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    元スレ咲「ノドカの牌」

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    1 :

    前々スレ
    「ノドカの牌?」
    http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1360070579/

    前スレ
    「ノドカの牌??」
    http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1360417705/

    昨日も立てたんですが、書きながら投稿してたら途中で落ちてしまって……見かけた方は申し訳なかったです。

    できるだけ、さくさく進められたらな、と思います。では。

    2 :

    ほーん
    で?
    いちいち同意求めんなカス

    3 = 1 :

    ダイジェスト

     ――優希の家・蔵にて。和、血塗られた麻雀卓を発見。

    「そ――」

     振り返ると、そこにはどこかの高校の制服を着た、儚げな少女が。

    (これからよろしくね、原村さんっ!)

    「そんなオカルトありえません!!」

     ――江戸時代に最強と謳われた雀士・宮永咲に取り憑かれた和、運命の出会い。

    「私は原村和。小学四年です。あなたは?」

    「宮永照。年はあなたの二つ上かな。よろしくね」

     ――交錯する最強と最強。

    健夜「大丈夫、別に、取って食べようってわけじゃないから。気楽に、いつも通りに打って」

    「は……はあ……」

    4 = 1 :

     ――徐々に麻雀にのめりこんでいく和。

    (私……今の私じゃ……この人たちに勝てません……!!)

    (そうだね……悔しいよね……自分の力で勝てないって)

     ――夏・ネット麻雀界、震撼。

    「もうそれがヤバいのよ!! 『saki』ってやつ、普通にプロにも勝っちゃうの!! ぶっちゃけネットの中ではもう最強みたいなもんよ!!」

     ――和、院生に。

    「あなたの口から言ってあげなさい」

    「合格しました」

    シズ「やっほうううううう!!!」

    「おめでとう、和!!」

    「よかったねっ!!」

     ――若獅子戦、鏡に映る『魔』。

    (あ……)

    「お姉ちゃん……!!!?」ガバッ

    5 = 1 :

     ――翌年・プロ試験予選にて、和、バイクを乗り回す女に遭遇。

    「私は外来で受けに来た竹井久よ、よろしくぅ!」

     ――予選から本戦までの二週間、合宿。エトペンを抱いて打ち始める和。

    大沼「気分がいいもんだよ。人が成長する様を間近で見るってのは」

     ――プロ試験本戦、繰り広げられる熱戦。

    「次は……次は絶対負けない……!! 負けない……負けないもん……!!」

     ――プロ試験折り返し。福路の口から語られる、九年前のインターハイ。

    美穂子「宮永咲。宮永照初段の……実の姉よ」

    6 :

    待ってました!

    7 = 1 :

    年齢(和小六年現在)
    11:淡
    12:和、優希、シズ、友香、莉子、はるる
    13:憩
    14:照、憧、南浦
    15:智葉、すばら、まこ、龍門渕四天王、怜、竜華、セーラ
    16:玄、いちご、胡桃

    26:衣、小蒔、誠子、尭深、灼など
    27:菫、宥、福路、豊音、シロ、哩、久など

    31:戒能良子、久保
    32:藤田

    34:三尋木 咏
    35:晴絵、理沙
    37:健夜
    40:ダヴァン

    49:雅枝

    71:トシ

    ??:霞、赤阪

    8 = 1 :

    <段位>
    初段:照、憩、智葉、怜、竜華、セーラ
    二段:小蒔
    三段:誠子、尭深、灼、美幸、姫子
    四段:塞、巴
    五段:衣、宥、エイスリン
    六段:
    七段:福路・菫・シロ・初美・豊音・哩・洋榎
    八段:
    九段:晴絵、ダヴァン、霞、雅枝、赤阪など
    タイトルホルダー:健夜(九冠)、トシ(五花)

    9 = 1 :

    「そんなことがあったんですか……」

    美穂子「幸いというかなんというか、宮永さんが亡くなる直前、最期の和了り牌をツモるとき、なぜか周囲一帯の電子機器が壊れてね、生中継がストップしたの」

    美穂子「だから、宮永さんの突然死が公になることはなかった。
     事態を重く見た当時の日本麻雀院会長……石戸霞九段は、それ以上の放送を中止、インターハイの情報は最小限しかメディアに流さず、マスコミにも圧力をかけ、あの大会そのものをなかったことにした」

    美穂子「同時に、石戸九段はその場にいた関係者全員に口止めをしたわ。そうして……宮永さんの優勝は取り消された。
     記録上は棄権扱いになって、宮永さんが全国大会に出場したことまでうやむやにされた」

    美穂子「私たちは……それを黙認したのよ。みんな、共犯者。私たちは……宮永咲という偉大な選手を殺したも同然なの」

    美穂子「しかも……宮永さんと直接対決した有力選手たちは、次々にプロに引き抜かれた。
     私もそう。石戸九段から直々に、プロに来ないかって誘われたの。自分の目の届くところに、あのときの関係者を置いておきたかったんでしょうね」

    美穂子「せめてもの罪滅ぼしにね、私は、世界で最も強い雀士はと聞かれたとき、宮永咲と答えるようにしているわ。江戸時代の、だけどね。
     でも、そう答えるたび、私は彼女のことを思い出す。彼女を忘れないことが……私たちにできる唯一のことなのよ」

    美穂子「私が言えるのはここまで。もし、あの決勝卓のことを詳しく知りたいなら、同卓した人に直接聞いてみるのがいいかもしれないわね。
     三人のうち二人は、あなたも知ってる人だから。天江五段と、神代二段よ」

    10 = 1 :

    「もう一人は……?」

    美穂子「もう一人は……まだプロにはなっていない。あの大会の直後に姿を消したの。
     消息不明……家庭の事情って噂は聞いたけど、たぶん、宮永さんのことがショックだったんだと思うわ。
     あの人は宮永さんをインターハイの舞台に連れてきた張本人で、同じ高校の、唯一の先輩だった」

    (それって……)

    美穂子「たった二人しかいない無名の麻雀部で、その二人が二人ともインターハイの頂点に上り詰めた。
     宮永さん以外で、二年連続個人戦県一位だった私に、唯一県予選で競り勝った人よ。悪待ちが得意な……素敵な人だったわ」

    「先生は……その人のことが好きだったんですか……?」

    美穂子「好き……憧れのようなものかも。それくらい、私にはないものばかりもっていて……カッコよかった。今でも、目を閉じればあの人の姿が瞼の裏に映るわ……」

    「え……もしかして……先生がいつも片目を閉じてるのって……」

    美穂子「ふふ、目を閉じればっていうのは、あくまで比喩よ。まあ、けれど……確かにあの人がいなくなってから……この右目を開けたことはないわね」

    美穂子「あの人がいなくなったと知って……先生、世界の半分くらいが失われたような気持ちになったわ。それこそ、片目で見るだけで十分な、寂しい世界……」

    11 = 1 :

    「先生は……今でもその人のことを……」

    美穂子「待っているわ。あれだけの実力を持っていた人だもの……麻雀を続けていれば、いつかどこかで会えるんじゃないか……って思ってる。
     それが、私がプロになった理由のほとんどよ。でなかったら、いくら石戸九段に言われようと、プロ試験なんて受けようともしなかったでしょうね」

    「その……たぶん、ですけど! もうすぐ会えると思いますよ!! その……先生の大好きな人に……!!」

    美穂子「ありがとう、原村さん。嘘でも嬉しいわ」

    (う、嘘じゃないんですけど……!)

    美穂子「でもね、あの人は私と同い年だから、あと数年でプロ試験を受ける年齢を超えてしまうの。
     残念だけれど……縁がなかったのかもなって……最近は少し諦め気味なのよ」

    「あ、諦めちゃダメですって! きっと戻ってきますよ!!」

    美穂子「でも、同じ決勝卓にいた天江五段や神代二段は、再び牌を握れるようになるまで随分時間が掛かったのよ?
     彼女たちのような強い力と心を持った人でも、それくらい宮永さんの死はショックだったの。
     まして、唯一の先輩で、宮永さんの一番身近にいたあの人のショックは――あの人……ああ見えて繊細だったから――計り知れないわ。
     よほどのきっかけがなければ、また麻雀を打とうなんて思わないでしょうね。でも、それは責められないわ。仕方のないこと……」

    12 :

    怒りのふんふむ

    13 = 12 :

    慈愛のふんふむ

    14 = 1 :

    「きっと……大丈夫ですよ。高校生の頃は繊細だったのかもしれませんが、案外、年を取ったら図太くなってるかもしれません」

    美穂子「まるで会ったことがあるみたいね」

    (現在進行形で戦ってますよ……状況証拠的には間違いなく久さんのことなんですが……。
     けど、苗字を言ったとき先生は知らないって……軽はずみなことを言ったら先生が傷つくことになるかもしれない……できれば、もう少し確信を持ちたい……)

    美穂子「じゃあ、私は教室に戻るわね。原村さんはどうする? 打っていく?」

    「いえ、今日は優希の後輩に会いにきただけですから。明日からはまた試験ですし……これで失礼させていただきます」

    美穂子「そう。じゃあ、試験、頑張ってね。原村さんがプロに上がってくるのを楽しみにしているわ」

    「ありがとうございます」ペコリ

    15 = 1 :

     ――帰り

    「咲さん……咲さん……!!」

    (なにかな……和ちゃん……)

    「どうして……黙ってたんですか……!! なんで言ってくれなかったんですか!?」

    (だって……和ちゃんに会ったばかりの頃は忘れてて……最近になってちゃんと思い出したんだけど……。
     今は……和ちゃんが大事な時期……私のことで余計な心配はかけられない……)

    「何言ってるんですか……! 私にとって一番大事なのは……咲さんです。咲さんがいなかったら……私は麻雀を打ってなかったんです。
     咲さん以上に大事なことなんてありません!!」

    (ありがとう……和ちゃん。じゃあ……一つだけ私の我儘を聞いてもらっていいかな……)

    「はい……なんでも言ってください」

    16 = 1 :

    (必ず……プロになって。それで、もっともっと強くなって。そして……一度だけでいい……私に……あの人と戦わせて)

    「小鍛治……九冠ですか?」

    (うん。和ちゃんがあの人のいる高みに届くくらい強くなれば……きっと実現すると思うんだ)

    「……わかりました。絶対に、咲さんの願いは叶えます」

    (ありがとう……)

    「咲さん……? どうかしましたか?」

    (ううん。じゃあ、帰って一局打とうか。それで、明日からの試験も頑張ろう)

    「はい……!!」

    17 = 1 :

     ――松実館

    「あれ……玄ちゃん、まだ起きてたの……?」

    「うん。明日……大事な半荘があるから……眠れなくて……」

    「じゃあ、昔みたいに一緒に寝よっか……?」

    「夏におねえちゃんと一緒に寝るのは……せめて湯たんぽなしならいいけど……」

    「電気毛布は……?」

    「電気毛布もちょっと……」

    「じゃ、じゃあ……湯たんぽも電気毛布もいらないから……玄ちゃんをぎゅってしてていい……?」

    「うん……それなら……いいよ……」

    「わぁい……」

    19 = 1 :

     ――

    「ねえ、玄ちゃん」

    「なに、おねえちゃん?」

    「玄ちゃんなら、何があっても大丈夫。おねえちゃん、信じてるから」ギュウウ

    「おねえちゃん…………ありがと。でも、暑いから少し離れて……」

    「…………やだ……」ギュウウウウ

    20 = 1 :

     ――プロ試験二十八日目・夜(112半荘目)

    「組み合わせ表を見たときから、この半荘のことは覚悟してた。けど……手加減はなしだからね! みんな……全力で打つこと!!」

     新子憧:75勝36敗(四位)

    シズ「言われなくてもっ!! プロ試験が始まったときから……一番楽しみにしてた対局がやっと来たんだ……!! 本気でやらないわけがないっ!!」

     高鴨穏乃:31勝80敗(十一位)

    「穏乃ちゃんやる気満々だね……!! うん……私もいつも以上に張り切るよ!!」

     松実玄:90勝21敗(二位)

    「私はいつも通りに打つだけですけど……いつも通りに打って……勝たせてもらいます!!」

     原村和:84勝27敗(三位)

    憧・シズ・玄・和「よろしくお願いしますっ!!」

    21 :

    ちょっと離れたら落ちてしまって残念だった
    支援

    22 = 1 :

     ――

    (和……後半になるにつれて打牌が今まで以上に安定してきた。たぶん、最初の頃はまだペンギンに慣れてなかったんだ。顔が赤くなるのだって、対局の中盤からだったのに。
     今では……序盤からスーパーデジタルモード(私命名)に入れるようになった。和の成績……二位の玄との差を縮めて……同時に四位の私との差を広げつつある。
     ここで勝っておかないと……もう追いつけなくなる!!)タンッ

    (久さんのおかげで……リアルでもネット麻雀をしているときに近い感覚で打てるようになりました。けど……今日の相手は穏乃たち……家族みたいなものです。
     エトペンなしでも最初からリラックスして打てる気がします……絶対に……勝ちますよ……!!)ヒュン

    シズ(憧さんや玄さんが強いのはもちろんだけど……和は本当に……本戦前に化けた。けど……私だってあの二週間……何もしていなかったわけじゃない。
     もうプロ合格はほぼ無理だけど……それはそれ……こうして四人みんなで……本気で遊べる……こんな一局はもうこれきりしかない……!!
     一応麻雀の先輩は私なんだし……今日は和にいいとこ見せるんだ……!!)タンッ

    (みんな……すごい気迫……! 去年までは、憧ちゃんや穏乃ちゃんと三人で打っても……ここまで熱くなることはなかった。全部……和ちゃんのおかげかな。
     楽しい……とっても楽しいよ。和ちゃんが私たちの仲間になってくれて……本当によかった……!!)タンッ

    シズ「そっ……それロンです!! 18000ッ!!」

    「わ、わわわっ……!?」

    (シズのダマッパネ……!!? まさか玄にブチ当てるとはね……やるじゃない!!)

    (驚きました……こんな序盤に……!!)

    シズ「い……一本場ですっ!!」コロコロ

    (あわわわわわ……!!!)

    23 = 1 :

     ――オーラス・親:玄

    (オーラスで三位のシズとの差は僅か……それに玄さんだってラスだけど、親だし大きいの喰らったら簡単にひっくり返る……速攻で流して終わらせる……!!)

    (トップですが……安心はできません。序盤の穏乃の一撃のように……玄さんや穏乃から一発逆転される可能性は十分にあります。
     ここは憧さんのアシストに回りたいところですが……残念ながら私は憧さんの下家……ここは自分で和了るしかありませんね)

    穏乃(まだ勝負は終わってない……! 今の私に失うものはないんだ……このアドバンテージを生かして……喰らいつく……!!)

    (お、落ち着いて、私。ここまで和了りはなかったけど……あの一撃以外は……振り込みもない。守って守ってここまで辿り着いたんだ。まだ、チャンスはある。
     よしっ!! この親で……稼ぐんだ……っ!!)スッ

    25 = 1 :

      (ちょ……え……玄…………?)


                      和(玄さん…………?)






            シズ(え……ええ……?)











    (…………………………あ……)サー

    26 :

    クロチャー…

    27 = 1 :

    (わ……私ってば……なに親なのにツモろうとしてるんだろ……あはは……ちょっと気合入れすぎちゃったかな……?
     ないない……多牌なんて初心者じゃないんだから……ははは……)ソットモドシ

    (え……玄さん……今……牌を……ツモって……戻しました……?)

    穏乃(なんの牌か見てなければ……ちょっと触れるだけならセーフ……ツモとは見なされない……。
     だけど……今の玄さんは……明らかに指が盲牌できる位置まで牌に触れてしまっていた……ように見える……)

    (盲牌した牌を戻したんだとしたら……悪質だったり対局続行不可能な場合は満貫払い……そうじゃないなら和了り放棄だけど……。
     満貫払いなら玄はトビだし……和了り放棄じゃ形式テンパイすら認められない……どちらにせよ玄の負けは確定……)

    30 = 1 :

    (ど……どうしよう……私……

                 ――牌は見てないんだから不正じゃない。

      ――触れてしまっただけ……チョンボじゃない。

               ――満貫払いはトビ確定。     ――和了り放棄も負け確定。

         ――私はズルなんてしてない。

                       ――どうしてこんなことに……?

     ――負けられないのに!!

                ――和ちゃんが追い上げてきてる。

       ――憧ちゃんにも追いつかれるかもしれない……。

           ――負けられない!!         ――今年こそプロに。

      ――万年院生一位。       ――また来年も院生。

          ――後輩に先を越される。

                             ――白星がほしい。

     ――みんななら黙って対局を続けてくれるはず……。

               ――どんなことをしてでも白星がほしい……!!)

    31 :

    クロちゃん・・・

    32 = 1 :

    「あ――あ……


               『玄、今年は安定してるね。羨ましいよー』

     『この調子で頑張ってくださいっ!!』



           『玄ちゃんなら、何があっても大丈夫。おねえちゃん、信じてるから』







      『こっちに――プロの世界に来なよ。玄にはその力があるんだから』











                         …………和了り放棄します……」

    33 = 1 :

     ――終局

    「……ありがとうございました」ダッ

    「く、玄さん……!!」

    シズ「タ、タンマ……和! 追いかけてどうなるんだって……玄さんだって、私たちだってまだ混乱してる……そんな状態で話しても状況が悪化するだけだよ」

    「穏乃……」

    シズ「玄さんも一人になりたいはずだよ……お互い辛いけど……今はそっとしておくのが一番だと思う」

    「……そうですね」

    「玄……明日から立て直せればいいんだけど……ミスは誰にでもあるし、それに今回の場合、玄が親なのにツモろうとしたのは、ある種の運命だったっていうか……」

    「運命……? なんですかそのオカルト染みた言い回しは……」

    「私にも……どういうことかはわからないよ。けど、玄がツモろうとした牌――私が最初にツモった牌なんだけど……見て、驚いた……」

    シズ「ま、まさか……その牌……!!」

    「うん。ドラだったのよ……」

    (玄さん……)

    34 = 1 :

     ――プロ試験三十日目(120半荘)終了

    「あっ……玄さん……!」

    「」ビクッ

    「玄さん……どうしちゃったんですか……! この間のことを気にしてるんですか? 何か言ってくれないと……わからないですよ……!!」

    「ご、ごめん、和ちゃん……心配してくれてありがとう。けど……私、今日も先に帰るね……!! 憧ちゃんや穏乃ちゃんたちにもごめんって言っておいて……!」ダッ

    「玄さん……!!」

    35 = 1 :

    シズ「あっ……遅かった……!」

    「和、玄はなんだって……?」

    「わかりません……ごめん、って。そればかりで」

    「もう……わけわかんない! チョンボなんて誰にだってあることじゃない……!! しっかりしてよ……玄……!!」

    シズ「玄さん……今日も四戦全敗でしたね。それに、憧さんはもう気付いてますよね。玄さん……あの日からドラが一枚も来なくなってる……」

    「そんなオカルト……!! たまたまですよっ!! ドラが玄さんに集まらなかったのは……たまたまですっ!!
     あれ!? 逆ですか!!? もう……私は何を言って……!!」

    (玄……!! なにやってるのよ!!! 今年こそプロになるんじゃなかったの……!!?
     せっかくここまで勝ちを重ねてきたのに……この日のためにずっと頑張ってきたのに……たった一回のミスで全部台無しにするの……!? 今までの練習を全部裏切るつもりなの……!!
     玄……何を考えてんのか知らないけど……いつまでもそのまま逃げ続けるつもりなら……私……先行っちゃうからね……!!?)

    36 = 1 :

     ――松実館

    「く……玄ちゃん……どうしたの? 赤土さんも灼ちゃんも心配してるよ……? 憧ちゃんたちは聞いても教えてくれないし……この間なにがあったの……?」

    「い……言いたくないの……ごめん……おねえちゃん!」

    「玄ちゃん…………」

     ――

    (おねえちゃん……みんな……心配かけてごめんなさい。けど……私……私なんて……もう心配してもらう価値もないんだ……)

    (私は……私は最低だ……っ!!)

    (あのとき……チョンボをしたって……それはわかってたはずなのに……すぐに自己申告しなきゃいけなかったのに……!!)

    (なのに……私は誤魔化そうとした……みんななら見て見ぬフリをしてくれるって……そんなズルいことを考えてた……!!)

    (私は……自分の勝ち星のために……友達を利用しようとしてたんだ……!!)

    (私……最低だよ……こんな私に麻雀を打つ資格なんてない……麻雀は……これ限りでやめよう)

    (このプロ試験が終わったら……赤土さんに頼んで破門にしてもらうんだ……もう……勝ち星も……ドラも要らない……何も……要らない……要らないよ……)

    38 = 1 :

     ――プロ試験三十五日目・夕方休憩

    「捕まえたっ!!」ガシッ

    「あ……憧ちゃん……」

    「さあ……今日こそ話してもらうわよ、玄。どうして私たちを避けてるのか! どうしてわざと負け続けてるのか……!!? 全部ねっ!!」

    「は……話すことなんて……ないよ……」

    「どうして!? 私たち友達でしょ!!?」

    「…………そんな資格、私にはないよ。私は……憧ちゃんたちを裏切ろうとした……そんな最低なことをしといて……友達なんて……とても……」

    「いやいや意味わかんないってば!!」

    「とにかく……私はもう……麻雀やめるから……私の勝ち星はみんなにあげるから……それで憧ちゃんや和ちゃんはプロになっ――」

     パァァァァァァァン

    「あ…………憧……ちゃん……?」ヒリヒリ

    40 = 1 :

    「…………勝ち星をあげるとか、そんなふざけたことを軽々しく言わないで。今の、シズに聞かれたらどうするつもりだったの?」

    「あ……」

    「シズは……どんな状況でも私たちに勝とうとしてた。たとえ成績が悪くて……プロになるのが絶望的でも……勝ち星を譲るとか、そんな寝ぼけたことは一度も言わなかったよ」

    「ごめんなさい……」

    「玄が何を考えてたって、何をしたって、それで麻雀をやめることになっちゃったって……それはまあいいよ。でも、今のは……友達を侮辱されたみたいで……いくら玄でも許せない……」

    「そんでもってさ、いくら私だって……いくら許せないからって……友達でもなかったら、いきなり叩いたりなんかしないよ……?」

    「玄……私は今も、これからもこれまでも、玄とは友達のつもりだからね? 和やシズもそうだよ。みんな、ずっと玄と友達でいたいって思ってるんだから」

    「玄は……どうなの? 麻雀をやめたいなら止めはしない。それは玄の人生だから」

    「でも、玄は……麻雀と一緒に私たちの友達までやめちゃうの? ねえ、玄……それっていくらなんでも寂し過ぎるでしょ……?」

    「じゃあ……先に対局室に行ってるね。玄もすぐに戻ってきてよ!」タッタッタッ

    「……憧……ちゃん…………」

    42 = 1 :

     ――対局室

    「あーやっと来たぁ……私を待たせるとかいい度胸だよねー?」

     大星淡:114勝25敗(一位)

    (玄さん……大丈夫でしょうか……?)

     原村和:103勝36敗(二位)

    (最初で最後の上位陣の直接対決……玄……ここで負けたら一気に合格圏内から外れちゃうんだからね……!?
     わかってる!? しっかりして……立て直してよ……玄……!!)

     新子憧:97勝42敗(三位)

    「お……遅くなってすいません……よろしくお願いします……」

     松実玄:90勝49敗(四位)

    43 :

    何をもって勝ち負けなのか?
    1位が勝ちでそれ以外は負け?
    1対1の勝負じゃないから無理やり勝敗にするとおかしなことになると思われ。

    44 = 1 :

     ――東二局

    「ツモッ!! 6000オールだよー!!」ゴッ

    (ダブリーからの暗カン……カン裏モロ乗りでただのダブリーが一瞬でインパチ……!? 偶然極まりないです……!!)

    (このがきんちょ……!! 玄がドラを集めなくなった途端にこれとか……勘弁してほしいわっ!!)

    「どっかの誰かさんが調子崩してるから助かるよ~! さあ、一本場行こうかっ!!」

    「…………」

    (玄、なんとか言い返したらどうなの……!?)

    「大体さー、同じ門下の後輩に負けたくらいで落ち込むような、そんな枯れ枝みたいなメンタルでプロになろうってのが間違いなんだよ。
     ホント……なんでそんな人が院生一位なんてやってられたわけ……? あっ、そっか、私が入る前の院生って雑魚ばっかだったもね、あははっ!! ならしょうがないよねっ!!」

    (こ、こいつ黙って聞いてれば……!!)

    45 :

    >>43
    2位以上が勝ちで3位以下が負けだったはず

    46 = 1 :

    ここでは、一位と二位に白星、三位と四位に黒星がつきます。

    12人で167回半荘をやって、白星が多い三人がプロ試験合格です。

    白星なら勝ち、黒星なら負け、という解釈です。

    また、167回中、同じ相手とは45回くらい打ちます。

    その45回の合計順位を競い合って、個人対個人の結果とする、ような見方もあります。

    ただ、試験で問われているのはあくまで連対率です。

    47 = 1 :

    「どいつもこいつも弱くって張り合いなさ過ぎなんだよ。そのくせ、みんな無駄にやる気だけはあってさー」

    「そういうの見ててムカツクっていうか。実力ないくせに頑張ってんじゃねーよっていうか。虫唾が走る。
     プロっていうのはさ、選ばれた雀士だけがなれるものなんだから。雑魚は雑魚らしくアマで打ってればいんだよ。分不相応な夢を追っかけて熱くなるとか、見てて痛いんだよねー」

    「昨日も、なんてったっけ、あの最下位争いしてるサル……あいつってば消化試合のくせしてトップの私を狙ってきて……ナメんなって感じ。すぐにやり返してやったけど」

    「ま、でもしょうがないよねっ! あんなサルなんて、先輩も雑魚なら師匠も雑魚なんだもん。ダメダメ門下でヌルい麻雀打ってるやつが私に勝とうなんて百万年早いんだよっ!!」

    「………………淡ちゃん……」

    「なによ、本当の――」

    「少し黙って……!!」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

    49 = 1 :

    「っ……はああぁ!? 雑魚を雑魚って言って何が悪いわけ!? 文句あるなら麻雀で言えばいいじゃん!!」

    「聞こえなかった? 黙ってって言ったんだけど……!!」

    「で……でも事実だもん……!!」

    「そうだね、淡ちゃんの言う通り。私なんてダメでヌルい麻雀しか打てない、枯れ枝メンタルの雑魚だよ。だから……私のことはいくら悪く言っても構わない。
     けど……けどね……!! 私の大切な友達や先生を悪く言うのは……いくら淡ちゃんでも……許さないよ……!!!」

    「ふんっ、許さないからなんだって言うの!!? 言っておくけど、玄さんが院生一位だったのは過去の話っ!! 最後の月の成績は私のほうが上だったんだから……!!」

    「さっきから本当にうるさいよ……淡ちゃん。それともあれから……天邪鬼な淡ちゃんは私に黙らせてほしいのかな……!?」

    「うっ……(なによなによ!! ドラが来なくなったドラ置き場が偉そうに……!!)」

    「さあ……淡ちゃんの連荘だよ……早くサイコロを振って」

    「言われなくてもっ!!」


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