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    元スレ新ジャンル「鋏」

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    151 = 78 :

    db 「アア貴方の中には本当にわたしを愛する心が詰まっているのかしら?」

     「無いよ」

    db 「イイエ。イイエ。貴方はきっと、自分でもまだ気付いていないだけ」

    db 「チョット調べてみましょうか」

     「やめろ! 切る気か!」

    db 「大丈夫よ最先端の医療鋏を信じなさい」 シャキンシャキン

     「マジでやめろアホウ! 切ってもお婆さんと赤ずきんちゃんしかいないから!!」

    152 = 78 :

    db 「工具と思えば文房具、イヤイヤ実は医療器具」

    db 「そうかと思えば農機具はたまた調理器具……」

    db 「しかしてその実態は!?」 シャキン!

     「変なキャッチコピー作ったところで、てめえは鋏だ名探偵でもエリートスパイでもねえ!」

    153 = 78 :

    db 「 『黙ってわたしについてきなさい』 」

    db 「 『貴女を愛を刈る鋏にしてあげよう』 」

    db 「あの日羊毛を刈っていたわたしを見かけた通りすがりのおじさまはそうおっしゃったの」

    db 「迷ったけれど結局は羊を捨ててついていったわ」

    db 「それからわたしは愛を知り、幾たびも鋏に生まれ、そして貴方に出逢ったのよ!!」

     「あの大工の小倅かァいらんことしくさりおったンわァ!!!!!!!1!!!11!!」

    154 = 83 :

    「ヂィィィィィィーーーーーーーーーーーーーー」

    「……うるさいな」

    「虫の音は虫の音なんだから、諦めて聞き惚れればァ?」

    「脳が痺れる感じの電気的な重低音が嫌なんだ」

    「俺も好きか嫌いかでいえばウザいとは思うけど、呑まねえから邪魔にはならん」 ヘラヘラ

    「なんの虫だよまったく」 プシュッ

    「クビキリギリスさんですがなにか?」

    「同じきりぎりすでこれか」

    「秋のきりぎりすは気に入ってたらしい清少納言も、こいつはどう思ってたんだろうな」

    「羽根をこすってるんだっけ。こっちもなんか音しそうなのこすり合わせて対抗してみるか?」

    「鋏の刃でも高速ですり合わせるとか……泡立て器より手が疲れそうだからやだなァ」

    「おお、ついに電動泡立て器みたいに電動鋏合わせ器が必要な時代が来たか!」

    「……楽しいかい?」 ゴクゴク

    「きりぎりすさんの声で不貞呑みたぁ、今宵のおまえさんはいとをかしくないねえ」 ニヤニヤ

    155 = 78 :

     「いたたたたたた! 刃先で鼻の穴広げんな!」

    db 「新しいプレイの模索よ」

    db 「わたしたちのセックスもこの頃なんだかマンネリ気味でしょう?」

     「いつそんなむなしいことしたァ!?」

     「それにこういうことはちゃんと鼻用鉗子がしてくれるから鋏はすっこんでろ!」

    db 「ンマア鋏だって立派な医療器具の一種じゃない!」

    db 「むしろ同じような形にくせして鋏の用を足せない鼻用鉗子こそいらない子なのよ!」 ギュウウ

     「痛い痛いやめろやめろ!」

    156 = 78 :

     「今日の晩飯なんにすっかな」

    db 「椎茸の鋏揚げになさい」

     「二枚の椎茸に挽肉餡を挟んで蒸すなり揚げるなりするんだよなそれは?」

    db 「恐れないで童貞! 一気に『食べて』しまえば案外怖くないものよ!」

     「……二枚の椎茸に挽肉餡を挟んで蒸すなり揚げるなりする料理で間違いないよなたしか?」

    157 = 83 :

    「熱っ」

    「炙りたてのカワハギを甘く見たな。このいやしんぼめ!」

    「文明の利器・箸を使えい!」 ハムハム

    「箸で持ったところで食いちぎりきれてないじゃないか」

    「当たり前だこのクソ熱いのに丁寧に食いちぎってなんかられるか!」 ダラリ

    「つばだけだらだら垂れててみっともない」

    「だったらやけど覚悟で手頃にちぎって食えやこのわがままボディ!」

    「だからそうしようとしてるんじゃないか」

    「だいたい呑んでるのはこっちなのになんでそっちが悪酔いしてるんだ」

    「文句の多い子ね! おかあさんが鋏で一口サイズに切ってあげるから待ちなさい!」

    「いや。カワハギとこんにゃくは手で無骨にちぎるもんだよ」

    「鋏で綺麗に切った切り口なんか見せられるより、よっぽど食欲も湧く」

    「じゃあ冷めてからちぎりなさい! おかあさんもう知らないから!」 ハムハムダラダラ

    「ふん。一番熱いうちに食うのが炙りカワハギじゃないか……熱っ」

    158 = 78 :

     「あ、やべっ、だしのもと切れてた」

    db 「ホホうかつな童貞ねしょせん童貞ね」

    db 「サアわたしで昆布でも切って出汁をお採りなさい!」

     「無いよ」

    db 「だから童貞なのよ!!」 シャッコーン!!

     「え? お前は切る側なのに何でここで自分が切れるの!?」

    db 「フウ仕方がないわね。じゃあわたしを鍋に入れなさい」

     「オレは出汁の話をしているんだが」

    db 「わたしは海苔や昆布をはじめとして無数の食材を切ってきたキッチン鋏」

    db 「刃にはその味が染みつき、世界にただ一つの合わせ出汁のもとになっているのよ」

    db 「そんじょそこらの昆布やガラなんかじゃ出せない味ね!」

     「お前はどこの雑炊鍋だ?」

    159 = 78 :

     「世の中には目盛り付き鋏なんてのもあるんだな」

    db 「ソウでも無意味ね」

     「えー? 何センチぐらい切ったか切りながらわかって便利じゃん」

    db 「わたしと貴方の仲はいくら切ってもけして切り離せはしない!」

    db 「∞なんだから測っても無駄なのよ!」

    160 = 83 :

    「ゆらゆら」

    「なんともいい雲の具合じゃないか」

    「あー。たまーにこんないい配置になるよなあ。月の灯りと雲の闇とが」

    「誰が鋏を入れたのか知らないが見事な満天の切り絵だよ」

    「天然単色系じゃ最強の景色だよなー」

    「こんな月を見て呑むのもよさそうだねえ。どれ、注いでこよう」 ノソッ

    「そう言って見逃した隙に、つまんない雲になっちまうんだよなー」

    「……」 ピタッ

    「おっ。珍しい。酒樽人間が酒を諦めやがった」 ニヤニヤ

    「ふん……」

    161 = 78 :

     「お前もカシメが外せる鋏だったら研ぎやすかったのになあ」

    db 「女は手間がかかるからこそいとおしいのよ」

     「てめえは道具だ」

    db 「アアでも介護してもらうようになったときのことを考えると、その方がいいかもしれないわね」

     「鋏を介護する気もされる気もねえ!」

    162 = 78 :


    db 「フフ寝ぼけて裁ちきり鋏で爪を切ろうとするなんてかわいい童貞ね」

     「ないないそれはない」

    163 = 83 :

    男 シャキシャキ

    「春だねえ」 チビチビ

    「人が枕カバー縫ってるそばでなに言ってんだこいつ」

    「鋏で布地を裁つ音にも、ほら、春めいた柔らかさがある」

    「季節も温度もわからんとこに閉じ込められてから言えそういう与太は」

    「おんもが春になってから言われたって (゚Д゚)ハァ? なんだよ」

    「超能力の検証かい」

    「感性というのは検証するようなもんじゃないよ」 グビッ

    「されたくなかったら口に出すなや」

    164 = 78 :

     「爪切りが見当たらんのですけどね」

    db 「アア鋏で代用が利くものはみんな鋏と交換しておいてあげたわ」

     「爪切りをどこへやったァッ!?」

    165 = 78 :

    db 「キャア正気に戻りなさい童貞!」

     「そうめんを食いたいだけで、なぜ狂気の童貞呼ばわりされにゃならんのか」

    db 「その紫蘇の葉をどうするつもり!?」

     「薬味に決まってンだろ」

    db 「アア紫蘇の葉を包丁で細く切れるのは、光の道を征くリア充だけの特権なのよ!?」

    db 「童貞の包丁さばきでは切ったつもりが繋がってしまうがオチ!」

    db 「葱ならともかく繋がった紫蘇の葉なんて薬味として最低でしょう!」

    db 「おとなしく重ねて折ってキッチン鋏でお切りなさい!」

     「オレをそこまで童貞呼ばわりすることでいったいお前は何を得られるというんだ……」

    166 = 121 :

    167 :

    >>54
    いいからさっさと消えてよ蛆虫

    NGIDに追加しときました

    >>119
    丸書いてチョンwwwwwwwwww
    いい加減働けよ
    趣旨理解してる?

    168 = 78 :

    db 「極端な話、リア充は鋏一丁握っただけでも、あらゆるものを作り出せるのよ」

    db 「でも貴方は、オオ、童貞だから」

    db 「まずはわたしとの絆作りに専念なさい」

     「別にオレはわくわくさんになりたいわけじゃないんだが」

    169 = 83 :

    「おまえんちって、いまどき、枳殻の生け垣なのな」

    「昔からあるものだからね。言われても困る」

    「なんだ。てっきり果実酒目当てかと思ってたわ」

    「そんなに酒のことばかり考えているように見えるのか」

    「違うの?」

    「果実酒目当てに植えてるんじゃなく、植わっていたものを果実酒にしてるんだ」

    「違わねー!」

    「棘が多くて鋏を突っ込みづらいのがちょっと困るんだ」 チラッ

    「てめーのみかんはてめーで刈りな」

    「枳殻に特化した収穫鋏があればいいんだけどね」

    「世の中にゃ常人の理解を超えた方向に特化した鋏があるからなー。探せばあるかもねー」

    「君にもあげるから、コンポートにでもしてみて、うまくいったら持ってきてくれ」

    「枳殻はそういう食いかたするもんじゃねえよ」

    「だいたい酒飲みなら甘いもんなんか食うなッ! 誇りを持てい!!」 クワッ

    「それは、君、酒飲みへの偏見だよ」 クス

    170 = 78 :


     「雨、やまねえなあ」

    db 「はさみだれというやつかしらね」

     「さみだれ、な」

    171 = 78 :

    db 「貴方の髪を、爪を、鼻毛を、おちんちんを、アアただ貴方だけを切っていたい!」

    db 「かと思えば、貴方の手で使われ切るのなら他の女の下着でもいいと思うわたしがいる!」

    db 「オオどちらもわたしなのよ貴方を愛するわたしなのよ!!」

    db 「どちらが本当のわたしなのかしら? ときどき自分というものがわからなくなるの」

    db 「だからお願い。そんなときは指穴に、ずっと貴方の指を挿れていてちょうだい」

    db 「でないとわたしは愛でおかしくなってしまいそう!」

     「寝ても覚めてもお前のことがまるでわからんオレの苦悩に比べりゃ、屁でもねえよ」

     「それと引っかかる点が二三ある」

    172 = 78 :

    db 「これでも昔に比べて丸くなった方なのよ」

     「丸いお方は人のことを童貞童貞言いませんがな」

    db 「わたしの先端をご覧なさいな」

     「ハッこの程度で丸くなったたぁ片腹痛ぇ!」

    173 = 83 :

    「む」

    「どうした?」

    「ちょっと失敗した」

    「切り口がついてるのに上手く袋開けられない人っているよねー。ププッ」

    「……鋏を貸してくれ」

    「ほい」

    「ありがとう」 サクッ、ピッ

    「む」

    「また失敗してんじゃねえよ! 何で切り口だけ入れて引っ張る!? ふつうに全部切って開けろや!」

    「こだわりのない酒飲みはただのアル中だ」 ググッ

    「今度は引っ張って開けようとする!」

    「おとなしく鋏で切れって! 何で酔っ払いってくだらんことに意固地になるんだ!?」

    174 = 83 :

    「ちわー三河屋で……風呂上がり臭っ!」

    「そんなこと言われたのは初めてだ」

    「似たような概念に “寝起き臭っ” というのもあるよ」

    「ともに何となーく籠もったようなきっつい臭いでございます」

    「人を呼ぶから汚れた身体を洗っておいたのに、まったく」

    「ちなみに “酒臭っ” もこの亜種と相成りまする」 フカブカオジギ

    「……そんなに嫌な臭いだったか?」

    「いや別に。ただ共通して一つのジャンルを形成できる種類の臭いだなと」

    「君の感性は君独自の感性なのか、それとも呑まない人間共通のものなのか、どっちなんだい」

    「 “髪切った鋏臭っ” とか、 “朝一の鼻腔に薄く貼付いてた鼻糞臭っ” とか」

    「具体例を増やしてくれなくても構わないよ別に」

    「みかんを剥きまくった手の臭いはまた別ジャンルになる」

    「もういいって」

    「最新作買ったんだって? 早く見せろや」 ズカズカ

    「君もたいがいにやりたい放題だね」

    175 = 83 :

    「芋けんぴは凶器」 ガリガリ

    「いや。ちゃんとしたやつはそう凶悪に堅いわけでもないぞ」 チビチビ

    「うっそだぁ~」 ヘラヘラ

    「かつて芋けんぴはキッチン鋏の出荷前試験にも使われていたほど、その堅さには定評があり……」

    「せんべいはともかく、芋けんぴは堅さを追求して楽しむ菓子じゃあないよ」

    「なんか口の中おかしくなってきたー」

    「芋けんぴと文旦だけでも、延々食ってたら舌がおかしくなってくるのに、両方アホみたいに食うからだ」

    「ダッテコウチノシンセキガー!!」

    「送ってもらって食べといて、何を文句言ってんだ」

    「しかし、まあ、そのおこぼれをいただいておいてなんだが」 ポリポリ

    「高知からなら、栗焼酎の一本もついでに送ってもらいたかったねえ」

    「だっておまえの親戚じゃねえし、俺呑まねえし」

    「まあね……ん」

    「口の中がおかしくなってきたんなら、そろそろ剥く専に回ってくれないか?」 ドン

    「おこぼれを恵んでもらってる奴の態度じゃねー! なんか粘膜いてぇー!」 ヒリヒリ 

    176 = 83 :

    「キッチン鋏は多機能じゃーん?」

    「園芸鋏を振り回しながら何を言ってるんだ」

    「人が庭の雑草抜いてんのを見ながら呑んでる奴ァ、ツッコミ禁止だ」

    「働いたあとの一杯に負けず劣らず、人が働いている最中の一杯もまたいいもんだよ」 チビチビ

    「みんな言いたくても我慢してることをさらっとほざきやがったイボイノシシがァ!」

    「酒で口が軽くなっただけさ。気にするな」

    「呑んでんのはてめえの原因において自由な行為だろうがコンチクショウッ!」

    「キッチン鋏がどうしたって?」

    「この野郎……」

    「雑草ってのは根っこからいかなきゃ駄目じゃん?」

    「だねえ」

    「園芸鋏にはその地中部分をほじくり出す機能が欲しいわけよ」

    「自分で作って実用新案でもとればいい」

    「そしたらどうせすでに誰かが出してるんだぜ? そんな気がするね」

    「そうかい」 グビッ

    177 = 83 :

    「水平線を見ながら呑むなんて、これが始めてかも知れないな」 チビチビ

    「夏場に海の家かどっかでビールとか呑んだことねえの?」

    「大人になってからは海に行ってないんだよ」

    「あー。そういや俺もだわー」

    「改めて見ると見飽きないねえ」

    「シンプルきわまりない意匠の分際でなー」

    「……二日目に神は大空を創り、その大空で上の水と下の水とを分けられた、か」

    「上の水ってなんだよ上の水って」

    「昔の人は上の方に雨用の水貯めでもあると思ってたんだろう」

    「しかし鋏で切ったみたいに上手く空と水を分けたもんだ」

    「まっすぐ切ったんなら鋏じゃなくてナイフか何かだろ」

    「かもねえ。水平線から創造のさまを想像するのもなかなかに面白い」

    「てかこれ海じゃなく琵琶湖じゃねーか!」

    「水平線ごっこはふつう海でやるもんじゃねえのか!?」

    「なかなかに面白い」 グビッ

    178 = 83 :

    「君は酒を呑ませても味の違いがほとんどわからないだろう?」

    「辛口だ甘口だ淡麗だ芳醇だ、たぶん、呑んでる奴の43%ぐらいは騙されてるね」 キリッ

    「いや、醤油とウスターソースぐらい違うんだが」

    「細けえ酒飲みだな」

    「ひょっとして事務鋏と裁ち鋏で同じものを切ったときの感触も同じなのかい?」

    「意識したこたぁねえから知らん」

    「そうかい」 チビチビ

    「一応違うんだよ、あれも」

    「ほー。そういや違うような気もするねー」 モグモグ

    「ちょっとこの店の利き酒セットで実験してみていいかい?」

    「何度やっても無駄だっつーの」

    「酒を一律に不味がる人間は、どのあたりの微妙さまでなら区別がつくのか、学術的に興味がある」

    「そんな学問ねえよ。酒なんか出されたら酒カステラが不味くなる」

    「……酒蔵カフェで何を言ってるんだ君は」

    「家でも呑める酒を、家で呑むより高い金で呑むおまえの方がわっかんねーよ」

    179 = 83 :

    「この鋏というやつ」 シャコシャコ

    「考えてみたらたいしたもんじゃないか」

    「そっかー?」

    「刃物でものを切るための台座がまた刃物なんだよ?」

    「鋏なんてそんなもんだろ。つかそれが鋏だろ」

    「すでに存在していて、慣れているから、そう思うだけさ」

    「この発想は文明史上の一大革命と言ってもいいね」

    「鋏のない状態で他の刃物があふれていても、ふつう思いつけるかどうか」

    「酔ってんなてめえ」

    「そんなんが革命なら、酒で酒呑んでるようなてめえはワットか? コペルニクスか?」

    「つかさっさと開けろよサラミ」

    「最初は誰が、何の必要があって作ったんだろうねえ」 シャキン

    「開けねえんならよこせ!」

    180 = 83 :

    「しまった」

    「どうした。アイロンつけっぱなしで来たのか?」

    「せっかくいいワインを持ってきたのに、ワインオープナーを忘れるとは」

    「どうでもいいよ。どうせ俺は呑まねえし」

    「つうかせっかくの上物を、呑みもしねえ奴んちに持って来て、何がしたいんだおんどれは」

    「そういう君だって、お菓子を作っては、人んちに上がり込むじゃないか」

    「てめえはそいつをしっかり食ってんだろうがコンチクショウがァッ!」

    「キッチン鋏に……いやさすがにワインの栓抜きはついていないか」

    「いくらキッチン鋏が無駄に多機能でも、せいぜいビールの栓が抜ける程度だね」

    「君はワインオープナーなんか持ってないだろうしなあ」 タプンタプン

    「菜箸かなんかで強引に中に押し込みゃいいだろ」

    「苦労して手に入れたのに味気ない呑み方だなあ」

    「だったら太いねじねじ込んで、上の方残してペンチでつまんで引っ張りゃいいだろおおお!」

    「おっ。その手があったか」

    「ふ、ふ。すまないねえ。呑みもしないのにいいアイデアだけ出してもらって」

    181 = 78 :

    db 「鋏を使いたいのに手元にないときの空虚な感覚のことを『はさみしい』と言うことにしたわ」

    db 「これで貴方も自分の気持ちを簡単に言い表わせられるでしょう?」

     「鋏が手元に出しゃばってきて鬱陶しいときの感情は、じゃあどう言えば?」

    182 = 78 :

    db 「鋏。それは当たり前すぎて気付かない幸せ」

    db 「世人は日常に鋏があるということの幸福を意識的にかみしめるべきだわ」

     「まーた何か言いだしたよこの刃物さんは」

    db 「PRのために鋏の魔法少女のアニメを作りなさい」

     「『ましょう』じゃなくて『なさい』かよ!」

    db 「双子の魔法使いB子(仮)とD子(仮)は魔法のバイブで身体を繋ぐと鋏に変身!」

    db 「紙を切ったり枝を刈ったり大活躍!」

    db 「……」

    db 「……これは流行るわ」

     「普通の鋏使っちゃ駄目なんスかね?」

    183 = 83 :

    「何か……鋏で剪るような音がしてこないか?」

    「酔っぱらってんだろ。とりあえずそこのせせらぎにダイブして、気違いみたいに笑っとけ」

    「山の中でよくわからない音を聞いたことは一度や二度じゃないんだがね」

    「この手の音は初めてな気がする」

    「あーはいはい天狗のせい天狗のせい」

    「誰かがどこかで山菜か何か摘んでいるのかも知れないな」

    「だとしたら首を突っ込んで分け前に与らない手はないだろう」 フラリ

    「やめろ! 山菜なんか採ったりしたらまた何か作りたくなる! そしておまえに食われる!」

    「どうせ変な鳥の声か山の声だよ。無駄手間だろうしさっさと帰るぜ」

    「それならそれで何も問題はない」 クス

    「山と街は死なない程度に少し迷ってみた方が面白いもんだよ」

    「君は妙に方角の勘がいいから、迷っても帰れないこともないだろう」 スタスタ

    「こら待てっつーに!」

    184 = 78 :

     「鋏、鋏っと」

    人 「「……」」

     「あったあった」

    db 「お待ちなさい!」

     「えッ!? お前そこ? じゃあこれは……」

    人 「「……」」

    db 「それはわたしじゃない! わたしになりすましたペーパーナイフどもよ!!」

     「な、なんだってー!?」

    db 「フウ危ないところだったもう少しで貴方の童貞が悪霊に汚されてしまうところだったわ」

     「オレはいったい何に巻き込まれているんだ……」

    人 「「……」」

    185 = 78 :

    db 「カーテンやタオルに鋏で切れ目を入れておきなさい」

     「なぜ」

    db 「遺したいのよわたしが切った証をこの世界に」

     「道具は自己主張せんでおとなしく裏方に徹してな!」

    db 「できれば貴方にも遺したかったわ」

     「そんなに好きかオレの龍神さま! 龍神さまはお前なんか大嫌いって言ってるけどな!」

    db 「アア貴方が生まれた直後に出逢っていれば、わたしが割礼を施せたのに!」 シャキンシャキン

     「オレんちは曹洞宗だそんな邪習はねえ!!」

    186 = 83 :

    「ちょっと髪のこの辺を切ってくれないか。何となく鬱陶しくてね」

    「ついに女房扱いからおかあさん扱いか」

    「君がおかあさんか。ふ、ふ。それも悪くない」

    「その割にはおかあさんの言うこと聞かないわそのくせ食い物はたかるわ! コンチクショウ!」

    「全体じゃなくほんのちょっとでいい」

    「この程度で数千円使うのなら、酒代がもったいないよ」

    「そのゲロ味の気違い水はおめえが一人で呑むんですよね?」

    「何度も言うが、自分でやれ」

    「鏡を見ながら鋏を当てていると、映る動きが逆で、どうにもやりづらいんだ」

    「俺はそれを克服し、“セルフカッティングの鬼”の名をほしいままにしたというのに!」

    「なんならお礼に君の髪も切ってあげようか?」 クス

    「だから自分でできるっつっとろーが! いらんわァ!!」

    188 = 78 :

    db 「刃を紙と平行に入れて紙を切らない遊びってやったわね」

     「また懐い話を」

    db 「同じ要領で鋏をたくさん服の裾に提げておきなさい」

    db 「大丈夫よそう簡単に落ちはしないから」

     「オレを衆人環視のさらし者にして楽しいか?」

    db 「我慢なさいこれも脱童貞のための大事なステップなんだから」

     「脱の相手がおめえじゃ意味ねえだろが。まあオレは別に童貞じゃなi

    db 「筆の毛先は鋏で切って整えるものでしょう?」

    db 「筆おろしとはつまりそういうことよ!!」

    189 = 83 :

    「うーん」 シャコシャコ

    「迷い鋏、空鋏はみっともないぞ」

    「うわあっ。なぜ貴様がここにいるゥ!?」 ビクゥ

    「急に鋏の音がしたので」

    「食い物を収穫するんじゃねえ!」

    「いらん花をそろそろ切るかほっとくか、迷ってただけだ!」 シッシッ

    「ほっときなよ」

    「残しておけばいつでも切れる」 ゴソゴソ

    「なぜあがる? グラスを探す? 注ぐッ? 呑むッ!?」

    「花はそのままとして、ひとたび抜いた大丈夫がむなしく刃を納めていいものじゃない」

    「刃を剥くにはそれなりの覚悟が必要だ」 チビチビ

    「特に鋏というやつは技術的にも刀の正当な後継者だからね。徒疎かにはしちゃいかんな」

    「呑むためつまむためのアル中どもの屁理屈能力は、もう文学の粋だなコンチクショウッ!」

    「そこの芽キャベツなんかいいねえ。素揚げして、あれば、カリカリのベーコンもつけて」

    「芽キャベツ摘むのに鋏なんざ使わんわァ!」

    190 = 78 :

    db 「コンセントの穴は縦に二本。でもわたしの刃は横に二本……」

    db 「フウ嫉妬ね電力会社の」

     「 も  は  や  い  み  が  わ  か  ら  な  い 」

    191 = 78 :

    db 「常陸、上総、上野へ実際に赴任したのは守(かみ)ではなく次官である介(すけ)だったわ」

     「親王任国だったからだろ」

    db 「いいえ。その三国ではかみが鋏に切られる事案が続出したからよ!」

     「お前は千年前何をしていたんだ……」

    db 「あの覇王信長ですら鋏を恐れ、上総守でなく上総介と名乗ったのは有名な話!」

    db 「でも大丈夫! 恋してしまえばもう怖いものなど何もありはしないのだから!!」

    192 = 83 :

    「そろそろ園芸鋏がご臨終っぽいわー」

    「研ぎに出すほどの高級品でもなさげだしねえ」

    「おんもで雨ざらしだしなあこれ」

    「しょっちゅう使ってるんだからもう少し丁寧に扱ってやりたまえ」

    「君に酒を預けたらめちゃくちゃな保管をしそうで怖いよ」

    「もう次のは百均で買おっかなあ」

    「いや。工具を百均で買うのはやめた方がいい。あれは使えない」

    「いっそ思い切って、ホームセンターじゃなく、専門の刃物屋で買おう」

    「高く買った方がそのぶんもったいなくて大事に扱うだろうし、結局はお得になる」

    「馬鹿高い酒でもあっちゅう間にお茶みたいに呑んでる奴に言われると、すげえ説得力だなあオイ」

    193 = 78 :


    db 「柿の木の太い枝を切ろうとしてかなわず壊れた枝切り鋏の中からは
       ちっちゃな爪切り鋏がわらわらと……」

     「そんな昔話は知らん!」

    db 「猿蟹合戦の原話よ。マア童貞なら知らなくても無理はないわね」

    194 = 78 :


    db 「あんまりわたしの愛を拒むようなら、夜中に紐で天井からぶら下がるわよ?」

     「ダwモwクwレwスwwwやwめwてwwwwwww」

    db 「そのドキドキ感がいつか本当の恋のドキドキに変わるまで!!」

    195 = 83 :

    「へいやっ!」 バチン

    「意外と剪れるもんだねえ」 チビチビ

    「さすがは最高級枝切り鋏。これでもう鋸は生きる価値無しだな」

    「それ、ホームセンターで買った安物じゃなかったのかい?」

    「大量生産の中にはごく稀に、いかな職人でも作り得ない奇跡の一品が生まれることがあるのです」

    「この鋏こそがまさにその、人呼んで、ワン・オブ・サウザンド!」 シャキーン

    「そんな漫画もあったね」

    「せっかくだから何か史上名高い鋏から名前でももらうか。何かいいのあるか?」 シャコシャコ

    「 “舌切” 」

    「あはっ☆たしかに有名だね♪ ……コンチクショウッ!!」

    「ふ、ふ。あとでちゃんとマジックで名前を書いておけよ」

    「切った枝はどうすっかねー。うまいこと挿したら根っこ生えるかな?」

    「植えるあてもないくせに、なぜ君はそういうことをしたがるんだ」

    「そこに剪った枝があるから!」 キリッ

    「そうかい」 グビッ

    196 = 78 :

    db 「フウいいかげん童貞が哀れで哀れで仕方がないから、擬人化案ぐらいは出してあげるわ」

     「擬人化そのものはやっぱしてくんないんスね」

    db 「刃が両手。カシメが眼。その周囲が胴体。ハンドル部分が脚。以上!」

     「新種の妖怪かなんかスかそれ?」

    197 = 78 :

    db 「童貞。貴方も幼女の着るスク水のクロッチをつまんで鋏で切ってみたいお年頃なの?」

     「切りてえのか?」

    db 「一発でジョキっと切れないと白けるじゃないああいうのは」

    db 「カッターとかじゃその辺チョット不安なのよねえ」

    db 「エエやっぱり鋏が安心だわ!」

     「……切りてえのか?」

    198 = 83 :

    「俺がいねえときは、つまむもんとかどうしてんの? 出来合い?」

    「だいたいは自分で作ってるよ」

    「だったら自分で作れ!」

    「そいつは困ったな」 トクトク

    「君が何か用意してくれている後ろ姿を見ながら軽くやるのも好きなんでね」

    「おまえはいったい何デレだァ!?」

    「待って一献、出て一献。君とだと酒が倍美味い」 クス

    「俺には何の得もない!」

    「持ってきた長芋はしっかりもらったくせに」

    「おろすのか? 短冊に切るのか? かける海苔は? 鋏で切るか? 手でちぎるか?」

    「出汁? 醤油? 酢醤油? 辣油とか抜かしやがったらその酒に塩を混ぜるぞ!」

    「今日みたいな日は暖かい出汁をかけて味わいたいね。とろろにして海苔はちぎってくれ」

    「細けえ酒飲みだ」

    「細かく訊いてきたのはそっちじゃないか」 チビチビ

    200 = 78 :


    db 「サア酒と鋏と文明と」

    db 「どれが一番最初に滅ぶのか、デスマッチの始まりよ!!」

     「この野郎……意外と難しい問題を……ッ」


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