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    元スレ女「────好き嫌いなんて、許さないんだからね?」

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    51 = 32 :

    「あの、すみません」

    事務員「ん? なんだい?」

    「その、見間違いかもしれませんが……今、なんか、猫をその袋の中にいれてませんでした?」

    事務員「ああ、そうなんだよ。猫の死体を片付けてくれって教員の方から連絡が入ってね」

    「……すみません、その猫、ちょっと見せて頂いても構いませんか?」

    事務員「ああ、別に構わないけど……」

    「……」

    「……やっぱり」

    事務員「知ってる猫かい?」

    「ええ、よく餌をやってました」

    事務員「そうかぁ……この猫、学園に住み着いていたんだよ」

    「よく見かけるとは思っていましたが、学園の敷地内に住んでたんですね……」

    事務員「うん。この学園は、ほら、大らかな校風だろう?」

    事務員「生徒たちが餌をやってるのを、先生方も見てみないふりをして黙認していたようなんだ」

    53 = 32 :

    「昨日の昼までは元気だったようですけど、どうして急に死んでしまったんでしょうか」

    事務員「うーん……」

    「何かご存知なんですか?」

    事務員「余り周りに言いふらさないでくれよ? その、猫の遺体のそばに、食べかけのお団子のようなものが転がっていたんだ」

    「それって……」

    事務員「うん。毒団子、かもしれないなぁ。ホウ酸とかを練り込んだものを……いや、もちろん真相は分らないんだけども」

    「誰が、そんな……」

    事務員「君みたいに動物好きな人間ばかりじゃないってことさ。気まぐれに可愛がる人もいれば、気まぐれに傷つける人もいる、ってことじゃないかな」

    「……」

    「この猫、どうするんです?」

    事務員「動物の死体は、基本的に飼い主や土地の所有者に処理責任があるんだ。私も仕事だしね、焼却炉に入れて処分するところだよ」

    事務員「もちろん役所に連絡するという手もあるんだが……その場合は有料になるし、結局は、清掃業者によってゴミとして処理されることになるから同じことだね」

    「ゴミ……」

    「そんなの絶対に駄目です!」

    54 = 32 :

    「お前、いつからそこに……」

    「ゴミとして処分するなんて駄目です! そ、そんなの、そんなのポチがあまりに可哀想……ひッぐ……」

    「おい、泣くなって」

    「ひッく……だ、だって、……ひぐッ……だってぇ……」

    事務員「ん……」

    「あの、その猫、俺たちに任せてもらえませんか?」

    事務員「任せるって……どうするんだい?」

    「一週間程度ですけど、一応餌をやってた者の責任として墓くらい作ってやりたいんです」

    事務員「そうか、……分かった。それじゃあ後は任せてもいいね?」

    「ええ。ありがとうございます」

    事務員「いや、こちらこそ礼を言うよ。ありがとう」

    「ひぐッ……ひッく……」

    55 = 32 :

    ***

    「ふぅ。これでいいかな」

    「うん……」

    「学園の敷地を勝手に掘って、勝手に墓なんて作って……怒られないよな?」

    「うん……」

    「まぁでもこれで、あいつも心置きなく成仏できるだろ」

    「うん……」

    「おい、いい加減その辛気臭い顔をなんとかしろ」

    「ごめんなさい……」

    「……」

    「……」

    「別れは、……辛いか?」

    「……え」

    56 = 39 :

    しえん

    57 = 32 :

    「別れは辛いか?」

    「……」

    「うん。辛い……辛かった」

    「そうか」

    「そしてきっと、これからも……」

    「……そうか」

    「うん」

    「……」

    「……」

    「俺は」

    「?」

    「俺は、……ハンバーグが好きだ」

    58 = 32 :

    「え……」

    「だから、ハンバーグ。俺の好物」

    「……」

    「子供っぽいって笑いたきゃ、笑えよ」

    「あ……」

    「う、ううん! ハンバーグ、好きなんだ」

    「ああ」

    「そっかぁ……へへ……ぐすッ……そうかぁ……」

    「……」

    「ありがとう……へへ……」

    「どうしてお前が礼を言うんだ」

    「うん……そうだね。でも、ありがとう」

    「ありがとね……」

    59 = 32 :

    ***

    ────── 酷薄という概念もまた、ひとの感傷による産物に過ぎない

    例えば、苦しみ抜いて死んだあの猫……

    学園のとある男子生徒が、人目を避けるように猫に団子状のものを与えていた場面を見たのは偶然だった

    彼がそのような行動をするに至った理由は分からないが……個人的鬱憤を発散するために気紛れに殺した、という所だろうか

    気紛れ、遊び。生き物を殺す理由なんてのはその程度で十分なのだ

    肉食獣は、弱った獲物を子供に与えて『遊ばせ』るし、子供はその遊戯を通して狩りを学ぶ

    狩りを必要としなくなった我々には生き物で『遊ぶ』理由がない、と?

    違う────獣の子は、遊びに際して、『これは狩りの練習だ』などという目的をもって臨んだりはしない

    遊びは遊びそのものが目的なのだから

    いきものあそびに理由などいらない、それは全く残酷ですらないのだ

    自分は、今回の件に学ばねばならない

    酷薄さもまた、ひとの感傷の産物に過ぎないと────

    61 = 32 :

    >>60
    君のおかげで頑張れるよありがとう ;-)
    これから先かなり長いがどうか眠たくなるまで付き合ってくれ

    62 = 39 :

    うるさいとっとと書け

    63 :

    黙って書けないのかハゲ
    文才もないし早く落とせ

    64 = 32 :

    ***

    先生「先ほど施設の前で、偶然君の妹に……、ふふ、彼女に会ったよ」

    「え……施設の外に? あいつ一体何を……」

    先生「話をしたのは本当に久しぶりだったのだけれど、……いや、とても朗らかな、いい女の子に育ったのだね彼女は」

    「朗らか……ですか?」

    先生「おや、認識の相違があるのかな?」

    先生「ふふ……まぁいい。それでは、早速だけど先週の話の続きを再開しようか」

    「はい、……俺があいつと絆を結ぶ資格がない、という話でした」

    先生「うん、そうだ。でもそのためにはまず、そもそも『絆』というものに対する共通見解に至る必要があると思わないかい?」

    「そうですね」

    先生「月並みな意見で大変恐縮だが、僕はこう考えている」

    先生「『絆』というのは、人と人とがお互いを大切に想い合うときに、そこに確かにあると感じられる心理的な繋がり、のようなもののことを言うんじゃないか、とね」

    「……」

    65 = 32 :

    先生「はは……まぁ、いささか抽象的に過ぎる説明になってしまうが、でもそれは仕方がない」

    先生「絆というものを手にとって出してみせる、と言うわけにもいかないだろう?」

    「……はい」

    先生「ただ、曖昧な定義ながらも、ここには一つ重要なポイントが隠れていると思うんだ」

    先生「それはね、『お互いを想い合う』という点だよ」

    先生「一方通行の関係では、絆は結べない。……君の叔父さん夫妻とその娘であるあの子は、きっと、一方通行の関係だったんだろうね」

    「……はい。そう思います」

    先生「君の妹……彼女は、君との間に何か純粋な繋がりのようなものを欲している」

    先生「しかし君は、そんな繋がりを結ぶだけの資格が自分にはないと、そう考えている」

    先生「これもまた、一方通行の関係、だね」

    「……」

    66 = 32 :

    先生「君は、彼女のことを大切に想っていないのかい?」

    「いえ、そんなことはない……と思います」

    先生「そうだろうね。君が彼女を大切に想う気持ちは、よく伝わってくる」

    先生「しかし同時に、君には、彼女を大切にすべきではないという想いが……」

    先生「……いや、本当のところは、大切にしたくてもできない、何らかの『事情』がある」

    先生「違うかな?」

    「……」

    先生「僕の見立て違いであれば謝ろう。……でも君は、きっと僕に何か大切なことを隠している」

    先生「何を隠しているのか、話してはくれないかな?」

    「……」

    先生「……」

    68 :

    しえん
    でももう寝るから朝まで残っててくれ

    69 = 32 :

    先生「……」

    「……」

    先生「……『人と人とが大切に想い合う』。この『大切に』という部分には様々な感情が含まれ得ると思うんだ」

    先生「例えばそれは、家族の情愛であったり、恋人同士の間の愛慕であったり、友人同士の間の友情であったり」

    先生「……カウンセラーとクライアントの間の信頼関係であったり、ね?」

    「それは……」

    先生「何度も言っているが、ここでの会話は決して口外しないよ?」

    「……」

    先生「僕は、心から君の助けになりたいと思っているんだ。その気持ちに嘘はない」

    先生「そして、君が僕を信頼してくれるなら、それはきっと、僕達の間の『絆』ってことになるんじゃないかな」

    「……でも」

    先生「?」

    「でもそれは、カウンセラーとしてのテクニックでしょう?」

    先生「……え?」

    70 :

    おい続き
    早く

    71 = 32 :

    「『カウンセラーはクライアントに、ノンディレクティブかつサポーティブにかかわる』」

    「『赤の他人でありつつも、心の底からの深い共感を持って』……それが原則なんでしょう」

    先生「……」

    先生「ふふ、まいったな。カウンセラーの仕事について調べたのかい?」

    「少しだけ、ですが」

    先生「……確かに君の言う通りだ」

    先生「カウンセラーである僕は、君に『ああしろ、こうしろ』と強い指示を出したりはしない」

    先生「あくまでも、君の問題を解決するのは君自身だ。私ができるのは、君の問題整理や、問題解決の手助けでしかない」

    先生「僕が君の手助けをするに当たって、君に心からの共感を持たねばならない」

    先生「しかし同時に、第三者としての冷静な視点も忘れてはならない。……うん、君が調べたとおりで間違いないね」

    「……」

    先生「……相手の裏を探らないと、人を信頼できないんだね、君は」

    「……ッ」

    72 = 32 :

    先生「……でもね。君は重要なことを二つ、忘れている」

    「……」

    先生「第一に、僕は仕事で……つまり、お金をもらって、君のカウンセリングを請け負っているわけじゃない、ということ」

    先生「君も知っての通り、僕もこの養護施設の出身だ。そしてそれ故に、昔から、君のようにどこか心の隅に暗いものを抱えた子どもたちを見てきた」

    先生「当時の僕は、彼らを助けてあげられる術なんてもっていなくて、歯噛みして見ているしかなかった」

    先生「そんな苦い経験を経てね、この施設のOBの一人として、後輩たちの助けになりたいと心の底から思って、僕はここにいるんだ」

    「……」

    先生「そしてもう一つの点。こちらの方がより重要なことだと思うんだけどね?」

    先生「君は、自らカウンセリングを希望した、ということ」

    「それ……は……」

    先生「……誰かの助けが、欲しかったんじゃないかい?」

    先生「自分一人では抱えきれない心の悩みが、あったんじゃないのかな」

    「……」

    74 = 32 :

    先生「話してくれないかい?」

    先生「僕に何ができるとも限らない。でも、君の力になりたいと思っている。それは本当の気持ちなんだ」

    「……」

    「……本当に、……誰にも?」

    先生「約束する」

    「……」

    先生「……」

    「……………………俺、は……」

    先生「うん」

    「俺は……、……ッッ」

    「……俺…………、お、俺は、」

    先生「……」



    「俺は……ッ、────────人殺し、なんです」

    75 = 39 :

    いいだろう続けなさい

    77 = 32 :

    ***

    妹 ── おかえりなさい!

    「ただいま」

    妹 ── 今日はね、私がお夕飯作ったんだよ! いま仕上げちゃうね~

    「お前が? どういう風の吹き回しだよ」

    妹 ── お兄ちゃん、最近帰ってくるの遅いでしょ? 一緒に食事できなくて、園長先生いつも悲しそうな顔してるんだよ

    「……それは、すまん」

    妹 ── だからね、私が料理を練習してお兄ちゃんに食べさせてあげたいってことにしたの

    妹 ── そうすれば、みんなと別々に食事をするのにも不自然じゃないし、園長先生の気も少しは休まるかなって

    「そっか。……色々気を回してくれてありがとな」

    妹 ── いいよいいよ! お兄ちゃんの尻拭いは妹の役目だよ!

    「そうか……」

    78 = 32 :

    「で……この黒焦げの物体はなんだ?」

    妹 ── ハンバーグだよ!

    「ハンバーグ……。え? ハンバーグ、これが?」

    妹 ── なに? なんか文句あるの? 昔からハンバーグ好きだったじゃない

    「いや、確かに好きだけど……これ、食わなきゃだめか?」

    妹 ── ひっど~い! 妹が愛情込めて作った手料理を食べられないって言うの!?

    「あぁ、いや……そういうわけじゃ」

    妹 ── きちんと完食しないと、今日は一緒に寝てあげないんだから!

    「いや、暑苦しいし、俺はむしろ一人で寝たいんだけど……」

    妹 ── いいから食べてよ! 食べてったら食べて!

    「わ、分かったから、そう急かすなって」

    79 = 40 :

    いもにゃんきゃわわしえん

    80 = 32 :

    「……」

    妹 ── どう? どう?

    「……まずい」

    妹 ── えぇッ!? 妹がお兄ちゃんのために作った料理が美味しくないわけないじゃない!

    「お前食ってみろよ」

    妹 ── 私は味見でおなかいっぱいだからいいの

    「……はぁ」

    妹 ── ……は、…………に

    「え? いまの手話、速すぎてよく分かんなかったんだけど」

    妹 ── なんでもない

    「……まぁ、まずいけどせっかく作ってくれたもんだし、全部食うよ」

    妹 ── ありがとう、お兄ちゃん!

    「でも次からは、できれば園長先生に監督してもらえるとありがたいなぁ」

    妹 ── 贅沢言わないの! 馬鹿!

    81 = 32 :

    妹 ── そういえばお兄ちゃん

    「なんだ?」

    妹 ── 今日ね、何か変な人が施設の前をうろうろしてたって

    「……はぁ? 何だそりゃ」

    妹 ── おチビちゃんたちの一人が見かけたんだって

    妹 ── 後で私が様子を見にいった時には誰もいなかったから、よく分かんないけど

    「おい。不審者がいると分かって、のこのこ顔出す奴がいるか」

    妹 ── だってぇ

    「次からは園長先生とか職員の誰かに伝えるか、誰もいなきゃ警察に連絡しろ。いいな?」

    妹 ── うん。ごめんね

    「わかればいい」

    82 = 32 :

    「不審者か……そういえば」

    妹 ── なぁに?

    「いや、お前その見回りに行ったとき、俺のカウンセリングの先生と会ったり、話したりしたか?」

    妹 ── 会ってないよ

    「……でも」

    妹 ── 会ってない。誰にも

    「本当に?」

    妹 ── しつこいなぁ。会ってないって言ってるでしょ。

    「……」

    妹 ── ……

    「……分かった。とにかく物騒な感じもするし、気をつけろよ」

    妹 ── うん

    84 = 32 :

    ***

    「き、今日は豆腐ハンバーグだよ」

    「……」

    「お口に合うと、う、嬉しいなぁ……へへ……」

    「お前なぁ……」

    「?」

    「いくらハンバーグが好きだと言ったからって、一週間連続で毎日作ってくるなよ」

    「あ、ご、ごめんね……」

    「煮浸しに至っては三週間連続だし」

    「で……でもでも、昨日はきのこドミグラスソースのハンバーグとセロリの洋風煮浸しだったし、その前はいわしハンバーグとカブの葉の煮浸しだったし、その前は……」

    「あぁ、分かった分かった、もういい」

    「色々なバリエーションを作ってくるのはすごいが、さすがに毎日だと飽きるってことが言いたいだけだ」

    「う、うん……わかったよ。二日に一回くらいにするね!」

    「……せめて三日に一回にしてくれ」

    85 = 32 :

    「……そういえば」

    「?」

    「俺たち三年の国語の授業を受け持ってた先生、事故で一ヶ月入院だとさ」

    「……」

    「普通に車運転してたら、いきなり後ろから追突されたらしくてさ……。二年の授業も持ってるって聞いたから、お前らの方にも影響するだろうなきっと」

    「……へぇ」

    「ん?…………あ。…………あぁ、悪い」

    「いいよ別に謝らなくて。貴方が知ってるのは当然のことなんだし」

    「有名な話でしょ。私の両親が自動車の追突事故で亡くなってるのって」

    「それは……いや」

    「お父さんもお母さんも名の売れた芸能人だったから。ニュースでも連日報道されたし。一昔前の話だけど、私の名前も表に出たわ」

    「……悪かった」

    「別に謝ることじゃないって。貴方の御両親だって亡くなってるでしょ。それと同じこと、じゃない?」

    「……」

    86 = 32 :

    「本当に悪かった、もう、行くわ……」

    「えっ!? ち、ちょっと待って!」

    「……なんだ?」

    「ど、どうして? なにか、気分を害するようなこと、い、言ったかな!?」

    「自分で気づいていないのか? ……お前、尋常じゃない顔付きしてたぞ」

    「え、う、うそ……」

    「喋り方とかもまるで別人みたいに冷たかったし……」

    「あ……」

    「……」

    「……」

    「お前も……『お仲間』ってことかな」

    「俺や妹と同じで、どこか心に暗い部分をもってる」

    「……」

    87 = 32 :

    「……だ、だとしても……ッ」

    「?」

    「ううん、だからこそ、仲良くできるんじゃないかな!?」

    「……」

    「わ、私たちが似てるって言うなら、似てるからこそ、仲良くなれるはずだよ!」

    「……そうとは限らないと思うけど」

    「仲良く、な、なれるよ! 仲良くなりたいの!」

    「……」

    「お、お願い!」

    「……でも」

    「お願いしますッ!!」

    88 = 39 :

    89 = 32 :

    「はぁ……なんでそんなに必死なんだよ」

    「え、え? ……ごめん、聞こえなかった」

    「いや、お前って普段から無駄に身振り手振りが多いよな、って言ったんだ」

    「そ、そうかな?」

    「それ、別に必要ないと思うんだが」

    「え……あ、でも……仲良く、なりたいから……」

    「また、オーバーアクションをとる……」

    「……ぁ、……へへ……」

    「……」

    91 = 32 :

    さるさん食らったてすと

    92 = 39 :

    つづき

    93 = 32 :

    「で、でも……」

    「ほら! コ、コミュニケーションって言葉だけじゃないじゃない?」

    「仲良くなりたいからこそ、こうやって全身を使って会話をするわけで」

    「俺には慌てふためいて取り乱している無様な姿にしか見えない」

    「うぅ……」

    「まぁいいや。一応礼を言うよ」

    「え?」

    「仲良くなりたいんだろ? その気持ちにだけは感謝する」

    「ありがとうな」

    「あ……。う、うん。うん!」

    「……へへ……へへへへっ……」

    95 = 39 :

    SSでさるくらってんのもなんか懐かしいな

    96 = 32 :

    ***

    「先週はすみませんでした。急に気分が悪くなって」

    先生「いや、気にする必要はないさ。時間はあるんだ。ゆっくりやっていこう」

    「はい」

    先生「さて……君は殺人を犯したと言ったね。でも僕はまだ、具体的に誰を、というのは聞いていない」

    「……」

    先生「……」

    先生「……ふむ。それじゃあこれは僕の推測ということになるが」

    先生「君が殺したというのは、叔父さん夫妻のことではないのかな? いや、間違っていたらすまないが」

    「……」

    「……はい。そうです」

    98 = 32 :

    先生「しかし,叔父さんの車が事故を起こしたのも、本当にあったことだよね?」

    「はい」

    先生「それでは、君は、いったい何をしたのかな」

    「……」

    「……賭け、だったんです」

    先生「賭け?」

    「叔父さんは体格も大きくて、ガキの俺にはどうやったってかないそうにない存在で……」

    「寝てるときに殺そうと思ったこともあったけど、もし失敗したら、きっとその場で逆に殺されてしまうかもって考えると、怖くて何もできなかった」

    「自分みたいなちっぽけなガキでは、どうしたって普通の方法じゃ殺せない……」

    「当時の俺は、そう、思ったんです」

    先生「……」

    99 = 32 :

    「だから、たまたま叔父さんの機嫌がよくて、家族四人でドライブに出かけたとき」

    「高速道路で、時速100km前後のスピードが出てたと思います」

    「助手席に座っていた俺は、横から運転席の側に手を伸ばして、ハンドルを、無理矢理……」

    先生「なるほど……」

    「賭け、でした。当然、自分や妹が死ぬ可能性だって十分にあったッ、短絡を起こさずに耐えるべきだったって言う人もいるでしょうッ!でも俺はッッ!!!」

    先生「落ち着いて」

    先生「僕は君を責めたりなんてしないし、誰にも言わない。大丈夫だから、ね?」

    「……ッ」

    「お、俺は……限界だったんです」

    「傷ついている妹を見るのも、何より、自分自身があの環境に耐えられなかった……」

    先生「当時の君の状況を想像すると、それは仕方のないことだったと思うよ」

    先生「君はそれ程までに追いつめられていたんだ」


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