元スレまどか「えっ?マミさん連休の予定無いんですか?」
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101 = 89 :
マミ「……そういえば、どうして私が家の鍵をかけ忘れることが分かったの? 偶然としか思えないのだけれど」
ほむら「え? ……ああ、そんなアクシデントもあったのね。別に関係ないわよ、最初からあなたの部屋に居たもの」
マミ「……はい?」
ほむら「学校から帰った後、いつも換気のために窓を開けるでしょう? それでちょっと、お邪魔しまーすって。
あとはクローゼットの奥に潜ませてもらったわ。途中、ちょっと意識が飛んだけど……些細な問題ね」
マミ「………何やってんの……」ハァ…
ほむら「確かにこの作戦では、貴女の部屋に侵入する経路はなかなかの問題点だったけど……」
ほむら「やると決めたら。私は決して逃げない、諦めない女なのよ」ファサッ
マミ「下らないことにそういう情熱を傾けないでよ……」
まどか「あはは……」
ほむら「『適当に使い魔を生け捕りにして、パトロール中のマミを駅まで誘導する作戦』のほうが楽だったかしら」
まどか「それはほむらちゃん、もっと危ないからボツにしたんだよ」
ほむら「うーん、『杏子が台風に乗ってとんでもない所に飛ばされて大変だから迎えに行ってあげて作戦』は?」
マミ「それはボツでよかったと思う……」
102 = 52 :
マミさんは鍵のかけ忘れとか気にするタイプ
103 :
てっきりまどカスぼっちマミさんだと
104 = 89 :
マミ (……ん。 そっか、朝から行ってない……)
マミ「ちょっと……お手洗い行ってくるわね」
まどか「あ、マミさんいってらっしゃーい」
マミ「………車両と車両の間にあるのだったかしら?」
ほむら「そうよ。えっと、この車両だと……あっちが近いわね」
マミ「ありがとう」
スタスタ…
マミ (連休だからか……結構、人が乗ってるわね……)
マミ (うーん……ということは………)
マミ (……私、この人数の中で泣いてたのかぁ………///)
ちょっとだけ、通路を足早に駆け抜けてデッキへ向かった。
105 = 89 :
ジャゴゴゴー
ガラガラガラ…バタン
マミ (ふぅ………)
マミ (あ……そうだ、髪)
トイレ向かいの洗面台に入り、カーテンを閉める。
マミ (ああ、やっぱり……。さすがに寝っぱなしだと酷いわね……) サワサワ
いつもは怨念を感じる程に整っていたマミの縦ロールは、少し解れ、形をゆがめていた。
マミ (でもまぁ道具も無いし……)
マミ (ちょっとだけ整えてと………)
しばらく、鏡を見つめながら髪をいじる。
ようやくいつもの朝の風情が出てきたようにも感じられた。
マミ (………よし、こんなもんでしょう) ニコッ
鏡にほほえみかける自分を見つめる。
マミ (……やっぱり、私、すごいテンションあがってるわね)
マミ (………行きたかったんだなぁ、旅行。自分でも驚くくらい……)
106 = 1 :
マミ (それにしても、綺麗な車内ね……。新しい車両なのかしら) トコトコ
マミ (すごく速いわよね……)
ドアの小さな窓の中を、雑多に並んだ建物が素早く流れていく。
マミ (……ん。これは……案内図だわ)
マミ (ふうん、いろいろと……。あ、自動販売機あるのね)
昔乗った事もあまり覚えていない、新鮮な乗り物に興味が湧いてきた。
マミ (喉も渇いたし、ちょっと行ってみようかしらね?)
トコトコ… ウィーン
マミ「! …っとと」ササッ
目の前のドアが開き、入ってきた台車にぶつかりそうになって避ける。
「あっ、すみません、失礼致しました」ガラガラガラ…
マミ「いえ、こちらこそごめんなさい」
マミ (車内販売かぁ……。後でまた、私たちの席にも来るかしら)
107 = 1 :
マミ (自販機みーつけたっ。……ちょっと思ってたよりちっちゃいけど)
マミ (財布はと……) ガサゴソ
チャリン チャリン
マミ (しかしいろいろあったわね……。喫煙ルームが別室で作られてるなんて、ちょっと驚いたな)
ポチッ……ガタンッ
マミ (っと……)
出てきたお茶を取り出し、蓋を捻って一口流し込む。
マミ (ふぅ………)
マミ (……さっきより、ちょっと田舎になったのかしら?)
窓を眺めてみる風景が、すこしのどかになってきたようだ。
ぽつぽつと、色あせた人家や畑が混じったものに変わっている。
マミ (………離れて行ってるのね、見滝原から……)
しばらくぼうっと眺めながら、ペットボトルの中身を飲み続けていると、
視界が急に暗転した。トンネルに入ったようだ。
マミ (……そろそろ、戻らないと心配されるわね)
空いた容器をゴミ箱に捨て、来た通路を元の席へと歩いていった。
108 = 1 :
ほむら「……あ。おかえりなさい、マミ。遅かったわね」
マミ「ごめんなさい。ふふ、ちょっと面白かったから探検して来ちゃった。……鹿目さん、寝ちゃったのね」
まどか「………」スー…スー…
まどかはほむらの膝に頭を預け、ゆったりとした寝息を立てていた。
ほむら「ええ……。まだ暗いうち、あなたが寝ている間にいろいろとやらなければいけなかったから、朝が早かったのよ」
マミ「なるほどね。暁美さんは眠くないのかしら?」
ほむら「私は……その。慣れてるから……」
マミ「………キュゥべえを追いかけ回したり……それをずっと繰り返してた、って言ってたわね」
ほむら「そうね……。武器の調達なんかも」
マミ「………大変、だったでしょうね。何度も、何度も。ずっと、毎晩……」
ほむら「……大変……ではあったけれど。ずっとってわけでもないわ」
マミ「……え?」
109 = 1 :
膝の上のまどかの髪を優しく撫でながら続ける。
ほむら「私も最初は……ただただ、約束を守ることだけを考えて。そのためだけに毎日を生きていたわ」
ほむら「でも………。何度やっても、失敗して。その度に心が折れそうになって、それでも誰にも頼ることが出来なくて……」
ほむら「もう、どうしていいか分からなくなってた」
マミ「………」
ほむら「………それで、焦ってたんでしょうね」
ほむら「魔女と戦っている時に、ちょっとしたミスで……足を失いかけた」
ほむら「さすがにあれは驚いたわ。死にはしなくても、魔法でも簡単には回復できないレベルで……」
ほむら「何とか手術してもらって、回復も見込める状態にはなった」
ほむら「でも、治るまで何も出来なくなったし、今回もやっぱり駄目だったんだなって……。
魔女と戦うことを思うと、恐怖もあって………病室で泣いてたの」
ほむら「……そうしたら、まどかが来てくれたのよ。お見舞いに」
マミ「……鹿目さんが?」
110 = 1 :
ほむら「ええ。……さやかちゃんが、上条くんのお見舞いに来るついでなんだ、って言ってたけど」
ほむら「駅前の、おいしいシュークリームを買ってきてくれた」
ほむら「……それで、もう止まらなくなっちゃった」
ほむら「まどかを前に、みっともない大声で泣いたと思う……」
ほむら「泣きながら……勢いに任せて、いろんな事を話した。魔法少女のこと、繰り返しのこと」
ほむら「……きっと、全部を信じてくれたわけではないのだと思う」
ほむら「でも、『暁美さん、がんばるのは大事だけど、がんばりすぎたら、だめなんだよ』って、そう言ってくれたの」
マミ「………鹿目さん、本当に優しい子よね」
ほむら「ええ」
ほむら「それ以来……心の余裕って、大事なんだなって、そう思うことができたの」
ほむら「………立ち止まって、息を整えることですら、全てを諦めて……約束を破ることと同じじゃないのかって、そんな思いもあった」
ほむら「それでも、走り続けて立ち止まったら、二度と立ち上がれなくなるよりはきっといいんだって……そう言い聞かせ続けて」
ほむら「やっと、この未来を手に入れることが出来た。まどかも……さやかも、杏子も、マミ、貴女も失うことなく、先へ進むことが出来た」
ほむら「これが正解かは分からないけれど、最低限望む物は手に入れられたつもりよ……」
マミ「……そうだったの…………」
111 :
本編でもこんな結末もあるのかと期待してたわ...
112 = 1 :
ほむら「ずっと気を張り続けてたら……いつか、予想だにしないタイミングでぷつりと切れて、心も折れてしまう。急激にね」
ほむら「あなたも、気を張りすぎていたのよ。巴マミ」
マミ「………」
ほむら「私たち後輩が4人居たことが、逆に酷く重荷になっているようにも見えた。
……魔法少女としても、学生としても。そうじゃない?」
マミ「……うん。いい格好しようとしてたのは……認めるわ」ハァ…
ほむら「……気持ちは、分かるのだけれどね」
ほむら「あなた一人で、全て抱える必要はないの。私たちはあなたのことをとても頼りにしているけれど、
だからこそ同時に……出来ることなら頼られたいし、そうであるべきだと思うわ」
マミ「うん……良く分かった………」
マミ「いい恰好するはずが、逆に酷く情けない姿をさらしてたみたいね、私……」
マミ「ごめんね、なんだか」
ほむら「良いのよ。貴女が幸せであれば私も幸せ、それだけのことだから」
マミ「……あなたも優しいわね、暁美さん………」
113 = 1 :
ほむら「ま、そういうわけだから……この旅行は、死ぬほど気楽にしててもらえると有り難いわ」
マミ「大丈夫よ、もう気持ちの切り替えはできてるもの。うふふ、これで結構ワクワクしてるのよ? 私」ニヤリ
ほむら「あら、そんな悪戯っぽい笑いをされると、なんだか企んでるように感じるわよ?」ニヤリ
マミ「ふふ、ふふふ……」 ほむら「ふふふふ……!」
特別に意味もなく、二人で笑いあった。
そんなことをしていると、
グゥーッ
まどかのお腹から、低い音が響いてきた。
まどか「………ん……」
ほむら「……」
マミ「今のは……」
114 :
俺には連休の予定を聞いてくれる人すらいないんですけどね
115 = 1 :
まどか「……んあ………あれ……ここは?」
目を擦りながら、ほむらの膝から起き上がる。
まどか「あ、ほむらちゃん……って、あ、そっか、新幹線……」
ほむら「おはよう、まどか。少しは眠れたかしら」
マミ「ふふふ、おはよう、鹿目さん」
まどか「マミさんも戻ってきてたんですね。おはようございます。えへへ…すいません寝ちゃって」
マミ「朝早かったのでしょう? 仕方ないわ。それより……」
ほむら「お腹、すいた?」
まどか「……え? あ、うん、すいてるよ………?」
グゥー
きょとんとした顔で見つめ返すまどかのお腹が、また鳴った。
まどか「わわ……///」
マミ「可愛いわね……」
ほむら「あげないわよ」
マミ「盗らないわよ……」
116 :
まどっちまどまど
117 = 1 :
まどか「ううっ、きょ、今日は朝からちゃんと食べてないんだもん……///」
マミ「あら、そうなの?」
ほむら「マミが目覚め次第行動できるようスタンバイしていたから、
強奪した杏子のロッキーと…あとカロリーライトを食べたぐらいだったかしら」
マミ「……ご飯ぐらいちゃんと食べなさいよ、もう」
ほむら「悪いことしてる最中は仕方ないのよ」
マミ「まったく………あれ、それでお昼、どうするの?」
まどか「ウェヒヒヒ……それなら心配無用ですよマミさん!」
ほむらが立ち上がり、網棚からビニール袋を取り出した。
ほむら「さっき、乗る前に駅で買っておいたのよ」
マミ「あら、お弁当? 準備が良いわね」
ほむら「さやかと杏子のセレクトだから、何が入ってるか……」ガサガサ
まどか「わくわくするね!」
118 = 1 :
ほむら「とりあえずお茶ね」
誰の趣味か、入っていた3本の十六茶を全員に配る。
まどか「ありがとう」 マミ「いただくわ」
ほむら「それで、肝心のお弁当は……」
それなりにずっしりとした、3っつの箱を取り出す。
『特製幕之内御膳』
マミ「なるほど、定番の幕の内ね」
まどか「いろんなのが入ってるんだっけ?」
『牛すき重』
ほむら「なかなか豪華じゃない」
マミ「甲乙付けがたくなってきたわ」
『深川めし』
ほむら「深川めしって……何かしら?」
まどか「あれ、これテレビ番組で、見たような……」
ほむら「……あの二人に頼んだ割に、意外とまともな感じね」ハァ…
まどか「ほむらちゃん、残念そうな顔する所じゃないよ、そこ……」
119 :
マミさんがディスられる話かと思ったらいい話だった
120 = 4 :
出かける前の支援
121 = 1 :
ほむら「マミ、あなたはどれにする?」
マミ「え? 二人はどれが良いのかしら?」
まどか「今日はマミさん主役なんですよ、最初に選んでください」
マミ「そう? でも……うーん、困ったわね。どれも美味しそうに思えるし……」
マミ「……うん、じゃあ『深川めし』にしましょう。何なのか気になるし……」
マミ「でも、みんなで分け合いっこしましょう?」
まどか「もちろんですよ!」
ほむら「望むところよ。まどかはどっちにする?」
まどか「ほむらちゃんはどっちがいいの?」
ほむら「私は残った方でいいのよ、まどか」
まどか「ううん、ほむらちゃんが好きなの選んでよ」
ほむら「まどか……!」
まどか「ほむらちゃん……!」
マミ (相変わらずねぇ………)
122 :
かわいいマミさんに杏さやにほむまどとかマジ俺得
123 = 1 :
――10分後――
マミ「……それで結局、暁美さんが『牛すき重』で、鹿目さんが『特製幕之内御膳』に決まったのね」
ほむら「対話による平和的解決の末、そうなったわ」
マミ「まあいいわ、早速食べましょうよ。私もお腹すいちゃって待ちきれないわ」
まどか「そうですね、それじゃ」
「「「いただきまーす」」」
ガサゴソ… ピリリ… ガサッ…
3人が、それぞれにパッケージを空ける。
マミ「へぇ、これは、穴子……よね?」
ほむら「敷き詰められた牛すきに卵焼きと漬け物、シンプルでいいわね」
まどか「わっ、すごい、ほんとにいろいろ入ってる……」
124 = 1 :
マミ (この色は……炊き込みご飯? それに焼き穴子と、あさりが乗ってるわね)
モグムグ…
マミ「うん……美味しい。あさりの炊き込みご飯みたいね。しつこさがなく、焼き穴子とマッチしてて食べやすい」
マミ (穴子も柔らかくて、香ばしさがあっていいわね……) モグモグ
ほむら「……一口もらってもいいかしら?」
マミ「ええ、もちろん」
ほむら「………なるほど、これが深川めしというの。おいしいじゃない、当たりを引いたわね」モグモグ
マミ「別にハズレなお弁当は無かったと思うんだけれど……」
まどか「マミさん、わたしもわたしも」
マミ「どうぞ、鹿目さん」
まどか「………うん、おいしい! このおさかなさんの甘いの、ご飯が進みますね!」
マミ「どれどれ……」パクッ
マミ (……本当だ、小魚が甘ーい味付けで煮てある。……でも、これ何て魚なのかしら………) モグモグ
125 = 1 :
マミ「暁美さんのはどう?」
ほむら「しょうゆベースのしっかりとした味付けよ。けっこういけるわ」モグムグ
マミ「ふふ、それじゃ、一口……」
ほむら「ええ。まどかもどう?」
まどか「ティヒヒ…それじゃ、このタマネギも一緒にもらっちゃおっと」
マミ「………へぇ、意外とお肉、柔らかいじゃない。お弁当なのに」モグモグ
まどか「味がしっかり染みてておいしいね!」モグモム
マミ「鹿目さんの幕の内は……なんだか、いろいろありすぎて迷うわね」
まどか「えへへ、私もどれから食べるのか悩んじゃってるぐらいで……」
ほむら「どれも美味しそうよね……。黒豆、貰って良いかしら」
まどか「うん、どうぞ! 甘くておいしいよー」
マミ「これは……じゃこのご飯かな? ちょっと貰ってもいい?」
まどか「どうぞどうぞ」
マミ「……これも美味しい。ふふ……やっぱりみんな当たりじゃない」
126 = 1 :
――しばらく経って――
ピーンポーンパーンポーン
まもなく、京都です。
東海道線、山陰線、湖西線、奈良線と、近鉄線は、お乗り換えです……
ほむら「あ、ついたわね」
マミ「え……降りるの?」
ほむら「ええ」
まどか「えっと、かばんと、ゴミと、忘れ物無いかな……」ゴソゴソ
Ladies and gentlemen. We will soon make a brief stop, at Kyoto...
マミ「鹿目さんの鞄、可愛いわね」トコトコ…
まどか「ティヒヒ、この旅行のために買って貰っちゃったんです」テクテク…
やがてじわじわと速度を落としながら、N700系のぞみは滑らかにホームへと滑り込んだ。
フィーン… プシュー
128 = 1 :
ガヤガヤ ザワザワ
まどか「んーっ……」
ホームの真ん中で、まどかが笑顔のまま大きく伸びをした。
まどか「もう京都かぁ…。新幹線って速いねぇ」
マミ「本当ね、あっという間に遠くまで来ちゃったみたい」
高い位置から眺める風景の中、ロウソクのような一本の塔が目にとまる。
マミ「あれは…?」
ほむら「京都タワー? あまりパッとしないデザインよね」
まどか「そうかな? 可愛らしくていいと思うよ?」
マミ「へぇ、こんなものもあるのね……」
マミ (そういえば、中学の修学旅行……。みんなは、京都に行ってたらしいわね……)
マミ (…………)
マミ (ふふ………今更ね)
129 = 114 :
皆かわいい
130 = 1 :
ほむら「さて、それじゃ特急に乗り換えね」
マミ「……へ。まだ目的地じゃなかったの?」
まどか「え?」
ほむら「……あ、もしかして。まだ私、行き先告げてなかったかしら?」
まどか「そういえば……言ってないような……」
マミ「ええ。朝からあの流れだったから、着くまでの楽しみかなと思ってたんだけれど……」
ほむら「そう。それじゃ、このまま内緒にしておきましょうか」
まどか「ほむらちゃん意地悪だなぁ」
マミ「ふふふ、そう言う鹿目さんも教えてくれないんでしょう?」
まどか「もっちろん!」ニコッ
ほむら「さ、行くわよ」
マミ「ええ」 まどか「うん!」
トコトコ…
131 :
マミマミ
132 = 1 :
――繁華街――
さやか「いやー、それにしても面白かったなー、マミさん拉致☆大作戦」
杏子「マミのやつマジで震えてたよな、あれ……。大丈夫かな、帰ってきたときがちょっと怖ぇよ」ブルッ
さやか「あー、うん、大丈夫だと信じよう。まどかとほむらが多分うまくやってくれるよ」
杏子「そろそろ到着してる頃か?」
さやか「どうだろ……何か遠くの山奥にある温泉でしょ? 結構かかるんじゃないかなあ」
杏子「そうか、あんな凄そうな電車でも時間かかるもんなのか……」
さやか「あはは、あんた見送りんとき目ぇまん丸くしてはしゃいでたもんねー」
杏子「う、うるせーな、カッコよかったんだから仕方ないだろ……」ポキッ
さやか「…乗りたかった?」
杏子「……そうだな、正直。でもまぁ、今回はマミのためって話だからな。あいつらの信頼を裏切るわけにはいかないよ」モグモグ
さやか「うん……そうだね」
杏子「それにあたしは、旅費が出せないし出して貰うのも嫌だ! っつーのもあったし」
さやか「……窃盗の常習犯だったあんたがここまで更正してくれて、あたしゃ涙が出るほど嬉しいよ」ナデナデ
杏子「や、やめろよっ…///」
133 = 116 :
一分さやさや
134 = 1 :
さやか「まっ、またどこか行くこともあるでしょ。その時のために、貯金とかしとかなきゃね」
杏子「そうだな……。そう言う目標みたいのがあると、やる気も出るよな」
最近は二人で出歩くことも多くなった賑やかな道を、ゆっくりと歩いていく。
杏子「あ、ゲーセンいかね? 最近ポップンもやり始めて……」
さやか「ダメダメ、そんなことより今日はまずやらなきゃいけないことがあるんだから!」
杏子「え……? そんな話……」
さやか「うん。言ってない」ニヤリ
杏子「おいまて、何だその微笑みは」
さやか「ほら、行くよ!」グイッ
そう言って、突然杏子の手を掴んで速度を上げるさやか。
杏子「お、ちょいっ…」トトト…
杏子 (………暖かい手、してるよな……)
少しためらいを感じながらも、その手を強く握り返して後を急いだ。
135 = 1 :
さやか「まずはここだっ!」
杏子「ここは……?」
「いらっしゃいませ」
さやか「え? 見ての通り、洋服屋さんだよ」
杏子「いや、それは分かるけど……」
たしかにそう珍しいことではない。だらだらと出歩いて、ちらほら服を見るぐらいはいつものこと。
ただ、この始めて入ったお店には、やけに可愛らしいひらひらした服ばかりが並んでいた。
杏子「さやか、こんな服の趣味してたっけ?」
さやか「んーん? あたしは着ないよ?」
杏子「なら何で」
さやか「着るのは杏子、あんただもん」
杏子「………はあ?」
さやか「今日は、あんたをいつもとひと味違う感じにしちゃおっかなって思ってね」ニヒヒ
137 = 1 :
杏子「さあ出ようか」ダッ
逃げようとするも、繋いだ手は強く握られたまま離して貰えそうにない。
さやか「ふっふっふ、逃がさないよ~?」
杏子「こんなの似合わなねーって!」ジタバタ
さやか「大丈夫だって、あんた素材はいいんだから何でも似合うよ」
杏子「いや無理無理、笑われちまうよっ!」
さやか「誰が笑うのよ?」
杏子「え、そりゃ……マミとかほむらとか………あ」
さやか「ほら。今日はあんたを知ってるの、あたしぐらいしか居ないんだよ?」
杏子「……それは、そうだけど」
さやか「………ね。駄目かな? あたし、可愛い杏子の……もっと可愛い姿、見てみたいんだ」
少し困ったような微笑みで、じっと見つめられ……うろたえる杏子。
杏子「ううっ………」
杏子「…………分かった、よ。今日ぐらい……遊ばれてやっても……いいよ」ハァ…
さやか (よし、押し切ったっ……!)
138 :
ふむ
素晴らしい
139 = 111 :
あんさやあんさや
140 = 1 :
ガサゴソ…
さやか「うーん、これどうだろ。ちょっと色が暗いかな?」
杏子「無いだろ……」
さやか「いやいや。お、これいいんじゃない。髪の紅色が綺麗だから、こういう白っぽいののほうが」
杏子「合わないって……」
さやか「あーもー、あんたはちょっと黙ってなさい、とりあえず嫌だとしか言わないっぽいし」
杏子「ううう……」
さやか「よし、ちゃんと着て見て確かめた方がいいね」ガサガサ
杏子「えっ」
そういって、さやかは随分沢山の服を手に抱え始める。
さやか「すいませーん、これ試着しても大丈夫ですか?」
「はい、どうぞ。試着室はこちらに……」
杏子「おい待てって」
さやか「いいからいいから」グイグイ
杏子「何が良いんだよぉ……」ズルズル
141 :
甘酸っぱいなおい
大好きです
142 = 1 :
「ありがとうございましたー」
店から、満足そうな笑顔のさやかと、真っ赤な顔でうつむいた杏子が出てきた。
さやか「ふぃー、やっぱあんた何でも似合うわ。決めるのにこんなに時間がかかるとは……」
杏子「恥ずかしくて死にそう……///」
さやか「そんな恥入る行為をしたつもりは全く無いんだけどなー」
杏子「店員とかぜってー笑ってたって……」
さやか「何でそんな被害妄想に陥ってんのよ……もうっ」
ギュッ
うつむいたままの顔を、柔らかく抱きしめる。
杏子「ぅわっ……」
さやか「このさやかちゃんがあんたはかわいーって言ってるのにさ、信用できないの?」
杏子「それ……は……」
さやか「………杏子さ、自分で着飾るの避けてるでしょ?」
杏子「え………?」
143 = 1 :
さやか「いっつもさ、買い物に出かけても、あたしの趣味に合わせて見て回ってるばっかりで……。
ちょっと似合いそうなの見つけても、『あたしはいいから』って言うだけでさ」
杏子「………」
さやか「ま、理由はあるんだと思う。魔法少女の事とか……生活のこととか……いろいろね」
杏子「ああ………」
さやか「……でも、女の子だもん。本当は、もっと綺麗な服とか、着たいと思わない?」
杏子「………」
さやか「あんたを笑う奴なんて、本当はどこにも居ないよ。変な負い目みたいの感じてないでさ……。
もっと、ムカつくぐらい自分に自信持ったっていいじゃん。そのほうが、杏子らしいよ」
杏子「そう……かな………」
さやか「仮に笑うような奴がいたら、あたしがぶっ飛ばすし。……ね?」
杏子「さやか……」
目を閉じ、膨らみかけの少女の胸に頭を預ける。
杏子「………ありがと」
さやか「………うん……」ナデナデ
144 :
すばらしいすばらしいよ
145 = 1 :
トコトコ…
杏子「……でも良かったのか? そんなん買って貰っちまって」
さやか「いいんだって、そもそもはあたしが着せたいだけだし。これから寒くなるから、値段下がってるしね」
杏子「そ、そっか………」
さやか「んじゃ、次は靴かなー。この服にブーツはちょっと合わないからね。よしレッツゴー!」スタスタ
杏子 (……くそ……まだ恥ずかしい思いが続くのか……///) トテテ…
そんな、いつもと違った買い物を楽しんでいる後ろから。
ヒョコッ
「おや、あれは……」
見覚えのある白い獣が、建物の影で二人を見つめていた。
146 = 111 :
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=21152692
こういうことか
147 = 1 :
――駅のホーム――
京都から特急を二つ乗り換えて、終着駅。
まどか「ついたー!」
ほむら「ようやく到着したわね」
マミ「京都から……大体新幹線と同じぐらいかかったのかしら」
ほむら「そうね、そのくらいだと思う」
先ほどに比べれば幾分小さな駅のホームを、三人並んで歩いていく。
マミ「結構な距離よね……随分遠くに来ちゃったみたい」
まどか「えへへ、わたしこんな遠くに来たのはじめてかも」
ほむら「マミが逃げられないように、出来るだけ離れたところを選んだのよ」
マミ「何で逃げる前提なのよ……」
まどか「もー。遠くに来た方が、いつもと違うって感じが出て良いよねーって話だったよ?」
マミ「ふふ、なるほどね」
148 = 1 :
ほむら「温泉に入るだけなら、結構近場でも…もっといい場所はあるのだけれどね。
今回はマミを日常から引っ張り出すのが目的だもの」
ほむら「後は、静かでこぢんまりしてたほうがいいかなっていうのもあってね……」
最後までほむらが3人分を握っていた切符を、駅員に渡す。
改札を通り、小さいながらも綺麗な駅舎を抜けると、広いロータリーに出る。
そろそろ傾きかけた日差しが、しだれ柳を綺麗に照らしていた。
まどか「わぁ……」
マミ「ここが……」
ほむら「ええ。ここが、歴史と文学、そして何より温泉の街……城崎よ」
149 = 1 :
ほむら「とりあえず旅館まで向かいましょうか」
トコトコ…
あたりをきょろきょろと見回しながら、何やらガイドのようなものを睨むほむらに付いて歩いていく。
二階から三階建ての古い建物が、しっかりと舗装されたアスファルトの両側を埋めている。
マミ (いいな。来たことも無いのに、なつかしい感じ……)
まどか「ねえねえ、泊まるとこまでは遠いの?」
ほむら「いえ、そんなに無いはずよ。駅の目の前から温泉街だもの……ほら、あそこ」
そう言って、駅のすぐ隣にある、ピラミッド型の随分大仰な瓦葺きを指さす。
ほむら「あれも……ええと、『さとの湯』って言うらしいわ。温泉よ」
まどか「へぇー、あんな駅の近くに……あ、ほんとだ書いてある!」
マミ「さすが、駅名に温泉ってついてるだけあるわね」
150 = 1 :
しばらく歩いていくと、小さな川に出くわす。
ほむら「ここを左で、まっすぐいけばいいみたい」
プァップァーッ
まどか「わっ」ササッ
ほむら「あっ、まどか!」
川沿いの狭い道を、人混みを散らしながら車が抜けていった。
ほむら「……あの車、あとで爆破してあげた方がいいかしら」チッ
マミ「あなたが言うと本気っぽいからやめて頂戴……」
マミ「それにしても、やっぱり連休だからかしら? 結構人が多いわね」
まどか「なんだか浴衣の人がいっぱいいるね……?」
ほむら「ええ、ここは外湯と言って、宿とは別にいくつかの浴場があるのよ。
だから泊まってる人はみんな、浴衣で街を歩くのが普通みたい」
マミ「へぇ、面白いわね……。浴衣が街の雰囲気に似合ってて良いじゃない」
まどか「わたしたちも着れるのかな?」
ほむら「旅館にあるはずよ?」
まどか「えへへ、楽しみだな……!」
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- キョン「あれっ?鶴屋さん、どうしたんですか?」 (655) - [54%] - 2009/3/14 17:15 ★★★×6
- まどか「マミさん、おはようのちゅーは?」 (135) - [53%] - 2012/4/7 12:45 ○
- シンジ「ミサトさんって黒が好きなんですか?」 (477) - [52%] - 2010/7/1 8:30 ★★★×6
- まどか「え?ほ、ほむらちゃん私が見えるの!?」 (881) - [51%] - 2012/1/24 0:15 ★★★×8
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