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    元スレ狐娘「主様ーっ」男「うっせ」

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    251 :

    狐さんの、見た目は何歳くらいなんだろう

    252 = 154 :

    ――放課後、帰路


    スタ スタ スタ……

    「ふむぅ……」

    (人を集めるだけってんなら、幾つか方法はあるんだよな)

    (1つ、敷地内で火事を起こす。2つ、敷地内で人を殺す。3つ、敷地内で自殺する)

    (4つ、神社で人の死体を発見したと通報をする。5つ、曰くつき物件として宣伝する)

    (どれもまともな方法じゃねぇな……)

    (この罰はきっと、あの神社の知名度を上げることにも一役買ってくれるだろうし)

    (そんなマイナスイメージを貼り付けるのはよろしくない)

    (また狐の力が弱まりかねない……多分。詳しくないから知らんけど)

    253 = 154 :

    (んんんん……)チラッ

    「……?」ピタッ

    「……」ジーッ

    (町内清掃ボランティアのポスターか……)

    (……これ、使えるか?)

    (町内なら、あの神社だって含まれる)

    (ただ、『人で埋め尽くす』って条件がどの程度で満たされるのかが分からん)

    (その辺、あの猫はどういう風に考えてるんだろう)

    (あとで聞いてみるか)

    「……」

    スタ スタ スタ……

    (一番手っ取り早くて、尚且つプラスになる方法っつったら……)

    (……あそこで祭事でもあったらよかったんだけどな)

    (そしたら、出店とか出してもらってさ)

    (然して広くもない町だ。きっと人は集まるだろう)

    254 = 154 :

    (ま、現実的じゃあないな。近々イベントがある訳でも――)

    「……節分祭があったな」

    (でも、あの神社で祭りを開催してくれるかっていったら……どうだろう)

    (そういうのって、町内会で決めてるんだっけか)

    (……行ってみるか?)

    (まぁ普通に考えて、いきなり節分祭の会場をあの神社に変えることは無理だろうが……)

    (でも、ボランティアの件もついで聞けるだろうし……うん、行くか。明日あたり)

    「……」

    (これ、『手を貸す』の範疇に入ってるよなぁ……)

    (いや、聞くだけだから。聞くだけ。大丈夫だろ。うん)

    スタ スタ スタ……

    255 :

    狐娘に触らせてもらえるんなら喜んでいきますよ、はい

    256 = 154 :

    ――火曜日、放課後、町内会事務所前

    「……」

    (なんか、緊張するな……ちょっと聞くだけなんだが)

    「なんか用かい?」

    「!?」ビクッ

    「は、はいっ、あの、俺、いや私は○○学園高等部二年の――」

    「へぇ。あの学園のか。懐かしいなぁ、はははっ」

    「……今日は、聞きたいことがあって参りました」

    (ところどころ言葉遣いが怪しいが……このまま突っ走ってしまおう)

    「まぁまぁ、立ち話もなんだ。あがんな」

    「えっ、そんな」

    「まぁまぁまぁまぁ」



    257 = 154 :

    「ほれ。熱いから気をつけろ」コトン

    「ありがとうございます……」

    (ちょっと質問して帰るはずが、なぜこんなことにっ)

    「あらー、お客さん?」

    「どうも……」ペコリ

    「ゆっくりしていきんさいねー」

    「はぁ……」ペコリ

    (――って、いかんいかん。ペースを乱すな、俺)

    「ごほん――では、質問してもよろしいでしょうか」

    「どんとこい」

    「……あの神社、長ったらしい階段の上にある神社をご存知ですか?」

    「あぁ、ミケガミ神社なぁ。知ってるとも」

    (ミケガミ神社っていうのか。知らなかった)

    「有名な場所だったんだけどなぁ……今じゃあのザマだ」

    「何かあったんですか?」

    259 :

    260 = 154 :

    「7年くらい前かなぁ。あそこの宮司が亡くなって、その跡継ぎもすぐに亡くなっちまった」

    「そのまた跡継ぎもなくなって……そのうち継ぐ奴はだんれもいなくなっちまった。怖いだろ?」

    (こわっ、怖すぎるだろそれっ)

    「……宮司って、なんですか」

    「神社を管理する人のことだぁよ」

    「あぁ、なるほど」

    「今は町内会で管理することになってんだけども、そういう、アレ。アレだよ」

    「……オカルト、ですか?」

    「そうそうそう。おめー頭良いなぁ」

    (あんまり嬉しくねぇ)

    「そういうおかると? を怖がっちまって、みんなあの神社に立ち寄ろうとしねぇんだ」

    「それって結構重大な問題なんじゃ……」

    「みーんな黙認してる。疑問にすら思ってねぇんだ」

    261 = 251 :

    これは宮司になるパターンか?

    262 = 154 :

    「正直、俺もこえぇんだよなぁ」

    「……」

    (既に曰くつきだったのか……)

    (もしかして、俺だけか。それを知らなかったの)

    (……俺一人だから。俺があの場所を忘れたら、狐は消える?)

    「……」

    「あのっ、俺、来週末にボランティアがあるってポスターを見ました」

    「おっ、参加してくれんのか?」

    「参加します。その代わり、お願いがあります」

    「んん?」

    「ミケガミ神社の清掃をしたいんです」

    「……さっきも言っただろ」

    264 = 154 :

    「あそこは、俺にとって大切な場所なんです……思い出の場所なんです」


    『コーン』

    『うぉおおっ……狐だっ、狐がいるっ』

    『……』ダッ

    『あっ、待てぇええ!』ダッ


    「確かに、その話を聞いて気味が悪いとは思いました」

    「正直、ちょっぴり怖いです」

    「でも、あそこが大切な場所だということに変わりはありませんし、揺るぎません」

    「お願いします、手を貸して下さい」スッ

    「おいおい、頭を上げろよ……」

    265 = 154 :

    スタ スタ……

    「あら……」

    「お願いしますっ!」

    「婆さんも言ってやってくれよ。土下座なんてやめろって」

    「……どういうことなの」

    「ミケガミ神社の清掃をしたいんです。来週末のボランティアで」

    「あらまぁ……でも、どうして?」

    「あそこが、俺の思い出の場所だからです」

    「俺だけじゃありません。少なくとも、もう一人います」

    「そいつと俺の、大切な場所だから……あのまま埃に塗れて、寂れて、朽ちていく様をみるのは耐えられません」

    「お願いしますっ」スッ

    「……私たちに頭を下げても、なんにもならないよ」

    「そうだ。ワシらがオーケーを出しても、他の町民がな」

    266 = 154 :

    「だったら、他の町民の了承を得ればいいんですね」

    「町内会に所属してる人の住所、教えてください」

    「知ってどうするんだ」

    「頼んで回るに決まってるじゃないですか」

    「……」

    「……」

    「教えてください、お願いします」スッ

    「……さっきから、頭を下げてばかりだな、お前は」ポリポリ

    「町民の殆どが町内会に入ってるんだ。全部の家を回るといっても過言じゃあないぞ」

    「然して広くもないこの町を回る事くらい、小学生のガキにだって出来ます」

    「いいんじゃありませんか、爺さん」

    「婆さん……」

    「……」ワシャワシャ

    「……ちょっと待ってろ」スッ

    スタ スタ スタ……

    267 = 154 :

    「よかったわね」

    「……えっ」

    「あれはオーケーってことよ」

    「……!」

    「私もそろそろ、ちゃんとしないといけないと思ってたのよねぇ」

    「……そう、なんですか?」

    「ミケガミ神社には私も思い入れがあるの

    「きっと、私と同じような人が少なからずいると思うのよ」

    「……」

    「今回の件、私も協力させてもらうわ」

    「本当ですかっ! ありがとうございます!」

    「でも、あまり期待はしないでね」

    「私に出来るのは、井戸端会議の中で、その件を織り込むくらいだもの」

    「いえ……一人でも協力者がいるのは心強いです」

    268 :

    さるよけ猛烈支援

    269 = 154 :

    スタ スタ スタ……

    「とりあえず、役職についてる奴をリストアップしておいた」

    「全員分のをやるわけにはいかんからな」
    「もってけ」ピラッ

    「ありがとうございますっ」ペコリ

    「もう頭は下げるな。価値も一緒に下がるぞ」

    「……え?」

    「そう簡単にヘコヘコ頭を下げていいもんじゃねぇってことだ、覚えとけ若造」

    「……すみま――いえ、はい。肝に銘じておきます」

    「私、この子に協力するから」

    「えっ」

    「あなたも強力、するのよね?」

    「えっ」

    「……」
    「はい」


    270 = 154 :

    ――町内会事務所前

    「本日は貴重な時間を……えー……」

    「堅っ苦しい言葉、やめろ」

    「今日は、ありがとうございましたっ」

    「がんばってね。応援してるから」

    「はいっ」

    「それでは、失礼します」

    スタ スタ スタ……

    (なんだか、ノリで色々口走っちまった)

    (朽ちていく様を見るのは耐えられない――なんて、ホントはそんなこと思ってないクセに)

    (……思い出の場所であることは事実だけどさ)

    (あっ、節分祭の件、聞いてなかった……まぁいいか。いい情報も入ったし)

    271 = 154 :

    シュタッ

    「にゃんにゃにゃーん」

    「……」

    「おみゃー、分かってるんだろうなー?」

    「……何のことだか分かりませんね」

    「にゃぁ、いい度胸だー」

    「これは、狐の為にやったことじゃありませんからね」

    「ただ俺が、俺の為にあの場所を綺麗にしたいってだけなんですよ」

    「たまたま俺の目的が、あの場所の清掃だっただけ」

    「狐を助けようとしている訳じゃありません」

    「……それでも斬ろうってんなら、勝手にすればいい」

    「もちろん、ただで殺されるつもりはありませんけど」ギロリ

    「やめとけやめとけー、たかが人間がにゃぁに勝てるわけがないだろー」

    「……ですよねー」
    「でも、これってあなたにとっても都合がいいと思うんですよ」

    「?」

    272 = 242 :

    >>269
    本当にすごくどうでもいいがオカルトって言葉で頭がいいって言ってんのにこの爺さんリストアップって言葉は普通に使うんだな

    273 = 154 :

    「あの敷地に生えるマタタビが好きなんでしょう?」

    「だったら課題はクリアできるに越した事はない」

    「多分、あいつだけじゃあこの課題はこなせません」

    「でも、一人と一匹だったら――二人だったら、なんとかなるかもしれません」

    「にゃぁ、それをあの狐は望んでいるかなー」

    「……俺はあいつと、堂々と一緒にいたいんです」

    「これは元々、俺と狐が、胸を張って隣を歩けるようになる為の罰です」

    「歩きたいのは狐だけじゃない。俺だって、胸を張って隣を歩きたい」

    「あいつ一人が頑張ってこの罰を乗り越えて、俺の元に戻ってきたとしても、俺が釈然としないんですよ」

    274 = 154 :

    「……俺だって、この罰を受ける資格がある」

    「むちゃくちゃだなーおみゃーは」

    「自分がなにを言ってるのかわかってんのかー?」

    「惚気話なら狐に言えよなー」

    「……」

    「……う、うるさいっ///」

    「にゃぁ、つまりおみゃーは、あいつのこれまでの頑張りを無駄にするって言うんだなー?」

    「……えっ?」

    「そうだろー? あいつ一人で罰を乗り越えられないと決め付けたんだ」

    「それって、信じてないってことだよなー」

    「頼りないから。仕方ないから、俺が代わりにやってやる」

    「狐の頑張りを、思いを踏み躙るのと同義だー」

    「……そんなつもりじゃ」

    「なら尚のこと性質が悪い」

    275 = 154 :

    「もう一度、よぉく考えてみるんだなー」

    「それじゃあにゃぁーんにゃーんにゃぁん」ダッ


    「……そんなつもりじゃ、…………」


    ――夕方、自宅


    「だぁー……疲れた」

    「ハァ……」ゴロン

    (……あの猫の言うとおりだ)

    (俺が頑張って、その結果条件をクリアしたって、あいつは喜ばない)

    (これは、あいつが納得する為の、俺といる為の罰)

    (分かってるようで、分かってなかった……)

    (あいつの頑張りを、踏み躙っていいはずがないんだ)

    (……でも、なんとかしてやりたい。手伝いがしたい)

    (それは、あいつの為にならないんだろうか)

    (余計なお世話で、……信じていない、ってことになるのかな)

    276 = 154 :

    「……」

    「わっかんねぇ……」

    (このままなにもせず、ただじっと結果を待てばいいのか?)

    (それが、冴えたやり方って奴なのか?)

    「そんなわけ、ない」

    (何もしないことは正解かもしれないけど、俺にとっては違う)

    「……」

    ピラッ

    (さっそくこの紙は、不要になりそうだ)

    ガチャ

    「おーっす」

    「……友か」ゴロン

    「ちょっと米分けてくんね? また炊くの忘れちゃってさぁ」

    「……勝手に持ってけ」

    277 = 154 :

    「今日は一段とブルーだな」
    「……ちょっと、猫に説教されちゃって」

    「はっ?」

    「いや、今のは忘れてくれ」

    「おう……」

    「……なぁ」

    「ん」

    「お前は、分からない事があったらどうする?」

    「答えを見る」

    「……そういうんじゃなくて」
    「答えの載ってない問題集でも思い浮かべてくれ」

    「頭のいい奴、もしくはその教科の先生に聞く」
    「……」

    「なんだよ、まだ不満なのか?」

    「頭のいい奴に聞いても、先生に聞いても分からなかった、どうする?」

    「諦める」

    「その選択肢はなしの方向で」

    279 = 154 :

    「じゃあ……誰かと一緒に考える、とか」

    「一緒に考える……」

    「三人寄れば真珠の知恵って言うだろ、あれだよ」

    「文殊な」

    「あらいやだ、恥ずかしい」

    「……一緒に考えても、いいのかな」

    「禁止されてなければいいんじゃね?」

    「……考えてくれるのかな」

    「何が言いたいのか分からないが、友の頼みなら考えてくれるだろ、多分」

    「友達の頼みか」

    (……飼い主と飼い狐だけどな)

    (話して、みようか。今悩んでることを全部、打ち明けてみようか)

    (狐はどう思うかな。迷惑に思うだろうか)

    (今は課題の事で精一杯だろうし、そんなことを考える暇なんてないかもしれない)

    (……打ち明けるかはおいておこう。とにかく、狐と話をしてみよう)

    280 = 154 :

    「男?」

    「ありがとう。なんか、頑張れる気がしてきた」

    「? そうか、ならいいけど」

    「米、もらってくぞ」

    「おうもってけ。炊飯器ごともってけ」

    「マジで!?」

    「嘘だ」

    「ですよねー」

    281 = 154 :

    ――水曜日、放課後、ミケガミ神社裏


    狐娘「……」

    ザァアアア……

    「なにやってんだ?」

    狐娘「あっ、主様」

    狐娘「水をあげてるんです」

    「……そこに、なにもないけど」

    狐娘「種を植えましたっ」

    「へぇ。何の種?」

    狐娘「色々です」

    「色々……」

    「ところで、どこから種を持ってきたんだ」

    狐娘「商店街のお花屋さんに譲っていただきした」

    「はっ? お前、その姿で商店街歩いたの!?」

    282 :

    じゃあ僕は狐娘に種を植え付けます

    283 = 154 :

    狐娘「はい」

    「いやいやいや、狐耳に九本の尻尾の女の子とか奇抜ってレベルじゃねぇぞ!!」

    狐娘「ちゃんと隠しましたよ」

    「どうやって」

    狐娘「耳は帽子で隠して、尻尾は着物の中に、こう、無理やり」

    「すげーふっくらした尻だな」

    狐娘「そこが気になるところですね」

    「……しかし、よく譲ってもらえたな」

    狐娘「一生懸命お願いしましたからねっ」フフン

    「ふぅん……」

    「なんで花を育てようとしてるんだ?」

    狐娘「ここは昔と違って、緑が少ないですからね。だから育てようと思いました」

    狐娘「今は、私も、この土地も少しは潤っていますし、きっと元気に育ってくれると思うんです」

    「……課題は解決できそうか?」

    狐娘「……いえ、そこまでは」

    285 = 154 :

    狐娘「でも、やれることをやろうって決めたんです」

    狐娘「これは大いなる一歩なのですよ~」

    「そっか」

    狐娘「はいっ」

    「……」

    (こいつも、こいつなりに頑張ってるんだよな)

    (……もう少しで、その頑張りを無駄にするところだった)

    「……ごめんな」

    狐娘「えっ……どうして謝るんですか?」

    「俺、その頑張りを無駄にしようとした」

    狐娘「……そうなのですか?」

    「お前にこの課題はクリアできない」

    「……そうどっかで決め付けて、勝手に課題を解決しようとした」

    「近々、町内清掃ボランティアがある。そこでミケガミ神社の清掃もしてもらえるよう、昨日頼みに行った」

    「結果はこれからの頑張り次第だけど、上手く言えば、人で埋め尽くす――とまではいかいないけど、人を集める事は出来る」

    286 = 154 :

    狐娘「……」

    「でも、その必要なんてなかったんだよな」

    「俺はお前を信じられなかった……だから、でしゃばった真似をしたこと、謝る」

    「ごめんな……ごめん」

    狐娘「……」フルフル

    狐娘「謝らないでください」

    「……」

    狐娘「確かに、信じられていなかったのは悲しいことですけど……」

    狐娘「それは、私が不甲斐ないから、仕方ありませんね」

    「そんなことない」

    「……そんなこと、なかった」

    狐娘「私の為に、頑張ってくれていたんですね」

    「……違う。結局、自分の為だ。俺が狐にしてやりたかったから…………」

    狐娘「そうだとしても、それは結局、私の為じゃないですか」

    「……あっ」

    287 = 154 :

    狐娘「それにしても、よく猫さんに斬られませんでしたね」

    「あ、あぁ……色々理屈を並べて、ね。これは俺が俺の為にやることだから――とか言って」

    狐娘「そうなんですかぁ……」

    狐娘「それじゃあ、主様のやろうとしていたことを私が引き継ぐというのは、ルール違反なのでしょうか」

    「えっ? ……それは、どうだろう」

    狐娘「私も、ここを綺麗にしたいと思っていたんです」

    狐娘「一人でちょこちょこ掃除はやってるんですけどね……広いし、建物は一つだけじゃないので」

    狐娘「ちっとも綺麗になりませんでした……あっ、賽銭箱はすっごい綺麗になりましたっ」

    「……狐がやりたいことなら、いい……のか?」

    狐娘「いいんでしょうか……?」

    「言い訳にゃーだろー」

    「!?」

    狐娘「!?」

    288 :

    夕方まで残ってたらうれしいが…
    仕事行ってくる…

    289 = 154 :

    「なんか上から猫の声が……」
    「とうっ」ダッ

    ヒュー……

    「えっ」

    「……ふぎゃっ!」ボフッ

    ガンッ

    狐娘「主様っ、大丈夫ですか!?」

    「……」ガシッ

    「なんでわざわざ俺の顔面めがけて飛び込んできますか!」

    「にゃぁ、離せよー」
    「あっ、はい、すみません――そうじゃねぇっ!」

    「みみっちいにゃー」

    狐娘「……ダメ、なんでしょうか」

    「ダメ」

    狐娘「そうですか……」
    「……狐がしたいこと、ですよ」

    「むり」

    290 = 154 :

    「俺と同じ理屈なのに、ダメなんですか」

    「おみゃーのも認めた訳じゃなかー」

    「えっ」

    「一言もいえすと言ってないぞー」

    狐娘「……」チラッ

    「いや、あれ、あれぇ……アハハ」

    「……にゃぁ、おみゃーらが『二人で一人』ってんなら、話は別だけどなー」

    「えっ」

    狐娘「えっ」

    「二度は言わない」

    「二人で……」チラッ

    狐娘「一人……」チラッ

    「それじゃあにゃぁ、にゃんにゃこにゃこにゃーん」ダッ


    「……」

    狐娘「……」

    291 = 154 :

    「と、言う事らしいぞ」

    狐娘「らしい、ですね」

    「……でも、それってさ。俺も一緒に課題をやることになるんだけど」

    狐娘「はい」

    「お前は、それでいいのか?」

    「俺は、手伝ってもいいのか?」

    狐娘「……私は、胸を張って隣を歩きたいんです」

    狐娘「だから、これは私一人でやるべきだと、そう思っています」

    「……」

    狐娘「主様はどう思いますか?」

    「俺は……俺も、そう思う」

    「けど、その一人ってのは……俺たちのこと、なんですよ」

    狐娘「……ふふっ、そうでしたね」

    292 = 154 :

    狐娘「……これは私が納得する為の、胸を張って主様の隣を歩く為の罰」

    狐娘「そして、主様が納得する為の、胸を張って私の隣を歩く為の罰、なんですね」

    「……あぁ」

    狐娘「ふふっ……なんだかおかしい」

    「……だな。なんか、よくわかんなくなってきた」

    「がんばろう。これで失敗したなんてことになったら、お笑い種だからな」

    狐娘「そうですね、頑張りましょう」クスッ

    293 = 154 :

    ――11日後、朝、ミケガミ神社


    ガヤガヤ……ガヤガヤ……


    「自分たちで頼んで回っといてなんだが、結構集まったな……」

    狐娘「すっごいですね……」

    「……きっと、俺だけじゃこんなに集められなかったよ」

    狐娘「私だけじゃ、こんなに集められませんでしたよ」

    狐娘「『一人』だからこそ、集められたんですよね」

    「だな」

    「おーい、二人ともサボってねぇで手伝えー!」

    「はーい」

    「行くか」

    狐娘「はい」



    294 = 154 :

    ――昼下がりの午後


    「みなさん、今日はホントにありがとうございましたっ」ペコリ

    狐娘「あ、ありがとうございましたっ……」ペコリ

    「いいのよお礼なんて……寧ろ、こっちが言いたいくらいだもの」

    狐娘「……?」

    「これからは、きちんとここを管理するようにと町内会議で決まったの」

    「あなたたちがここの問題を見直すきっかけをくれたんだもの。ありがとうね」

    「……このミケガミ神社は、また人で賑わうんでしょうか」

    「おう。今後行われる祭りの会場にもする予定だ」

    「そうですか、それはよかったっ」

    狐娘「……」ホッ

    「やっぱ若ぇモンのぱわぁって奴はすげぇな」

    「ええ、そうねぇ」

    「ところで、二人はどんな関係なのかしら」

    「えっ、……いや、その、友達ですよ」

    295 = 154 :

    狐娘「? 主さ――むぐぅ!?」

    「いいか、何も言うな。主様っていうな。黙ってろ。黙って頷いてろ」ヒソヒソ

    狐娘「……」コクコク

    「なんだ、友達かよ。てっきり『これ』なのかと」ピン

    「そんなんじゃありませんて……」

    狐娘「……?」

    「じゃあ、今日のところは解散だー」

    オー オツカレサマ-

    「また掃除しに来るからよ。お前らも参加しろよな」

    「はいっ」

    狐娘「……」コクリ

    スタ スタ スタ スタ……

    296 = 154 :

    「疲れたな」

    狐娘「……」コクリ
    「いや、もう喋っていいから」

    狐娘「そうですか」
    狐娘「ところで主様」

    「ん?」

    狐娘「おじいさんが小指を立てて『これか』といっていましたけど、どういう意味ですか?」

    「気にするな」

    狐娘「気になりますよ」

    「……そんなに気になるか」

    狐娘「はい」

    「……」

    「あとでな」

    狐娘「あとで、ちゃんと教えてくださいね」

    「あとでな……」

    狐娘「……そうだ。裏手に行きましょう、主様」
    「? 別にいいけど……」

    297 = 154 :

    ――本殿裏

    「ぉおお……すげぇ、まるで花畑だ」

    狐娘「そうでしょう」フフン

    「花ってこんなに咲くの早かったっけか?」

    狐娘「いえ……」
    狐娘「みなさんが来てくれたおかげですよ」
    狐娘「力を、たくさん分けてくださいました」

    狐娘「おかげで、土地が少し潤いました」

    「そうなのか」
    狐娘「私の胸もこころなしか成長していますよ」

    「えっ」

    狐娘「冗談です」

    (……成長しなくても十分あるだろうが)

    「でも、そうか。これが、俺たちの成果って訳か」

    狐娘「はい」

    「綺麗だ」

    狐娘「綺麗です」

    298 = 154 :

    「ここで食う稲荷寿司は、きっとすごい美味いだろうな」

    狐娘「そうですね。最高でしょうね」

    「さて。ここに稲荷寿司がある」ガサッ

    狐娘「なんですとっ」

    「そして、レジャーシートもある」スッ

    狐娘「……なんですか、れじゃーしーとって」

    「地べたに座ると服が汚れるだろ。だから、これを敷いてその上に座るんだ」

    狐娘「なるほど」

    「……食べる?」

    狐娘「もちろんっ」

    シュタッ

    「うぉおおおおっ!?」ビクッ

    「……って、猫さんですか。驚かせないでくださいよ」

    狐娘「見てくださいましたか、猫さん」

    「にゃぁ、見たぞー」

    299 = 154 :

    「埋め尽くす――とまではいかなかったようだけどなー」

    「それは……」

    「まぁいい。その稲荷寿司一つで手を打ってやろー」

    「えっ……」

    「不満なのかー?」

    「いえいえいえ……これ一つで済むのなら、よろこんで」

    狐娘「私の分の稲荷寿司が減りますっ」

    「いやそこは我慢しとけよっ!?」

    「にゃははー」

    ボンッ

    猫娘「いただくとしようかなー」

    「……その姿になる意味、ありましたか」

    猫娘「こういうのは箸を使って食った方がうみゃーい」スッ

    狐娘「マイ箸、ですって……」

    狐娘「主様、私にも箸をっ」


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