元スレ新ジャンル「いない」
新ジャンル覧 / PC版 /みんなの評価 : △
1 :
男「そーいやさー」
友「んー?」
男「一番後ろの席ってずっと空いてんじゃん?」
友「あー、女さんな」
男「あ、女さんっていうのか。ずっと見ないけど」
友「クラス替えからこっち、ずっと不登校らしいぜ」
男「ふーん」
友「気になるのか?」
男「いや別に……」
2 :
これはひどい
3 = 1 :
かっとなってやった。反省はしていない
4 = 1 :
男「ふー、今日も一日疲れたなっと」
乾いた音を立て下駄箱から落ちる桜色の封筒
友「ラブレターかぁ。男にもついに春到来かー?」
男「いきなり現れるな! あと、にやにやするな!」
友「ほー、しかし綺麗な封筒だな。和紙かね? こりゃ相当気合い入ってるぜ」
男「お前あたりの仕込みじゃねーの?」
友「独り身同士で空しい冗談やらねーって。ま、後で結果教えてくれよ」
男「……いやいや、まさかね」
5 :
新ジャンル学園に稲居先生ってキャラがいたな
6 = 1 :
桜色の封筒の中は、同じ桜色の便箋で
どこか几帳面そうな小さな字
『ずっと前から貴方のことが好きでした
明日放課後屋上で
きっとお返事待ってます
女』
男「女さん、ね……。
学校に来ない奴がどうやって手紙出すってんだ。
友の悪戯だな、こりゃ」
便箋を机に投げたとき、花の香りがかすかに漂った
7 = 1 :
男「なんだかんだ言って屋上に来るって、俺もお人好しだなあ」
夕焼けに染まる屋上は、冷たい風が吹いていて
男「誰もいねえじゃん。やっぱ悪戯か」
諦めて帰ろうとした時に、ふと何かの気配を感じ
男「……気のせいか」
はかない花の香りとともに、一陣の暖かな風が吹く
8 = 1 :
友「だから知らねって」
男「女友あたりに手紙書いて貰っただろ」
友「あいつはそんなに綺麗な字書けねーよ……あ、嘘ですごめんなさいすいません」
じゃれる友と女友に苦笑して
男「……ん?」
机を探る手にこつんと当たった軽い違和感
花色和紙の小さな封筒
9 = 1 :
花色の封筒の中は花色の便箋
小さな字は少し震えていて
『いらしてくださってありがとうございます
ふつつか者ではありますが
末永くよろしくお願いいたします
女』
友「こりゃマジっぽいすなー」
女友「男君やるねえ」
男「いやいや君らの悪戯だろ、これ」
友「だから知らねって」
女友「女の子の純情踏みにじっちゃだめよー」
男「俺の純情はどうなる」
どこかで誰かが笑った気がして
振り向いた男の鼻を、花の香りがくすぐった
10 = 1 :
男の机の上に若草色の風呂敷包み
開けると中からは漆塗りの弁当箱
男「いつの間に……」
友「こんなもん置かれて気づかないってありえんわ。授業中寝てたな」
男「うるせって、そういうならお前は見たのか」
友「いや、気がついたら置いてあったな」
男「……なんだそれ」
友「ん、でもこの卵焼きうめー」
無遠慮な友の手を軽くはたいて箸を付ける
男「これは……こんなうまい飯は初めて食ったな」
友「へえへえ羨ましいこって」
風呂敷の端をそっと嗅ぐと、かすかに甘い花の香り
11 :
いいぞ、どんどんやれ!
12 :
こえーよw
13 :
支援すべき時だな
14 = 1 :
男「なんだってんだ、一体……」
自宅に戻って悩む男
男「あ、弁当箱洗わないとな……あれ?」
鞄に入れた弁当箱は姿を見せず
代わりにあるのは藤色の封筒
藤色の便箋に踊るのは最早見慣れた小さな字
『勝手な真似をしてすみません
ご迷惑とお思いでなければ
明日からも作らせて頂いていいですか
女』
男「あんだけうまかったら文句言えないけど、な……」
鞄にこもる花の香りは風呂敷包みの残り香か
15 :
ホラーにも転用できるな
16 = 1 :
というか、現実にこんなん起きたら俺は泣く
17 = 1 :
友「いや人間異常事態にも慣れるもんですな」
女友「一月も続けばねー……あ、この筍もおいしい」
男「お前ら、人の弁当に手をつけながら言いたい放題だな」
友「で、結局女さんとは会えたのか」
男「一度も見てない……どんな奴なんだろうな」
女友「いや、周りにも聞いてみたけどさー、彼女学外編入組らしくって、知り合いもいないみたいね」
友「前の学年で同じクラスの奴も覚えて無いって言うし」
男「なんだそりゃ」
友「幻の女?」
女友「女はミステリアスなほど美しいってね」
男「そういうレベルの問題か?」
男の元に残るのは、花の香りとともに届く小さな封筒の束
19 :
期待してるよ
20 = 1 :
先生「残念ながら教えられん」
友「そこをなんとか」
先生「色々世間がうるさいんだよ、察してくれ」
友「住所を突き止めればなんかわかるかと思ったが……」
男「ありがとう、でもなんか安心したわ」
友「安心?」
男「なんか、知ってしまったら今の状態が壊れるってかな」
友「いやいやいや、さすがにこのままってわけにもいかんだろう」
男「会いたきゃあっちから来るんじゃないかな、なんて」
友「……お前がそれでいいならいいが」
男「すまん」
友「気にすんな」
21 = 1 :
その日いつもと違っていたのは
薄紅色の封筒の中身
『今度の日曜の朝10時
よろしければご一緒下さい
女』
花の香りの手紙とともに入っていたのは
遊園地の切符
男「デート、なのかな……」
友「いよいよご対面、てか?」
女友「失礼のない格好して行きなさいよ」
22 :
初めてのVIPでこんな良スレに当たるとは
23 :
>>22
半年ROMってろ
24 :
新ジャンル「誰もその姿を見た者はいない」ってのがあったっけ
25 = 1 :
男「案の定、というかなあ……」
午前10時はとうに過ぎ、それでも女は現れず
男「チケットもったいないし、一人で回るか」
ご丁寧にも悪友が作ったコースを一瞥し
男「さてお嬢様、ご一緒に巡りましょうか」
冗談めかしてそこにいない女に右手を差し伸べる
27 = 1 :
デートコースをただ一人、空しく巡ったしめとして
男「さすがにこれ一人はきついわ」
夕焼けに映える観覧車
係員「お客さん、着きましたよ」
声をかけられ目覚めて見れば
男「ありゃ、いつの間にか寝ていたのか……」
ふと気づくのは室内にたちこめる花の香りと
男「もう驚かないけどな」
向かいの席に忘れ去られた、茜色の小さな封筒
28 = 11 :
これは・・・観覧車に張り付いてるのか・・・?w
30 :
絶望先生のまといみたいだな
支援
32 = 1 :
『今日はありがとうございました
また今度ご一緒させて頂けたら幸いです
女』
男「一緒に回ったわけでも……ないよな?」
観覧車での夢の中、かすかな記憶に残るのは
?「お慕いして……おります……」
震える古風な告白と、頬に触れた柔らかな……
33 = 12 :
花の香りってなんか良いな
34 = 1 :
友「で、結局会えなかったのかよ」
男「会えなかったというか……」
友「せっかく俺が苦心してデートコースを設定してやったのに」
男「おう、一応感謝する。あの通りに一周してきたぜ」
友「アホか……って、なんか悩んでねえか?」
男「ああ、いや……あの声、どこかで……」
友「声?」
男「なんでもねーよ」
そう、きっとなんでもないこと。思い出とも言えない些細な記憶
それは花の香りとともに……
35 = 1 :
いつからでしょうか、私の心が壊れ始めたのは
両親に追い出されるようにこの町にやってきたときから?
この家が、祖父が妾にあてがった物だったと知ってから?
あるいは、ずっとずっと前からだったのかも知れません
36 :
女はキューティーハニーかギアス所有者なのか?w
37 = 1 :
周囲から見れば私は暗い少女だったのでしょう
別の町から入学してきた私には友達が出来ませんでした
いえ、生まれた町にさえ、友達と呼べる人はいなかったような気がします
教室の中、私は一人で
何をするでもなくただ一人で
机に向かっておりました
38 = 1 :
>>36
そこは追求せんとってw
39 = 1 :
それは学校からの帰り道
私は訳もなく立ちすくんでしまいました
私がここにいる意味は何だろう
そう考えてしまったとき
私など、いてもいなくても何も変わらない
そう気づいてしまったとき
誰もいない、誰も近寄らない家に
一人で帰るのが怖くなってしまったのです
40 = 1 :
男「大丈夫?」
優しく声をかけてくれたのは、貴方
道に迷ったと思われたのでしょうか
私の手を、少し恥ずかしそうに引いて
家までの道を連れて行ってくださいました
41 = 1 :
男「なんていうか、風流な家だね」
貴方の言葉一つで
ただ閑散と寂しいだけだった家が
何か誇らしげな物に変わったような
そんな気がしたのです
ここにいてもいいと
教えて貰ったように感じたのです
42 = 1 :
女「ありがとう……ございます」
やっと紡いだ言の葉は
道案内よりも
もっと大事な何かのお礼でした
43 = 1 :
貴方にとっては些細な思い出
ほんの半刻にも満たないわずかな間
それでも私にとっては
これまでの人生でもっとも素敵な思い出でした
44 = 1 :
私の体と心はままならず
通学は愚か
家から出られない日々が増えていきました
数少ない貴方を見つめるその度に
貴方は友達と楽しげに笑いあっていました
45 = 1 :
私は思い描きます
貴方の笑うその傍らで
お友達と一緒に微笑む私の姿を
そっと差し出す私のお弁当を
貴方がおいしいと笑ってくださるのを
46 = 1 :
私は思い描きます
貴方と逢瀬を重ねるのを
夕焼けのさす観覧車で
優しく口づけを交わす二人を
47 = 1 :
現実の私はこんなにも臆病で
貴方はきっと私には気づかない
庭の花々を眺めては
思い描く幸せな日々は儚い夢
48 = 1 :
戸を叩く音がします
誰も訪れるはずのないこの家に
どんな用があるのでしょう
私は重い体を引きずるように
戸口に確かめに参ります
49 = 1 :
男「見つけた……」
50 = 1 :
友「いやしかし、女さんは料理上手だねえ」
男「だから人の物を勝手に食うなと」
女「大丈夫ですよ、皆さんの分もございます」
女友「女ちゃんはいいこだっ! んー、このきんぴらがまた絶品」
友「女友も女さんの爪の垢でも飲ませてもら……って、痛い痛い!」
女友に締め上げられる友を見て
くすくすと笑う女
どこか安心したように、女を見守る男
fin
みんなの評価 : △
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