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元スレP「真美が、俺にキスをねだってくる……」
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こんな風に千早とやよい談義に花を咲かせていた途中で、俺は頭をがつんと殴られてしまった。
だ、誰だ!? 千早か? いや千早は今、顔を真っ赤にして写真に釘付けになっている……。
「はぁ……はぁ……。に、兄ちゃんの変態! ロリコン! うわきもの~!!」
そこには真美がいた。目にはなぜか涙をいっぱいに溜め、今にも爆発しそうなほどの怒りの表情を浮かべている……。
しかしロリコンとは、お前がそれを言ってしまうのか。やよいは一応お前より年上だぞ。
ちなみに俺はロリコンではない。
好きになってしまったのがたまたま、干支が一周してしまうくらい年の離れた、13歳の女子中学生だったというだけの話だ。
「や、やあ真美。怒った顔もかわいいな」
もう一発殴られた。
「兄ちゃんの……ばかぁあああ!!」
「え、浮気!? え、真美!? ど、どういうことですか! プロデューサーさん!」
「ハニー……? ちゃんと説明、してくれるん……だ、よね……?」
「ふ、不潔ですぅ……(ちらり、ちらり)」
「あ、私の写真だぁー!」
「高槻さん、かわ、かわいい……!」
「うっうー! ありがとうございまぁす千早さん!」
「だー!! うるさーい!!!」
収集のつかなくなった事務所に、律子の怒号が響き渡る。
「プロデューサー殿が帰ってきたからって、ちょっとはしゃぎすぎよあんたたち!」
「い~い!? もうすぐ定例ライブなんだから、遊んでばっかじゃなくて気合入れなさい! き・あ・い!」
そう、もうすぐ765プロオールスターによるライブだ。
みんなで一緒にやることができる、最近では数少ないイベント。俺の復帰一発目の、大仕事になる。
――――――――――――
――――――
―――
「おつかれ! みんな!」
最後のアンコール曲が終わり、ライブは終焉を迎える。
全てを出し尽くしたみんなは、息も絶え絶えといった様子で俺や律子の待つ舞台袖に集まってきた。
結論から言って、ライブは大成功に終わった。
会場に来てくれたファンたちの盛り上がりも最高であり、未だに冷めやらぬ熱気がここまで伝わってくる。
スポットライトがきらめく舞台で踊り、歌いきった。その達成感は、きっと彼女たちにしか共有できないものだろう。
みんな、どこかすがすがしい表情をしている。……ただひとりを除いて。
「に、兄ちゃあん……」
――――――
―――
「おつかれ! みんな!」
最後のアンコール曲が終わり、ライブは終焉を迎える。
全てを出し尽くしたみんなは、息も絶え絶えといった様子で俺や律子の待つ舞台袖に集まってきた。
結論から言って、ライブは大成功に終わった。
会場に来てくれたファンたちの盛り上がりも最高であり、未だに冷めやらぬ熱気がここまで伝わってくる。
スポットライトがきらめく舞台で踊り、歌いきった。その達成感は、きっと彼女たちにしか共有できないものだろう。
みんな、どこかすがすがしい表情をしている。……ただひとりを除いて。
「に、兄ちゃあん……」
真美が、不安を隠しきれないといった様子で俺のそばに立っていた。
腕をうしろに組みながら、俺の足元に目線を向けてもじもじしている。
さっきまであんなに楽しそうに歌って踊っていたといのに……。
その細い足はがくがくと震えており、つついたら飛んでいってしまいそうにも見える。
……真美は、俺を含めた一部の人しか知らないが、これからひとりでとんでもないことをしようとしている。
そんな真美に言えることは、これしかないだろう。
「……大丈夫だ、自分を信じろ。失敗したら、思いっきり泣けばいい!」
真美、お前にはやっぱり笑顔がとてもよく似合う。
そんな顔してちゃ、これからお前がやろうとしてること、ちゃんと届かないぞ。
「うん!」
そう言って、真美は宝石のような笑顔を浮かべて走っていった。
真美がひとり、舞台の上に舞い戻る。
『いえーい! 会場の兄ちゃん姉ちゃん! 今日は楽しんでくれたー!?』
会場のファンたちは再び姿を現した真美を見て、まだアンコールがあるのか、と期待しているようだ。
『今日のライブはほんとは、さっきの曲で終わりなんだ~』
ええ~!! という声が会場中に響き渡る。
『んっふっふ~、ごめんね! みんな搾りに搾りつくしちゃって、もうなーんも出てこないんだよ~』
真美ちゃんえろーい! 誰かがこう言った。うちのアイドルに向かってなんてことを言いやがる。
どうやらマナーのなってないファンのお客様がいるようだな。真美の本当にエロい姿を知っているのは俺だけだ。
『でもでも真美は! まだまだとーっても元気だから、最後の最後に一曲だけ、歌っちゃうYO→!』
『なんてね、ほんとは色んな人にすっごいすーっごい頼み込んで、ようやくやらせてもらえることになったんだ』
『だから最初に謝っとくね。ごめんなさい! 真美は今からここを、メッチャ私物化します!』
『そんなだからこれやるのも、ちょっとの人しか知らないの。
りっちゃんとか今頃驚いて、へんな顔になってるんだろうなー! ぷぷ!』
実際その通りだ。律子だけでなく、アイドルたちのほとんどが何が起こっているかわからないまま真美のことを見ている。
『それでも』
『真美の気持ちが、大切なひとに! 真美の大好きなお姉ちゃんに! 届けばいいなって思う!』
そこまで一息で言ってしまうと、とても静かで優しいイントロダクションに合わせて、真美は歌い始めた。
今 輝く一番星
ひとつ夢を願った…
だけど 今日もまた終わってゆく
『光』
http://www.youtube.com/watch?v=DACrvLBNhzM
やべぇ・・・王道過ぎて泣ける
小鳥スキーは噴飯者かもしれんが、別の作品で日の目を見ることを祈ろう
小鳥スキーは噴飯者かもしれんが、別の作品で日の目を見ることを祈ろう
ただ自分でいたいのに…
ただ笑っていたいのに…
だけど成れなくて もう出来なくて 落ちる涙
「真美……」
舞台袖で真美のひとり舞台をはらはらと見守る俺の隣で、千早が小さくつぶやいた。
千早も、真美の言う“ちょっとの人”のひとりだ。
かつての千早がそうであったように、今この瞬間にきらめく舞台に立つ真美もまた、
どうしようもない状況から仲間の手によって救われたのだった。
光。
“彼女”が、みんなの前だけで特別に歌ってくれた最後の曲だ。
曲調、歌詞ともに今までの真美のイメージとは正反対の歌だろう。
しかし、不思議と違和感はなかった。
客席にいるファンたちも、今まで見せたことのない彼女の表情や雰囲気に最初こそ驚いた様子であったが、
今では固唾を飲んで見守っている。
真美が何を考え、何を思って、いまこの舞台に立っているのか。765プロのみんなはもうわかっているようだった。
春香や亜美などは、まだ始まったばかりだと言うのに涙を流している。
真美……頑張れ……!
この展開を予想してすでに光を聴きながら読んでいる俺に隙はない
今おれの顔がグシャグシャに歪みまくってんだけど責任者出てこいよ
夜が闇で空を消しても
雲が銀河を隠しても
小さくたって
あの花の様に
星は光を咲かせてく
どうか負けないで
自分を信じて大丈夫だから
どうか止めないで
夢が朝になっても覚めないなら
明日を迎えにいってらっしゃい
一瞬。
1秒にも満たないほんの少しの間であったが、真美の小さな頭がかすかに動いた。
そのとき真美は、彼女だけを照らす
眩しくて、どこかやさしい“光”を見あげて、
小さく微笑んでいた。
おわり
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