元スレ巫女「来たれ!異界の勇者よ!」
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101 :
養生も執筆も食事も入浴も、全力でやるんだぞ
102 = 100 :
サンクス、
少なくとも、ノアニール編は終わらせたいので結局書いた、
風邪でバグっている分は大目に見てください。
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カンダタがキラーマシンのライトにルビーを
翳すと、赤く輝く。
カンダタ「すっげぇ…本物だ…
ガラスなんかじゃねぇ…このサイズで本物のルビーだ」
マオ「どれどれ?」
マオがカンダタの持つルビーを見ようとルビーに顔を近づけるが。
カンダタ「あぶねぇ!」
カンダタはルビーを素早くマオから離す。
カンダタ「あまり顔を近づけるな…
呪いが掛かっているらしく、体がマヒして動かなく
なっちまうぞ?」
カンダタ「なぁ?こいつ返しちまうのか?」
マオ「ネコババする気かよ」
ルビーと共に置かれた手紙を手に取ってみると、
やはり遺書のようだ、空気中の水分を吸って、
文字がやや滲んでいるが読めない訳でもない。
103 = 100 :
────お母様 先立つ不孝を お許し下さい。
私達はエルフと人間、この世で許されぬ愛なら
せめて天国で一緒になります────。
アン
カンダタ「うおおおおおぉぉぉぉおぅ…おうおう!」
そして…カンダタが号泣。
マオ「やかましい奴だ…ん?」
カンダタ「………………なんでぇ」
マオ「見てみろ」
カンダタが水面を覗き込んでみると、人型の
ようなものが水中に沈んでいるようなのが見て取れる。
どうやら、自殺したエルフの娘と人間の男らしい。
カンダタ「ひえぇ…
ナンマンダブ!…ナンマンダブ!」
マオ「よりにもよって入水自殺か
浮かんでこない辺り、石でも抱えて飛び込んだみたいだな」
遺書とルビーを袋に入れて、キラーマシンに再び乗り込む、
ここでの用事は済んだ、さっさと帰ろう。
カンダタ「仏さんはどうするんだよ?」
マオ「天国とやらで一緒になるのがお望みなんだろ?
このまま死体を持ち帰っても、別々に埋められるのが
オチだ」
104 :
◆◇◆◇ ノアニール半島:エルフの村:女王の家 ◆◇◆◇
再びエルフの村に戻るが、エルフ達の態度は冷ややかだった
他のエルフ達に関しては敵意や武器を向ける者も居たが、
実際に攻撃して来る者は居なかった。
エルフの女王「また、貴方達ですか、まだ何か言い足り無いのですか?」
うんざりしたような口調で言葉を吐き棄てる女王、
道具袋から夢見るルビーを取り出し、テーブルの上に置くと
女王の顔色が変わった。
カンダタ(あぁぁ……さようなら、俺のルビー)
ついでに言うならば、未練たらたらなカンダタの顔も
印象的だった。
エルフの女王「これは!夢見るルビー!
一体どこでコレを!?アンは一体何処に」
マオ「それについては、お前に手紙を預かってきている」
マオが遺書を取り出すと、女王は奪い取るかのように手紙を
受け取り素早く目を通すと、見開かれた瞳から大粒の涙が
零れ落ちる。
エルフの女王「これは…確かにアンの字…
そんな…なんで…」
エルフの側近「女王様…お気を確かに」
エルフの女王「一体…なんでこんな事を…
可哀そうなアン、人間に騙された上に
殺されてしまうなんて」
105 = 104 :
マオ「殺したのはお前だ」
───パァン!!
乾いた音が室内に響き、音が戻ると同時に
マオは女王に頬を叩かれた事を自覚する。
エルフの女王「アンは貴方達人間に騙されたんです!」
マオ「…………そういう思い込みが
お前の娘を殺したんだ」
エルフの女王「…………………っ!」
マオ「それでもアンタ達が人間を避けようが、嫌おうが
私には知った事ではないが」
マオ「これで何も変わらないとしたら、
無駄死にだったって事だろうな、お前の娘も
人間の男も」
カンダタ(…………よ…容赦ねぇ~)
女王に背を向けて部屋を出ようとするが。
エルフの女王「………待ちなさい」
女王に呼び止められ、棚から袋が取り出され、
机の上に置かれる。
エルフの女王「これを…」
マオ「これは…一体?」
106 = 104 :
袋を手に取り、開けてみると金色の粉のようなものが
ぎっしりと詰まっている。
まるで金粉のような綺麗な細かい砂のようなもの。
エルフの女王「目覚めの粉です、これがあれば
ノアニール村の人達がかかった呪いが解けるでしょう」
マオは女王を見るが、首を横に振り袋を受け取らずに
玄関から出て行く。
カンダタ「オイ!貰って行かなくて良いのかよ?」
マオ「それはお前が自分で始末を付けろ
娘達への償いは、お前がやるべきだ」
◆◇◆◇ ノアニール~カザーブへの街道 ◆◇◆◇
空が白み始めてきた、そろそろ夜が
明けようとしているらしい。
キラーマシンの肩の上に乗ったカンダタが、
ぼやいていた。
カンダタ「あー…もったいなかったよなぁ…
あの馬鹿でかいルビー」
マオ「まだ、未練があったのか…」
107 = 104 :
カンダタ「だってよ!単体であんな馬鹿でかいルビー
売り飛ばせば100万ゴールドは楽に手に入ったぜ?」
マオ「じゃぁ、今からでも盗りに行ってくるんだな」
カンダタ「いくら盗賊でも、
ンなだっせぇ真似出来るかよ」
マオ「……………お…?」
キラーマシンのバックカメラが
不自然な光をとらえる。
マオはキラーマシンを停止させ、不自然な光が
空に立ち上る方へとカメラを向ける。
空高く…金色の光の柱が立ち上り、
金色に輝く粉のようなものが、空から降り注いでる。
カンダタ「アレは…ノアニールの方じゃねぇか!」
マオ「………………目覚めの粉。」
カンダタ「これで、村の連中も目を覚ますな
ったく報われねぇよなぁ、結局タダ働きじゃねぇか」
マオ「今からノアニールに行って、
カンダタがやりましたって、大声で騒いでくるんだな
上手くすると、村長から謝礼ぐらいもらえるかもな」
カンダタ「そんな格好悪い真似出来るかよ」
マオは再びノアニールに背を向けてキラーマシン動かす、
オルテガの待つであろうカザーブ村へと。
108 = 104 :
締めが微妙だったけど、
やっと、ノアニールの話が終わった、
次はイシスとアッサラームの予定
アッサラームと言えば、商人とぱふぱふの
街・・当時、ぱふぱふの意味知らなかったなぁ
で、例によって全然番号が消化できていない。
まだ>>107
それでは薬飲んで、風呂入って寝ます
109 :
乙
自分のぺースでよいから続けろください
110 = 104 :
サンクス、風邪が悪化した(ぇ
でも、折角(?)風邪ひいたので、風邪をネタに
1話書く
111 = 104 :
とは言え、作中の症状程
深刻な訳でも無いのだが。
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ノアニールから、カザーブ村へと向かったが
オルテガは戻っておらず、そのままキラーマシンに
乗ってロマリアへと南下する。
カンダタ「あーあ…
俺もこれでこの世の見納めか」
遠目に見えてきたロマリアの街を見て、
カンダタは盛大に溜息をついた。
それでも逃げ出さない辺りが、この男らしい
と言えばらしい。
カンダタ「よう…さっきから何を黙っているんだよ
こちとら、年貢の納め時なんだ、少しぐらい
話し相手になってくれよ」
キラーマシンの肩に乗ったカンダタが空を見上げながら
マオに語りかけるが、返事が無い。
……………………ブゥウゥゥゥゥゥゥウン……ガクン。
突如キラーマシンの動きが停止し、カンダタは地面へと
放り出される。
カンダタ「ってぇ…何をしやがるんだ!」
112 = 104 :
カンダタが抗議の声をマオに投げかけるが、返答は無い、
キラーマシンのモノアイからは光が失われ、まるで鉄の人形の
ように動く気配が無い。
カンダタ「おい!、嬢ちゃん?」
やがて、背後のハッチが上に開き、中からマオが
這いずり出して来る。
カンダタ「……どうしたんだよ!顔色が悪いぜ
うわ…熱までありやがる」
マオ「………………カン……ダタ………ゲホゲホ。」
マオの声はガラガラ声で喋るのも辛そうだ、
カンダタはマオの喉や熱を軽く診察し…。
カンダタ「…この馬鹿!…風邪を拾いやがったな
そのままカザーブからずっと運転してやがったのか」
マオ「…そうか、これが風邪か
結構しんどいものだな。」
カンダタ「おめぇよぅ…馬鹿は風邪ひかないって言葉
知っているか?」
マオ「………馬鹿とは……心外だな……ゴホゴホ。」
カンダタ「正しくは馬鹿は風邪をひいても
気が付かないって意味だ」
マオ「カンダタ、お前は先へ行け…ゴホゴホ
私は少し休んでから追いかける」
113 = 104 :
カンダタ「とにかく、ロマリアはもうすぐそこなんだ」
カンダタは、キラーマシンの背後に括りつけられていた
荷物をマシンのコックピットに素早く放り込む。
カンダタ「ほら、マシンをロックしてくれ
俺には出来ないんだから」
キラーマシンの開閉を含む全ての操作は普通の人間には
行えない、元魔王であるマオには人間でありながら操作できるようだが。
カンダタの言うままにキラーマシンのハッチを閉じて
ロックを掛ける。
カンダタ「ちょっと待ってな」
カンダタは斧を肩に抱えてニヤリと笑うと、
その辺りの木の枝やら、茂みやらを斧で刈り取っていく。
刈り取った草木をキラーマシンに括りつけて、キラーマシンを
完全に覆い隠す。
一刻程してカンダタは満足し、斧を腰のバンドに括りつける。
カンダタ「ほれ、おぶさりな
ロマリアはすぐそこなんだ、なんとかなるだろ」
マオ「死刑囚に助けられるとはな…ゴホゴホ
逃げ出すチャンスだろうに」
カンダタ「バーカ言っているんじゃねぇよ、可愛い子分のためだ
それに、俺って紳士だからな」
マオ「……良く言う」
カンダタ「しんどいなら寝てろ、着いたら起こしてやるからよ」
しかし…つくづくも人間とは不便なものだ、
爆発的な強さや賢さを持ちながらも、その実は酷く脆弱だ。
カンダタの背中に揺られながら、マオは静かにめを閉じた。
114 = 104 :
じゃ、寝る・・おやすみ。
115 :
ロマリアに戻ると、マオは宿屋の自室へと直行となった、
さしもの回復呪文も病気には効果が無い、むしろ病原菌を
活性化させてしまう可能性もある。
徳の高い僧侶の場合、どんな重症でも立ちどころに回復できるが、
病気の場合は別であった。
よって、ロマリアでも
医者「キミ…回復呪文か何か使ったかね」
マオ「…ホイミを………何度か…」
医者「冒険者の端くれなら覚えておきたまえ、
病気になった場合、回復呪文は厳禁だ、
それと、体調が少しでも悪かったら街の外には
出ないのが当たり前じゃ」
マオ「……面目ない…」
オルテガ「この俺とした事が、そんな基本的な事を
教え忘れるとはな」
カンダタ「この世間知らずの嬢ちゃんは、
とんでもねぇ事をするくせに、子供でも知っている事を
知らなかったりしやがるな」
背後でオルテガとカンダタが呆れ顔で言い合っている。
116 = 115 :
オルテガ「とにかく、お前は大人しく養生して居ろ
城へは、俺とカンダタで行く、
細かい手続きは全部終わって、後は
陛下から沙汰が降りるのを待つのみだ」
カンダタ「んじゃーな、達者でなお嬢ちゃん
先に地獄へ行っているわ、また会おうぜ」
死刑になると言うのに、カンダタはまるで
お使いにでも行くように気軽に挨拶してカンダタは
出て行こうとする。
マオ「…………………カンダタ」
その背に声を変えると、カンダタは一瞬歩みを止める。
マオ「…………………………ありがとう。」
礼を言うとカンダタばかりか、オルテガとマギーも
驚愕の顔を見せる。
オルテガ「…マ…マオが…」
マギー「笑っただって!?」
カンダタ「やっぱおめぇ…そうしている方が可愛いぜ、
じゃぁな」
そして今度こそ、カンダタは両手に腕輪をされたまま
オルテガと共にロマリアの城へと向かっていく。
マオは城へと続く道を窓から見下ろし、兵士に連行されていく
カンダタの背中をいつまでも見送っていた。
117 = 115 :
折角のシーンももう少し感動を与えるように書けない辺り、
三流だなぁ、俺。
んじゃ、寝る…おやすみ。
119 :
ありがとう、どこまで出来るかわからんけど
誰かが見てくれている限り頑張ってみるよ
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◆◇◆◇ ロマリア城:玉座の間 ◆◇◆◇
国王「おおっ!オルテガ殿
よくぞ戻られた」
国王「そやつが国賊、カンダタであるか
よくぞ捕えてくれた、礼を言おう。」
オルテガ「先日ご報告させて頂いた通り、
この者、カンダタは自ら金の冠を返上し、
自首と引き換えに部下の身柄を解放する事を
希望しております、何卒…寛大な処置を」
国王「ふむ…………。」
国王は顎に蓄えた髭を指で摩り、暫し思案する。
国王「カンダタよ、オルテガの言い分に相違は無いか?」
カンダタ「特にねぇな…
約束通り俺の首と奪った財宝はくれてやる、けど
部下の自由は保障してもらうぜ?」
オルテガ「敬語!」
カンダタ「…もらう…です。」
脇腹を突くオルテガに、慌てて語尾を付け足すカンダタ。
カンダタ「全部は俺…いや…私が主犯だ…です、
あいつらは関係無い…です。」
国王「盗賊は例外なく、斬首刑じゃ…」
国王「……しかし…、アリアハンの勇者と呼ばれた
オルテガの名に免じて、条件付きではあるが
部下共の釈放を許可しよう」
オルテガ「寛大なるご配慮、感謝します」
国王「首領カンダタの処刑は一週間後、
ロマリアの中央広場にて執行する!
異議の有る者は?」
大臣A「異議なし!」
大臣B「異議なし!」
………………。
国王「よって…これにて裁判は閉廷!」
120 = 119 :
バァン!!!
勢い良く謁見の間の扉が開かれ、黒髪の女が
乱入してくる。
マオ「異議あり!………ゲホ…ゲホ……」
オルテガ「マオ!」
カンダタ「おめぇ…宿屋で倒れていたんじゃねぇのかよ!」
寝間着のまま上着をひっかけて飛び出した来たのだろう、
酷い姿だった。
マオ「…国王陛下…この様な姿で謁見するご無礼を
お許し下さい…ゲホ…ゴホ…!」
国王「お主は…確かオルテガ殿の弟子の
マオ殿?」
マオ「この者…カンダタは、ノアニールにてエルフ族を説得し
昏睡事件を解決した功績者にございます…ゴホ」
倒れそうになりがらも言葉を吐き続けるマオ、オルテガに肩を
貸してもらい、なんとか意識を繋ぎ止める。
マオ「さらにカザーブ村よりロマリアに戻る際、
病気に冒された私を助けてくれた命の恩人にございます」
マオ「何卒…処罰の再考を…」
…ガヤガヤ……ガヤガヤ…。
大臣A(ノアニールの昏睡事件?)
大臣B(先日にノアニールの住人が目を覚ましたとか報告を受けたが)
121 = 119 :
国王「静粛に!静粛に!」
カンダタ「そいつは俺だけの功績じゃねぇよ、
そこに居る嬢ちゃんが動かなければ、俺は何もしなかったぜ?」
国王「そにかく…その件について、報告せよ
…………マオ殿…は辛そうだから、被告人カンダタ…
貴様が証言するが良い」
カンダタ「いいのか?俺が有利になる証言をするかもしれないぜ?」
国王「構わぬが…尋問した上で…故意による嘘だと知れた場合、
即刻貴様の首を跳ね飛ばしてくれるわ」
カンダタ「おー…怖い怖い…」
カンダタが証言し、国王や大臣がマオに確認を促し
マオが頷いて肯定して行く。
たまに、カンダタに尋問が入り…カンダタの知らない事などを
マオが補足して行く。
一通りの証言や尋問が終了し…、国王は再び髭を摩る。
国王「なるほど…の…
ノアニール昏睡事件のあらましについては、粗方
理解した、全てでは無いがこの者の功績はあるようだ」
大臣B「ですが陛下!城に忍び込んだ賊を
無罪放免にしたとあっては、国のメンツに関わりますぞ」
騎士A「しかし…功績があるにも関わらず
それを考慮せず処刑をしたとあっては、それこそ
民にしれたら」
大臣A「いや…今回の裁判は傍聴人は居ない
この場に居る者が閉口すれば済む話ではないか」
騎士B「貴様!誇りある騎士の国ロマリアが
真実を覆い隠そうなどと、許されるはずも無いだろう!」
国王「……待て…待て…………
静粛に!静粛に!」
大臣や文官や騎士達を国王は片手で制すると、
ざわめきが収まる。
122 = 119 :
国王「……如何思われるか?オルテガ殿
第三者たるお主の意見を聞きたい」
オルテガ「…そうですな…
法は法…いくら功績者としても、特例を認め
守るべき法を曲げては示しがつかないでしょう」
国王「……………ふむ…して?」
オルテガ「しかし…この者の戦力は相当なもの…
未熟とは言え、私の弟子マオを一度は追い詰めた
者にございます」
オルテガ「この者の命、このオルテガが預かって
よろしいでしょうか?
かねてよりお話のあった魔王討伐の件、
この者を連れて行きたいと存じます」
マオ(魔王…討伐?)
そんな話は初めて聞いた、しかし…アリアハンの勇者と
呼ばれるオルテガの事だ、ロマリア国王からも内々に依頼を
受けていても不思議ではない。
大臣B「しかし…それではこの者が逃げ出す可能性も」
オルテガ「その時はこのオルテガの首
持って失態を償いましょう
無論、本人にその意志があればですが」
カンダタ「オイオイ…おめぇはそれで良いのかよ…」
マオ「不足でしたら……ゴホゴホ…
…私の首も預けましょう…」
カンダタ「嬢ちゃん…オメェまで…」
国王「良いだろう!選ぶが良い!カンダタ
一週間後に公開処刑されるか、それとも
死を覚悟して魔王討伐の旅に付き合うか」
カンダタ「まったく…このお人よしどもがよ
いいぜ?どうせ死ぬんだ…地獄の果てまで
付き合ってやるよ」
国王「良かろう!カンダタの処罰は保留!
身柄はオルテガ殿とマオ殿で預かるものとする!
本日はこれにて閉廷!」
カァン!
国王の振りかざしたハンマーが心地よい音を立てて
裁判が終了する。
123 = 119 :
◆◇◆◇ 宿屋2F:マオの自室 ◆◇◆◇
マギー「…………………39.7℃………」
体温計を見て、そこに表示された温度を
マギーが読み上げる。
マギー「……見事に悪化したわね…
部屋を抜け出して、城まで全力疾走すれば
そりゃ、風邪も悪化するわ」
マオ「…………………申し訳ない…」
マギー「そりゃ、アンタの命の恩人だけどさ
同時に命を奪おうとした敵だったんでしょ?
なんだってそこまでして、助けに行ったんだか」
マオ「……………良くわからない」
魔王時代なら、人間なんて一晩で村毎滅ぼすのは
当たり前だった、女子供であったとしても、老人だったとしても
そこには関係ない。
殺戮…と言うよりも、戦争だったのもあるが
人や部下の死は当たり前だったし、作戦遂行のためには
仲間に生きては帰れない命令を下した事もあった。
長く生きていた間にはその中には親友や兄弟の命ですら
含まれる。
自らの病気を悪化させてまで仲間の命を助けに行く、
昔では絶対考えられなかった。
風邪で思考が鈍っているせいか、それとも脳の構造が人間の
女になったせいだろうか?
124 = 119 :
マギー「……とにかく、今日は大人しく寝てな
次に抜け出したらロープで縛りつけるからね」
タオルを絞ってマオの額に乗せ、マギーは部屋を出ようと
扉を開ける。
ドドドド………………。
ドアを引くと、ドアの隙間から聞き耳を立てていたで
あろう、カンダタの子分達が倒れこんでくる。
マギー「………………あんたら…。」
子分A「マギーさん!姐さんは大丈夫ですかい!?」
子分B「お…俺、果物買ってきました」
子分C「俺は風邪薬買ってきやした」
どうやら、風邪を押してカンダタを弁護に行った事で
カンダタ子分達に気に入られたらしい。
カンダタ「…おめぇら…
仕事ほっぽり出して、こんな所で何してやがる!」
子分達『親分!?』
カンダタ「油売って売ってねぇで、戻らねぇか!」
子分A「そういう親分だって…油売っているじゃねぇっすか
ずりぃっすよ、俺達だってたまには姐さん拝みたいっすよ」
125 = 119 :
ゴチン!!
口答えする子分の頭に、カンダタの拳が飛んだ。
子分Aの目から星が飛んだような気がする。
カンダタ「とにかく、代表して俺が見舞うから
オメェ達はさっさと仕事に戻れ!
その果物と薬はちゃんと渡しておいてやるからよ」
子分C「ええっ!薬って高かったんすよ」
カンダタ「もう一発欲しいか!?」
カンダタが拳を振り上げると、子分達の顔が青ざめ。
子分達『うわぁぁぁぁあん…
親分のおたんちーん』
カンダタ「あんだとぅ!?」
そして、蜘蛛の子を散らすように子分達が逃げて行く、
子分達が居なくなり、カンダタも大人しく見舞うだろうと踏んだマギーは
階段を下りて戻っていく。
カンダタ「ったくあいつらは…………
すまねぇな、騒がしい野郎どもで」
マオ「……慕われているんだな」
カンダタ「まぁ…な、ああ…
これ子分どもから差し入れだ」
マオ「……礼を言っていたと、伝えておいてくれ」
薬と果物をテーブルの上に置き、近くの椅子に腰を下ろす。
126 = 119 :
マオは薬を手に取り、口に含んで水で飲み込む。
苦い薬に顔をゆがめるが、良薬はそう言う物らしい。
カンダタ「礼を言うのは俺の方だ
おかげで首が繋がった」
マオ「礼なら師匠に言ってくれ、
結局は師匠の名で助かったようなものだ」
カンダタ「おかげで、魔王退治に行くハメになっちまったがな」
マオ「…………………魔王退治…か。」
小さく呟いてから、マオはカンダタになら
全てを明かせるだろうと、決意を決める。
マオ「カンダタ…魔王ってなんだと思う?」
カンダタ「そりゃ…おめぇ…人類の敵だろ…
奴さんのおかげで、人間はボロボロ死んで行っている
もっとも、規模は違えど…俺達盗賊も
似たようなもんかもしれねぇけどな」
マオ「人類の敵…ね…
けど、魔王や魔物にしてみれば人類こそ自らの種族や土地を荒らす
害悪と思っているんだろうな」
カンダタ「まぁ…そうかもしれねぇなぁ」
127 = 119 :
マオ「となると、人間の王や勇者が…
魔物にとっての魔王って事になる、魔物達も死にもの狂いで
勇者…すなわち魔物から見た魔王を討伐しようとするだろう」
マオ「仮に…人間が魔物との戦争に勝利したら
どうなると思う?」
カンダタ「そりゃ…少なくとも、魔物の脅威は無くなるだろうな」
マオ「そうだな、そして…今度は
魔物に向けられていた武器や呪文、兵器が
人間同士の争いに向けられるだろう」
カンダタ「そう…だろうな…
俺も盗賊やって金持ちやら貴族やらを見て来たけど
人間の欲ってのは、無限だからな」
マオ「魔物側にしても同じこと、
現に人間の居ない魔界では、魔族や魔物同士の
権力争いや覇権争いが絶える事は無い」
カンダタ「マオ…おめぇ………」
128 = 119 :
マオ「魔物同士で戦うよりも脆弱な人間を倒して土地を奪う、
やがて…自らより弱い人間が居なくなったら、自らより
弱い魔物を倒して奪う。」
マオ「かといって、戦いや争いを否定する事はできない…
人間や魔物が使っている便利な呪文の数々は、戦う為に
生み出された物だ、戦いが無ければ製鉄技術すら
生み出されなかったかもしれない…」
マオ「戦いは本能だ、否定する事は出来ないし、
戦いを否定されたとしたら文明は緩やかに滅んでいく」
薬が効いてきたのだろうか、マオの表情に眠気が降りてくる。
マオ「結局は…神の手のひらの上…
………私達…魔王や…人間は…どこまで戦えば…良いん…
だろう…な………」
カンダタは眠りに落ちたマオから薬の瓶を受け取り、
再びテーブルの上に置く。
額の上のタオルを取り、水で洗ってから搾り再び額に乗せる。
カンダタ「俺はよ…もう決めてんだ
例え、世界中の連中に後ろ指さされても、テメェらに
齧りついていくってよ
魔王でも勇者でもロマリア軍でも喧嘩を売れっつーなら、
そうするし、神を殴り飛ばせっつーなら、してやるよ」
129 = 119 :
◆◇◆◇ 宿屋の前の広場 ~一週間後~ ◆◇◆◇
マオ「せいっ!はっ!」
カラン…カラン……
空中に放り投げられたマキをマオの剣が片っ端から
両断して行く。
カンダタ「1498…1499……これでラストだ!」
マオ「はいよ!」
カンダタが宙に放り投げたマキをマオの剣が両断する…。
綺麗に均等のサイズに割られた最後のマキが地面に落下した。
マオ「ふぅ…これで、ようやく全盛期!」
マギー「……ほい、お疲れ!…完全に体力が戻ったみたいね」
マギーが放り投げたタオルを受け取り、汗を拭きとる。
病気自体は直ぐに治ったのだが、冒険の最中に風邪がぶり返したら
薬草は使えても、回復呪文が使えなくなったりする大変な事態になる。
体力を戻すのと、風邪が抜けるまでの大事を取って一週間、
ロマリアの宿屋に滞在していた。
マギー「……それと、コレ…
オルテガさんからの手紙」
カンダタ「旦那から?なんだって?」
マギーから受け取った手紙を一読し、カンダタに渡す。
マオ「イシスに着いたってさ」
カンダタ「へぇ…無事についたのか」
130 = 119 :
マオが養生している間、オルテガは先に砂漠の国イシスへ向かって
旅立っていた。
魔王の城…バラモス城は山に囲まれた先にあるため
陸路からは容易に潜入できない…、したがってイシス王家に伝わる
熱気球を借り受ける事になり、熱気球の準備とイシス女王の協力を
取り付ける為、一週間程前に出発した。
子分A「姐さーん!!…………げ、親分…」
カンダタ「なんだ、その『げ、親分』ってのぁ」
何か包みを持って現れるカンダタの子分達、
一抱えするほどの大きなもののようだが。
子分A「姐さんの為に、防具屋に拵えてもらいやした
俺達の礼の代りっす、使ってやってくだせぇ」
マオ「私に?」
包みを解いてみると、中から綺麗な鎧が姿を現す…
白のレザーで出来ており、胸の部分のみ金属の
プレートで補強されてた上、模様まで彫金されている…。
マギー「…随分綺麗な鎧じゃないかい…」
子分A「姐さんの為に、防具屋に拵えてもらいやした
俺達の礼の代りっす、使ってやってくだせぇ」
装着してみると、今までの革の鎧よりも軽いぐらいだ
それでいてかなり頑丈な作りになっている。
動きも全く邪魔にならない…、さらに白のマントもある。
子分B「こっちのマントはある程度の炎のブレスを
防ぐ事もできまさぁ」
マオ「これって…凄い値段したんじゃないのか?」
子分C「……いいんす…いいんすよ…
どうせ塔から持ち出した親分のへそくり…じゃなかった
俺らの気持ちっすから」
マオ「ありがとう、大事に使わせてもらうよ」
131 = 119 :
カンダタ「今一瞬聞き捨てならねぇ話が聞こえた気がしたが
まぁいい…それよりも、俺の装備は無ぇのか?」
子分A「あー…はい…
親分にはこれっす…」
子分達が小さな包みを取り出す…。
カンダタ「ず…随分ちいせぇが…
大きさじゃネェよな…」
包みを開けると、中から出てきたのは。
子分B「親分のステテコパンツ…洗っておきやした」
カンダタ「おうめぇぇぇえええぇらぁ!
良い度胸だ、歯ぁくいしばれ!」
子分達『うわぁぁぁぁあん…
親分がキレたぁぁぁぁ』
カンダタ「待ちやがれぇぇぇぇ!」
132 = 119 :
◆◇◆◇ ロマリア~アッサラームの街道 ◆◇◆◇
オルテガに遅れる事一週間後。
アッサラームへ続く海岸沿いをを突き進むキラーマシン、
その後ろには幌付きの馬車の荷台のようなものがけん引されていた。
カンダタ子分達が用意した中古の馬車の荷台を改良し、
キラーマシンが牽引出来るように改良したものだ。
キラーマシンはマオが操縦し、カンダタはキラーマシンの
肩ではなく、荷台に乗っている。
マオ「こんな物まで用意してくれていたとは」
カンダタ「あいつら…よっぽとオメェの事が
気に入ったらしいな」
伝声管のようなホースで荷台に居るカンダタと
キラーマシンコックピットのマオが喋れるようにも
改良してくれていた。
カンダタ「けどまぁ、…キラーマシンの肩に
乗らずに済んだのは素直にありがてぇな
上下に揺られて吐きそうになっちまうぜ」
マオ「だったら、あんな顔の形が変わるまで
殴らなくても」
カンダタ「オメェさんは良いぜ?
そんな立派な鎧貰ってよ、俺なんてステテコパンツだぜ?
しかも、新品ですらねぇ」
133 = 119 :
マオ「………ん?」
牽引するキラーマシンが突如歩みを止め、それに引かれる馬車も
同時に停止する…。
首を回転させて、カメラを拡大する…。
カンダタ「なんかあったのか?」
マオ「馬車が倒されている」
キラーマシンが指差す先には、アッサラームとロマリアを繋ぐ
乗合馬車が横倒しになっていた。
客であろう者達が、協力して馬車を立て直そうとしているようだが、
馬車は完全に横転しており、容易に立て直せないようだった。
カンダタ「よう!大変そうだな!」
馬車の客『うわぁぁぁぁっ!?、な…なんだありゃぁ!?』
荷台からカンダタが手を振りながら声を掛けると、馬車の客達は驚きの声を上げた。
まぁ、大きいキラーマシンに牽引された妙な馬車を見れば
驚きもするだろうが。
カンダタ「そう、ビビる事ぁねぇって…
動かしているのは人間だから安心しろよ」
乗客A「あんた…ロマリアから来たんかい?」
カンダタ「ああ…そうだ…
その前に…ちと、馬車から離れていてくれや
マオ!頼むわ!」
マオ「分かった」
キラーマシンを馬車から切り離し(連結・切り離しが自由なジョイントを
付けてもらった)、馬車を掴むと、軽々と持ち上げ…
そのまま立て直す。
馬車の客『おおおおお…すげぇぇ…』
感激の声を漏らす馬車の乗客達、乗客の中には踊り子やら
冒険者やら子供やら…とにかく色んな人間が居た。
134 = 119 :
カンダタ「ご苦労さん、ついでにちと休もうぜ
熱いだろ、その中は」
マオ「ふぅ…確かにな…
随分南下したから暑くて仕方が無い」
乗り込み口のハッチを空けて、外に出る…
ノアニールやカザーブなどは北国だったため、むしろ快適だったが
南下すればするほど、キラーマシンの中は蒸し暑い。
商人「すげぇモンに乗っているな…
どこで手に入れたんだ、そんなもの
しかも武器がついているって、戦闘用か?コレ」
言ってくるのは乗客の一人であるアッサラームの商人のようだ、
キラーマシンに随分興味をもったらしく…色々聞いてくる。
まぁ…元々は勇者や冒険者を殺す為の、殺人機械などと
言える訳も無く、適当にお茶を濁す事にする。
カンダタ「で、どうしたんだよ…
魔物にでも襲われたか?」
御者「それが…見た事ねェモンスターに襲われて
ウマどもが慌てて暴れ出しちまったんだ」
マオ「見た事も無い…魔物?」
御者「すっげーでっけー豹の化け物でな、
赤い鬣に、2本のデッカイ牙を持ってて
背中に剣を背負っていた」
赤い鬣に、2本のデッカイ牙の豹の化け物…
特徴を頭に思い描くと、一匹の魔物が思い浮かんだ。
135 = 119 :
マオ「………地獄の殺し屋……………
キラーパンサー…………」
背中に背負った剣の辺りは知らないが。
カンダタ「キラーパンサー?
なにものだよ、そいつは」
マオ「その名の通り、馬鹿でかい豹のモンスターだ
人間の頭がい骨なんて、一齧りで粉々だ
その上かなり獰猛で、素早く力もある
奴に出会えて命があるなんて、運が良かったな」
御者「代わりに、ウマどもが食われちまったよ」
マオ「…ウマが?…」
珍しいな…これだけ鈍重そうな民間人の人間が居るというのに
わざわざ足の速い馬を狙うなんて…、
馬が怪我でもしていたのだろうか?
どうにも、そのキラーパンサーはここ数日前から
突如現れ始めたらしい、散発的に馬車を襲いかかり、
食べ物を奪って逃げて行くとか。
話を聞くとさすがにカンダタも妙に思ったらしい。
カンダタ「死人が…出ていない?」
136 = 119 :
そうなのだ、馬車の荷物とか徒歩で歩いていても、逃げ出す時に
投げ出した荷物とかは奪って行っても、人間を殺す事は
しないらしい。
カンダタ「どう思う?」
マオ「妙な話だな…妙な話だが…
私達には関係無いな…」
カンダタ「それも…そうだけどな…
とにかく、俺達はイシスへ向かう途中に
アッサラームへ寄る途中だが…
お前達はどうする?」
マオ「アッサラームへ行くなら、ついでに馬車を
引いていってやるが…」
御者「すまない、よろしく頼むよ…
俺達もロマリアに行く途中だったけど
こうなった以上、一度アッサラームへ戻るさ」
キラーマシンに馬車を2台連結し…歩き出す…
馬車1台ぐらいだったらなんともないが、2台も引き摺って
歩くとなると、さすがにパワーを使う…。
本当はスピードを上げる事も出来たが、重いものを引いたまま
スピードを上げると、今度はキラーマシンを動かすための
MPが尽きてしまう…。
アッサラームに着く前にマシンが停止するのは困り物だった。
そんな訳でゆっくりあるく為、外はすでに夜になってしまった。
137 = 119 :
マオ「まずいな…アッサラームまでもうギリギリだ
MPが持たない場合、途中で野宿するしかない」
カンダタ「スピードを落としても良いから
とにかくなんとか誤魔化してくれ」
マオ「分かっている」
とはいえ…モンスター達に襲われても、わざわざキラーマシンを
使うまでもなく、カンダタや乗合馬車に乗り合わせていた冒険者達
の力を借りれば事足りる訳で。
戦闘に関してエネルギーを使わないで済むのは
助かった…だが。
ぐるるるるるる……………。
キラーマシンの足が止まる…。
御者「ひいいっ!出た!!」
馬車の乗客達は唸り声を聞いて縮こまる…
カンダタは斧を取り出し、伝声管に向かってどなりつける。
カンダタ「マオ!今のを聞いたか!?」
マオ「間違いない、キラーパンサーだ!
なんとかしてみる…お前は乗客達を頼む」
カンダタ「気を付けろ!お前のMPは
もう殆ど尽きているんだろ?」
マオ「分かっているが、こいつでないと
闇夜のキラーパンサーには太刀打ちできん!」
マオは馬車を切り離し、カメラを暗視モードに切り替える…
切り離すと同時にカンダタは馬車のブレーキをロックし…。
松明に火を灯す
139 = 138 :
マオ「こんのぉおおおおおおぉっ!…」
牙と剣が絡み合ったまま…マオは力任せにキラーマシンのスロットを
全開にし、近場の岩にキラーパンサーを叩き付ける。
Kパンサー「ギャゥン!!!」
悲鳴を上げて…投げ出されるキラーパンサー…
手ごたえアリ!!
カンダタ「やった…野郎!
骨か内臓を痛めやがった!」
Kパンサー「ヲォオオオオォッ!!!」
しかし…キラーパンサーも必死なもの…
キラーマシンの背後にとり付くと装甲板に鋭い牙を突き立てて
こじ開けようとする…。
手負いの獣は強いとはよく言った物、さしものキラーマシンの
装甲もメキメキ言い始める…。
こいつ…賢い…!
中に人が乗っている事に気が付いているのか。
だが…!
マオ「くらえぇっ!」
キラーマシンの首を回転させて…とり付いたキラーパンサーに
レーザーを発射する!
Kパンサー「ギャ!!」
キラーパンサーの毛皮を焼切り…たまらず距離を置くキラーパンサー…
しかし…。
140 :
連投しすぎて、怒られました。ので、今日は終了
反省します、おやすみなさい。
143 = 141 :
Kパンサー「ガルゥ!!」
キラーパンサが飛びかかってくる…、応戦するように右のソードで受け流し、
体当たりで弾き飛ばす!
MPが戻れば元気になり、痛みや疲れが無い機械と違ってキラーパンサーには
疲れが出る…足が鈍った所にさらに右腕でジャブ…。
Kパンサー「ギャウ!!!」
マオ「止め!」
右に持った剣を突き刺しフィニッシュにしようと思った瞬間、キラーパンサーと
一瞬目が合う…。
マオ「っ!」
操縦桿を引き上げて狙いをわずかに外し、剣の柄を握った右手を
キラーパンサーの胴に叩き付ける。
Kパンサー「クオォォオォゥ…!!!」
やがて…キラーパンサーは力無く鳴いて、地面にその身を横たえる。
カンダタ「よっしゃぁぁぁぁぁぁああああ!!」
カンダタ達が喜びの声を上げて、馬車から飛び出して来る。
マオもコックピットから抜け出し、動かなくなったキラーパンサーに
近づく。
アッサラーム商人「ワシの!ワシの祈りの指輪は!?」
マオ「助かった、返すぞ!」
指輪をアッサラーム商人の手に返し、商人が指輪を掲げた瞬間、
いのりの指輪は音も無く崩れ去った。
アッサラーム商人「ほわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
アッサラーム商人の悲痛な叫びが印象的だった。
───────それは別にどうでも良いとして…。
144 = 141 :
倒れたキラーパンサーの耳の裏に着けられていたピンクのリボンを見ると、
名前が書いてある…。
─────────プックル。
マオ「お前…プックルって言うのか」
マオの声に応えるようにキラーパンサーの鼻がピクピク動く。
その瞳に先程までの狂気にそまったような色は無い…、だからこそ
最後の一撃を必殺の一撃から普通の打撃に切り替えたのだが。
商人「ま…まだ生きている!何をしている止めをさせ!」
カンダタ「黙ってろって!」
後ろで見ていた商人をカンダタが首根っこを掴んで摘み上げ、
馬車の方に放り投げる。
プックル「フッ!!」
キラーパンサーが鼻息を吹くと、馬車の乗客達は慌てて
馬車の中に戻る。
しかし…地獄の殺し屋と言われた獰猛なモンスターは
敵意が完全に消失していた。
マオ「ベホイミ!」
マオが手を翳すと、キラーパンサーの傷がみるみる癒えて行く、
一度じゃ回復しきらない分は2度…3度…。
乗客達『ぎゃぁぁぁぁ!なに回復さしとんじゃぁ!?』
馬車の乗客達が何やら悲鳴を上げて、散り散りに逃げるが
無視する。
やがて、キラーパンサーは立ち上がりマオの手を舐めて
犬が座るみたいにお座りする。
プックル「ガフッ!」
言葉は通じる訳では無いが、不思議とマオは今のプックルが
何を伝えたいか分かるような気がした。
145 = 141 :
マオ「………そうか、気にするなプックル」
冒険者「お…おい…どうするんだよ…
そいつ、また人間を襲うぞ?」
カンダタ「だったら、今度はおめぇが何とかしてみせな!」
冒険者「む…むむむむむむむ…無理言うなよ
俺に勝てる訳ないだろ!?」
カンダタ「だったら、アイツに任せておけって…」
表面上は、平静を装っているカンダタだが
内心は動揺しまくっていた。
────魔物を理解している…だと?
オメェ、一体何者なんだよ!
だが、なんであれ信じられる仲間であるのは間違いない、
こいつがキラーパンサー……いや、プックルか……を信じられると言うならば
俺も信じるだけの話だ。
マオ「焼け焦げた剣………書いてある名は…パパス…
これが、お前のご主人様の大事な人の形見って訳か」
プックル「ガウ!!!」
146 = 141 :
カンダタ「…………んで…コイツなんだって?」
マオ「どうやら、主人と逸れたらしい…
さまよい続けている間に、この辺りまで来て
んで、腹減って食べ物を探す内にキラーパンサーの野生に目覚め
人を襲うようになったみたいだ…とさ」
カンダタ「ったく…ペットはちゃんと責任持って飼えよな!」
プックル「フーッ!」
マオ「ペットじゃなくて、『親友』なんだと」
商人「だ…だったら、もうご主人様を探す旅にでも出れば良いだろ
少なくとも、このアッサラーム辺りではこんな巨大な魔物を飼っている奴
知らんぞ!
私達もさっさとアッサラームへ行くぞ!」
プックル「ガウガガウーガゥ!!」
カンダタ「…………………………………あー…なんだって?」
マオに通訳を求めるカンダタ。
マオ「『言われなくても、この辺りに居ないのは
なんとなく分かる』だって」
耳の裏の裏を掻いてやりながら、マオは言う。
マオ「それなら、私と一緒に来るか?」
プックル「ガゥ!!」
最後の吠えは、通訳をしなくてもカンダタには分かる気がした。
//----------------------------------------
あまり連投すると、まーた怒られて規制がかかるので
今日はここまで、後は書き溜めておきます。
147 :
◆◇◆◇ 砂漠の入り口、アッサラーム ◆◇◆◇
キラーマシンに牽引された2台の馬車が街に入って来た時は悲鳴があがり、
さらにプックルも一緒に街に入った時にはパニックになったりもしたが、
一晩も開けたらアッサラームはパニックは見る影も無くなくなっていた。
乗合馬車に乗っていた連中も各自の家や宿に戻り、その上でロマリアへ
行く者達は翌日の乗合馬車で再びロマリアを目指すつもりらしい。
街道に出現するキラーパンサーの脅威はもう無い。
宿屋の裏でキラーマシンの修理をするマオ、その横で
申し訳なさそうな顔をするプックルと、暑いためか水の入った桶に両足を突っ込んだまま
団扇で顔を扇ぎながら、修理を見守るカンダタの姿があった。
プックル「わふぅ…………」
カンダタ「ンな顔すんなよプー公、やっちまったもんはしゃーねーし
やらなきゃ、お前さんも死んでたかもしれねぇんだろ?」
前の装甲板は大きく削れた上に、亀裂が発生しており、後ろの装甲板兼ねるハッチは
ひん曲がった上に、牙を突き立てた後の大きな穴が二つ空いている。
そして、肩の付け根から失われた左腕…。
外されたそれは地面に置かれており、左腕部が失われた部分は布が覆い被されていた
破損した腕はフレームから折られており、部品交換しなければとり付けが出来ない状態だった。
148 = 147 :
カンダタ「どうだ?、なんとかなりそうか?」
マオ「…応急処置はした、左腕は諦めて部品取りにするしかないな
後は雨水が入らないように装甲板の穴を塞ぐぐらいか」
カンダタ「いっそ…例のノアニールの洞窟まで
また、こいつを取りに行くしかねぇか?
上手くすれば部品の一つもあるかもしれねぇし」
マオ「それはここから大陸を縦断しないと無理だろし
それに…あそこがキラーマシンの住処となっているかどうかも
怪しいものだ」
カンダタ「どういう事でぇ?」
プックル「ガウ…ガウワーウウ!!」
マオ「プックルも、そしておそらくこのキラーマシンも
別の世界からやって来たって事」
カンダタ「別の世界?」
マオ「どうにも、プックルが言うには
歩いている間に黒い靄のようなものに包まれて
気が付いたら、この辺りに居たんだとさ」
カンダタ「確かに…あの合体する妙なスライムやら
こんな奇天烈マシンやら、プックルみたいな奴は
俺ぁ聞いた事も見た事もねェからなぁ」
カンダタ「ま…いいか、壊れちまったもんはしゃーねぇな
最悪馬車が引ければ良い訳だし」
プックル「ガウ!!」
マオ「壊した左腕の分ぐらいは、プックルが
頑張ってくれるって」
カンダタ「そりゃ…頼もしいこった
一区切りしたら市場に言って見ようぜ?」
マオ「市場?」
カンダタ「おおよ、アッサラームはイシスとロマリアを結ぶだけじゃなく
たまにだが南の方から交易船も入って来るんだ」
149 = 147 :
以上、今日は少な目で終了です、
つか、先日までが連投しすぎただけか
150 :
市場を見るとロマリアに比べて、活気付いている感じがする、
武器屋、防具屋、道具屋に食べ物屋、さらには劇場なんてのも
あるらしい・・もっとも、劇場が開くのは夜かららしいが。
カンダタ「アッサラームって言えば、ベリーダンスってのも
有名でな」
プックル「わふぅ?」
カンダタ「ベリーダンスってーのは
若ぇ美人の娘さんが、こー色っぽく腰を
くねらせながら踊るのよ」
劇場の中から声が聞こえる。
マオ「どうやら、今は
そのベリーダンスを練習しているみたいだな」
カンダタ「練習中に入るのは失礼ってもんだろ
どうせ見に来るなら本番やっている時にしようぜ?」
などと、色々散策しながら歩いていると
商人?「おー…私の友達…
お待ちしておりました、
売っているものを見て行ってください」
武器商人に声を掛けられ、
無理矢理露店の前で足を止めさせられてしまう
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