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元スレP「真美が、俺にキスをねだってくる……」
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やよいにひどいことした後によくこんな純愛モノ(?)かけるなwww
もっとやれ!!支援
もっとやれ!!支援
俺は、「えへへ、初めてのちゅーしちゃった」などと言いながら赤面している真美のことを呆然として見ていた。
初めてのちゅー? こんなところで、こんな形でいいのか?
混乱する俺が、混乱したままにファースト・キスに対する考えを述べると、真美はへへ、と笑ってこう言った。
「兄ちゃん、真美は夢の言葉なんていらないよ。だって、夢は朝になれば、光になって空に解けてしまうんでしょ?」
ここにいるのは本当に、あの双海真美なのか?
最近の真美は一時期の雪歩のように俺のことを避けているような気がしていたけれど、こんなに積極的な子だったっけ?
いまだに驚いて混乱していた俺に対し、「でもね」と真美は続けた。
「真美は消えない。花になって、兄ちゃんの隣に咲いていてあげる。どんなにつよく雨が降っても」
>>51
やよいに何があったっていうんだ・・・
やよいに何があったっていうんだ・・・
「兄ちゃんは、もうひとりぼっちなんかじゃないんだよ」
「だから……そんな顔しないで」
は、はは……。なにを言っているんだ。俺、そんなに変な顔してたか?
俺はそう言って笑って、自分の顔を撫でてみる。
するとまるでゴムの塊みたいに、とても硬くて柔らかい、妙な感触が返ってきた。
自分でも驚くくらいに、ひどく強張っている。笑ったと思っていたけれど、それは俺の勘違いだったみたいだ。
あ、あれ?
「兄ちゃん、あの日、ピヨちゃんが事故にあってからずっとそんな顔してたよ」
え?
「もう、ね……我慢、しなくてもね……えぐっ。いい……からさ」
真美、どうしたんだ。急に……。そんな顔見たら……なんだかこっちまで……。こ、こっち……まで? なんだ?
あ……
「あ……あ、あぁ……」
「い、いまはね……真美……真美だけしか、見てないよ」
そう言って、真美は微笑んだ。
その笑顔は、まるでかつての“彼女”のようで、とても優しく、柔らかかった。
「あ……う、ぇぐ……あ、あ、ぁああぁ……」
自分でも気付かなかったが、俺はもう限界だったらしい。
一度決壊してしまえば、あまりにも大きな感情は、涙の形を持ってぼろぼろと溢れてきてしまう。
「う……うぅ……こ、……こ」
「小鳥……!」
小鳥……。小鳥……!
「ことりぃ……!!」
「「ぁああああああああぁあああ゛ああああああ゛ぁああ!!!!」」
真美の小さな体、その腕の中で俺は泣いた。真美も、俺と同じように泣いていた。
あの一件以来、俺はもう決してアイドルたちの前で涙は流さないと心に決めていたが、それももう限界だったようだ。
顔の形はぐしゃぐしゃになり、もはや脳のコントロールから完全に離れていってしまっている。
耳の中で不愉快に響く、真っ黒な空から降り続ける雨の音だけが、唯一感じられるはっきりとした感覚であった。
そして、大量の涙によって激しくノイズのかかった視界に、かすかに“音無さん”の遺影が入りこんだ。
俺がいくら泣こうとも、
いくら彼女の名前を叫ぼうとも、
彼女はもう叱ってもくれず、ましてや……
笑ってなど、くれなかった。
少しきゅうけい。一服してくる。
ちなみにいま、書き溜め5分の1ほど消化したところ。
さっきのしょーもないSS見てくれた人、ありがとう!
ちなみにいま、書き溜め5分の1ほど消化したところ。
さっきのしょーもないSS見てくれた人、ありがとう!
――――――――――――
――――――
―――
音無さんのいない765プロダクションは、まるでドラえもんが未来に帰ってしまったあとののび太くんの部屋のようで、
どうしようもなく空虚だった。うつろで、からっぽだった。
――いま輝く、一番星……。ひとつ夢を、願った――
俺は与えられた仕事だけをただなあなあとこなしながら、音無さんが歌ってくれた最後の歌のことを思い出していた。
あれはいつの日だったか、社長が招待してくれたあのバーで彼女のもうひとつの姿が明らかになって以来、
彼女はみんなの前でもときどき歌を披露してくれるようになったのだ。
歌っている音無さんはとても楽しそうで、俺はそんな彼女をずっとずっと見ていたかった。
――だけど、今日もまた……終わってゆく――
――――――
―――
音無さんのいない765プロダクションは、まるでドラえもんが未来に帰ってしまったあとののび太くんの部屋のようで、
どうしようもなく空虚だった。うつろで、からっぽだった。
――いま輝く、一番星……。ひとつ夢を、願った――
俺は与えられた仕事だけをただなあなあとこなしながら、音無さんが歌ってくれた最後の歌のことを思い出していた。
あれはいつの日だったか、社長が招待してくれたあのバーで彼女のもうひとつの姿が明らかになって以来、
彼女はみんなの前でもときどき歌を披露してくれるようになったのだ。
歌っている音無さんはとても楽しそうで、俺はそんな彼女をずっとずっと見ていたかった。
――だけど、今日もまた……終わってゆく――
悲しみに明け暮れる暇もなくアイドルたちはファンの前に立ち、歌を、笑顔を届けていた。
最初はみんな自分の気持ちを隠すのに必死で、中には一週間ひきこもってしまうものもいた。
俺にはそんな彼女たちを何もできないまま見守ることしかできなかったが、
数週間もするとみんないつも通りの自分の姿を取り戻し、笑顔を装うようになった。
それは、音無さんを知るものは例外なく同じ気持ちだったからだ。
「いつまでもくよくよしていたら、彼女に笑われてしまう」
彼女たちはみんなに元気を与えるアイドルであり、俺は彼女たちのプロデューサーだった。
そんなアイドルたちの強さに、俺は随分と救われた。
――――――――――――
――――――
―――
「兄ちゃん兄ちゃん! 真美たちのダンスどうだったー?」
「もう、めっちゃサイコ→だったよね! ね、真美!」
「うんうん! もう向かうところ敵無しって感じだったっしょー!」
あの時俺のせいでおじゃんになってしまった企画、双海亜美と双海真美の双子ユニット『あみまみ』は、
数ヵ月経った頃には竜宮小町に追いつけ追い越せといった勢いで人気を伸ばしていた。
もともとこのふたりはセットで活動することが多くあったが、亜美が竜宮小町としてデビューして以来その数は減少してしまっていた。
そこで俺は、正直に言って真美に対する配慮というものが多少あったのは否めないが、
ふたりにちゃんとしたユニットという形で活動してみないかと以前から持ちかけていたのだ。
ふたりは二つ返事で了解してくれた。
しかし双子が本格的に活動し始めてからも、“竜宮小町としての亜美”も負けてはおらず、
確かな固定ファンを獲得しその人気は不動のものとなりつつあった。亜美のバイタリティの高さにははたはた呆れるばかりだ。
しかし俺を本当の意味で驚かせたのは、真美だ。彼女は、俺の想像以上のポテンシャルを秘めていた。
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―――
「兄ちゃん兄ちゃん! 真美たちのダンスどうだったー?」
「もう、めっちゃサイコ→だったよね! ね、真美!」
「うんうん! もう向かうところ敵無しって感じだったっしょー!」
あの時俺のせいでおじゃんになってしまった企画、双海亜美と双海真美の双子ユニット『あみまみ』は、
数ヵ月経った頃には竜宮小町に追いつけ追い越せといった勢いで人気を伸ばしていた。
もともとこのふたりはセットで活動することが多くあったが、亜美が竜宮小町としてデビューして以来その数は減少してしまっていた。
そこで俺は、正直に言って真美に対する配慮というものが多少あったのは否めないが、
ふたりにちゃんとしたユニットという形で活動してみないかと以前から持ちかけていたのだ。
ふたりは二つ返事で了解してくれた。
しかし双子が本格的に活動し始めてからも、“竜宮小町としての亜美”も負けてはおらず、
確かな固定ファンを獲得しその人気は不動のものとなりつつあった。亜美のバイタリティの高さにははたはた呆れるばかりだ。
しかし俺を本当の意味で驚かせたのは、真美だ。彼女は、俺の想像以上のポテンシャルを秘めていた。
『――あっはは、何それおっかし~! かわいいなあ、お姫ちん』
『だから今度さ、お姫ちんが事務所に常備してるカップヌ~ドルをぜんぶブタ麺に変えちゃおーよ!』
『えー! ちょっとかわいそうじゃない? それにここでそれ言ったらばれちゃうんじゃ……』
『だいじょーぶだいじょーぶ、これ放送されるのちょっとあとだから! だよねー兄ちゃん?』
双子ユニットが世に出たばかりのころ、多くの人の認識は次のようなものだった。
「“竜宮小町の双海亜美”と、その双子の姉、双海真美によるデュオ」
仕方の無いことだ。
ただでさえ竜宮小町はすでにテレビにラジオに引っ張りだこであったし、たとえあまりアイドルに興味がなくても、
彼女たちの顔だけは見たことがあると言う人がほとんどであっただろう。
しかしながらそういった人たちは、双海亜美に双子の姉がいるということまでは知らない。
双海真美は、当時そんな知名度だった。
しかし、そんな評価はあまり時間もかからず変わっていくことになる。
『ちょっと亜美、兄ちゃんなんて言ってもこれ聴いてる人たちわかんないって』
『うん、うん……来週放送? よし真美、明日さっそく決行だYO!』
『うーん、でも……やっぱめっちゃ面白そうかも!』
双子ユニットの売り出しには、俺の持てるスキルの全てを費やした。
亜美がいるぶん竜宮からのファンも多く興味を持ってくれていたため、ゼロからのスタートではない。
しかしそれに甘えず、俺は心の内で『打倒 竜宮小町』をスローガンに掲げていた。
プロデューサーたるもの、特定の誰かだけを贔屓することは許されない。
少なくとも俺の愛する765プロダクションでは、それが暗黙の了解となっていた。
しかし俺はこのふたり、特に真美のことを気にかけてプロデュース活動を行っていた。
何を言われるかわからないので、こんなことは誰にも悟られるわけにはいかない……。
「ハニーはなんだか最近、真美のことばーっかり見ている気がするの!」
「わた、私もそう思う! プロデューサーさん! 不公平ですよ、不公平!」
「プロデューサー。あの、ちょっとお話があるんですけど……!」
勘の良いものも何人かいたが、俺は無視することにした。こいつらはもうだいにんきだからだいじょうぶだよね。
『だよね~! ねえねえ真美、お姫ちんなんて言うと思う?』
『そりゃあもちろん……』
『『……ん面妖なっ!!』』
『あははっ、溜めた~!』 『溜めたね~!』
最初は、時折とても寂しそうにしている真美の姿が見ていられなくて始めた、心ばかりの慰めという意図があった企画だ。
しかし音無さんが死んでしまって以来、俺は何かに夢中になっていないととても平常を保てなかった。
そこでちょうどいい具合にそこにあった、このユニットの活動に全精力を注いでいたのだ。
しかし共に仕事を通じて交流を深めていくうちに、俺はふたりの大きな違いと、
アイドルとして持つ魅力に改めて気付かされていくことになる。
『お姫ちんのリアクションはちゃんと録音して、次の放送で発表するよ~!』
『楽しみにしててね! おやおや~亜美、今週ももうそろそろ終わりみたい』
『え→、もうしゅ~りょ~? まだまだ喋りたりないよ!』
『はいはーい、わがまま言わないの! さて、リスナーのみなさん!』
『今日はどっちが何を喋ってたかわかったかな→?』
双海姉妹は見た目こそよく似ているが、それぞれの強みは近頃大きく異なってきている。
律子いわく、「お年頃で、成長期だから」らしい。
亜美のあふれ出る元気さと真美の隠し切れない優しさは、ふたり合わさることで俺が想像していた以上のとても大きなシナジーを生んだ。
さらには見た目のキュートさもあいまって、一度興味を持ってしまうと簡単には無視できない魅力がふたりにはあった。
『答えがわかった兄ちゃん姉ちゃん、弟ちゃん妹ちゃんは番組の感想と一緒にお便りしてね!』
『んっふっふ~、実は亜美がずっとひとりで喋ってたのかもね→!』
『ぷぷ、はたして正解はどうかな? さて、この番組は!』
『あみまみの双海亜美と!』
『双海真美のふたりで! お送りしましたー!』
ふたりだから、出来ること。技の真美・力の亜美といったところだ。
そして、これは両者に共通して言える強さ。
どんなことがあっても笑顔を忘れない、くじけぬ心。
音無さん。あなたの大切な宝物は、とても強く成長しました。
――あの葬式の日、音無さんの眠る前で、俺と真美はキスをした。
当然のことではあるが、このことは俺たちだけの秘密になっていた。
俺は散々鈍感だなんだと言われてきたが、そのときはさすがに真美の気持ちに気付いていた。
真美は……俺に恋をしている。
しかしながらあのときのキスは、恋だ愛だといった甘い感情とはかけ離れたものであったように思う。
恋に焦がれる思春期の少女がする初めてのキスにしては、いささかロマンに欠けたものだった。
とにかく、そんなことがあったあとにこのようなえこひいきなプロデュースをしているのだから、
こんなことを言っても誰も信じてくれないかもしれない。
だが俺は、声を大にして言ってやりたい。
「俺は、真美に対して特別な感情を抱いてはいない!」
「えー!? なんか急にフラれたー!!」
そのとき俺は自宅のソファの上にいて、その日2回目の真美とのキスを終えたばかりであった。
時刻は17:20を少し過ぎた頃だったが、空は鉛のように重く、夕日の存在は分厚い雲壁によってすっかり隠されてしまっていた。
真美はあれ以来、オフ前日になると俺の家に泊まりにくるようになった。
ちなみに彼女が家の人に何と言って泊まりにきているかは、ずっと後になってから聞くことになる。
思えば、このとき聞いておけばよかったのだ。
そうすれば、いろんなことがもう少し、簡単になっていたのかもしれない……。
最初は俺にも、真美と俺の立場を気にする感情があった。
ふたりで会うたびに「こんなことはこれっきりで、もうやめにしよう」などと言っていたような気がする。
しかし真美とのキスは、そんなささやかな保守的願望をぶち壊しにするほどに、俺を虜にしてしまっていた。
気が付けばこの有様だ。
「ん、兄ちゃん……」
少し鼻にかかる、甘えた高い声でそう言って、真美は俺に再びキスをねだってくる。
いつものことだ。
おそらく、俺は最低で……クズなのだろう。
最愛の人を亡くしてまだ1年も経っていないというのに、あろうことか自分の担当アイドルとこうして共に過ごしているなんて……。
しかし、これだけは神に誓おう。
俺は真美を抱いてはいないし、抱くつもりもない。
そのあと真美が「ダンスみてよー」と言ってきたので、俺はひとり踊る彼女の姿を見ていた。
そんなに遅い時間じゃないが、なるべく静かに頼むぞ……。
ステップを刻みながら、真美は聞いてくる。
「兄ちゃんの、心は、どーやったらゲット、できるのかなっ! ほっ!」
「……いいか、真美。お前はアイドルで、俺はプロデューサーだ」
「いまさらそんなこと言われなくても、わかってるよー、だ! はい、くるりん、ぱっ!」
ふー、と一区切りついたらしい真美は、勝手知ったるといった様子で冷蔵庫からミネラル・ウォーターを取り出し音を立てて飲み始めた。
少しばかり汗をかいているようだ。
薄いティーシャツの下に隠れされた、発達途中であるもののうっすらとメリハリのついてきた体のラインが浮かびあがっている。
まだまだ可能性は未知数ってやつだな。
「兄ちゃんは、ごく、ごく……ぷはぁ。真美の気持ちには応えられないんでしょ?」
「ああそうだ。だから、俺がお前のことを優先して見てやっているのも、ただ単にお前の能力を買っているからなんだよ」
これは本心だ。たとえ仮に、自分の恋人がアイドルであったとしても、実力とやる気がなければ俺は仕事を持っていかない。
「でもでも兄ちゃん。真美たちのさっきの姿を見たら誰も信じてくれないんじゃないかなー?」
「う……」
「恋人じゃないなら恋人じゃないで、それならなんだか“お布団営業”みたいだねっ!」
そう言って真美は、どこかのでこちゃんよろしくにひひと笑った。
それを言うなら枕営業だろ、いやある意味間違ってはいないか……。
「俺は枕なんて受け付けないし、お前らにさせるつもりも一切ないよ」
真美の洒落にならないジョークにも動揺せず、俺はこう答えた。
しかしこんなこと言っていられるのも、俺がまだまだ業界の暗い部分を知らないからなのかもしれない。
だが、765プロのアイドルたちは、みんな例外なく俺の愛する娘たちだ。
あいつらが笑ってアイドルを続けられるなら、俺はどんな苦難だって乗り越えてみせる。
誰一人として悲しい思いなど、させてなるものか。
真美は俺の言葉を、その場にそわそわと立ったままこぶちをぎゅっとして聞いていた。
その顔はなんだかとても嬉しそうだ。
「んっふっふ~! そーだよね、兄ちゃんはそういう人だよね。だから真美は……」
そして大きくばんざいをしながら、小さな体をくるり。
これは真美の癖のような仕草であり、彼女はそうやって笑顔のエネルギーを発散させているようだった。
「だから真美は、兄ちゃんのことがだいすきなんだよ!」
そう言って満面の笑みを浮かべる彼女を見ると、とても優しく穏やかな気持ちになれる。
まるでタマゴの殻を扱うように、俺は彼女の髪を軽く撫で、そのまま自らの頭を近づけた。
本日4度目のキス。
今度は唇と唇を触れさせるだけじゃない。中学生にしてはちょっと背伸びした、大人のキスをする。
キスの雨は、夕食を食べ風呂を済ませたあとも続き、気付いたときには夜遅くになっていた。
ちゅる……ぴちゃ、 ちゅぶぶ……。
お互いの唇が離れるほんの小さな瞬間だけに響く音と、熱くぬるぬると濡れた感触だけが、俺の感じられる全てだった。
もう数えるのもおっくうになるほどたくさん唇を重ねたあと、「夜更かしはアイドルの敵だ」とかなんとか言って、
俺はぶーぶーしている真美をベッドに寝かしつけた。
今、この家で意識を持っているのは俺しかいない。
「真美なら俺の隣で寝てるけど?」
誰に対してでもなくひとりわけのわからないことをつぶやいたあと、
俺は真美の眠るベッドから離れソファの上に再び腰を下ろす。
真美はとても魅力的な女の子だ。こうして少しだけふたりの距離が近づき、俺は改めてその可愛らしさに気付くことになった。
少し明るめのブラウンの髪を縛るものは何もなく、今はシーツの上で無造作に乱れていた。
普段はサイドポニーの形にまとめあげているのでわかりづらいが、真美の髪は下ろすと肩甲骨に届くくらいの長さを持っている。
その持ち前の明るさを表すようにピョンと飛び出た髪型をする亜美の髪には、よく見ると少しだけ癖があるが、
真美の髪の毛はどこまでも柔らかく、さらさらで真っ直ぐだった。
きっとこんな日を除けば、毎日のケアを欠かしていないのだろう。彼女の隠れた努力家という一面が垣間見える。
髪と同色の瞳は、いまは瞼によって固く閉じられている。
しかしひとたび目を開けると、まるで初夏の草原を連想させるような、不思議と目が離せなくなる瞳が現れることを俺は知っている。
ティーン・エイジャー特有の好奇心と、自身の成長に対するいくばくかの不安を共存させたその瞳は、
彼女の持つ大きな魅力のひとつだ。
これから先、彼女はどのように成長し、その瞳にどのような色を加えていくのだろうか。
そして、その小さくぷるりとした唇。
真美の唇の感触を誰かに伝えるためには、おそらく三日三晩以上の時間を必要とするだろう。
それくらい彼女の唇は様々な形を持っており、俺はその変化する形を自らの唇によって確認した。
亜美は言う。自分の魅力を語りつくすには200年くらいかかる、と。
それならば真美の魅力をすべて語りつくすには、それこそ300年400年くらいの時間がかかると俺は思う。
勘違いされるのは甚だ心外であるので、ここでもう一度宣言しておこう。
俺は真美に特別な感情を抱いてはいない。
この分析は、真美をプロデュースする上で最低限知っておかなければならない彼女の武器であり、ただそれ以外の意味はない。
ほ、本当だ。
「何やってんだろう、俺は……」
しかしながら、こんな風にいくら落ち込もうとも、悲しいくらいに俺は男なのである。
このように可愛い女の子とキスを繰り返して、内心平常でいられるわけがない。
まるで貪るかのように真美と唇を重ねて、性的興奮を覚えないわけがない。
その証拠に俺の気持ちの高ぶりは、こんなにもわかりやすい形でズボンの下から自己主張している。
これはこの状況がそうさせているのであって、決して俺がロリコンというわけではない。
「…………」
まだ俺の中にほんの少しだけ残っている最後の良心が、「最後の一線を越えるわけにはいかないぞ」と言ってくる。
そんなことはわかっている。何度でも言うが、真美はアイドルで、俺は彼女のプロデューサーだ。
しかしこのままではきっと俺も眠れそうにないから、自らの手でこの気持ちの処理をしなければならなかった。
「…………」
真美が眠るすぐそばで、俺はそっとスウェット生地のズボンを下ろした。
「……! ……!」
俺はなるべく何も考えないようにして、ゆっくりと……熱すぎる気持ちを持て余すかのように猛るペニスに刺激を与え始める。
情熱がいっぱいにつまった海綿体を右手でやさしく、ときに激しく扱きながら、
ときどきちらり……と真美のかわいらしい寝顔を見た。
ちゃんと安眠できているか急に心配になったからであり、それを確認する以外の目的は決してない。
「……! ……くっ!」
そのうち、時間の感覚があいまいになってくる。
どれくらいそうしていたかわからないが、しばらくすると腰に電気が走るような感覚がやってきた。
ひとり真っ暗闇の中、俺は少し息を荒くして絶頂を迎えようとしていたのである。
よかった、これで今夜もゆっくり眠れそうだ。
「……!!」
と、そのとき。ふと、ある女性の顔が俺の頭の中に浮かんできた。
努めて何も想像しないでいたのだが、どうやら最後の最後で油断をしてしまったらしい。
俺は優しく微笑むその女性の顔をまっすぐに見ながら、とても強く射精をしてしまった。
「……ふう……」
まだ射精の快感に酔いしれていたかったが、だんだんと俺の頭はクリアになってくる。
そして、射精の瞬間に思い浮かんできた女性のことを考えた。
「……音無さん」
女子中学生相手に欲情し、さらにはその少女が眠る傍らでかつての恋人を想いながら性処理を済ませた変態が、そこにいた。
それは言い逃れのしようもなく、どうしようもなく確かに俺だった。気が付けば頬に一筋の涙が流れていた。
「……本当に、何をやっているんだろうな、俺は……」
俺はそのあと、泣きながらティッシュで隅々まで後処理を施し、消臭スプレーで部屋に残った情熱の残滓をかき消した。
真美がいるこんな夜だからこそ、静かに慎重にことを終わらせなければならない。
洗面所で丁寧に手と顔を洗うと、俺はベッドへと近づいていった。
改めて、俺は真美のことを見る。彼女は無垢な表情を浮かべて静かに寝息を立てていた。
こんなことになっているとも知らず、心から安心して眠っているように見える。
真美はまだ13歳の女の子だ。
世界の持つ眩しいくらいの素晴らしさも、目を瞑りたくなるような醜悪さも、何も知らない。
ましてや俺のこんな姿など……。
「おやすみ、真美」
そうつぶやくと、すやすやと眠る真美の頬に軽く口付けし、俺も布団の中へ潜り込んだ。
俺の予想通り、眠りはすぐにやってきた。
「………………………」
「…………っひぐ」
「……兄ちゃん」
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