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元スレ梨子 「ひぐらしのなく頃に」
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千歌 「……ぃ たぃ…ょ 梨 ……こ ちゃ……ん」
千歌 「ゎた… し ち…が ぅのに…!」
音がやんだ。肉や骨の音も、千歌ちゃんの声も
梨子 「あはっ…あはははははっ…!!!」
……ふと、意識が途切れた。
私の体は魂が抜けたかのように崩れ落ち、血まみれになった千歌ちゃんにもたれ掛かるように倒れた。
それからの記憶は…いや、それ以前の記憶さえ
“今”はもう残っていない。
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千歌 「ゎた… し ち…が ぅのに…!」
音がやんだ。肉や骨の音も、千歌ちゃんの声も
梨子 「あはっ…あはははははっ…!!!」
……ふと、意識が途切れた。
私の体は魂が抜けたかのように崩れ落ち、血まみれになった千歌ちゃんにもたれ掛かるように倒れた。
それからの記憶は…いや、それ以前の記憶さえ
“今”はもう残っていない。
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千歌 「でね! こないだ梨子ちゃんと行ったお店のパフェが本当に美味しくて!」
曜 「へー、いいなぁ。私も行きたかったよ」
梨子 「……。」
千歌 「曜ちゃん今日練習無いんでしょ? 一緒に行こうよ」
曜 「うん、行くいく! 梨子ちゃんも行くでしょ?」
梨子 「……あっ、うん。もちろん」
千歌 「どうしたの梨子ちゃん。さっきからぼーっとしちゃってさ」
梨子 「千歌ちゃんには言われたくない。…いや、ただぼーっとしちゃってただけ。ごめんね」
千歌 「そっかぁ。……あっ、思い出したぁっ!」
曜 「へー、いいなぁ。私も行きたかったよ」
梨子 「……。」
千歌 「曜ちゃん今日練習無いんでしょ? 一緒に行こうよ」
曜 「うん、行くいく! 梨子ちゃんも行くでしょ?」
梨子 「……あっ、うん。もちろん」
千歌 「どうしたの梨子ちゃん。さっきからぼーっとしちゃってさ」
梨子 「千歌ちゃんには言われたくない。…いや、ただぼーっとしちゃってただけ。ごめんね」
千歌 「そっかぁ。……あっ、思い出したぁっ!」
千歌 「今日みかんを果南ちゃんに渡してあげてって、お母さんに言われてたんだった!」
曜 「それじゃあしょうがないね。じゃあ先に果南ちゃんのところ行こうか」
千歌 「梨子ちゃん、果南ちゃんのことについては話したっけ?」
梨子 「うん。というか、千歌ちゃんが教えてくれたんじゃない」
千歌 「そうだったっけ。…まぁ、気をつけてね、色々と」
梨子 「うん、分かってる。じゃあ行こっか」
……松浦果南さん。
千歌ちゃんや曜ちゃんとは幼馴染で、同じ学校の3年生。今は、休学中だけど。
実際に会ったことはまだ無いけど、前に千歌ちゃんから“内浦の怒り”について教えてもらった時、彼女の名前が少し出てきた。
曜 「それじゃあしょうがないね。じゃあ先に果南ちゃんのところ行こうか」
千歌 「梨子ちゃん、果南ちゃんのことについては話したっけ?」
梨子 「うん。というか、千歌ちゃんが教えてくれたんじゃない」
千歌 「そうだったっけ。…まぁ、気をつけてね、色々と」
梨子 「うん、分かってる。じゃあ行こっか」
……松浦果南さん。
千歌ちゃんや曜ちゃんとは幼馴染で、同じ学校の3年生。今は、休学中だけど。
実際に会ったことはまだ無いけど、前に千歌ちゃんから“内浦の怒り”について教えてもらった時、彼女の名前が少し出てきた。
梨子 「果南さんは、ホテル建設に肯定的だったんだよね」
曜 「うん、ホテルができたら、そこにダイビングショップを移転して経営する予定だったんだって」
千歌 「小原家の娘さんと果南ちゃんが幼なじみだったみたいだから、そこの繋がりもあったんだろうね」
曜 「……でも、そのせいで」
梨子 「…………。」
果南さんの現状は、とても辛いものだと聞く。
それはきっと鞠莉さんだって……
…? 鞠莉さん…?
私、鞠莉さんと面識なんてあったっけ?
いや、ないはず…なのに。何故か他人とは思えない。私は何を、忘れているんだろう。
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曜 「うん、ホテルができたら、そこにダイビングショップを移転して経営する予定だったんだって」
千歌 「小原家の娘さんと果南ちゃんが幼なじみだったみたいだから、そこの繋がりもあったんだろうね」
曜 「……でも、そのせいで」
梨子 「…………。」
果南さんの現状は、とても辛いものだと聞く。
それはきっと鞠莉さんだって……
…? 鞠莉さん…?
私、鞠莉さんと面識なんてあったっけ?
いや、ないはず…なのに。何故か他人とは思えない。私は何を、忘れているんだろう。
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~果南宅~
千歌 「果南ちゃーん! おーい!」
果南 「千歌、曜。それと…」
梨子 「あっ…はじめまして。桜内梨子です」
果南 「あぁ、君が。名前は曜から聞いてるよ」
千歌 「果南ちゃん、お土産持ってきたよ!」
果南 「またみかん?」
千歌 「文句ならお母さんに言ってよ」
千歌 「果南ちゃーん! おーい!」
果南 「千歌、曜。それと…」
梨子 「あっ…はじめまして。桜内梨子です」
果南 「あぁ、君が。名前は曜から聞いてるよ」
千歌 「果南ちゃん、お土産持ってきたよ!」
果南 「またみかん?」
千歌 「文句ならお母さんに言ってよ」
果南 「ちょっと待ってて。これが終わったらお茶出すよ」
お店の窓ガラスにスポンジを当てながら、果南さんは私たちに中で待ってるように促す。
2人は制服の襟をパタパタとさせながら中へと入っていく。
梨子 「……いつもなんですか? その“落書き”」
果南 「えっ…あぁ、うん。ちょっとだけ放置してたのもあるけどね。結構落ちにくくて、消すだけでも骨が折れるし」
『裏切り者』『呪われろ』…
心無い言葉の数々が、柵や窓ガラス…果南さんの家のあちこちに書かれている。
果南さんはスポンジでそれを一つ一つ丁寧に消していく。落書きを消すにしては、力を込めすぎているように見えた。
お店の窓ガラスにスポンジを当てながら、果南さんは私たちに中で待ってるように促す。
2人は制服の襟をパタパタとさせながら中へと入っていく。
梨子 「……いつもなんですか? その“落書き”」
果南 「えっ…あぁ、うん。ちょっとだけ放置してたのもあるけどね。結構落ちにくくて、消すだけでも骨が折れるし」
『裏切り者』『呪われろ』…
心無い言葉の数々が、柵や窓ガラス…果南さんの家のあちこちに書かれている。
果南さんはスポンジでそれを一つ一つ丁寧に消していく。落書きを消すにしては、力を込めすぎているように見えた。
梨子 「…あの、手伝いますよ」
果南 「いいって。暑いでしょ? 中で待ってて」
梨子 「でも…」
果南 「私がいいって言ってるんだからいいの。大丈夫、これくらいならすぐに終わるから」
梨子 「果南さん…」
千歌 「梨子ちゃーん! はやく来なよー」
果南 「いいって。暑いでしょ? 中で待ってて」
梨子 「でも…」
果南 「私がいいって言ってるんだからいいの。大丈夫、これくらいならすぐに終わるから」
梨子 「果南さん…」
千歌 「梨子ちゃーん! はやく来なよー」
梨子 「千歌ちゃん…」
果南 「ほら、私のことなんか気にしないで、行きな」
梨子 「…すいません、失礼します」
果南 「…千歌、あんたの好きにはさせないからね」
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果南 「ほら、私のことなんか気にしないで、行きな」
梨子 「…すいません、失礼します」
果南 「…千歌、あんたの好きにはさせないからね」
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果南 「はい、これみかんのお返し」
千歌 「また干物ー?」
果南 「文句なら母さんに言ってよ」
梨子 「…果南さん、これ使ってください」
果南 「なにこれ、ハンドクリーム?」
梨子 「その、さっきの洗剤とかで相当ダメージ受けてるだろうな…って」
果南 「あはは、ありがとう。でも私、すぐ海に入ったりするからあんまり意味無いかも」
千歌 「また干物ー?」
果南 「文句なら母さんに言ってよ」
梨子 「…果南さん、これ使ってください」
果南 「なにこれ、ハンドクリーム?」
梨子 「その、さっきの洗剤とかで相当ダメージ受けてるだろうな…って」
果南 「あはは、ありがとう。でも私、すぐ海に入ったりするからあんまり意味無いかも」
梨子 「でも一応つけといてください。せっかく綺麗な手してるんですから…」
果南 「…ありがと、梨子ちゃん」
千歌 「……二人とも、そろそろ行こっか」
梨子 「えっ、もう?」
千歌 「用は済んだでしょ。それに曜ちゃん達とパフェ食べなきゃだし」
果南 「…そっか。じゃあ気をつけてね」
果南 「…ありがと、梨子ちゃん」
千歌 「……二人とも、そろそろ行こっか」
梨子 「えっ、もう?」
千歌 「用は済んだでしょ。それに曜ちゃん達とパフェ食べなきゃだし」
果南 「…そっか。じゃあ気をつけてね」
梨子 「…ねぇ曜ちゃん。千歌ちゃんどうしちゃったの?」
曜 「多分、梨子ちゃんが果南ちゃんと仲良さそうにしてたのが気に食わなかったんじゃない?」
梨子 「なにそれ…嫉妬?」
曜ちゃんはキョロキョロと周りを気にする仕草を見せると、私だけにギリギリ聞こえる位の声量で再び話し始めた。
曜 「嫉妬とは違うんじゃないかな。千歌ちゃんね、あの事件以来、果南ちゃんと仲悪いんだ」
梨子 「あの事件って…内浦の怒りのこと?」
曜 「うん。あれ以来果南ちゃん、すっかり人間不信になっちゃって…」
梨子 「あの落書きも、街の人たちが書いたものだよね…」
曜 「多分、梨子ちゃんが果南ちゃんと仲良さそうにしてたのが気に食わなかったんじゃない?」
梨子 「なにそれ…嫉妬?」
曜ちゃんはキョロキョロと周りを気にする仕草を見せると、私だけにギリギリ聞こえる位の声量で再び話し始めた。
曜 「嫉妬とは違うんじゃないかな。千歌ちゃんね、あの事件以来、果南ちゃんと仲悪いんだ」
梨子 「あの事件って…内浦の怒りのこと?」
曜 「うん。あれ以来果南ちゃん、すっかり人間不信になっちゃって…」
梨子 「あの落書きも、街の人たちが書いたものだよね…」
街の人々は、内浦を裏切った果南さん一家をよく思わなかったらしい。他にもホテル建設に肯定的な者はいたらしいが、その多くは内浦の怒りに触れ、今も尚無気力症に陥っている。
ホテル建設に肯定的でありながらも呪いを免れた果南さんは、ホテル建設が中止に終わった今でも陰湿な嫌がらせを受けているらしい。
梨子 「もしかして果南さん、千歌ちゃんのことまで疑ってるの? 幼なじみなのに?」
曜 「うん…多分ね。元々千歌ちゃんの家が、呪いに関与してるって噂されてるのは知ってるよね?」
梨子 「うん…一応」
曜 「果南ちゃん、すっかりその噂を信じちゃって。千歌ちゃんとのやりとりでも、前に比べてどこか距離を感じるというか…」
ホテル建設に肯定的でありながらも呪いを免れた果南さんは、ホテル建設が中止に終わった今でも陰湿な嫌がらせを受けているらしい。
梨子 「もしかして果南さん、千歌ちゃんのことまで疑ってるの? 幼なじみなのに?」
曜 「うん…多分ね。元々千歌ちゃんの家が、呪いに関与してるって噂されてるのは知ってるよね?」
梨子 「うん…一応」
曜 「果南ちゃん、すっかりその噂を信じちゃって。千歌ちゃんとのやりとりでも、前に比べてどこか距離を感じるというか…」
梨子 「この呪いが、誰によるものなのか…それか本当に超常現象なのか解明できれば、二人の仲も元に戻せるかな…」
曜 「うん…きっとね」
梨子 「曜ちゃん、私協力するよ」
曜 「ありがと、梨子ちゃん」
曜 「……なんで、こうなっちゃったんだろ」
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曜 「うん…きっとね」
梨子 「曜ちゃん、私協力するよ」
曜 「ありがと、梨子ちゃん」
曜 「……なんで、こうなっちゃったんだろ」
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~その頃 果南宅~
千歌に渡された紙袋の中身を見る。
…みかんだ。どこからどう見てもみかん。
それにしてもこの量、私とお母さんだけじゃ、次千歌が来るまでに食べきれないよ。
千歌は私たちが毎回、みかんをちゃんと全部食べてるとでも思ってるのかな。
果南 「…千歌は、人を信じすぎなんだよ」
紙袋を逆さにすると、何十個ものみかんがボトボトと音を立てて落ちていく。
生ゴミとみかんをひとまとめにし、ごみ捨て場へと運ぶ。
果南 「ごめん、千歌。私はもう、あんたのことさえ信じられない…」
鞠莉 「……果南」
千歌に渡された紙袋の中身を見る。
…みかんだ。どこからどう見てもみかん。
それにしてもこの量、私とお母さんだけじゃ、次千歌が来るまでに食べきれないよ。
千歌は私たちが毎回、みかんをちゃんと全部食べてるとでも思ってるのかな。
果南 「…千歌は、人を信じすぎなんだよ」
紙袋を逆さにすると、何十個ものみかんがボトボトと音を立てて落ちていく。
生ゴミとみかんをひとまとめにし、ごみ捨て場へと運ぶ。
果南 「ごめん、千歌。私はもう、あんたのことさえ信じられない…」
鞠莉 「……果南」
果南 「鞠莉…! どうしてここに」
鞠莉 「果南あるところに、マリーありよ」
果南 「なにそれ…」
鞠莉 「…そのみかん、まだ食べられそうじゃない。勿体ないghost が出ちゃうよ?」
そう言って鞠莉はゴミ袋からみかんを2.3個取り出し、皮をあけ始めた
果南 「ちょっと…! 汚いよ!」
鞠莉 「Dirtyなのは皮だけでしょ?…うーん! ほら、こんなに美味しいじゃない」
鞠莉 「果南あるところに、マリーありよ」
果南 「なにそれ…」
鞠莉 「…そのみかん、まだ食べられそうじゃない。勿体ないghost が出ちゃうよ?」
そう言って鞠莉はゴミ袋からみかんを2.3個取り出し、皮をあけ始めた
果南 「ちょっと…! 汚いよ!」
鞠莉 「Dirtyなのは皮だけでしょ?…うーん! ほら、こんなに美味しいじゃない」
果南 「…どうなっても、知らないからね」
鞠莉 「そんなこと言う口は、こうしちゃう」
鞠莉がにやり、と不敵に笑う。みかんを1片手に取り、無理やり私の口の中へ押し込む。
果南 「…むぐぅっ!? げほっ…けほっ…!」
鞠莉 「ほら、美味しいでしょ?」
果南 「何すんのさ…何か変なものが入ってたりしたら!」
鞠莉 「……果南、それが幼なじみに対して言うこと?」
鞠莉 「そんなこと言う口は、こうしちゃう」
鞠莉がにやり、と不敵に笑う。みかんを1片手に取り、無理やり私の口の中へ押し込む。
果南 「…むぐぅっ!? げほっ…けほっ…!」
鞠莉 「ほら、美味しいでしょ?」
果南 「何すんのさ…何か変なものが入ってたりしたら!」
鞠莉 「……果南、それが幼なじみに対して言うこと?」
鞠莉 「今ならまだ考え直せる。よく考えなさい、果南」
果南 「鞠莉…」
鞠莉 「じゃ、私帰るね。バーイ!」
果南 「……なんで鞠莉は、そんなに人を信じられるのさ」
ゴミ袋が開きっぱなしになっている。
再び袋の口を縛り、ほかの人に見られないよう、ほかのゴミ袋の影になる部分に押し込む。
みかんは、1つだけ持って帰ることにした。
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果南 「鞠莉…」
鞠莉 「じゃ、私帰るね。バーイ!」
果南 「……なんで鞠莉は、そんなに人を信じられるのさ」
ゴミ袋が開きっぱなしになっている。
再び袋の口を縛り、ほかの人に見られないよう、ほかのゴミ袋の影になる部分に押し込む。
みかんは、1つだけ持って帰ることにした。
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~駅前~
千歌 「あっ、ルビィちゃんだ! おーい!」
ルビィ 「千歌さん! こんにちは! それに曜さんと、あと…」
梨子 「はじめまして、桜内梨子です」
ルビィ 「あっ、転校生の。はじめまして、黒澤ルビィです」
梨子 「黒澤…確かダイヤさんの妹さん?」
曜 「梨子ちゃん、よく知ってたね」
梨子 「…うん。なんか、なんとなく分かったっていうか…」
千歌 「あっ、ルビィちゃんだ! おーい!」
ルビィ 「千歌さん! こんにちは! それに曜さんと、あと…」
梨子 「はじめまして、桜内梨子です」
ルビィ 「あっ、転校生の。はじめまして、黒澤ルビィです」
梨子 「黒澤…確かダイヤさんの妹さん?」
曜 「梨子ちゃん、よく知ってたね」
梨子 「…うん。なんか、なんとなく分かったっていうか…」
曜 「ルビィちゃん、大丈夫なの? 買い食いなんかして、お姉さんとか当主さんに怒られない?」
ルビィ 「ルビィは大丈夫なんです、お姉ちゃんと違って」
花丸 「ルビィちゃん、おまたせずら…って!」
ルビィ 「あっ、花丸ちゃん。買い物終わ…」
花丸 「るるるルビィちゃんっ! ここはオラに任せて、逃げるずらっ!!」
ルビィ 「……へ?」
ルビィ 「ルビィは大丈夫なんです、お姉ちゃんと違って」
花丸 「ルビィちゃん、おまたせずら…って!」
ルビィ 「あっ、花丸ちゃん。買い物終わ…」
花丸 「るるるルビィちゃんっ! ここはオラに任せて、逃げるずらっ!!」
ルビィ 「……へ?」
花丸 「に、2年生相手でも、オラは屈しないずら! 恐喝なんかに負けません!」
千歌 「きょ、きょーかつ!?」
梨子 「ちょっ…ちょっと待ってください! 誤解です!」
曜 「そうそう! 私たち、普通にルビィちゃんとお話してただけで…」
花丸 「……ほえ? そうなんずら?」
ルビィ 「この人たち、ルビィのお友達だよ?」
花丸 「そ、そうだったんずらか…。オラてっきり、ルビィちゃんが “かつあげ” っていうのにあってるのかと…」
梨子 「えっと…ごめんね、勘違いさせちゃって」
千歌 「きょ、きょーかつ!?」
梨子 「ちょっ…ちょっと待ってください! 誤解です!」
曜 「そうそう! 私たち、普通にルビィちゃんとお話してただけで…」
花丸 「……ほえ? そうなんずら?」
ルビィ 「この人たち、ルビィのお友達だよ?」
花丸 「そ、そうだったんずらか…。オラてっきり、ルビィちゃんが “かつあげ” っていうのにあってるのかと…」
梨子 「えっと…ごめんね、勘違いさせちゃって」
花丸 「いえ、オラの方こそ失礼しました。国木田花丸、1年生です」
花丸ちゃんに合わせ、私たちも各々軽く自己紹介を済ます。花丸ちゃんもやっと安心したのか、ホッと胸をなで下ろす。
曜 「それにしても、すごい量の本だね」
花丸 「あっ…はい。少し調べ物をしてて」
梨子 「どう見ても少しって感じじゃないけど…何を調べてるの?」
花丸ちゃんが取り出した本を見て、思わず声が漏れる。その可愛らしい見た目からは連想できないような本を見せられ、千歌ちゃん達も私とほぼ同じ反応をとる。
曜 「世界の呪い大全…可愛い顔してなんて本を」
花丸ちゃんに合わせ、私たちも各々軽く自己紹介を済ます。花丸ちゃんもやっと安心したのか、ホッと胸をなで下ろす。
曜 「それにしても、すごい量の本だね」
花丸 「あっ…はい。少し調べ物をしてて」
梨子 「どう見ても少しって感じじゃないけど…何を調べてるの?」
花丸ちゃんが取り出した本を見て、思わず声が漏れる。その可愛らしい見た目からは連想できないような本を見せられ、千歌ちゃん達も私とほぼ同じ反応をとる。
曜 「世界の呪い大全…可愛い顔してなんて本を」
梨子 「呪いってことは、もしかして内浦の怒りのことを?」
花丸 「はい。どうしても気になって」
紙袋の中の本を見ると、どれも呪いに関するものばかりだった。花丸ちゃんは少し恥ずかしそうに、紙袋の隙間をきゅっと閉じる。
ルビィ 「花丸ちゃんのお家、お寺なんです」
千歌 「あっ、もしかしてあの大きな!?」
花丸 「はい…最近は特に有名になっちゃって」
曜 「……っ!」
花丸 「はい。どうしても気になって」
紙袋の中の本を見ると、どれも呪いに関するものばかりだった。花丸ちゃんは少し恥ずかしそうに、紙袋の隙間をきゅっと閉じる。
ルビィ 「花丸ちゃんのお家、お寺なんです」
千歌 「あっ、もしかしてあの大きな!?」
花丸 「はい…最近は特に有名になっちゃって」
曜 「……っ!」
梨子 「曜ちゃん? どうしたの?」
曜 「……あっ、ううん…なんでも」
花丸 「内浦の怒り…。それに触れた者に罰を与えているのは、オラのお寺の仏様だって言われてるんです」
梨子 「そうだったんだ…」
花丸 「そもそも、仏様と神様は全くの別物ずら! 仏様は罰なんて下さないし、そもそもオラのとこの仏様はそこまで器小さくないずら!」
地団駄を踏みながら、花丸ちゃんは誰に向けているわけでもない抗議を繰り返す。
寺で育った者として、それを侮辱されるような噂話は、それほど癪に障るものらしい。
花丸 「だからオラは、この呪いの本当の根源を探すために研究してるんです!」
曜 「……。」
曜 「……あっ、ううん…なんでも」
花丸 「内浦の怒り…。それに触れた者に罰を与えているのは、オラのお寺の仏様だって言われてるんです」
梨子 「そうだったんだ…」
花丸 「そもそも、仏様と神様は全くの別物ずら! 仏様は罰なんて下さないし、そもそもオラのとこの仏様はそこまで器小さくないずら!」
地団駄を踏みながら、花丸ちゃんは誰に向けているわけでもない抗議を繰り返す。
寺で育った者として、それを侮辱されるような噂話は、それほど癪に障るものらしい。
花丸 「だからオラは、この呪いの本当の根源を探すために研究してるんです!」
曜 「……。」
ルビィ 「は、花丸ちゃん。少し落ち着いて…」
花丸 「はっ…! ご、ごめんなさいずら…」
梨子 「気持ちはわかるよ。でも花丸ちゃんがそう言うってことは、呪いは根も葉もない噂ってこと?」
花丸 「少なくともオラはそう考えてるずら。オラの寺の尊厳のためにも、一刻も早くこの呪いを解き明かすんです!」
梨子 「理由は違くても、目的は同じね。私もこの呪いを解明したいと思ってたの。協力するよ、花丸ちゃん」
花丸 「本当ずら!?」
花丸ちゃんの目が突然キラキラと輝き出す。
この目、この表情は、後輩という立場が使える最大の切り札だと思う。
花丸 「はっ…! ご、ごめんなさいずら…」
梨子 「気持ちはわかるよ。でも花丸ちゃんがそう言うってことは、呪いは根も葉もない噂ってこと?」
花丸 「少なくともオラはそう考えてるずら。オラの寺の尊厳のためにも、一刻も早くこの呪いを解き明かすんです!」
梨子 「理由は違くても、目的は同じね。私もこの呪いを解明したいと思ってたの。協力するよ、花丸ちゃん」
花丸 「本当ずら!?」
花丸ちゃんの目が突然キラキラと輝き出す。
この目、この表情は、後輩という立場が使える最大の切り札だと思う。
花丸 「じゃあ、なにか分かったら教えて欲しいずら!」
梨子 「えぇ、もちろん」
千歌 「梨子ちゃん、そろそろ行かないと時間が…」
梨子 「本当だ…それじゃあね、2人とも」
ルビィ 「はい! …あっ、そうだ。飴よかったら食べてください」
千歌 「いいの!? ありがとう!」
曜 「……ありがと、ルビィちゃん」
梨子 「えぇ、もちろん」
千歌 「梨子ちゃん、そろそろ行かないと時間が…」
梨子 「本当だ…それじゃあね、2人とも」
ルビィ 「はい! …あっ、そうだ。飴よかったら食べてください」
千歌 「いいの!? ありがとう!」
曜 「……ありがと、ルビィちゃん」
ルビィ 「梨子さんもどうぞ」
梨子 「うん、ありがとう」
貰った飴は、りんご味と書かれた包装紙に包まれていた。
梨子 (今日は、いちご味じゃないんだ)
……? “今日は”?
あれ? なんだろう、この違和感。
ルビィ 「……? どうかしましたか? 梨子さん」
梨子 「…ルビィちゃん。私、前にもこうやってルビィちゃんから飴をもらったことってあったっけ?」
ルビィ 「いえ…そもそもルビィが梨子さんと会ったのは、今が初めてですよ?」
梨子 「うん、ありがとう」
貰った飴は、りんご味と書かれた包装紙に包まれていた。
梨子 (今日は、いちご味じゃないんだ)
……? “今日は”?
あれ? なんだろう、この違和感。
ルビィ 「……? どうかしましたか? 梨子さん」
梨子 「…ルビィちゃん。私、前にもこうやってルビィちゃんから飴をもらったことってあったっけ?」
ルビィ 「いえ…そもそもルビィが梨子さんと会ったのは、今が初めてですよ?」
梨子 「……そう、だよね。ごめんね、変なこと聞いて」
ルビィ 「…? いえ、ルビィは大丈夫ですけど」
千歌 「ほら梨子ひゃん、いふよぉ!」
梨子 「…って、もう飴食べてるし。じゃ、今度こそバイバイ」
花丸 「はい、さようなら」
ルビィ 「…? いえ、ルビィは大丈夫ですけど」
千歌 「ほら梨子ひゃん、いふよぉ!」
梨子 「…って、もう飴食べてるし。じゃ、今度こそバイバイ」
花丸 「はい、さようなら」
千歌 「梨子ひゃん、食べないの?」コロコロ
梨子 「私は後で。だってこれからパフェ食べるんでしょ?」
千歌 「あっ…そうだったぁーっ!!」
梨子 「まったくもう…」
曜 「………。」
梨子 「……? 曜ちゃん?」
顔を俯かせ、黙り込んでる曜ちゃんを不思議に思った。いつも笑っているような曜ちゃんのこんな表情は初めて見た。
…曜ちゃんの頬を伝って、涙が流れ落ちたのを、私は見逃さなかった。
ーーーーーー
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梨子 「私は後で。だってこれからパフェ食べるんでしょ?」
千歌 「あっ…そうだったぁーっ!!」
梨子 「まったくもう…」
曜 「………。」
梨子 「……? 曜ちゃん?」
顔を俯かせ、黙り込んでる曜ちゃんを不思議に思った。いつも笑っているような曜ちゃんのこんな表情は初めて見た。
…曜ちゃんの頬を伝って、涙が流れ落ちたのを、私は見逃さなかった。
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~花丸宅~
善子 「へぇ、じゃあ協力してくれる人が増えたのね。良かったじゃない」
花丸 「頼りになる先輩で心強いずら」
善子 「なによ! 私じゃ心もとないって言うわけ!?」
花丸 「だって善子ちゃん、役に立った試しがないずら」
善子 「何をーっ…! ありとあらゆる呪いをマスターした私より、呪いに詳しい者なんていないわっ!」
花丸 「今のは自白ともとれるけど?」
善子 「ちがわいっ! 私は何もしてないってば!」
善子 「へぇ、じゃあ協力してくれる人が増えたのね。良かったじゃない」
花丸 「頼りになる先輩で心強いずら」
善子 「なによ! 私じゃ心もとないって言うわけ!?」
花丸 「だって善子ちゃん、役に立った試しがないずら」
善子 「何をーっ…! ありとあらゆる呪いをマスターした私より、呪いに詳しい者なんていないわっ!」
花丸 「今のは自白ともとれるけど?」
善子 「ちがわいっ! 私は何もしてないってば!」
善子 「…で? この前買ってきた本にはなんかヒントはあったの?」
花丸 「ううん、全然。…やっぱり、これは呪いなんかじゃないんだと思う」
善子 「人為的なもの…ってこと?」
花丸 「そう考えるのが一番自然…だと思う」
善子 「だとしたら…一体誰があんなことを」
花丸 「……。」
ふと、沈黙が流れる。
花丸は俯き、なにか言いたげに両手の指を絡ませたり、口先をもごもごさせている。
善子 「…なにか言いたいことあるんでしょ」
花丸 「……うん。実はその…」
花丸 「ううん、全然。…やっぱり、これは呪いなんかじゃないんだと思う」
善子 「人為的なもの…ってこと?」
花丸 「そう考えるのが一番自然…だと思う」
善子 「だとしたら…一体誰があんなことを」
花丸 「……。」
ふと、沈黙が流れる。
花丸は俯き、なにか言いたげに両手の指を絡ませたり、口先をもごもごさせている。
善子 「…なにか言いたいことあるんでしょ」
花丸 「……うん。実はその…」
善子 「神具?」
花丸 「うん。淡島神社ってあるでしょ?」
善子 「あぁ、あの山の中にある」
花丸 「あの神社には、幾つか神具が奉納されてるんだけど、実はその中にね…」
善子 「まさか、呪いに関係しそうなものがあったとか?」
花丸 「そうなんずら。…詳しいことは分からないけど、人に使うと、その者のありとあらゆる感情を引き出す神具があるという話を気いたずら」
善子 「ありとあらゆる感情…それがあの狂人化のこと?」
花丸 「そう考えれば、辻褄が合うずら」
花丸 「うん。淡島神社ってあるでしょ?」
善子 「あぁ、あの山の中にある」
花丸 「あの神社には、幾つか神具が奉納されてるんだけど、実はその中にね…」
善子 「まさか、呪いに関係しそうなものがあったとか?」
花丸 「そうなんずら。…詳しいことは分からないけど、人に使うと、その者のありとあらゆる感情を引き出す神具があるという話を気いたずら」
善子 「ありとあらゆる感情…それがあの狂人化のこと?」
花丸 「そう考えれば、辻褄が合うずら」
花丸 「その神具の副作用として、使用者はその後、感情を失うと言われてるずら」
善子 「引き出した分を失うってわけね…それなら、狂人化からの無気力症も説明がつく」
花丸 「ただ問題は、その神具がとっくの昔に失われているということで…」
善子 「失われた?」
花丸 「失くしたって言った方が正しいのかな? もう淡島神社に、その神具含め、他のものもほとんど残ってないんずら」
善子 「失くしたって…そんなおもちゃじゃあるまいし…」
花丸 「とにかく、今後は呪いによるものというよりも、オラはその神具によるものと考えるつもり」
善子 「そうね…私も神社について調べておくわ」
善子 「引き出した分を失うってわけね…それなら、狂人化からの無気力症も説明がつく」
花丸 「ただ問題は、その神具がとっくの昔に失われているということで…」
善子 「失われた?」
花丸 「失くしたって言った方が正しいのかな? もう淡島神社に、その神具含め、他のものもほとんど残ってないんずら」
善子 「失くしたって…そんなおもちゃじゃあるまいし…」
花丸 「とにかく、今後は呪いによるものというよりも、オラはその神具によるものと考えるつもり」
善子 「そうね…私も神社について調べておくわ」
善子 「…色々考えたら、なんだか眠くなってきちゃったわ。ずら丸、ちょっとここで寝かせて」
花丸 「いいけど…おばさんに怒られても知らないよ?」
善子 「だぁーいじょー……ぐぅ…」
花丸 「早っ!? ……はぁ、オラも眠くなっちゃったずら」
花丸 「…おやすみ、善子ちゃん」
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花丸 「いいけど…おばさんに怒られても知らないよ?」
善子 「だぁーいじょー……ぐぅ…」
花丸 「早っ!? ……はぁ、オラも眠くなっちゃったずら」
花丸 「…おやすみ、善子ちゃん」
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~鞠莉の家~
古びたアパートの一室。鞠莉さんは今ここで一人暮らしをしている。
両親の反対を押し切り、ひとりこの街に残ることを決めた鞠莉さんは、社長令嬢という肩書きに相応しくない暮らしをしている。
梨子 「…その空気清浄機、果南さんの家にもありました」
鞠莉 「それはそうよ。ダイヤが私たちに譲ってくれたんだもの」
梨子 「2台もですか? しかも結構最新型に見えますけど…」
鞠莉 「内浦の怒り…狂人化の原因は感染力の強いウイルスによるものって噂が流れた時があってね」
空になったタンクに水を注ぎ、鞠莉さんは優しく微笑みながら話を続けた。
古びたアパートの一室。鞠莉さんは今ここで一人暮らしをしている。
両親の反対を押し切り、ひとりこの街に残ることを決めた鞠莉さんは、社長令嬢という肩書きに相応しくない暮らしをしている。
梨子 「…その空気清浄機、果南さんの家にもありました」
鞠莉 「それはそうよ。ダイヤが私たちに譲ってくれたんだもの」
梨子 「2台もですか? しかも結構最新型に見えますけど…」
鞠莉 「内浦の怒り…狂人化の原因は感染力の強いウイルスによるものって噂が流れた時があってね」
空になったタンクに水を注ぎ、鞠莉さんは優しく微笑みながら話を続けた。
鞠莉 「狂人化を引き起こすvirus…その対策方法は空気清浄機とかで出来る限り空気を綺麗な状態に保たせること…」
梨子 「それはお医者さんとかが?」
鞠莉 「さぁ…誰が言ったんだっけ。そもそもウイルスなんて噂に過ぎなかったし」
梨子 「お店とかでもやけに見かけると思ったら、そんな過去があったんですね」
鞠莉 「みんな必死になって空気清浄機を買いに走ってね…。あの時の電気屋さんのニヤケ顔は忘れないよ」
皮肉的にも取れる笑いを浮かべ、つられて思わずこちらも笑いがこぼれた。
鞠莉 「こんなもの買う余裕なんてなかった果南の家とかに、ダイヤは当主さんに上手いこと交渉してpresentしたのよ」
梨子 「あれっ…でも…」
梨子 「それはお医者さんとかが?」
鞠莉 「さぁ…誰が言ったんだっけ。そもそもウイルスなんて噂に過ぎなかったし」
梨子 「お店とかでもやけに見かけると思ったら、そんな過去があったんですね」
鞠莉 「みんな必死になって空気清浄機を買いに走ってね…。あの時の電気屋さんのニヤケ顔は忘れないよ」
皮肉的にも取れる笑いを浮かべ、つられて思わずこちらも笑いがこぼれた。
鞠莉 「こんなもの買う余裕なんてなかった果南の家とかに、ダイヤは当主さんに上手いこと交渉してpresentしたのよ」
梨子 「あれっ…でも…」
鞠莉 「黒澤家と私達は敵対してたはず…でしょ?」
梨子 「はい…。鞠莉さんはもちろん、果南さんもホテル建設肯定派だったって聞いたので」
鞠莉 「ふふっ、それには大人…いえ、こどもの事情があったのよ」
梨子 「こどもの事情…?」
鞠莉 「私と果南、そしてダイヤは幼なじみでね。だから周りに隠れて助け合ってるってわけ」
梨子 「もしかして…夏休み中鞠莉さんの姿が内浦から消えたっていうのは」
鞠莉 「ダイヤに匿ってもらってたの。流石に学校の監視下から長く外れると、何されるか分からないからね」
梨子 「……。」
梨子 「はい…。鞠莉さんはもちろん、果南さんもホテル建設肯定派だったって聞いたので」
鞠莉 「ふふっ、それには大人…いえ、こどもの事情があったのよ」
梨子 「こどもの事情…?」
鞠莉 「私と果南、そしてダイヤは幼なじみでね。だから周りに隠れて助け合ってるってわけ」
梨子 「もしかして…夏休み中鞠莉さんの姿が内浦から消えたっていうのは」
鞠莉 「ダイヤに匿ってもらってたの。流石に学校の監視下から長く外れると、何されるか分からないからね」
梨子 「……。」
鞠莉 「…それで? 今日ここに来たのは別の要件があったんでしょ?」
梨子 「はい…その…」
ぎゅっと拳に力を入れる。
…本当に聞いていいことなのか、分からない。でも、聞かないといけない。
深呼吸をし、覚悟を決めて鞠莉さんに質問をぶつける。
梨子 「…千歌ちゃんのこと、鞠莉さんはどう考えているんですか?」
鞠莉 「…高海千歌さん?」
梨子 「はい。…呪いのことで、色々疑いをかけられてるみたいで」
鞠莉 「…さては、果南のこと知っちゃったでしょ?」
梨子 「…はい」
梨子 「はい…その…」
ぎゅっと拳に力を入れる。
…本当に聞いていいことなのか、分からない。でも、聞かないといけない。
深呼吸をし、覚悟を決めて鞠莉さんに質問をぶつける。
梨子 「…千歌ちゃんのこと、鞠莉さんはどう考えているんですか?」
鞠莉 「…高海千歌さん?」
梨子 「はい。…呪いのことで、色々疑いをかけられてるみたいで」
鞠莉 「…さては、果南のこと知っちゃったでしょ?」
梨子 「…はい」
梨子 「幼馴染みにさえ疑われるなんて、とてもじゃないけど見てられなくて」
鞠莉 「うん、そうだよね」
梨子 「鞠莉さんがもし疑ってないのだったら、果南さんを説得してほしいと…!」
鞠莉 「うーん…説得かぁ」
鞠莉 「残念だけど、私も千歌さんを全く疑ってないわけじゃないよ?」
梨子 「…っ! 鞠莉さん…」
鞠莉 「うん、そうだよね」
梨子 「鞠莉さんがもし疑ってないのだったら、果南さんを説得してほしいと…!」
鞠莉 「うーん…説得かぁ」
鞠莉 「残念だけど、私も千歌さんを全く疑ってないわけじゃないよ?」
梨子 「…っ! 鞠莉さん…」
鞠莉 「もしかしたらこの呪いは本当に超常現象なのかもしれない。けど人為的なものである疑いがある以上、真っ先に疑われそうなのは黒澤家か高海家。それは分かるでしょ?」
梨子 「でも…っ!」
鞠莉 「でもno problem。果南もきっと、本気で千歌さんを疑ってるわけじゃないから」
梨子 「でもそんな風には…」
鞠莉 「梨子、こんなこと言うのは都合がいいって言われるかもだけど」
鞠莉さんは髪をかきあげ、真剣な表情でこちらを見つめる。反射的に、背筋を伸ばす。
鞠莉 「まずはあなたが、みんなを信じてみたら?」
梨子 「鞠莉さん…」
梨子 「でも…っ!」
鞠莉 「でもno problem。果南もきっと、本気で千歌さんを疑ってるわけじゃないから」
梨子 「でもそんな風には…」
鞠莉 「梨子、こんなこと言うのは都合がいいって言われるかもだけど」
鞠莉さんは髪をかきあげ、真剣な表情でこちらを見つめる。反射的に、背筋を伸ばす。
鞠莉 「まずはあなたが、みんなを信じてみたら?」
梨子 「鞠莉さん…」
鞠莉 「それに、果南の説得なら、もう大丈夫だと思うよ?」
梨子 「えっ…それって…」
鞠莉 「…ほら、もう遅いよ。今日は帰りなさい」
梨子 「…はい。お邪魔しました、鞠莉さん」
鞠莉 「Bye、梨子」
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梨子 「えっ…それって…」
鞠莉 「…ほら、もう遅いよ。今日は帰りなさい」
梨子 「…はい。お邪魔しました、鞠莉さん」
鞠莉 「Bye、梨子」
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~帰り道~
鞠莉 『まずはあなたが、みんなを信じてみたら?』
鞠莉さんに言われたその一言が、ずっと頭の中でぐるぐると回っていた。
…そういえばそうだ。一番人のことを信じようとしてなかったのは、私だったかもしれない。
ひとり夜道を歩いていると、後ろから視線を感じた。恐る恐る振り向くと、そこにいたのは見慣れた顔だった。
梨子 「千歌ちゃん…! 何してるのこんな時間に」
千歌 「それはこっちのセリフだよ、梨子ちゃん」
千歌ちゃんが少しづつ、ゆっくりと歩み寄ってくる。…相手は千歌ちゃんだと分かっているのに、得体の知れない圧力に、思わず後ずさってしまう。
千歌 「さっき、鞠莉さんの家にいたよね?」
鞠莉 『まずはあなたが、みんなを信じてみたら?』
鞠莉さんに言われたその一言が、ずっと頭の中でぐるぐると回っていた。
…そういえばそうだ。一番人のことを信じようとしてなかったのは、私だったかもしれない。
ひとり夜道を歩いていると、後ろから視線を感じた。恐る恐る振り向くと、そこにいたのは見慣れた顔だった。
梨子 「千歌ちゃん…! 何してるのこんな時間に」
千歌 「それはこっちのセリフだよ、梨子ちゃん」
千歌ちゃんが少しづつ、ゆっくりと歩み寄ってくる。…相手は千歌ちゃんだと分かっているのに、得体の知れない圧力に、思わず後ずさってしまう。
千歌 「さっき、鞠莉さんの家にいたよね?」
梨子 「う、うん…」
千歌 「何話してたの?」
梨子 「な、何でもないよ。ただの世間話だよ」
千歌 「ふーん…そっかぁ」
千歌ちゃんが髪をかきながら、はぁと息を漏らす。そして再びこちらを向いたかと思うと、普段の千歌ちゃんからは想像出来ないような鋭い目線で、私を睨みつけた。
千歌 「さっきからね、くしゃみが止まらないんだ。誰か千歌の噂話でもしてるのかなぁって」
梨子 「そ、そうなんだ…」
千歌 「ねぇ梨子ちゃん、嘘ついてるでしょ」
千歌 「何話してたの?」
梨子 「な、何でもないよ。ただの世間話だよ」
千歌 「ふーん…そっかぁ」
千歌ちゃんが髪をかきながら、はぁと息を漏らす。そして再びこちらを向いたかと思うと、普段の千歌ちゃんからは想像出来ないような鋭い目線で、私を睨みつけた。
千歌 「さっきからね、くしゃみが止まらないんだ。誰か千歌の噂話でもしてるのかなぁって」
梨子 「そ、そうなんだ…」
千歌 「ねぇ梨子ちゃん、嘘ついてるでしょ」
梨子 「わ、私嘘なんか…!」
千歌 「梨子ちゃん、私のこと疑ってるんでしょ? それを鞠莉さんに相談して…」
梨子 「違う! 私は…」
千歌 「嘘だッッッッ!!!!!」
千歌ちゃんの叫びに、体が芯から震える。
今まで溜め込んできた、我慢してきたものを一気に吐き出すかのように、千歌ちゃんは叫び、涙を流した。
千歌 「ねぇなんで…? なんで誰も私を信じてくれないの…?」
梨子 「千歌ちゃん、聞いて! 私は千歌ちゃんのこと信じてる!」
千歌 「だからそれが嘘だって言ってるんだよ!」
千歌 「梨子ちゃん、私のこと疑ってるんでしょ? それを鞠莉さんに相談して…」
梨子 「違う! 私は…」
千歌 「嘘だッッッッ!!!!!」
千歌ちゃんの叫びに、体が芯から震える。
今まで溜め込んできた、我慢してきたものを一気に吐き出すかのように、千歌ちゃんは叫び、涙を流した。
千歌 「ねぇなんで…? なんで誰も私を信じてくれないの…?」
梨子 「千歌ちゃん、聞いて! 私は千歌ちゃんのこと信じてる!」
千歌 「だからそれが嘘だって言ってるんだよ!」
梨子 「千歌ちゃん…」
千歌 「もう無理なんだよ…分かってる。自分でもわかるんだよ」
千歌ちゃんは背中に手を回し、ジリジリと近寄ってくる。
千歌 「私はもう誰からも信じられないし、私も誰も信じられない」
梨子 「千歌ちゃん、そんなこと…」
千歌 「だから…私はっ!!」ブンッ!
梨子 「ひぃっ…!」
奇跡的に千歌ちゃんの包丁を避けられた。
しかし千歌ちゃんの攻撃は止まらない。私の体を刺そうと、一切手を休める様子はない。
千歌 「もう無理なんだよ…分かってる。自分でもわかるんだよ」
千歌ちゃんは背中に手を回し、ジリジリと近寄ってくる。
千歌 「私はもう誰からも信じられないし、私も誰も信じられない」
梨子 「千歌ちゃん、そんなこと…」
千歌 「だから…私はっ!!」ブンッ!
梨子 「ひぃっ…!」
奇跡的に千歌ちゃんの包丁を避けられた。
しかし千歌ちゃんの攻撃は止まらない。私の体を刺そうと、一切手を休める様子はない。
千歌 「避けないでよ…早く楽にしてあげたいんだからさぁっ!」
……だめだ、話が通じるとは思えない。
これが…狂人化だろうか?
梨子 (とにかく…逃げないとっ!)
千歌 「あはは…あはははははははっ…!!! 待ってよぉ…梨子ちゃんっ!!!」
……だめだ、話が通じるとは思えない。
これが…狂人化だろうか?
梨子 (とにかく…逃げないとっ!)
千歌 「あはは…あはははははははっ…!!! 待ってよぉ…梨子ちゃんっ!!!」
梨子 「はぁっ…はぁっ…! そうだ、曜ちゃんのところ! 曜ちゃんに会えば千歌ちゃんも落ち着くかも!」
曜ちゃんの家に向かって全速力で走る。
後ろから聞こえる足音はやむ気配すら見せないが、もう後ろを確認する余裕はない。
梨子 「…着いた! 曜ちゃん、曜ちゃぁんっ!!」
曜 「……梨子ちゃん? どうしたの…って、千歌ちゃん?」
梨子 「助けて! とにかく中に入れて!」
千歌 「…曜ちゃんに匿ってもらう気? 無駄だよ、梨子ちゃん」
ーーーーーー
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曜ちゃんの家に向かって全速力で走る。
後ろから聞こえる足音はやむ気配すら見せないが、もう後ろを確認する余裕はない。
梨子 「…着いた! 曜ちゃん、曜ちゃぁんっ!!」
曜 「……梨子ちゃん? どうしたの…って、千歌ちゃん?」
梨子 「助けて! とにかく中に入れて!」
千歌 「…曜ちゃんに匿ってもらう気? 無駄だよ、梨子ちゃん」
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~曜の部屋~
曜 「千歌ちゃん…もしかして…」
梨子 「多分、狂人化だと思う」
曜 「そっか…そうなんだね」
梨子 「なんで!? 呪いの対象になるのは、街を裏切った人だけじゃ…!」
曜 「うん…そういうことになってるね」
梨子 「そういうことになってる? ねぇ、どういうこと?」
1階から、窓ガラスの割れる音が聞こえてきた。
千歌ちゃんが階段を1段1段のぼり、徐々に私たちのいる部屋に近付いてくる。
曜 「……ごめん、私行くよ」
梨子 「曜ちゃん!? 何言ってるの、危ないよ!」
曜 「千歌ちゃん…もしかして…」
梨子 「多分、狂人化だと思う」
曜 「そっか…そうなんだね」
梨子 「なんで!? 呪いの対象になるのは、街を裏切った人だけじゃ…!」
曜 「うん…そういうことになってるね」
梨子 「そういうことになってる? ねぇ、どういうこと?」
1階から、窓ガラスの割れる音が聞こえてきた。
千歌ちゃんが階段を1段1段のぼり、徐々に私たちのいる部屋に近付いてくる。
曜 「……ごめん、私行くよ」
梨子 「曜ちゃん!? 何言ってるの、危ないよ!」
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