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    元スレ新ジャンル「いない」

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    1 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 10:39:50.86 ID:o9qbH79e0 (+125,+30,-106)
    「そーいやさー」
    「んー?」
    「一番後ろの席ってずっと空いてんじゃん?」
    「あー、女さんな」
    「あ、女さんっていうのか。ずっと見ないけど」
    「クラス替えからこっち、ずっと不登校らしいぜ」
    「ふーん」
    「気になるのか?」
    「いや別に……」
    2 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 10:40:17.25 ID:fmsOZsLt0 (+8,+23,+0)
    これはひどい
    3 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 10:41:06.89 ID:o9qbH79e0 (+89,+29,+0)
    かっとなってやった。反省はしていない
    4 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 10:41:22.99 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-178)
    「ふー、今日も一日疲れたなっと」
    乾いた音を立て下駄箱から落ちる桜色の封筒
    「ラブレターかぁ。男にもついに春到来かー?」
    「いきなり現れるな! あと、にやにやするな!」
    「ほー、しかし綺麗な封筒だな。和紙かね? こりゃ相当気合い入ってるぜ」
    「お前あたりの仕込みじゃねーの?」
    「独り身同士で空しい冗談やらねーって。ま、後で結果教えてくれよ」
    「……いやいや、まさかね」
    5 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 10:41:28.96 ID:tCtvSPdTO (+24,+29,-19)
    新ジャンル学園に稲居先生ってキャラがいたな
    6 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 10:42:12.53 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-92)
    桜色の封筒の中は、同じ桜色の便箋で
    どこか几帳面そうな小さな字

    『ずっと前から貴方のことが好きでした
     明日放課後屋上で
     きっとお返事待ってます
     
     女』

    「女さん、ね……。
     学校に来ない奴がどうやって手紙出すってんだ。
     友の悪戯だな、こりゃ」

    便箋を机に投げたとき、花の香りがかすかに漂った
    7 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 10:43:40.71 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-86)
    「なんだかんだ言って屋上に来るって、俺もお人好しだなあ」
    夕焼けに染まる屋上は、冷たい風が吹いていて
    「誰もいねえじゃん。やっぱ悪戯か」
    諦めて帰ろうとした時に、ふと何かの気配を感じ
    「……気のせいか」
    はかない花の香りとともに、一陣の暖かな風が吹く
    8 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 10:45:52.63 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-89)
    「だから知らねって」
    「女友あたりに手紙書いて貰っただろ」
    「あいつはそんなに綺麗な字書けねーよ……あ、嘘ですごめんなさいすいません」
    じゃれる友と女友に苦笑して
    「……ん?」
    机を探る手にこつんと当たった軽い違和感
    花色和紙の小さな封筒
    9 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 10:47:48.31 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-142)
    花色の封筒の中は花色の便箋
    小さな字は少し震えていて
    『いらしてくださってありがとうございます
     ふつつか者ではありますが
     末永くよろしくお願いいたします
     
     女』

    「こりゃマジっぽいすなー」
    女友「男君やるねえ」
    「いやいや君らの悪戯だろ、これ」
    「だから知らねって」
    女友「女の子の純情踏みにじっちゃだめよー」
    「俺の純情はどうなる」

    どこかで誰かが笑った気がして
    振り向いた男の鼻を、花の香りがくすぐった
    10 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 10:50:01.40 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-166)
    男の机の上に若草色の風呂敷包み
    開けると中からは漆塗りの弁当箱
    「いつの間に……」
    「こんなもん置かれて気づかないってありえんわ。授業中寝てたな」
    「うるせって、そういうならお前は見たのか」
    「いや、気がついたら置いてあったな」
    「……なんだそれ」
    「ん、でもこの卵焼きうめー」
    無遠慮な友の手を軽くはたいて箸を付ける
    「これは……こんなうまい飯は初めて食ったな」
    「へえへえ羨ましいこって」
    風呂敷の端をそっと嗅ぐと、かすかに甘い花の香り
    11 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 10:51:21.92 ID:RJ4LrSx+0 (+24,+29,+0)
    いいぞ、どんどんやれ!
    12 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 10:53:53.93 ID:23pDmn+uO (+16,+26,+0)
    こえーよw
    13 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 10:54:48.18 ID:DCGLuAJRO (+17,+22,-2)
    支援すべき時だな
    14 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 10:56:10.60 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-164)
    「なんだってんだ、一体……」
    自宅に戻って悩む男
    「あ、弁当箱洗わないとな……あれ?」
    鞄に入れた弁当箱は姿を見せず
    代わりにあるのは藤色の封筒

    藤色の便箋に踊るのは最早見慣れた小さな字
    『勝手な真似をしてすみません
     ご迷惑とお思いでなければ
     明日からも作らせて頂いていいですか
     
     女』

    「あんだけうまかったら文句言えないけど、な……」
    鞄にこもる花の香りは風呂敷包みの残り香か
    15 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 10:57:27.83 ID:SMiibTF0O (+19,+29,-2)
    ホラーにも転用できるな
    16 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 10:59:04.36 ID:o9qbH79e0 (+89,+29,+0)
    というか、現実にこんなん起きたら俺は泣く
    17 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:00:51.51 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-263)
    「いや人間異常事態にも慣れるもんですな」
    女友「一月も続けばねー……あ、この筍もおいしい」
    「お前ら、人の弁当に手をつけながら言いたい放題だな」
    「で、結局女さんとは会えたのか」
    「一度も見てない……どんな奴なんだろうな」
    女友「いや、周りにも聞いてみたけどさー、彼女学外編入組らしくって、知り合いもいないみたいね」
    「前の学年で同じクラスの奴も覚えて無いって言うし」
    「なんだそりゃ」
    「幻の女?」
    女友「女はミステリアスなほど美しいってね」
    「そういうレベルの問題か?」

    男の元に残るのは、花の香りとともに届く小さな封筒の束

    18 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:03:28.29 ID:ECM/K+iJO (-22,-10,+0)
    支援
    19 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:06:28.20 ID:L0901LGIO (+10,+25,+0)
    期待してるよ
    20 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:08:48.62 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-134)
    先生「残念ながら教えられん」
    「そこをなんとか」
    先生「色々世間がうるさいんだよ、察してくれ」

    「住所を突き止めればなんかわかるかと思ったが……」
    「ありがとう、でもなんか安心したわ」
    「安心?」
    「なんか、知ってしまったら今の状態が壊れるってかな」
    「いやいやいや、さすがにこのままってわけにもいかんだろう」
    「会いたきゃあっちから来るんじゃないかな、なんて」
    「……お前がそれでいいならいいが」
    「すまん」
    「気にすんな」
    21 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:11:54.88 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-103)
    その日いつもと違っていたのは
    薄紅色の封筒の中身

    『今度の日曜の朝10時
     よろしければご一緒下さい
     
     女』

    花の香りの手紙とともに入っていたのは
    遊園地の切符

    「デート、なのかな……」
    「いよいよご対面、てか?」
    女友「失礼のない格好して行きなさいよ」
    22 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:12:18.38 ID:vOO0tSyvO (+25,+29,-3)
    初めてのVIPでこんな良スレに当たるとは
    23 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:13:23.47 ID:FUD0zXt00 (+0,+6,+2)
    >>22
    半年ROMってろ
    24 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:17:03.46 ID:EQlKvnh80 (+24,+29,-35)
    新ジャンル「誰もその姿を見た者はいない」ってのがあったっけ
    25 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:17:46.27 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-89)
    「案の定、というかなあ……」
    午前10時はとうに過ぎ、それでも女は現れず
    「チケットもったいないし、一人で回るか」
    ご丁寧にも悪友が作ったコースを一瞥し
    「さてお嬢様、ご一緒に巡りましょうか」
    冗談めかしてそこにいない女に右手を差し伸べる
    26 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:21:07.30 ID:OXJsY5jL0 (-9,+5,+0)
    これは良スレ
    27 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:21:19.90 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-119)
    デートコースをただ一人、空しく巡ったしめとして
    「さすがにこれ一人はきついわ」
    夕焼けに映える観覧車

    係員「お客さん、着きましたよ」
    声をかけられ目覚めて見れば
    「ありゃ、いつの間にか寝ていたのか……」
    ふと気づくのは室内にたちこめる花の香りと
    「もう驚かないけどな」
    向かいの席に忘れ去られた、茜色の小さな封筒
    28 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:23:12.03 ID:RJ4LrSx+0 (+29,+29,-5)
    これは・・・観覧車に張り付いてるのか・・・?w
    29 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:23:20.67 ID:i3s8YJdEO (-12,+2,+0)
    期待
    30 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:23:57.64 ID:SLisdiq/0 (+19,+29,-14)
    絶望先生のまといみたいだな

    支援
    31 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:26:59.56 ID:72YZr9Dk0 (-22,-10,+0)
    支援
    32 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:27:23.59 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-77)
    『今日はありがとうございました
     また今度ご一緒させて頂けたら幸いです
     
     女』

    「一緒に回ったわけでも……ないよな?」
    観覧車での夢の中、かすかな記憶に残るのは
    「お慕いして……おります……」
    震える古風な告白と、頬に触れた柔らかな……
    33 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:27:27.46 ID:23pDmn+uO (+24,+29,-10)
    花の香りってなんか良いな
    34 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:30:18.76 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-142)
    「で、結局会えなかったのかよ」
    「会えなかったというか……」
    「せっかく俺が苦心してデートコースを設定してやったのに」
    「おう、一応感謝する。あの通りに一周してきたぜ」
    「アホか……って、なんか悩んでねえか?」
    「ああ、いや……あの声、どこかで……」
    「声?」
    「なんでもねーよ」
    そう、きっとなんでもないこと。思い出とも言えない些細な記憶
    それは花の香りとともに……
    35 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:36:38.20 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-41)
    いつからでしょうか、私の心が壊れ始めたのは
    両親に追い出されるようにこの町にやってきたときから?
    この家が、祖父が妾にあてがった物だったと知ってから?
    あるいは、ずっとずっと前からだったのかも知れません
    36 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:36:50.99 ID:rqGARqpcO (+37,+29,-10)
    女はキューティーハニーかギアス所有者なのか?w
    37 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:37:17.09 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-59)
    周囲から見れば私は暗い少女だったのでしょう
    別の町から入学してきた私には友達が出来ませんでした
    いえ、生まれた町にさえ、友達と呼べる人はいなかったような気がします
    教室の中、私は一人で
    何をするでもなくただ一人で
    机に向かっておりました
    38 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:37:43.06 ID:o9qbH79e0 (+89,+29,-1)
    >>36
    そこは追求せんとってw
    39 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:38:44.91 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-34)
    それは学校からの帰り道
    私は訳もなく立ちすくんでしまいました
    私がここにいる意味は何だろう
    そう考えてしまったとき
    私など、いてもいなくても何も変わらない
    そう気づいてしまったとき
    誰もいない、誰も近寄らない家に
    一人で帰るのが怖くなってしまったのです
    40 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:39:37.86 ID:o9qbH79e0 (+90,+30,-24)
    「大丈夫?」
    優しく声をかけてくれたのは、貴方
    道に迷ったと思われたのでしょうか
    私の手を、少し恥ずかしそうに引いて
    家までの道を連れて行ってくださいました
    41 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:40:00.01 ID:o9qbH79e0 (+90,+30,-46)
    「なんていうか、風流な家だね」
    貴方の言葉一つで
    ただ閑散と寂しいだけだった家が
    何か誇らしげな物に変わったような
    そんな気がしたのです
    ここにいてもいいと
    教えて貰ったように感じたのです
    42 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:41:08.82 ID:o9qbH79e0 (+90,+30,-20)
    「ありがとう……ございます」

    やっと紡いだ言の葉は
    道案内よりも
    もっと大事な何かのお礼でした
    43 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:41:29.35 ID:o9qbH79e0 (+90,+30,-41)
    貴方にとっては些細な思い出
    ほんの半刻にも満たないわずかな間
    それでも私にとっては
    これまでの人生でもっとも素敵な思い出でした
    44 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:42:39.28 ID:o9qbH79e0 (+90,+30,-21)
    私の体と心はままならず
    通学は愚か
    家から出られない日々が増えていきました
    数少ない貴方を見つめるその度に
    貴方は友達と楽しげに笑いあっていました
    45 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:43:36.19 ID:o9qbH79e0 (+90,+30,-21)
    私は思い描きます
    貴方の笑うその傍らで
    お友達と一緒に微笑む私の姿を
    そっと差し出す私のお弁当を
    貴方がおいしいと笑ってくださるのを
    46 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:43:52.46 ID:o9qbH79e0 (+90,+29,-29)
    私は思い描きます
    貴方と逢瀬を重ねるのを
    夕焼けのさす観覧車で
    優しく口づけを交わす二人を
    47 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:44:42.31 ID:o9qbH79e0 (+90,+30,-21)
    現実の私はこんなにも臆病で
    貴方はきっと私には気づかない
    庭の花々を眺めては
    思い描く幸せな日々は儚い夢
    48 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:45:14.25 ID:o9qbH79e0 (+90,+30,-16)
    戸を叩く音がします
    誰も訪れるはずのないこの家に
    どんな用があるのでしょう
    私は重い体を引きずるように
    戸口に確かめに参ります
    49 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:46:14.47 ID:o9qbH79e0 (+84,+29,-2)
    「見つけた……」
    50 : 以下、名無しにか - 2008/11/23(日) 11:47:43.46 ID:o9qbH79e0 (+95,+30,-106)
    「いやしかし、女さんは料理上手だねえ」
    「だから人の物を勝手に食うなと」
    「大丈夫ですよ、皆さんの分もございます」
    女友「女ちゃんはいいこだっ! んー、このきんぴらがまた絶品」
    「女友も女さんの爪の垢でも飲ませてもら……って、痛い痛い!」
    女友に締め上げられる友を見て
    くすくすと笑う女
    どこか安心したように、女を見守る男


    fin
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