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元スレ八幡「ずっと前から好きでした。俺と付き合ってください」姫菜「・・・いいよ」
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とりあえず女王が何を意図しているのか分からない以上余計な情報は与えない、最低限の回答で、三浦の続きの言葉を待つ。
あーし「海老名が何を考えているのかは、分からないけど、そういうの嫌いだと思っていた海老名が何か変わろうとしてるんならあーしはそれを見守ろうと思う。
まぁあんたが彼氏ってのは全くもって理解できないし納得もいってないんだけど」
そう言った三浦の声音からはどのような感情が含まれていたのかまでは分からなかった。
ただ三浦は変わっていく様々な変化を受け入れ、それでも最善を尽くそうと、足掻こうとしているのかもしれないなんて考えてしまった。
八幡「……言い分は分かった。で、そのことと今のこの状況について、やはり接点を見いだせないんだけど」
あーし「あんたがちゃんと海老名の彼氏に相応しくなるよう、私が今日面倒みてやるってこと」
ま、まじか?三浦のやつおかんスキル高いとは思っていたが、世話焼き過ぎでしょ。
だがその言葉を額面通り受け取れるほど、生憎俺は人間ができていない。
まぁつまりなんだ、友達に彼氏ができたから心配なんで俺の身辺調査をするってところか。
確かに仲の良い友達に急に彼女ができたら、……ムカつく、あれっ?心配じゃないな…
爆発しろっとか思っちゃうよね?どういうことだ?
身近な例で検証してみよう。そうたとえば戸塚……戸塚に彼女ができたら…
まぁいいんじゃないかな?百合百合したものは部室で見飽きているし、
では友達でもなんでもないが、材木座に彼女ができたとしよう。
うん、殺意意外の何も浮かばない…まぁアイツ友達じゃないしな。
というかやはり男友達のいない俺にとってはよくわからんってことだな。
結局はだ、つまりなんだ、これから三浦と二人で出かけるってこと…?
い、いや、あ、ありえん。いや無理でしょ、無理ゲーすぎるでしょ。
あーし「ほら何ボヤボヤしてんの?行くよ」
しかし帰りの新幹線で海老名さんの依頼を受けた以上、三浦との関係は有耶無耶には出来ないしな、今後の展開次第ではコイツにも利用価値があるかもしれん。
まぁ俺も出来る限りは足掻いてみるか…
スッと立ち上がりカッコ良く先導しようとする三浦を見つめながら、持っていた本をポッケに入れ腰を上げる。
見上げた青空はどこまでも澄み渡り、時折り撫でる風の温度が冬の始まりを予感させていた。
乙
あーしさんの今日のパンツは何かな
というか知る機会があるのか
あーしさんの今日のパンツは何かな
というか知る機会があるのか
駅から少し歩いたところにおしゃれな服屋(ショップというらしい)が立ち並ぶ。
こんな所あったんだ、てっきり以前雪ノ下と行った時のようなショッピングモールに行くものと思ってたんだが。
何気無く周囲の景色に目をやりながら歩いていると違和感を感じた、俺の頭部に美容室でも切られず残ったボッチセンサーがピコピコと警告を送ってくる。
感覚を研ぎ澄ますと空気が違うことに気付く、何故だか息苦しい……ふと周りを注意深く見渡すといつの間にかオシャレな格好をした若者の比率が急上昇している。
ほう、これが俗に言う魔界空間、魔物(リア充)の巣窟ってやつか、ショッピングモールなんかは家族連れや学生も多く何とも思わなかったが、ここは街行く人が皆、オシャレに非ずんば人に非ずと言わんばかりの空気を纏っている。
すれ違う際にお互いの格好をドン小西、もしくはピーコばりのファッションチェックしているような錯覚に陥る。あまりの居心地の悪さに毒フィールドをHPを削りながら進む妄想をしていると三浦が声を掛けてくる。
あーし「まず服な、今日のはまぁ思ったより悪かないけど、持っている服でなんとか合わせたって感じで、センスが感じられないっつーか、?」
流石にファッションにはこだわりがあるのか、俺が小町に超適当にコーディネートしてもらった服装に鋭いチェックを入れてくる。
ちなみに小町には今日のことは何も言ってない。今日出掛けるんだけど服装これでいいかと聞いたら3番目の引き出しの奥にあるグレーの服の方がいいと言われた…
なんで俺の引き出しそこまで把握してんの?お兄ちゃん的にポイント高いんだけれど俺の部屋のもの全部把握されてんじゃないかとお兄ちゃん少し怖くなっちゃうよ。
いやあれだ、別に見られて困るものがあるとかあるとかそういったことでは結局あるんだが…
まぁ俺ごときがリア充トップカーストに君臨する女王様のファッション観に対して意見を述べれる訳もなく、黙って従者の如く横に並んで歩いていく。
女王のイメージはマリーアントワネットといったところか、パンがないならバター入りのお菓子を食べればいいじゃないとか言いそうだしな。
因みに会話は殆どない。これが立場が微妙な関係なら喋ったほうがいいのかなーとか少し気にしたりするのだが、女王と従者という明確な身分差は逆に楽でいい、三浦が全く気を遣わないなら、こちらも気を遣う必要がないしな。
少し暇だったのでジョブを従者からランクアップさせてボディガードにしてみる。
インカムで連絡がはいってきたような振りをしたり、尾行者がいないか探す遊びをしていた。
警備対象も我儘な女王様という設定で妄想すると興が乗ってくる、
道は程々に狭い、 ふと後ろから車が来たので車道側に移動し女王を守るように歩いていると三浦から怪訝そうな目で睨まれる。ヤベェ、調子に乗りすぎたか、ウロチョロすんなしとか言われるのかと身構えてると女王も寛大な気持ちになったのか、何も言わずまた歩き出す。
流石にこのリア充通りとも呼べる空間の中においても三浦は目立つ存在なのか、すれ違う人達の視線を度々感じる。
特に俺に対して男性の刺すような視線は以前雪ノ下とショッピングモールで歩いた際に感じたものだから特に気にするでもないと思っていたのだが、何故か時たま女性の視線も刺さってる気がする。
いやあれだ決して自意識過剰な訳では無い。
訓練されたボッチマイスターであるこの俺がそのような初歩的なミスは冒さない。ただ俺の最強のフィルターを通しても今まで感じた事のない視線に戸惑う。
さて三浦はというとそんな下々の視線は慣れているのかそれとも元々眼中にないのか、我関せずと颯爽と歩き、予め店を決めていたのだろう目的の店に入る。
ごめんなさい。
もっと投下する予定でしたが、眠たすぎるので残りはまた後日。
もっと投下する予定でしたが、眠たすぎるので残りはまた後日。
店は小綺麗に整っていてオシャレな男女が服を手に取りキャッキャウフフと楽しそうだ。
休日だけあって店内はそこそこ賑わっている。
三浦は早速顔見知りと思われる店員さんに話しかけられていたが、すぐに店員さんが俺の存在に気付く。
三浦が何か告げると、店員さんは店の奥から幾つかの男物の服を持ってきた。
あーし「これちょっと着てみ」
店員さんから服を受け取り一通り目を通した三浦はそこから二着を俺に渡してくる。
無言で頷き三浦に言われるがままに服を試着しカーテンを開く。
店員さんがすっごく似合ってますよと絶賛するも俺にはどうもピンとはこない。
三浦も少し感心したような表情を見せるが、次と言い放ちカーテンを閉める。
店員さんと三浦は次から次へと服を選んでは着せ替えてくのだが、おかん属性が刺激されたのかあーだこーだと店員さんと議論を重ねているのを、俺はというとリカちゃん人形の如く無心を貫き言われるがままにしている。
するといきなり三浦が刺すような視線でこっちを睨んだ。
あーし「つーかさ」
その尊大とも言える声が、無心と化していた俺の意識を引き戻す。
あーし「ちょっとヒキオ、やる気あんの?」
女王から恐ろしく冷めた声音で問い詰められる。……うん全く持ってやる気有りません。
……まぁ正直に伝えるのも申し訳ないので適当に誤魔化す。
八幡「い、いや、することないなー、なんて思っていたり…」
いや着たり脱いだりはちゃんとやってるよ。
あーし「はぁ?ちょっとあんた分かってんの?」
八幡「え?な、何が?」
あーし「今日の目的」
八幡「え?…お前が俺の服選んでくれるんじゃないの?」
俺としては服を選んでくれるのは有難いんだが、どちらかと言うとさっきから着てる服の値札の方が気になってしょうがないんだが…
あーし「違うし、これからあーしがあんたの服、ずっと選び続けられるわけないじゃん?てかヒキオと買い物なんて金輪際あり得ないし」
まぁそうだな、俺もお前と二人でとか金輪際ないわ。
あーし「こうやって色んな服を試着して自分に合う服、合わない服を見極めんの。センスなんて始めから備わってるんじゃ無いし、流行りだってあっという間に変わってくんだから店で試着したり、雑誌や他の人の格好を参考にしたりすることで身に付けてくんじゃん」
………予想外の言葉に少し戸惑った、拙いながらも論理的な説明もそうだが、それ以上にその考え方に。
飢えている人に魚を与えるのではなく、魚の捕り方を教える、何処かのブラック部活の部長様と同じやり方…
女王の名を冠するには資格試験でもあるのかね。
流石にトップカーストに君臨し、その座を維持し続けているだけのことはある。
確かに友達の為とはいえ、全くと言ってもいいくらい興味のない俺ごときに休日を割いて面倒見ようなんて普通であればまずしない、もしかしたらコイツ本当に優しい奴なのかもしれない。
確かにコイツが今日をそれなりに真剣に考えているのであれば、俺の態度はまぁ糾弾に値するだろう。
どちらに非があるかと言われれば俺のほうが分が悪いのは言うまでもない。
まぁ俺も彼女が出来た以上(ニセとはいえ)、少しくらい容姿に気を回すべきかもしれないしな、と自分に少し言い訳しつつ三浦の責めに応える。
八幡「そうか、すまなかったな、確かにお前の言う通りだわ、少しだけやる気出してみるんで、色々指導してくれると助かる」
言葉を発した後、俺にしては珍しく前向きな心構えだなーと自分でもびっくりした。
三浦も俺が素直に謝ったのが意外だったのかキョトンとした素の表情が意外と可愛かった。
鳩が豆鉄砲喰らったようなとよく表現するが、実際に鳩のそんな顔を見た人間がどれだけいるんだろうなとかどうでもいい事を考えてる間に三浦も再起動する。
あーし「そ、そう、分かればいーし、…じゃあコレとコレを着てどっちがいいか自分でも考えてみ」
セリフの最後に三浦は少し笑い、俺に服を手渡し、新たな服を探しに店の奥に向かって行った。
乙ー
本当にそれでいいのだろうか
海老名さんが望むらしさってのを少しずつ失われる選択なのではと
本当にそれでいいのだろうか
海老名さんが望むらしさってのを少しずつ失われる選択なのではと
環境と八幡の両方とも手に入るって考えれば悪くないんじゃね?
尖ったままの八幡だと環境を壊すリスクが高いわけだから
尖ったままの八幡だと環境を壊すリスクが高いわけだから
どうも1です。まずはゆきのん誕生日おめでとう。
それだけを言いたかったのですが、せっかくなので次回予告。
1周間以内の投稿を目指してがんばります。
内容はというとあーしさんのパンツの描写に苦心しております。
年末年始は家族サービスで全く進まず…
それだけを言いたかったのですが、せっかくなので次回予告。
1周間以内の投稿を目指してがんばります。
内容はというとあーしさんのパンツの描写に苦心しております。
年末年始は家族サービスで全く進まず…
結局最初の店では何も買わず、次の店に向かっている。
すげぇな、あんなに試着しておいて何も買わずに店を出れるなんてどんだけメンタル強えんだよ。
店員さんなんか若干引きつってたぜ。まぁ俺も服の値札を見て若干引きつっていたから結果としては助かったんだが。
あーし「じゃあこの店では自分で服選んでみ」
先程の店に比べ若干カジュアル色が強い店に入り、早々に三浦が告げてくる。
なん、だと?…オイオイもし店員さんに声かけられたらどうするんだよ?
泣いて困っても知らねーぞ、俺が…と心の中で反抗するその声が届くわけもなく、大人しく三浦の言に従う。
空気と同化する俺のステルススキルを駆使して店員さんの捕獲網を掻い潜りいくつか服を見繕う。
三浦に事前にチェックしてもらい試着室に入った。
八幡「これどうだ?……あれっ?」
服を着て試着室のカーテンを開けると三浦がいなくなっていた。
どこにいったのかと辺りを見回してると隣のカーテンからシャッとカーテンが開く音がし、先程とは違う装いをした三浦が姿を現す。
あーし「ねぇこれどーよ?」
スレンダーな身体によくフィットした黒のワンピース、ひらひらしたレースで縁取られた部分が柔らかめな印象を与えて入るものの、しっかりとスタイルの良さは強調されている。
八幡「どうと言われてもなぁ……すげぇよく似合ってるとしか」
他に言いようがない。三浦はその金髪のせいか、この手の派手系アイテムが異様に似合う。
俺は素直に褒めたのだが、三浦は姿見の方を向いて肩を右に左に捻っていた。
今、三浦がどんな顔をしているか知っているのは鏡と本人だけだ。
あーし「……これ結構気に入ったんだけど、た、例えばさ、隼人とか気に入ると思う?」
ストレートだなぁ、何の例えにもなってねぇし。
八幡「葉山の好みなんざ毛程も知らんが、アイツはきっとその服が気に入らないと思う」
あーし「あん?なんで知らないのにそう言い切れんのよ」
声音が瞬時にして捕食者のそれに変わる。怖ぇよ。
八幡「よく考えてみろ。葉山と俺は例えるなら水と油だ、いやもうむしろ、富士の天然水とアラブで産出される原油くらいまである、そこまではいいな?」
何を言い出すのかと言った顔で不承不承ながら三浦も頷く。
八幡「俺が黒なら葉山は白、葉山が人気者なら俺は日陰者、光と影としてお互い相容れない存在が葉山と俺、つまりあいつと俺は正反対である、よって俺がその服を似合ってると思っている以上、アイツがそれを気に入る事はないってことだ!証明終了、Q・E・D」
俺がドヤ顔で持論を展開すると、三浦は呆れ顔で応える。
あーし「いやその証明、間違ってるの私でもわかるし、まぁ確かに隼人の好みとかヒキオにわかる訳ないよね」
おかしいな、これが由比ヶ浜ならなるほど~と納得する所なんだが…、流石にグループのツッコミ役だけあってある程度の分別はつくようだ。
ふーんそっか、と楽しげに呟き振り返った三浦はまた色違いの服を手に取り試着室のカーテンを閉める。
あれっ?結局俺のこの服どうなの?俺的には結構似合ってんじゃないかな~とか思ってんだけど、、 、
するとカーテンの中から三浦が語りかけてきた。
あーし「その服だけど、まぁまぁいんじゃない、下はもう少し濃いめの色の方がいいと思う」
一応ちゃんとチェックしてくれてはいたようだ、そろそろ飽きて終わりになるんじゃないかなーと若干期待したんだが…
そして先程より青が深みを増したGパンを見つけ試着室に入ろうとした所で、また隣の試着室のカーテンが開き、今度は明るい色合いのワンピースを纏った三浦がこっちを向いている。
似合っていない訳ではないが、少し大人しい印象を与えるその装いは若干三浦の魅力を削いでいるようにも感じる。
あーし「やっぱ黒?」
半ば独り言っぽく呟き、先程の黒のワンピースを手にし、うーんと思案顔だ。
八幡「そうだな、さっきの方が似合っているんじゃないか?黒は女を美しく見せるっていうし」
国民的アニメの名セリフから引用させて頂く。
あーし「やっぱり?あーしもそう思ったんだよね、おソノさんの言うことに間違いないしね」
なんだよ、ジブリ見てんのかよ。でもキキに共感する三浦ってのも萌える。でも三浦はトンボの友達だったワガママそうなお嬢様かな、いや自由で面倒見のいいウルスラって線もある。
そんな平和な事を考えていた時代が俺にもありました。
もう一度、姿見を見るために振り返った三浦に対して、俺は一瞬自分の目を疑った。
まぁ常時腐っているから、いつも疑いの目で見られてはいるものではあるんだが。
…姉さん、事件です。
やめておこう、『姉さん』と『事件』というフレーズは一緒にしちゃいけない気がする、混ぜるな危険!
まぁなんだ、トラブル発生と言うか、いや正確にはToLOVEる発生と言うべきなのだろう。
淡い色合いのワンピースの裾で隠れているべき小悪魔的な丸みを帯びた艶美な曲線が、薄い桃色の布に包まれただけの状態で俺の網膜に飛び込んでくる。
うんハッキリと言おう、パンツ!ピンク!意外!
あっぶねー。一瞬、今日来てよかったな~とか思っちゃったぜ…
何故そんなことになっているのかと注意深く見ると、どうやらスカートの裾に付けられたタグがベルト位置にあたる装飾に引っ掛かっているようだ。
完全に三浦の死角になっており本人は気付いていない。
指摘をしてあげようか逡巡するも、その後にどんな厄災や災厄が降ってくるか全くもって読めない以上そのリスクを取るのは得策ではない。
周囲に目をやるも試着室は店の奥まった所にあることも幸いし、今のところ他の誰かに見られる心配もない…
試着を終えて最初の服に着替え直すことを祈りつつ、様子(パンツ)を見ていると三浦は何を思ったのか試着室から出てこようとする。
八幡「ちょ、ちょ待った」
慌てて止めるも三浦が鬱陶しそうに言い放つ。
あーし「何?他の服見るんだから、そこ邪魔」
考えろ八幡、ここからの起死回生の一手を…
あれっ何も浮かばん…
八幡「い、いやさっきの黒い服、結構似合っていたし、折角だからもう一度着て欲しいなぁなんて…」
とりあえず褒めてみる…が、このミッション、コミュ症ボッチには難易度が高すぎる…
は、恥ずかしい、このセリフ、確実に黒歴史…
あーし「え?…な、何言ってんのよ?キ、キモ」
怒りのせいか顔が若干紅潮している。
くそう、やっぱり試着室に押し返すのは無理か…
女はとりあえず褒めときゃ上手くいくなんて都市伝説だったんや。
もしくは『ただしイケメンに限る』の注釈付けとけっ
あーし「…で、でもヒキオがそこまで見たいって言うなら…」
うぞっ?
八幡「い、いやそんなに強い要望って訳じゃぁ……」
何を言ってるんだ俺は、願ったりの展開なのに三浦の恥ずかしそうな仕草につられ、俺も日和ってしまいそうになる。
幸い俺の言葉は聞こえて無かったようで、三浦は口を尖らせ渋々といった顔で試着室に掛けたさっきの黒いワンピースに手を伸ばそうとする。
だが服に手が届くすんでの所で、えっ、と三浦が声をあげ、伸ばされたその細長い手がピタリと止まる。
三浦の視線は斜め後ろに置いていた移動式の姿見に固定されており、その角度は見事三浦の背後を捉えている…
停止した手の先がゆっくりと背中へと移動し、そしてその下に降りて目標地点に到達する。
既に危険を察知した俺はというと、試着室の中に入るところまでは来た。
後はカーテンを締めるだけだ。
だがカーテンに手をかけたところでこっちを向いた三浦と目が合った途端、まるで蛇に睨まれたヒキガエルのように手が全くもって動かなくなる。
あーし「……ねぇヒキオ」
八幡「な、なんでせぅ?」
あーし「…見た?」
八幡「な、何をでせぅ?」
あーし「ミタ?」
家政婦のドラマなら見てたけど…専業主夫の参考になるかなぁ~って?でも違うんだよね?
ダメだ三浦の目のハイライトが消えている。
八幡「い、いや待て、お、俺は悪くない…」
あーし「見たんだ…」
八幡「……」
あーし「責任とって…」
何責任て?セリフが重いよ。
八幡「…無理です」
あーし「じゃあ、あーしの言うこと何でも聞くこと」
あれっ?今、俺無理って言ったよね?
八幡「(…無理です)…承知しました」
あれっ?俺、今承知したって言ったの?ミタさんなの?
なんで思ってる事と違う事…あぁそうか、俺の生存本能が久しぶりに仕事したんですね。
ちょ、パンツ見たくらいで奴隷確定とかどんだけ俺の人権安いんだよ。ねぇ泣いちゃっていい?
その後、試着室に閉じ籠った三浦は出て来るまで5分くらいかかった。落ち込んでいるのか若干涙目だ。意外と乙女…
しかし、こう普段超強気な子の涙目ってのはなかなかいいものですね!
だが意気消沈ながらも律儀に先程の黒い服を着てくれていたので、この時ばかりは歯に衣着せぬ物言いが自慢の俺も、一張羅の衣を歯に着せ、全力で三浦の容姿を褒め称えた。
幸いにもそれが功を奏したのか三浦の機嫌も少し持ち直したようだ。
結局、店を出る時に、三浦はその黒い服をしっかり購入していた。
俺がそれを見てると、あーしが気に入ったから買ったんだと聞いてもいないのに話してきた。
確かによく似合っていたし三浦が言うならまぁそうなんだろう。
因みに俺はというと気に入った服はあるにはあったんだが財布の中身と相談した結果、店員さんにまた来ますと告げ店を出た。うんもう来ない。
眠たいのとキリがいいのでここまでです。
前回投稿から大分間が開きました。
筆が遅くてすいません。
仕事が始まった方がペースが掴めるようです。
前回投稿から大分間が開きました。
筆が遅くてすいません。
仕事が始まった方がペースが掴めるようです。
× × ×
さて奴隷へとジョブチェンジした俺と女王様は店を出て、街を闊歩する。
三浦は気に入った服を買えたせいか機嫌も持ち直したようだ。購入した服は当然の帰結とばかりに俺が運搬している。
ぼっち男子高校生の日常とは180度異なる生活パターンのせいなのか若干、腹が減ってきた。
俺のストマックバグズ(注:腹の虫)からも確かな呻き声が聞こえる。しかしそれは三浦も同様だったようだ。
あーし「なんかお腹空いた」
まるで自宅にいるかのような物言い、でも、おじさんはこんな時恥じらいを見せてくれる方がポイント高いと思うの。
バター入りのお菓子を食べればいいんじゃないか、とは流石に思ってても言わない。言えない。
八幡「じゃあどっか入るか、どこにする?」
俺の意見が通る訳もないので、選択を丸投げする。
俺が問うと、三浦は予め決めていたのか、悩むことなく言う。
あーし「サイゼでいんじゃない」
意外だな、てっきりコイツは洒落たカフェなんぞを指定してくると思ってたんだが。
まぁプロのサイゼリアンを自負する俺的にはポイント高い。
八幡「それならこっからも近いし、いいんじゃないか、道は…こっちだな」
千葉のサイゼの位置ならほとんど網羅している俺だ。最寄りの店までの最短ルートを脳内マップに思い描き、歩き始める。
何食べようかと、レギュラーメニューを思い浮かべながら進んでいると、襟首を勢い良く引っ張られる。
あーし「ちょっとここ寄る」
首に服が食い込み、んげっと変な声が出ながらも、気まぐれ女王の指差した先に目を向けると、そこは代表的なアルファベットの記号が印象的な名前の靴屋だった。
あーし「今のやつ少しヘタってきたから買い換えようと思ってたんだ」
店に入ってそう言いながら向かった先は、意外にもスポーツシューズのコーナーだった。
機能性とデザインを兼ね備えた色とりどりのシューズが、爪先立ちの格好で棚の上に並んでいる。
八幡「…たしか三浦って部活入ってなかったよな?」
レディース、ランニングシューズと表示された箇所で立ち止まった三浦の背中越しに話しかける。
あーし「あー、あーしたまに外走ったりすんの。高校入って運動しなくなってからかな、中学ん時は普通に毎日何キロか走ってたし、そんでかな、今でもたまに走りたくなんの」
そういや三浦は確か中学ん時、女テニで県選抜にもなってたとか由比ヶ浜が言ってたな、あのテニス勝負からもう半年くらい経つのかと懐かしんでいると、三浦も似たような邂逅をしていたようだ。
あーし「そーいや、アンタと前にテニス勝負とかしたっけ、ヒキオなにげに上手くなかった?変な魔球、…たしかオイシー・ミルフィーユとかヒキオ・ストライキ?とか名付けてたよね。マジうけるんだけど…」
八幡「おい待て、俺が名付けたみたいにしてんじゃねぇ、あと微妙に名称も違ってるから」
なんで脳内スイーツみたいになってんだよ、あと俺がストライキしたところで一人だから完全に効果ないからな。
…まてよ、専業主夫だから家事放棄という手でいけるかも、要望はそうだな、家に帰ってくるなりまず暴言を浴びせるのを止めろとかか?
うん、とても要望が通る見込みがない、むしろ即時、家から追い出されてしまうまである。
まて、今一体誰を想像した?
あーし「ヒキオ初心者だったっしょ?もしかして運動できんの?」
八幡「いや、別に普通だ」
まぁ結構運動は出来る方かもしれない、中学の時、スポーツテストでA判定だったし。
あーし「ふーん、でもあーしといい勝負したくらいだから上手いっつってもいんじゃない。何か運動系の部活とかやればよかったのに」
八幡「いや、団体競技とか無理だし」
あーし「あー、…でも個人種目とかならいけんじゃね?テニスだって基本シングルだし」
八幡「ふっ、何も分かっていないな。競技じゃないんだ、部活である以上、団体で行動するだろ、その時点でもう俺には入れないんだ」
あーし「でも今は部活やってんじゃん」
八幡「………」
三浦はおそらくただ思ったことを言っただけだろう。何らかの意図を持って言った訳では無いのは分かっている、しかし俺はその言葉に対し何も言えなかった。
いや頭の中では言い訳の言葉がいくらでも浮かんでいるのだから、あえて言わなかった、の方が正しいのかもしれない。
俺が黙っていると三浦は言葉を言い添える。
あーし「まぁ確かに部活だと、人間関係とかいろいろあるしヒキオには無理かもね」
手に取ったシューズに視線を向けたまま三浦が言ったそのセリフに違和感を抱いた。
何も気付かなければ俺も額面通りの意味としてスルーしていたであろう。
しかし三浦の背中の強張り、手に持った靴の微かな歪みがそこに何かあることを暗に物語っている。
なにより人間関係においておよそ気苦労や気遣いとは無縁そうな女王の言葉だけに、その真意を推し量りたくなる。
八幡「三浦は何で高校じゃあ部活やんなかったんだ? テニス、県選抜までいったんだろ?」
あーし「……いや高校まで来て熱血とか無理っしょ」
しかし、その返事にはついさっきまで含まれていた微かな緊張は既になくなっていた。
半ば諦観めいたその声音は逆に少し三浦らしくない。
さっきとの変化に更なる疑念が頭をよぎる。
……いや、よそう。常に言葉の裏を読もうとするのは俺の悪い癖だ。
またぞろ、その悪癖が顔を出しそうになったとき、三浦が「あ、でも」と思い直したように言い添える。
あーし「隼人がサッカーに打ち込んでる姿は別だから」
そう微笑んで言った三浦は俺とは反対方向にある靴棚へと歩いてく。
もう既に三浦はこの話はお終いとばかりに、ジョギングシューズを幾つか見繕っている。
さほど興味のない人間の内面や過去が分かったところで俺が何とかできる訳でもないしその気もない。
八幡「…さいですか」
俺も興味なさげに返しておいた。
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