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    元スレ美琴「極光の海に消えたあいつを追って」

    SS+覧 / PC版 /
    スレッド評価: スレッド評価について
    みんなの評価 : ★★★×5
    タグ : - とある魔術の禁書目録 + - 上条当麻 + - 御坂 + - 御坂美琴 + - 麦野沈利 + 追加: タグについて ※前スレ・次スレは、スレ番号だけ登録。駄スレにはタグつけず、スレ評価を。荒らしタグにはタグで対抗せず、タグ減点を。
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    51 = 35 :

    「騎士団長、騎士たちの再編は終わったか?」

    「7割方。今日の夕までには終了するかと。
     ただ、『大天使』やその後の戦闘により負傷率が高く、士気も落ちています」

    「今から北極海に派遣できる部隊はある?」

    「損傷率から考えると、一騎士団程度がせいぜいでしょう。
     何より終戦後という情勢を考えると、帰国以外で軍団を動かすことは難しいかと」

    「ロシアなんて所詮は敗戦国。実力で黙らせればいいだろーし。
     ただ、十字教の他の宗派が騒ぐのは厄介だな」

    「要は水中移動術式を使える人材が欲しいのですから、そこまで大人数でなくとも良いのではないでしょうか?」

    「捜索に当たってる清教派の天草式たちはどうなの?」

    「あれは海戦を得意とする集団ですし、可能性はありますが、なにぶん指揮系統が違うもので」

    「ようし、騎士団長、ロンドンのあの女狐に連絡して、天草式を動かさせろ。
     渋ったならこう言え。言うことを聞かないなら、私じきじきに聖ジョージ大聖堂の新しい磔刑像にしてしまうとな」

    52 = 35 :

    美琴は一人、街を彷徨っていた。
    少し風に当たってくると言い残し、あてもなく街へと飛び出したのだ。

    ふらふらとした彼女の足元で、黒い粉末のようなものが渦を巻いていた。
    無意識に漏れだした磁力に、砂鉄が反応しているのだ。
    普段の彼女なら起こり得ない、軽度とはいえ能力を制御できていない現実。
    自らの能力を最大限に活用して得た上条当麻の居場所は、それほどまでに彼女を打ちのめしていた。

    水深200m。
    水温が限りなく氷点に近いこの初冬のロシアの海では、特殊な装備なしに生命を維持することは不可能だ。
    ましてやあの少年は学生服のみで、丸一日以上海中にいるのだ。

    美琴は寂れた公園を見つけ、中へと入っていく。
    積もった雪も払わずに、ベンチへと座り込んだ。
    おもむろに取りだした携帯電話には、上条の携帯の位置座標が表示されたままであった。

    53 = 35 :

    彼女は再び能力を使い、上条の携帯を操った。
    送られてきた座標は、一度目と同じ場所。

    彼女は三度能力を使い、上条の携帯を操った。
    送られてきた座標は、二度目と同じ場所。

    彼女は何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も能力を使う。
    そのたびに送られてくる座標は、どれも寸分の狂いもなく同じ場所を示していて。

    その回数が両手の指では数えられなくなったころ、画面に一粒の滴が落ちた。
    それに続くように、二粒目、三粒目というように次々と水滴が携帯電話のモニタを濡らしていく。

    (……………………雨、じゃない)

    自分の頬を触ると、確かに濡れている。
    この時初めて、彼女は自分が涙を流していることに気付いた。

    せめてあの少年を、学園都市へと帰してやりたいと思う。
    しかし、水深200mまで潜れぬ身ではそれすらも叶わない。

    日も傾き始め、色褪せた公園に気を向ける人間などいない。
    つまり、彼女の嘆きを遮る者は誰もいない。
    あたりには、美琴の慟哭だけが悲しく響いていた。

    54 = 35 :

    どのくらい経っただろうか。
    美琴は、自分の前に誰かが立っていることに気付いた。
    正確には、『立っている誰かの気配を感じ取った』とするべきか。
    こんな時でも、電磁波レーダーは健在なのだ。

    美琴は顔を上げ、目の前に立っている女性を見た。
    白いシャツの上に右肩の裾がないジャケットを羽織り、ジーンズも左足部分が根元から切断されている奇妙ないでたち。
    天草式の聖人、神裂火織がそこにいた。

    「あなたが、上条当麻を探しているという少女でしょうか」

    「……あんたは……?」

    「イギリス清教第零聖堂区所属、『必要悪の教会』の神裂火織と申します。
     ですが、今はあえてこう名乗りましょう」

    凛とした雰囲気を、女性が放つ。

    「『Salvere000(救われぬ者に救いの手を)』、と」

    「…………」

    美琴は魔法名のことなど知らない。
    神裂の名乗った魔法名は、彼女にとっては何かのコードネームのようなものにしか聞こえなかった。
    しかし、心を疲弊させた彼女に、『救い』を意味するその単語は何故か沁み渡る。

    まるで『聖女』のような神裂が差し出す、暖かい手。

    気付けば、美琴はその手を自身の震える右手で掴んでいた。

    55 = 35 :

    今日はここまでです
    「ねーよwww」と思われるような突っ込みどころ満載だとは思いますが、生温かい目で見守ってやってください

    56 :


    期待してます!

    57 :

    これが本編でいいよwwww

    58 :

    原作のあれよりそれっぽいww

    59 :

    乙!!
    今後に期待

    60 :

    水深200Mでも電波届くのか…
    学園都市パネェ

    62 :

    どう考えても魔術側科学側のヒロイン2人だよな

    なんで魔術側はインなんとかがヒロインなんだよなっとくいかねー

    63 :

    >>62
    インデックスディスってんじゃねぇよ

    64 :

    正直いうと 大多数の人がディスる…

    これ以上は荒れるから お開きで

    65 :

    他を貶めて自を守るか 屑共

    67 :

    つか新約はインさんもだけど打ち止めも滝壺も扱い酷かったよね

    68 :

    シリーズ通したら全然扱いひどくないだろ
    むしろ新旧通してメインヒロイン(笑)なはずのなのに常に蚊帳の外な美琴はどうなんだよ

    69 :

    うぜえ
    荒らすな

    70 = 67 :

    新約はって言ってるのになんで新旧とか言いだすんだよw
    しかも美琴をメインヒロイン(笑)とか言ってるくせにわざわざ比較対象にあげるあたり必死さが伝わってくるわ地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/

    71 :

    そういうのは然るべきスレでお願いします地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/

    73 :

    >>1です
    たくさんのレスありがとうございます

    被害は少なかったのですが、物が散乱して家の中に足の踏み場がない……
    自治体の青年団にも駆り出されそうなので、ちょっと数日は家周りの事を優先したいと思います
    エターナったりはしないので、どうぞ長い目でお付き合いください

    >>60
    ちょっとくらいオーバースペック気味でも違和感がないのが学園都市製の長所だと思いますw地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/

    74 :

    待ってる

    被害が少なくて本当によかったですね地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/

    75 :

    地震の被害を受けられてるんですね。 お疲れさまです。
    そして、待ってる。地震情報:http://ex14.vip2ch.com/earthquake/

    76 :

    元気出せよ
    待ってるからさ!

    78 :

    いまだどこも大変みたいだからな…
    みんな頑張れ。超頑張れ

    79 :

    こんばんは
    東日本大震災の被害の余りの大きさに、ただただびっくりする毎日です
    犠牲者の方々のご冥福をお祈りすると共に、いまだ避難されている方々が一刻も早く平穏な日々を取り戻せるようお祈りします

    名前欄にも出るように自分は千葉なので震災の直接の被害は出なかったのですが、
    断水や液状化、何キロも離れた場所の大火事が自宅から見えたりと戸惑う事ばかりでした
    みなさま方は大丈夫でしょうか


    では、短いですが今日の分を投下していきます

    80 = 79 :


    美琴はホテルへと戻ってきていた。
    神裂はレッサーらとは既に接触していたようで、彼女らに聞いて美琴を探しに来たのだという。
    彼女が率いる部下たち約50名をホテルのロビーに押し込めたことでかなり人目を引く光景になるが、
    そんなことはおかまいなしに、美琴は神裂らに知り得たこと全てを打ち明けた。

    「水深200mですか……」

    「ええ。なんとかして、そこにいるだろうあいつを助けたいの」

    神裂は上条の携帯があるであろう場所のことを聞き、深く考え込む。
    水没からすでに丸一日。
    状況に対処するすべを持つ魔術師ならばともかく、不思議な右手を持つだけのあの少年に生き延びるすべはない。

    翻って、別の可能性を考えてみる。
    『ベツレヘムの星』は巨大な構造物だ。
    水没した時に、内部に空気が取り残されて、そこに退避しているということも考えられる。

    ただし、この場合は「電話は繋がるのに出ない、折り返してこない」という点が引っ掛かる。
    もし携帯電話とともにあるのならば、それは彼が電話に出られないほどに衰弱しているか、あるいは既に死亡しているか。

    しかし、だからと言って目の前の少女の幻想を壊してもよいということにはならない。
    絶望させるのは全ての可能性が絶たれてからでいい。

    「私たちの水中移動術式なら、たとえ深海でも行動可能です!」

    大声を出したのは目の前にいる神裂の部下である少女。

    81 = 79 :


    神裂が連れていたのは、「天草式十字凄教」という十字教の一派だ。
    元は日本を根拠地としていたが、今は女教皇である神裂のいるロンドンへとその根拠地を移しているのだという。

    レッサーが上条当麻の情報をイギリスに流したということは神裂を迎えた時に既に聞いた。
    それから短時間で人員を回してくるとは、英国王室はそれほどまでに上条当麻の捜索に力を入れているということか。

    「えっと……あんたたちも、マジュツ師なの?」

    「五和、と言います」

    「あいつと、関係あったりするの?」

    「……返しきれないほどの恩があります。それはもう、幾重にも」

    次から次へと「マジュツ師」が現れ、もはや慣れつつあるのだろう。
    上条の関わった「事件」のいずれかの当事者、あるいは彼に救われた人間だということはすぐに察しがついた。
    とにかく、今は少しでも味方が欲しい。

    82 = 79 :


    美琴らの話を聞き、天草式は彼らの持てる技術全てを駆使して、上条を救うための方策を練る。

    「上条当麻の携帯電話の反応があったという海域までは、やっぱり船を使うのが一番なのよな」

    「そこからはやはり潜る必要がありますね。
     上下船は一定深度以下には潜れませんし」

    「潜るっていっても、この深さと冷たさよ?
     いっそ学園都市の研究機関からからダイビング用の道具でも借りて来たほうがいいんじゃない?」

    「私たちの水中移動術式なら、泳げさえすれば呼吸も水温も問題はありません」

    「それよりも、問題は上条当麻の位置が掴めないことなのよな。
     正確な位置が分からなければ、闇雲に探すしかないのよ」

    「それについては絶対座標は分かっているわけだし、私のPDAについているGPSでリアルタイムに相対位置を確認できる。
     マジュツっていうのには位置が分かればそこまで案内してくれるカーナビみたいな便利なのはないの?」

    「せいぜい自分と目的地の位置を地図上に示すくらいですが」

    「じゃあ、あいつの携帯の位置が分かれば大丈夫ね。座標は────」

    水中移動術式は使えても、位置を特定できなかった天草式。
    位置を特定できても、水中では行動できなかった美琴たち。
    この二つが相補することによって、だんだんと展望が開けてくる。

    83 = 79 :


    「となればさっそく水中移動術式の構築にかかりましょうそうしましょう!」

    「えっ、ちょっ、ちょっと待ってよ!」

    と美琴は五和に引っ張られ、自分の部屋へと連れ込まれた。
    自分や10777号の着替えを引っ張り出され五和に物色されるが、当の彼女は渋い顔のまま。

    「うーん……。『土台』に使えそうな服はないみたいですね……」

    「土台?」

    「天草式の特性は「日常にあるものを使って魔術を発動する」というものなんです。
     ……『魔術』について、説明は必要ですか?」

    「発動原理の違う、超能力みたいなチカラでしょ。法則を理解し、術式を作り上げ、行使するんだっけ?
     あとは偶像崇拝だのなんだの、聞いたこともない話をいくつも聞かされたけど」

    「その偶像崇拝の理論を使って、『土台』になる服に様々な要素を付加し、それによって術式のための霊装とするつもりだったのですが……。
     あ、霊装というのは、魔術を発動させるために用意する道具のようなものです」

    自らの荷物の中にも、『土台』に適したものは無かったのだろう。
    しゅんとする五和に、美琴は言葉をかけあぐねる。
    そこへ、扉を開けて五和よりもいくらか年上の女性が入ってきた。

    「五和、みんなから『土台』になりそうな服、いろいろと借りてきたわよ」

    「対馬さん」

    対馬と呼ばれた女性と、その後ろから入ってきた10777号は、テーブルの上に赤い布の塊をばさばさと落とした。
    それを一枚一枚取り上げながら、美琴に合わせてサイズを測っていく。

    「皆、赤い服なのね」

    「そうですね。『土台』は防寒の要として『熱』の要素が必須ですから。
     赤は火の色、すなわち『熱』です」

    「その『熱』の要素を他の様々な要素で補強・加工して出来上がるのが天草式謹製の耐水・防寒霊装ってわけ。
     ……ん、この服なんかどう?」

    対馬が差し出したのは、男もののパーカー。
    少し美琴には大きい気もするが、他の服はどれも更にサイズが大きいため、これにすることにした。

    84 = 79 :


    「……おや、もう決めてしまったんですか?
     せっかく私の勝負服を提供しようと思ったんですが」

    いつの間にか部屋の中にいたレッサーに、一同は度肝を抜かれる。

    「……いつの間にいらしたのですか、とミサカは驚きます」

    「つい今しがたですよ。荷物の底から私のとっておきを見つけたもんでして」

    と、レッサーは背中からあるモノを取り出した。
    ソレを見た美琴と五和は思わず噴き出してしまう。

    それは、なめらかな真紅のベビードール。
    信じられないくらいのスッケスケ具合は、もはや下着としての機能を果たしていないのではないか。
    実際に着用したらアレとかソレとかが詳らかになるであろうそのブツは、どことなく某後輩のセンスに通じるものを持っていた。

    まさに開いた口が塞がらないといった一同の前で、レッサーはくねくねと悶えて見せる。

    「いやね、女たるものイザという時のためにこういう服は持っていてしかるべきなわけですよ。
     これだって上条当麻攻略のために用意したわけですが、結局お披露目する機会がなくてですね──ぎゃんっ!」

    レッサーはそこで言葉を切った。いや、切らざるを得なくなったと言うべきか。
    美琴の放った電撃によって全身を硬直させられた彼女は、あえなく床へと倒れこむ。

    「さー、あんな変態は放っておいて、さっさと防寒服を作っちゃいましょう」

    五和と対馬は、こくこくと首を縦に振るしかない。
    ぴくぴくと倒れこんだまま痙攣するレッサーの頬を、10777号が人差し指でつついていた。

    85 = 79 :


    『土台』は赤いパーカーに決定し、いよいよ防寒服作りへと取りかかる。
    まず五和は裁ちバサミを取り上げ、パーカーの肩のあたりを大胆に切り落とし──

    「ちょっと待って」

    「なんでしょう?」

    「そんな大胆に切っちゃっていいの!?」

    「とは言え、魔術的記号を考えると必要なことですが」

    それを言われると、魔術に関して全くのド素人である美琴には何も言い返せない。
    五和は気を取り直し、パーカーの改造へと戻った。

    そこからの作業は、美琴には全く理解不能であった。
    五和や対馬の裁縫技術は優れたものであったが、それがどのような意味を持つのかが全く理解できない。
    布地を服から切り離し、まったく違う色の糸で同じ場所に縫い合わせたり。
    胴を取り巻くように、不可解な模様を縫いつけたり。
    油性ペンで背中の部分に絵文字のようなものを書き込んだり。
    切断した袖を安全ピンのみで固定した時は、ひょっとしてこの連中はこれを自分に着せて大笑いするつもりなのでは、などとと疑ったり。

    こうして、ひどくアヴァンギャルドな防寒服は完成したのである。

    86 = 79 :


    「どうでしょう、御坂さん」

    まるで一仕事終えたというような顔で、五和は問うた。

    「あー……うん、いいんじゃない……?」

    目の前のパーカーはあまりにも前衛的すぎて、学園都市の生徒である美琴にもついていけない。

    「じゃあ、さっそくテストね。さあ、着てみて」

    「テストって言っても、何をすればいいのかしら?」

    「うーん、パーカー一枚でこの夜空の下に出るとか?
     耐水、ということを考えると、冷水に飛び込むのが一番いいとは思うけど」

    「冷たいシャワーを頭から浴びてみる、というのはどうでしょうか?」

    「……まずはこれを着て寒くないか、ということを試してみるわね」

    美琴はセーターを脱ぎ、代わりにパーカーの袖に腕を通す。
    身に付けた瞬間、なんだかじんわりと暖かく優しい感触がした。

    暖炉の効いた部屋から廊下に出てみる。
    上着だけの時はなんとなく肌寒く感じたものの、このパーカーを着ている今は寒さを微塵も感じない。
    換気用の窓を開けて、顔を近づけて見た、
    身を切るような凍てつく風も、今はただのそよ風でしかない。

    87 = 79 :


    次は、耐水性を調べる番だ。
    パーカーを着たまま、部屋に備え付けられた浴室へと向かう。
    その後ろから、五和がついてきた。

    服を着たまま浴槽に立ち、パーカーのフードを被ったままシャワーを浴びる。
    シュールな光景に苦笑いしながら、美琴は蛇口を捻った。
    刹那、美琴の顔を冷水が襲う。
    が、

    「……冷たいことは冷たいけど、体が冷える感じはしないわね」

    どうやら服だけではなく体全体が水を弾いているらしく、服も顔も全く濡れてはいない。
    あちこち手で触って確かめてみるが、どこも冷えてはおらず、優しい温かみを保っていた。

    最後に、洗面器にお湯を張り、突っ込んでみる。
    どういう理屈かは分からないが、不思議なことに呼吸が出来る。

    「……ということは」

    「……成功ね」

    わーっという歓声とともに、五和は美琴の手を握った。
    不意に近づけられた顔に、不覚にもドキッとしたのは日頃白井に妙なことを吹き込まれているせいだろうか。

    「……これで、あの馬鹿を探しに行けるってわけね」

    その言葉に、緩んでいた五和の表情が真剣になる。

    「ええ、絶対にあの人を見つけ出してあげましょう!」

    88 = 79 :


    防寒服が完成したことを受けて、対馬は他の仲間と同じものを作れるだけ作る、と部屋を後にした。
    レッサーはレッサーでやることがある、と帰って行ったようだ。
    美琴の部屋に残されたのは、美琴、10777号、そして五和の三人だ。

    「……そういえば、御坂さんは上条さんとどのような関係なんですか?」

    「ぐふっ!? え、な、ちょ!?」

    大人しそうに見えた少女からのいきなりの一撃に、美琴は思わず赤面してしまう。

    「かかか関係って! 別に何でもないわよ! うんフツーの友達よフツーの!」

    悲しいことだが、客観的に見れば御坂美琴と上条当麻の関係はただの『友人』なのだろう。
    数々のアプローチも、いまだかつて通じたことはない。

    「だけど、私にとってはあいつは大事な恩人、かな」

    「……大事な恩人、ですか」

    五和は椅子に背を預け、ぼんやりと天井を見つめる。

    「私、いえ私たちにとっても、上条さんは大事な恩人です」

    「やっぱり、あいつが首を突っ込んで行ったんでしょ」

    「ええ、それはもう物凄い剣幕で。
     ただ、最初は誤解があって、敵対する同士でしたけど」

    五和は、どこか懐かしむように言った。

    「その誤解が解けて同じ目的のために一緒に戦うことになったんですけど、その時のあの人のことはよく覚えています。
     250人の武装した魔術師の部隊のど真ん中に、拳一つで飛び込んで行ったですから。
     ……キオッジアでもアヴィニヨンでも、あの人は怯むことなく勇敢に強大な敵に立ち向かっていったんです。
     その時、私は、上条さんはただ漠然ととても腕っ節の強い人だと思っていました」

    キオッジア、アヴィニヨン。どちらも外国の地名だ。
    特に後者は、学園都市による鎮圧戦のさなかに上条が電話をかけてきた場所でもある。
    その時、この少女は彼の近くにいたのか。

    89 = 79 :


    「……でも、実際は違ったんです。
     不思議な右腕を持つあの人は、私たち魔術師のように防御術式を張ることも、回復術式で傷を癒すこともできない。
     生身一つで戦ってきたんです。それこそ、文字通りずたぼろになるまで」

    その言葉で思い浮かぶのは、数週間前に見た満身創痍の上条の姿だ。
    あの夜も、彼は誰かのために自分の命を張って闘っていたのだろう。

    「その時、思ったんです。この人が強いのは腕っ節じゃない。心が強いんだって。
     そして、願ったんです。なれるなら、私はこの人のようになりたいって」

    生まれも境遇も違う五和が、自分と似たような思いを持っていることに美琴は驚く。
    きっと同じ思いを抱えている人間は、彼がその右腕を振るった数だけいるのだろう。

    一方通行と相対したあの忌まわしい事件は、一生に一度あるかないかのことだと思っていた。
    けれど、彼にとってはそれは日常茶飯事のことなのかも知れない。

    それでも、美琴にとってあの事件は人生を変える大きな転機であり、
    生き方も考え方も大きく変化した。
    否、影響された、と言うべきだろう。

    90 = 79 :


    上条当麻は、妹たちの件で自らを責める美琴に『笑っていてもいい』と言ってくれた。
    ならば、美琴の願いは一つ。あの少年にも、笑っていてほしい。
    彼女の心を照らす、太陽のような笑顔で。

    「私も、同じ。誰よりもまっすぐに、誰かのために全力で突っ走れる。そんなところが、……良いのかもね。
     そう言ったらきっと、『そんなの当然だろ』って言うんだろうけどさ」

    「言いそうですね」

    美琴と五和は目を合わせてクスクスと笑いあう。

    「だから、私はさっさとあいつに借りを……。
     ……ううん、誤魔化すのはやめる。私は、あいつの為にできることをしたい」

    これは、宣言。そして、宣戦。

    「……負けませんよ」

    その意を汲んだのだろう、五和が挑戦的に微笑み手を伸ばしてくる。

    「こっちだって」

    美琴は、その手を力強く握り返した。



    「……そう言えば、お姉様はあの方と携帯電話をペア契約にしていましたね、とミサカは置いてきぼりの腹いせに爆弾を投げてみます」

    「何……ですって……?」

    「そそそそれは契約で貰えるおまけが欲しかったからで! 決してそういうんじゃないんだから!!」

    「……御坂さん、残念ながら私と貴女は天をともに戴くことはできないようです」

    「なんだか怖い目で睨まないで! つーかその槍は一体どこから!?」

    妙に据わった目で海軍用船上槍(フリウリスピア)を構える五和に、美琴は思いっきりドン引きする。
    相変わらず無表情ながらもどこかふてくされた感のある妹の一言で始まった女の戦いは、ぎゃあぎゃあと深夜まで続いたのであった。

    91 = 79 :

    今日は以上です
    日が開いてすみませんでした
    次回は早めにこれるように頑張ります

    92 :

    遂に来たか

    93 :

    乙待ってた

    千葉かぁ。なんか道路がぐちゃぐちゃになってる映像は見たな。
    こっちは停電断水ガソリン不足、しまいにゃ放射能…
    早く日常に戻りたい

    94 :

    待ってたぜ

    95 :

    戻ったか!

    96 :

    戻ったか!!

    97 :

    捩ったか!!!

    98 :

    エターニアとのクロスかと思ったのに……
    でも期待

    99 :

    こんばんは
    レスありがとうございます

    どんどん妄想具合が酷くなっていきますが、今日の分を投下していきます

    100 = 99 :


    11月1日。

    翌朝。
    朝早くホテルを出た一行はいくつかのグループに別れ、上条当麻の携帯電話が沈んでいる場所へと向かうこととなった。
    美琴が上条のストラップを見つけた港から少し離れた海岸にて再び合流する。
    そこで、天草式の面々がおもむろに懐から紙片を取り出し、海面へと投げ入れた。

    刹那、大きな音を立て、水を吸った紙片が木製のボートへと変化する。

    「え!? どういうこと!? これもマジュツなの?」

    「そういうことなのよな。紙は木で作られ、木は船を造る。そのつながりを生かせば、この通りなのよな。
     学校で習っただろう? 我らは島原の隠れキリシタンの末裔である『天草式』。
     海上のことに関してはお任せなのよな!」

    「質量保存の法則だの何だの、ガン無視じゃないのよ……」

    「お姉様だって何もない虚空から電撃を生みだす超能力者なのですから、とやかく言えることではないのでは? とミサカは尋ねてみます」

    「でも、こんな小さなボートだと、氷が浮いてる海は渡れないんじゃない?」

    「ふっふっふ、そこはこの建宮さんにぬかりはないのよ」

    建宮が懐から取り出した、ボートに変化したものよりも幾分大きい数枚の紙片。
    それを手際よく紙飛行機の形に折ると、海上に向けて放った。
    紙飛行機はふらふらと飛んでいき、やがて着水するとともに、大きな船へと変化した。

    「じゃじゃ~ん!! この為に用意した『スーパー上下船 砕氷船バージョン』なのよなー!!」

    「「「おおーーっ!!」」」

    船は全部で3隻。全長30m、幅8mほどの木製の船体の先端に、何やら模様のようなものが描かれている。
    建宮が指をパチリと鳴らすと、その先端部から勢いよく杭のようなものが飛び出し、天草式の男衆がやおら歓声を上げる。
    本当に大丈夫なのか、ふざけているのではないかと美琴が心配していると、

    「た、建宮さんはあんな感じの人ですけど、それでもやる時はやる人ですから」

    五和に励まされ、顔を引きつらせながらも美琴はボートへと乗りこんだ。


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