す。
相も変わらず、その子は笑顔を振りまいていた。
思わず、見蕩れてしまうくらいに。
加蓮「……そう言えばさ」
そこで、加蓮が何か思いついたように呟く。
視線は画面へと向いたままだ。
加蓮「凛って、765プロでは誰のファンなんだろうね?」
奈緒「……そういや、聞いた事ないな」
何の気無しに出たその話題は、だがしかし、俺の興味を幾分か引く事になった。
確かに言われてみれば、凛からそのような話題は聞いた事が無い。
それどころか765プロに限らず、特に誰のファンだとか、憧れのアーティストとかも聞いた事が無かった。
歌が好きだと言っていた。
正直担当プロデューサーとしてどうなのかとも思うが、それでも、今まで気にした事も無かった。
それだけに、今頃になって興味が沸く。
渋谷凛にとってのアイドルとは一体、誰なのだろうか。
*
場所はお馴染みシンデレラプロダクション。その会議室。
今日はCDデビューにあたって一番重要となる会議。
すなわち、曲作りについての打ち合わせである。
まぁそうは言っても、基本的にはプロに任せるのがほとんどだ。
さすがにまだ作曲や作詞までは出来ないからな。凛としては、その内は挑戦してみたい気持ちもあるそうだが。
とりあえず現段階として、凛がどのような曲が良いか、どんなジャンルが得意か、そういった簡単な打ち合わせをする事になっている。
その後は向こうの専門の方がやってくれるだろう。後は出来たデモを聴いて、形にしていく。そんな所だ。
そしてもちろん、凛だけではない。
臨時プロデュースの対象である城ヶ崎美嘉もその対象だ。
この二人も大分タイプが違うからな。曲が出来上がるのが楽しみだ。
そして打ち合わせの日の朝。
シンデレラプロダクションの事務スペースにて、俺と凛は順番を待っていた。
ちなみに、美嘉はまだ来ていない。順番最後だからなアイツは。
凛「……今は丁度、楓さんの番だね」
事務所の壁に掛けられた時計を見つつ、そう呟く凛。
少なからず、緊張しているのが見て取れる。
八幡「気になんのか?」
凛「うーん……気にならないって言ったら、嘘になるかな。やっぱり、ライバルだし」
正直にそう言った凛は、少しだけ顔を引き締め、そして直ぐに照れたように笑った。
凛「って言っても、単純にどんな曲を歌うのか興味があるだけなんだけどね。楓さん、歌上手いし」
八幡「へーそうなんだな」
まぁ確かに上手そうではあるな。
正直、あの声じゃ歌云々よりも雪ノ下がチラついて仕方が無いが。
あの二人でデュエットなんてやられたら、エコーがかかっているようにしか聴こえないだろうな。
凛「でも楓さん、担当プロデューサーもいないのに凄いよね」
八幡「そういや、CDデビュー組で担当プロデューサーついてないのは美嘉と楓さんだけだったな」
美嘉は俺が臨時プロデュースする事になったが、楓さんは本当にソロでの活動というわけだ。
さすが、これが大人である(小並感)。
八幡「けど美嘉は読モで人気だったから選ばれたのは分かるが、楓さんは何をして人気に火が着いたんだ?」
確かちひろさんの話では、今回のCDデビューには何らかの功績を修めた者たちが選ばれたとの事だった。
つまり、楓さんも何か有名になるような出来事があったということだろう。
ちひろ「あれ、比企谷くん知らなかったんですか?」
と、そこでどこからかちひろさんがやってくる。手には三人分のコーヒー。恐れ入りますね。
ちひろさんから頂いたコーヒーを、礼を言った後に啜る。……苦ぇ。
ちひろ「『高垣楓の酒場放浪記』。結構有名なんですよ?」
八幡「ぶふっ…!」
思わず軽く吹き出してしまう。
いやいや、なんかそのタイトルどっかで聞いた事あんぞ……
ちひろ「毎回楓さんがフラフラと町の酒場を放浪し、そのお店を紹介していく……まぁタイトル通りのローカル番組ですね。これが放送後中々の人気番組になりまして♪」
まぁ確かにあんな美人が心底嬉しそうにお酒を飲んでりゃ、それだけで眼福もんだわな。
ちょっと見てみたいと思ってしまった自分がいる。
ちひろ「後、みくちゃんは食品会社のCM、美波ちゃんは現役スポーツ学生アイドルとして名を知らしめたって感じですね」
凛「……なんか、皆すごいね」
見れば、凛はどことなく元気が無い。
ちひろさんの話を聞いて、少しばかり自信を無くしてしまったように見えた。
八幡「……アホ」
凛「え?」
俺はカバンから一部の雑誌を取り出し、凛に向かって押し付けてやる。
それは、総武高校でのライブの記事が載ったサンプルの雑誌。
凛「これって……」
八幡「その凄い奴らと肩を並べるくらいの事を、お前はやってんだよ」
ちひろ「私の知る限り、プロデュース大作戦が始まって以来ライブをしたのは、凛ちゃん達が初ですよ♪」
俺とちひろさんを交互に見つめ、手元の雑誌をパラパラと捲る。
行き着いたのは、たった2ページの記事。
けれど、それは俺たちにとっては始まりの2ページだ。
八幡「ライブをやって認められたんだ。他の奴らより、よっぽどアイドルしてるじゃねーの。……俺はそう思うよ」
俺が明後日の方向を見つつそう言うと、凛はコチラを見つめ、やがて微笑んだ。
凛「……うんっ……ありがと」
……ったく世話の焼ける担当アイドルだ。
お前が思ってるより、お前は誰かの為になってるよ。
ちひろ「あ、そろそろ楓さん終わりますね。凛ちゃんに比企谷くん、そろそろ準備を」
凛「あ、はい!」
返事をし、立ち上がる凛。
俺も準備するべく、椅子から腰を上げる。
そこでふと、先日の会話が思い出された。
八幡「なぁ、凛」
凛「ん、なに?」
振り返り、キョトンとして表情でコチラを見る凛。
別に今じゃなくてもいいが、どうせこの後打ち合わせで似たような話をするのだ。ならば、どうせだから先に聞いておこう。
まぁ、ぶっちゃけ俺がちょっと気になっただけなのだが。
八幡「凛はよ」
凛「うん」
八幡「765プロの中では、誰のファンなんだ?」
俺がそう聞くと、凛は最初面食らったような顔をしていたが、その後すぐに笑い出す。
凛「どうしたの? 急に」
八幡「いや、打ち合わせもあるし、聞いといて損は無いだろ。あと、単純な興味だ」
「そっか」と凛は呟き、一瞬考える素振りを見せる。
そしてその後、少しだけ照れくさそうに頬をかくと、凛は言った。
凛「……実は、前々から憧れてる人がいるんだ」
八幡「! そうなのか?」
凛「うん。その人はーーーー」
*
あれから一ヶ月程。
数々のレッスンをこなし、CDデビューの為に出来る事はやってきた。
凛と、そして美嘉。
先日届いたデモテープも、二人には満足のいく曲だったようでなにより。
初のレコーディングには苦戦したようだが、それでも何とか乗り切った。
そして、待望のCD発売まで、あと2週間。
いよいよその日が来る……!
……と、そこでふと最近気付いたのだが。
八幡「……別にもう美嘉の臨時プロデュースする必要無いんじゃね?」
ちひろさんに呼び出された会議室で、俺は思った事を率直に呟いた。
しかしそこで面白くなさそうな声が横から入ってくる。
件の少女、城ヶ崎美嘉である。
美嘉「ふーん? なに、プロデューサーはアタシを臨時プロデュースするのがそんなに嫌なわけ?」
八幡「いや、別にそういうわけではないが……ただ単に俺がつかなくても…」
美嘉「じゃあ良いじゃん★」
いいじゃんで片付けられてしまった。
やはりコイツ、性格的には由比ヶ浜よりも三浦の方が近いだろ……押しが強い。
凛「そう言えば、莉嘉ちゃんは最近どうしてるの?」
美嘉「おかげさまで、元気にアイドル活動やってるよ。そのウチ追い抜かれそうでヒヤヒヤだよ」
そうは言いつつも、美嘉のその顔には笑顔が見て取れる。
どうやら、もうこの姉妹に心配はいらないらしい。
美嘉「ま、姉として簡単には抜かれてやらないけどね★」
凛「……私も、負けないよ」
美嘉「お、いいねーそういうの。ライバル宣言?」
と、今度はこの二人は火花をバチバチし始めた。
いやお二人さん? 競うのは良い事だとは思うけどね。俺を挟んでバチバチすんのやめてもらえる?
ちひろ「お待たせしましたー♪」
そしてナイスタイミングとばかりに入室してくるちひろさん。
その表情は、何故だか満面の笑みだった。
どこか、いっそ不気味さすら感じてしまう。
八幡「ちひろさん、突然呼び出したりしてどうしたんすか」
それもこのメンバー。
恐らくは、CDデビューに関する事だろうか。
しかし、それでは他の3人もいなければおかしいか……
ちひろ「えー実はですね。凛ちゃん、美嘉ちゃん、ひいては比企谷くんに、プチサプライズをプレゼントしたいと思います」
凛「プチ……?」
美嘉「サプライズ……?」
何故だろう。とてつもなく嫌な予感しかしない。
いやいや、あのちひろさんだぞ? 信用しろって。
…………。
信用出来ねーーー!!
ちひろ「今何か失礼な電波を受信しましたが、まぁ置いておきましょう」
そこでちひろさんは持っていたファイルの中から、一枚のプリント用紙を取り出す。
そして、おもむろその紙の両端を掴み、俺たちの眼前へと突きつけた。
ちひろ「なんと! 凛ちゃん達CDデビュー組のテレビ出演が決まりましたッ!! イエーイッ!!!」
凛「……」
美嘉「……」
八幡「……」
…………。
凛・美嘉・八幡「「「うぇぇええええええええええええええええッ!!!??」」」
ちょ、ちょっと待て!
て、テレビ出演、だと……?
八幡「……マジ、ですか?」
ちひろ「マジです! 再来週のCD発売日に合わせての生放送です♪」
八幡「ッ……!」
再来週って……急過ぎんだろオイッ!?
いやいやちょっと待ってくれ。頭を整理させてくれ。
……マジで?
凛「テレビ……出演……」
美嘉「生……放送……」
見ると、二人は俺以上に困惑している。
まぁ当たり前だ。コイツらは出る張本人なわけだし。
八幡「……他の3人には伝えてあるんですか?」
ちひろ「ええ伝えてますよ。1週間前に」
八幡「は?」
1週間前? なんでわざわざ俺らだけ今日に……
八幡「……もしかして」
ちひろ「さっすが♪ 察しが良いですね比企谷くん!」
大正解とばかりに指パッチンしてウィンクしてみせるちひろさん。はは、イラッとしたぞオイ。
凛「どういう事?」
ちひろ「えーとつまりですね。さすがに一度の放送で5人も尺を取るのは厳しいって事です」
八幡「二手に分かれて、2週に分けて放送するって事だろ」
フルで歌わないとは言え、さすがに新人のアイドルに5組も尺を取るのは厳しいからな。
ユニットではなく、それぞれがソロを歌うからこその処置なのだろう。
ちひろ「それで、どうせなら同じプロデューサーの付いている凛ちゃんと美嘉ちゃんが一緒の放送回の方が、何かと都合が良いだろうという事になって、今回お呼びしたんですよ」
美嘉「わざわざ発表を分けた理由は?」
ちひろ「準備期間(心の準備)が一緒の方がフェアでしょう?」
同じ2週間後になるように、先週発表を聞いた楓さん、前川、新田。
そして今日聞いた凛に美嘉。
丁度これでお互いに2週間後の本番になったわけだ。
まったく、無駄に手の込んだ事を……!
ちひろ「ささ、皆ボーッとしてないで行きますよ」
八幡「は?」
手をパンパンと叩き、オカンのように腰に手を当てて促すちひろさん。
八幡「行くってどこに?」
ちひろ「決まってるじゃないですか」
あ。これ聞いちゃダメなやつだった。
ちひろ「スタジオに、挨拶に行くんですよ♪」
*
とある某局スタジオ。
以前挨拶周りの時に来た事はあるが、今回は完全に仕事での挨拶になる。
失礼の無いように気を付けねばと、嫌がおうにも緊張してしまう。
……まぁ最も、もっと緊張している奴らもいるが。
凛「……」カチ
美嘉「……」コチ
なんとか歩けてはいるが、今にも手と足が一緒に出そうな雰囲気である。
こんなんで本番を迎えられるのか、俺まで不安になってきた……
道往くスタッフらしき人たちに挨拶をしながら進み、行き着いたのは一つのスタジオ。
八幡「……っ………ここは」
覚えている。
否、忘れる筈がない。
ここは、かつて俺がやよいちゃんを初めてテレビで見たスタジオ。
ちひろさんに貰った資料を見て、ようやくその事実に気付く。
今までテレビ出演という事実に驚き気付かなかったが、この番組は、あの当時有名になっていなかった765プロを紹介していた、あの番組だった。
八幡「……そっか」
凛も、もうあの番組に出れるまでになったんだな。
なんとなく感慨にふけってしまい、少しだけ、目の前が霞んだ。
凛「プロデューサー……?」
すると、凛が心配そうに覗き込んでくる。
俺は慌てて目元を拭うと、取り繕うように姿勢を正す。
危ない危ない。危うく情けない面を見せる所だった。
八幡「何でもねぇよ。……それより、どうだ?」
凛「うん……凄いね」
大きく周りを見渡す凛。
綺羅びやかな照明に、大きな舞台とセット。
そのステージに、凛は心奪われているようだった。
そしてそれは、美嘉も同じ。
美嘉「……こんな所で、歌わせてもらえるんだ」
その瞳には、さっきまでの緊張も不安も、写ってはいなかった。
美嘉「……凛」
凛「ん……」
美嘉「やるからには、負けないよ」
凛「……もちろん。私も全力で、迎え撃つ」
……女の子ってのは、強ぇもんだな。
さっきまであんなに緊張してたのに、今じゃもうこれだ。
ちひろさんが挨拶に連れて来たのは、コイツらに発破をかける為でもあったんかね。
「おや。君たちがシンデレラプロダクションの子たちかい?」
と、そこで一人の男性が話しかけてくる。
社員証を首から下げているので、この局の関係者だろう。
八幡「あっと、シンデレラプロダクションの比企谷八幡です」
多少気付くのが遅れたが、なんとか名刺を取り出し、交換する。
うわぁ、俺完全にリーマンじゃん……
と、そこはひとまず置いといて。
……なるほど。この人は番組のディレクターか。
ディレクター「君たちは再来週の出演だよね。期待しているから頑張ってね」
凛・美嘉「「よ、よろしくお願いします!」」
とりあえずは挨拶は出来たし、印象としても悪くはなさそうだ。
しかしこれを毎回やるとか、敏腕プロデューサーはすげぇな……
俺なんか緊張して脇汗がナイアガラだよ……
ディレクター「あ、そうそう。そう言えば、一緒に出演する彼女たちも丁度挨拶に来ていたよ」
八幡「? 一緒に出演する……?」
楓さんたちの事か? いやでも、それなら放送を分けるから一緒ってのはおかしい。
そもそも、今頃に挨拶に来る筈がない。先週済ませた筈なんだからな。
……待て、何か、嫌な予感がする。
ディレクター「おや、もしかして聞いていないのかい? キミたちの回は一組枠が少ないから、特別ゲストに出演して貰う事になったんだよ」
特別、ゲスト。
そうだ、引っかかっていたんだ。5組という奇数の組み合わせを、2週に分けて放送する。
なら、どちらかの回は枠が少ないはずなんだ。
そしてそれは、俺たちの回。
ディレクター「あぁ、ほら。彼女たちだよ」
俺の背後を見ながら、そう言うディレクター。
そして、その直後。
「おや? あなたは……」
八幡「…ッ!」
この、声は……!?
「……まさか、この場で再会を果たすとは、夢にも思っていませんでした」
八幡「なん、で……」
貴音「いつかの、優しい嘘吐きさん」
そう言って微笑を浮かべるのは、かつて早過ぎる邂逅を果たした765プロのアイドル。
四条貴音であった。
八幡「まさか、出演する特別ゲストって……」
貴音「ええ。私たち3人の事でございます」
3人……? 3人って事は、他にも……
「うっうー! 失礼しまーす!」
ドクンっ
嫌なくらい、心臓が跳ね上がった。
ゆっくりと、声の方へ視線を向ける。
時間が、やけに遅く感じる。
いや違う。
俺が、見たくないんだ。
何故? あんなに……
あんなに、会いたかったはずなのに。
やよい「こんにちは!高槻やよいです! よろしくお願いしまーす!」
俺にとってのアイドルが、そこにいた。
八幡「なっ……」
嘘だろ、まさか、あの高槻やよいが……
八幡「……っ?」
ふと、違和感を覚え、隣の凛を見る。
すると凛はもっと遠くの、通路の奥を見ていた。
目を見開き、信じられないものを見るように。
「高槻さん、そんなに急がなくても」
その声を聞き、思い出す。
凛『……実は、前々から憧れてる人がいるんだ』
やよい「あ、ごめんなさい! ここに来ると、つい元気になっちゃって!」
「ふふ、機材に足を取られないように気をつけてね」
凛『その人はーーーー』
「えっと、今回もお世話になります」
凛『ーーーー如月、千早さん』
千早「如月千早です。どうか、よろしくお願い致します」
凛『私がアイドルになりたいって思った、きっかけの人なんだーーーー」
凛「…………う、そ……」
まるで、嗚咽を漏らすように呟く凛。
彼女は、ずっと憧れだった。
憧れて、勇気を貰って、元気づけられて。
それでも、目の前にいる彼女達は、今の俺たちにとって。
最強の、敵だった。
今日はここまで!
こんな遅い時間まで読んでくださっていつもありがとうございます…
こんな遅い時間まで読んでくださっていつもありがとうございます…
ちなみに先日アイマスの映画を見てきました。超面白かったです! 隣の県まで行ったかいがあった!
悔やむとすれば、エンドロールイラストのポストカードが欲しかった……凛ちゃん……
悔やむとすれば、エンドロールイラストのポストカードが欲しかった……凛ちゃん……
乙、相変わらず( ・∀・) イイネ!
エンドロールカード、今回敢えて当たりを選ぶなら5種中
しぶりん同梱のかライブステージメインかの2種類ですよね
自分が貰ったのは4枚のだった…なんか損した気分
エンドロールカード、今回敢えて当たりを選ぶなら5種中
しぶりん同梱のかライブステージメインかの2種類ですよね
自分が貰ったのは4枚のだった…なんか損した気分
この世界線は765最強なのか
どうでもいいがよく八幡スーファミなんて持ってたな(世代的な意味で)
親の持ち物かな
どうでもいいがよく八幡スーファミなんて持ってたな(世代的な意味で)
親の持ち物かな
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