元スレまどか「えっ?マミさん連休の予定無いんですか?」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★
51 = 1 :
まどか「……行っても、いいんですよ? マミさん」
マミ「………え?」
まどか「温泉ぐらい、行ったって……いいんじゃない、かな」
マミ「……あのね、鹿目さん。それができない理由は前も言ったと思うけれど…私には譲れないことなの」
まどか「うーん……」
まどか「でも、マミさんは一人で戦ってるわけじゃない…ですよね?」
マミ「え……」
まどか「てへへ、魔法少女じゃないわたしが言うのもおかしいのかもしれないけど……」
まどか「ほむらちゃんだって、杏子ちゃんだって、居るんだもん。マミさんからしたら、ちょっと頼りないのかもしれない……
けどわたしは、とっても頼りになる友達だと思ってるんです」
マミ「……そうね。頼りにはしてるわ……お互いに」
まどか「だったら、もっと頼りにしたっていいじゃないですか。数日ぐらい、ほむらちゃんたちに任せてくれても……」
まどか「それは別に、見滝原を見捨てるとか、マミさんの努力を否定するとか、そういうことじゃないんじゃないかなって」
まどか「マミさん、なんだか一人で気負いすぎてるように見えて……不安なんです」
マミ「………」
53 = 1 :
マミ (まぁ、一日二日見滝原を空けたからといって、そもそも大した害は無いのでしょうけれど……)
マミ (……性格よねぇ、多分………)
マミ「うん………ありがとう。あなたの気持ちはよく分かったわ。……ふふ、たしかに気負いすぎていたかもしれない。
心配してくれたみたいで……悪かったわ」
まどか「なら…!」
マミ「でもその……考えさせてちょうだい? 今すぐ休まないと壊れる、ってわけでもないんだから。
自分でどうしようもないくらい疲れてるな、と思ったら……さすがに皆に迷惑がかかるものね。そのときはお願いするわ」
まどか「あ、う……はい……」
まどか (………)
数週前の夜を思い出す。
ほむらと歩く帰り道…突然の魔女の反応にかけつけてみると、
距離があったせいか、すでにマミがさっさと片付けてしまった後だった。
まどか (………この前)
声をかけようとして、異様な空気にいったん足を止めた。
街頭に浮かんだマミの顔は、なぜか…酷く焦りに追われているように見えたのだ。
まどか (この前、まさにそういう顔をしてたんだよ……? マミさん……)
55 :
これは全力で支援
マミさんマミマミ
56 = 1 :
――数日後――
ギィーッ パタン
マミ「ただいまぁー……」
ゴソゴソ パタン
マミ「うー、つっかれたー……」テクテク…
ボスッ
マミ「お布団……幸せー……」
マミ (全く…何なのよあの魔女、弾が当たらないったらありゃしない……無駄に時間かかっちゃった)
マミ (……佐倉さんの手を煩わせることになるとはね………)
マミ「とりあえず、お風呂……は……う………。面倒……」
マミ「でも入らないと……明日は………」
マミ「……あ。確か……明日って、祝日だったわよね……?」
ポケットから携帯電話を取りだし、ぼんやりと眺めて確認する。
57 = 20 :
1がんばるね
支援
58 = 1 :
マミ (また連休、そうだった、そうだった……)
マミ (先週は楽しかったわ……。みんな来てくれて、ゲームしたり……お夕飯を食べて……夜遅くまでどうでもいい話をして……ふふ)
マミ (……今回は特に約束もしてないし。明日は昼過ぎまで寝てもいいのよね)
マミ (疲れた……眠いよ………)
マミ「うん、寝ちゃえ……」モソ…
いつも通り、携帯電話をサイドテーブルに片付け、そのまま意識を手放す。
マミ (……ずっと夢を……見ていたい………)
マミ (何も悩むことのない……楽しい夢が良いな……)
マミ「……」スゥ…
マミ「……zzz」
59 = 1 :
―――――――――――
―――――
だだっ広い空間の真ん中、マミはぽつんと机に向かって座っていた。
マミ (のっぺりと広がった……魔女結界よりも、地味で、広くて、薄暗い場所……)
マミ (……前から、ずっと居るような……)
マミ (………? 首に……鎖が)
じゃらりと音を立てて振り向くと、筋骨隆々なボディを手に入れたキュゥべえが鎖のもう一方を握っていた。
反対の手には、しなやかな乗馬鞭を手にしている。
QB「どうしたんだいマミ? ほら、はやく仕事をしないと。痛い目に遭うよ」バシッ
マミ「ヒッ!」
床に向けて力強く振り下ろされた鞭の音に驚き、正面に向き直る。
と、目の前にもやはりキュゥべえが居て、遙か遠く彼方まで途切れぬ列を作っていた。皆同じ顔。
QB>2「よろしく頼むよ」
そう言われて渡される書面に、しなければいけない気がしてサインをする。
マミ (……そう……これが、私の仕事なのね……)
手を止めたら殴られる。書き損じたら痛い目に遭う。
夜が明けるまで、マミは重い腕でペンを走らせ続けた…
60 = 1 :
――翌朝――
遠く、大型の自動車が走る音が聞こえる。
マミ (ん……眩し……)
マミ (あー………うん。分かってた……。
……いい夢を見たいなぁと思った日に限って、ろくでもない夢見るのよね)
マミ (はぁ、日差しが結構強い……。………もう正午近く?)
寝る前と同じように、携帯電話を確認しようとして。
マミ (………え?)
その時点でようやく、頭が急速に覚醒していく。
マミ「んむ……むう? むむ………む!」
喋れない。
マミ (………え、ちょ……! 嘘でしょ!?)
マミ (手も……後ろ手に……!)
動けない。
マミ「あむー! うあーーーっ!!」
巴マミの2回目の連休は、彼女が知る限り最悪の目覚めで幕を開けた。
61 = 55 :
QBww
62 = 1 :
マミ (くっ、これはいったい……? どうなって……) モゾモゾ
完全には覚めていない頭を必死で動かす。
マミ (確かに昨日は……魔女退治から帰ってきて……そのまま寝た。間違いないわ)
マミ (あっ……! そういえば、玄関の鍵を閉めた……記憶が……ないような……?)
マミ (そんなまさか……。昨日、偶然……ちょっと気を抜いて、忘れただけ。
たった一度の過ちで、それでこんなこと、あるわけない)
しかし現実に、自室で身柄を拘束され、状況は分からないまでも窮地である。
マミ (……私が夜出歩くことを知っていて、目を付けられていた……?)
女子高生の一人暮らし。オートロックに防犯カメラで侵入しづらいマンションとは言え、
深夜に一人出歩く黄色い縦ロールの女の子が目立っていたことは否定できない。
マミ (ただ……それなら、外を出歩いてるときに狙われそうよね……)
マミ (いずれにしろ、わざわざこんなことをする人の目的と言えば………)
もちろん。性的なイタズラとしか思えない。
マミ (………い、いやっ! そんなの……いやよ!!)
マミ「はん……んぐうううう!」
叫び声を上げようにも、声は出ず、聞かせる相手も居なかった。
63 :
はんにんはQBだな
64 = 1 :
マミ (……あれ。足は……動くのね) モソモソ…ドテッ
少し冷静になり、身体の拘束はさほど厳しいものではないと知る。
マミは身体をうつ伏せに捻り、なんとか上体を起こしてベッドから降りた。
マミ (………部屋の様子は……特に変わってない)
とにかく逃げなければならない。
腕は縛られたままながら、両手を握っては開いてその自由を確認する。
マミ (うん、物は握れる。ドアは多分後ろ手でも空けられないことはない……。外に出れば何とか……)
マミ (……って! そもそもこんなの、リボン使えば何とかなりそうな気もするわね)
そうだ、私は魔法少女なのだから。
後ろがよく見えないので、一歩誤れば自分の身体にも被害が及ぶかもしれないが…
ともかくリボンを叩き付ければ自由になれそうではある。
マミ (それじゃ………。 ………? あれ?)
65 = 1 :
いつも通り、左手に力を込め、
マミ (んっ? ぬぬ……! このっ!)
得意のリボンが……
出てこない。
マミ (………! う……そ、こんなの……)
そしてようやく、最悪の可能性に気づく。
マミ (そんなわけない………)
そんなことがあってはならない。だからそんなことはありえない。
でも…確かめねば先へは進めない。
もういちど、今度はさっきよりもゆっくりと左手を開閉する。
明らかに、中指に指輪の感触は感じられなかった。
マミ (……嫌……嫌! 嘘だと言って!!) ドタンッ
唯一自由なその足を、苛立ち紛れに床へ踏み降ろした。
マミ (どうして……なんでソウルジェムが………!)
66 :
寝る前支援
67 = 1 :
ノソ… ゴソゴソ…
不自由な身体をなんとかねじり、ベッドの隙間や布団の中を探ってみるも……見つからない。
マミ (くっ、どこよ、どこにいったのよ!?) ボスッ
泣きそうな顔を布団に沈める。
マミ (あ……でも動けるから……多分、この部屋のどこかにあるのね)
マミ (……理由は分からないけれど。ともかく誰かに隠されたということのようね……)
マミ (つまり部屋は離れられない。……誰か……助けを………)
マミ (………もう、一人で解決できる状況じゃないわよね……)
マミ (………携帯電話は)
サイドテーブルを振り向くも、
マミ (……はぁ、無いわね。ソウルジェム隠すぐらいだからあるわけがない)
マミ (そうだ………テレパシー。届く範囲に誰か………)
可能性は低いとは思う。それでも、何とかして助けを呼ばなければ、間違いなくマズいことになる。
マミ (頼むわよ………)
69 = 1 :
マミ『誰か! 誰かいませんか!?』
マミ『お願い、聞こえたら返事をして!!』
『………』
マミ (駄目……なの?)
マミ『お願い……暁美さん、佐倉さん、居ないの!? ねぇ………』
マミ『誰かあぁぁーーーっ!!』
『……っぁ………』
マミ『!! だ、誰? ねぇ、お願い! 助けてほしいの!』
『………』
マミ (あれ……今、何か聞こえたような気がしたけれど………)
マミ (………駄目ね。……距離が遠いのかな)
マミ (はぁ………)
途方に暮れて、その場にゆっくりとしゃがむ。
マミ (うっ………何なのよ………こんなの………やだよ………)
少しだけ、目を赤くしながら床を眺めた。
70 = 1 :
マミ (………)
ガチャッ ギギー バタンッ
マミ (!)
ぼーっとしていると、突然玄関の方から乱暴にドアを開ける音がした。
マミ (えっ、や、やだ、誰!?) ドテッ
驚きのあまりその場に尻餅をつく。
ガシャ… ドカドカ…
マミ (何よ、何なの!? 嫌、来ないで……!)
恐怖に目を見開き、音のする方を凝視する。
ガバッ
勢いよくリビングのドアが開いて…
ドタドタドタッ
マミ (…あ……)
迷彩服に身を包み、目出し帽を被り、ゴーグルをしていて目元すらわからない。
どこからどう見てもアブナイ人が4人、それぞれこちらに銃を向けながら、土足のまま侵入してきた。
72 = 1 :
震えながら、マミは4人を、4人はマミを見つめる。
コツッ…
マミ (ひっ…!) ビクッ
中央にいた一人が、ゆっくりとした足取りで前に踏み出す。
その一人は手に持った、明らかに場違いな可愛らしいクロッキー帳を開いて、
少しずつメッセージを書き始めた。
「おはよう、よくねむれたかい」
「きみにはこれから少し、ある場所までつきあってもらう」
「そのあいだ、決して、ぼくたちに逆らってはいけない」
「言うことをきかないなら、きみはこの大切なゆびわを失うことになる」
そのメッセージと共に、迷彩服の一人が開いた手の中には、
昨日まで左手中指にあったはずの……少女の魂が握られていた。
マミ (そんな………)
73 = 1 :
メッセージは続く。
「わかってもらえたかな?」
促すようにクロッキー帳が鼻先へと突きつけられ、
マミは何度も何度も、深く頷いて肯定の意を示した。
「守ってもらいたいのは、二つだけ」
「ぜったいにしゃべらないこと、静かについてくること」
「それができなければ、ソウルジェムはこなごなにしちゃう」
「いいね?」
頷くマミ。
すると、迷彩服はお互いに目配せをした後、ゆっくりとマミに近づいてきた。
マミ (……っ!)
恐怖に後ずさりそうになるのを何とかこらえる彼女に、
まずはそっと目隠しがかけられた。
74 = 1 :
マミ (あ……)
念入りに光が入って居なさそうなことを確認されると、次に口のガムテープがはがされ、
噛まされていた轡が外される。
マミ「う…んぐ………ぷはっ……」
マミ (あ、よだれが……)
飲み込むこともままならなかった唾液が口から垂れる。
4人のうちの誰かが、それをハンカチで静かにぬぐった。
マミ (……? 耳栓?)
耳の穴に何か柔らかいモノが詰められ、
上から何かヘッドホンのようなものを被される。
これで、マミは何も見えず、何も聞こえなくなった。
マミ (これは……上着……?)
マミ (…! 腕……)
最後に仕上げとばかりに多分……コートのような上着を羽織らされ、
二の腕を優しく握られる。
そのまましばらく待っていると、やがて立ち上がるよう促され、
マミは左右の腕を引かれながら自分の部屋を後にした。
75 :
サプライズならやりすぎワロタ
76 = 1 :
ゆっくりと、少しずつ歩を進める。
ともかく言う通りにするしか無い。引かれるままに歩いていく。
見知らぬ四人組の恐怖よりも、何も見えず聞こえないまま歩かされる恐怖が勝る。
マミ (っとと……転びそう)
マミ (まだマンションの中……よね。これは)
マミ (……あ。この感覚は……エレベーターを下ってるのね)
マミ (降りた……。誰か、住人の人が通報してくれたり……しないかな)
マミ (…っ! え? え?)
急に強く制止された。ぽんぽん、と背中を叩かれ、なぜか右足首が掴まれ前に引かれる。
それに併せてそっと足を出して確認すると、どうやら段差があるようだ。
マミ (……? 障害物の合図……ってこと?)
とりあえず理解の意は示した方が良いのだろうか?
ちょっと迷ったあと、マミは姿の見えない相手に頷いて見せた。
77 = 55 :
なんか優しいなw
78 = 1 :
しばらく歩いて、
ガンッ
マミ「ぃ゙つっ……!」
また障害物の合図があったので、足を前に出してみたら、何かとがったものにスネを打ち付けてつい声が漏れる。
マミ (あ、あ、や、……やっちゃった?)
喋ってはいけないと言われたのに。
マミ (やだ……殺され……!)
少しぐらいなら、見逃してくれないかな。見逃して。お願いだから。助けて。
マミ (……!)
…身を固くして震えていると、
マミ (…え…………)
打ち付けたスネを優しく撫でられた。
マミ (……ほっ)
見逃して貰えたようだ。
犯人は、冷静な相手らしい。
79 = 55 :
すまん支援任せた・・・
80 = 1 :
しかし、安心してばかりもいられない。
今度はそっと、先ほど足を打ち付けた障害物に触れてみる。
マミ (………? ……これは………)
マミ (もしかして、車……?)
靴ごしの感覚でも、大まかなかたちを辿ると、
どうも打ち付けた相手は自動車のフレームだったことが分かってきた。
マミ (これに乗ったら、もう……)
終わりかもしれない。でも、乗らなければ助かるわけでもない。
半ばヤケな気分で、そっと車のドアをくぐった。
マミ(っと……。あ、左右を固められてるわね………)
マミ(多分、後部座席の真ん中……)
目も耳もふさがれているせいか、嗅覚ばかりが妙に鋭くなる。
押し込められた車内のタバコくさい空気に混じって、やけにどぎつい香水が匂う。
マミ (何だろう。甘ったるい花の香り……)
81 = 1 :
時折止まったり、曲がったりする感覚はあるけれど、どちらにどれだけ走ったかなど見当もつかない。
5分も経ったあたりで、マミは外の情報を得ようとする無駄な努力をやめた。
マミ (………何も、されないからかしら……だいぶ落ち着いてきた)
マミ (私……これからどうなるんだろう)
マミ (……そもそも……いったいこの人たちは何者なのかしら)
マミ (ソウルジェムが奪うに値する大事なモノだと分かっていると言うことは、
魔法少女について知っている……それも、並の魔法少女よりもよく知っていると言うこと)
マミ (……本当に、あるのかしら。魔法少女について極秘に調査を行う機関のようなものが)
マミ (政府レベルでは宇宙人との密約が出来ているという話も……。
まさかキュゥべえ達も、実はそういうかたちで知られているとか……)
マミ (……駄目ね………こんな時なのに……非現実的な話に逃げたくなる)
マミ (……これが全部、私の妄想だったら良いのに………。
ぱっと変身して、あっという間に悪を退治するような、白昼夢の中なら良いのに……)
マミ (現実は……ただただ怖いばかり………)
マミ (……お母さん………)
82 = 1 :
途中、たまにテレパシーを飛ばして徒労に終わることを繰り返しながら、1時間も経っただろうか。
どこかに車が止まり、外へ出るよう促される。
マミ (結構、走ったわね………)
マミ (どこだろう……。人気のない山の中………? という感じでも………)
マミ (……あ! これ……コーヒーの匂いがする)
マミ (……喫茶店?)
マミ (いや……それだけじゃないわね……何だろう、おいしそうな匂い……カレー……? いろいろ……) スンスン
マミ (っとと、階段……)
マミ (おなか、すいたな………)
そのまま歩き続け、何度か階段の上り下りを繰り返し、またしばらく歩いたところで立ち止まらされた。
時折やけに……強い風が吹く。
顔にも日差しが当たっているらしく、暖かい。
マミ (今度は……何するのかしら………)
83 :
おなかすいてきた…
84 = 1 :
マミ (………あっ)
4度目ぐらいの強い風の後、腕を引かれてまた歩き出した。
マミ (これは……部屋? に入ったみたい……)
マミ (わ、なんだか……狭い通路……?)
マミ (何ここ、彼らの隠れ家か何かじゃないでしょうね)
やけにつるつるした床を歩く。
マミ (あ……椅子? 座らされた)
マミ (……んっ……。……あれ? え……!。手の縄が……外された……)
マミ (えっ、ということは……本当に目的地? もうついたの……?)
マミ (そんな……やだよ……。これから……私何されるの……?
人体実験とか……拷問とか……そんなのされるの……?
助けてよ……。誰か助けて………!)
最悪の行く末ばかりが頭に浮かんでくる。
縄を解かれたのに腕をそのまま後ろに置いたまま、がたがたと震えていた。
85 = 1 :
すると、次にヘッドフォンが外された。さらに耳栓も抜き取られると、しばらくぶりに音が流れ込んでくる。
低く唸る機械音の中に、籠った喧噪が聞こえてきた。
マミ (え……? 何か……賑やかな場所ね)
聴覚の開放感を楽しんでいると、耳の後ろ、アイマスクのゴムひもにも手がかけられる。
ずっとつけていたせいか、少し耳の後ろがひりひりとしている。
マミ (………)
現状を確認するのが怖い。目で認識した現実に絶望してしまいそうで怖い。
その気持ちを知ってか知らずか、アイマスクを外す手はとてもゆっくりとした動きだった。
そして……
マミ (…眩し……)
慣れていない強い光を急に浴びて……
まぶしさに目を細めながらも次第に視界がはっきりしてくると、
ほむら「ふふ、おはよう、マミ。気分はどうかしら?」
まどか「ウェヒヒヒ…おはようございます、マミさん!」
目の前の座席で、良く見知った二人のいたずらっぽい笑顔が出迎えた。
86 :
マミかわいいよマミ
87 = 1 :
マミ (…………え?)
マミ「……? いったい………」
マミ「ど、どういう事………」
呆気にとられて固まっていると、空気の抜けるような音が聞こえたあと、ゆっくりと窓の外の景色が動き出した。
ほむら「……さすがに混乱が激しいようね」
まどか「やっぱり、やりすぎちゃったかな…? あはは……」
ほむら「要するに、ドッキリよ。プラカードまでは用意してないけれど」
まどか「実はマミさんは、タクシーに乗って駅に来ただけなのでした!」
無邪気にネタばらしをする二人を見て、ようやく……総計1時間余り続いた緊張の糸が途切れた。
88 = 1 :
マミ (………何だ。そっか。そうだったんだ)
マミ「………そっか……」
マミ「……良かった………本当に……良かった………」
まどか「え、あ、マ……マミさん?」
ガバッ
突然両手を大きく広げ、マミは対面の二人に勢いよく抱きついた。
まどか「わわわっ」
ほむら「あえ、ちょ……」
89 :
ほ
90 = 89 :
マミ「うわあああああううう……えぐっ……本当に……怖かったんだから……」
マミ「ひくっ……このまま………死んじゃうかと思ったんだから……」
マミ「もう……ひくっ………みんなに会えないかと………思ったんだから………!」
まどか「あう、ご、ごめんなさいっ! マミさん!」
ほむら「……悪ノリしすぎたことは謝るわ」
マミ「……私どうなるのかって………心細くて………」ズズッ
マミ「……でも、良かった……うっ………」
まどか「………」
ほむら「………」
互いに目配せるまどかとほむら。
マミ「良かったよう………えぐっ……」
そのまま泣きじゃくるマミを、二人もまた優しく抱き返した。
91 :
言いたかないが明らかにやり過ぎwww
92 = 75 :
どっちでもいい完走してくれ
93 = 89 :
マミ「………ふぅ」
まどか「え、えと………」
ほむら「落ち着いてもらえたかしら……」
マミ「うん……。恥ずかしいとこ、見られちゃったな」
まだ赤い目で微笑む。
まどか「ごめんなさいマミさん、わたし、えっと、そんなに怯えるなんて、思わなくて……」
ほむら「ええとその……立案者はさやかで……」
まどか「はいそこ、人のせいにしないで謝るのっ」ペシッ
ほむら「………すみませんでした」ペコッ
いつも通り他愛のない会話を続ける姿に、ようやく、今までの恐怖が夢だったのだと実感できてきた。
マミ「ふふ……ふふふふ……」
ほむら「……マミ?」
マミ「あーあ。……可笑しっ」
マミ「………それじゃ。なんでこんなことをしたのか、聞かせてもらいましょうか」
94 = 89 :
ほむら「……あなたが、頑固すぎたからよ」
マミ「頑固? 私が?」
まどか「そうです……。マミさんは、絶対疲れてました」
マミ「………疲れ?」
ほむら「自分じゃ分かってなかったようだけれど。特に最近、周りから見たら……明らかに顔色が変だった」
マミ「そう………かしら」
まどか「勘違いなら良かったんですけど、何度かおかしいなって思って……」
ほむら「4人が全員、同じ意見だったわ。特に魔女を倒した後が酷かった……何かに追われているような表情で」
マミ「………」
マミ (……そう……なのかな)
まどか「だから、みんなで話し合ったんです。マミさんを休ませて、旅行に連れて行こうって」
まどか「そしたら疲れも取れて、元気なマミさんになってくれるんじゃないかなって……」
マミ (……そんなに、心配かけてたんだ………)
95 = 89 :
ほむら「だから旅行の話を振ってみたんだけれど、きっぱりと断られちゃったものだから……。
その意思自体があなたを疲弊させていたようだったし、どうしようもなくなって」
まどか「それで……もう力づくでも連れて行くしかないって話になって、みんなで今日の計画を立てたんです」
マミ「そう、4人の共犯だったのね……。たしかに私の部屋に来た変質者も4人だったわね」
まどか「ティヒヒ、文字を書いていたのがわたしですよ」
ほむら「ソウルジェムを持っていたのが私……って、返してないわね。はい」
そういって、自分の手に嵌めていた指輪の一つを抜き取り、マミの手を取って持ち主の指に戻す。
マミ「あ……。ありがとう」
マミ (……奪われたぐらいじゃ実感できないわよね、これが魂って………)
マミ「………あれ。ええと。つまり、今までの話をまとめると……
私を無理矢理旅行に連れて行くのが目的?」
ほむら「そうよ」
マミ「………じゃあ、やっぱりこの今乗ってるのって……新幹線だったりする?」
まどか「その通り!」
マミ「……はえ、ちょっと待ってよ、突然すぎるわよ! それじゃ……見滝原はどうなるのよ!」
96 = 75 :
俺が守る!
97 = 52 :
いやいや俺が
98 = 89 :
ほむら「落ち着いて。貴女の心配がもっともなことは、私たちも分かっているわよ」
マミ「だったら!」
ほむら「だから、ここには3人しか居ないのよ」
マミ「………え?」
まどか「さやかちゃんと杏子ちゃんは、居残り組なんですよ」
マミ「……そういえば、居なかったわね、二人。……でも、二人だけ置いてけぼりなんて悪いじゃない」
ほむら「良いのよ。あの二人にはこの連休中、代わりに私の家を貸してあるから。
杏子はマトモな家がないし、さやかも親が居るからあんまり自由に出来ないし。
二人で好きなだけイチャコラ出来るって事で、結構喜んでいたわ」
まどか「ティヒヒヒ……素直じゃなかったけどねっ! 二人とも!」
マミ「……そういうことね」
ほむら「だから、この連休中だけは魔女のことを忘れて。ちゃんと二人が代わりに守ってくれるから」
まどか「今の杏子ちゃんなら……大丈夫ですよ。さやかちゃんと友達になってから、すごくいい笑顔になったもん」
ほむら「二人がお互いの手綱握ってれば、そう面倒なことは起こさないでしょう」
マミ「ふふふ。そう、ね」
マミ (確かに、昔みたいに素直に笑ってたわね……)
99 = 89 :
マミ「……私、旅行の準備してないんだけれど。昨日の制服のまんまだし」
まどか「それなら問題ないです。ちょっと急いじゃったけど、着替えとかいろいろ……」
頭上の網棚を指さすまどか。見上げると、見知った自分の鞄が顔を覗かせていた。
あんな大きな鞄を使うのはいつ以来だろうか。
マミ「………うーん………。……あ、じゃあ旅費はどうなってるのよ、旅費は」
ほむら「心配には及ばないわ。貴女の分は、皆で分け合って出したから」
まどか「えへ、結構ほむらちゃん頼りではあるんですけど……」
マミ「え、ちょっと、それこそマズいじゃない。後輩にそんなお金出してもらうわけには……」
ほむら「いいのよ……来月、あなた誕生日じゃない。ちょっと早いけど…プレゼントだって思ってちょうだい」
マミ「えっ? あ、私の誕生日、来月だっけ……。忘れてた。よく知ってたわね」
まどか「あ、それなら前にほむらちゃんがマミさんの部屋を漁って生徒手cモゴッ ムガモゴッ ジタバタ
ほむら「……」
マミ「なるほど? ……これはあなたへのペナルティで良さそうね……?」
ほむら (え、な…何をされるのかしら……) ドキドキ
100 = 89 :
マミ「何かもう聞いても無駄な気がしてきたけれど……。親御さんの許可は?」
まどか「それなら、『ああ、あの先輩が引率なら大丈夫そうだな』って……」
マミ「そういえば、ガーデンパーティにお呼ばれしたときに良くしてもらったわね」
マミ「他には………」
マミ (………思いつかない。うん……)
マミ「………参ったわ」ハァ…
ほむら「ふふ、逃げられないわよ。外堀はほぼ全て埋めてある」
マミ「……ふう。分かったわ、負けました」
マミ「せっかくの旅行だものね。たまには……魔法少女稼業を忘れて楽しみましょう」ニコッ
まどか「マミさん!」
マミ「……それと、その………」
マミ「本当に…ありがとう。心配かけて、ごめんなさい」ペコリ
まどか「あわ、そ、そんな、謝らないといけないのはわたしたちっていうか……」
ほむら「そうね。もっと『ふん、ま、わざわざ用意したっていうなら……勿体ないから、仕方なく行ってあげるわよ』みたいな態度でも良いのよ?」
マミ「何でそんなツンデレキャラにならなきゃいけないのよ……」
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