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    元スレ狐娘「主様ーっ」男「うっせ」

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    151 = 63 :

    新キャラか

    152 = 1 :

    「そんなに驚くほどでもなかでしょー」

    「最近、同じような体験をしたろー?」

    「……あの狐の知り合いですか」

    「敬語なんていらない」

    「はぁ……」

    (なんだ、敬語ってそんなにダメだったのか?)

    「狐の知り合い、と言ったか。にゃぁ、概ねその通りではあるんだけどなー」

    (また『概ね』か……ハッキリしないなぁ)

    「なら、引き取ってくださいよ。迷惑してるんです」

    「敬語いらねって」

    「にゃぁ、それは聞けない相談だなー」

    153 = 63 :

    154 :

    さるくらった也

    155 = 154 :

    「それはまた、どうしてですか」

    「もう敬語でいいわっ」バシィン

    (脛を猫パンチされた。全然痛くねぇ、寧ろ気持ちいい)

    「暫く世話してやってくれ」

    「……暫く、といってもですね。俺は一週間以上世話するつもりはありませんよ」

    「それで十分」

    「……そすか」

    「それじゃあにゃー」

    「あっ、ちょっと」

    「んん?」

    「あなたたち、なんなんですか。動物って訳でも……ない、ですよね」

    156 = 154 :

    「そりゃあ、あれでしょ」

    「あれ、とは」

    「……妖怪?」

    「はっ?」

    「にゃぁ、だから妖怪と」

    「……妖怪、ですか」

    「うむ」

    (ははっ、さっぱりわかんねぇ)

    「ま、理解しなくても問題ないよ」

    「それじゃあにゃっにゃにゃーん」

    スタ スタ スタ……

    (尻尾が二つに分かれてる……あれか。猫又って奴かにゃ?)

    「……」

    (にゃってなんだよ、にゃって……)

    (取りあえず、帰ろ)

    157 :

    にゃっははははは

    158 = 154 :

    ――夕方、自宅


    「喋る猫にあった訳だが」

    狐娘「はい」

    「お前、妖怪なの」

    狐娘「はい」

    「素直に頷いてんじゃねぇっ」ダンッ

    狐娘「事実ですし……」

    「そこは隠しておくべきところと違いますのん!?」

    狐娘「いえ、別に」

    「……俺がお前を怖がって、追い出したりするかもしれないだろ?」

    狐娘「ハッ!?」

    「今頃気づくなやっ」

    狐娘「でも、そんなこと、ありませんよね? ……ありません、よね」

    「ありえますね」

    狐娘「えぇえええ……」ガクリ

    159 = 154 :

    「……ま、それは一週間後の話だが」

    狐娘「……主様って、結構素直じゃありませんよね」

    「……」ギロリ

    狐娘「冗談です」

    「とにかく、一週間と言っちまったからな……約束は、守らないとな」

    狐娘「……ふふっ」

    「……なんだよ、何がおかしいっ」

    狐娘「いえいえ、おかしくなんかありませんよ」

    狐娘「そうですよね。約束は守られるべき、ですよね」

    160 :

    どんどん続けて

    161 = 154 :

    ――夜


    「んぐぉおお……すぴー」zzZ

    狐娘「……」ハァ

    狐娘(思ったより戻りが早い……もう少し、ですね)

    狐娘(これなら、あと二日もあれば……)チラッ

    「……」zzZ

    狐娘(罪悪感でも、感じているのでしょうか。今更?)

    狐娘「……くだらない」

    162 = 67 :

    ドンドン防虫

    163 = 154 :

    ――水曜日、朝、自宅


    「今日はバイトがあるから、帰りは遅くなる」

    狐娘「えっ」

    「昼飯と晩飯、作り置きしといたから。そこの四角い箱――冷蔵庫から取り出して食べろ」

    「そこのレンジでチンしてもいい」

    狐娘「れんじで、ちん?」

    「……分かった、ちょっとみてろ。実際に使うから」



    164 = 154 :

    ――朝、学校


    「お前、何か顔色悪くねぇか」

    「……そうか。そう見えるか」

    (今朝から、なーんか気だるいというか、体が重いというか……)

    「風邪でもひいたかな……」

    「おいおい、僕にうつす前に保健室でもいってきたらどうだ」

    「そうだな……お前はともかく、バイト先の人たちにうつす訳にもいかないし」

    「ちょっと行ってくるか」ガタッ

    「……あ、れ…………?」フラッ

    「お、おいっ」ガシッ

    「……重症なんじゃねぇの?」

    「……悪い。ちょっと保健室まで肩を貸してくれ」

    「仕方ねーな……」

    165 = 67 :

    ほう

    166 = 154 :

    ――保健室


    保険医「少し熱があるようね

    「少しじゃないですか」

    「でも、さっき倒れそうになってただろ」

    「あれは……」

    保険医「ちゃんとご飯食べてる?」

    「はい。しっかり三食食べてます」

    保険医「睡眠は?」

    「10時には寝てますけど……」

    保険医「ふむ」

    「バイトの疲れ、溜まってんじゃねぇの」

    「そうなのか……?」

    保険医「少し横になっていけば?」

    「……そっすね。そうさせてもらいます」

    167 = 67 :

    ふむん

    168 = 154 :

    保険医「友くん。男くんの件、担任に伝えておいてもらえる?」

    「分かりました」

    「悪いな」

    「貸し一つな」

    「分かってる」

    「んじゃ」

    ガララ……

    「じゃ、窓際の方のベッド、使わせてもらいます」

    保険医「うん」

    保険医「あっ。ちょっとしたら職員会議があるから行かないといけないの」

    保険医「すぐ戻れると思うけど……何かあったらそこの電話使って、職員室の番号へコールね」

    保険医「今は他に寝てる生徒もいないから」

    「はい」



    169 = 154 :

    保険医「じゃ、行ってくるね」

    「はい」

    ガララ……

    「……ふぅ」

    (布団あったけぇなぁ……)

    (でも、保健室のベッドではなぜか眠れないんだよなぁ)

    (携帯でもいじって暇を――)チラッ

    「……」
    「……」

    「寝よ」

    「起きろ」

    「なんすか……俺に何か用事ですか」

    「にゃぁ、大した用事じゃあない」

    「様子を見に来たのさー」

    「……様子、ですか。何の?」

    「お前の様子に決まってるだろー」

    170 = 154 :

    「案の定、体調を崩しているんだなー」

    「なんか、知ってるんですか」

    「にゃぁ、害はないといっとくー」

    「2日3日もすれば元気になるぞ」

    「……出来れば今すぐ元気になりたいところなんですけど」

    「にゃぁ、それは無理」

    「それじゃあにゃっにゃにゃーん」ダッ


    (なんだったんだ……)

    「……」

    (二日三日はこの状態が続くのなら……バイト先に休みの連絡、しとくか)

    (あぁ、給料減るなぁ)ガクリ

    171 = 154 :

    ――昼休み、保健室


    「……」ゴロン

    グゥー

    (腹減った)

    (……弁当は教室か。取りにいくか)

    「ちょっとバッグ取ってきます」

    保険医「もう大丈夫なの?」

    「まぁ、ちょっと教室に行く程度ですし、大丈夫でしょう」

    ガララ

    「おぉっ」

    「……なんだ、わざわざバッグ持って来てくれたのか」

    「弁当、入ってるんだろ。だから一応な」

    172 = 154 :

    「何から何まで悪いな」

    「貸し二つ目な」

    「押し付けがましいような気もするが……まぁいいか」

    「もう体は良いのか?」

    「……微妙?」

    「ふぅん。このまま保健室で寝てるつもりだったら、いっそ早退でもしたらどうだ」

    「早退か……気が進まねぇな」

    (もし風邪だったら、あの狐にうつしちまう可能性も……あれ、動物に人間の風邪ってうつるのかな)

    (あっ、そもそも動物じゃなかったんだな)

    「ま、どっちにしてもだ。早く治せよな。じゃ、教室戻るわ」

    「おう」

    ガララ……

    173 = 154 :

    保険医「良いお友達ね」

    「そうですかね」

    保険医「もし早退するんだったら、早退届、書いといてね」

    「はい」

    (妖怪だとしたら、うつす心配もないのかな)

    (……今頃、あいつは何をしてるんだろ)

    「……」

    「俺、早退します」

    174 = 154 :

    ――昼下がり、自宅前


    (特に倒れる事もなく帰ってこれたな。よかったよかった)

    (さて、と……)チャリン

    「……」ガチャリ

    「おーい、きつ、ね……」

    狐娘「……」zzZ

    (……俺のベッド占領しやがって、こいつめ)

    「……」

    「おろ……?」フラッ

    (あっ、これヤバイ奴じゃね――)

    バタンッ

    175 = 154 :

    狐娘「……んんっ」パチッ

    狐娘「……」チラッ

    狐娘「!」

    狐娘「主様っ、あるじさまっ! しっかりしてください!」






    ――夕方、自宅


    「……うぅん…………」パチッ

    狐娘「……」ホッ

    「……あれ、狐」ムクリ

    狐娘「あぁ、まだ寝てなきゃダメですよっ」アセアセ

    「……」ゴロン

    176 = 154 :

    (そうか。俺、倒れたんだったか)

    (イマイチ実感わかねぇけど……)

    「……お前が、看てくれてたのか?」

    狐娘「……」コクリ

    「そうか……ありがとう」

    狐娘「……」フルフル

    狐娘「お礼なんて、やめてください」

    (なんだこの狐、やけに潮らしいな……)

    狐娘「調子はどうですか」

    「……さぁ。わかんね」

    グゥー

    「分かるのは、腹が減ったってことだけかな」

    178 :

    >>46
    背景と人物比がカオスなせいで騙し絵みたいな絵だな

    179 = 154 :

    狐娘「待っててください」スッ

    スタ スタ……

    「おい……」ムクリ

    (まさか、料理でも振舞う気か?)

    (……なんか嫌な予感がする)スッ

    スタ スタ……

    狐娘「あっ、なに出歩いてるんですっ」ムッ

    「お前がなにをしでかすか心配でならないんだっつーの……」

    狐娘「……ごめんなさい。でも、朝教わった『れんじでちん』くらいはできます、やってみせますよ」

    「それ、お前の分の晩飯だろうが」

    狐娘「いいんです。私はほら、どっくふーどを食べますから」

    「……なんか、気味が悪いな」

    狐娘「失礼なお人ですね」フン

    180 = 154 :

    「わかった、妥協案を提示しよう」

    狐娘「?」

    「半分こにしよう。俺、今はあんまり食欲がないんだ」

    (ま、いざとなったら手付かずの弁当もあるし)

    狐娘「そんなことっ」

    グゥー

    狐娘「……今のは違います。虫の声です」

    「腹の虫じゃねーか」

    狐娘「……」

    「……」ポリポリ

    (不本意ではあるが、仕方ないな……)

    「分かった……んじゃ、飼い主の――『主様』の命令だ」

    狐娘「!」

    「一緒に飯を食え」

    181 = 154 :

    狐娘「……やっぱり、主様は優しい人です」

    「だからそういうこというのやめろ」

    狐娘「ごめんなさい」

    狐娘「ごめん、なさい……」

    (……今日の狐は、どこかおかしいぞ)

    (こうして泣きそうな顔になったり、辛そうな顔をしたり……)

    「……」ポム

    狐娘「……なんですか、この頭上にのせられた手は」

    「いや。なんとなく」ナデナデ

    狐娘「……」

    「さぁ、夕食にしようか」

    狐娘「……はい」

    182 = 154 :

    ――夜


    「……」

    狐娘「……」

    「寝ないの」

    狐娘「主様こそ」

    「俺は昼間、ぐっすり寝てたからな。眠くないんだよ」

    (正確には意識を失ってた、だが)

    狐娘「そうですか」

    狐娘「なら少し、お話しませんか?」

    「? いいけど」

    狐娘「……主様は、どうして優しいのですか?」

    「あのな……何度も言わせんな。つか、それ質問じゃね?」

    狐娘「私、それが不思議でなりません」

    (無視されたっ)

    183 = 154 :

    狐娘「捨てられた狐を拾う。それだけならまだ分かります」

    狐娘「でも、私はただの狐じゃありません」

    (ただの狐じゃあない……妖怪、って線は大分濃厚になったな)

    狐娘「そんな私に、今も尚優しくしてくれるのは、なぜですか?」

    「……」

    「……なんだかんだ、俺は甘いのかもなぁ」

    狐娘「?」

    「昔、犬を飼ってたんだよね、俺」

    狐娘「犬」

    「あぁ。でっかい犬。狐状態のお前なんか一飲みしちまいそうな、でっかいの」

    狐娘「ほぇー……」

    「でもその犬、飼った時はすげー小さかった。そん時は可愛がられたんだ。両親も、姉も、散歩する役を取り合うくらいには可愛がられてた」

    狐娘「……」

    184 = 100 :

    そろそろ佳境か
    おかげで眠れんwww

    185 = 154 :

    「でも、でっかくなったら、あら不思議。だーれも世話しなくなっちまった」

    狐娘「どうしてですか?」

    「可愛くなくなったから、でかくなって余計に手間が掛かるようになったから」

    「そんなとこだろ」

    狐娘「……無責任ですね」

    「あぁ、無責任な奴らだよ……俺も、その無責任な奴らだった」

    「俺、元々犬を飼う事には反対しててな。その時は、動物が嫌いだったから」

    狐娘「どうして嫌いだったんですか?」

    「何考えてるのか、分からないから」

    「俺に分かる言葉を口にしてくれないと、俺は何もわかんねぇ」

    「なぜだか、子どもの頃はそれがすげー怖くてさ……」

    186 = 154 :

    狐娘「人間だって、何を考えているのか分かりませんよ」

    狐娘「もちろん、私だって」

    「子どもの頃の話だ。今はそんなこと思っちゃいない」

    「でも、動物は本能に忠実だよな。きっと、何一つ嘘はついてないんだろう」

    「『お前ら』は例外みたいだけど」

    狐娘「……」

    「話が脱線したな」

    「動物嫌いの俺も、当然犬の世話はしなかった」

    「家族はただ餌と水をやるだけ。それさえ面倒そうだった」

    「うるさく喚けば、バケツいっぱいの水をかけて黙らせて」

    「それでも黙らなければ、暴力だって振るってた」

    狐娘「ヒドイ……」

    「……そんな様子をみて、同情でもしたんだろうな」

    「或いは、か弱きものを助ける俺カッケェ――みたいな。そんなとこだ」

    187 = 154 :

    「両親や姉に代わって、俺が犬の世話をすることにした」

    「毎日散歩もした。餌もやった。たまに遊んだりもした」

    「すげー大変だった。こりゃ誰もやりたがらないのも頷ける」

    「でも、途中で投げ出したりはしなかった」

    「世話をしている間に、俺は動物が、犬が嫌いじゃなくなってたんだ……と、思う」

    狐娘「……」

    「ある日、犬は元気がなくなった。動こうとしないし、吠えないし、ずっと座ったままだった」

    「俺が近くによると、鳴くんだよ。悲しそうな声で」

    狐娘「……病、ですか?」

    「そうだろうな」

    狐娘「だろうな、って……」

    188 = 154 :

    「医者に見せるのは結構金が掛かるそうだ」

    「親に相談したら、スッパリ断られた。『そんな金はない』、ってね」

    「初めて親に反抗したね。殴ってやった。でも、殴り返された」

    「あれは痛かった。痛かったし、なぜだか怖かった。ガチガチ震えたよ」

    「当時子どもだった俺には金を出せる訳もなくて」

    「俺は犬が弱っていく様をただただ、毎日見続けるだけだったよ」

    狐娘「……」

    「今だから分かることだけど、診察くらいはただでしてくれるところも多いそうだ」

    「治療費を分割払いにしてくれるところだってある」

    「無知は罪だよなぁ……親の言う事真に受けて、自分で調べようともしなかった」

    狐娘「……」

    189 = 154 :

    「それから数日後、犬はとうとう死んじまった」

    「コップがいっぱいになるんじゃないかってくらい泣いたね。泣いたし、憎んだね」

    狐娘「……何を、憎んだんですか」

    「家族。あと、何もせず見てただけの自分」

    狐娘「だから、なんですね」

    「……あれ以来、どうもな」

    「動物に限らず、困ってる奴がいたら何かしてやりたいと思うようになっちまった」

    「ま、思ってるだけで、何もしないことのほうが多いけどな」

    「捨てられる動物を見たときなんか、特に」

    狐娘「でも、私は拾ってくださいました」

    「……ホント、なんでだろうな」

    「だけど、あんま拾ってきた感じはしないな……なにより、人型だし」

    「居候娘って感じ」

    狐娘「間違ってはない、かもです……」

    190 = 154 :

    「……お前が俺に優しい部分を感じるってんなら、これが原因だろう」

    「納得したか」

    狐娘「ええ……話してくれて、ありがとうございます」

    「お礼言われるほどのことでもないんだが……」

    狐娘「私は――いえ」

    「最後まで言えよ」

    狐娘「今日はもう寝ますね。おやすみなさい」

    「……あぁ、おやすみ」

    (長話してたら、俺も眠く……)

    「……」

    「……」zzZ

    狐娘「……」ムクリ

    191 = 106 :

    動物愛護法「ああん?」

    192 = 154 :

    ――金曜日、朝、自宅


    「……」

    「……狐?」

    「……」

    スタ スタ……

    「……」キョロキョロ

    (いない……)チラッ

    「……ん?」ペラッ


     お世話になりました


    「……」グシャッ

    「……」ハッ

    (なにしてんだ、俺)

    (……何、イラついてんだよ)

    193 = 154 :

    ――朝、学校、教室


    「うーっす」

    「おう」

    「昨日はしっかり休んだか?」

    「あぁ。おかげでピンピンしてる」

    「ポカリ、さんきゅーな」

    「気にすんな。お前も僕が体調不良のとき、色々してくれたからな」

    「……そんなこともあったか?」

    「あった。だから、お互い様だ」

    「そか」

    「……なんか、浮かない顔だな」

    194 = 154 :

    「そんなことはない。いつだって俺は教室で浮いてるぞ」

    「やめて。その言葉、心にクる」

    「冗談」

    「こんな冗句をいえるくらいには、俺は元気だぜ?」

    「そうかい……あっ、そうだ」

    「保健室の先生が、復帰したら保健室に寄るように、だとさ」

    「……なぜに」

    「なんだったけか……」

    「……分かった。とにかく、昼休みにでも行ってみる」

    「あぁ」

    195 :

    狐も可愛いがエキノコックスって名前すらかわいいよね
    感染しても後悔はしない

    196 = 154 :

    ――昼休み、保健室


    「先生」

    保険医「あぁ、男くん」

    保険医「もう体調の方が平気なの?」

    「ええ」

    保険医「それはよかった」

    「友から、ここに寄るよういわれて来たんですけど……なにか用ですか?」

    保険医「そうそう。その話ね」

    保険医「この前書いてもらった早退届、失くしちゃって☆」

    保険医「もう一度書いてくれる?」

    「……はぁ、分かりました」

    (そっちで勝手に書いちまえばいいのに……そういうのって社会ではダメなんだっけか)カリカリ

    (社会、めんどくせぇ)カリカリ

    197 = 154 :

    「書き終わりました」

    保険医「ごめんねぇ」
    保険医「ついでにもひとつお願いしていいっ?」

    「……俺に出来る範囲であれば、まぁ」

    保険医「だいじょぶだいじょぶ、ちょっとの間保健室に居てくれるだけでいいから」

    「……なんでですか?」

    保険医「ほら、あのーあれ。その……お手洗いに、ちょっと」

    「あ、はい……分かりました」

    保険医「お願いねー」

    ガララ……

    (……狐、どこいったんだろうな)

    (散々居させてくれと頼んでたくせに、紙切れ一枚で姿を消しやがって)イライラ

    (あぁ、やっぱり俺イライラしてる。あいつにイライラしてるんだ)

    (勝手にいなくなったからか? ……違う)

    (紙切れ一枚で別れを済ませたことか? ……それも違う気がする)

    (……なににイラついてるんだろうな)

    198 = 154 :

    ガタッ

    「!?」ビクゥ

    「よっ」

    「……また俺の様子を見にきたんですか」

    「にゃあ、それは違う」

    「九尾の狐がいなくなったことについて、知りたいかなって思って」

    「……」

    (九尾……そういやあいつの尻尾、9本だったな)

    「……どうして、いなくなったんでしょうか」

    「あいつは、おみゃーから力を吸い取ってたんだよー」

    「はっ?」

    「にゃぁ、だから急に体調を崩したのだー」

    「……はぁ。でも、どうやって、何の為に」

    199 = 154 :

    「にゃぁ、仮の主従契約を交わし、生活を共にする」

    「それだけで力――活力は吸えるんだなー」

    「活力」

    (『みなぎってきますっ』ってのは、そういうこと、なのか……?)

    (つか、いつのまに仮契約なんてしたんだ)

    「にゃぁ、狐は力が弱まっていたから、どこかで補給する必要があった」

    「……それが、たまたま通りがかった俺という訳ですか」

    「にゃぁ、その通り」

    「おみゃー、あのボロっちい神社を知っているだろー?」

    「……あの、狐の像がある神社の事なら」

    「あの女狐は、あそこを守る妖怪なんだ」

    「本来あいつはあの敷地からは出られない」

    「だがにゃー、実際問題外に出ている」

    「もしかして、像の頭が欠けてた事に関係してます?」

    200 = 154 :

    「にゃぁ、あの像は狐を縛り付ける鎖みたいなもんだー」

    「……鎖」

    「ああいう、土地やそこに居る土地神様を守る為にいる妖怪ってのは信仰を糧にするんだなー」

    「……」

    「人々の信仰――思いと言い替えても良い。それがないと、あの狐は生きていられないんだよ」

    「あんなボロっちい神社、誰もこないからなー」

    「それじゃあ、誰の思いもなくなったら、狐は死んでしまうんですか?」

    「にゃぁ、死なない。でも、生きてもいられない」

    「……よくわかりません」

    「限りなく存在が希薄になり、誰にも認識されなくなる」

    「生きてはいるけど、誰の目にも、妖怪の目にも映らない」

    「そんなの、……そんなのっ」

    「にゃぁ。死んでると同じ、かもしれないねー」

    「今あの狐が見えてるのは、お前がいるからなんだぜー」


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