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    元スレ新ジャンル「鋏」

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    201 = 83 :

    「からぁん」

    友 チビチビ

    「そのグラス、ガラスだよな?」

    「ガラスだと何だい」

    「ガラスってな水中だと鋏でふつうに切れるって話があるんだけど」

    友 ブフォッ

    「別にうちの庭を消毒してくれんでもええよ?」

    「こ、このグラスはだねえ!」

    「うちのだよオイ。おまえがなんか気に入って勝手に使ってるだけだよ」

    「君は使ってないじゃないか。昔からあったとか言うけど、このグラスは……」

    「ガラスもあれで液体らしいから、同じ液体の中に入るとどうのこうの」

    「ほかのどうでもいいのでやればいいだろう!」

    「試してみたけどふつうに割れた」

    「安物だったからかも知れん。それ、なんか高いんだろ? そいつなら」

    「悪かったのは鋏の方だよ。きっと」 グビッ

    202 = 78 :

     「なんか面白いことねえか? オレがお前に巻き込まれない限りで」

    db 「ソウね」

    db 「じゃあ聖書原理主義者に訊いてご覧なさい」

    db 「主はいつの時点で鋏を創られたのか、と」

    db 「ホホたぶん馬鹿みたいに真面目に考えてくれるから」

     「悪趣味だなあ」

     「でもどういう理屈をひねり出してくるのかにはちょっと興味あるわ」

    203 = 78 :

    db 「童貞! 失われた聖櫃を求めて徳島県をうろついている場合じゃあないわ!」

     「そんなもん探してないし、うろついてもないよ? それに何度も言うけどオレは別に童t

    db 「神殿には聖櫃よりももっと重要なソロモン王の芯切り鋏があったの」

     「お前、『ソロモン王の』をつければ何でも宝になると思ってねえか?」

    db 「ホホ無知な童貞ね! 旧約聖書の列王記をよくお読みなさい」

    db 「バビロン王ネブカドネザルの部下が持ち去ったとされるソロモン王の芯切り鋏……」

    db 「オオもはや貴方が童貞を脱しリア充と伍するには、その力を借りるほか術はないのよ!!」

     「そういうのはルパン三世TVスペシャルでやってくれ」

     「あとオレはだなあ……」

    204 = 83 :

    「このクリスマスケーキは、まさか……」

    「ふと宿願を果たしてみたくなってつい買ってしもうた」

    「なんだ。自作にしては見事すぎるから一瞬驚いたよ」

    「クソがッ! 何でてめえはうちに甘いものが出現すると湧いて出るんだ?」

    「ふ、ふ。酒飲みの勘、かな」

    「いやその勘はおかしい」

    「持ってきたのもいい具合にシャンパンだ。これなら君も呑めるだろう」

    「お茶でいいよ」

    「……うんまあケーキを箸で食うような君だからね」

    「このサンタ人形の首のあたりを、いっぺん鋏で派手に爆砕してみたかったんだ」 ウキウキ

    「危ないなあ。変なところに飛んだらどうするんだ」

    「シャンパン持ってきた奴に言われたかねえよ。その栓と同時に斬首刑な」

    「聖ニコラスは殉教もせずに列聖されやがったんだ」

    「殉教して列聖された聖バレンタインに悪いから、今ここで俺が殺る!」 シャコシャコ

    「君の感性はたまにわけがわからないよ」

    205 = 78 :

     「金がない。さてはゆうべのミカロンか?」

    db 「さすがは童貞・ジ・アルティメット。ホント何もないのね、わたし以外」

     「いやおろせばあるよさすがに」

    db 「でも貴方が困窮の果て、わたしで手首をかッ切るところを見るのは本意じゃないわ」

    db 「何とかしてあげようじゃないの」

     「いやだからおろせばあるんだって……」

    db 「世界のどこかに刀銭ならぬ鋏銭が流通するパラダイスがあるという話よ」

    db 「家にあるだけの鋏をもって旅立ちなさい童貞!」

     「じゃあめんどくせえけどおろしに行ってくるわー」

    206 = 78 :

    db 「オオオ落ち着きなさいどどどどど童貞!」 カシャカシャカシャカシャカシャ

     「まずお前が落ち着け。うるさくてかなわん」

    db 「支柱に絡みついた枯れ蔓を無理矢理引きちぎって処分しようだなんて愚劣なことを!」

    db 「童貞がそんなことをしても、蔓は切れずに掌が切れるだけだって古老も戒めているでしょう!」

    db 「新時代を担うリア充のみが知恵の輪を解きほぐすが如くに枯れ蔓を外せるのよ!」

    db 「童貞は高望みせず鋏で細かく切って外しなさい!!」

     「なあ、お前の中じゃ童貞って、どこまで本来の童貞以上に駄目な生き物になってるの……?」

    207 = 83 :

    「皎々」

    「いい満月だ」 トクトク

    「本当にあなたはそう思っているのですか?」

    「先人の価値観に付和雷同してあれはステキこれもイカスと思い込んでいるだけではないのですか?」

    「ふ、ふ。だから君と呑む酒はやめられない」 チビチビ

    「俺は呑んでねーよ? お茶飲んで柏餅食ってるだけだよ?」 モシャモシャ

    「なんでまた柏餅。いやいいタイミングだったけど」

    「そこの山にー! つやつやした大っきな葉っぱがいっぱいあったから、なんかもったいなくってー!」

    「この丸いの、柏じゃないよね?」

    「でもうちでは代々これが柏餅の定説となっております」 キリッ

    「そうかい。まあ、それもまた手作りの妙味だろう」 モシャモシャ

    「だいたい月は小っちゃすぎて話にならん。小っちゃいなら小っちゃいで、数がほしかったね」

    「真冬に栴檀の枝でも月に重ねて見上げていたまえ」

    「いいねえ。高枝切り鋏で落とせそうな月ってのも」

    「冗談じゃない。鳥の冬場の栄養源になる月なんて御免だよ」 グビッ

    208 = 78 :

    db 「アアこの家には鋏が少ないわ貴方にはわたしへの愛が足りないわ」

     「これ以上あったって使わねえよ。インテリアにでもしろってのか」

    db 「刀がインテリア用品になった以上、その後継者たる鋏だって資格は十分じゃない」

     「インテリアかアレ? 実用品じゃなくなったのは認めるが」

    db 「童貞はこれだから! 鋏の機能美はインテリアとしても十分に堪えうるでしょう?」

    db 「サアわかったら鋏を買いに行くわよ!」

    db 「あらゆる鋏を集めようと思ったらはっきり言ってこの家では手狭に過ぎるわ」

    db 「でもわたしの歓心を買いたければ、その程度のIYHでもまだまだ不十分なくらいなのよ!!」

     「よーしふざけんな買う前からすでにオレのハートはストンだぜッ!!」

    209 = 78 :

     「もしお前が男人格だったなら、そこにはいかなる狂気の物語が紡ぎ出されていたのだろうか」

    U 「ホホ馬鹿な童貞ね略して童貞ね」

    U 「鋏には穴が二つあるのよ? 女に決まっているじゃない!」

     「オレは……おちょくられているのかこいつに……?」

    U 「アアでも奇遇な穴という可能性もあったわね……棒がついている鋏だってあるんだし」

    210 = 83 :

    「さああああ」

    「長いね」 チビチビ

    「うちの葱が根腐れたらおまえのせいな」

    「なぜ」

    「紫陽花がーなんだかとっても赤いからー!」

    「うちの庭土のpHに言ってくれ」

    「おっ。でんでん虫がいる」

    「その辺でも這わすかい?」

    「触角を鋏でちょん切ってもまた生えてくるってマジかな?」

    「そんな悪趣味な酒興はいらんよ」

    「あと十年若けりゃ試してみてたね。惜しい!」

    「君は……つくづく酒飲みの情を解さない奴だな」

    「だって呑まねえもん」 ヘラヘラ

    「まあ、それもいい」 グビッ

    211 = 78 :

    qp 「サア始めるわ!」

     「お前なんでその辺に何十本も刺さっとるぅん?」

    qp 「迫り来る新聞記事どもをばったばったと切り抜いてスクラップするのよ!」

    qp 「刃が駄目になったら別の鋏を引き抜いて使いなさい」

    qp 「新聞どもは絶え間なく襲ってくるわ。少しでも手を休めたら、貴方……死ぬわよ?」

     「刃が駄目になるほどの新聞って、どんだけええええエエエエ!?」

    紙 「ヒュウウウウゥゥゥゥォォォォォォォウウウウウ……」

    qp 「……来たわ! 死にたくなければ、構えなさい!」

     「オレは足利十三代将軍じゃねええええエエエエ!!!!!!!!!1」

    212 = 78 :


    db 「アルファベットの『U』が和鋏の象形文字であることはすでに定説」

     「今でこそ日本にしか残ってねえけどルーツがギリシャなのは知ってるがそれはない」

    213 = 83 :

    「そろそろおいとましようか」

    「残りも少ないし、これは好きにしてくれ」 トン

    「酒なんか置いてかれても俺は呑まんよ」

    「その割に料理やお菓子には使うじゃないか」

    「醤油だって調味料にゃ使うが呑みゃあせんだろ」

    「理屈だね」

    「ああ。これはブランデーだから」

    「それがどうしたァ!」

    「いや、別に」

    「何を目論んどるかしらんが、そんな役に立たん勘は捨ててこーい!」

    「それと親戚にもらった蟹切り鋏が余ってるんだがいるかい?」

    「よーしふざけんなコンチクショウッ!」

    「ブランデーはブランデーケーキになるかも知れんが、蟹切り鋏は蟹鍋にゃならんわァ!」

    「どうかな」

    「なんせ平成というのは、有史来、一番不思議な時代だからねえ」 クス

    214 = 78 :

    db 「ドリルは男の浪漫、鋏は二人の愛」

     「はいそこ勝手な標語を作らない」

    db 「ンマアやっぱり童貞だから知らなかったのね」

    db 「二つの刃が一つになって働く鋏は昔から夫婦和合のシンボルなのよ?」

     「はいそこ一瞬信じてしまいそうなたちの悪い嘘つかなーい」

    db 「ホホ頑なな童貞だこと」

    db 「アイルランドやブルターニュ、古代ペルシアの風俗をよおく調べてご覧なさいな!」

    215 :

    淡々と続けてるな支援

    216 = 78 :

    db 「決めシーンでの持ち物をすべて鋏に換えてみるスレ」

     「オレは立てんぞ?」

    db 「コラ職人大募集よ!」

     「立てたきゃ自分で立てな」

    217 = 83 :

    「いいところに来た。あるもので適当に作ってくれ」

    「客に一品作らすたぁ、最近のアル中は世の中舐め腐ってやがるッ!」 ガチャ

    「言いつつ冷蔵庫チェックかい」

    「ブロッコリーの白和えでいいな? ん~、かにかまとハム、どっち入れる?」

    「両方」

    「贅沢ぬかすなコンチクショウッ!  許さん! かたっぽは別のおかずで使え!」

    「二品も作ってもらえるとは」 トクトク

    「作らんわァ! かにかまな? 異論は認めん!」 チャキ

    「鋏なんか使わなくたって、手で裂けるだろう」

    「ブロッコリーの方だよ。鋏入れた方が上手いこと余分な茎をつけずに先っぽだけ切れる」

    「包丁で細かく切ってたら身が余計に飛び散るからな」

    「そうかい」

    「で、無駄なく残った茎とハムとでもう一品というわけか」

    「おのれ外道がッ!」 クワッ

    「いやはやまったく、ツンデレと鋏は使いようだよ……」 クス

    218 = 78 :


    db 「挟むものはこれからすべて鋏で代用するように」

     「無ww茶www」

    219 :

    二人同時に書くなよ紛らわしい

    220 = 78 :


    db 「今後は鋏に似た形のものも鋏で代用するように」

     「無茶がww進化したwwwww」

    db 「成らぬは人の為さぬなりけりよ!」

    221 = 83 :

    「をや刀。どっから盗んできたのかな」

    「親戚の家にあったやつだよ。いちおう江戸末期に打たれた本物らしい」

    「改築するんで色々と預かってるんだ」 トクトク

    「なんか家ん中ごちゃついてんのはそれか」

    「薄暗い部屋で刀掛けの前で呑んでると、なんか悪代官くせえ」

    「じゃあ君はどこぞの材木問屋か」

    「袖の下はねえけどな」

    「じゃあ小皿の上でいい」

    「うわーまーたはじまったーコンチクショーゥ」

    「見て、触れるんだ。安いもんだろう」

    「刀なんてどれも一緒じゃーん」

    「一緒ならここまで現代人の中二心をくすぐらないさ」 クス

    「くすぐるのは鞘だろ。あと小柄とか笄とか鍔とか」

    「あー。でも現代なら小柄より化粧鋏挿してた方が便利かな?」 ツンツン

    「街でお武家さまを見かけたら勧めてみればいいよ」 チビチビ

    222 = 78 :

    db 「安心なさい童貞」

     「その台詞はもうある意味フラグだよな?」

    db 「わくわくさんに匹敵する鋏遣いを極めたとき、貴方は同時に知るはずよ」

    db 「加藤鷹に匹敵するテクニックをも同時に手に入れていたということにね!」

    db 「だからもっともっとわたしを使いこなすのよ!」

     「『わくわくさん―鋏』は『加藤鷹―女』と等価値ッ!?」

    db 「ンマア知らなかったの?」

    db 「どうりで童貞輪廻を延々とハムスターみたいに回り続けているはずだわ!」

    223 = 78 :

    U 「兜の鍬形からガンダムのアレに至るまで、戦士たちはみな鋏の力にあやかろうとしてきたわ」

     「和鋏に何の力があるっつうんだ……」

    U 「敵の命運を裁ち切るおまじないよ」

    U 「マア実のところガンダムの方は御禿に訊かなきゃわかんないんだけど、たぶんそうじゃないかしら」

     「黙れ! オレは騙されんぞ!」

     「ぶち上げたホラの半分をあとから否定することで残り半分を信じさせようとする手になんか!」

    U 「ホホ好きになさいな。童貞階段を無限に下り続けていたいのなら!」 シャコシャコ

    225 = 83 :

    「いよう」 ガラッ

    「寒いと思ったら、雪降ってやがるわー」

    「そうかい」

    「こういう日に熱燗をやれない君は大変だな」 チビチビ

    「うわぁぁああぁああぁ! 心の友と思ってた奴が自分だけすでに暖まってたァ!」 

    「そんな時は? ……バンホーテンココア!」 ニカッ

    「無いよ」

    「きが くるっとる」

    「酒粕はふつうに食ってたろう。冷蔵庫にあるから好きにしたまえ」

    「庭の葱もらうぞ!」

    「どうぞ」

    「葱でも刻んで乗せて焼かなきゃやってらんねえ!」 チョキチョキ

    「豪快にちぎって乗せて焼きなよ」

    「オッサンのつまみくせえな。俺には葱をちぎって食う文化はない!」

    「変なところで君は細かい」 チビチビ

    226 = 78 :


    db 「鋏の指穴からずっと景色を覗いていると、稀に鋏の世界へ行けるというわ」

     「どんな世界だ」

    227 = 78 :

     「SYAAYYYYAHHHHHHH!!!!」

    db 「わたしもマアずいぶんと長いこと鋏をやっているけれど、始めて見たわ」

    db 「刃じゃなくヒットポイントで指を挟んで骨折した人なんて!」

    db 「さすがは童貞。リア充にはできないことを平然とやってのけるわね」

     「おい……鋏……指からどけ」

    db 「でもそこがいとしい、愛くるしい……!!」

     「さっさとどけッ!! 熱いやかんに触れてしまった奴が高速で手を引っ込めるようにッ!」

    228 = 83 :

    「君がいつも使っているその鋏は裁ち鋏だね?」

    「水平に構えたら銃にもなるぜ?」 チャキッ

    「刃物を人に向けるなと親に言われなかったのかい」 チビチビ

    「裁ち鋏で紙を切っていると、紙は布より堅いから刃を傷めると聞いたことがある」

    「本来の対象である布を切りやすいよう事務鋏より刃が薄いから、傷みやすいらしい」

    「あんまり考え無しに切っていると、布が切りにくくなるぞ」

    「いんだよ細けえこたぁ!」

    「せっかく親から継いだ鋏なんだろ。少しは手入れに気を配った方がいいんじゃないか?」

    「何日かに一回ぐらいしか使ってねーし、何の影響もねーよ別に」

    「そうかい」

    「君の鋏だ、好きにしたまえ……」

    「どうもおまえはたまあに変なところにこだわるねえ」

    「鏡なら洗面台だよ」 グビッ

    229 = 78 :

    db 「貴方の死後もわたしが常に傍らへありますように」 シャキ

     「呪うなッ!」

    db 「貴方曹洞宗だったわね。今すぐキリスト教に改宗なさい」

     「何のためにだ!?」

    db 「死後列聖されて、庭師か床屋か仕立屋かペーパークラフトかあたりの守護聖人になるためよ」

    db 「そうすれば貴方は図像の中で、そのシンボルたるわたしと永遠に一緒になれるのよ!!」

     「その手の守護聖人ならもういるよ……あ、でもペーパークラフトはどうだろ?」

    230 = 78 :

    db 「どうせ鋏で髪を切るのなら、そのまま髪留めも鋏を使えばいいじゃない」

     「どこまで傲慢な鋏至上主義者なのこの刃物さん!」

    db 「たいして変わりゃしないわよ」

    db 「結んだリボンの形と鋏の形は単純化すれば相似形なんだから」

     「ねえよw」

    231 = 83 :

    「つやつや」

    「まだあったのかこれ」

    「ひと月ぐらいはかかるらしい」

    「その間、お手入れを俺に任せないところだけは、褒めてつかわす」

    「君に道具の扱いなんか任せられるか」

    「江戸末期のだっけ」

    「ああ」

    「するとこれ打った奴も、明治になって、ほかの刃物打ちに転職したのかねー?」

    「散髪脱刀令に合わせて刀の需要が減り、理容鋏の需要が激増したからね」

    「あるいはその後、鋏を打ったのかも知れないな」

    「同じ奴の打った刀と鋏がセットで遺ってたら面白えよなー」

    「変動期のこの上ない生き証人というわけか」

    「名もなきひなびた博物館とか、ひっそりとペアでそろってそうじゃん?」

    「ああ。あったら是非見てみたいもんだよ」

    232 = 78 :

    db 「鋏なら一度は赤いコードか青いコードを切ってみたいわねえ」

     「いまどきそんな起爆装置あンの?」

    db 「アラそう? じゃあ仕方ないわね。貴方チョットピアス穴開けなさいな」

    db 「引っ張って危ないのなら鋏で切ればいいじゃない」 シャキシャキ

     「それも都市伝説だッ!!」

    233 = 78 :

     「近所で葬式があったわ」

    db 「アラたいへん」

    db 「一緒に出かけるわよ童貞!」

     「お前関係ないじゃん」

    db 「ンマア弔鋏も知らないのね最近の無識童貞は!」

     「リア充でも知らないと思うなあ」

    db 「まだ残っていかねない霊魂のつながり・未練を、鋏を鳴らして完全に裁ち切る儀式よ」

    db 「いわゆる『迷わず成仏してくれ!』というやつね」

    db 「弓を鳴らして悪霊を追い払うアレと似たようなものよ」 チャキチャキ

     「……」

     「またこいつはこうやってありそうな嘘をさらっとつく……」

    db 「いまはあまり行われていないけど、江戸時代には普通にあった風習よ?」

    db 「ホホ嘘だと思うのなら為永春水の閑窓瑣談をご覧なさいな!」

    234 = 83 :

    「寒い。寒いよパトラッシュ……むしろ痛いよ」 ガタガタガクガクガタガタブルブル

    「そんな日にわざわざ何しに来たんだ」

    「金時人参が多すぎるから来いっつったのはてめえだ生ける肝硬変伝説!」

    「明日でも明後日でもよかったのに」

    「何か暖まるもんねえか? 酒以外でだ!」

    「暖まるかなと思って、先だってスピリタスに唐辛子を馬鹿みたいに漬け込んだものなら」

    「幼稚なこと思いついてんじゃねーよ人の話聞けや茶碗蒸しにされてえのか蒲鉾野郎」

    「酒はこっちで呑むから、君は梅酒の梅みたいに唐辛子をしゃぶればいいじゃないか」

    「調味料として使う分なら平気なんだろう?」

    「よーしふざけんなヘソに芯挿して燃やすぞお酒の恋人」

    「炒めてる細切り野菜の上に、パリッとしたのを鋏でぱらぱら切って入れるのが人としての道だろうが!」

    「金時人参なら君にあげるほどある。ふつうの唐辛子は砂糖の上の棚だ」

    「おお金時人参のあの柔らかな甘みと唐辛子……もうこれだけでメシが六杯は食えるよな」

    「作ってくれるのかい? ふ、ふ。なら合いそうな酒でも出しておこう」

    「おまえのために作るんじゃねえよ。食わなきゃ俺がいまここで凍え死ぬんだよ!」

    235 = 83 :

    「刃物屋うろついてたら使い道のなさげな鋏見つけたー」 チャキチャキ

    「またスプーンみたいな鋏だね」

    「南瓜収穫用の鋏だってさ」

    「農家でもないのに何でまたそんなニッチなものを」

    「なんだかー! 洒落っ気を感じたのでー!」

    「使うものはいいかげんに扱い、使わないものには手を出してみる……君はわけがわからないよ」

    「梨の収穫用鋏にしなかった慧眼はもっと評価されてもいい」 キリッ

    「そんなもの買ってたらただの馬鹿だろう」

    「うちの庭は先約で一杯なので、南瓜の栽培はぜひこちらでお願いいたします」 ズイ

    「どうりで道具観賞の趣味もないのに見せびらかしに来たわけだ」

    「いいじゃん! どうせ俺に南瓜で何か作らせる気なんだろコンチクショウッ!」

    「先に切れていいのはこの場合こっちの方だと思うんだが」

    「プリンか? あんパンか? シフォンか? 焼酎とかほざきやがったら南瓜でぶち殺すッ」

    「結局作るんじゃないか」

    「まあそう慌てるな。実がなった頃呑んでいた酒に合わせて、そのとき考えればいいさ」

    236 = 83 :

    「栓抜きを貸してくれないか」

    「無いよ」

    「……これをも忍ぶべくんば、いずれかを忍ぶべからざらん」

    「だって俺ビール呑まねえもーん。瓶で持ってきたおまえが悪い」

    「じゃあキッチン鋏でいい」

    「使わないことに定評のあるキッチン鋏の栓抜き機能が、まさか陽の目を浴びる日が来ようとは!」

    「明治の万能鋏には十四の機能があって、ちゃんと使っていたらしい」

    「そりゃあ津軽には雪が七つあるぐらいだしねえ」

    「何を言ってるんだ君は」

    「ただ十三機能まではかろうじて文献で確認・推測できるが、最後の一つが不明なんだ」

    「現物が遺っていれば一発なんだろうがね」

    「それはまた器物再現マニアのハァトをくすぐるお話ですな」

    「そんなもの再現したがるひま人なんかいるのかい?」

    「おめえんちにある薩摩切り子もどきのワイングラスだって、そういうひま人が作ったんだろうが」

    「それもそうだ。ふ、ふ。悪いことを言ったな」 シュポン

    237 = 78 :

     「ひょっとしてお前はカシメを緩めると性格も緩くなってくれるのか?」

    db 「ホホ緩い女なら自分の好きなようにヤれるとでも思っているの?」

    db 「童貞にありがちな妄想ね!」

    db 「緩い女は身持ちの堅すぎる女以上に厄介なのよ! それは鋏も一緒!」

    db 「緩い女、緩い鋏を怪我もせず使いこなせるのは、時代の寵児であるリア充だけ!」

    db 「童貞は無理をせず元から締まり具合が普通のものを選びなさい」

    db 「自分好みに調整しようだなんておこがましいにもほどがあるわ!」

     「何か上手いことたとえているように見えて、オレの質問にはまったく答えてねえな!」

    238 = 78 :

    db 「フウ貴方は蟹の鋏は食べるのに、わたしはいつまでたっても食べてくれないのね」

     「食べる、の意味がすりかわっとるよ」

    db 「童貞相手の恋はホント疲れるわ」

    db 「でもこれがわたしの選んだ恋なのよ、エエけして後悔などしない!」 シャキンシャキン

     「オレはいいかげんウザいんですが」

    239 = 83 :

    「ごろごろ」

    「鳴ってるねえ」

    「昔の聖人はこういうとき、むしろ居住まいを正して呑んでいたそうだ」 トクトク

    「孔子がやってたのは前半だけだろ」

    「そうかい」 チビチビ

    「落ちるかな落ちるかな?」 ワクワク

    「鋏でも掲げてその辺を走り回っていたまえ」

    「落ちるじゃん!」

    「雷さまってのはたまに落っこちては木の股とかに挟まってるもんだからね」

    「鋏なら金属だし股もあるし、ちょうどいいじゃないか」

    「落ちた瞬間素早く切れば、まあ、大丈夫だろう」

    「さすがに電気より速く動ける自信はねーよ」

    「落ちてきた雷さまやら雷獣やらを食った話もあるが、君ならどう料理する?」

    「肴にするのは音だけにしておきな! このいやしんぼめ!」

    「どんっ!」

    240 = 78 :

     「また……寝てる間にオレの髪を勝手に切ったなこいつ」

    db 「人間でいうところの、添い寝してきてキス、に相当する行為よ」

    db 「種が違うんだから愛情表現の文化にも差異があることを受け入れなさい」

     「そもそもてめえを受け入れる気自体ないわああアアアア!!」

     「ちょっとこい! 電話帳切ってやるッ!」

    db 「切れるわけないでしょう! DVはやめて!」

    db 「暴力で愛は掴めないのよ! 童貞にはわからないの!?」

     「うるせえ! 今日という今日は切れねえもんに無理矢理刃を立てて反省しやがれッ!!」

    241 = 78 :

     「包丁がない」

    db 「アアそれなら貴方があの邪悪な輝きに魅せられないよう捨てておいたわ」

     「どうやってメシを作れとッ!?」

    db 「キッチン鋏があるじゃないの!」 シャコシャコ

    db 「西洋では肉も魚も鋏で捌く方が多いのよ!」

    db 「菜っ葉だってむしろ繋がることなくきれいに切れるわ!」

    db 「オオなぜ貴方はもっと早くこのことに気付かなかったの! 童貞だからね!?」

     「肉とか魚とかはこの際どうでもいい」

     「この聖護院大根を鋏でどう切れと言うんだ貴様はァッ!!」

    242 = 83 :

    「君んちの栗きんとんはいつになったら無くなるんだ?」

    「さあ」

    「というか何でせっかくあげたあれだけの薩摩芋がことごとく栗きんとんになるんだ」

    「少しはモンブランとかスイートポテトとかにならなかったのかねえ」

    「とりあえずお正月には狂ったように栗きんとんのみを作るのが俺の定説なんで」 キリッ

    「屠蘇も呑まずに何やってんだか」

    「屠蘇も糞もおまえ年中呑んでんじゃん」

    「最初は意味あったのかもしんないけど、いまやもう節目ごとの酒の意味なんか無くね?」

    「鋏買ったとき最初はついてた鋏カバー並に無くね?」

    「君だって正月から延々と栗きんとんばっかり食べてて平気なくせに」

    「いやそろそろあんパンにあんこ代わりに詰め込んでみようかと思ってる」

    「前々から思ってたけど、小豆であんこ作るよりきんとんの方が遙かにラク」

    「じゃあついでに本家あんパンと同じように、酒種でパンをこねたらいい」

    「酒かお菓子か、どっちか片っぽにしなさい!」

    243 = 78 :


    db 「あってよかったお絵かきソフトのはさみツール!」

     「え? あれもお前の支配下なの?」

    db 「ホホたとえデジタルの世界に移行しようとも、わたしは永遠に不滅なのよ!!」

    244 = 78 :

    db 「エエ甲斐性のない童貞オオ意気地のない童貞!」

    db 「貴方はいつになったらわたしのために鋏業界を席捲するの?」

     「しねえよ。お前のためにもオレのためにも」

    db 「新しいタイプの鋏を創り、そこに需要を呼び込みなさい」

     「聞いてくれよオレのソウルシャウト」

    db 「ソウね。貴方華道の家元におなりなさい」

    db 「そして弟子には池坊流でも古流でもない、貴方オリジナルの花鋏を使わせるのよ!」

     「何か似たような感じで教祖の本売りまくってる宗教あったよなあ」

    245 = 83 :

    「ぼー」

    「天下の鵺鳥も、今や動物園で飼い殺しの身、か」

    「本人はチョコチップアイスみたいでかわいいのになー。あの狸の化け損ないに名前盗られちゃって」

    「これだとチョコが多すぎやしないか?」

    「ステキやん」

    「こんななりでも、声だけならば大宮人を震え上がらせていたんだから、わからないもんだ」

    「聴力検査の音を鋏で短くちょん切ったみたいなあれの、何が怖かったんだろーな」

    「君の耳はどうなってるんだ」

    「健康診断で引っかかったことはございません」 キリッ

    「そうかい」

    「ひょい」

    「……あっ!」

    「片面無え! 大怪我したのを保護して、そのまま飼育してるやつかー!」

    「飼い殺しとは悪いことを言ったなあ。すまなかった」

    「きょろきょろ」

    246 = 83 :

    「ちぃーっす」 ガラッ

    「おっ。またいい匂いをさせてきたね。挑発かいこれは」

    「むしろ今のてめえの一言こそが挑発だろ。竹の子アホみたいに下茹でしてたんだよ」

    「匂いだけで呑めるよこれは。ブツが届いてさらにもう一杯だな」

    「自分で買って自分で料理しろッ! 嫌ならワインのコルク栓喉に詰まらせて死ねッ!!」

    「めんどいんだよあれ。もう二度と採れ立てなんか買ってみねえ!」

    「去年も君は同じことを言ってなかったか?」

    「で、皮はどうした」

    「皮ぁ? なんか使い道ないかと思って一応冷蔵庫に放り込んでるよ」

    「よし、君のいつもの癖が役に立ったな。それで何か作ってやろう」

    「適当な形に鋏で切って、刺身のタンポポみたいに飾るのか?」

    「ふ、ふ。さすがの君もこれは知らないだろう」

    「あのごつごつした皮の内皮を剥いでだね。酢の物にしたり、ちょっとピリ辛く和えてみたりするんだよ」

    「……おまえマジ自分で作れるじゃねーかッ!!」

    「あれだろ、蒟蒻芋から蒟蒻作ったり燕の巣の食いかた考えたりとかしたの、おまえだろ!?」

    247 = 83 :

    「見たこと……あるのか」

    「植物園で見た……91% わしが育てた……4% 私がかぐや姫だ……3% その他……2%」

    「誘ってくれればよかったのに」

    「そのとき俺とおまえは知り合っとらんし、だいたい未成年だ」

    「あそこが飲酒禁止なのは知ってるさ」

    「すぐそこにいいパン屋と洋菓子屋もあるし、別に困らないよ」

    「酒か、お菓子か、小料理か! いいかげん決断しろ!」

    「それに竹の花なんざ米の花とたいして変わんねーよ。しょせん同じイネ科だ」

    「それが竹につくから面白いんじゃないか」

    「竹好きなの? おまえ竹の子なの?」

    「竹林で鋏を入れる音というのも、いつかまったりと聴いていてみたいねえ」

    「あーあー。酒飲みの欲望ってな、限りねえなー」

    「竹林で断続的に鋏入れる音って、ふつうに生きてたら一生聞かんぞ」

    「だからこそ世事から離れ、そういうシチュエーションで呑んでみたいんだ」

    「世事から離れるのは勝手だけど、蚊はついてくるよ。竹林じゃ」

    248 = 78 :

    db 「童貞ッ! そこに直りなさい!!」

     「今度はなんスか」

    db 「何も糞もないわッ! 貴方どうもキッチン鋏をあまり使わないようね?」

     「葱とか刻んだり、食い物の袋開けたりには使ってるよ」

    db 「一番よく使っているのはおろし付き皮むき器じゃないのキイイイイイー!!」 シャコシャコシャコ

     「包丁の次にそうなるのは当然だろ」

    db 「チョット待ってなさい!」

    db 「この鋏体に皮むき器とおろしもつけて帰ってくるわ!」

    db 「それまでにちゃんと皮むき器は捨てておくように!!」 シャッカシャッカシャッカ

     「……行っちまった」

     「どう考えても使いにくいだろそれ」

    249 = 83 :

    「 聞いてアロエリーナ、ちょっと言いにくいんだーけど、聞いてアロエリーナ♪ 」

    「 俺がつくったメシをことごとくつまみとして召し上げるあの淫売なんとかしてー!! 」

    「 聞いてくれてあーりがと、アロエリーナ♪ 」 チョキン

    「変な歌うたいながら人んちのアロエ剪らないでくれるかな」

    「だって俺もおまえもこいつを薬にせん以上、メシにするしかねえだろうが」

    「まずその理屈のメカニズムがよくわからない」

    「ふつうに花を観賞するだけじゃ駄目なのかい?」

    「アロエヨーグルトなんてもんがある以上、食える道はあると信じている!」

    「だから何で君はそう無意味な方向にチャレンジャーなんだ」

    「どんなオカン料理が仕上がってもちゃんと食えよてめえッ!?」

    「文句を言いつつ、くれることはくれるんだね」

    「下ごしらえさえ間違わなければ、まあ、食えなくもないだろう」

    「豚肉あたりと合わせて味濃く炒めれば、なんとかなりそうな気はする」

    「蒸留酒系あたりのお供にすれば、あとはどうにかなるかな」

    「酒でごまかさんでも、卵でとじて胡椒すりゃ、万が一の時でもたいがいのもんはなんとか食えらぁ!」

    250 = 78 :

     「なぜに『影を本体から切り離す』道具は鋏ばっかなんだろうか?」

    db 「ンマアじゃあほかに何がいいと言うのこの童貞は」 

     「刀とかナイフとか、普通の刃物だよ」

     「鋏だと刃を一回地面の中までぐさっといかなきゃ切れないじゃん」

     「ここみたいに地面が固かったら使えねえよあれ」

    db 「ホホ知った風な口を利くわね未経験の童貞風情が!」

    db 「実際にやられてみて己の無知と傲慢と童貞を悔やむがいいわ!!」 シャキーン

     「え……? まさかお前できるのあれッ!?」


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