私的良スレ書庫
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元スレモバP「時々、事務所のアイドルが怖くなる時がありまして……」
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ちひろ「はあ、なにかやらかしたりしたんですか?」
P「いや、別にそういうわけではないんですけど……」
P「なんというか、こう、たまに距離があるような感覚に陥るときがあるんですよ」
ちひろ「気のせいだと思いますけどねー。仕事でもみんな、プロデューサーさんにべったりじゃないですか」
P「う~ん、やっぱり気のせいなんですかね?」
ちひろ「春から赴任してきて心配になってるだけですよ、きっと」
P「仕事には慣れたんですけどねー、まだまだ前任のプロデューサーほど懐かれてないんですかね」
P「――あっ、やばい。そろそろ仕事の時間なので、これで失礼します」ペコリ
ガチャ
ちひろ「……」
ちひろ「……前任、ね」
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◇
みりあ「あっ、プロデューサーだーっ」ガシッ
P「お! みりあ、今日も元気がいいな。学校終わったのか?」
みりあ「うん! プロデューサーは今からお仕事?」
P「ああ。今日はまゆの撮影が入ってるんだ」
みりあ「そうなんだー、いいなあ。みりあも写真撮ってもらいたいなあ」
P「そうだなあ。そういえば最近、子ども向けの雑誌に載せる女の子を紹介してほしいってお得意さんから言われてたっけ」
みりあ「わあーっ、それみりあも選ばれるかな?」
P「一応、俺から薦めとくよ。まあもともと、みりあにやってもらおうと思ってたんだがな」
みりあ「わーい! ……あ、そういえばこれからレッスンあるんだった!」
P「おー、急がないとトレーナーさんに怒られるぞ」
みりあ「うん、それじゃあねーっ!」
タッタッタ
P「……」
P「やっぱり、気にしすぎだったのかな……?」
まゆ「プロデューサーさん、おそいですよぉ」
P「悪い悪い、スタッフさんに挨拶してたら少し遅くなった」
まゆ「うふっ。それよりも衣装どうですか? かわいいですか?」
P「よく似合ってるよ。さすが読モやっていただけに見栄えが良いな」
まゆ「ありがとうございます。この胸元のリボン、衣装合わせの時にお願いしてつけてもらったんですよ」
P「そうなのか? うーん。でも、全体のバランスを見るとリボンはなくてもいいような気がするけど――」
まゆ「……」
P「ん? どうかしたか?」
まゆ「うふふ、いえなんでもありませんよ」
サツエイハイリマース
まゆ「それじゃあ、行ってきますね」
P「あ、ああ」
P(……今、心なしかまゆに睨まれた気がしたような)
P「……」
「オッケー、まゆちゃん。次は別の角度でいってみようか」
まゆ「分かりましたぁ」
P(さっきのは一体何だったんだろうか)
P(もしかしてリボンをいらないって言ったのがマズかったのかな)
P(……だとしたら、後でまゆに謝っておかないとな)
まゆ「プロデューサーさん、どうかしましたか?」
P「……あれ、もう休憩の時間か。はい、コレ飲み物買っておいたから」
まゆ「ありがとうございます。隣、失礼しますね」ポスリ
P「撮影、順調そうだな。特に何か言われることもないし」
まゆ「うふっ、プロデューサーさんのおかげですよ」
P「……なあ、まゆ。さっきのことなんだけどさ」
まゆ「さっき、ですか?」
P「ああ。ほら、撮影前にリボン取った方が良いんじゃないかって言ったじゃないか」
まゆ「……ああ、そうでしたね」
P「やっぱり、俺が間違ってみたいだな。スタッフからも可愛いって好評だし、あはは、女の子の衣装についてもっと勉強しないとダメみたいだ」
まゆ「……」
P「気を悪くしたのなら謝るよ。ごめんな」
まゆ「……いえ、いいですよ。ちゃんと謝ってくれるなら」
P(やっぱり、気にしてたのか。謝っておいてよかったな……)
まゆ「――あの人なら、たぶん謝ってくれなかったでしょうから」
P「あの人?」
まゆ「うふっ、なんでもありませんよ。それじゃあ、撮影に戻りますね」
P「ああ分かった……」
P(……あの人って誰のことだろ? まあ、帰りの車で話を聞いてみるか)
◇
P「撮影お疲れ様。スタッフさんも予定よりも早く終わって喜んでたよ」
まゆ「そうですか、ありがとうございます」
P「下で車出してくるから、そこで少し待っておいてくれ」
まゆ「……あの」
P「ん? どうかしたか?」
まゆ「私、今日はこの後用事があるんです」
P「でも、もう結構時間も遅いけど……途中まで送っていこうか?」
まゆ「いえ、だいじょうぶですよ。幸子ちゃんとご飯を食べに行くだけなので」
P(……それなら邪魔するのも逆に悪いか)
P「分かったよ。それじゃ、今日はここで」
まゆ「はい、お疲れ様でした」ペコリ
テクテクテク
P「……」
P「……結局、聞きそびれちゃったな」
みりあ「あっ、プロデューサーだー!」
莉嘉「つかまえたーっ!」ガシッ
P「わわっ、お前ら。もうレッスン終わったのか?」
みりあ「うんっ、ばっちりだったよー」
莉嘉「プロデューサーはお仕事終わったの?」
P「ああ。さっきまでまゆと一緒だったんだけどな、用事があるって言ってそのまま帰ってったよ」
P「そうだ。二人とも今から帰るんだろ? 家まで送っていこうか」
みりあ「えっ、いいのいいのー?」
莉嘉「えへへ、Pくんやっさし~」
P「ほらほら、そうやってしがみついてちゃ車出せないだろ」
「「はーい!」」
◇
みりあ「それでねー、莉嘉ちゃんがトレーナーさんに怒られてねー」
莉嘉「わわっ、みりあちゃん。それはナシナシ、言わないでっ!」
P「あはは、ふたりともしっかりレッスンやってるみたいだな」
みりあ「うんっ、プロデューサーはお仕事ちゃんとできた?」
P「ああ、まあこれでも少しは板についてきたからな。ばっちりだったよ」
みりあ「えへへ、それじゃあみりあがイイ子イイ子してあげるっ!」ナデナデ
莉嘉「あ、それじゃアタシも!」ナデナデ
P「お、おいおい。今、運転中だっての!」
「「なでなで~」」
P(……こりゃ、たまらんな)
P「ん、じゃ気をつけてな」
莉嘉「うんっ、ばいばーい☆」
バタン ブロロロロロロ
P「みりあの家まではもう少しかかるから、疲れてるなら寝ててもいいぞ」
みりあ「んー、いいよ。みりあ起きてるからー」
P「そっか、ならいいけど」
ブロロロロロロ
みりあ「……」
P「……」
P(……なんでさっきから黙ってこっち見てるんだろ)
P(……話しかけた方がいいのか?)
P「……みりあは、アイドル活動はもう慣れたか?」
みりあ「うんっ、すっごく楽しいよー」
P「そっか。さっきはああ言ったけどさ、俺はまだまだ大変だよ」
みりあ「そーなの?」
P「ああ。覚えることもたくさんあるしな、ちひろさんにいつも怒られてばっかりだ」
P(アイドル達との関係も、もっとどうにかしていきたいしな……)
P「みりあ達も俺なんかが春からやって来てびっくりしただろ」
みりあ「……」
P「プロデュースする人間が途中で交代するんだもんな」
P「なあ、前任のプロデューサーってどんな人だったんだ? 結構できる人だったりしたのか?」
みりあ「しらない」
P「……別にどんなことでもいいんだぞ?」
みりあ「ううん。私、ほんとに何も知らないよ」
P「そ、そっか。ならいいんだけど……」
P(やけに強く否定するもんだから思わず引いてしまったけど――)
P(たしか……みりあも前任の人からプロデュースされてたはずだったよな……?)
みりあ「どうかしたの?」
P「いや、何でもないよ」
P(でも、みりあが俺に嘘をつくはずもないし……ほんとに何も知らないだけなのかもな)
P(あんまり深く考えないようにしよう……)
みりあ「送ってくれてありがとう、プロデューサー!」
P「ああ。今日はもう遅いから早めに寝るんだぞ」
みりあ「うんっ、ばいばーい」
ガチャ ブロロロロ
P「……ふう。ようやく今日の仕事も終わりか」
P「結局、最後の方は空気が重たくてうまく話せなかったな……」
P(それにしても、前任の人の話をした途端、みりあの態度が変わったような気がしたけど……)
P「俺の思い違いじゃなかったら、あれはやっぱり何かを隠していたりしたのか……?」
P「だけど、前任の人のことなんて、そんな隠すほどのことなんだろうか?」
P(考えてみれば、春から仕事に手いっぱいで、前任の人のこと何も知らないんだよな)
P(前から興味はあったけど――そうだな。いい機会だし、少し調べてみようか)
P「よーし、明日は少し早めに事務所に行くとするか」
◇
幸子「フフーン、プロデューサー今日は朝早いんですね!」
P「おお、幸子。いつもこんな時間から事務所にいるのか?」
幸子「そんなの当たり前ですよ。なんてったってボクは特別カワイイですからね」
P「いや、その言い分はよく分からないぞ」
幸子「朝からボクのカワイイ顔を見たいという人が、さぞたくさんいることでしょうからね。そのためにもボクは早起きしてるんですよ!」
P「うーん。幸子は、頭がいいのやら悪いのやら……」
幸子「失礼な! 完璧なボクに欠点なんてあるわけないでしょう」
P「まあ、そういうことにしといてやるよ」ナデナデ
幸子「ふ、フフーン。まあ、まずまずの撫で具合ですね。そのまま続けていいですよ」
P(ちょろい)
幸子「それにしても、プロデューサーさん。今朝は何か用事でもあるんですか?」
P「んー。まあ、ちょっとな」
P(たとえ相手が幸子だとしても、昨日のことはあんまり話さない方がいいだろう)
幸子「うーん、なにやら怪しいですね……」チラッ
P「そんなことより、昨日の夜はまゆとご飯行ったんだよな? どんなお店に行ったんだ?」
P(俺は金欠で昨夜はカップラーメンしか食べてないけど……アイドルは普段何を食べてるんだろ)
幸子「へ? まゆさんですか?」
P「ん? ああ。昨日、仕事が終わってから二人でご飯に行ったんだろ?」
幸子「……ボク、行ってないですよ。そもそも、お誘いすら受けてないですし……」
P「……は?」
一旦ここまでになります。たぶん、予想以上に長くなりそうですが最後までおつきあいください…
P「いや、俺はたしかにまゆからそう聞いたんだけど……」
幸子「うーん。たしかにそれはおかしいですねえ」
P「……」
P(まゆが嘘をついたのか? ……でも、なんのために?)
幸子「もしかしたら、まゆさんの手違いで連絡できなかっただけかもしれませんね」
P「……手違い」
幸子「ボクを誘おうとして、ついうっかり操作を誤ってしまったんですかねえ。やれやれ……」
P「……ああ。もしかすると、そうかもしれないな」
P(いや、本当にまゆがそんなミスをするのか……? あれが俺の誘いを断るために言ったのだとしたら……)
幸子「どうかしましたか?」
P「……いや、なんでもないよ」
P(昨日から、みりあとまゆのことがあって頭が混乱してるだけだろう)
P(多感な時期なんだ。二人とも、俺なんかじゃ分からない事情があるんだろうさ)
幸子「具合が悪そうに見えますが……」
P(……幸子にも、俺に何か隠していることがあるんだろうか)
P「なあ、幸子」
幸子「なんでしょうか?」キョトン
P「……」
P「……いや、やっぱいいや」
P(考えすぎ、だよな)
幸子「そろそろレッスンの準備があるので、これで失礼しますね」ペコリ
P「ああ、頑張ってこいよ」
幸子「……その」
P「ん? どうかしたか?」
幸子「ボクに力になれることがあったら、なんでも言ってくださいね」
P「……」
幸子「そ、それだけですっ! 失礼しますっ!」
タッタッタ
P「……」
P「……やっぱり俺の思い違いなのかなあ」
P「おっと――それより、皆が来る前に調べ物を済ませてしまわないとな」
P「名簿は、机の後ろに置いてる棚の中だっけか」
P「えーっと、確かこの辺りに……」
ガサゴソ
P(昨年度の事務所の名簿を見たら、きっと名前くらいは分かるだろ)
P(その名前を使って、社内専用HPから検索をかければ――恐らく何かがつかめるはずだ)
ガサゴソ
P「……おかしいな、昨年度から二年分の名簿が抜けてるぞ?」
P(整理したときに間違って捨てられたのか? ……新しいバックナンバーを?)
P「……やっぱり、何かがおかしい」
P(結局、探しても名簿どころか書類のひとつも見つからなかった)
P(ここまで見当たらないとなると、もはや作為的に情報が漏れないようにしている気さえする)
P(だけど、そこまでして隠そうとする必要なんてあるのか?)
P(……俺がやってくる前の事務所で、一体なにがあったんだろうか)
P(それに、ちょうど二年分の情報が抜け落ちていた。これが意味するのは――)
みく「Pチャン、そんなところでなにしてるのー?」
P「わわっ! って、なんだみくか……驚かさないでくれよ……」
みく「なんだとは、失礼にゃ!」
P「悪い悪い。いや、別に深い意味はないんだ」
P「みくの方こそ、朝早いんだな。仕事への情熱が感じられるなっ!」グッ
みく「えへへ、ほんと~? みくはプロ意識が違うからねっ」
みく「――って、そうやってはぐらかそうとしても無駄にゃ! ほんとは何をしてたのー?」
P「あはは、なんでもないよ。ただの書類整理だよ」
みく「書類整理?」
P「ああ、春から全然片付けられてなかったからなー」
みく「……ほんとに?」
P「え?」
みく「Pチャン、月末に大掃除するからって響子チャンに片付けてって言われても全然やらなかったよね」
みく「なのに、わざわざ朝の時間を使って書類整理してたの?」
P「……ああ、ちょっと気になってな」
みく「ふーん、そうなんだ」
P「……」
P(……どうしてそこまで食いついてくるんだろう)
P(ここはあえて、みくに聞いてみた方がいいんじゃないか?)
P「なあ、みく」
みく「んー、どうしたのー?」
P(……みく達がなにかを隠していて、それを俺に知られないようとしていることは恐らく確かだ)
P(――だが、落ち着け。ここで俺が素直に聞いたところで本当にみくは真実を教えてくれるのか?)
P(そこまでして隠し通したいことだ。前任のプロデューサーの話題はむしろ避けた方が良いだろう)
P(……だとすれば、どうすれば情報を引き出せるだろうか)
みく「Pチャン?」
P「ああ、いや悪い。すこし考え事をしてた」
P(……手順を間違えたら、なんて考えるのも怖いな)
みく「で、みくに何かききたいことでもあるの?」
P「……ああ。最近、みんなが隠しごとをしてるみたいに思えてな。みくは、なにか知らないか」
みく「隠しごとって、なにそれ?」
P「俺も詳しいことは知らない。だけど、様子がおかしかったりすることが立て続けにあったんだよ」
みく「ふーん。それ、誰かわかる?」
P「まゆと――あとはみりあだな」
みく「……やっぱり、そっち組の子かぁ」
P「……?」
P(組? なんのことだ?)
P「組って、いったい何を言ってるんだ?」
みく「ううん、それはこっちのはなし」
みく「それよりもね。そのふたりは気を付けた方がいいと思うにゃ」
P「気を付けるって言っても……」
みく「んー、正確にはそのふたりを含める子たちなんだけど」
みく「って、いけないいけない。ちょっと話しすぎちゃった」
P「……」
P(みくは一体どこまで知ってるんだ……?)
P(それに、二人を含めるって事務所内では話はどれくらい広がってるんだよ)
P(俺の想像以上に事態は根深いところまできているのか……?)
P(それにしても、分からないことが多すぎる……)
P(前任のプロデューサーがこの謎のすべてに絡んでいるのは間違いないだろうが)
P(みくの言う"組"という言葉。態度のおかしいアイドルたち)
P(それと……不自然に隠された情報、か)
P(あまりにも出来すぎた話だ。……これは、きっと偶然なんかじゃない)
P(まるで探偵にでもなった気分だ……なんてな)
みく「Pチャンの聞きたいことはそれだけ?」
P「……ああ、それだけだ」
P(今、不用意にみくから情報を引き出すのは難しいはずだ)
P(今後の俺たちの関係にも、もしかすると響くかもしれない。そうなれば本末転倒だ)
P(……少しずつでいい。真実を知るために、ひとりひとりに聞いていけば。いずれは……)
みく「……」
P「……みく?」
みく「……Pチャンは」
P「……?」
みく「……Pチャンはたぶん今、どうしても知りたいことがあるんだよね」
P「……」
みく「みくは、知らないままでいた方がいいとおもうよ」
みく「きっと、後悔することになるから……」
P「みく……」
みく「ごめんね」
みく「みくはPチャンの味方にも、みんなの味方にもなれないの」
みく「だから、言えるのはここまで」
みく「……ちゃんと、言ったからね」
ガチャ バタン
P「……」
P「……はあ、何やってんだ俺は」
P「もう、やめにしよう……」
P「そもそも俺がこれだけ必死になって知る必要もないことだ」
P「そうだ……これはもう過去のことなんだから」
P(誰しも詮索されたくない思い出ってのはあるものだ)
P(それが前任のプロデューサーであったとしても、俺がそれを知る権利はない)
P(だったら、そんなの忘れてしまえばいい)
P(彼女たちの守りたいものを壊すことはないんだから)
P(……少し前のように、何もなかったことにすれば――――あるいは)
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