元スレ和「宮永さん、私のリー棒も受け取ってください」咲「う、うんっ!」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★
51 = 2 :
その後、モモはメンタンピンツモで風越の親を蹴る。
モモ「ツモ、1300・2600の一本場は1400・2700」
オーラスに突入。風越・吉留と龍門渕・国広はモモのステルスを警戒するも、ステルスそのものを突破することはできず放銃。
モモ「ロンっす。5800」
モモ、まずは風越を直撃。
モモ「それ、ロンっす。7700の一本場は8000」
次いで龍門渕を撃ち落す。
一(鶴賀……さすがに粘るな……!)
みはるん(おっぱいのくせに……ツモってまくってやる!!)
モモ(まだまだ……!!)
タコス(南場だからなんだっていうんだじぇ……! 私は最後まで前に進んでやるじぇ!)
そして、モモ怒涛の三連続和了からの、南四局二本場親モモ。
タコス「やっとツモれたじぇ。リーチツモ……裏はなし。500・1000の二本場は700・1200だじょ!」
先鋒戦を終わらせたのは、この日南場での初和了りを決めたタコス。
52 = 2 :
先鋒戦後半終了!!
一位:モモ+23500(106200)
二位:一-100(97900)
三位:みはるん-7400(99300)
四位:タコス-16000(96600)
名門風越と前回優勝校・龍門渕を押さえての、無名校・鶴賀・東横桃子の堂々たる一人浮き!
タコス(うう……後半はいいとこナシだったじぇ……)
一(ごめんね、みんな。負けちゃった……。けど、すごく楽しかったよ)
みはるん(鶴賀のおっぱい……この借りはいつか必ず返します!)
モモ(先輩……見ていてくれたっすか……!)
こうして先鋒戦は終了する。
いくらかの休憩を挟んで、次は次鋒戦となる。
53 = 33 :
みはるんおっぱい意識しすぎwwwwww
55 = 2 :
実況『初出場・鶴賀学園が頭一つ分浮いた状態からの次鋒戦。勝負はまだまだこれから。一体どんな結末になるのか!』
次鋒戦前半
東・文堂星夏(風越) 南・染谷まこ(清澄)
西・井上純(龍門渕) 北・加治木ゆみ(鶴賀)
まこ「(最初はとりあえず様子見かのう……)よろしゅう」
文堂「(龍門渕の井上……不可解な鳴きに注意が必要。清澄は染め手が好みで、勢いに乗ると止まらなくなるタイプ。
鶴賀は……あまり情報がないが、これまでの試合結果を見る限り、実力的には鶴賀のナンバーワンと見ていい……油断は禁物だ)よろしくお願いします」
井上「(ったく国広くんのやつめ……見てろよ……速攻で取り返してやる)よろしくな」
かじゅ「(モモが取ったリード……ここで私が追いつかれるわけにはいかない)よろしく」
次鋒戦――開始!!
56 = 2 :
東一局親文堂
文堂(テンパイ……ヤミで11600。ここはリーチはしないほうがいいかな)タンッ
まこ(風越、さっそくテンパったんか?)タンッ
井上「(させねーよ)……チー」タンッ
かじゅ(龍門渕が鳴いたか……。井上純、妙な鳴きをすることの多い選手……となると、こうして今私がツモった三索は本来龍門渕がツモるはずだったもの……何か意味があるのかもな。一応持っておくか)タンッ
文堂(三・六索来い……! く、發か。ツモれず……まあ、チャンスはまだまだある……)スッ-
と、そのまま發をツモ切りしようとした文堂の手が止まる。
文堂(待て待て……! 龍門渕の井上が鳴いたら要注意だってキャプテンにあれほど言われたじゃないか……!! なら、ここで素直にツモ切りするのは危険かもしれない)タンッ
まこ(なんじゃ風越、テンパったと思ったんじゃが気のせいじゃったか?)タンッ
井上(風越……ツモ切りしてくると思ったんだがな。気付かれたか? しかし……ま、気付かれたところで流れが今オレに来ていることに変わりはない)ツモッ
井上「ツモだ。發ドラドラ、1300・2600」
文堂(さっきの發……切っていたら直撃だった)
まこ(おっと、そっちは見とらんかったのう)
かじゅ(ふむ……)
文:96700 ま:95300 井:103100 か:104900
57 :
しえ
のんびり読んでる
58 = 2 :
東二局親まこ
八巡目。
まこ「(ほいじゃあ、最初の和了りは取られてしもうたが……リーチはわしがいただきじゃ。どれ、挨拶代わりじゃ!)……リーチ」スチャ
井上「ポン」タンッ
まこ(っと、龍門渕……さっきのといい変な鳴きしよってからに。そういや過去の牌譜もそんなんじゃったのう)
かじゅ「(このままだとまた龍門渕のツモるはずだった牌が私に来てしまう……なら、ちょっと試してみるか)……チー」タンッ
井上(ん、鶴賀がオレの手出しを鳴いただと……?)
かじゅ(さて。あとは風越がどう出るかだが……ここか?)タンッ
文堂「(鶴賀の手出し……鳴けばテンパイ。待ちも手広い。これで親リーを蹴る!)……ポンっ!」タンッ
まこ「ツモ。メンホンツモ……裏はなしじゃ。4000オール」
かじゅ(なるほど……ツモを回すとこういうことになるのか……)
井上(鶴賀の……今の鳴きはわざとだったのか……? よくわからねえ……何を考えている……?)
文堂(く、清澄……連荘はさせない……)
文:92700 ま:107300 井:99100 か:100900
59 = 2 :
東二局一本場親まこ
十一巡目。
まこ「ほい、もう一発親リーじゃ!」タンッ
井上「(またかよ……連荘で調子付かれると厄介そうだな。潰しておくか)チ……」
かじゅ「ロンだ。七対子ドラドラ。6400の一本場は6700」
まこ(張っとったんか鶴賀……というか、なんじゃそのわけのわからん和了りは……!)
井上(鶴賀のやつ……さっきの鳴きといい……こいつはこいつで面倒臭そうだな。流れが見えにくい)
文堂(鶴賀……これでまだ和了ってないのは私だけか……次こそは……!)
かじゅ(さて、これでさっきの清澄の親満の分は取り返したな)
文:92700 ま:100600 井:99100 か:107600
60 = 2 :
東三局親井上
十巡目。
文堂「(テンパイ……! 三面張の高め三色……龍門渕が親なのが恐いけど、ここで攻めないでいつ攻めるっ!!)リーチッ!」タンッ
まこ(おお、今度こそ高そうじゃ)タンッ
井上「チー」タンッ
かじゅ「…………チー」タンッ
井上(なっ……鶴賀……!?)
文堂「ツモですッ! メンタンピン三色ツモ、裏二。4000・8000!」
かじゅ(役ナシ確定の鳴きか……我ながら意味不明だ)
井上(倍満の親っかぶりかよ。風越の当たり牌……鳴かずに抱えていたほうがよかったか? いや、でも……それじゃオレが和了れねえしな。
……っていうか鶴賀のやつ、本当に何のつもりなのか全然わかんねえ。せっかく流れを変えてもこいつに乱されちまう……どうすりゃいい……?)
文:108700 ま:96600 井:91100 か:103600
61 = 2 :
東四局親かじゅ
六巡目。
かじゅ「リーチ……」スチャ
文堂(親リー……今のところトップはうち……振り込みは避けたい)タンッ
まこ(鶴賀のリーチ……さっきの和了りを考えると……ちょっと不気味じゃのう)タンッ
井上(鶴賀……よくわかんねえが……いい気になるなよ……!)タンッ
かじゅ(ん、リーチがかかったのに龍門渕が鳴かなかった……? この場は鳴かなくてもいい――ということなのだろうか……)ツモッ
井上(どうしたんだよ、鶴賀。和了りじゃないなら早く切れよ)ニヤッ
かじゅ(なるほど……鳴かなくていい場合もあるのだな。
流れ――というものがあるとして、鳴かないほうがむしろ自分に分があるときは大人しくそれに身を任せる。
へえ……一体どこまで見えているのか。本当に不可解だ。しかし……まあ、保険はかけておくものだな……)
62 = 2 :
かじゅ「カン」パラッ
井上(なああっ……!? オレの当たり牌を暗槓!? つーことはこいつ元々手の内にオレの当たり牌を三枚持ってやがったのか……?
リーチをかけてきたのは……もし鳴きでツモ順がズレてオレの当たり牌を掴まされても暗槓できるように……? くそっ、んなこと有り得てたまるか!)
かじゅ(嶺上はならず……ま、そりゃそうだ……)タンッ
流局。
かじゅ「テンパイ」
井上「ノーテン」
まこ「ノーテン」
文堂「ノーテン」
文:107700 ま:95600 井:90100 か:105600 供託:1000
63 = 2 :
東四局一本場親かじゅ
十一巡目。
かじゅ(下手にリーチをかけると龍門渕が潰しに来る。かといって黙っていると……)タンッ
文堂「リーチです」スチャ
まこ「追っかけじゃあ」スチャ
かじゅ(……こうして他校が攻めてくる。困ったものだ)
井上(ちっ、鶴賀が気になるっつーのに風越と清澄が同時リーチかよ。
鶴賀の動きが読めねえこの状況でじたばたするとかえって傷が広がりそうだしな……仕方ねえ……ここは大人しく打っとくか……)タンッ
かじゅ「ポン」タンッ
井上(鶴賀……?)
文堂()タンッ
かじゅ「ロンだ。断ヤオドラドラ。5800の一本場は、6100」
井上(おいおい……そんなオレみたいなことしやがって……!)
文:100600 ま:94600 井:90100 か:114700
64 = 2 :
東四局二本場かじゅ
文堂(マズい……最初の和了りで龍門渕警戒かと思ったら……!)タンッ
まこ(んー、さっきからけっこういいの張っとるんじゃけどのう)タンッ
井上(このままじゃマズいってのに……鳴けねえ!)タンッ
かじゅ「ツモ。平和ツモ赤二。2600は2800オール」
文・ま・井(鶴賀が止まらない……!!)
かじゅ(さて、これで三本場。私にしては少々力が入り過ぎな気もするが……仕方ない。モモのあんな闘牌を見たあとでは……欲も出るというものだ)
文:97800 ま:91800 井:87300 か:123100
65 = 2 :
東四局三本場かじゅ
十六巡目。
かじゅ「チー」タンッ
文堂(これで鶴賀が三副露。染めているわけでもなければ、チャンタも断ヤオも三色もない。
一通は私が止めているから問題ないとして、他に可能性があるのは役牌……まだ河に一枚も出ていない東か)タンッ
次巡。
かじゅ()タンッ
文堂(え……ノータイムで東をツモ切り?
東を暗刻で持っているならカンをしてもよかった場面だと思うが……それともこの巡目、さっきのチーは役無しの形式テンパイ狙い?
なら……私もここはテンパイを崩さずにいくのが妥当か)タンッ
かじゅ「ロン。ダブ東ドラ一。5800の三本場は、6700」
文堂(東持ってたんですか!?)
かじゅ(ふう……これでさっきの風越の倍満分は取り返したか)
文:91100 ま:91800 井:87300 か:129800
66 = 24 :
いいぞいいぞ
67 :
これだけ差付けても鶴賀の残りのメンツを考えると勝てる気がしないのはどういうことなんですかね
68 = 2 :
東四局四本場かじゅ
六巡目。
文堂(鶴賀、さすがにもう張ってるなんてことはない……か?)タンッ
まこ(手はいいんじゃがなぁ。あと一歩で和了れん)タンッ
井上(ダメだ。変わらず流れが読めねえ。
普通に強いだけならまだやり様があるが……こいつはところどころで打ち方が不規則になる……カメレオンでも相手にしてるみたいだ)タンッ
かじゅ(おっと、また張ってしまった。これはあとで痛い目を見るかもな。リーチは……龍門渕が何かしてくるかもしれない……かけないほうがいいか)タンッ
まこ「ポン」タンッ
井上(清澄……? わざわざ自分から流れを悪くしにいって……なんのつもりだ?)タンッ
まこ「お、それもポンじゃ」タンッ
井上(オレが言えたことじゃねーが、わけわかんねー鳴きしやがって)タンッ
かじゅ(ふむ……)タンッ
まこ「それ、ロンじゃ。混一のみ。2000の四本場は、3200」
かじゅ(その手ならいくらでも高めを狙えただろうに。仕掛けてきたか……清澄)
文:91100 ま:95000 井:87300 か:126600
69 = 2 :
南一局親文堂
まこ、脱、眼鏡!!
まこ(さーて。やっとどんなもんか掴めてきたのう。とりあえず、風越と龍門渕は過去の牌譜通りっちゅう感じじゃな。まあまあ運が向いてくれば勝てなくはない相手じゃろ)タンッ
まこ(ただこの鶴賀の加治木とか言ったか……牌譜……この大会の分しかなかったからようわからんかったが……目の前にしてみると随分やりにくい相手じゃの。まるで久でも相手にしとるみたいじゃ)タンッ
まこ(久も鶴賀も……普段の打ち筋はデジタルじゃのに時々オカルトめいたことをし出す……どっちにも言えるんは、最終的にそれで勝てるっちゅうところかの)タンッ
まこ(鶴賀の……こういう静かで隙なく強いタイプにゃあ……下手に噛み付かんほうが身のためかもしれん。
ほうかと言って……このままやられっぱなしじゃ一年生どもに示しつかんからの)タンッ
まこ、先鋒戦が終わったあとの、タコスの涙を思い出す。
後輩がやられた分は――先輩が取り返さなければならない!!
まこ(ま、やるだけやってみるしかなさそうじゃ!!)タンッ
70 :
すごいSSに出会ってしまった
72 :
のどっちが咲ちゃんにのどっちのどっちするんですね
74 :
わくわく
75 = 2 :
南二局親まこ二本場、まこの早和了りに、井上も得意の鳴きで対抗。結果はまこの放銃で、井上の勝利に終わる。
井上「ロンだ。断ヤオドラ一赤一。3900は4500」
まこ(ま、そうそう楽はさせてくれんじゃろうな)
南三局親井上、連荘したい井上と積極的に仕掛けるまこの一騎打ちの様相。勝者はしかし、二人の鳴き合いの中で静かに手を進めていた、かじゅ。
かじゅ「ツモ。タンピン一盃口ツモ。1300・2600」
井上(ちっ……鶴賀の……!)
まこ(鶴賀……こりゃあ大変なのと当たってしまったのう)
南四局親かじゅ、配牌、ここまで攻めあぐねていた文堂に勝負手が入る。八巡目、文堂渾身のハネ満確定リーチ。
文堂(ここで……和了しなくては……!!)
しかし、井上の鳴きによって不発。文堂の一人テンパイによる流局で終了。なお、供託リー棒はこの半荘トップのかじゅの手に入ったものとする。
次鋒戦前半終了!!
一位:かじゅ+23500(129700)
二位:まこ+2800(99400)
三位:文堂-10600(88700)
四位:井上-15700(82200)
76 = 2 :
次鋒戦後半
東:井上 南:文堂 西:まこ 北:かじゅ
東一局親井上
井上(ふう……休憩があってよかったぜ。おかげで落ち着けた。前半は鶴賀に踊らされてかなり焦っちまったな……ちっ、オレらしくもない。
しかし、鶴賀……このままタダで終われると思うなよ……)
まこ(鶴賀がラス親か……嫌な感じじゃのう。さっきは色々小細工してみたが……どれも決め手に欠ける。どうしたもんかのう……)
文堂(わかっていたことだけれど……決勝戦は今までの相手とは段違いだ……正直、私なんかじゃ歯が立たない……でも……でも……)
かじゅ(またラス親か。あまりいい予感はしないな。私はモモと違って後半になれば強くなるタイプというわけでもない。
鍍金がはがれる前に片を付けなければ……)
次鋒戦後半――開始!!
77 = 2 :
次鋒戦後半は、しかし、前半と打って変わって静かな場となった。
東一局親井上、かじゅの一人テンパイ、流局。
文:87700 ま:98400 井:81200 か:132700
東二局一本場親文堂、全員ノーテン、流局。
文:87700 ま:98400 井:81200 か:132700
東三局二本場親まこ、後半戦初の和了りは、前半戦から勢いに乗るかじゅのヤミテン。
かじゅ「ロン。七対子混老頭、6400は7000」
まこ(げっ……またそういう記憶にないことをしよってからに!)
かじゅ(なんとか和了れた……。このまま無事に済めばいいが……どうだろうか。
清澄と風越からはかなり警戒されているし……それに先程からやけに龍門渕が大人しい……何を企んでいる……?)
まこ(前半の鳴きの嵐が嘘のようじゃのう。
みんな龍門渕の井上を警戒しとるのかリーチがかからんし……そしてわしの手は悪過ぎじゃ……これじゃ和了るに和了れん……)
文:87700 ま:91400 井:81200 か:139700
そして、今局のかじゅの一見不可解な和了りを見て、次局ついに――風越・文堂が悪足掻く!!
78 = 24 :
安定のドムさん
79 = 2 :
東四局親かじゅ
文堂(キャプテン……! キャプテン……私は……!)タンッ
――――――回想・風越女子校内
福路「文堂さん、レギュラー入り、おめでとう」
文堂「ありがとうございますっ! 精一杯頑張ります!」
福路「大丈夫よ。あなたは強い。ここは運やまぐれでレギュラーになれるところじゃない――名門風越よ。
あなたはもっとあなたの強さに自信を持っていいと思うわ」
文堂「強さ……でも、キャプテンや池田先輩から見れば……私なんて全然……」
福路「そんなことないわよ。私や華菜や吉留さんと卓を囲んでも、文堂さんがトップのときもあったでしょう?」
文堂「いや……それはでも……先輩たちが打ち合っている中で最後にたまたま自分がツモれたとか……そんなのばかり。
練習試合を見たりしていても、やはりいざというときの先輩方には、私にない何かがあると思うんです!」
福路「それは……あるとしたら、経験かもしれないわね」
文堂「経験……ですか……?」
80 = 2 :
福路「例えば、文堂さん。あなたは、この局で逆転しなきゃ勝ち目はないっていう場面で、五面張と地獄単騎……どちらの待ちを選ぶ?」
文堂「そんなの……五面張に決まってますよ。よほどの確信もなく……どうしてそんなわざわざ自ら悪い待ちにするようなことを……」
福路「そうね。私もそう思うわ。私も地獄単騎なんて滅多にしない。けれどね……」
文堂「けれど?」
福路「世の中にはね、ここだっていうとき、わざと自分から悪い待ちにして……しかもそれで結果的に勝ってしまう……そういう人もいるの」
文堂「そんな……漫画みたいなことが!?」
福路「あるのよ。にわかには信じられないかもしれないけど、そういう摩訶不思議な麻雀を打つ人が……実際に全国にも県にもたくさんいる。
その代表格が今度の県予選に出てくる龍門渕の天江衣……華菜でさえ去年は歯が立たなかった相手よ」
文堂「天江衣は……確かにそうですが……。それでも、キャプテン! 私は……それでも五面張を選びます。
そうやって――この風越でもレギュラーを取ったんです!」
福路「ふふふ、そうそう。それくらいの気迫が欲しいわね。文堂さんは素直で優しいから……それがあなたの強さであり、弱さでもあるわ。よく覚えておいてね」
文堂「は……はい!」
81 = 2 :
福路「それと、もう一つ。麻雀は運や技術を競うだけの競技じゃないわ。
色んな人がいる。あくまでデジタルに徹する人、天江衣のように不思議な和了りを連発する人。
でも……大切なことはね、文堂さん。あなたがどれだけ勝ちたいと思っているかなの。
どれだけ勝てると信じているか……最後に笑うのは、そういう――強い信念と確かな誇りを持った人なのよ」
文堂「信念と誇り……ですか。なら……キャプテンの信念と誇りは……何ですか? もしよければ教えてください……」
福路「決まっているわ。私の信念は私がこの風越のキャプテンであるということ。そして私の誇りは……あなたたち……この風越の仲間よ」
文堂「……! キャプテンっ!!」
――――――
82 = 2 :
文堂(キャプテン……! 私は……勝ちたいです!! 相手がどんなに強くても……勝ちたい!! みんなのために……勝ちたいですっ!)タンッ
そう思う文堂の気持ちが届いたのか――九巡目、文堂テンパイ。
文堂(来た……これで一萬を切れば五面張。少し遠回りをしたような気もするけど……いつまでも黙ってはいられない。リーチだっ!)
と、いつもなら迷わず一萬を切って五面張に受けるところを、文堂の手が止まる。
『あなたがどれだけ勝ちたいと思っているかなの』
文堂の脳裏に、福路の言葉が蘇る。
文堂(私は勝ちたい……勝つための五面張……今まで私はそうやって打ってきて……名門風越でレギュラーを取った! ここだって、一萬切りが当然だ……!)
83 = 2 :
けれど――と文堂は卓上と、卓を囲む面子に目を向ける。
文堂(鶴賀の三年生……予選の牌譜を見る限りオーソドックスなタイプの打ち手だと思っていたけれど、さっきの七対子混老頭……あんなのがオーソドックス? 本当か……?
それから要注意人物、龍門渕の井上……この人こそまさにオカルトの塊みたいな人。鳴きで流れが変わるとか……そんなの迷信に決まってるのに。
それと清澄……前半戦、面前で進めていけばもっと高めを狙えた手を崩して……鶴賀の連荘を止めてみせた。そのあとも鳴きを自在に使って和了って……あの鶴賀の勢いの中でプラス和了り……)
文堂(私は……私はどうだろう……? 私は本当に……勝つための麻雀をしてきただろうか?
教科書通りに打って、練習通りに打って……それで私は勝って勝って……風越のレギュラーになって……それでどこか満足していたんじゃないか……?)
文堂(それじゃダメなんだ……! 今までと同じように打っても……この人たちにはまるで敵わない。さっきだって何もできないうちに半荘が終わってしまった……。
確かに私は手本や見本の通りに打っていたかもしれないけれど……それでも負けは負けでしかない……!!)
文堂(私は……私は一体誰を相手に麻雀をしていたんだ……!? いつも正確なコンピュータか? 有名なプロか? 厳しいコーチか? 風越の部員のみんなか……?
いや、違うっ!!
私が今勝たなくちゃいけない相手はそうじゃない! 龍門渕の井上純、鶴賀の加治木ゆみ、清澄の染谷まこ!!
考えるんだ……!! この場……この人たちの裏をかいて勝つために……私が今すべき最善のことを!!)
86 :
勝ちという欲目にこだわり過ぎたら勝てないって房州さんが言ってた
87 = 2 :
そして、文堂はドラ表示牌――九萬を見る。それから、井上、かじゅ、まこの捨て牌に目をやる。
文堂(この感じ……ひょっとすると筒子――私の当たり牌は抱えられているかもしれないな……。
だとしたら、いくら五面張でも和了ることは難しい。それならいっそ一萬単騎のほうが……。地獄待ちになっちゃうけど、二萬や四萬が場にけっこう見えている。
少なくとも私なら、ドラを考慮に入れてもこの状況で一萬単騎の地獄待ちをしているなんてことは想像できない……。
そうだ……! 私がそれを想像できないのなら……どうして私がそんな待ちをしていると周りに読める……?
読めるはずがない。いつもの私なら……こんなことは絶対にしない! 実際……さっきまではしていなかった!)
文堂、願うことはただ一つ――己が勝利!!
文堂(いつも通りじゃ勝てないときもある。練習通りにやったってうまくいかないときもある。セオリー通りじゃ立ち行かなくなるときもある――それでも……私は勝ちたい……!!
私は……この人たちに勝つんだ!!)
文堂、一萬地獄単騎で受けるために八筒に手をかけ、かつてない心臓の高鳴りを抑えながら、静かに発声。
文堂「……リーチ」スチャ
88 = 2 :
まこ(風越……弱ったのう、ここはオリとくしかないか)タンッ
かじゅ(風越のリーチ……清澄はひとまずオリ、龍門渕は鳴いてこない、か……さて)ツモッ
かじゅ(テンパイ……一萬を切ればヤミでも十分高めの手……)
かじゅは河を見る。
かじゅ(一萬……あるとしたら地獄単騎か。しかし、風越のこの選手……前半戦からそうだったが、リーチをしてくるときには必ず広い待ちの高い手で勝負してきた。
過去の牌譜も綺麗な手作りをしていたし……ドラを考慮に入れても……ここで彼女が地獄単騎とは考えにくい……)タンッ
かじゅ、打、一萬。
瞬間、文堂――開眼ッ!!
文堂「そ、それ、ロンッ! リーチ一発ドラドラ――」
裏ドラを捲る。裏ドラ表示牌は――九萬!
文堂「裏二!! い、12000っ!!」
かじゅ(……なんと……!?)
文堂(やった……!! 和了れたっ! 大丈夫だ……私はまだ戦える!! 私でも風越の……みんなの力になれるんだ!!)
風越・文堂、会心の一撃にて東場終了。南場へと移る。
文:99700 ま:91400 井:81200 か:127700
89 = 2 :
南一局親井上
かじゅ(風越の……驚いた。過去の牌譜からも実際に打った感じからも全く予測できなかった……これは一本取られたな)タンッ
かじゅ(さすがは名門か……まさか対局中に強くなるとは。いい選手が揃っている。しかもこれで一年生か……来年のモモたちが対戦したとして……果たして勝てるだろうか……)タンッ
かじゅ(いや、今は来年のことなど考えまい……ただ、目の前の対局に集中しよう)タンッ
かじゅ(いかんいかん……少し気が昂ぶっているな。楽しい……モモや津山や妹尾もそうだが……人が目の前で成長するというのは見ていて嬉しいものだ)タンッ
かじゅ(風越の……しかし、いい後輩ならうちにもいる。鍛えればもっともっと強くなりそうなやつらがな……。私はあいつらを……全国の舞台で遊ばせてやりたい!)タンッ
十巡目。
かじゅ「ツモ……純全帯三色ドラ一。2000・3900」
かじゅ(これでプラスに戻した。勝つのは……うちだ……!)
文:97700 ま:89400 井:77300 か:135600
90 = 2 :
南二局親文堂
この局も途中までは静かに進行。十巡目を過ぎて、痺れを切らしたようにまこが鳴いて仕掛ける。しかし、不発。
まこ「テンパイ」
文堂「ノーテン」
井上「テンパイ」
かじゅ「ノーテン」
文:96200 ま:90900 井:78800 か:134100
南三局一本場親まこ
この局もまこ以外鳴かず。しかし、まこは形式テンパイすら取れず、流れる。
まこ「ノーテンじゃ」
文堂「ノーテン」
かじゅ「ノーテン」
井上「テンパイ」
文:95200 ま:89900 井:81800 か:133100
91 = 2 :
南四局二本場親かじゅ
かじゅ(龍門渕……本当に大人しい。しかし、前局と前々局はテンパイしていた。
安手ではあったがリーチで裏を狙うこともできたろうに……なぜ動かなかった……?)
まこ(しまったのう……この半荘はまるでツキに見放されとる。このザマじゃ先輩の面目丸つぶれじゃて……)
文堂(鶴賀のラス親……連荘はさせない!)
三者三様の思惑を余所に――このオーラス……龍門渕・井上が静かに動き出す。
92 = 2 :
井上(長かった……長かったぜ……!)
井上はこのときを待っていた。即ち、全ての流れが自分に来る、この瞬間を。
井上(このオレが半荘やって一度も鳴きもリーチもしなかったことなんてあったか……? いや、普通のやつでも半荘ずっと鳴かないなんてことはあまりない……)
井上(それもこれもこのときのためだ……! それが証拠にホラ……配牌時点でこの手牌……!)
井上(前半は他家の当たり牌を回すのに躍起になっちまったが――いや、いつもならそれで問題なくオレが和了れるんだけどよ――鶴賀がそれをさせてくれなかった。
せっかく人が流した当たり牌を本人のところまで運びやがって……絶対狙ってやがった……。たぶん、よくオレの牌譜を研究してたんだろ……感心するぜ)
井上(けど……わかってるか? 鶴賀……! お前はもう……今のオレから逃れることはできない……!!)
93 = 2 :
七巡目。
井上「……リーチだ」スチャ
かじゅ(龍門渕……この半荘で初めてのリーチ。絶対に何かある……一発で親っかぶりなどご免だからな……一応念を入れておくか……)
かじゅ「ポン」タンッ
かじゅ、井上のリーチ表示牌を強引に鳴き、井上の現物切り。回しながらの食いタンを目指す。
井上(いいのかよ、鶴賀。オレのを鳴いたら次にお前がツモるのは……)タンッ
文堂()タンッ
まこ(くぅ……鳴いて和了れるんならいくらでも鳴くんじゃが……)タンッ
かじゅ(このツモは……本来龍門渕が一発でツモるはずだったもの……これは――切れない)タンッ
静かな緊張感に包まれたまま、山牌が消費されていく。
そして、かじゅは自らの手牌の奇妙な仕上がりに、やっと井上の真の意図に気付く。
94 = 2 :
かじゅ(まさか……そうか龍門渕……そういうことか……!)タンッ
井上(今更気付いても遅いぜ、鶴賀っ!)タンッ
かじゅ(私がツモ順をズラしてから、私がツモったのは全て井上の手にいくはずだったもの……。
その中にはきっと井上の当たり牌も含まれているのだろう……だからあのときからずっとツモ切りはしなかったが……。
いや、違うな。ツモ切りをしなかったのはそれだけが理由じゃない……なぜなら……)
井上(鶴賀の手牌……なんとなく想像つくぜ。
なにせ、オレが今まで我慢に我慢を重ねて引き寄せたいい流れ――つまりオレのツモが……あのときから全部お前に入っているんだからな!
今頃お前の手は間違いなく満貫以上に仕上がってるだろうぜ。それをここに来て……ラス親で連荘したいはずのお前に……崩せるか?)
かじゅ(さっきからのこのバカみたいな引きの良さ……! 龍門渕……黙っていても十分に和了れただろうに!
わざわざ私を嵌めるために罠を張ったのか……私を……自分と勝負させるために……!)
井上(さあ……鶴賀、もうすぐ海底だぜ……お前はどう出る!!)
96 = 2 :
十七巡目。
かじゅ(海底を目前にしてテンパイ……どう和了ってもハネ満。もし仮に海底ツモなんてことになったら……親倍か。
しかし、テンパイを取るために捨てざるを得ないのが――明らかに井上の危険牌。この状況を狙って作ったというのか……? 龍門渕……化け物め……!!)
かじゅ、長考。
かじゅ(落ち着け、私。私には今大きく分けて二つの選択肢がある。
一つは、ハネ満の手で井上と勝負する。その場合は、井上から直撃を受けて終了、私が勝って連荘、どちらも和了れずに流局して再び私の親、その他……の四パターン。
鶴賀のことを思えば……私がここで点を取らねば――蒲原はいいとして――津山や妹尾で他校を出し抜くのは厳しい。
そのためにはこの親でもっと稼ぐ必要がある……)
かじゅ(もう一つの選択肢は……勝負を諦めてオリる。幸い井上の現物はまだ手の内にある。テンパイを崩せば、残る巡目は海底のみ……逃げ切るのはたやすい。
そうなれば、ここで次鋒戦が終了し、あとは他のメンバーに託すことになる……)
かじゅ(さて……私はどうする……? 勝負か……オリか……!?)
97 :
すごいssに出会ってしまった……
ROMってるやつ相当多いと思うけどちゃんと見てるよ、支援
98 = 2 :
そのとき、かじゅの脳裏に蘇る、いつかの後輩の笑顔――。
『先輩っ! 私は勝って先輩と一緒に全国に行きたいっす!! 先輩ともっと一緒に麻雀をしていたいっす!』
かじゅ(あのとき……私はモモのその言葉に……答えられなかった)
そして、かじゅは、己の切るべき牌に手をかける。
かじゅ(ああ……私はやはり……卑怯者なのかもしれないな)
長考の末にかじゅが辿り着いた結論。
切ったのは……井上の現物。
かじゅは勝負を――オリた。
99 :
正解
100 = 2 :
次の瞬間。
まこ「ろ、ロンじゃ! 一盃口のみ。1300の二本場は……1900!」
かじゅ「!?」
まこ(しもうたぁ! こんなことならさっき張ったときにリーチしとくんじゃった……!)
かじゅ(清澄の……ロンと言われた瞬間に心臓が止まるかと思ったぞ……)
井上(鶴賀……散々悩んだみたいだったが……しっかりオリたか。
絶対仕掛けてくると思ったのになぁ……中々どうして最後まで隙を見せなかった……心から完敗だぜ。けど……次はオレが勝つ!)
まこ(わしの修行不足じゃったのう。鶴賀の……こんなに色んな顔を持ってる打ち手はなかなかおらん……勉強させてもらったわ。ありがとうのう)
文堂(終わった……。キャプテン……見ていてくれましたか……? 私は……少しは強くなれましたか……? 少しはみんなの役に立てましたか……?
キャプテン……)パタッ
次鋒戦後半終了!!
一位:文堂+6500(95200)
二位:かじゅ+1500(131200)
三位:井上-1400(80800)
四位:まこ-6600(92800)
次鋒戦、結果は無名校鶴賀・加治木ゆみが他を押さえての圧倒的な一人勝ち! 前回優勝校・龍門渕は鶴賀に大きく引き離されての最下位。
果たして勝負の行方は!!
みんなの評価 : ★★
類似してるかもしれないスレッド
- 妹「兄さん、私をビッチにしてください」兄「は?」 (113) - [52%] - 2012/7/1 10:00 ☆
- 妹「…なんで私のベッドで寝てるんですか」姉「一緒に寝たいの!」 (300) - [49%] - 2011/8/24 1:45 ★
- 咲「ある日突然、私に12人ものお姉さんができたらどうしますか?」 (168) - [45%] - 2013/3/4 7:15 ☆
- 咲「麻雀なんか無くなってしまえばいいんだあああああ!!!」 (1001) - [45%] - 2009/7/31 9:46 ★★★×4
- 兄「どうせ一生起きないなら好きにしていいよな」 妹「すぅすぅ…」 (158) - [45%] - 2012/9/11 18:30 ☆
- P「音無さん・・・恋人になってください!」小鳥「ピヨッ!?」 (383) - [44%] - 2012/4/27 8:45 ★★★
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について