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    元スレ巫女「来たれ!異界の勇者よ!」

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    351 = 348 :

                                                          
    国王「……たのむ、カンダタ。  
        ワシもその、何だ……『真理の家』だっけか?の信者にしてくれないかの?」  
        
    カンダタ「(腕を組んで)  
          う~ん、どうしようかな。  
          (チラリ、と国王さまの方を一瞥する)  
          支部長、最近忙しいって言ってたしなあ」  
       
    国王「(カンダタにすがりつくように)  
        お願いだカンダタ!早く住民登録できないと、今月分の生活保護費が!」  
        
    カンダタ「(思い悩んだ風を装い)  
          じゃあ、国王さま、とりあえず支部長に相談するから、  
          面談料として別途五万円渡してくれないか?」  
        
    国王「ご、五万円だと!そんな金、今ないわ!」  
        
    カンダタ「じゃあ、この話は無かったということで……」  
        
    国王「ちょっと待った!  
        ……今、本当に手持ちが無いんだ。  
        後で返済するから、その分を立て替えてくれないか?」  
        
    カンダタ「国王さま、構わないけど、俺の場合、金利はトゴだぜ?」  
        
    国王「背にハラは変えられないって言うじゃないか。  
        大丈夫、生活保護費もらったら、いの一番に返済するから」  
        
    カンダタ「……本当かい?国王さま」  
        
    国王「ああ、本当だとも。  
        だから頼む。  
        早くその、何だっけか?『真理の家』ってところに連れてってくれ!」  
        
    カンダタ「(意を決したような顔を作り)  
          よし分かった。  
          じゃあこれから行こうや!」  
        
    国王とカンダタ、連れ立って怪しげなビルに入ってゆく(暗転)  

    352 = 348 :

        
     ◆◇◆◇◆ 勇者さまのご自宅 ◆◇◆◇◆   
        
    食卓で家族と一緒に夕食を食べている勇者さま。  
    食卓には父親と母親、そして勇者さま自身の三人がいる。  
    母親は手早く食事を終えると、空いた食器を盆にのせ、台所に運ぶ。  
        
    母親「(台所で洗い物をしながら、勇者さまに話しかける)  
        あんたも来年就職なんだから、  
        いつまでも漫画だとかアニメだとかやめなさい」  
        
    父親「そうだぞ、母さんの言うとおりだ。  
        お前もそろそろ進路を決める時期に来ているんだからな」  
        
    母親「ほら、同級生だった健ちゃんいたでしょ?  
        あの子なんか、あんたと違ってちゃんと現役で早稲田大学に入って、  
        去年にもう伊勢丹ホールディングスに決まったのよね」  
        
    父親「(ビールをすすりながら)  
        まったく、小学校の時は一緒に遊んでたというのに、どうしてこうも差がついてしまったんだろうな」  
        
    母親「……そうよねえ、この子もやればできる子なのにねえ」  
        
    勇者さまは食事をしながら、母親と父親の話を聞いている。  
    それは受難だった。両親の放つ一言一言が勇者さまの心にぶすぶす突き刺さる。  
        
    父親「おい、聞いているのか勇者さま。お前も今年はちゃんとしなきゃ駄目なんだぞ!」  
        
    母親「父さん、そんなにきつい言い方しちゃかわいそうよ。  
        勇者さまは勇者さまらしく、自分のやりたいことをやれればそれで……」  
        
    父親「(母親の言葉を遮るように)だからお前は甘いんだよ。  
        やりたいことをやってメシが喰えるほど世の中は甘くないんだ。  
        みんな色々と我慢をして、苦労しながら仕事をしているんだ。  
        だいたいお前が甘やかすから、勇者さまもこんな風に……」  
        
    母親「(今度は父親の言葉を遮り)  
        それはないでしょう!  
        あなたはいつもいつも仕事が忙しい忙しい、って言って、  
        育児や子育ては全部私まかせで、何もしなかったじゃないの。  
        この子の塾や習い事とかそういうの、ちゃんとあなたは見てくれたの?」  
        

    353 = 348 :

        
    父親「何を言っているんだ!  
        今こうしてメシが食べれるのも、俺が外で一生懸命働いて給料を稼いでいるからじゃないか!  
        第一見てみろ、この子はロクに勉強もせずに第一志望を落とし、国立も駄目で六大学にも引っかからず、  
        大学に入ったはいいが、アニメの本みたいのにうつつを抜かしたり、夜遅くまでゲームやってたり、  
        パソコン弄って遊んでいたり、  
        (勇者さまの方を振り返り)  
        お前もお前だ!来年はもう社会人なんだぞ!  
        いい加減にファンタジーだっけか?そんな子供じみた下らないことばかりやってないで、  
        そろそろ自立する自覚を持て自覚を!」  
        
    母親「(父の方に向かって)  
        あなた、ちょっと言いすぎよ!  
        この子だって色々考えてるはずよ。  
        自分の将来のこととか、どういう仕事をしたいとか!  
        (勇者さまの方を振り返って)  
        ねえ?勇者さま。これからちゃんと就活するものね?」  
        
    父親「今からだって遅いくらいだ。  
        第一、まともに正社員になるのだって難しいご時勢なんだぞ?  
        なぜ今までちゃんと勉強してこなかったんだ?  
        お前の同級生たちだって、とっくにリクルート活動とかしているだろうが?あ?」  
        
    ここで勇者さまはふと、先日、大学で行われていた就職ガイダンスのことを思いだした。  
    現在の新卒就職状況は大変厳しい状態になっているということや、  
    新卒で正社員になれなければ、おそらく非正規雇用まっしぐらだということや、  
    できれば大学時代にTOEFLや簿記一級、基礎的なプログラミングの資格などを取っておくべきだったとか、  
    そんな話をされたのを思い出し、胸が痛んだ。  
        
    もちろん勇者さまにはそんなものは何ひとつとしてない。  
    あるのはファンタジーを数ヶ月間書き続ける執念と、ラノベやエロゲについてのマニアックな知識だ。  
    その辺の分野ならLv.50くらいはあるはずだ。  
    もちろん一人前の社会人としてのレベルは、せいぜいLv.2か3くらい。  
    正直自立して生活できる能力など、殆ど無い。  
        
    そもそも勇者さまはFラン大学文系卒のヲタでしかなく、実社会で役に立つ知識も技能もない。   
    そんな卑小な自分から逃げるために、ますますファンタジーという仮構の妄想に世界にはまってゆく。  
    そんな実に寂しい青春の日々を過ごしてきたのだった。   
        

    354 = 348 :

        
    父親「……おい、聞いているのか?」  
        
    この時だった。  
    勇者さまの中で、何かが弾けた。  
        
    勇者さま「(うつむきながら小声で)……うっせーんだよ」  
        
    父親「あ?何だって?」  
        
    勇者さま「(今度は顔を上げ、睨みつけながら絶叫)……うっせーんだよ!てめえら!!」   
        
    突然、怒りだした勇者さまに父親と母親は驚く。  
    驚愕の目で勇者さまを見つめる両親の目を感じ取りながら、勇者さまはなおも叫ぶ。  
        
    勇者さま「何だよ!進路とか就職とかさ!何だって言うんだよ!  
          そんなのもうどうでもいいじゃんかよ!  
          てめえらで勝手に俺みたいの産んでおいて、好き放題言ってんじゃねえよ!  
          ふざけんなよ!」  
        
    わが子の内弁慶ぶりに狼狽し、右往左往する両親たち。  
    そんな勇者さまに、母親は何とか一言言い返す。  
        
    母親「(少し目に涙を浮かべ)  
        そんなこと言ったって、私たちはあなたのことを心配して……」  
        
    「心配」という言葉が、勇者さまの心に突き刺さる。  
    その痛みが、更に勇者さまの甘えを暴走させる。  
        
    勇者さま「心配なんてしなくていいよ!  
          どうせ俺のことなんでどうでもいいんだろが!」  
      
    そう叫んだ勇者さまは、そのまま席を立つと足音をドカドカと踏み鳴らしながら階段を上がり、  
    自分の部屋に逃げ込むと、思い切り叩きつけるようにドアを閉めた。  
        

    355 = 348 :

        
    部屋の中には、勇者さまの現実逃避の世界が広がっていた。   
        
    本棚にはラノベ……電撃、富士見ファンタジア、スニーカー文庫などなど。   
    それらの表紙には、パンツ見えそうなミニスカの美少女キャラが、実にカラフルに描かれていた。  
    実は最近、ハヤカワや創元文庫まで読むようになり、SFや幻想文学、それに伝奇モノにもちょっと興味津々。  
        
    そしてバリバリ童貞の勇者さまのオナニーのおかずは、もちろんエロゲ。  
    パソコンには海外サイトからダウンロードしたAVが増設HDDにみっちりと詰まっている。   
        
    ファンタジーという名の現実逃避世界で、勇者さまはキモヲタニートの王道をひた走っていた。   
    ここは天国なのだ。「現実」さえ押し寄せなければ。   
    勇者さまにとって、卑小で情けない自分自身と向き合わざるを得ない「現実」世界。  
    それは悪夢であり、恐怖の世界だった。この、虚構に満ちたファンタジー天国を打ち崩す、恐怖そのもの。  
        
    先ほどの出来事を思い出した。  
    両親の言葉はうざかったが、それでもいよいよ自立しなきゃならないことはわかっていた。  
    だけど、この心地よい現実逃避空間のぬるま湯から抜け出すことができなかった。  
    すると、勇者さまの中で、もう一人の自分が語りかけてきた。  
        
    もう一人の自分「……おい、勇者さまよ。  
               お前さ、今のままでいいの?  
               こんな下らんRPG崩れのファンタジーもどきに何時までも浸ってていいんかよ?」  
        
    勇者さま「……(返す言葉が見つからない)」  
        
    もう一人の自分「勇者さまよ。お前自分の本棚見てみろよ。ほら」  
        

    356 = 348 :

        
    もう一人の自分が指差す本棚には、先ほど説明したとおり、ラノベと漫画とアニメのフィギュアが並んでいる。  
    それはそれはとても極彩色でカラフルな彩りだった。現実ではありえないような、そんな色彩で彩られていた。  
    そこには数多くの美少女たちが描かれていた。髪の毛の色が赤だったり青だったり、黄色だったり薄紫だったり。  
    そんな美少女たちが実に短い制服のスカートをはためかせ、  
    現実じゃまず見れない不思議なポーズで歪んだセックスアピールをしていた。  
        
    数百円で現実逃避をさせてくれる、空想世界の恋人たちだ。  
    現実の女たちと違い、決して勇者さまを「キモい」とか言って無視したりはしない美少女たち。  
    小学校時代からずっと、冴えない、目立たない、うだつのあがらない、ブサイクな子供だった勇者さま。  
    そんな勇者さまに安らぎを与えてくれた少女たち。  
        
    もう一人の自分「なあ、あんな下らない慰みモノばっかじゃなくてさ、  
               なんでお前は就活用の企業研究本とか無いんだ?  
               お前さ、まともなとこに就職できねえと、こういう現実逃避もできなくなるんだぜ」  
        
    勇者さまは目を逸らせた。  
    「進路決定」「就職」という言葉が、勇者さまの甘き夢の世界を打ち崩してゆく。  
        
    もう一人の自分「会社訪問とかさ、そういうのはじめなきゃならない時期だろ?  
               お前いいの?そうやってファンタジーみたいのに興じて現実から逃げ回ってさ」  
        
    勇者さま「(うつむきながら)……うるさい、消えろ」  
        
    もう一人の自分「は?お前、また逃げるのかよ」  
        
    勇者さま「うるせえんだよっ!消えうせろ!」  
        
    近所中に響き渡るんじゃないかという大声で、勇者さま叫んだ。  
    それと同時に、もう一人の自分はまるで霞のごとく掻き消える。  
        
    それから一時間後。  
        
    勇者さまはベッドの上で、ラノベを読んでいた。  
    現実から目を背け、甘き夢の世界でファンタジーを紡いでいる。  
        
    そこでは実に都合のよい魔王と巫女と勇者さまが、  
    実に都合よく予定調和なイベントをひたすら繰り広げ、そして無益に終わってゆくのだ。  
    そこでは何も変わらず、何の実りもない。  
        
    今日もまた、ただ無駄に時間だけが過ぎていく(暗転)  
        

    357 :

    おーおー、荒れとるね

    358 :

    いや、むしろ正しい方向に行ってるだろ。

    359 :

    マオとオルテガはハローワークに行った。

    363 = 361 :

    ……十分後、マオはビルから出てきた。  
    魔王である自分をその場で不採用と通告する無礼に、マオの両肩は震えていた。  
      
    マオはふと考えた。  
    確か自分は巫女によってご都合主義の劣化ファンタジー世界に召喚されたはず。  
    だが、いつのまにか、さらにファンタジーな世界に飛ばされている。  
      
    ここではあのご都合主義の劣化ドラクエファンタジー世界で使えたはずの魔力が全く使えなくなっていた。  
    呪文を唱えたら、属性魔法やら回復魔法やら、そういった便利な魔法がたくさん使えたのだ。  
    なのになぜかこの世界では、マオはただの失業者に成り果てていた。  
    31歳という、もはや若いとはとてもいえない年齢の、職歴学歴甲斐性無しの、  
    脳味噌がファンタジーな一人の冴えない男に。  
      
    果たして今まで自分がいた世界は、幻だったのではないだろうか?  
      
    この世界には国王も巫女もどこにもいない。  
    教会より神授された王権ではなく、ここにあるのは立憲民主制に基づく統治体制だった。  
    魔法の代わりにあるのは、電気を基にした様々なテクノロジー。  
    そしてこの世界を支配しているのは、魔王でも神でもなく、法秩序と資本主義。  
    そんな世界でマオは、最底辺の弱者として生まれ変わったのだった。  
      
    ……いや、と、マオは思った。  
    よく考えてみれば、自分は>>1そのものじゃないかと。  
    >>1である自分はキモヲタで女にモテず、学生時代からゲームやラノベのファンタジーに逃げ込んでいたじゃないか。  
    二次元キャラの美少女を想像しながら、貧弱なちんぽをしごいて情欲を処理していたじゃないか。  
      
    現実社会では、とるに足らない存在だったマオこと>>1は、  
    そんな卑小で冴えない自分から目を背けるために、自らを魔王と称し、  
    >>1から書き連ねたような青臭いファンタジー世界に現実逃避し続けてきたではないか。  
    そうやって自分をごまかし、やり過ごし、でも現実の自分は全く成長することなく、  
    ドラクエのレベルアップとオナニーにふける時間だけが増してゆき、  
    強大な力を持つ魔王どころか、相変らず女にモテない、つまらない無職のキモヲタ男のままではないか。  
      
    マオは涙した。  
      
    自分の将来を思うと、不安と恐怖で涙があふれ出てきた。  
    この先、どんなに生きても、あの妄想の中で己が描き続けてきたファンタジーな世界など、決して来ない。  
    そのことを思うと泣かずにはいられなかった。  
    そして現実逃避し続けられたあの日々は、本当に幸せだったんだな、とマオは悟った。  
      
    今日も日が暮れてゆく。  
      

    364 :

    現実社会で一番生活力ないのは巫女だろうな
    デリヘルくらいしか思い当たらん

    365 :

    「来たれ!異界の勇者よ!」
    巫女さまは客の射精寸前のチンチンを手コキしながら叫んだ。

    369 :

    おそらく愛が足りないんだな

    370 :

    まだあったのか、このスレ。

    371 :

    あるだろ普通に
    アホかお前

    372 :

    マオとオルテガは須磨海岸に行った。
    目的はナンパだ。
    真夏のビーチエンジェルたちとのねっとり甘いアバンチュール。
    その期待に股間を熱くさせていた。

    373 :

    そこでマオとオルテガは人生初のナンパを敢行しようと意気込んでいた。
    なにせ二人はこの日のためにホットドックプレス「ナンパからセックスに持ち込む方法」を入念に読んできたのだ。
    ようやく到着。マオとオルテガと僕たちは海に出た。マオはすでに勃起している。
    砂浜に一歩踏み出してみると、熱くなった砂が足の裏に焼きついた。
    二人は「熱い! 熱い!」と言いながら爪先立ちで移動する。
    海パンがテントのようになったキモオタ二人が爪先立ちで歩く姿は文字通り変質者である。
    どうやら二人は目覚めてしまったようだ。


    374 :

    いや、目覚めてはいないだろ
    ただメタっぽい設定とかってもう氾濫しすぎてて今更って感じ

    375 :

    マオさまはシフト勤務してんじゃなかったっけ?

    376 :

    マオとオルテガは砂浜にしゃがみこんだ。
    二人は手と手を取り合い、互いの目を見つめ合う。
    真夏の日差しの下で二人のキモオタが見つめあう姿は文字通り変態である。
    もちろん二人の海パンは股間部分が思い切りテントを張っている。
    マオはオルテガに、オルテガはマオに欲情しているのだ。
    二人は目覚めてしまったのだ。
    ジリジリと照りつける太陽の下で、二人はもう二時間も微動だにせず見つめ合っていた。
    周囲の海水浴客はそんな彼らを薄気味悪そうに見ていた。
    だがマオもオルテガも全く気にしていなかった。
    そして太陽が西に傾いたころ、二人は互いの体を抱きしめあった。
    抱きしめあった二人はゆっくりと顔を近づけてキスをした。
    その瞬間、神戸の街は大爆発した。
    夕闇の空に突然巨大なドラゴンが現れ、そのドラゴンが放ったフレアで一瞬で街が消滅してしまったのだ。
    だがマオとオルテガは気付かない。
    二人はキスしたまま砂浜に倒れこみ、そのまま互いの体を貪りあった。
    そして被災してきた神戸市民たちは彼らを発見し、手にしていた猟銃で二人を射殺した。
    こうして神戸の町に平和が戻ったのだ。

    377 :

    たしかに神戸の方がファンタジーの舞台にふさわしい気がする
    そして東へ向かって伏魔殿こと大阪城へ

    378 :

    やったああああああああああああああああああ!!

    379 :

    おやおや、何がうれしいのだ?

    そんなことよりも勇者よ、君は今、岐路に立たされているのだよ。
    神戸の街に平和が戻っても、それはあくまで神戸市街地からせいぜい西宮の夙川くらいまでなのだ。
    その先の尼崎は未だにヨハネスブルグ状態。尼崎市民はみな武装し、毎日のように市街戦が行われているような状況。
    しかもやっかいなことに、日が沈むと庄下川から水棲の眷属たちが沸いて出てきて市民たちを襲うのだ。
    彼らには人間の持つ通常兵器は効きにくい。もう少し破壊力のある兵器でなければ完全に殺すことはできないのだ。

    さて、尼崎パルチザンの連中は尼崎の火力発電所あたりを占拠し、いまだに市軍に対して抵抗を繰り広げている。
    彼らは海上より密輸された豊富な武器や食料を背景に阪急尼崎駅前付近までしばしば威力偵察を行っており、市軍に対して毎日のように攻撃を加えているのだ。
    市民たちの中にも尼崎パルチザンに対して協力的なシンパも多く、市軍による粛清を行っても地下活動にいそしむ始末。
    先日も尼崎パルチザンに内通していた市役所の下級職員が阪急尼崎駅前の中央公園で公開処刑されたのは記憶に新しい。
    市行政本部の内部情報、とりわけ市民の個人情報や尼崎市軍の年次戦略要綱の資料などをパルチザン側に渡した罪に問われたのだ。
    その職員は噴水台の上に設えた処刑台の上にくくりつけられ、市軍憲兵隊の銃殺隊によって銃殺の憂き目にあった。
    その後、その市職員の死体は庄下川の川べりに吊るされ、夜な夜な出没する水棲眷属に食い散らかされた。

    勇者よ、君の心の故郷である尼崎がこのような運命を辿っているというのに、何ゆえ君は埼玉県川口市の戸田公園で遊び呆けているのだ?
    君は今こそたたなければならない。地獄と化した尼崎を開放し、そして更に東へと向かい、難波に救う魔王を打ち倒さねばならないのだ。
    それは君にしかできない仕事だ。もちろん今のヒモ生活も悪くないだろう。なにせ女のマンションで一日中ゴロゴロして、たまにパチンコ行って、酒飲んで、
    それで女を夜な夜な満足させてやれば気楽に暮らせるのだからな。
    だがそれでいいのか?君は君自身の青春をそんな無益に浪費してもいいのか?
    君は勇者なのだ。尼崎を救い、大阪帝国を破壊するために、今こそ君が立ち上がらなければならないのだ。

    381 :

    キッチンはキチンとしていた

    382 :

    チンチンもキチンとしていた

    383 :

    だが勃起すると右曲がりだ

    384 :

    右曲がりのチンチンに導かれるように、勇者さまはトイレに向かった。

    385 :

    トイレの扉を開けると、そこに真由美がいた。真由美は死んでいた。
    狭いトイレの中で便座に腰掛け、壁に寄りかかるような姿勢で。
    用を足そうとしたのだろうか、足首のところに勇者さまも見慣れている真由美の下着が丸まって絡んでいる。
    そして水色の寝間着(真由美はスウェットの上下姿で寝る習慣があった。本人が言うには「その方が楽だから」)は、
    どす黒い血で染まっており、あふれ出た血は真由美自身が座っている便器の中へポタポタの流れ落ちている。
    その血の出所は、真由美の心臓の辺りだった。そこにはステンレス製の三徳包丁の柄が突き立っていた。
    そしてその顔は、凄まじい形相を顕わにしていた。大きく開かれた口からは、まるで別の生き物のような舌がデロリとはみ出ていた。
    目はカッと見開かれており、眼球が反転して白目を剥き出しにしている。
    端正な真由美の顔が、それが本人とは俄かに信じがたいほどに歪んでいる。

    勇者さまはトイレのドアノブを握ったまま、そこで立ちすくんでいた。
    目の前の光景が信じられなかった。およそ現実とは思えなかった。
    突然、今まで続いてきた日常から乖離したその状況を前に、勇者さまの思考は完全に制止してしまっていた。
    おそらく数分、いや、それ以上の時間、そのままの姿勢で真由美の死体を見続けていただろうか?
    勇者さまは激しい尿意を覚え、我に返った。
    まず小便をしなければ、と勇者さまは思った。だがその小便をするトイレは、今、真由美の死体が占拠しているのだ。
    ふと、事件現場は警察がくるまでそのまま保存しなきゃいけないんだよな、ということを思い出す。

    というか、そもそもこれは事件なのだろうか?真由美は殺された?
    とすれば誰が?どこのどいつが真由美を殺したんだ?
    まさか俺?そんなバカな。俺はついさっきまで爆睡していたんだぞ!

    そんなことを思っている間にも、勇者さまの尿意は激しさを増してゆく。
    早く俺を楽にしてくれ!と、膀胱が勇者さまに訴えてくる。
    とはいえ、便器は今、真由美が・・・

    「くそっ!」
    勇者さまは洗面台の下の掃除用のバケツを引っ張り出した。
    そんなことをしている間も、尿は出る寸前まできている。
    勇者さまはバケツの中身をその辺にぶちまけ(昨日ぞうきんで搾った水が僅かに残っており、それが床にバチャ!とこぼれた)
    ジャージ(勇者さまの寝間着)とパンツ(ボクサーショーツタイプ)をズリ降ろし、ちんぽを引っ張りだす。
    引っ張り出したその瞬間に、尿が迸った。その一部が勇者さまの手にかかり、勇者さまは「くそっ!」と再び毒づく。
    尿は黄金色の放物線を宙に描き、ジョロジョロと音を立てながらバケツに満ちてゆく。
    よほど溜まっていたのだろうか、次から次へと尿が迸り出て尽きる様子がない。
    尿が放つツンとしたアンモニア臭が、勇者さまの鼻を突く。
    もちろん勇者さまのちんぽは、右曲がりだ。

    386 :

    右曲がりな上に、どす黒くカリ高なのが自慢だ

    387 :

    勇者さまのカリ高どす黒右曲がりの巨大ちんぽは、まさしく女殺しの聖剣といえよう

    388 :

    まさか勇者さま、その女殺しの聖剣で?

    389 :

    永沢勇が目覚めると、目の前では現代文の授業が行われていた。
    柔らかな初夏の風が開かれた窓から教室に吹き込む。
    その潤いを含んだ風が、勇者の頬を優しく撫ぜた。

    目の前の席では、笠木邦子がノートに書き込みをしていた。
    ブラウスの上から、邦子のブラの紐が透けて見える。
    勇はそれをしばらく凝視した。
    邦子は比較的豊満な乳房を持っている。
    こんな細い紐であの豊満な乳房を支えてるのかと、勇は少し驚く。

    隣の席では、山崎和彦が同じくノートを広げ、黒板の板書を筆記していた。
    和彦は私大の理系を目指しているため、現代文はそれほど重要じゃないはずだ。
    おそらく指定校推薦枠を狙っているのだろう。そう勇は思った。

    教師の佐々岡孝治は、四十過ぎの中肉中背の男だ。眼鏡を掛け、幾分薄くなった髪を丁寧に撫で付けている。
    どこか草臥れた感じのする風体だが、授業に臨む態度はとても精力的で、よく響き渡る声で朗々と話す。
    勇は小さく欠伸をし、軽く目をこすると、広げた教科書に目を落とした。

    いつも通りの、いつもの生活だった。
    おそらく今後も変わることのない、平和で平凡な生活。
    勇は何時しか、佐々岡の授業に集中していた。

     ◆

    坂上陽一はトイレにいた。

    トイレの個室の、洋式便器の便座の上に腰かけている。
    個室の扉は開いたままだった。
    通りかかった教師がトイレを覗きこんだとき、個室の扉が閉まっていたら不審に思うかもしれないからだ。
    今は授業中だ。陽一のクラス、すなわち二年六組では、現在佐々岡孝治による現代文の授業が行われている。

    陽一は震えていた。昨日の放課後に自分が見たことが、本当だったのだろうか、と改めて思った。
    嘘であってほしい、と思った。昨晩はそれでずっと震えていたのだ。

    昨日の放課後、陽一は確かに見たのだ。
    佐々岡孝治が、二年六組の教室で死んでいたのを。

    昨日の放課後、日も沈み、間もなく学校全体が閉まる午後六時過ぎ。
    陽一は急いで教室に忘れたケータイを取りに戻ったときだった。
    二年六組のある二号館はすでに無人であり、わずかな照明だけが廊下を点々と照らしていた。
    普段の活気あふれる学校とは思えないほどに、そこは静まり返り、不気味だった。

    陽一は少しおびえながら階段をあがってゆく。
    なんか気味が悪いな、と思いつつ、足取りは軽かった。
    実は陽一は、最近バレー部のマネージャー、高木京子と付き合い始めていた。
    部活の終わりに、京子からメール見た?と尋ねられ、
    カバンを探したとき、ケータイを教室に忘れたことを思い出したのだ。

    390 = 389 :

    教室のある三階に上がる。もうそこには誰もいなかった。
    外もすでに薄暗く、まだ練習を続けている野球部の連中が上げる声が、遠くからかすかに聞こえるだけだ。
    さすがに不気味だった。陽一は窓の外をなんとなく見ながら廊下を進む。
    窓の外には、中庭と三号館が見える。三号館もすでに真っ暗だった。

    ふと、陽一は足を止めた。二年六組の教室から、何か物音が聞こえた気がしたのだ。
    それは何かのうめき声のように聞こえた。それと、数人の人間の、ささやくような声。
    陽一は息をひそめる。何かの勘違いではないか、と思った。
    だが、確かに物音は聞こえた。ささやき声、何かを詠唱するような、そんな調子の声?
    うめき声はまた、くぐもった悲鳴のようにも思えた。苦悶したようなそんな声だった。

    教室に誰か残っているのか?と陽一は思った。だとしたらそれはいったい誰だろう。こんな時間に。
    こんな時間に学校に残っているのは、教職員を除けば練習熱心な野球部やラグビー部くらいのはずだ。
    陽一はゆっくりと前へ進んだ。足音を立てないように。
    何かまずいような気がしたのだ。嫌な予感というやつが。
    このまま進んだらやっかいなことが起こりそうな、そんな気持ちがした。

    よく注意してみると、教室の廊下側の窓には、内側から厚手のカーテンらしきものがかかっている。
    そんなもの、二年六組の教室にはなかったはずだ。だとしたら取り付けたのだろうか?
    そしてそのカーテンのわずかな隙間から、光が漏れているのが見えた。
    しかも赤い、揺らめくような光だ。カーテンの隙間からか細くだが、まるでたなびくように揺らいでいる。

    何かの悪戯だろうか、と陽一は思った。
    さっき体育館から二号館を見たとき、そんな明かりのともってる教室などなかった。
    照明の落とされた教室の窓だけしかなかったはずだ。

    二年四組の教室に差し掛かった。
    もうその時には、教室から漏れ聞こえる物音や声は、否定できないものになっていた。
    明らかに、六組の教室から不気味な声が聞こえる。しかもそれは一人ではない。
    何人もの人間の声が、ささやくような、呻くような、くぐもった声が発せられているのだ。

    391 = 389 :

    陽一は、引き返そうかとも思った。
    ケータイは教室の自分の机の中に入っている。確かにないと不便だが、明日学校に来れば戻ってくるのだ。
    自分のクラスなんだし、誰かに盗まれるとも思えないし、机の中にある以上、誰かに覗かれる心配も、まあないだろう。

    だが、なぜだろうか、陽一はそのままゆっくりと進んだ。
    もしかしたら誰かのたちの悪い悪戯なのかもしれない。
    いや、ひょっとしたら誰かが教室でセックスしているかもしれない。
    そう思った。そっちの方がありそうだった。

    陽一の頭の中で、では誰と誰が教室でヤッてるだろうかと想像した。
    二年六組の連中で彼女持ちのやつといえば、何人もいた。

    クラスの中で付き合っているのは、小暮芳人と松田良美、中畑凱斗と渡瀬ミキ、
    いや、こいつらはそんなことやりそうもない。

    他のクラスの女子を引っ張り込んでる可能性はある。
    永沢勇あたりは、前に二股バレてえらいことになってたが、最近またあちこちに手を出している、って話だ。

    陽一は、永沢勇のことを思い出し、少し歯噛みした。
    陽一が高校に入って、いいな、と思っていた四組の駒田涼子をあっという間に落としたのが勇だったからだ。
    後に他校の女子とも付き合っていたのが発覚し、一度は別れたらしい。
    だが、最近また仲良くなっている、と聞く。そういえば先日も廊下で仲良さげに話しているのを見た。
    まさか勇が涼子を連れ込んで、と陽一は思った。勇ならそれくらい大胆なことをやりそうだったからだ。

    もしそうなら、覗いて見てやれ、と陽一は思った。
    涼子はかなりの美人で、スラリとしてスタイルもいい、それが勇にもてあそばれてるのを見るのは癪だが。
    どうせなら写メでも撮ってやろうか、と思ったが、そのケータイは今、教室の自分の机の中だった。
    チッ、と陽一は軽く舌打ちした。

    二年五組の教室を過ぎると、もうそこは二年六組だ。
    教室から漏れ聞こえてくる声は、もうはっきりととらえることができた。
    セックスの時の声にしては、確かに変だな、と陽一もさすがに気づいた。

    扉の前まで来た。
    今ここで開けると、まずいものに鉢合わせしてしまいそうだ、と陽一は思った。
    ふと、先ほどの廊下側の窓にあるカーテンの隙間の方を見た。
    そこからは細いオレンジ色の光が、廊下に射している。
    そこから覗いてやろう、と陽一は移動した。

    394 :

    懐かしいな

    396 :

    勇者さまって、バカなんだな

    397 :

    中世ファンタジー物って、今やるとさすがに恥ずかしいよな


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