元スレ一夏「たとえ、この想いが届かなくても――」
SS覧 / PC版 /みんなの評価 : ★★
252 = 97 :
よけ
253 = 114 :
こんなに綺麗なSSは久しぶりだ
254 = 40 :
――――寮・寮長室
千冬「認めたくないものだな、自分の若さゆえの過ちとは…」
山田「はい?」キョトン
千冬「いや、いい」
山田「では、以上が明日からの予定です」
千冬「あぁ、ご苦労だったな。戻って休んでくれ」
山田「はい。では、お疲れ様でした」
バタンという音を立てて、扉が閉まる。
先ほどまで、山田先生が説明してくれた明日からの業務内容は、全く頭に入っていなかった。
(やれやれ、これではまた、読み直さなくてはな)
255 = 40 :
そう思いつつも、思考は拘泥する。
弟を育てることが私のすべてだった。
そのために、必要と思えることはすべてやってきた。
とりわけ女尊男卑の風潮が強まる昨今、身内に時代を代表するようなモンド・グロッソの覇者がいれば、
親がいないことを馬鹿にされぬ程度の名誉は手に入るだろうと考えた。
だが、その行き着きた先が一夏の誘拐であり、私のドイツへの赴任か…
結局は、私の選択が一夏を一人にさせてしまった。
己の若さと浅学を言い訳にしても許されるものではない。
256 :
何このSS
すげえな
久々にレベル高いやつ読ましてもらうよ
257 = 40 :
―コンコン
千冬「はい?」
一夏「俺です」
千冬「ッ……」」
一夏「織斑先生、入ってもいいですか?」
千冬「あ、あぁ。入れ」
ゆっくりとドアが開き、一夏が入ってくる。
自分の顔が強張っているのを感じる。
私は恐れているのだ。
己の全てを懸けてきた存在に疎まれることを。
たった一人残った肉親に嫌われることを。
一夏「千冬姉…」
千冬「…どうしたんだ、一夏?」
258 = 40 :
きたーーーーーーーー
259 :
最初のほう読んでて不安だったけど
期待通り千冬姉√のようで安心した。すごく安心した。
260 = 40 :
あぁ・・・・す、すみません…
261 :
全員にフラグ立ててどうすんだよ
先が読めない
262 = 256 :
いい感じに想像かきたててくれて読んでるほうも楽しいな
263 = 40 :
一夏「俺…、謝らなくちゃいけないと思って。
俺が、今の俺があるのは、千冬姉のおかげだから。千冬姉が守ってくれたおかげだから。
だけど、そんな千冬姉にひどいことを言ってしまった。
だから、俺、謝りたいんだ。
――昨日はひどいことを言ってごめんなさい」
千冬「ッ、そんな、お前が謝ることではない。悪かったのは私の方だ。私がもっと家にいて、
お前と一緒にいてやれれば、もっとお前を理解してやることができた。あれは私の失態だ」
一夏「……ねぇ、千冬姉、覚えてる?
ずっと昔、千冬姉が俺の『お母さんにも、お父さんにもなってやる』って言ったこと」
千冬「…あぁ。(忘れるはずがない。だから私は――)」
264 = 40 :
一夏「あのときの言葉。凄く嬉しかった。あれから千冬姉のことを、まるで厳しくて頼りがいのある父親で、
優しくて暖かな母親だと思えるようになったんだ。
でも、一つだけ気掛かりがあったんだ。
千冬姉は、父親であり、母親であり、姉であり、俺の家族。
でも俺のために一人で二役も買って出て、姉としての、一人の女性としての織斑千冬はどこにいるんだろうって。
千冬姉はそれを不満に感じていないんだろうかって」
千冬「その程度のこと――」
一夏「うん。千冬姉はきっとそう言うと思ってた。でも、俺は…凄く怖かった。
折角、織斑千冬という個人で生きれるはずだったのに、俺が誘拐なんてされたせいで、それが台無しになったこと。
そしてその後、俺から離れるようにドイツに行ってしまったこと。
…実はね、千冬姉がドイツに行った時、もしかしたら、俺は捨てられるんじゃないかって思ったんだ」
266 = 40 :
千冬「なっ……」
一夏「足手まとい、個人として生きるためには俺は邪魔なんじゃないかって。
だから行ってしまったんじゃないかって。
俺のたった一人の肉親は、俺の全く知らない、遠くの土地へ。
そう考えると、堪らなく怖くて――」
一夏「だから、千冬姉がドイツから帰ってきてくれた時は、涙が出そうなぐらい嬉しかった。
俺は捨てられていなかったんだって実感することができたから。そして思ったんだ。
もう二度と、不安にならないように、足手まといにならないように、強くなろうって。
俺が千冬姉を守ることができるぐらい、強くなろうって。
もう俺の心配をする必要がないぐらい、千冬姉が一人の女性として生きれるぐらい強くなろうって、
そう……決めたんだ。」
喉が渇きを訴え、足がガクガクと震えているのが分かる。
俺は、自分の言葉をきちんと吐き出せているだろうか。
今までの空白の期間を埋めれるような言葉を、俺と千冬姉の不安を消し飛ばせるような言葉を。
268 = 40 :
千冬「お前には話したことがなかっただろう。私たちの目の前からある日突然両親が消えた後のこと。
私は、どうすることもできない怒りに身を焼いた。
自分という存在が彼らにとって不要だという事実を受け止められず、哀しみに打ちひしがれた。
何日も、何日も泣いて過ごした。もう死んでしまいたいとすら思えた。だが――
―― 一夏、お前がいた
私に甘えてくる弟、泣いている歳の離れた姉を心配して見上げる顔、人懐っこく私を見つめる笑顔。
どれだけ私が救われたか、お前には分からないかもしれない。
だが、私はその時に決めたのだ。
この幼い弟のためならば、どんな苦難にも耐えてみせると。
私はな、一夏、お前に救われたんだよ。私がお前を守っている?とんでもない。
一夏……お前が私を守ってくれたのだ」
喉が渇きを訴え、足がガクガクと震えだそうとするのを必死で堪える。
私は、自分の言葉をきちんと吐き出せているだろうか。
もう二度と、愛おしい弟を不安にさせないための言葉を。
269 :
サルよけ
270 = 51 :
あ
271 :
頑張れば誰の話にでもできそうだな
今はメインラウラ、トゥルーEND千冬姉って感じ
途中までメインラウラ、トゥルーENDシャルちゃんだったのに……
支援
272 = 40 :
千冬「だから、お前が誘拐されたと聞いた時は、血の気が引いたぞ?
モンド・グロッソ如きがどうした。
私にとっては世界で最強になることなどよりも、たった一人の弟を守ることの方が比べるまでもなく重要だった。
たった一人の家族も守ることができない、世界最強などまるで意味がなかった。
お前が匿われている場所を提供してくれたドイツに行ったのは、そこにいけばお前を誘拐した組織の素性が分かると思ったからだ。
私は、私のたった一人の家族に危害を加えようとする連中を決して許すことができなかったからな。
だから、一夏。お前が心配するようなことは何もないんだ。
私は、あの時、お前を守ることができて幸せだ。
私は、お前が優しい子に育ってくれて幸せだ。
そして昨日も言ったように、いつかお前が、お前の愛する女性と幸せな家庭を築いてくれれば、本当にこれ以上ないぐらい、私は幸せだろう。
これまで精一杯の愛情を注いで、命を懸けてきて育ててきたのだからな」ニコッ
千冬姉が微笑みながら言う。
あぁ、この微笑みだ…
自分を安心させ、今まで守ってきてくれたのは――
千冬「だから一夏。私のことを心配する必要などどこにもないんだよ。
それとも何か?私程度の美貌では、寄り付く男がいないとでも思っているのか?」クスッ
273 = 261 :
ブラコンの千冬姉かわいい
274 = 256 :
(´;ω;`)
あれ?目かな変なお汁が
275 = 40 :
一夏「そ、そんなことないよ。千冬姉は美人だし…」
千冬「だろ?その気になれば、男など引く手数多で、両足の指を入れても数えきれん。
ただ残念なことに、その中に私を魅了するような男がいないだけだ」フフン
一夏「そんなこと言ってー生き遅れても知らないよっ!?」
千冬「要らぬ世話だ。今でも十分に幸せなのだからな」ニコッ
一夏「ん、もう!」カァー
千冬「そんなことより、お前の方こそどうなんだ?いるんだろ?惚れている女が」
一夏「なっ!?」
千冬「馬鹿者。気付かないとでも思ってるのか?私を誰だと思っている」ニッ
一夏「あは、あははー」アセアセ
277 = 40 :
千冬「まぁ、詮索はせん。どこの馬の骨かは知らんが――
――本気ならば、逃すなよ?」
一夏「へっ?」
千冬「当然だ。お前はできた姉を持つ身だ。そうすると、必然的に惹かれる女の質も上がり、数も少なくなる。
逃す魚の大きさ、見誤るなよ」
一夏「……うん」
千冬「お前はお前の、私は私の幸せを追っていけばいい。怖がることはない。
進む道は違えど、道は繋がっている。私たちは家族なのだからな」
一夏「――うん。ありがとう、お姉ちゃん」
278 = 261 :
いい姉だ感動的だな
280 :
>>278
だが二次元だ
281 :
>>280
それがどうした
282 = 40 :
―――――
一夏の様子が、今日はいつもとどこか違うことはすぐに気がついた。
そしてその原因を推し量ることも、そう難しいことではなかった。
でも、自分には何ができるのか。
自分のしたことが正しかったのかどうかさえ
『僕』には分からなかった。
284 = 123 :
深いな
285 :
これはシャルか?
286 = 40 :
――――寮・シャルとラウラの部屋
シャル「はぁ…(余計なことをしちゃったかな…でも、一夏、織斑先生と仲直りできたかな?)」
一体、一夏の何が、僕をこれほどまでに強く惹きつけるのだろうか。
コップの中に、想いが満ちていくのを感じる。
シャル「いち―――か」
一夏は今何をしているだろう?
何を考えているだろう
僕の心は一夏の立ち振舞い、言動で、こんなにも簡単に揺り動かされてしまう。
きっと、想いがたくさん、たくさん入っているから、ちょっとした振動でもすぐに溢れてしまうそうになるんだ。
287 = 40 :
一夏の暗い顔を見たくはなかった。
一夏が苦しそうな顔をしているときは、それを取り去ってあげたいと思い、声をかけた。
いつか彼が僕にそうしてくれたように
僕も彼の苦しみや哀しみを癒すことができたなら、たとえこの想いが彼に届かなくても
少しも寂しくなんてないんだ。
うん。少しも――
ラウラ「なんだ、シャルロット。帰ってきてたのか?おかえり」ニコッ
シャル「うん、ただいま。ラウラ」ニコッ
ラウラ「シャワー、先に使ったぞ。お前も浴びてくるといい」
シャル「うん。じゃあ、そうしようかな」
ラウラと入れ違いに、シャワールームに入る
室内はまだしっとりとした湿気を含んでいて、微かに薫るボディーソープのいい香りがした。
一糸纏わぬ姿になり、頭からお湯を浴びてる。
ふっー、と息をつき、目を閉じると先ほどのラウラの笑顔が浮かんできた。
288 = 261 :
千冬姉終了
289 = 40 :
最近、ラウラが笑うことが増えた。
きっとそれは一夏のおかげだ。
一夏には不思議な力がある。
人を暖かく、守ってくれるような…そんな力
僕を暗闇から引き上げ、ラウラを先に導いてくれるような、そんな優しい力
僕では力が足りず、ラウラをここまで笑わせてあげることはできなかっただろう。
だから僕は、僕の大切な、大好きなラウラを笑わせてくれた一夏が大好きで、
僕の大好きな人の力を借りて、より一層明るくなっていくラウラを見るのが大好きだった。
そう、だから僕は――
もし二人の想いが重なってくれれば、これ以上の幸せはないって、本当にそう思うんだ。
290 = 198 :
完
291 = 40 :
――
シャル「気持ちよかった~」
シャワーを終え、浴室から出てきたシャルはラウラと向かい合う形でベットに腰掛ける。
髪はまだ濡れていて、濡れる髪の先端をバスタオルで押さえている姿を、綺麗だとラウラは思った。
ラルラ「今日はやけに遅かったのだな。何か用事でもあったのか?」
シャル「う、うん…少し…山田先生に頼まれた用事をしてたんだ…」
心がズキリと痛むのを感じる。
大切な友達に、嘘はつきたくない。
だけど、余計な心配はさせたくなかった。
(僕は、ラウラも一夏もどちらも大好きだから…)
ラウラ「…そうか。なぁ、シャルロット?」
シャル「な、なに?ラウラ」
292 = 40 :
ラウラ「私は、お前と会えて、知り合えてよかったと思っている」
シャル「えっ?ぼ、僕と?」
ラウラ「うむ。私は、現状の私であることに不満は感じていないが、他の女子と比べて種々の物事に無知であることは承知している。
そして、できればその無知を少しずつでも埋めていければいいと思っている」
シャル「うん」
ラウラ「そして、お前は他の女子と比較しても遜色ない知識と感性を持っている。
私はそれが少しだけ羨ましく思う。
私はずっと謎だったのだ。どうして、それほどまでに違う私に話しかけてくるのか。
人との付き合いの経験の浅い私は、おそらくお前にきつく当たってしまったことも少なくないはずだ。
それでも、お前はずっと傍にいてくれた。ドイツの冷氷と呼ばれた私を暖かくほぐしてくれたのは、
他でもない、一夏でもない、お前だった。シャルロット」
ラウラがそんな風に考えていてくれてるなんて、初めて知った。
自分を大切に思ってくれる人がいるという事実が、ただ単純に嬉しかった。
293 = 40 :
ラウラ「だから、そんなお前を、私が苦しめてしまっていることがとても哀しい」
シャル「なっ…何を言ってるんだよ、ラウラ?僕は苦しんでなんか――」
ラウラ「ならば、なぜ嘘をつく?」
シャル「えっ…」
ラウラ「苦痛を感じていないならば、どうしてそんなに泣きそうな顔をしている?
どうして、山田先生に頼まれた用事があったなどと嘘をつく?
どうして、ISの整備があるなどと言って、私だけを一夏と外出させる?」
シャル「なっ、なんで――」
ラウラ「気づかないとでも思ったか、馬鹿者。私にとって、男の中で最も大切な存在が一夏ならば、
女の中で最も大切な存在はお、お前だ…
お前が嘘をつけばすぐ分かるし、お前が哀しんでいても、すぐ分かる
お前は私の、と、友達だからな」カァー
言葉が出ない、出せない
295 = 285 :
あれやねキュンとくるね
296 = 256 :
>>295
だ、だよな・・・
297 = 40 :
シャル「ぼ、僕は…」
ラウラ「シャルロット、お前は一夏とよく似ている。
自分のことよりも、他人のことを優先する。
自分の幸せよりも、他人の幸せを願う。
お前は優しく、自分が傷つくことを厭わない。
私には……それが辛い」
シャル「……」
ラウラ「お前が私の幸せを願ってくれるように、私もお前の幸せを願っている。
だから、お互いが正しいと進む方へ進めばいい。
心配するな、シャルロット。
私たちは友達だ。一度交わることができたのだ。どこまで行っても、その道は私と繋がっている」ニコッ
ドクンと大きく胸を打つ鼓動が聞こえる。
ラウラの言ってくれたことがただただ、嬉しくて…
そして、辛かった。
シャル「あ、ありがとう……少し、夜風に当たってくるね」
今は、今だけは、ラウラの顔を見るのが怖かった。
見た瞬間に、泣いてしまいそうな気がしたから――
298 = 40 :
すみません!少しだけ落ちます。すぐ戻れると思います><
299 = 285 :
待ってるよ
300 :
わかってくれる友達って良いよね
みんなの評価 : ★★
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