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元スレ勇者「パーティ組んで冒険とか今はしないのかあ」
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僧侶「これは……この国の王、つまり魔王と私たちの国の女王の話、なのか?」
戦士「なになに……げっ!」
魔法使い「……」
男「手記みたいだけど、内容は………なんだこれ、魔王とのことについて書かれてるな。書いているのはもしかしてこの国の姫とか……そんなわけないか」
僧侶「いや……これは、そんなことあるかもしれないぞ」
男「おいおい、なに言ってんだよ。姫と魔王の手記って……いや、でも昔の姫様とかって魔王にさらわれる、みたいな話は聞いたことあるな。
でもそれがどうかしたのか、さらわれた姫の日記みたいなもんだろ? なんの問題もないんじゃ……」
僧侶「ただの姫なら問題ないが、この姫は……」
男「この姫は?」
僧侶「かつて私たちの国に最悪の災厄をもたらしたきっかけ、あるいは災厄そのものと言われている女王だ」
今日はここまで
なんかダラダラしていて申し訳ない
あと戦闘シーンとかもわかりづらかったら申し訳ない
なんかダラダラしていて申し訳ない
あと戦闘シーンとかもわかりづらかったら申し訳ない
乙です
戦争シーンでの、地の文での勇者=男、地の文での男=?。が少し分かりにくかったんですが
そのことを除けば戦闘シーンは格好よくて凄かったと思います
戦争シーンでの、地の文での勇者=男、地の文での男=?。が少し分かりにくかったんですが
そのことを除けば戦闘シーンは格好よくて凄かったと思います
面白い作品なだけに、誤字とsaga忘れが気になってしまう...
それ以外は、特に気にする所も無いから頑張って下さい!
それ以外は、特に気にする所も無いから頑張って下さい!
感想ありがとうございます
自分でも驚くほど見返してみると誤字脱字だらけでした
すみません、アドバイスありがとうございます
再開します
自分でも驚くほど見返してみると誤字脱字だらけでした
すみません、アドバイスありがとうございます
再開します
男「災厄をもたらした女王?」
僧侶「そうだ、この女王が提案したあるプログラムが災厄をもたらしたと言われている」
魔法使い「……私も聞いたことがある」
男「いったいどんなことが起きたって言うんだよ、この手記を書いた女王様によって」
僧侶「具体的にこの女王がどんなプログラムを提言したのかなどは、実のところ完全には判明していない
だが、一つ確かなのは魔物の研究に携わり、さらに新しい魔物の開発をしようとしていたらしい」
男「新しい魔物……?」
戦士「当時の資料は、ほとんど一般人が目を通すことはできなくなっている。いわゆる隠蔽ってヤツだね。
女王が提案したプログラムの目的は今なお、判明していないしね。この女王様がいったいなにを考えて、そんなことをしたのかはわからない」
僧侶「魔法教育なんかは女王の政策の一つだが、結局これは魔女狩り事件を生んだだけで……あ、いや、すまない」
魔法使い「べつに、私はきにしていない」
男「姫様と魔王って何気に変わった組み合わせだけど、いったいどんなことしてたんだろうな。なになに……」
…………………………………………………………
魔王に誘拐されてから何日間かの日付が経過した。
だからと言って特別やることがあるわけでない。なにせ私は囚われの姫ということになっているからだ。
魔王は暇なときは私が軟禁されている部屋に来る。しかし、魔王は沈黙が得意じゃないみたい。部屋に静かな沈黙が流れると、
『なにか話せ、気まずいだろうが』
と、なにかと私に話すように催促してくる。しかし、私だって正直なことを言うと話すのは得意じゃない。
そういう時は部屋に置かれたピアノを彼の前で弾いてみた。適当に講師から教わったメロディを奏でるだけなのだけど。
でも魔王は意外と気持ちのいい反応をくれる。もっと聞かせろと。
だから、私は囚われの身のくせにこんな要求をした。
『私のピアノを聞かせてあげるから外の世界を見せてちょうだい。前にも言ったわよね、私は外の世界を知らなきゃいけないって』
『なんだと……この魔王に向かってそんな要求を……』
『あなたのその「この魔王」ってフレーズは私の前では使わなくていいわよ。と言うかそのフレーズなんだか滑稽よ』
そんな風にからかうと彼は言い返してくることもなく、むしろ肩を落とした。意外な反応に私はどうしていいかわからなくなる。
城の中では私と口論する人なんていないし、こんな風に対等に話すことなんてしないから。
『こんなことでしょんぼりしないの!』
せいぜい私が言えるのはこのぐらい。私は馬鹿だった。でもそれ以上に無知だった。
『たしかにあの時はそういう約束はしたが……周りにはなんと言えばいい?』
『あっ……そうね、たしかに。でも、バレなければいいんじゃない?』
『そうか、たしかにな。側近に相談してみるか』
………………
そんなわけで私は魔王に連れられて外の世界を知った。外の世界、とは言っても魔物たちが住む村とかなのだけど。
でも、私自身は誰かに説明できるほど自分の国や街がどうなっているのか知らなかった。
明らかに人の住む環境と魔物の住む環境は違う、それはわかっている。けれど普通の人であればもっとその明確な差異に色々思うところがあるのだろうけど。
私にはそれがよくわからない。そんな自分があまりにもどかしかった。
『魔物の世界はお前のような人間から見てどうなんだ?』
だからそんな質問をする魔王が私に意地悪をしてきたみたいに感じられて、この時の私は少しだけ苛立ちを覚えた。
『よくわからないわ。本当に、なんでかしらね。憧れていた外の世界なのに、なんだか変な気分』
『……自分の国の外の世界を見たことがないから、か』
『そうか、オレも初めて自分の世界を見たときは似たような気分だったかも。もう忘れたけど』
いったいなぜ急に彼がそんなことを言ったのかわからかった。でも少し考えてからわかった。
彼は私が抱いたもやもやとした感情を察してそんなことを言ってくれたのだ。
心の機微。
私はこの歳で初めてそういう本からでは決して学べないものを、魔物であり魔王である彼から教わったのだ。
『オレは馬鹿だからな。いつも周囲に頼ってきた、今だってそうだ。でも馬鹿なりに色々学んだよ。
少なくとも無知であってはならないと思ったしな、魔物たちのてっぺんに立つ以上は』
魔王が自分に言い聞かせるようにそう言った。このとき私は馬鹿と無知がまったくの別物だということを知った。
……………
私はここでの生活で成長しているのだろうか。それははっきりしないけど、色々と変わってきているのは自覚できる。
ある日、魔王の側近がいつものように私の退屈しのぎのための本とニュースペーパーを持ってきてくれた。
ただしニュースペーパーについては時代はまちまちだった。
いつものことで、様々な時代のものを見ることは、今後の私の人生にもなにか役に立つかもしれない。
そう思って私は完全に読むわけではないけど、いつものように目を通していく。
そこである一つの記事が目に付いた。
いつごろの記事だったのかは見ていないけど、そこそこ古いものであることは確かだ。
教会神父が逮捕された事件のようだが、その内容と見出しは実にセンセーショナルだった。
この神父の教会の地下には五体バラバラの人間の死体が冷凍保存されていたらしい。
しかも、人間だけでなく魔物の死体までも。
さらに驚きなのはこの教会はかつての勇者と魔王が争い息絶えた、いわゆる名所らしかった。
しかし、内容は明らかに隠蔽されていた。私は側近の人に頼んで、その神父の資料を集めてもらうことにした。
そうして私が辿り着いた真実は、あまりにも恐ろしいものだった。この神父は勇者と魔王を同時に篭絡し、見事に同時に殺してしまった。あまりにも鮮やか過ぎる犯行。
だが、これがきっかけであるインスピレーションが私の中で浮かんできた。
勇者と魔王の歴史に終止符を打つ手段、それがゆっくりと淡い霧となって浮かび上がってくる。
同時に、これを明確な形にしていくことができれば、あるいは歴史は変えられるかもしれない。
……………………………
戦士「いったんここまでにしなかい?」
男「なんでだよ、これからすげー気になる内容に入ろうってところだろ」
戦士「いや、まあさ。ほら……」
遣い「お取り込み中のところ申し訳ございません。実は一つお伝えしておかねばならないことがありまして。
実は主様なのですが、公務が想像以上に長引いてしまい、皆様にはもう少し待ってもらわねばなりません」
僧侶「……いや、私たちは無理して押しかけているんだ。そちらの都合にあわせよう」
男「そうだな。でも仕事が長引くってなにかあったのか?」
遣い「申し訳ございませんが、私ではわかりかねます。主様が帰ってき次第本人の口から聞いてください」
戦士「まあ仕方がないね。相手は魔界の名門貴族。多忙の身だろうし、今は待つしかない」
遣い「それで、皆様にはお食事を用意しています。よろしかったら召し上がりください」
男「それじゃあ、せっかくだしいただこうぜ」
……………………………
男(食事を終えたオレたちは僧侶の提案で、魔界帝都へ繰り出すことにした。なんでも僧侶はこの街がどうなっているか、どうしても見たいらしかった。
そうして、オレと魔法使い、僧侶は街に繰り出しちょっとした観光を楽しむことにした。
戦士は疲れたから、ということで屋敷で寝ている)
男「……」
僧侶「さっきからお前、挙動不審じゃないか。もし、私たちが魔界の人間であることを気にしているなら大丈夫だ。
少なくとも現時点ではこの国の兵士たちが警戒しているのは、私たちではない」
男「それはわかってんだけど、なんかやっぱり緊張するだろ」
僧侶「肝っ玉が小さいな。それに念には念を入れて、こちらの国の装いも借りてきたんだ」
魔法使い「そうよ、勇者くん。あなたはいささか以上に警戒しすぎているわ。
せっかくこうして三人でお酒を飲んでいるんだから……ふふっ、このときを楽しむべきよ」
僧侶「……しかし、酒を飲むと本当に豹変するんだな」
魔法使い「べつに、豹変しているわけではないわ。素面のときの私も私だし。
ただ、アルコールのおかげでいつもより少しフレンドリーになっているだけ」
男(プチ観光を済ませたオレたちは、魔法使いの提案で静かなバーに飲みにきていた。
僧侶は魔法使いの変貌振りに戸惑っている)
僧侶「しかし、さすがに国の中心ということだけあって立派な建物が多いな」
魔法使い「インフラ設備なんかもけっこう充実していたし、なにより街の景観は素敵ね。
普段はあまりそういう感想をもたないのだけど。道路とかもきっちり舗装されていて、歩きやすかったわ」
男「背の高い建物が多いから、なんかずっと上見てて疲れたな。あと初めて見る魔物もたくさんいたな。
オレが忘れているだけなのかもしれないけど」
魔法使い「あながた知らないの魔物がいるのも無理ないわ。魔物はその種類をどんどん増やしていってるわ」
男「あと、この街で私たちが見た魔物はほぼ人型しかいなかったな。中には人そのものもいたけど、たぶんの貴族の連中に仕えてるヤツらなんだろうな」
僧侶「そういえば、一つ気になったことがあったな」
男「なんだよ?」
僧侶「道具屋を見ただろ? そのときに私たちの国ではずいぶん前に禁止されていた薬草とかが売っていた。
それが少し気になった」
男「え? オレたちの国って回復魔法とかだけじゃなくて、薬草とかの販売も禁止されているのか?」
僧侶「そうか、お前が生きていた時代は道具屋とかに平気で薬草やら回復アイテムやらが売っていたのか」
男「そのはずだ。回復アイテムとかなかったら、傷を負ったときに魔法以外での対処ができなくなるし」
魔法使い「あなたが生きていた時代には、おそらく医者とかもほとんどいなかったんじゃないかしら?
当時は傷の手当てとかを生業にしている僧侶とか魔法使いもいたらしいし」
男「医者か。そうだな、おそらく医者なんていたとしても、診てもらっている人なんていなかったんじゃないか?
ていうか、じゃあ今は医者が傷の手当てとかするのか?」
僧侶「当たり前だ。医者がそういうことをするのは当然だからな。
そもそも昔から医者はきちんと仕事はしていたよ、今より人口は少なかっただろうが」
魔法使い「おそらく勇者くんには感覚的にわからないことなのよ。
以前にも勇者くんには回復魔法が禁止されている理由は話したわよね?」
男「あーたしか、回復魔法が人のカラダに実はあまりよくない、みたいな話だったよな?」
魔法使い「さらに言えばもっとも回復魔法を浴びているだろう勇者一行の寿命が皆、短いのもそれのせいじゃないか。
そんなことも話したわよね?」
男「ああ。でもそれって本当かどうかはまだ判明していなんだろ?」
魔法使い「ええ。まだ研究段階ではっきりと回復魔法が原因だとはわかっていないから。
そもそも回復系の魔法が禁止された理由は魔女狩りなどが主な原因だしね。
ただ、勇者一行の寿命の考察について、実はもう一つ面白い説があるの」
僧侶「当時の回復系アイテムによる遅発性の副作用、それが英雄たちの短命の理由なんじゃないかっていう説だ」
男「遅発性の副作用? 回復アイテムにそんな効果があったのか?」
魔法使い「実は色々と副作用があったのは本当よ。しかし遅発性の副作用により死を迎える、と言うと疑問ね。
どちらかと言うとクスリの使いすぎが祟って死に至るって言った方が正しいから」
男「よくわかんねーな」
魔法使い「魔法と同じで、無理やり人体の回復スピードをあげてるから、どんどん身体に負担がかかってしまっているのよ」
僧侶「その場ではたしかに傷は治っていても、結局長い目で見たら、それは身体を痛めつけることになっているってことだな」
男「……なんとなくわかる、かな」
魔法使い「それに魔法にしろ回復アイテムにしろ、どちらも人間の身体にインヒビターを作ってしまうから。
どんどん回復系統のものはその効力を強めていく必要があったのよ」
僧侶「そうなれば当然、回復魔法を浴びる側の後々の負担は大きくなっていくしな」
男「すまん、まったく意味がわからないんだが」
魔法使い「つまり、魔法やアイテムに対して抗体ができる……そうね、薬とかが身体に効きにくくなるのよ。
そうなればより効果が出るように、魔法とかはより効果のあるものを選定しなきゃならない。もちろんアイテムもね」
男「なるほど。でもそれってすぐに勇者たち、気づくんじゃないのか?
もっと早い段階で判明していてもおかしくなさそうなのに」
僧侶「それが気づけないんだよ」
男「なんで? 術を浴びるやつが一番に自覚できるだろ」
僧侶「だって、当時は魔王たちの住みかに近づけば近づくほど、魔物たちは強くなっていたんだ。
そうなれば、どうだ? 前線で戦う者が負う傷も深いものになっていく」
魔法使い「そうして、傷を治すための回復魔法やアイテムは自然と強くなっていく。
だから、そんなクスリとかの抗体に気づくことができないのよ。
ふふっ、だって自然に効果の強いものを使わざるをえないんだから」
僧侶「当時は魔王の生息地に近いとこに人間の街があったりもした」
魔法使い「つまり、そんな危険地帯で扱われるクスリなんかは当然高価なクスリばかりで。
おそらく、これは私の予想だけど店なんかに出されているのも、ほとんどそんなものばかりだったんじゃない?」
男「……な、なるほど」
僧侶「勇者たちが気づけないのは、ある種の必然だったってわけだ」
魔法使い「まあこのことが明るみになってからは国も、薬草や回復系のクスリを道具屋が販売するのを禁止した」
僧侶「と言うより、ほとんどのものが製造自体が禁止された。
今は医療機関や医者からその手のクスリが処方されるようになっている」
男「なるほどなあ。つまり、医者は必要不可欠なわけか」
僧侶「それに、近年研究が盛んになっている毛梅雨病などの慢性的な病に対しては医者じゃなければ対応できないしな」
男「難しくてついていけない……」
魔法使い「ふふっ……」
乙です
RPGの回復アイテムって現実的に考えるとこうなるんですね
怖い
RPGの回復アイテムって現実的に考えるとこうなるんですね
怖い
使ったその場ですぐ傷が治るような即効性の高いもの使ってたら効果は低くとも身体にかかる負担は間違いなく大きいだろうしなぁ。
男「でも結局なんで、あの道具屋には普通に昔の薬草とか売ってたんだ?」
魔法使い「軍事技術に関しては発展が早いみたいだけど、おそらく医療に関してはそこまで進んでないのかもしれない」
男「なんでまた医術に関しては……」
魔法使い「魔物たちが私たちよりもはるかに丈夫で堅だからよ。
しかも回復スピードが根本的にちがうもの、医療なんてものに頼る必要性が人間よりずっと低いんだわ」
男「オレもなかなかタフだから、医者いらずってことかな?」
僧侶「そうだな、バカに効くクスリはないっていうからな」
男「ずいぶん、あっさりとバカって言ってくれたな! まあたしかにバカだけどさ」
僧侶「……でも私はお前みたいなバカは嫌いじゃない」
魔法使い「……ふうん」
僧侶「なんだ、魔法使い?」
魔法使い「なんにもよ」
男「オレもなにか本でも読むかなあ」
僧侶「なんだ、藪から棒に」
男「いや、あの姫様の手記を見てさ。やっぱり生きている以上はもっと色々知っておかなきゃなあ、と思って。
ただでさえ、記憶をなくしてしまって、なんもわかんねーから余計にさ」
僧侶「そうだな、なんなら読みたい本を言ってくれたら私がピックアップしようか?」
男「そうだな、僧侶はたくさん本を読んでるんだもんな」
魔法使い「本と言えば、どうしてあの屋敷にうちの国の女王の手記があったのかしら?」
男「たしかに。言われてみると、なんであんなのが置いてあったんだろうな」
僧侶「……何か理由があるのだろう、私たちが考えても仕方のないことだ。
それより、そろそろ戻らないか? もしかしたら屋敷の主と戻っているかもしれない」
魔法使い「その前に少し待ってくれないかしら?」
男「どうした?」
魔法使い「ふふっ……気持ち悪いから全部戻すわ」
…………………………………………
魔法使い「……」
僧侶「すっかりもとの無口に戻ったな。戻したぐらいでそんな簡単に酔いって覚めるものなのか?」
男「オレはそんな酔っ払うほど飲んだことがないからな、わからん。
僧侶は酒を飲まないのか? 今日も一人だけど水をちびちびと飲んでたけど」
僧侶「飲まないんじゃない、飲めないんだ。 下戸なんだよ、アルコール分解酵素を身体が保持してないのか、一瞬で酔ってしまう」
魔法使い「……かわいそう」
僧侶「べつに、私は酒を自主的に飲みたいなんて思ったことないからな」
男「しっかし、本当に広い屋敷だな。こんなに広いと掃除が大変そうだな」
僧侶「……たしかにな」
遣い「おかえりなさいませ、皆様。主様はすでに帰られております」
男「すまない、もう帰ってきてたのか。もしかしてかなり待たせてるか?」
遣い「いえ、主様も今帰られたばかりですので。焦らずとも大丈夫です」
………………………………………………
戦士「ははは、そうなんですよー、もう本当にここまで大変でしたよー」
エルフ「あらあら、それは大変でしたわ。ここまで無事に来れて安心しましたわ」
少女「まあ、それもこれも全部私のおかげだけどねー」
男「…………」
僧侶「…………」
魔法使い「…………」
戦士「おっ、みんな帰っていたのかい?」
少女「お兄さんたち、無事にここまでたどり着けてよかったねー。
安心したよ、なんでもよくわからない人たちに襲われたんでしょ?」
僧侶「……本来なら泊めてもらっている屋敷の主に挨拶するのが先なのだろうが、その前に言わせてくれないか」
少女「んー、どうしたのー?」
僧侶「なんでお前がここにいる?」
少女「ああ、そんなことかあ」
男「いや、けっこう気になることだと思うぜ。魔物地区のここに人間のお前がここにいるわけだし」
少女「お兄さんたちも人間じゃん。キミたちの言うことは、ごもっともだけど、べつにそんな深い理由があるわけじゃないからね」
僧侶「もしかして……」
少女「そう、私はこの屋敷でご奉仕さそてもらってるんだよ、遣いの一人としてね」
エルフ「その一方で学校にも通ってもらい、官僚になるための勉強もしてもらっているのよ。
はじめまして、みなさん。この子から話は聞いているわ」
男「は、はじめまして……えっと、どうも……」
エルフ「そんなに硬くならないでいいわ。あなたたちは今はお客様だから」
男(はじめて見る魔物だ……)
エルフ「とりあえず席に座ってくださいな。落ち着いて話をしましょ」
エルフ「あなたたちが密使であり、城へ訪ねに来ることは陛下からも聞いていましたわ」
戦士「そうは言ってもせっかくボクらがはるばる来たのはいいけど、キミらの王様がいないからね」
男「そうだよ、今、魔王はどこに?」
エルフ「残念ながら不明です。そのため上層部は今、かなり混乱していますわ。わたくしも、ここ三日は屋敷に帰ることもできなかったの」
戦士「それはそれは……なんとも大変だったんだね」
僧侶「だとすると、私たちはどうすればいい? 魔王に謁見しないことには、帰るに帰れない」
男「うーん、困ったな。ていうか魔王がいないのは、実はオレたちが来たせいで身を隠した、なんてことはないか?」
エルフ「それはないわ。そもそもこれは前もってきちんと決められたことだったもの。
ただ、イレギュラーなものがないわけじゃないけれど」
僧侶「私たち以外の侵入者か」
エルフ「そうよ。彼らの招待が不明であることも、今回の混乱に拍車をかけているわ」
少女「彼らに関しては私の情報網でも、正体が掴めていない。何者かわからないっていうのは、厄介だよ」
エルフ「そういうわけで今は城の出入りは禁止になっているわ。
我らが王がいないなんてことを、一般市民に知られるわけにはいかないから、遣いであるあなたたちも城には入れられませんわ」
戦士「まあ当然と言えば、当然なのかもね」
男「でもじゃあ、いったいどうすればいいんだ?」
エルフ「王が戻られるまでは、ひたすら待ってもらうしかありませんわ」
少女「魔王様がいないなんてことになったら、国の混乱なんて生やしいことだけに終わらないだろうしね」
男「なにかあるのか?」
少女「基本的に私たちの国は、人間と魔物が共存してうまく生活してる。
けれど、中には人間を嫌っている魔物もいるし、そういう人たちは魔王様に対しても不平不満をもっている」
僧侶「王がいなくなれば、そういう連中が活発になり出す可能性があるってことか」
少女「そうだね。過激派と呼ばれる人たちが動き出すかもしれないからね」
男「慎重な行動が求められているってわけだな」
戦士「でもそうなるよやることないよ、ボクたち。魔王が戻ってくるまで。それどころか、帰って来なかったら……」
「失礼いたします!」
エルフ「これはいったい……なにかあったのですか?」
僧侶「こいつらは……」
僧侶(先日の人間地区にいた兵士たち……か?)
兵士「伯爵閣下、突然の来訪失礼致します。実はある情報が我々の耳に入りまして……」
兵士「キサマら」
男「……オレたちのことを言ってるのか?」
兵士「03小隊隊長のことを知っているな?」
男「……なんのことだ?」
戦士「ボクらをここまで連れて来てくれた、リザードマンだよ」
男「ああ、あいつのことか! けっこう世話になったが、なにかあったのか?」
兵士「殺された」
男「は?」
兵士「地下水路で死体が発見された。容疑者はキサマら四人だ。この場で逮捕する」
今日はここまで
なかなか終わりが見えて来ないけどがんばっておわらせやす!
…………………………
僧侶「……まさか私が牢獄に入れられるなんて。
宙ぶらりんな人生を歩んで来たとは思うし、人に胸を張れるほど立派な生き方をしていないとは思うが……。
神よいったいなぜこのような試練を私に……」
戦士「いや、まあショックなのはわかったから元気出しなよ、僧侶ちゃん。ボクらは彼を殺してはいないだろ。
むしろこの牢屋からどうやって脱出して、どのように誤解を解くかを考えないと。
そしてなにより、わずかの間とは言えボクらに協力してくれたリザードマンのカタキをとらなきゃ」
僧侶「お前……意外とまともなことを言うな……」
戦士「意外とはひどいな。これでもボクは義理堅いんだよ、なあ、勇者くん?」
男「……」
戦士「勇者くん、どうしたんだい? キミまでまさか牢屋に入れられてしょげてるのかい?」
男「……ん、いや、その……リザードマンは死んだんだよな」
戦士「そうだよ。ボクらがこんなカビ臭い場所に突っ込まれてるのは、彼の死がボクらのせいにされてるからだろ」
男「……なあ。死ぬってなんだ?」
戦士「はあ? 死ぬは死ぬだろ。この世から消えるってことで、土に還るってことだよ。
まさか死とかそういうものの記憶もないのかい?」
男「死ぬってことがどういうことかは、わかってる。でも実感ができないんだよ。この世にいないっていうことが、どういうことなのかがよくわからない」
魔法使い「…………」
僧侶「……勇者」
戦士「たぶんそれは考え続けてもわからないことだよ。目で見て、死を体験して初めてわかるものなんだよ」
戦士(記憶がないゆえの純粋さ、か。知識はあっても肝心のそれの体験の記憶がないから戸惑っちゃうんだろうなあ。
そもそも勇者くんの場合はそんな記憶以前の問題なんだけど)
男「オレは本当になにも知らないんだな……やっぱりこんなんじゃダメだ。こんなんじゃダメなんだっ!」
僧侶「きゅ、急にどうした?」
男「自分でもよくわからない。けど、なんかこのままじゃダメだってことだけはわかったんだよ。
オレはもっと色んなことを知らなきゃダメなんだ。こんなところで止まってる場合じゃない」
戦士「なにか思うところがあったんだろうね、勇者くん。だったらまず、ここから脱出しなきゃならない」
男「そうだな。とにかく、ここを出ることが先決だな」
僧侶「うん、勇者の言う通りだな。落ち込んでる場合じゃない」
魔法使い「…… どうするの?」
戦士「前向きになったはいいけど、今のところこの牢屋から出る手段はないんだよね」
男「どうもこの牢屋の鉄格子、ただの鉄格子じゃないみたいだな」
魔法使い「魔力と魔法による術式を組み込んで作られた特殊なもの。並大抵の威力では壊せない。
地面にも壁にも、同じように魔力を感じる。おそらくこちらもなんらかの魔法による処理がされてる」
戦士「今のところ武器も取り上げられてるしなあ。僧侶ちゃん、これキミのパンチで壊せないの?」
僧侶「……言っておくが、私は馬鹿みたいに腕力があるわけじゃないからな。
私専用のグローブを介して、魔力を増幅してあれだけの威力にしてるんだ」
戦士「まあ、その腕の細さであんな馬鹿力が出るのが不思議だったけど、そういうわけだったんだね」
男「でもこれ、普通に触ることはできるし……なんとかできないのか?」
戦士「どうも勇者くんはピンと来ていないようだね。ようはこういうことなんだよ……魔法使いちゃん、ちょっと頼む」
魔法使い「……」
男「手のひらサイズの火の玉を…………鉄格子に飛ばす、と。
…………あ、鉄格子に当たる直前で消えた!」
戦士「見ての通りだよ。魔法や、強い衝撃に耐えられるようになってるんだ」
僧侶「こうなったら、無理やり魔力を増幅して私が……」
男「でもそれって負担になるから、グローブを普段は使ってるんだろ?」
僧侶「そうだが、今はイレギュラーな事態だ」
男「よせよ。これからも前みたいに戦うときが来るかもしれないし、オレたちはお前の拳に助けられて来た。
今後も頼ることになるかもしれないしさ、とりあえず今は他の手段を考えよう」
僧侶「……わかった」
戦士「つくづく勇者くんは……」
男「ん? なんか言ったか?」
戦士「なんにもだよ、勇者くん。
それより、とにかくみんなでアイディアを出しあおうよ、ここから脱出するためのさ」
魔法使い「脱出手段ならある」
男「ホントか!? いったいどんな手段があるんだ?」
魔法使い「…………」
戦士「わああぉっ!? なんでボクのローブを脱がすんだよ!?
ていうかそれ、一応オーダーメイドのそこそこいいヤツなんだよ……って、なんで地面に広げるんだい!?」
魔法使い「こうするため」
僧侶「これは……」
男「魔法陣が、戦士のローブに展開されてる……?」
魔法使い「魔法による施しを受けている地面には、魔法陣をきちんと展開できないできない可能性があった」
戦士「まあたしかにボクのローブは外側の生地は、魔法の軽減効果があるからね……」
男「ああ、だからわざわざ広げて内側に魔法陣を展したのか」
僧侶「これはいったいなんの魔法陣なんだ?」
魔法使い「簡易魔法空間を作る陣。魔法による空間転移が可能になる。
兵士たちに連れていかれる直前に、あの部屋に簡易式の魔法陣を展開しておいた」
男「さすが! いやあ、なんだよ。それなら簡単に脱出できる!」
戦士「ところがそうは問屋が卸さないんでしょ? だったら最初からこのことを言ってるよ」
男「そうなのか?」
魔法使い「彼の言う通り。今回の魔法陣は問題がある。咄嗟に展開したものだから……」
男「だから?」
魔法使い「一人しか脱出することができない上に、一回しかおそらく使えない」
戦士「一人しか脱出できない、か」
僧侶「と、なるとここから脱出して、さらにもう一度この牢獄にまで戻ってきて鍵を開けられる人材じゃなきゃダメだな」
戦士「……ボクだね、その条件に間違いなくきっちり当てはまるのは」
男「戦士がこの中で一番強いしな」
戦士「そうだね、間違いなくこの中でならボクが一番適しているだろうね。だが、今回これについてはキミに託したい。勇者くん」
男「オレに?」
僧侶「どうして? 勇者はまだ記憶も戻っていない上に本来の力も……」
戦士「説明するのは面倒だし、行けばわかるよ」
僧侶「……わかっているのか、今の私たちの状況を。囚われの身なんだ、私たちは。
この状況下ではなにが起きるか、あるいはなにをされるか……」
戦士「だからこそ、だと言う見方もあるんじゃないかな?」
戦士「勇者くんには悪いけど、この中で一番戦力としての重要性が低いのは勇者くんだ」
男「わかってるよ、そんなことぐらいな」
戦士「そしてボクらはこれからどうなるか、いや、どうされるかわからない身だ。
この牢獄の中の戦力の確保こそが、真の安全なんじゃないか、とボクは思うよ。
この三人がいれば多少の抵抗はできるだろう」
男「なるほど、たしかにそういう考え方もあるか」
戦士「それに、この中でキミが一番裏切らないだろうという確信もある」
男「裏切る、って……」
僧侶「この魔法陣でここを脱出して、そのまま私たちを置いて逃げるってこともできるだろ」
男「……わ、わかってるよ」
僧侶「本当にか?」
男「お、おう。ていうか実は今まさに魔法陣に入って脱出しようかなとか考えてたぐらいだ!」
戦士「さすが勇者くん。裏切ることを堂々と公開するなんてね」
戦士「まあ、冗談はこれぐらいにしておこうか。
ボクらに残された時間はあとどれぐらいか、それがわからない以上急ぐにこしたことはない」
男「もう行ったほうがいいか?」
魔法使い「……うん」
男「……最後に確認なんだけど本当にオレでいいんだな?」
戦士「もちろん! ボクはキミを信じてるぜ!」
男「なんか軽いな、ノリが」
僧侶「戦士、お前がなにを考えているかはわからないが、なにか理由があるんだろう。勇者、頼んだぞ」
男「おう、まかせておけ」
魔法使い「……私たちを助けに来て」
男「言われなくても絶対に助けにいくよ……行ってくる!」
………………………………………………
僧侶「……魔法陣はまだ残っているけど、これはいずれ消えるんだな?」
魔法使い「こちらはきちんと私の術式と魔力をきっちり組み込んで作ったもの。だからまだ残っている。
でもあっちのは、咄嗟に作ったものだから不完全……おそらく彼があちらに行く頃には、ほとんど魔法陣は消滅している」
戦士「まあ、彼は仮にも勇者なんだから。なんとかしてくれるよ。魔法使いだってそう思ってるんじゃない、なにも言わないけどさ」
僧侶「お前と魔法使いはもとから知り合いなのか?」
戦士「うん? 急にどうしたんだい、僧侶ちゃん。ボクと魔法使いちゃんが以前から知り合いだって?」
僧侶「いや、勘違いだったらすまない。ただ、なんとなくそう思っただけだ。
魔界に来るときに、魔法陣へ入り込むときにも、思ったんだ。お前たちが目配せしていた気がしてな」
魔法使い「……」
戦士「隠すようなことではないし、ていうか、隠しているつもりもなかったけど。そうだよ、ボクらは以前にも仕事で同じになったことがあってね」
僧侶「なるほど、そういうことか。つまらないことを聞いたな」
戦士「べつに、言ってなかったボクらの方にも非はあるからね」
僧侶「あいつは大丈夫かな。ヘマをしなければいいが」
戦士「そうだね……まったく、もどかしいなあ。待つか祈るしかできないなんて……」
僧侶「だったらなぜ勇者に行かせたんだ?」
戦士「適任かな、と思ったんだけどなあ。ボクよりも彼の方が人間としては信頼できるだろ?
それよりボクはキミがさっき言いかけた言葉のほうが気になるな」
僧侶「なんの話だ?」
戦士「言ったじゃん、記憶がないから勇者本来の力を出せない、みたいなことをさ。
なんなんだい、勇者本来の力ってさ」
僧侶「咄嗟に口から出ただけだ。文献や資料に記載されている勇者は、なにかしら特有の力をもっていた。
だから、あいつが勇者なら勇者の所以とも言える力がなにかあると思ったんだ……」
戦士「逆を言えば彼が勇者じゃなければ、彼は勇者特有の能力をもってないってことだよね」
僧侶「勇者じゃなかったら、だと。あの男が勇者じゃないわけがないだろ、仮にも王が復活を命じた存在なんだ」
戦士「……そうだね」
僧侶(なにかこいつには引っかかるものがあるが……今はそんなことを考えてる場合じゃないか)
戦士「それにしても、いざ待つ側になるとヒマだね。なにか面白い話でもない……ん?」
魔法使い「……」
僧侶「……!」
僧侶(見張りの兵士が来ただけか。見回りか?)
見張り「…………」
僧侶(一瞬だけ私たちのことを見たが……だんまりか。まあ、わざわざ私たちと口をきく必要性はないからな。
当然と言えば当然だが、なんとかこいつを利用できないだろうか)
戦士「ねえねえ、兵士さーん。ボクたちいつまでここに閉じ込められてるのかなあ? ねえってばー」
見張り「…………」
戦士「もしかしてボクたち殺されたりしちゃうのかな……?」
見張り「……そうかもな」
戦士「聞いたかい、僧侶ちゃん! ボクたち殺されちゃうんだって! ああ、なんてことだ!
義父上にも義母上にも別れの挨拶もできないまま死ぬなんて!」
戦士『僧侶ちゃん、てきとーにボクの演技に合わせて』
僧侶『……なにをどうやって合わせろと言うんだ』
戦士『いいから、なんかフインキで察して』
僧侶「……あ、ああ神よ! なぜこのような不幸をわ、私に……! これも試練なのですか……!?」
見張り「うるさいぞ、キサマら! 演劇ならよそでやれ!」
戦士「そんなことを言われても! これから自分の身に起きる不幸を考えたら! あぁ……」
僧侶『いったいこんなことをして、どうなるっていうんだ?』
戦士『まあ、見てなって。これからボクが魔力に頼らない魔法を見せてあげるよ』
僧侶『……?』
戦士『この見張りの魔物が、牢屋の鍵を開けてしまう魔法をね』
はい、今日はここまで!
じょじょに終わりに向かってますが……まだ先は長いかなあ。
なんとか十月中には終わらせたいです
ではまた明日書けたらまた明日
じょじょに終わりに向かってますが……まだ先は長いかなあ。
なんとか十月中には終わらせたいです
ではまた明日書けたらまた明日
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