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元スレ女「────好き嫌いなんて、許さないんだからね?」
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俺に粘着してる昼夜逆転した哀れで惨めで愚かな人生終了した底辺低脳無職の基地外の中卒ニートのストーカーの廃人の自宅警備員の精神異常者の性格破綻者の日雇い派遣の変質者の糞馬鹿はIDを変えまくるので要注意っす
女「お、おはよう」
男「……」
女「最近すこし、あ、暑くなってきたよね。実家のお庭の向日葵は元気みたいなんだけど、……私は夏って、少し苦手かも」
男「……」
女「あ、でも庭に向日葵があるって変、かなぁ? そんなことない、よね? 別に……へへ」
女「お父さんがね、園芸が趣味なの。あ、で、でもでも園芸って行っても、向日葵くらいしか、ないんだけどね」
男「……そうか」
女「う、うん! その影響でね、私も、鉢植えで作るミニ向日葵を栽培してるんだけど、小さくて可愛いの。一生懸命育ててると、ね、植物にも愛着がわくんだよ」
女「向日葵、もし興味があったら言ってね。小さいから学校にも持ってこれると思うんだ。もも、もちろん、うちに見に来てくれてもいいし!」
男「……」
女「いまは、ひ、一人暮らしだけど、あの、でも、あなたなら歓迎するし……ね……へへ……」
女「……あ……そ、それじゃ、私今日日直だから、そろそろ自分のクラスに戻る、ね」
男「……ああ」
男「……」
女「最近すこし、あ、暑くなってきたよね。実家のお庭の向日葵は元気みたいなんだけど、……私は夏って、少し苦手かも」
男「……」
女「あ、でも庭に向日葵があるって変、かなぁ? そんなことない、よね? 別に……へへ」
女「お父さんがね、園芸が趣味なの。あ、で、でもでも園芸って行っても、向日葵くらいしか、ないんだけどね」
男「……そうか」
女「う、うん! その影響でね、私も、鉢植えで作るミニ向日葵を栽培してるんだけど、小さくて可愛いの。一生懸命育ててると、ね、植物にも愛着がわくんだよ」
女「向日葵、もし興味があったら言ってね。小さいから学校にも持ってこれると思うんだ。もも、もちろん、うちに見に来てくれてもいいし!」
男「……」
女「いまは、ひ、一人暮らしだけど、あの、でも、あなたなら歓迎するし……ね……へへ……」
女「……あ……そ、それじゃ、私今日日直だから、そろそろ自分のクラスに戻る、ね」
男「……ああ」
***
女「あの……、今日も、お昼ご飯、ここで一緒に食べてもいい?」
男「……」
女「私はここで、た、食べたいなぁ、なんて……へへ……」
男「……」
女「別に邪魔したいわけじゃなくて、ただ、もう少し仲良くなれたらって、思ったんだけど……」
女「私は、こ、後輩として、先輩とは仲良くしたいし……あ、もももちろん先輩に限るってわけじゃないんだけど!」
女「あの……駄目かな……」
男「……」
男「……好きにすればいいんじゃないか」
女「あ、……う、うん! す、好きにするね! 」
男「……」
女「あの……、今日も、お昼ご飯、ここで一緒に食べてもいい?」
男「……」
女「私はここで、た、食べたいなぁ、なんて……へへ……」
男「……」
女「別に邪魔したいわけじゃなくて、ただ、もう少し仲良くなれたらって、思ったんだけど……」
女「私は、こ、後輩として、先輩とは仲良くしたいし……あ、もももちろん先輩に限るってわけじゃないんだけど!」
女「あの……駄目かな……」
男「……」
男「……好きにすればいいんじゃないか」
女「あ、……う、うん! す、好きにするね! 」
男「……」
なんなんだこの向日葵押しの女は
ヒマワリ教にでも入信してんのか?
ヒマワリ教にでも入信してんのか?
女「あの、今日もね、お弁当、私が自分で作ったの」
男「……」
女「あ、その、お口に合うかどうか分からないけど、もし好きなおかずがあったら遠慮せずに食べてくれていいから」
男「……いや、べつにいい」
女「あ……、うん、そうだよね……ごめんね……」
男「……」
男「……煮浸し好きだろ。食べるか?」
女「……」
男「……ん?」
男「……どうした、欲しいのか?」
女「えっ、あ、違うの! いや、ううん……違わなくて……」
女「ほ、欲しい……かな」
男「じゃあ、やるよ」
女「あ、う、うん……ありがとう……へへ」
男「……」
女「あ、その、お口に合うかどうか分からないけど、もし好きなおかずがあったら遠慮せずに食べてくれていいから」
男「……いや、べつにいい」
女「あ……、うん、そうだよね……ごめんね……」
男「……」
男「……煮浸し好きだろ。食べるか?」
女「……」
男「……ん?」
男「……どうした、欲しいのか?」
女「えっ、あ、違うの! いや、ううん……違わなくて……」
女「ほ、欲しい……かな」
男「じゃあ、やるよ」
女「あ、う、うん……ありがとう……へへ」
***
先生「さて、先週はどこまで話してくれたんだっけ?」
男「……確か、両親が死んだところまで、だったと思います」
先生「ああ、そうだった。君の気分が優れないようだったから、カウンセリングを早めに中止したんだったね」
男「すみませんでした」
先生「いや、別に謝ることじゃないさ。気長にゆっくりやっていこう」
男「はい」
先生「今日は、君が養父母のお宅に引き取られたところから、話してくれるかい?」
男「それは、話さないとだめですか?」
先生「ふむ……質問を質問で返すようで悪いが、なにか、話しづらいことでもあるのかな?」
男「いえ……そういうわけでは……」
先生「どうしても言いたくないことを無理に話す必要はないよ。ただ、ここで聞いた話は決して口外しないと僕は約束する」
先生「そして、自分の抱える問題を解決したいなら、自分の内にある見つめたくない部分にこそ、目を向けないといけない」
先生「たとえそれが、辛いことであっても……いや、辛いことであるからこそ尚更に、ね?」
男「……はい」
先生「さて、先週はどこまで話してくれたんだっけ?」
男「……確か、両親が死んだところまで、だったと思います」
先生「ああ、そうだった。君の気分が優れないようだったから、カウンセリングを早めに中止したんだったね」
男「すみませんでした」
先生「いや、別に謝ることじゃないさ。気長にゆっくりやっていこう」
男「はい」
先生「今日は、君が養父母のお宅に引き取られたところから、話してくれるかい?」
男「それは、話さないとだめですか?」
先生「ふむ……質問を質問で返すようで悪いが、なにか、話しづらいことでもあるのかな?」
男「いえ……そういうわけでは……」
先生「どうしても言いたくないことを無理に話す必要はないよ。ただ、ここで聞いた話は決して口外しないと僕は約束する」
先生「そして、自分の抱える問題を解決したいなら、自分の内にある見つめたくない部分にこそ、目を向けないといけない」
先生「たとえそれが、辛いことであっても……いや、辛いことであるからこそ尚更に、ね?」
男「……はい」
男「父と母が死んだあと、俺は叔父さんの家に引き取られました」
男「叔父さん夫妻は……こう言ってはなんですが、その……最低の人種でした」
男「今になって思えば、俺を引き取ったのも俺の両親の遺産目当てだったんでしょう」
先生「ふむ。最低……というと?」
男「叔父さんたちは実の娘……つまり俺の元従妹であり、今は妹であるあいつを、その、虐待していたんです」
男「俺も、叔父さんの家で生活し始めた初日から虐められました」
男「食事は三~四日に一食だけ。当時は学校の給食が生命線でした。余ったパンとかをこっそり持って帰って、妹と分け合ってましたね」
先生「……」
男「風呂も三日に一回程度。冬はまだマシなんですが夏は辛かったです」
男「濡れタオルで身体を拭こうにも、家でそれをしてるのが見つかるとなぜか癇に障るらしくて暴行を受けるので……」
男「俺も妹も、しかたなく学校のトイレで身体を拭いてました」
男「叔父さん夫妻は……こう言ってはなんですが、その……最低の人種でした」
男「今になって思えば、俺を引き取ったのも俺の両親の遺産目当てだったんでしょう」
先生「ふむ。最低……というと?」
男「叔父さんたちは実の娘……つまり俺の元従妹であり、今は妹であるあいつを、その、虐待していたんです」
男「俺も、叔父さんの家で生活し始めた初日から虐められました」
男「食事は三~四日に一食だけ。当時は学校の給食が生命線でした。余ったパンとかをこっそり持って帰って、妹と分け合ってましたね」
先生「……」
男「風呂も三日に一回程度。冬はまだマシなんですが夏は辛かったです」
男「濡れタオルで身体を拭こうにも、家でそれをしてるのが見つかるとなぜか癇に障るらしくて暴行を受けるので……」
男「俺も妹も、しかたなく学校のトイレで身体を拭いてました」
先生「暴行……。暴力を受けることは頻繁に?」
男「殴られたり蹴られたりなんて日常茶飯事でしたよ」
男「俺は殴られるのが一番怖かったですけど、妹は殴られることよりも罵倒されることを恐れていたように見えました」
男「特に、母親から『あんたはうちの子じゃない』とか『あんたなんて産まなければよかった』とか」
先生「それは、ひどいね……」
男「いや、あんなテンプレみたいな台詞を言う親って実際いるもんなんですね」
男「……でも、妹はそんな言葉の一つ一つに深く傷ついてました」
男「殴られても取り乱さずにじっと耐える、強い奴なんですが……」
男「罵倒されると、嗚咽をこらえながらぽろぽろって……涙を流すんです」
先生「……」
男「殴られたり蹴られたりなんて日常茶飯事でしたよ」
男「俺は殴られるのが一番怖かったですけど、妹は殴られることよりも罵倒されることを恐れていたように見えました」
男「特に、母親から『あんたはうちの子じゃない』とか『あんたなんて産まなければよかった』とか」
先生「それは、ひどいね……」
男「いや、あんなテンプレみたいな台詞を言う親って実際いるもんなんですね」
男「……でも、妹はそんな言葉の一つ一つに深く傷ついてました」
男「殴られても取り乱さずにじっと耐える、強い奴なんですが……」
男「罵倒されると、嗚咽をこらえながらぽろぽろって……涙を流すんです」
先生「……」
先生「それは……、とても辛かっただろうね」
先生「誰か、他の大人に助けを求めたりはしなかったのかい?」
男「当時はまだほんのガキでしたし、叔父さんたちは、俺たち二人にとって絶対的な存在で……」
男「とにかくもう、すごく怖くて、誰かに助けを求めるって発想さえ持てなかったんです」
先生「なるほど……さぞ苦しい日々だったろう」
男「そんな顔をしないでください。……別に、先生のせいってわけじゃないでしょう?」
先生「…………、そう、か」
男「……」
男「……まぁ、俺の方はまだよかったんですよ」
男「妹の方が……ずっと辛い。あいつは実の両親にひどく虐められて、あんなになって……」
先生「……」
先生「……失語症、だね?」
男「ええ……ここに来て、ようやく両親のもとを離れて安心だと思った矢先に、急に声が出なくなりました」
男「あいつがいま十六歳ですから……九つのときから七年間、今に至るまで一言も声を出せないままです」
先生「誰か、他の大人に助けを求めたりはしなかったのかい?」
男「当時はまだほんのガキでしたし、叔父さんたちは、俺たち二人にとって絶対的な存在で……」
男「とにかくもう、すごく怖くて、誰かに助けを求めるって発想さえ持てなかったんです」
先生「なるほど……さぞ苦しい日々だったろう」
男「そんな顔をしないでください。……別に、先生のせいってわけじゃないでしょう?」
先生「…………、そう、か」
男「……」
男「……まぁ、俺の方はまだよかったんですよ」
男「妹の方が……ずっと辛い。あいつは実の両親にひどく虐められて、あんなになって……」
先生「……」
先生「……失語症、だね?」
男「ええ……ここに来て、ようやく両親のもとを離れて安心だと思った矢先に、急に声が出なくなりました」
男「あいつがいま十六歳ですから……九つのときから七年間、今に至るまで一言も声を出せないままです」
先生「可能であれば彼女のカウンセリングも請け負いたいところなんだが……」
先生「失語症となると言語聴覚士などの専門の方々にお任せするのが最善なんだ」
男「ええ……それは園長先生からも伺っています」
先生「ただね、このカウンセリングを通して、君がもし今よりも前向きに生活を送れるようになれば、それはきっと妹さんのためにもなると思うんだ」
男「あいつの、ため……ですか?」
先生「うん。物理的にも心理的にも、妹さんに一番近い位置にいるのは間違いなく君だ」
先生「君の気持ちがより良い方向に向けば、それはきっと妹さんにとっても良い影響をもたらすと思う」
先生「だから、このカウンセリングは、君自身のためということはもちろんだが、妹さんのためにもなると、僕は信じている」
先生「一緒に、真摯に取り組んでいこう」
男「……はい」
先生「うん。それじゃあ、次回はいつも通り、翌週の────」
先生「失語症となると言語聴覚士などの専門の方々にお任せするのが最善なんだ」
男「ええ……それは園長先生からも伺っています」
先生「ただね、このカウンセリングを通して、君がもし今よりも前向きに生活を送れるようになれば、それはきっと妹さんのためにもなると思うんだ」
男「あいつの、ため……ですか?」
先生「うん。物理的にも心理的にも、妹さんに一番近い位置にいるのは間違いなく君だ」
先生「君の気持ちがより良い方向に向けば、それはきっと妹さんにとっても良い影響をもたらすと思う」
先生「だから、このカウンセリングは、君自身のためということはもちろんだが、妹さんのためにもなると、僕は信じている」
先生「一緒に、真摯に取り組んでいこう」
男「……はい」
先生「うん。それじゃあ、次回はいつも通り、翌週の────」
***
────── 獣が、身の内に棲んでいる
その想像は生理的機構に影響をもたらし、物理的な圧迫感を伴いつつ体内を駆け巡って、出口を求めて弾けそうになる
内圧は苦痛となり、苦痛は呻き声となって口から漏れ出ていく
心と身体の間に因果関係が存在するか否かという問題は解決しがたい哲学的討究の議題だというが、
そんな思索を経由するまでもなく、いま自分の心は、自分の身体を間違いなく苛んでいる
自分が求めているものはたったの一つ…………そう、安寧だ
かつての安寧を自らに取り戻すという方途、しかしそのためには為さねばならないことがある
それは、疾病の回復のために病巣の除去が不可欠であるように、自身に苦悩をもたらす存在を除去するということに他ならない
「だが、しかし」…………一抹の躊躇いが認識に撒かれる
瞳を閉じ、霞む意識を総動員してようやくもたらされる理性の檻
自分はまだきっと大丈夫……そう確信して、ようやく想像の束縛から解放され、落ち着きを取り戻した
…………手は、未だ震えていた
────── 獣が、身の内に棲んでいる
その想像は生理的機構に影響をもたらし、物理的な圧迫感を伴いつつ体内を駆け巡って、出口を求めて弾けそうになる
内圧は苦痛となり、苦痛は呻き声となって口から漏れ出ていく
心と身体の間に因果関係が存在するか否かという問題は解決しがたい哲学的討究の議題だというが、
そんな思索を経由するまでもなく、いま自分の心は、自分の身体を間違いなく苛んでいる
自分が求めているものはたったの一つ…………そう、安寧だ
かつての安寧を自らに取り戻すという方途、しかしそのためには為さねばならないことがある
それは、疾病の回復のために病巣の除去が不可欠であるように、自身に苦悩をもたらす存在を除去するということに他ならない
「だが、しかし」…………一抹の躊躇いが認識に撒かれる
瞳を閉じ、霞む意識を総動員してようやくもたらされる理性の檻
自分はまだきっと大丈夫……そう確信して、ようやく想像の束縛から解放され、落ち着きを取り戻した
…………手は、未だ震えていた
***
男「帰ってたのか」
妹 ── おかえりなさい!
妹 ── 今日はどうだったの?
男「いつも通り。お茶飲んで、話をして、来週の約束しただけ」
妹 ── 大丈夫?
男「別に心配いらないよ。そっちの方はどうだったんだ?」
妹 ── こっちもいつも通りだよ
男「そっか。まぁ自分のペースで取り組めばいいさ。……と言いつつ、今年で俺たちがここに来てもう七年になるんだよな」
妹 ── そうだね。……ごめん
男「別に謝ることはないって。七年で喋れるようにならないなら、さらにもう七年頑張ってみろよ。気長に頑張れ、気長に」
妹(こくり)
男「帰ってたのか」
妹 ── おかえりなさい!
妹 ── 今日はどうだったの?
男「いつも通り。お茶飲んで、話をして、来週の約束しただけ」
妹 ── 大丈夫?
男「別に心配いらないよ。そっちの方はどうだったんだ?」
妹 ── こっちもいつも通りだよ
男「そっか。まぁ自分のペースで取り組めばいいさ。……と言いつつ、今年で俺たちがここに来てもう七年になるんだよな」
妹 ── そうだね。……ごめん
男「別に謝ることはないって。七年で喋れるようにならないなら、さらにもう七年頑張ってみろよ。気長に頑張れ、気長に」
妹(こくり)
妹 ── ねえ、お兄ちゃん
男「なんだ?」
妹 ── どうして今になって、カウンセリング受ける気になったの? あんなに受けるの嫌がってたじゃない
男「まぁ……あの当時はほら。ボロを出すわけにはいかなかったろ?」
妹 ── でもそれは今だってそうじゃない
男「そうだけど……あれだよ。まだまだ思春期だし、色々と悩みも多いわけで」
妹 ── ……もう、人の気もしらないで冗談ばっかり
妹 ── 私がどれだけ真剣にお兄ちゃんの心配してるかなんて、ちっとも分かってないんだ。馬鹿!
男 ── 馬鹿って言うやつが馬鹿なんです~
妹 ── 手話で悪口言い返すのやめてっていつも言ってるでしょ!
男「はは。おかげで手話のスラングにはずいぶん精通したよ」
妹 ── もう……ホント馬鹿……
男「なんだ?」
妹 ── どうして今になって、カウンセリング受ける気になったの? あんなに受けるの嫌がってたじゃない
男「まぁ……あの当時はほら。ボロを出すわけにはいかなかったろ?」
妹 ── でもそれは今だってそうじゃない
男「そうだけど……あれだよ。まだまだ思春期だし、色々と悩みも多いわけで」
妹 ── ……もう、人の気もしらないで冗談ばっかり
妹 ── 私がどれだけ真剣にお兄ちゃんの心配してるかなんて、ちっとも分かってないんだ。馬鹿!
男 ── 馬鹿って言うやつが馬鹿なんです~
妹 ── 手話で悪口言い返すのやめてっていつも言ってるでしょ!
男「はは。おかげで手話のスラングにはずいぶん精通したよ」
妹 ── もう……ホント馬鹿……
男「今日はなんか疲れたよ……もう寝るわ」
妹 ── ご飯は?
男「さっき作り置きのやつ、食ってきた」
妹 ── そっか。じゃあ私も寝る
男「いいのか? まだけっこう早い時間帯だけど」
妹 ── お兄ちゃんと一緒じゃないと眠れないし、いいの
男「そっか。じゃあ来いよ」
妹(こくり)
男「……」
男「……なぁ、シングルベッドに二人ってのは、そろそろきつくないか?」
妹 ── ごめん。迷惑だった、かな?
男「ああ、いや。そうじゃないなんだ」
妹 ── ご飯は?
男「さっき作り置きのやつ、食ってきた」
妹 ── そっか。じゃあ私も寝る
男「いいのか? まだけっこう早い時間帯だけど」
妹 ── お兄ちゃんと一緒じゃないと眠れないし、いいの
男「そっか。じゃあ来いよ」
妹(こくり)
男「……」
男「……なぁ、シングルベッドに二人ってのは、そろそろきつくないか?」
妹 ── ごめん。迷惑だった、かな?
男「ああ、いや。そうじゃないなんだ」
男「ただほら、お互い身体も大きくなったし、ダブルベッドでも買った方がいいんじゃないか」
男「園長先生に頼むのはさすがに気が引けるから、バイトでもしようかと思うんだけど」
妹(ぷるぷる)
男「いらないのか? どうして」
妹 ── だって、狭い方がくっつけるから
男「恥ずかしいこと言うなよ」
妹 ── くっついて見張っていないと……危険だから
男「……え?」
妹 ── おやすみ、お兄ちゃん
男「……おい」
妹 ── ……
男「……ったく。おやすみ……」
男「園長先生に頼むのはさすがに気が引けるから、バイトでもしようかと思うんだけど」
妹(ぷるぷる)
男「いらないのか? どうして」
妹 ── だって、狭い方がくっつけるから
男「恥ずかしいこと言うなよ」
妹 ── くっついて見張っていないと……危険だから
男「……え?」
妹 ── おやすみ、お兄ちゃん
男「……おい」
妹 ── ……
男「……ったく。おやすみ……」
***
女「あの、ね、煮浸しが好きだって言ってたでしょ? 今日はね、茄子の煮浸しを作ってみたの。良かったら、その、ど、どうぞ……」
男「……」
男「……煮浸しが好きなのはお前の方なんじゃないのか?」
女「え、え? 私?」
男「先週俺にねだらなかったか?」
女「え、そんな、私は……」
男「違ったのか?」
女「あ、う、ううん、違わないよ。小松菜の煮浸しとか、ほうれん草の煮浸しとか、美味しい、よね……へへ」
男「そうか……」
男「一個もらうぞ」
女「あ、うん! 一個と言わず! 二つでも三つでも! ど、どうぞ! どうぞ!」
男「……うまいな」
女「あ、……へへ。……へへへっ」
女「あの、ね、煮浸しが好きだって言ってたでしょ? 今日はね、茄子の煮浸しを作ってみたの。良かったら、その、ど、どうぞ……」
男「……」
男「……煮浸しが好きなのはお前の方なんじゃないのか?」
女「え、え? 私?」
男「先週俺にねだらなかったか?」
女「え、そんな、私は……」
男「違ったのか?」
女「あ、う、ううん、違わないよ。小松菜の煮浸しとか、ほうれん草の煮浸しとか、美味しい、よね……へへ」
男「そうか……」
男「一個もらうぞ」
女「あ、うん! 一個と言わず! 二つでも三つでも! ど、どうぞ! どうぞ!」
男「……うまいな」
女「あ、……へへ。……へへへっ」
女「あ、あの、甘めの味付けが好き、なんだよね? 色々レシピ見て、がが頑張ってみた、の……へへ」
男「……」
女「……へへ……へ……」
男「どうして知ってる」
女「……へ?」
男「どうして、甘めの味付けが好きだって知ってるんだ」
女「あ、そ、れは……あの……」
男「……」
女「あの、……し、知り合いの人に聞いたの。こ、好みの味付けとか、……その」
男「……何のために」
女「あの、な、な、なな仲良く! 仲良く、なりたく、て……」
男「……」
男「……」
女「……へへ……へ……」
男「どうして知ってる」
女「……へ?」
男「どうして、甘めの味付けが好きだって知ってるんだ」
女「あ、そ、れは……あの……」
男「……」
女「あの、……し、知り合いの人に聞いたの。こ、好みの味付けとか、……その」
男「……何のために」
女「あの、な、な、なな仲良く! 仲良く、なりたく、て……」
男「……」
女「あの……」
男「……気持ちが悪いやつだな」
女「あ……」
男「知らないところで、こそこそと嗅ぎ回るようなことをするな」
女「あ……あ……、ご、ごめ……ごめ、んなさい……」
男「……」
女「……」
男「ちなみに言っておくが、俺は特に甘めの味付けの方が好きってわけじゃない」
女「え、そ、そうなの……? じ、じゃあ、味付け変えた方がいい……のかな」
男「……」
男「いや、このままでいい。そうしたいんだろ?」
女「うん……ごめん……」
男「謝るな、最初から変える気なんてないくせに……」
女「……」
男「……気持ちが悪いやつだな」
女「あ……」
男「知らないところで、こそこそと嗅ぎ回るようなことをするな」
女「あ……あ……、ご、ごめ……ごめ、んなさい……」
男「……」
女「……」
男「ちなみに言っておくが、俺は特に甘めの味付けの方が好きってわけじゃない」
女「え、そ、そうなの……? じ、じゃあ、味付け変えた方がいい……のかな」
男「……」
男「いや、このままでいい。そうしたいんだろ?」
女「うん……ごめん……」
男「謝るな、最初から変える気なんてないくせに……」
女「……」
男「……ん?」
猫「なーーう”」
男「中庭に迷い込んできたのか?」
猫「な"~~~う"」
女「あっ、きゃっ。あ……、へへ……かわいい……」
男「人間に馴れ馴れしく近づくこの野性味の欠如っぷりから想像するに、……飼い猫かな」
女「ほ~ら、ごろごろ~」
猫「に”ゃ~~~う”ぅ”」
女「へへへ……えへへへっ……」
男「……」
女「お魚食べるかなぁ。はい、どうぞ」
猫「はぐッ はぐはぐッ」
女「わっ、ちょ、ちょっと落ち着いて? ね? ゆっくり食べて?」
猫「はぐはぐッ はぐはぐッ」
猫「なーーう”」
男「中庭に迷い込んできたのか?」
猫「な"~~~う"」
女「あっ、きゃっ。あ……、へへ……かわいい……」
男「人間に馴れ馴れしく近づくこの野性味の欠如っぷりから想像するに、……飼い猫かな」
女「ほ~ら、ごろごろ~」
猫「に”ゃ~~~う”ぅ”」
女「へへへ……えへへへっ……」
男「……」
女「お魚食べるかなぁ。はい、どうぞ」
猫「はぐッ はぐはぐッ」
女「わっ、ちょ、ちょっと落ち着いて? ね? ゆっくり食べて?」
猫「はぐはぐッ はぐはぐッ」
男「……」
女「へへ……か、かわいいなぁ……へへ……」
男「おい」
女「え!? はい、何でしょうか!」
男「お前じゃない。猫に言ったんだ。おい、卵焼き食べるか」
猫「……な"~う" はぐはぐッ」
男「何でも食うな、こいつ。……はは……よしよし」
猫「な"~う"ぅ"~」
女「……えへへ……や、優しいんだね」
男「あ"?」
女「ご、ごめんなさい! なんでもないです!」
猫「な"~ご~」
女「へへ……か、かわいいなぁ……へへ……」
男「おい」
女「え!? はい、何でしょうか!」
男「お前じゃない。猫に言ったんだ。おい、卵焼き食べるか」
猫「……な"~う" はぐはぐッ」
男「何でも食うな、こいつ。……はは……よしよし」
猫「な"~う"ぅ"~」
女「……えへへ……や、優しいんだね」
男「あ"?」
女「ご、ごめんなさい! なんでもないです!」
猫「な"~ご~」
***
先生「やあ、こんにちは。何か変わりはないかい?」
男「ええ、特には」
先生「結構。それじゃ早速だが、先週の続きから話してもらおうかな」
男「……養父母の虐待の件まで、お話ししたんでしたね」
男「大まかなあらましは、先生も当然ご存知だと思いますが……」
先生「うん。確かに聞いている。事故、があったんだよね?」
男「はい。家族四人で乗ってた車が、高速道路で……。叔父の余所見運転が原因だったようです」
男「シートベルトをつけていた俺と妹だけは助かりましたが、叔父さん夫妻は亡くなりました」
男「即死、……だったようです」
先生「……そして、その事故のあと、この児童養護施設に引き取られたんだね」
男「はい。もう七年も前のことになります」
先生「やあ、こんにちは。何か変わりはないかい?」
男「ええ、特には」
先生「結構。それじゃ早速だが、先週の続きから話してもらおうかな」
男「……養父母の虐待の件まで、お話ししたんでしたね」
男「大まかなあらましは、先生も当然ご存知だと思いますが……」
先生「うん。確かに聞いている。事故、があったんだよね?」
男「はい。家族四人で乗ってた車が、高速道路で……。叔父の余所見運転が原因だったようです」
男「シートベルトをつけていた俺と妹だけは助かりましたが、叔父さん夫妻は亡くなりました」
男「即死、……だったようです」
先生「……そして、その事故のあと、この児童養護施設に引き取られたんだね」
男「はい。もう七年も前のことになります」
先生「その、これはあくまで一応の、確認のために聞くだけなんだけれども」
先生「……この施設でいじめにあったりとかは?」
男「あぁ、いえ、それは本当にありませんでした。あの家に比べれば、ここは天国みたいに居心地がよくて……」
男「あのままあの家にいたら、俺たちは殺されていたか、気でも狂っていたかもしれません」
男「園長先生を初め、施設職員の方々は皆いい人ばかりで、本当に感謝しているんです」
先生「それじゃあ、施設の日々は安穏としたものだった、と」
男「ええ。何事もなく、というのはさすがに大袈裟かもしれませんが」
男「でも、落ち着いて過ごせたのは確かです」
先生「そうか……なるほど」
先生「おかげさまで、君の過去がずいぶんと見えてきた気がするよ」
男「先生が予め知っていたことに比べて、そんなに真新しい情報があったとは思えませんが……」
先生「いやいや、そんなことはないさ」
先生「……この施設でいじめにあったりとかは?」
男「あぁ、いえ、それは本当にありませんでした。あの家に比べれば、ここは天国みたいに居心地がよくて……」
男「あのままあの家にいたら、俺たちは殺されていたか、気でも狂っていたかもしれません」
男「園長先生を初め、施設職員の方々は皆いい人ばかりで、本当に感謝しているんです」
先生「それじゃあ、施設の日々は安穏としたものだった、と」
男「ええ。何事もなく、というのはさすがに大袈裟かもしれませんが」
男「でも、落ち着いて過ごせたのは確かです」
先生「そうか……なるほど」
先生「おかげさまで、君の過去がずいぶんと見えてきた気がするよ」
男「先生が予め知っていたことに比べて、そんなに真新しい情報があったとは思えませんが……」
先生「いやいや、そんなことはないさ」
先生「僕はね、君が、これまでの君自身の人生をどう受け止めているのか、ということを知りたかったんだ」
先生「だから、決して無駄なんかじゃない」
男「はぁ……」
先生「さて……ではそろそろ、本題に入ろうか」
先生「君は七年前、十一歳の時にこの施設に引き取られてきたときに、施設職員の方々からカウンセリングを受けることを強く推奨されたね」
男「ええ」
先生「虐待を受けて傷つかない子どもなんていない。だから、職員の方々の対応は至極最もなものだったと思うよ」
先生「カウンセリングを受けさせるべきだと誰だって考えるはずだ」
先生「しかし、君はそれを頑に拒んだ。そして、七年たった今になって、改めてカウンセリングを受けることを希望した」
先生「どうしてそんなふうに心変わりしたのか、聞かせてもらえるかい?」
男「……」
男「それは……」
男「……それは、妹のことが、きっかけなんです」
先生「だから、決して無駄なんかじゃない」
男「はぁ……」
先生「さて……ではそろそろ、本題に入ろうか」
先生「君は七年前、十一歳の時にこの施設に引き取られてきたときに、施設職員の方々からカウンセリングを受けることを強く推奨されたね」
男「ええ」
先生「虐待を受けて傷つかない子どもなんていない。だから、職員の方々の対応は至極最もなものだったと思うよ」
先生「カウンセリングを受けさせるべきだと誰だって考えるはずだ」
先生「しかし、君はそれを頑に拒んだ。そして、七年たった今になって、改めてカウンセリングを受けることを希望した」
先生「どうしてそんなふうに心変わりしたのか、聞かせてもらえるかい?」
男「……」
男「それは……」
男「……それは、妹のことが、きっかけなんです」
先生「妹……。その妹というのは、つまり彼女のことだよね?」
男「ええ、そうです。その妹のことです。そのことで相談したいことができて……」
先生「ふむ……そうか。何にせよ、自発的にカウンセリングを受けようという気になったのは良い傾向だ」
先生「それで、その具体的な相談内容というのは?」
男「以前にも簡単にお話ししたと思いますが、その、妹は……俺に依存する傾向があるようなんです」
先生「依存、か……続けて」
男「妹は、なにか……俺との深い繋がりを、いつまでも保っていたいようなんです」
男「でも、俺はそんな妹の気持ちを受け止めるのが……怖いんです」
先生「怖い?」
男「……はい」
男「ええ、そうです。その妹のことです。そのことで相談したいことができて……」
先生「ふむ……そうか。何にせよ、自発的にカウンセリングを受けようという気になったのは良い傾向だ」
先生「それで、その具体的な相談内容というのは?」
男「以前にも簡単にお話ししたと思いますが、その、妹は……俺に依存する傾向があるようなんです」
先生「依存、か……続けて」
男「妹は、なにか……俺との深い繋がりを、いつまでも保っていたいようなんです」
男「でも、俺はそんな妹の気持ちを受け止めるのが……怖いんです」
先生「怖い?」
男「……はい」
男「俺は、その、……これも虐待された影響ってことなのか何なのかは分かりませんが、自分に自信が持てなくて」
男「最近では、彼女にどう接すべきなのか、あるいはどう接したいのか、自分でもよく分からないんです」
男「俺みたいなやつが、妹の純粋な気持ちを、受け止める資格があるんだろうかって」
男「俺があいつに触れたら……穢してしまうんじゃないか……って、怖くて」
先生「……君は、彼女に、優しくする自信がないのかな?」
男「いえ、それは……。いえ、分かりません」
先生「ふむ……」
男「あいつはきっと俺に、何か純粋な繋がり、というか……絆、のようなものを求めているんじゃないか、と思うんです」
男「毎日毎日そんな屈託のない視線を向けられて、俺はどうすべきか分からなくて、耐えられなくなってきて……」
先生「なるほど。それで自らカウンセリングを受ける気になった、と」
男「最近では、彼女にどう接すべきなのか、あるいはどう接したいのか、自分でもよく分からないんです」
男「俺みたいなやつが、妹の純粋な気持ちを、受け止める資格があるんだろうかって」
男「俺があいつに触れたら……穢してしまうんじゃないか……って、怖くて」
先生「……君は、彼女に、優しくする自信がないのかな?」
男「いえ、それは……。いえ、分かりません」
先生「ふむ……」
男「あいつはきっと俺に、何か純粋な繋がり、というか……絆、のようなものを求めているんじゃないか、と思うんです」
男「毎日毎日そんな屈託のない視線を向けられて、俺はどうすべきか分からなくて、耐えられなくなってきて……」
先生「なるほど。それで自らカウンセリングを受ける気になった、と」
先生「彼女の気持ちを受け止める資格がない、……か」
先生「僕には、君が彼女のお兄さんであること、それ自体が、君たちの間で絆を結ぶのに十分な資格ではないかと思うのだけど……」
先生「それでは駄目なのかな」
男「……わかりません」
男「確かに家族であるってことは、お互いに心の大切な部分を交わし合うのに、十分な資格のようにも思えます」
男「でも……あいつは、本当の家族である、実の両親に虐待を受けたんですよ?」
先生「……そうか」
男「家族であることが重要だとしても……家族だからといって、必ずしも絆が結べるわけではないと思います」
先生「……そうだね。うん、わかった。次の時間までに、私も少し考えてくるとしよう」
先生「この問題についてはお互い宿題にする。それでいいかな?」
男「はい……」
先生「僕には、君が彼女のお兄さんであること、それ自体が、君たちの間で絆を結ぶのに十分な資格ではないかと思うのだけど……」
先生「それでは駄目なのかな」
男「……わかりません」
男「確かに家族であるってことは、お互いに心の大切な部分を交わし合うのに、十分な資格のようにも思えます」
男「でも……あいつは、本当の家族である、実の両親に虐待を受けたんですよ?」
先生「……そうか」
男「家族であることが重要だとしても……家族だからといって、必ずしも絆が結べるわけではないと思います」
先生「……そうだね。うん、わかった。次の時間までに、私も少し考えてくるとしよう」
先生「この問題についてはお互い宿題にする。それでいいかな?」
男「はい……」
***
────── 痒痛は表情に出さない
苦しみもまた、悦楽の前段階に過ぎないと見なせるから
果てにある結末に身悶えするほどの喜悦があるならば、この懊歎ですらきっと愉しめるはずだ
そこまでの思考に至って、ふと、自身の変容ぶりに気づく
自分はそれに耐えることを放棄し始めている────
理性は獣性を押しとどめようとしながら、他方で、全く異なる方向からある疑問を顕示する
果たして自分には、それを成し遂げる資格など無いのだろうか……と
問いの迂遠さに比べて、回答は一瞬だった
────いいやそんなことはない、自分こそが有資格者だ
理性の後押しは、自身を勇気づけ、その本性を速やかに変貌させていった
だが、……当人自身気づいてはいなかった
自らが理性だと判じていたものは、その実、化けの皮をかぶった欲動に過ぎなかったということを
────── 痒痛は表情に出さない
苦しみもまた、悦楽の前段階に過ぎないと見なせるから
果てにある結末に身悶えするほどの喜悦があるならば、この懊歎ですらきっと愉しめるはずだ
そこまでの思考に至って、ふと、自身の変容ぶりに気づく
自分はそれに耐えることを放棄し始めている────
理性は獣性を押しとどめようとしながら、他方で、全く異なる方向からある疑問を顕示する
果たして自分には、それを成し遂げる資格など無いのだろうか……と
問いの迂遠さに比べて、回答は一瞬だった
────いいやそんなことはない、自分こそが有資格者だ
理性の後押しは、自身を勇気づけ、その本性を速やかに変貌させていった
だが、……当人自身気づいてはいなかった
自らが理性だと判じていたものは、その実、化けの皮をかぶった欲動に過ぎなかったということを
***
妹 ── おかえりなさい、お兄ちゃん!
男「ああ。ただいま」
妹(ぎゅうっ)
男「おい、あんまりくっつくなって。ただでさえ暑いんだから」
妹(にこにこ)
男「しょうがないやつだな、お前は」
妹 ── 今日はどうだったの?
男「別にいつも通り。そっちは?」
妹 ── こっちもいつも通り。いつも通り無駄口をきかずに物静かに過ごしたよ
男「自虐ネタはやめろっての。だいたい手話で話しまくってるんだから、お前は物静かではあるけど『目にうるさい』奴だよ」
妹 ── うまいこと言ったねぇお兄ちゃん!
男「お前に褒められてもなぁ」
妹 ── おかえりなさい、お兄ちゃん!
男「ああ。ただいま」
妹(ぎゅうっ)
男「おい、あんまりくっつくなって。ただでさえ暑いんだから」
妹(にこにこ)
男「しょうがないやつだな、お前は」
妹 ── 今日はどうだったの?
男「別にいつも通り。そっちは?」
妹 ── こっちもいつも通り。いつも通り無駄口をきかずに物静かに過ごしたよ
男「自虐ネタはやめろっての。だいたい手話で話しまくってるんだから、お前は物静かではあるけど『目にうるさい』奴だよ」
妹 ── うまいこと言ったねぇお兄ちゃん!
男「お前に褒められてもなぁ」
男「飯はもう食ったのか?」
妹 ── 肉じゃがだった! んまかったよ?
男「そっか。俺も食ってくるわ」
妹 ── 待ってるからお風呂いっしょに入ろ!
男「待たなくていいから、一人で入れよ」
妹 ── そこはせめて、先にシャワー浴びてこいよ、とかじゃないの?
男「いや、女子組の方が風呂の時間帯先だから。いつもお前の方が先にシャワー浴びてんじゃん」
妹 ── もう、ノリ悪いなぁ
男「いちいちお前のテンションに付き合ってられないっての。じゃあな」
妹 ── あ、そうだ。ねえお兄ちゃん
男「ん、なんだ?」
妹 ── ……こんな夜遅くまで、どこ行ってたの?
妹 ── 肉じゃがだった! んまかったよ?
男「そっか。俺も食ってくるわ」
妹 ── 待ってるからお風呂いっしょに入ろ!
男「待たなくていいから、一人で入れよ」
妹 ── そこはせめて、先にシャワー浴びてこいよ、とかじゃないの?
男「いや、女子組の方が風呂の時間帯先だから。いつもお前の方が先にシャワー浴びてんじゃん」
妹 ── もう、ノリ悪いなぁ
男「いちいちお前のテンションに付き合ってられないっての。じゃあな」
妹 ── あ、そうだ。ねえお兄ちゃん
男「ん、なんだ?」
妹 ── ……こんな夜遅くまで、どこ行ってたの?
妹 ── ……カウンセリングの時間、もうずっと前に終わってたはずだよね?
男「……」
妹 ── 最近、夜遅くなること多いみたいだけど、門限過ぎるなら予め言ってくれって、園長先生が言ってた
妹 ── あと、食事はできるだけ皆で食べましょうって
男「……そっか。園長先生には謝っておくよ。これからは連絡するって」
妹 ── これからは夜遅くならないようにする、じゃないんだ?
男「……」
男「……別におかしなことしてるわけじゃない」
妹 ── 本当に?
男「疑うなよ。……そういえばお前、この間も何か変なこと言ってたな。『見張る』とか『危険だ』とか、わけのわからない……」
妹 ── 見張ってるよ。お兄ちゃん、ほっとけないもん
男「なに、言って……」
妹 ── ほらほら! 早くご飯食べてきたら?
男「……あ、ああ。行ってくる」
男「……」
妹 ── 最近、夜遅くなること多いみたいだけど、門限過ぎるなら予め言ってくれって、園長先生が言ってた
妹 ── あと、食事はできるだけ皆で食べましょうって
男「……そっか。園長先生には謝っておくよ。これからは連絡するって」
妹 ── これからは夜遅くならないようにする、じゃないんだ?
男「……」
男「……別におかしなことしてるわけじゃない」
妹 ── 本当に?
男「疑うなよ。……そういえばお前、この間も何か変なこと言ってたな。『見張る』とか『危険だ』とか、わけのわからない……」
妹 ── 見張ってるよ。お兄ちゃん、ほっとけないもん
男「なに、言って……」
妹 ── ほらほら! 早くご飯食べてきたら?
男「……あ、ああ。行ってくる」
***
女「き、今日はね、ちょっと多めに、色々つくってきたの」
男「……」
女「その、こそこそされるのは嫌だって言ってたから、あの、直接食べてもらって、好みとか色々、あの、知れたらなぁって思って……」
男「……」
女「の、残してもいいから! あ、というか、多すぎてきっと残ると思うし、あ、でもそれは別にいいの……」
男「……」
男「……これは?」
女「そ、それは隠元豆の天ぷら!」
男「ふぅん。一個もらうぞ」
女「ど、どうぞ! 一個とは言わず、三つでも四つでも! お弁当箱まるごとでも!」
男「……それだとお前の昼食がなくなるだろうが」
女「あ、う、うんそうだね……へへ……」
女「き、今日はね、ちょっと多めに、色々つくってきたの」
男「……」
女「その、こそこそされるのは嫌だって言ってたから、あの、直接食べてもらって、好みとか色々、あの、知れたらなぁって思って……」
男「……」
女「の、残してもいいから! あ、というか、多すぎてきっと残ると思うし、あ、でもそれは別にいいの……」
男「……」
男「……これは?」
女「そ、それは隠元豆の天ぷら!」
男「ふぅん。一個もらうぞ」
女「ど、どうぞ! 一個とは言わず、三つでも四つでも! お弁当箱まるごとでも!」
男「……それだとお前の昼食がなくなるだろうが」
女「あ、う、うんそうだね……へへ……」
男「……うまい」
女「そ、そう? ……できれば揚げたてを食べて欲しかったんだけど、お、お弁当だし、しょうがないよね」
男「……これももらっていいか?」
女「う、うん。それはね、ゴーヤのお漬物だよ」
男「うまいな」
女「あ……ありがとう……へへ……」
男「なぜお前が礼を言うんだ」
女「え、な、なんでだろう……ご、ごめんなさい……」
男「どうして謝る」
女「え、え? あ、え、いや……ごめんなさい……」
男「……」
男「……料理、得意なんだな」
女「え、そ、そんなことないよ……へへ……へへへへっ……」
男「……」
女「そ、そう? ……できれば揚げたてを食べて欲しかったんだけど、お、お弁当だし、しょうがないよね」
男「……これももらっていいか?」
女「う、うん。それはね、ゴーヤのお漬物だよ」
男「うまいな」
女「あ……ありがとう……へへ……」
男「なぜお前が礼を言うんだ」
女「え、な、なんでだろう……ご、ごめんなさい……」
男「どうして謝る」
女「え、え? あ、え、いや……ごめんなさい……」
男「……」
男「……料理、得意なんだな」
女「え、そ、そんなことないよ……へへ……へへへへっ……」
男「……」
男「お前も食えよ、ほら」
女「……」
男「……」
男「……お気に召さないか。悪い」
女「え、いや、気にしないで! うん、気にしないでいいから! ……へへ」
男「……そういえば、今日はポチが来ないな」
女「あ、はは……猫にポチって名前……未だに慣れない、な……」
男「このところ毎日来てたのに、どうかしたのか」
女「そう、だね……どこかで別の人にご飯もらってるのかなぁ」
男「……」
男「……ん?」
男「あれ……、なんか……」
女「う、うん……今の、気のせいかな」
男「ちょっと聞いてくる」
女「……」
男「……」
男「……お気に召さないか。悪い」
女「え、いや、気にしないで! うん、気にしないでいいから! ……へへ」
男「……そういえば、今日はポチが来ないな」
女「あ、はは……猫にポチって名前……未だに慣れない、な……」
男「このところ毎日来てたのに、どうかしたのか」
女「そう、だね……どこかで別の人にご飯もらってるのかなぁ」
男「……」
男「……ん?」
男「あれ……、なんか……」
女「う、うん……今の、気のせいかな」
男「ちょっと聞いてくる」
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