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元スレキョン「お前、誰だ?」
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携帯電話が鳴った。
どうやら意識を失っていたらしかった俺は、その振動で目を覚ました。
あたりを見回すとそこは見慣れたにも程がある自分の部屋で、俺はベッドの上に居た。
時計の針は午後5時40分を指している。
はて。
俺はどうしてベッドの上なんかに居るのだろう。
携帯電話はまだ手の中で震えていた。
画面の名前を確かめてみると、そこに表示されていたのは俺の知らない名前だった。
『古泉一樹』
……誰だ?
見たことも聞いたこともない名前だった。多分、男だろう。
目を閉じて思考するも思いつかない。電話帳に登録した覚えもない。
しかし、こうして表示されているということは登録したからであろう。
では、どうしてその覚えがないのか。
考えている間も電話が切れることはなかった。
しつこいやつだな。そんなに俺と話がしたいのか。
しかし相手は知らない奴だ。素直に出てしまっていいものだろうか。
躊躇った俺は、あと10数えても電話が切れなかったら通話ボタンを押すことに決めた。
3数えたところで、手の中の携帯電話が静まった。
諦めてくれたか。
俺は安堵し、携帯電話を枕元へ置こうとした、が。
いや、待て。ここで確かめておいたほうがいいのではないだろうか。
再び携帯電話を手に取り、俺は電話帳を開いた。
思ったとおりだ。
そこには「古泉一樹」以外にも俺の知らない名前が幾つかあった。
朝比奈みくる
涼宮ハルヒ
長門有希
履歴を見るとよく電話をかけているらしかった。
特に涼宮ハルヒ。
こいつとは昨日も電話したばかりらしい。俺はそんな奴記憶にないんだがな。
もちろん通話した覚えもない。どうなっているんだ、これは。
他にも幾つか知らない名前があった。
いや、ひとつだけ知っている。
朝比奈みくる、ってのはもしや同じ学校のひとつ上の先輩の、朝比奈みくるさんのことだろうか。
名前は知っている。顔もなんとなくだが見たことがある。
確か谷口がギャーギャー騒いでいた気がするな。この学校のアイドルだなんだってな。
電話帳を見ている最中に、また電話がかかってきた。
さっきと同じ、「古泉一樹」からだ。
涼宮ハルヒ
長門有希
履歴を見るとよく電話をかけているらしかった。
特に涼宮ハルヒ。
こいつとは昨日も電話したばかりらしい。俺はそんな奴記憶にないんだがな。
もちろん通話した覚えもない。どうなっているんだ、これは。
他にも幾つか知らない名前があった。
いや、ひとつだけ知っている。
朝比奈みくる、ってのはもしや同じ学校のひとつ上の先輩の、朝比奈みくるさんのことだろうか。
名前は知っている。顔もなんとなくだが見たことがある。
確か谷口がギャーギャー騒いでいた気がするな。この学校のアイドルだなんだってな。
電話帳を見ている最中に、また電話がかかってきた。
さっきと同じ、「古泉一樹」からだ。
>>4
ありがとう
気づいたら俺は通話ボタンを押してしまっていた。
しまった。
慌てて電話を耳元へ持っていくと、向こう側から男の声がした。
『こんばんは、古泉です』
声を聞いてもやはり心当たりはなかった。
やけに爽やかなトーンで話すその男は、口調からして俺と親しい関係らしい。
『涼宮さんから聞きましたが、今日早退なされたそうですね』
早退?
『あなたが早退だなんて珍しいので、なにかあったのかと思いましたよ。どうかしたのですか?』
待て、俺は今日早退した覚えなんてないのだが
『……何を言っているんですか?涼宮さんがとても心配していましたよ』
ありがとう
気づいたら俺は通話ボタンを押してしまっていた。
しまった。
慌てて電話を耳元へ持っていくと、向こう側から男の声がした。
『こんばんは、古泉です』
声を聞いてもやはり心当たりはなかった。
やけに爽やかなトーンで話すその男は、口調からして俺と親しい関係らしい。
『涼宮さんから聞きましたが、今日早退なされたそうですね』
早退?
『あなたが早退だなんて珍しいので、なにかあったのかと思いましたよ。どうかしたのですか?』
待て、俺は今日早退した覚えなんてないのだが
『……何を言っているんですか?涼宮さんがとても心配していましたよ』
いや待て。
慌てて記憶を辿ってみる。
俺は今日もいつもどおり普通に登校して、普通に授業受けて、普通に飯食って……
あれ?
どういうことか体育の授業の前に着替えた後のことが思い出せなかった。
確かに昼休みに体操着に着替えた覚えはある。
しかし体育の授業を受けた覚えがない。どういうことだ?
『どうしました?』
しばらく黙っていた俺を不審に思ったのか男は電話口で心配そうに、
いや、落ち着け俺。そもそもだな、
「お前、誰だ?」
『……失礼ですが、寝ぼけていらっしゃるのですか?』
寝ぼけてなんかいない。
「本当にお前のことを知らないんだ。お前の言っている涼宮、って奴のことも俺は知らない」
『…………』
「だがな、なぜかお前の名前が俺の携帯電話に入っているんだよ。これはどういうことだ?」
俺がそう言うと、電話の向こうは静かになった。
反応があったのは30秒後ぐらいだ。
電話口からは心底困ったような声で
『……これは……困ったことになってしまったようです』
「あ?」
『すみませんが、これから外に出てもらえませんか』
寝ぼけてなんかいない。
「本当にお前のことを知らないんだ。お前の言っている涼宮、って奴のことも俺は知らない」
『…………』
「だがな、なぜかお前の名前が俺の携帯電話に入っているんだよ。これはどういうことだ?」
俺がそう言うと、電話の向こうは静かになった。
反応があったのは30秒後ぐらいだ。
電話口からは心底困ったような声で
『……これは……困ったことになってしまったようです』
「あ?」
『すみませんが、これから外に出てもらえませんか』
相手は知らない奴だ。
だが相手は俺のことを知っているらしい。
少し躊躇ったが、了承の意を伝えると男は
『ではいつもの場所で……と言っても分からないですよね、すみません。北口駅前でお待ちしております』
と、それだけ言ってから電話を切った。
いつもの場所、ということはいつも駅前で待ち合わせをして一緒に出かけていたということなんだろうな。
思考をめぐらしてみても、やはりそんな覚えはなかった。
とにかく俺は、財布だけ持って家を出た。
何も考えずに家を出たわけだが、俺は相手の顔を知らない。
どうやって相手を見つければいいのだろうか、と待ち合わせ場所へ着くまで考えていたのだが、
それは杞憂で終わった。
駅前につくと、俺に向かって手を上げている男が居た。
その男は俺と同じ制服をきっちりと着ていた。どうやらあれが古泉一樹だろう。
その両隣にはうちの高校の制服を着た女生徒が1人ずつ立っていた。
左にはカーディガンを着たショートカットの女子が無表情で直立し、
右にはなんだか見たことのある……ああそうだ、あの人が朝比奈みくるさんだ。
朝比奈さんは俺を視界に捕らえると、今にも泣きそうな顔をした。
「やあ、どうも」
電話口で聞いた声と同じだった。
「僕のこと、覚えてらっしゃいませんか?」
顔を見ても、やはり俺の記憶の中にはなかった。
軽く頷くと、急に片腕に柔らかさを感じ、そこへ顔を向けてみると
朝比奈さんが俺の腕に抱きついていた。
「キョンくん……あ、あたしのことも、忘れちゃいましたか……?」
さびしげな表情で、しかも目に涙をいっぱい溜めながら見上げられても
やはりなにも思い出せない。というか覚えがない。
とても申し訳ない気持ちになり、すみません、と呟くとその人は惜しむように俺
の腕から離れた。
本当に俺はこんなに可愛らしい人と親しかったのであろうか。
いくら考えてもやはり思い出せなかった。
ふと、視線を感じてそちらに顔を向けると
カーディガンを着た女生徒がこちらをじっと見ているのに気がついた。
ずっと目を合わせているとその瞳に飲み込まれそうな気がしたので、目をそらすと
男が一歩近づいて口を開いた。……なんていうか、顔が近い気がするんだが。
「僕は古泉一樹です。よろしく。こちらの方は朝比奈みくるさん、そしてこちらが長門有希さんです」
名前にあわせて古泉が左右に手をスライドさせた。
それにつられて俺も2人の顔を見る。
片方はとうとう泣き出してしまっていて、片方は無表情のままだった。
「……俺のことは知っているんだよな」
「もちろん。仲良くさせていただいていましたよ。ここで立ち話もなんですから、どこかお店に入ってお話しましょうか」
そういうと古泉は慣れた足取りで喫茶店へと向かっていった。
それに俺もついていく。
喫茶店へ入り、適当に席に着くと古泉はウェイトレスに「コーヒーを4つ」と頼み、手を組んで俺に顔を向けた。
「さて、早速ですがお話しましょう。……その前にいくつか質問をしてもよろしいですか?」
「ああ」
「先程、涼宮さんのことを知らないと仰っていましたよね」
「……ああ」
「入学時を思い出してください。あなたの後ろの席には、どなたが座っていたのでしょう」
「……瀬能、だっけな」
「そこから既に、僕たちが持っている記憶と違いますね」
そんなこと言われてもな。
「涼宮さんは、あなたと同じクラスなんです」
「だったら、俺の後ろか前の席に座っているはずだろう」
「ええ、そうです。僕たちの記憶では、涼宮さんはあなたの後ろの席に座っていました」
何を言ってるんだこいつは。
「待て、俺は本当に涼宮なんて知らないし、この記憶は確かなはずだ」
ところどころ抜け落ちている部分はあるだろうが、俺はちゃんと入学の日のことを覚えている。
涼宮なんて生徒はいなかったし、今もクラスには居ない。
こう見えても俺は人の名前を覚えるのは苦手ではないし、もうクラス全員の名前は覚えてしまっている。
確かに涼宮なんて生徒はいない。
「始まりから、僕たちとあなたの記憶は違っています。これはただの記憶喪失ではなさそうです」
「そう」
会ってから初めて口を開いたショートカットの少女(長門さん、だっけか)は、
俺の目をじっと見つめながら
信じられないことを言い出した。
「今ここにいる彼は昨日までここに存在していた彼と異なる」
「と、いいますと」
「彼は異世界同位体」
「だったら、俺の後ろか前の席に座っているはずだろう」
「ええ、そうです。僕たちの記憶では、涼宮さんはあなたの後ろの席に座っていました」
何を言ってるんだこいつは。
「待て、俺は本当に涼宮なんて知らないし、この記憶は確かなはずだ」
ところどころ抜け落ちている部分はあるだろうが、俺はちゃんと入学の日のことを覚えている。
涼宮なんて生徒はいなかったし、今もクラスには居ない。
こう見えても俺は人の名前を覚えるのは苦手ではないし、もうクラス全員の名前は覚えてしまっている。
確かに涼宮なんて生徒はいない。
「始まりから、僕たちとあなたの記憶は違っています。これはただの記憶喪失ではなさそうです」
「そう」
会ってから初めて口を開いたショートカットの少女(長門さん、だっけか)は、
俺の目をじっと見つめながら
信じられないことを言い出した。
「今ここにいる彼は昨日までここに存在していた彼と異なる」
「と、いいますと」
「彼は異世界同位体」
「……なるほど。では、昨晩までこちらの世界に存在していた彼は、今は違う世界に居ると、そういうことでしょうか」
「そう。正確には今日の13時10分00秒まで」
「では、13時までここに存在していた彼は、今は何処へ?」
「おそらく、以前にわたしが改変した世界にいる」
「……!やはり、2つの世界は同時に存在していて、今までも同時進行していたということになるのですね」
「違う。わたしが改変した世界は、あの時確かに消滅した。しかし、今なぜかまた存在している。これは予想していなかった事態」
「ということは、なんらかの理由でまた世界が存在し始めた、と」
「そう。今ここに居る彼は、改変後の世界にいた彼。つまり、」
「待ってくれ!」
「そう。正確には今日の13時10分00秒まで」
「では、13時までここに存在していた彼は、今は何処へ?」
「おそらく、以前にわたしが改変した世界にいる」
「……!やはり、2つの世界は同時に存在していて、今までも同時進行していたということになるのですね」
「違う。わたしが改変した世界は、あの時確かに消滅した。しかし、今なぜかまた存在している。これは予想していなかった事態」
「ということは、なんらかの理由でまた世界が存在し始めた、と」
「そう。今ここに居る彼は、改変後の世界にいた彼。つまり、」
「待ってくれ!」
店内の空気が静まった。
思わず俺は立ち上がっていて、3人は黙って俺を見上げていた。
俺が椅子へ戻ると、また店内はそれまでの空気を取り戻したような気がした。
「……勝手に話を進めないでくれ。俺にもわかるように説明しろ」
異世界同位体だと?なんだそれは。意味がわからない。
古泉は申し訳なさそうに笑い(そういえばこいつはずっと笑っているな)長門さんに目配せしながら
「すみません。一から説明しますと、長くなってしまうので簡潔に説明いたしますね」
古泉はポケットからペンを取り出すと、テーブルの端にあった紙を1枚取り出し、
何やら図を書き始めた。
ひとつ、ふたつ。大きな円を2つ書いた古泉は、片方の円の中を指差し、
「これが、今、僕らが存在している世界だとします」
そう言って、円の中に涼宮と俺、それと一緒に居る3人の名前を書き出した。
「そしてこちらが、この世界ではないもうひとつの世界だとします」
そう言ってその円の中へ長門さんと俺、朝比奈さんの名前を書いた。
「元はあなたはこちらの世界に存在していたはずなのですが」
そう言いながら後に名前を入れたほうの円を軽く指で叩き、
「何らかの理由で、こちらの世界にいるあなたと入れ替わってしまった」
そう言って、先に名前を入れた方の円を指で叩いた。
2つの円の中の俺の名前が、矢印で結ばれる。
思わず俺は立ち上がっていて、3人は黙って俺を見上げていた。
俺が椅子へ戻ると、また店内はそれまでの空気を取り戻したような気がした。
「……勝手に話を進めないでくれ。俺にもわかるように説明しろ」
異世界同位体だと?なんだそれは。意味がわからない。
古泉は申し訳なさそうに笑い(そういえばこいつはずっと笑っているな)長門さんに目配せしながら
「すみません。一から説明しますと、長くなってしまうので簡潔に説明いたしますね」
古泉はポケットからペンを取り出すと、テーブルの端にあった紙を1枚取り出し、
何やら図を書き始めた。
ひとつ、ふたつ。大きな円を2つ書いた古泉は、片方の円の中を指差し、
「これが、今、僕らが存在している世界だとします」
そう言って、円の中に涼宮と俺、それと一緒に居る3人の名前を書き出した。
「そしてこちらが、この世界ではないもうひとつの世界だとします」
そう言ってその円の中へ長門さんと俺、朝比奈さんの名前を書いた。
「元はあなたはこちらの世界に存在していたはずなのですが」
そう言いながら後に名前を入れたほうの円を軽く指で叩き、
「何らかの理由で、こちらの世界にいるあなたと入れ替わってしまった」
そう言って、先に名前を入れた方の円を指で叩いた。
2つの円の中の俺の名前が、矢印で結ばれる。
そんなトンデモ話を聞かされて
普通なら頭おかしい奴らだと思って帰るだろうに
一応詳細を聞こうとする辺りがキョンだなあ
普通なら頭おかしい奴らだと思って帰るだろうに
一応詳細を聞こうとする辺りがキョンだなあ
「先程僕と長門さんが話していたのはこういうことです。簡単に言いますと、あなたは別の世界から来た、ということになります」
そう説明されても俺にはちっとも分からなかった。
俺は、別の世界から来た、だと?
「憶測ですが、あなたが元居た世界も、こちらの世界とはなんら変わりはないのでしょう。ただひとつ違うのは、涼宮ハルヒと面識がなかった」
わけがわからない。
古泉は口を閉じず今も平行世界がどうだか、時空移動がどうだかくっちゃべっていたが
それは俺の頭にはまったく入ってこなかった。なにがどうなっているんだ。入れ替わった?どうして。
「ご理解いただけましたか?」
話は終わったようだ。まったく聞いていなかったがとりあえず肯定しておく。
そこに見計ったかのようにコーヒーが運ばれてきた。
ウェイトレスが各々の前にコーヒーカップを置いていくのを皆で静かに見守り
最後に伝票が置かれたところで、俺は口を開いた。
「ところで長門さん、とやらは何者なんだ。さっきから聞いていれば世界を改変したとかどうだか……」
長門さんが口を開いた。
「さんはいらない」
そう説明されても俺にはちっとも分からなかった。
俺は、別の世界から来た、だと?
「憶測ですが、あなたが元居た世界も、こちらの世界とはなんら変わりはないのでしょう。ただひとつ違うのは、涼宮ハルヒと面識がなかった」
わけがわからない。
古泉は口を閉じず今も平行世界がどうだか、時空移動がどうだかくっちゃべっていたが
それは俺の頭にはまったく入ってこなかった。なにがどうなっているんだ。入れ替わった?どうして。
「ご理解いただけましたか?」
話は終わったようだ。まったく聞いていなかったがとりあえず肯定しておく。
そこに見計ったかのようにコーヒーが運ばれてきた。
ウェイトレスが各々の前にコーヒーカップを置いていくのを皆で静かに見守り
最後に伝票が置かれたところで、俺は口を開いた。
「ところで長門さん、とやらは何者なんだ。さっきから聞いていれば世界を改変したとかどうだか……」
長門さんが口を開いた。
「さんはいらない」
「そういえばまだ僕たちの事をお話してませんでしたね、失礼しました」
またお前が喋るのか。
「実はここに居る3人は普通の人間ではないんですよ。まぁ僕は一点を除けば至って平凡な高校生なのですが」
コーヒーを一口、すすり
「長門さんは宇宙人で朝比奈さんは未来人。そして僕は、そうですね、超能力者と呼ばれる存在なのです」
にっこり。
……もっと早く気づけばよかったな。
こいつらはみんなまとめて頭がお花畑なんじゃないだろうか。
またお前が喋るのか。
「実はここに居る3人は普通の人間ではないんですよ。まぁ僕は一点を除けば至って平凡な高校生なのですが」
コーヒーを一口、すすり
「長門さんは宇宙人で朝比奈さんは未来人。そして僕は、そうですね、超能力者と呼ばれる存在なのです」
にっこり。
……もっと早く気づけばよかったな。
こいつらはみんなまとめて頭がお花畑なんじゃないだろうか。
………
……
…
「……ョン!キョン!キョン!」
……うるさいな。
「キョン!起きたか!」
「よかった……」
目の前は安堵感溢れている谷口と国木田の顔があった。
「……ここはどこだ」
身体を起こす。頭が痛い気がする。
「保健室だよ」
「ったく、お前は何も覚えてないのか!?」
落ち着いた声で答える国木田の横で、谷口はでかい口をあけて声を張り上げた。うるさいぞお前。
俺は体操着を着ていた。目の前の谷口と国木田も同じ体操着を着ている。
おかしいな。俺はこの体育が嫌で早退したはずなんだが。
「何言ってやがる。お前はなあ、体育館に行く途中の階段で滑って頭打ったんだよ」
は?
「もしかして、覚えてない?」
だんだん、ぼやけていた頭がはっきりとしてきた。
おかしい。
「お前らこそ何言ってやがる。俺は確かに昼休みに早退したはずだ」
今日は珍しいことに朝から体調が悪く、昼休みに限界がきた。
国木田はそんな俺を見て、次は体育なんだから早退しちゃえば?なんて言ったんだ。
俺はその言葉に背中を押され、早退することにした。ああ、ちゃんと家にも着いて、自分のベッドの上に寝転んだんだ。
……それから?
「……キョン、もしかして頭打っておかしくなっちゃったんじゃ……」
目の前の国木田は心から心配しているような顔を俺に向けた。
「おかしくなってなんかいない。ちゃんと記憶がある。俺は確かに昼休みに早退して家に帰ったんだ」
「じゃあなんでお前はここに居るんだよ。それに俺もちゃんと記憶はあるぞ。確かにお前と一緒に着替えた」
谷口が言う。
「俺は体操着に着替えた覚えなんぞないぞ」
俺はそれに答えた。
既視感。
おかしい。
「お前らこそ何言ってやがる。俺は確かに昼休みに早退したはずだ」
今日は珍しいことに朝から体調が悪く、昼休みに限界がきた。
国木田はそんな俺を見て、次は体育なんだから早退しちゃえば?なんて言ったんだ。
俺はその言葉に背中を押され、早退することにした。ああ、ちゃんと家にも着いて、自分のベッドの上に寝転んだんだ。
……それから?
「……キョン、もしかして頭打っておかしくなっちゃったんじゃ……」
目の前の国木田は心から心配しているような顔を俺に向けた。
「おかしくなってなんかいない。ちゃんと記憶がある。俺は確かに昼休みに早退して家に帰ったんだ」
「じゃあなんでお前はここに居るんだよ。それに俺もちゃんと記憶はあるぞ。確かにお前と一緒に着替えた」
谷口が言う。
「俺は体操着に着替えた覚えなんぞないぞ」
俺はそれに答えた。
既視感。
俺と谷口の間に眉を八の字にした国木田が割り込んだ。
「キリがないよ。とにかく、体育には出られる?もうすぐ授業始まっちゃうけど」
「……頭は大丈夫だ」
俺がベッドから降りたちょうどその時、予鈴がなった。
気がついた。
噛み合わない谷口との会話。心配そうな国木田の目。
前にも一度だけ同じことがあった。
忘れもしない去年の12月。
もしかしたら。
胸が騒ぐ。
どうしてかは分からない。わかってしまったんだ。
古泉、今ならお前の気持ちも分かる気がするよ。
今この学校にはハルヒと古泉は居ない。
「キリがないよ。とにかく、体育には出られる?もうすぐ授業始まっちゃうけど」
「……頭は大丈夫だ」
俺がベッドから降りたちょうどその時、予鈴がなった。
気がついた。
噛み合わない谷口との会話。心配そうな国木田の目。
前にも一度だけ同じことがあった。
忘れもしない去年の12月。
もしかしたら。
胸が騒ぐ。
どうしてかは分からない。わかってしまったんだ。
古泉、今ならお前の気持ちも分かる気がするよ。
今この学校にはハルヒと古泉は居ない。
いくら2度目だといっても、落ち着きすぎていないか、俺。
自分の適応力に喜べばいいのか、嘆けばいいのか。
体育の授業を特になんの問題もなく終え、
体操着のまま俺は真っ先に2年9組の教室へと向かった。
俺の勘が外れていれば、そこには万年ニヤケ野郎が居るはずだった。
しかし予想通りと言うべきか、俺の記憶上9組の教室があったその場所は
初めからそうであったように、非常階段へと続く踊り場が広がっていた。
当たり前か。きっと最初からここは踊り場だったんだ。
流石に2回目は驚かない。少し残念ではあったがな。
しかしまだわずかに残る希望を抱えて俺は着替えるべく教室へ戻った。
自分の適応力に喜べばいいのか、嘆けばいいのか。
体育の授業を特になんの問題もなく終え、
体操着のまま俺は真っ先に2年9組の教室へと向かった。
俺の勘が外れていれば、そこには万年ニヤケ野郎が居るはずだった。
しかし予想通りと言うべきか、俺の記憶上9組の教室があったその場所は
初めからそうであったように、非常階段へと続く踊り場が広がっていた。
当たり前か。きっと最初からここは踊り場だったんだ。
流石に2回目は驚かない。少し残念ではあったがな。
しかしまだわずかに残る希望を抱えて俺は着替えるべく教室へ戻った。
「キョン、さっきすごく急いでたみたいだけど、どこに行ってたのさ」
教室で着替えている最中に国木田に問われ、適当に「トイレ」と答えた。
俺の後ろの席に座っているのは誰なのか。今はそれで頭がいっぱいになっていたからだ。
……大体検討はついているが。
視界の端で国木田が眉を下げるのが見えた。
「男子、入っていいよ」
女子が着替え終わるのを廊下で待っていた俺たち男子一同は、その声を合図に教室へと足を向けた。
扉の正面。窓際の後ろから2番目が俺の席である。
窓際の一番後ろの席。つまり俺のひとつ後ろ。
そこに座っていたのはやはり
予想通りであり、期待はずれの人間だった。
教室で着替えている最中に国木田に問われ、適当に「トイレ」と答えた。
俺の後ろの席に座っているのは誰なのか。今はそれで頭がいっぱいになっていたからだ。
……大体検討はついているが。
視界の端で国木田が眉を下げるのが見えた。
「男子、入っていいよ」
女子が着替え終わるのを廊下で待っていた俺たち男子一同は、その声を合図に教室へと足を向けた。
扉の正面。窓際の後ろから2番目が俺の席である。
窓際の一番後ろの席。つまり俺のひとつ後ろ。
そこに座っていたのはやはり
予想通りであり、期待はずれの人間だった。
「階段から落ちたって聞いたけど、大丈夫なの?」
にっこり。
俺の後ろの席。昨日までハルヒの席だったそこに座っていたのは。
「……朝倉」
どうしてお前がここにいる、なんて野暮な質問はしないさ。
可哀想な奴扱いされるのはもう懲りたんでね。
朝倉涼子がここに存在していることを確認して、確信した。
俺はまた厄介なことに巻き込まれてしまったらしい。
「どうしたの?顔色が悪いわよ」
席に着くと、朝倉が後ろから肩越しにのぞき込んでくる。
ああ、顔も青くなるさ。
なんせ今俺の後ろに座っているのは俺を殺そうとした殺人未遂犯だ。しかも2度もな。
俺がだんまりを決め込んでいると、朝倉は俺にしか聞こえないような小さな声で
囁いた。
「お久しぶり、ね」
にっこり。
俺の後ろの席。昨日までハルヒの席だったそこに座っていたのは。
「……朝倉」
どうしてお前がここにいる、なんて野暮な質問はしないさ。
可哀想な奴扱いされるのはもう懲りたんでね。
朝倉涼子がここに存在していることを確認して、確信した。
俺はまた厄介なことに巻き込まれてしまったらしい。
「どうしたの?顔色が悪いわよ」
席に着くと、朝倉が後ろから肩越しにのぞき込んでくる。
ああ、顔も青くなるさ。
なんせ今俺の後ろに座っているのは俺を殺そうとした殺人未遂犯だ。しかも2度もな。
俺がだんまりを決め込んでいると、朝倉は俺にしか聞こえないような小さな声で
囁いた。
「お久しぶり、ね」
背筋に電撃が走った。
思わず振り向いてしまう。バッチリ目が合う。しまった。
そこには「にっこり」と形容するのはさわやかすぎる、
えげつない笑みを顔に張り付けた朝倉涼子が居た。
「お、前……」
こいつは全部知っている。
「あーあ、あの時は残念だったわ。遂にやったと思ったのに」
にたり、と効果音が聞こえるんじゃないかと思えるほど、朝倉は顔を歪めた。目が笑っていない。
「でも、こうしてまた会えて嬉しいわ」
どうしてここまで顔と声の感情を分けられるのか、尊敬するね。
声だけはやたら爽やかだ。
思わず振り向いてしまう。バッチリ目が合う。しまった。
そこには「にっこり」と形容するのはさわやかすぎる、
えげつない笑みを顔に張り付けた朝倉涼子が居た。
「お、前……」
こいつは全部知っている。
「あーあ、あの時は残念だったわ。遂にやったと思ったのに」
にたり、と効果音が聞こえるんじゃないかと思えるほど、朝倉は顔を歪めた。目が笑っていない。
「でも、こうしてまた会えて嬉しいわ」
どうしてここまで顔と声の感情を分けられるのか、尊敬するね。
声だけはやたら爽やかだ。
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