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元スレ佐天「ベクトルを操る能力?」
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感想と雑談の区別がつかない奴
知ってるのに雑談する奴
俺
まとめてROMれ
知ってるのに雑談する奴
俺
まとめてROMれ
雑談もいいけど、感想なんかをもらえるとすごく喜びます。
あと、さすがにこの速度以上での連続投下は厳しすぎるだろjk。
続きを更新。
あと、さすがにこの速度以上での連続投下は厳しすぎるだろjk。
続きを更新。
一方「今日も始めンぞ」
佐天「はい、先生」
一方通行による佐天涙子の能力開発も3日目。
昨日は、光と風を同時に反射させることに成功。
しかし、熱量の反射には失敗してしまったのであった。
佐天「昨日、帰ってからも少し練習したんですけどね……」
一方「結果はどォだったンだよ?」
佐天「まあ、お察しの通りです……」
どうしても、2分くらいで能力の限界が来てしまうのだ。
これなら、バラして数値を入力した方がマシなのではないかと思ったのだが、
一方『別々に入力しようとすンなよ? そンなンじゃ、これから先も、入力に一手間余計にかかっちまう』
と釘を刺されていた。
それに、種類が増えれば増えるほど、別々に組み込む方式の方が難しくなるのだとか。
先のことを見据えてのご鞭撻だったという訳だ。
一方「お察しの通りってなァ……。オマエ、昨日の『進歩してねェ』って言葉をどォ理解してやがったンだよ?」
佐天「はい? 言葉通りにですけど?」
どうやら、言葉通り以外の意味があったらしい。
だったら、説明してくれないと分かるわけないじゃないか。
一方「まァいい。ついでに、昨日の2つ同時に反射を適用させたときに言ってたやつも教えてやる」
佐天「ああ。あの単純に4倍速の消耗じゃない、って言ってたやつですか?」
一方「そォだ」
昨日は、光の反射に3分。風の反射に3分。両方に1分で限界がきた訳だ。
1種類だったら、10分の反射ができているのだから、4倍の消耗になると思ったのだが、そういうことではないらしい。
一方「そもそも、能力を使いこなせりゃ、打ち切れなンてもンはなくなるンだよ」
佐天「はい?」
などと、いきなり衝撃の発言をする一方通行。
能力に打ち止めがなくなる?
そんな馬鹿な。
大体、昨日、一昨日と能力が打ち止めになったから、座学をやったのではないか。
一方「能力ってのは、ゲームに出てくるよォなMPを消費する魔法とは訳が違う」
佐天「はぁ……」
何が言いたいのだろう?
一方「能力ってのは、演算によって発動してるのはさすがに知ってンだろ?」
佐天「は、はい」
どんな能力であっても、それが能力である限り、人の演算によって発生していることは間違いない。
それには、1つの例外もないのだ。
一方「つまり、だ。オマエにも分かりやすく言えば、人間の脳を、コンピュータのCPUだとすンだろ?」
佐天「CPU?」
なんとも不思議な感覚だ。
パソコンのCPUが人間の脳に当たるという例えはよく聞くが、逆は初めて聞いた。
一方「能力の発動には、そのCPUの使用率……。まァ、人間の場合で言う、BC(ブレインセル)稼働率ってのが問題になってくる」
佐天「処理能力ってことですか?」
一方「そォだな」
機械であるCPUは、その100%をフルに使用することが可能だが、当然、人間にはそんなことは不可能である。
呼吸や鼓動など、そういう生命維持活動のためにも、常に脳が使用されているからだ。
だから、普通の人は、能力に使えるBC稼働率が精々50%から60%の間になるということらしい。
佐天「でも、それだったら、能力は打ち止めにならないですよね?」
一方「そォだな。だから、今度は、“脳の疲労”が問題になる」
人間には、さきほどの呼吸や鼓動のように、演算をし続けても疲労することがない一定のラインが存在する。
例えば、佐天が、能力に30%は脳を使用し続けることができるとする。
すると、30%以下の能力はいくらでも使えるのだが、それ以上の能力の使用を続けると、脳が疲弊して、そのうち能力が使えなくなるという訳だ。
大抵の能力者は、このラインを超える能力しか持っていないため、永久に使い続けることはできない。
それを踏まえてもらうと、一方通行というのが、如何に例外的な存在と言えるか分かってもらえるだろう。
この例で言うならば、佐天が1種類の反射の膜を張るのに、40%必要で、2種類適用させると、50%近く必要になる。
だが、一方通行は、ほぼ全ての自分に害のある種類の数値を入力させ、尚且つ全身に反射の膜を自動で纏わせている。
それを、このライン以下の水準で保っているのだ。
これを怪物と言わずして、なんと言おう。
一方「感情なンかにもよって、数値が上下するンだけどな」
恐怖を感じると、能力に割けるBC稼働率がガクンと落ちるのは、その一例ということだそうだ。
一方「要するに、スゲェ能力を使おうとするには、大量の処理能力が必要になるンだよ」
佐天「なるほど……」
一方「そンな能力を長く使えるようにするには、どォすりゃいいか分かるか?」
佐天「え、ええっと……」
既に佐天のBC稼働率は凄いことになっていたので、もう目を回す寸前であった。
そんな状態の彼女にいきなり質問をしても、答えられるはずもない。
一方「答えは簡単だ。分母をでかくするか、分子を小さくすりゃいい」
考える間もなく、一方通行が答えを言う。
つまり、脳の処理能力を上げるか、能力の計算式を効率化すればいいという話につながる。
分母である脳の処理能力は、日々の積み重ねであるので、急激には変化しにくい。
しかし、分子である能力の計算式は、きっかけさえつかめれば、1日で驚くような成果がでる訳だ。
佐天「あ。じゃあ、私がだんだん能力を使えるようになってきてるのは……」
一方「そォだ。能力の計算式をスマートにできてるからだろォな」
昨日の『進歩がない』というのは、いつまでも計算式を効率化せずに、同じものを使用し続けているということに対しての言葉だったのだ。
こんなこと、先日まで無能力者だった佐天には、説明されなければ分かるわけがない。
佐天「それで、効率化っていうのはどうすればいいんですか?」
一方「心配すンな。手は貸してやる」
学園都市最高の頭脳をもつ最強の能力者、一方通行の出番である。
佐天「ふぃーっ」
一方「こンなことなら、最初からこォしておくべきだったかもしンねェな」
少し一方通行が裏技的なことをしたおかげで、お昼を回る頃には、熱ベクトルの反射もできるようになっていた。
裏技的なこととは、佐天が能力を使用している際に、脳の信号をちょこっと操作しただけである。
素人がこんなことをすれば、記憶障害が起こる可能性もあるのだが、一方通行はさすがにそこまでは踏み込まない。
あくまで、きっかけを与えるというレベルにとどめている。
しかし、その程度の干渉でも、3種類の反射の膜を5分も維持できるレベルにまで、佐天を引き上げることに成功していた。
驚くべき進歩といえるだろう。
佐天「それじゃ、そろそろお昼にしましょうか」
ニコニコ笑顔で一方通行に提案する。
そんな顔になってしまうのも仕方ない。
何せ、今の佐天は『超佐天』と言っても過言ではないのだ。
いや、この名前はあまり良くないので却下するが。
一方「そォだなァ……」
時計を見ると、もう午後1時に差し掛かりそうな時間だった。
少し集中しすぎただろうか?
前日までは、11時ちょっとにお昼を取っていたので、すごく空腹だ。
と、そのとき、リビングと隣の部屋を繋ぐ扉が勝手に開いた。
いや、誰かによって開かれた。
???「いい加減、お腹空いたんだけどー?」
佐天「え?」
一方「あ……」
▽でっかいミサカさんがあらわれた。
一方「なンで出てきてンですかァ!? 番外個体ォォォ!!」
番外個体「だってお腹空いたし」
打ち止め「み、ミサカも限界……」
佐天「うわ!! 増えた!?」
今度は小さい御坂さんまで登場。
この家では、御坂さんの栽培でもしているのだろうか?
それに、一方通行さんのテンションが凄いことになってる。
佐天「えーっと……」
打ち止め「初めまして! ミサカは打ち止めっていうの、ってミサカはミサカは自己紹介してみたり!」
番外個体「ミサカは番外個体って呼んでね☆」
佐天「あ、佐天涙子です」
よろしく、と頭を下げる。
何がなんだかわからずに、とりあえず自己紹介をしてみたが、つまり、どういうことなんだろうか?
説明をしてもらおうと佐天が振り返ると、最終回に逆転ホームランを打たれたピッチャーのみたいな顔をした男がそこにいた。
というか、一方通行であった。
佐天「ど、どうしたんですか?」
一方「な、なンでもねェ……」
そんなこと言われても、明らかに顔色が悪い。
いや、彼はもともとこのくらい白かったか。
番外個体「ねえ。お腹空いたってば」
だが、そんな一方通行にお構いなく、自分の要求を突き通そうとする番外個体と名乗る御坂さん(大)。
打ち止め「大丈夫? ってミサカはミサカは顔色が悪いアナタに訪ねてみる」
一方で、そんな彼を気遣う御坂さん(小)。
一方「…………」
そして、銅像のように動かなくなった一方通行さん。
やばい。
これどうすればいいんだろう?
佐天「ええと、お二人は、御坂さんのお姉さんと妹さんでいいんですか?」
とにかく、話を進めるために、2人の正体について聞いて見ることにした。
ただ、御坂さんに姉妹がいるなんて話は聞いたことがない。
もしかしたら、従姉妹か何かの可能性もある。
打ち止め「うん。ミサカはお姉様の妹だよ、ってミサカはミサカはあなたの疑問に答えてみる」
番外個体「ミサカも妹だよー」
佐天「えっ?」
御坂さん(大)も妹さんだって?
こんな外見で、私と同じ年だとでもいうのか?
見た目は高校生にも見える。
番外個体と名乗る御坂さん(大)が妹さんということは若干信じられない。
が、彼女たちが御坂さんの妹ということなら1つ説明がつくことがある。
佐天「なるほど、そういうことだったんですか」
うんうん、と頷く佐天。
他の3人は、彼女が何を納得しているのか分からず首をかしげる。
佐天「妹さんをここに引き取るってことで、御坂さんと一悶着あったんですね?」
一方「は?」
御坂が一方通行を嫌っている理由、それに、彼女から妹がいるという話を聞かなかった理由もそれが原因なのだろう。
なぜここで2人を預かっているのかは分からない。
だが、佐天がこの2人のことを知ったら、ほぼ間違いなく御坂美琴に連絡が行っていたはずだ。
そうなると、落ち着き始めた一方通行と御坂美琴の関係がまた混ぜっ返しになる可能性もある。
そうならないように、一方通行は彼女たちの存在を私に隠していたのだろう、と佐天は察したのであった。
もっとも、完全に勘違いな訳だが。
番外個体「いや、違―――」
一方「実は、そォなんだ」
そんなうまく言い逃れるチャンスを見逃すほど、学園都市の第一位はマヌケではない。
番外個体のセリフを遮ると、オマエは黙ってろという視線を打ち止めと番外個体に向ける。
一方「そォいう訳で、超電磁砲には黙っていてくれねェか?」
佐天「フクザツな事情があるんですねえ……」
あえて詳しい事情を説明しなかったり、御坂美琴とオリジナルと言わないようにする。
それに気をつけていれば、あとは佐天が勝手に想像で補ってくれるはずだ。
佐天「へえー。打ち止めちゃんがレベル3で、番外個体さんがレベル4なんだー」
打ち止め「そうだよ、ってミサカはミサカは胸を張ってみる」
番外個体「ぺったんこな胸だけどね」
昼食を取っている間、そんな会話をしていた。
ノリのいい佐天と、人見知りしないミサカ姉妹が意気投合するのに時間は掛からなかった。
具体的に言うと、5分くらい。
知り合って4日経っても緊張してしまう一方通行とは大違いだ。
2人が顔見知りに似ているということも関係あるのかもしれない。
自分の能力に関することや、彼女らの姉、御坂美琴の話で大いに盛り上がった。
そして、そんな楽しい昼食が終わるころには、午後2時になってしまっていた。
今日は座学の方はどうするのだろうか?
一方「今日は、もうそンな気分じゃねェ……」
なんかそんなことを言って、自分の部屋らしきところに引っ込んでいく。
ってことは、今日はもう終わり?
打ち止め「それじゃ、ミサカたちとゲームして遊ぼ、ってミサカはミサカは袖をグイグイ引っ張ってアピールしてみたり」
番外個体「最終信号は弱っちいからねえ。片手のミサカにも負けるくらいだし」
帰ろうかと思っていたところに、2人からゲームをしないかと誘われた。
授業もなくなったことだし、特に断る理由もないだろう。
というか、片手の人に負けるって、逆に難しくないだろうか?
打ち止め「ぬわーっ、また負けたーっ!!」
こ、これがこの子の実力か……。
ただ、佐天は番外個体程大人気なくなかったので、適度に負けてあげることにした。
初めて勝ったときの喜び方は非常にかわいくて、写真に収めたいくらいだった。
白井黒子が見たら発狂ものである。
楽しくゲームをしていると、あっという間に時間が過ぎ、気付いたときには夕方になっていた。
帰宅した黄泉川の作った夕飯までご馳走になった。
料理風景を見て、キッチンにあった大量の炊飯器はそういう風に使うのかと驚愕したものだ。
なんとも常識外の人ばかり住んでいる部屋である。
ちなみに、黄泉川は、夕食を作ると「今日も夜勤じゃん」と言って、飛び出していった。
ここのところ忙しいらしいので仕方ない。
佐天「あちゃー。もう真っ暗だよー……」
日が完全に落ちた外を眺めながら、佐天がつぶやく。
別にバスや電車を使ってここまで通っている訳ではないのだが、完全下校時刻の後はスキルアウトの活動も活発化する。
ぶっちゃげ治安が悪くなるのだ。
大通りには警備員が巡回しているのだが、さすがに細い路地までは見回りきれていないのが現状である。
佐天「ま、大丈夫かな?」
打ち止め「ここから近いの? ってミサカはミサカは心配そうな目でサテンお姉ちゃんを見つめてみる」
打ち止めにサテンお姉ちゃんと呼ばれるのは、いつの間にか定着していた呼び名だ。
そう呼ばれるのは嫌いじゃない。
弟にお姉ちゃんと呼ばれたいた頃を思い出して、なんだか嬉しくなる。
佐天「15分くらいかな。走っていけば、5分くらい」
スキルアウトの溜まり場も特にないはずだし、そんなに心配する距離でもないだろう。
一方、ソファーでくつろいでいる一方通行は、別のことを心配をしていた。
危険なのはスキルアウトだけではない。
一方(どンなバカが狙ってるか分かったもンじゃねェ……)
今のところ、学園都市としては、一方通行にも佐天にも手出しはしてきていないが、一方通行に恨みのある人間が、彼女を狙う危険性は捨てきれない。
何しろ自分と同じ能力を持っている。
たとえ、自分に到底及ばない能力しか持っていないと知っていても、八つ当たりの対象になる可能性がある。
いや、自分に及ばない能力しか持っていないから、だろうか。
昼間ならまだしも、こんな時間に1人で帰すのは危険極まりない。
番外個体「大丈夫かにゃ~ん? 暗い夜道を女の子一人で帰すのってどうなの?」
そんな考えを読んだのか、番外個体が一方通行の方を向きながら言う。
その顔は、ものすごくニヤニヤしている。
これは、暗に「お前が送っていけ」と言っているのだろう。
それに気付いた佐天が、いや、別にそこまでしてもらわなくても、と言おうとしたところで、
一方「チッ」
と舌打ちをして、一方通行は杖を持って立ち上がった。
多分、送ってくれるつもりなのだろう。
やっぱりいい人かも、と佐天は改めて思うのであった。
パーセンテージは適当です。説明が分かり難かったかな? 今後の展開に関係させる可能性もあるので、理解してもらえれば幸いです。
あと、今の佐天さんは、『手の甲だけ、3種類、5分、強度弱』なので、まだレベル1です。かなりレベル2に近いですけど。
修行編(第二章)もあと2回の予定。進行具合によっては、次で終わるかも。
あと、今の佐天さんは、『手の甲だけ、3種類、5分、強度弱』なので、まだレベル1です。かなりレベル2に近いですけど。
修行編(第二章)もあと2回の予定。進行具合によっては、次で終わるかも。
11758号「お疲れ様です、とミサカは>>1を労います」
乙。じゃあ佐天さんは俺の嫁。体は大人頭脳は子供の俺でも説明がわかりやすくて面白いです。
乙
> 『手の甲だけ、3種類、5分、強度弱』
手のひらじゃなくて、甲なのか…
地味に使いづらそうな部位だな
> 『手の甲だけ、3種類、5分、強度弱』
手のひらじゃなくて、甲なのか…
地味に使いづらそうな部位だな
番外個体と打ち止めが混じってほのぼの度が増したなww
しかし一方さん、さすがのツンデレである
しかし一方さん、さすがのツンデレである
>>368はジョニーデップに激似な人を嫁にしたいんだな。
>>377
名古屋市在住っていう脳内設定
名古屋市在住っていう脳内設定
>>御坂さんの栽培
養殖、なら間違いでもないような気がするw
養殖、なら間違いでもないような気がするw
>>379
そのうち食べちゃうだろうしな
そのうち食べちゃうだろうしな
今思ったけど他の漫画やアニメでベクトル操作ぽいのってあるかな?
自分はレイヴのディープスノーの無の流動が思いついた。
あれは、高い精神力が必要で血や雨や風などの元々流れがあるやつしか操れないけど(その代わり遠距離からでも使える)
自分はレイヴのディープスノーの無の流動が思いついた。
あれは、高い精神力が必要で血や雨や風などの元々流れがあるやつしか操れないけど(その代わり遠距離からでも使える)
能力についての解釈がわかりやすくていいな
にしても打ち止めや番外個体と違って隠す理由も無いのに未だに出てこない芳川ってww
にしても打ち止めや番外個体と違って隠す理由も無いのに未だに出てこない芳川ってww
某SSみたいにその内
「働けェえええええ!」とか怒鳴られそうな芳川だな
「働けェえええええ!」とか怒鳴られそうな芳川だな
>>1乙だぜ☆
佐天さんがレベルアップするの見てると、わっくわくする
佐天さんがレベルアップするの見てると、わっくわくする
一方「よし。いいぞ」
佐天「い、行きます……」
一方通行による能力開発も4日目。
この日は“強度”に関する能力開発を行うことにした。
昨日までに、佐天は、5分間、光、風、熱の反射ができるようになっていた。
そこで、今日から次のステップに移ることにした訳である。
佐天「おぉ……」
一方「上出来だ」
ポトリと床に消しゴムが落ちる。
ここ数日、目覚しい進化を遂げている佐天だったが、今日は特に凄かった。
昨日から導入した、一方通行による裏技的な能力開発のおかげもあるだろう。
とにかく、この4日間の中では、一番の成長を遂げたといえる。
一体この日何ができたのか?
―――そう。ついに、固体の反射に成功したのだ。
―――数時間前
佐天「おはようございまーす!!」
???「あら、おはよう」
いつも通りの時間に部屋を訪れると、知らない人が玄関に立っていた。
一瞬、部屋を間違えてしまったかとも思ったが、ここで間違いはなさそうである。
……ということは、ドロボウ?
いや、それなら、一方通行が気が付かないということはない。
???「貴女が、佐天涙子ちゃん?」
佐天「あ、はい。あのー……。あなたは?」
自分のことを知っているということは、この人もここに住んでいるに違いない。
やけに白衣が似合っているが、研究者か何かなのだろうか?
芳川「私は、芳川桔梗。黄泉川愛穂の友人といったところかしら。ここで居候させてもらってるの」
居候?
そうなると、この3日間まったく姿を見なかったのは謎だ。
佐天は改めて、その女性を眺めた。
こう言っては失礼かもしれないが、薄幸そうな人に見える。
芳川「基本的に家にいるけど、いないものと思ってくれていいわよ」
佐天「はい?」
芳川「だって、私、今から寝るんですもの」
そういうと、フラフラした足取りで、右の部屋に消えていった。
そういうお仕事なのだろうか?
佐天「おはよーございます」
リビングに入ると、一方通行はソファーで缶コーヒーを飲んでいるところだった。
打ち止めと番外個体の姿は見当たらない。
佐天「あれ? 打ち止めちゃんと番外個体さんはどうしたんですか?」
一方「あいつらがいると集中できねェだろ?」
だから、部屋に閉じ込めたんだとか。
なんだか、自分のせいで、窮屈な思いをさせてしまい申し訳なくなる。
そういえば、さっきの人は芳川って言ったっけ?
何をしている人なんだろうか?
佐天は、もう1人の同居人について一方通行に聞いてみることにした。
佐天「さっき、芳川さんって方と会ったんですけど」
一方「芳川だと?」
空になった缶コーヒーを片付けていた一方通行が、その名前にピクリと反応する。
あれ?
何かマズイことでも聞いてしまったか?
一方「まァ、あいつはいないようなもンだと思ってくれ」
佐天「なんか本人もそんなこと言ってましたけど……」
なんともミステリアスな女性だ。
佐天の中で、妙にいいイメージが定着しつつあるのだが、その正体はダメダメなオトナである、という現実を彼女は知らない。
知らない方がいいことは、世の中にはたくさんあるのだ。
一方「今日は、強度について説明する」
佐天「『強度』っていうのは、反射膜のですよね?」
一方「そうだ」
反射の強度は、『自分だけの現実』の影響を多大に受ける。
簡単に言えば、反射できると思ったものは反射でき、反射できないと思ったものはできない。
当然、事前にその反射する“種類”の情報を入力していなければ、反射することはできない。
例えば、物理現象の反射が可能である能力者が、人間の拳を反射することはできても、拳銃を反射させることはできないということは想像しやすいだろう。
この場合、拳銃の弾丸は反射の膜を通過することになる。
つまり、自分の反射に自信を持っていれば、そう簡単に突き破られることはないのだ。
―――なので、一方通行はこのことを佐天に教えなかった。
その方が、いい結果がでると見込んだのである。
それ以外にも、“強度”について話せることがあるので、そちらを説明することにした。
一方「反射の『強度』ってのは、下げることができンだ」
佐天「えーと……。なんのために?」
一方「じゃねェと、全身に反射を使ったときに、真っ暗で前が見えねェじゃねェか」
佐天「な、なるほど……」
目に入る光を反射してしまうためである。
これは、何も光に限ったことではない。
気温や重力などといったものまで反射してしまっては、攻撃を受け付けなくなっても、まともな身動きを取ることなどできない。
一方「ま、そンな心配必要ねェンだけどな」
脳は、通常行動を取るのに必要な光量や温度などの基本情報を無意識に保存しているからだ。
その基本情報以上のベクトルが反射の膜に触れたとき、反射が発動することになる。
ちなみに、演算をし直せば、基本情報の数値を変更することもできる。
その例が、一方通行の紫外線の反射だ。
一方「そんなところかねェ?」
あらかた説明を終えた一方通行が一息つく。
基礎情報っていうのがあるから、普通にしてれば下げる必要はないって話だよね?
佐天「ってことは、『強度』に関しては、何も練習する必要はないんですか?」
一方「下げる練習ってのも、実のところ必要ねェもンだしなァ。逆に計算量が多くなるだけだしよォ」
ただでさえ、演算にいっぱいいっぱいなのに、弱くするのに余計な計算式が必要なんて、なんて無駄ななんだろう……。
でも、そうすると、“強度”に関しては説明だけということになるのか。
この後は、また“種類”を増やす特訓でもするのだろうか?
佐天「それじゃあ、何をするんですか?」
一方「そォだな……。風の次のステップにいくとするかァ」
佐天「それって……」
一方「液体の反射ができるかどォかだな」
“気体”の上位レベルである“液体”の反射。
固体の反射よりは幾分簡単であるらしいが、それでもやはり難しいらしい。
一方「まァ、また手は貸してやる」
佐天「が、頑張ります」
できるかどうかは分からないけど。
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