元スレ女「また混浴に来たんですか!!」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ☆
1 :
女「性懲りもなく!!」
男「肩こりもなく」
女「肩が凝ってなかったら来ないでください!」
男「それはそのご自慢の胸をご自慢してるのか」
女「違います!私が自慢することなんてここの景色の美しさと温泉の効能の素晴らしさくらいです!」
男「それはな、温泉の効能じゃない。湯に乳が浮かんで一時的に重さから解放されてるだけだ。肩こりを直したいなら宇宙にでも行ってこい」
女「あなたが行ってください!」
男「はっはっは。腹が凝るほどでかくはないぞ。ふっはっはっは」
女「混浴で下ネタなんてマナー違反です!お先に失礼します!」ザバァ
男「すまんが既に俺が先にあがっている」ザバァ
女「じゃあ浸かります!」ザバァ
男「それではまた早朝。次もちゃんとタオルを巻いてくるんだぞ」
女「早く出てって下さい!!」
SSWiki :http://ss.vip2ch.com/jmp/1485265609
2 = 1 :
女「(世界に自分だけしかいないという慢心。それは、傍若無人とは異なる)」
女「(電車の中でお化粧をするのも、優先席に座りながら電話をするのも、子供の遊び場の近くでタバコを吸うのも、傍らに人無きが若き行為であるが、恥ずかしいことではない。少なくとも本人たちにとっては)」
女「(誰がいるとも思わなかった。その後悔こそが恥の元)」
女「(夜道を一人で歩いている時に歌を歌っていたら、すぐ後ろに人がいると気づいた時のように)」
女「(ノートに好きな二次元キャラの名前を書いていたら、友達がニヤニヤしながら見ていたことに気づいた時のように)」
女「(いや、大学4年生に至るまでの過去の思い出を全て遡っても、それ以上に……)」
女「ふぅー!!解放―!!」
女「最高―!!」
女「健康―!!」
女「ちんすこう!!」
女「ここ沖縄じゃないけどね!!ははは!!!」
男「韻を踏んでたのか」
女「(早朝5時という時間に油断して、山の中にある天然の混浴で、全裸でくだらない独り言を叫んでしまったことに勝る恥ずかしい記憶はなかったであろう)」
3 = 1 :
女「…………」
男「…………」
女「…………」
男「…………」
女「……おはようございます」
男「おお、話しかけてくるとは。おはよう」
女「……今日もお早いですね」
男「そちらこそ」
女「まだ5時ですよ?」
男「真冬なら大事件の寒さだな」
女「7月ですが、普通誰もこんな時間に混浴に来ませんよ」
男「日本で二人くらいか」
女「そうかもしれないですね」
男「そりゃあ油断もするわな」
女「……何の話でしょうか」
男「いやいや、案ずるな。そちらの話だ」
女「やっぱり私の話じゃないですか!」
4 = 1 :
女「いたならちゃんとアピールしてくれればよかったのに!!」
男「5時からここに来る女がいるとは思わなかったからな」
女「風呂なしアパートだからしょうがないんです」
女「ほら、この山の麓にある温泉、この前の地震で片方の温泉が使えなくなっちゃったじゃないですか」
女「普段男性客ばかり来る場所だから、修理が終わるまで、ほとんどの時間を男湯しか解放しないんですよ?」
女「男女平等だなんだと言うつもりはありませんが、この付近の風呂なしアパートに住んでる女性は時間合わせるの大変なんですよ」
男「男女は平等ではないだろう。男湯と女湯はその象徴だ。であればこそ、混浴はその矛盾を超越した究極の存在だと言える」
女「いきなり何の主張ですか」
女「あっちの温泉だって早朝も開いてますし、行きやすいからあっちに行けばいいじゃないですか」
男「俺はあそこの温泉には入れなくてな」
女「何言ってるんですか。男湯はあいてますって」
男「…………」
女「あの、いつも長めのタオルで下半身すっぽり隠してますよね」
女「も、もしかして……」
男「触って確かめてみたいかしら」
女「え、あ、す、すいません!てっきりあの!だ、大丈夫ですので」
男「安心しろ。ちゃんと付いてる」
女「ちょっと!!警戒レベル引き上がりましたよ!!!」
5 = 1 :
男「こんないかつい女もいないだろう」
女「人生の途中で性を変えたのかと思ったんですよ」
男「キャッチコピーのように言われたこともある。ごつい、でかい、こわい」
女「確かにそうですね」
男「俺もそう思う」
女「中身はどうですか?」
男「さぁな」
女「意外と乙女だったりして」
男「冷徹な怪物だよ」
女「小心者で、怖いものだらけみたいな裏設定は?」
男「すまんがもうあがる」
女「すいません、怒っちゃいました?」
男「のぼせやすいんだ」
女「恋愛にも?」
男「乙女にしたてようとするな」
6 :
立ちションの人!! 他人のお墓に立ちションの人じゃないか!!
7 :
酉見なくてもわかるな
この雰囲気好きだわ
8 = 1 :
女「おはようございます。今日は私より早いですね」
男「性転換、か」
女「え、なんですかいきなり。まだ5時ですよ。いや、夜でも驚きますよ」
男「俺が本気で女になろうと努力をしたら、誰も俺が俺だとはわからなくなるだろうな」
女「まぁそうでしょうね」
男「女湯にも入れるようになる。楽しめるかはわからんが」
女「そうですね」
男「女性専用車両にも乗れる」
女「そうですね。私は極力乗りませんが」
男「トイレはなんとなく真ん中の多目的トイレを使ってしまいそうだ」
女「あの、何の話ですか?」
男「男女は平等にはなりえないという話だ」
女「朝からテーマ重すぎません?」
9 :
全部書きためてからまとめて投稿しようと思っていたのですが、つい始めてしまいました。
終わりまでのあらすじは決まっていますが、1日5投稿くらいのペースになりそうです。
気長に読んで下さるとありがたいです。
今日はおやすみなさいませ。
10 :
おつ
11 :
おつ
好きです
12 :
また楽しみにしてるで
13 :
おつ
14 = 9 :
男「昔から不思議に思っていた。どうしてホームレスは男ばかりなのだろうと」
男「概して男のほうが稼ぐ意欲があり、女のほうが稼ぐ意欲がないとするならば、どうして貧乏の最たるホームレスに女はいないのか」
女「それこのご時世に絶対SNSに書き込んじゃだめですよ。住所と小学校の頃に好きだった女の子を特定されてお祭り騒ぎになっちゃいますよ」
男「どんな調査能力だ。いずれにせよ携帯電話もパソコンも持ってないから心配は無用だ」
女「ええっ!?もってないんですか!?」
女「ええ!!?ええ!!?」
女「えぇーーー!!!?」
男「そんなに驚くことか」
女「綺麗な景色とかおいしい食べ物とか珍しい出来事があったらどうするんですか!どうやって周囲にシェアするんですか!!」
男「現代っ子だな。それでだ、俺が考えるに…」
女「俺ってばついつい街の中にある銭湯ではなく、山の中の温泉にわざわざ足を運んできてしまうんだよなぁ。ああー!5時は誰もいなくて最高だな!まぁ、こんな時間にこんな場所に来るようなもの好きはそうそういないか、かっこわら」
女「ってできないんですよ!!」
男「俺は今日も手を大きく広げて山の中で自由を叫ぶ女に遭遇してしまった。これが証拠の写真です」
女「今日はしてないです!盗撮は犯罪です!」
男「話を戻すとだな、おそらく」
女「うぅ……私の綺麗なお尻は二次元の男の子にも見せたことがないというのに……」
男「ろくに見てないと言っただろ。すぐ目をそらしたさ」
女「ほんとですかねぇ。まぁ前髪も長いですしね。ごついのに。私みたい」
男「ごつい男が坊主じゃないといけない理由でもあるのか」
女「それで、パンケーキがなんでしたっけ?」
男「全く話を聞いてないなこいつ……」
15 = 9 :
女「冗談ですよ。女性は男のそばにいるだけで価値があるから、男が養ってくれるんじゃないでしょうか」
男「内容はありきたりだが、凄い言い方だな。まぁ、俺も似たようなことを考えていたが。その価値観は周囲の男友達にシェアしないでおくんだな」
女「女子大ですから大丈夫です―。心配ご無用です―。SNSで女性専用車両と女子大アップロードしますー」
男「誰が共感するんだ」
女「そういえば、男子大って存在しないですよね」
男「行きたいやつがいないんだろう」
女「女子大は楽でいいんですけどね。湯上がりの軽い化粧でも気にせずいけますから」
男「そうか」
女「ここにも男はいるんだがな……ってやきもち気味に意味深につぶやかないんですか?」
男「わるいがのぼせた。先にあがる」
女「はい、いってらっしゃいー」
16 = 9 :
男「…………」
女「…………」
男「…………」
女「……おほん」
男「…………」
女「……ごほんごほん」
男「…………」
女「……ぶぇーっくしょい!!」
男「風邪引いてるならあがったらどうだ」
女「あっ、おはようございます。今日もいい朝ですね」
男「ああ」
女「…………」
男「…………」
女「ノリわるっ」
男「化粧の話か?」
女「化粧はお風呂上がりにします。先にあがるあなたは知らないでしょうけど」
17 = 9 :
男「…………」
女「もしもーし」
男「何だ」
女「ニヒルを気取ってるこの俺が、昨日は喋り過ぎちまったな、とか思ってるでしょ」
男「よくわかったな」
女「小学生の頃に好きだった女の子の名前、しおりちゃんっていうんでしょ」
男「違うな」
女「じゃあなんですか?」
男「内緒だ」
女「別にいいじゃないですか」
男「小学生の頃の俺に怒られてしまう」
女「今日は何について喋りますか?」
男「本当おしゃべりが好きだな」
女「最近誰とも喋ってなくて人恋しいんです」
男「大学の友達はどうした」
女「みんなほとんど単位を取り終わっているので来ないんですよ」
男「お前は行ってるのか」
女「別にさぼってたとかじゃないですよ。留学をして4年で卒業するという方法が私の環境では半年の自主休講という形でしかなくてですね。凄いでしょ」
女「日本に帰って来た私は、また異国の地を愛する心を求めて、実家には帰らずにこの田舎にあるおばあちゃんちに来たんです」
男「そうか」
女「私、今は新幹線で大学に通ってるんですよ。親のおかげです」
男「医者か何かか」
女「医者の外科です」
男「そうか」
女「この話題退屈ですか?」
男「大学に通ったことがないからな。あまりイメージがわかないんだ」
女「そうだったんですか」
男「高校も中退してるから、中卒だ」
女「そうなんですか……」
男「反応に困るか?」
女「いえ、そういうわけでは…」
男「気にするな。パンケーキの話でもしよう」
女「本当ですか!?」
男「嘘だ」
女「…………」
男「不機嫌な表情に戻ったな」
18 = 9 :
女「私と話すの嫌ですか?」
男「誰に対してもこんな感じだ」
女「誰に対するものと一緒ですか」
男「そうかもしれないな」
女「ふーん」
女「あなたはどうしてこんな早朝にこの温泉までくるんです?」
女「この時間でも、街中の例の銭湯は男湯を解放してるじゃないですか。女性は夜の短い指定時間に入っていますけど」
男「理由は3つくらいあるがどれも退屈な理由だ」
女「人混みが苦手とか」
男「それは1つの理由だな。人が苦手だ」
女「私も苦手です」
男「その割にはよく喋りかけてくるな」
女「ふふん」
男「お前こそどうしてここまで来る。例の銭湯で夜に入ればいいだろう」
19 = 9 :
女「まぁあれですよ。朝に生きるのが1番だって思ったんですよ」
男「なんだそれは。夜は死んでるみたいな言い方だな」
女「あの地震が起きる前は、例の銭湯に早起きして浸かりにいっていたんです。ここは修理が終わるまでのしのぎ場です」
男「旅の恥はかき捨て、みたいなものだな。でなければ、痴態を見られた男に話しかけられるわけもないか」
女「やっぱり見てたんじゃないですか!!」
男「身体はじろじろ見ていない。セリフは鮮明に覚えているがな」
女「くうぅう……」
20 = 9 :
女「お風呂は朝に入ろうって決めたんです。今までの生活を全て逆さまにすれば、この人生も反対になるんじゃないかって」
女「時計って円の形をしているので、回転してもわかりにくいんですよ。人生を後ろ倒しにすると、おやつの時間が4時になって、5時になって」
女「起床時間もだんだん7時、8時、9時となって」
女「気づいたら6時が18時になっていたり。人が起きる時間に私が寝たり、誰かが朝食を取る時間に私は寝る前のお風呂に入っていたり」
女「でも、度重なる遅刻が重なると、面白いことに、誰よりも早い人間になるんですよ」
女「いつの間にか、みんなが起きる時間より1時間早く起きて、私のおやつの時間は14時になっていて」
女「私の人生取り返しがつくかもしれないと思った時に、取り返してやろうと思ったんです」
女「回りくどく話しすぎましたね」
女「まぁ、なんというか、私、中学時代から一時期……」
男「わるい、のぼせた。今日も先にあがる」ザバァ
女「……あの」
男「どうした」
女「今私が何か打ち明けようとしてた雰囲気感じ取れました?」
男「医者の娘のお嬢さんの人生の喜怒哀楽の結末が聞けるんだなと」
女「なんですかその言い方」
男「お前の話はそこまで退屈ではない。こんな時間に混浴に来てるのはあんたと俺くらいで、たしかに一見気もあいそうに見える」
男「だけどな、そっちの言葉を借りると、お互い異なる時間を生きている」
女「どういうことですか?」
男「俺は今から帰って寝るんだよ。俺の時計もまた他の人間とずれている」
女「時間差は、ええと……」
男「寝るのが6時間遅い。海外に遊びに行ってても時差はすぐには浮かばないのか」
女「今日はなんだか冷たいですね」
男「熱いだろ。だから俺はのぼせた。じゃあな」
21 = 9 :
女「…………」
女「私も、こっちにきておばあちゃん以外に初めて話せる人ができてちょっと浮かれていたかもしれませんが」
女「だからって何ですか!!」
女「人の後ろ姿の裸も見たくせに全然気にもならないみたいな態度ですし!!!!」
女「キィいいい!!!むっかぁ!!!!」
女「もう知りません!!一人で無言で浸かってればいいじゃないですか!!」
女「実は女だの、人が苦手だの、今から寝るだの」
女「ミステリアスすぎるんだよぉ!!!!」
女「このねぼうすけーーー!!!」
女「でくのぼうーーー!!!」
女「肉の棒ーーー!!!」
女「ふんっ!!!!!」
女「…………」
女「…………」
女「…………」
女「だ、誰もいないよね」チラ…
女「ほ、よかった…」
女「我ながら最後のはないわ……」
女「少しお化粧して、大学に行こう」
22 = 9 :
映画を観る時は、携帯電話の電源の切り忘れと同じくらいに、"朝のキス"のシーンに注意をしなければならない。
朝は、本物の時間だから。
おばあちゃんが言っていた。老人が朝早くに起きるのは、長年生きてきて朝が本物だとわかったからだと。
身体ではなく心の都合で生きる時間が変わるのだと。
映画が始まって、ベッドの上で朝日を浴びながら男女がキスをしているとしたら、それは本物の愛。
作り手にとって、物語の終盤に壊すにふさわしい愛。
こんなことなら、いっそ、朝なんてなくなってしまえばいいのにと、今後も私は思うことになるのである。
次回
「火のないところに煙は立たぬ。だが、湯気あるところに男はいきりタつ」
混浴では、"ワニ"の出現にもご注意。
23 :
今日は終わり? かな?
期待してるぞい!
24 :
幼い頃から見飽きていた花火に、目を奪われたことがある。
毎日さよならを告げることの出来る友達がまだいた夏。
蝉の鳴き声がやけに静かだと感じたあの夜。
物心ついたときから、誉められることも、認められることも多かった私は、性格こそひねくれてはいなかったけど。
目を伏せながら生きているような人間に、目を向けるようなことはしなかった。
『傷つくことで、人の痛みを知ることができる』
人の痛みを知らないまま、一生傷つかない人生をこのまま送ったほうが遥かに幸せだと思っていた。
浴衣姿の似合う綺麗な女友達に囲まれながら、大して好きでもないわたあめを舐めていた。
歩き疲れた私達は公園で一休みすることにした。
公園につくと、視界にはクラスの男子の集団と、冴えない女子の3人組、一人でベンチに座っているみすぼらしい男を同時に見つけた。
私の友達ははしゃぎだして、男子の集団に近づいていった。
冴えない女子がこちらに気づいてふろうとした手を、途中で下げた。
円になって男女で五月蝿く話している中、私は気恥ずかしくてわたあめを舐めるのに夢中なふりをした。
突然打ち上がった花火は、幼い頃から見飽きた花火だった。
けれど、このあと、非日常が訪れる。
女子に囲まれていた男子のうちの一人が私に近づいてきて。
私は少しドキドキして。
ベンチに座っていた男が立ち上がって。
私は、当然のように目もくれず。
私の思春期は、そこで。
25 = 24 :
女「わぁっ!!!!」
女「はぁ……はぁ……」
女「私、寝ちゃってたのかな」
女「やばい、今何時だろう!」
女「単位ぎりぎりなんだから自主休講なんてできないのに!」
26 = 24 :
女「ぎりぎり電車に間に合った…」
女「今朝も、あの男は私より先に来ていて」
女「私はあの男に手前側に座って。お互い一言も喋らずにいて」
女「ごつい身体ですぐのぼせて、また私よりも早くあがって」
女「一言も話しかけない態度に私はイライラして、不貞腐れて、いつの間にかウト寝しちゃって」
女「嫌な夢を見たんだった…」
27 = 24 :
女「大学に来る四年生なんて、リクルートスーツ着た就活中の人たちばっかり」
女「まぁ私には関係ない話だけど」
女「残りの半年間、私は老後を過ごすんだ」
女「文学の授業の教授がヘミングウェイの言葉を言ってた。『若者に知恵が、老人に力さえあれば』」
女「私は体力も気力のある若いうちに、自分の好きなことをして、見たいものを見て、浸かりたいものに浸かるんだ」
女「社会人になって、周囲の人が『老後にはこんなことをしたいな』って言ってる中で」
女「『私はもう老後を過ごしましたけど』ってこころの中でつぶやくんだ」
女「はぁ、自分が嫌いだな。お父さん、一生私の面倒見てくれないかな」
28 = 24 :
女「はぁ……」
女「…………」
友「あれ、女ちゃん!?」
女「あっ、友ちゃん!!」
友「何してんの!?授業!!」
女「授業だよ授業!!友ちゃんリクスーだね」
友「そうだよ就活だよ―。私はもう内定持ってるんだけどね。女ちゃんは大丈夫そう?」
女「そうだなぁ…最高のニートになれそう」
友「うける!私もニートなる!」
女「なろなろ!」
友「なろうね。マラソンも一緒に走ってゴールして、飲み会は行けたら行くし、ニートもなれたらなろうね」
女「絶対裏切る気でしょ!」
友「あはは!!じゃあお互いがんばろうね」
女「うん!またね」
友「あっ、結局就活どうなの?」
女「……うーん、ぼちぼちかな」
友「そうなんだ!じゃあまた!」
29 = 24 :
女「…………」ザバァ
男「…………」
女「…………」
男「…………」
女「…………」
男「…………」
女「…………」
男「…………」
女「…………」
男「…………」ザバァ
30 = 24 :
女「今日も一言も話さなかったな」
女「大学で友達にさりげなくマウンティングされた話とかしたかったのに」
女「海外に行ったり、おばあちゃんちに泊まったり。私はどこかに逃げ出したいだけなんだろうな」
女「はぁ……」
女「明日は授業ないし、どこかまた遊びに行こうかな」
31 = 24 :
女「……んんん」
女「目覚まし無しで起きるのって最高」
女「いつも早起きしてるから8時に起きられたな」
女「おばあちゃん朝ごはん置いててくれてる。おいしそー」
女「ご飯食べたら、ちゃんとお化粧して、街中のおしゃれなカフェで読書でも決め込もうかしら」
女「それとも映画館にでも行こうかな」
女「それとも……」
32 = 24 :
女「いつもの癖でまた混浴に来てしまった……」
女「お昼時に来るのって初めてかもしれないな」
女「男の人が入ってたらどうしよう……」
女「でも女の人が来てたら少しおしゃべりできるかもしれないな」
女「よし。ものは試しだ」
33 = 24 :
ジー……
女「(えっ……)」
ジロジロ……
女「(おじさんが3人いる……)」
ジー…
女「(なんか視線を感じるような…)」
女「(しかもなんでだろ、ペットボトルが置いてある)」
女「(なんか怖いな。体流したらすぐ出ちゃおうかな……)」
男性1「おじょうちゃん、ここよく来るの?」
女「え、あ、あの、あまり…」
男性2「ここは良いよぉ。景色もきれいだし、お湯も身体の芯から温めてくれるし」
女「は、はい…」
男性3「おいおい、やめろって。いきなり話しかけられてお嬢ちゃんも嫌がってるじゃないか」
女「いや、そんな…」
男性1「わりぃわりぃ。俺達は釣り仲間でね。この付近の釣り場に来た帰りなんだ」
男性2「今日は坊主だったよ。昨日はけっこう釣れたんだけどなぁ」
男性3「ちなみにこいつは毎日ハゲだけどな」
男性1「がっはっは!」
男性2「うるせー!お前もそう変わらんだろ!」
女「(悪い人たちじゃなさそう?)」
34 = 24 :
男>2「でもまぁ、こうやって湯に浸かってると、どうでもよくなっちゃうね」
男>1「お嬢ちゃんは釣りやったことある?」
女「いえ、ないです」
男>1「今度おじちゃんが教えてやろうか?」
女「ええと…」
男>3「お前らが喋りかけてばかりいるから困ってるだろ」
男>1「ごめんごめん。身体流したらゆっくり話そうよ。俺も一人暮らしの娘の顔を最近見れていなくてね」
女「何年生なんですか?」
男>1「高校二年生だよ」
女「高校生で一人暮らししてるんですか」
男>1「あ、えーと、高校が遠くてね」
女「そうなんですか」
男>1「まあ後でゆっくり話そうよ。身体洗っちゃいな」
女「はい」
35 = 24 :
女「…………」ワシャワシャ
女「…………」ワシャワシャ
女「(なんか凄い静かな気がする……)」
女「…………」ザバァ
女「よし」
男>2「あれ、身体は洗わないの?」
女「はい?」
男>2「いや、ここはみんなで使う場所だからさ。頭だけ洗って、身体洗わないってのはちょっと…」
女「あの、普段なら、あの人も背中向けてるし、洗うんですけど、なんというか……」
男>2「マナー違反はちょっとねぇ」
女「そうですよね、すいません…今日は失礼します…」
男>3「おいおい。せっかくこんな山奥まで来てくれたのに可愛そうじゃないか」
男>1「こんな潔癖野郎のいうことなんか気にせずきなよ。こいつの洗った身体より君の洗ってない体のほうが清潔に違いない」
男>2「わ、悪かったよ…」
女「あの、今日は…」
男>3「ほらほら、場所開けろ」
女「ちょっと……」
36 = 24 :
女「そ、それじゃあお邪魔します…」
男>1「…………」
男>2「…………」
男>3「…………」
ジィー……
女「(なんか気持ち悪い…)」
男>3「ちょっと、それはさすがに」
女「はい…?」
男>3「バスタオルつけたまま入るのはマナー違反でしょ。さすがにそれくらいは知っておいてよ」
女「あの、でも……」
男>3「タオルの繊維が湯に浮かんじゃうでしょ!!」
女「ひっ!」ビクッ!
男>3「おじさんたちだってタオル持ってないでしょ。ほら。つけてないでしょ」
女「嫌…」
男>3「ほら。おじさんたちも見てみなって。バスタオルもとりなって」ニタニタ…
女「あの、わたしもう」
男>2「もうのぼせちゃったの?早すぎでしょ。これだから今の若い人は」
ガラガラ…
男「…………」
女「っ!」
女「(私より、のぼせるのが早い人が来た)」
37 = 24 :
男「…………」ザバァ
男>1「おいなんだお前。身体も洗わずに入ってきて」
男「いつもこうだ」
男>2「はぁ?」
女「ええっ!?」
男「外にまで下品な声が聞こえてきたぞ」
男>1「なんだお前」
男>2「男のくせにバスタオルつけて、長い前髪しやがって。顔見せろや」
男「だったらお前は男らしいかもな」
男>2「てめぇ……」
男>3「女男がのこのこ来やがって。邪魔なんだよ」
男「俺は男だ。そうだな、タオルを取るのがマナーだったな」
男「お前、ちょっとどけ」
女「え、いったい」
男「黙って出て行け」
バサリ…
38 = 24 :
女「キャッ!」
女「(バスタオル広げて、おじさんたちに、何見せつけてるんですか!!!)」
女「(後ろからは何も見えないけど…)」
男>1「…………」ダラダラ…
男>2「…………す、すまねぇ」アワアワ…
男>3「……出ていく。出ていくって!!」
ザバァ!!ザバァザバァ!!
39 = 24 :
女「えっ、えっ。何が」
男>1「け、けどな」
男>1「あんたはもう二度と、ここには来れないぞ」
男「この場所はバスタオルをつけて入っても良いことになっている」
男>1「はぁ?」
男「管理人のおばさんに直接確認した。ルールはそこの看板にも書いてある通りたった1つらしい」
男「『美しい景観を損ねることの無き様』」
男「わかったらさっさと出て行け。ここは俺と俺のお友達のお気にい入りの場所なんだよ」
男「また釣りにでも行ってこい」
40 = 24 :
女「…………」
女「はぁーーー……」
女「どっと疲れました」
男「ちょうどいいな。この湯に浸かって休めばいい」
女「いったい、何をしたんですか?」
男「股間を見せつけた」
女「はぁ?」
男「それに驚いてやつらが逃げ出したんだ。やっぱり男の勝負はこうして決まるものだな」
女「何を漫画みたいなことを。というかその行為自体が美しい景観を損ねてるじゃないですか」
男「困った女性を守るのは美しい光景に分類されるだろう」
女「な、何を!」
女「最近だって無視してたくせに!!」
男「俺と関わるとろくなことがないんだよ」
女「今日も助けてもらいましたよ」
男「俺がどういうやつかもしらずにな」
女「悪い人ではないでしょう」
男「だったら、種明かしをしてやろうか」クル…
女「また背中を向けて、なんですか」
男「前だと少々衝撃が強すぎるんでな」
バサリ…
女「……う、わ、」
女「い、入れ墨が、下半身に、びっしり……」
男「これでおあいこだな。裸の後ろ姿を見られた者同士」ニヤリ
41 :
とんでもないイチモツを見せつけたのかと思ったぜ
43 = 24 :
女「あの人達また来ますかね」
男「この辺に魚を釣れるような場所はない。お前も来たばかりで知らなかったのだろうがな」
女「そうなんですか」
男「混浴に手当たり次第手を付けてるワニだろう。ペットボトルも置いてある」
女「ワニ?」
男「女の身体を見るために混浴に張り付いている男をそう呼ぶんだよ」
男「群れで水の中に潜って獲物を待ち伏せする姿が動物のワニと似てるだろ」
男「水分補給も欠かせないからペットボトルまで持ってきてな」
男「ここに混浴があるというのをどこかで知って、良い女はいないかと来てたんだろう」
44 = 24 :
女「本当に助かりました……怖くて逃げ出せなかったんです」
男「逃げ出せたさ、お前なら。ただ、苦痛な時間は少ないほうがいいと思ってな」
男「俺も人混みは苦手なんで、一見さんはお断りしたかったんだよ。ましてや常連になられても困る。湯が汚れるからな」
女「そ、それ!あなた身体流さずに先に入ってたんですね」
男「確かにお前は洗ってるな」
女「いつも見てたんですか!?」
男「身体を流す音が聞こえるだけだ」
女「マナー違反ですよ」
男「俺は管理人のおばさんに全てを認められている存在だ」
女「凄い自信ですね」
男「俺が街中の温泉に行かない理由がわかっただろう」
男「入りたくても入れないんだ。この刺青のせいで」
男「それをここのおばあさんは、見えないようにすればいいと言ってくれたんだ」
男「隠して入ろうか迷ったが、事情を説明したんだ。早朝の誰もいないような時間しか利用しないからとな」
男「そのインクはなんだい?」
男「刺青です」
男「暴力団かなんかなの?」
男「もう足を洗いました」
男「洗った割には落ちてないじゃないか」
男「いや、洗ったというのはですね」
男「冗談だよ。入りな。ただし隠すんだよ」
男「いいんですか」
男「刺青がなくても隠すべきもんを隠さないやつも時々いるからね。あんたはそいつらよりはマシそうだ」
男「僕はそいつらよりも極悪人ですよ」
男「いいから入りな。ここにはね、日本の美しさが詰まっているんだよ。心を洗ってきな」
男「こんな会話をした覚えがある」
女「…………」
男「本当だぞ?」
女「いえ、疑ってるのではなく。その会話が嬉しくて、何度も反芻してたのかなって」
男「…………」カァ…
女「あれ、もうのぼせちゃいました?」
男「……バカ言え。今から楽しむところだ」
45 = 24 :
女「私と会話をしたがらなかった理由もそのせいですか」
男「何のせいだ」
女「自分は認められるべき存在ではないとどこかで思っているせい」
女「元極道かなにかは知らないですけど、会話をすることってそんなに恐ろしいことですか?」
男「……お前は何もわかってない」
男「会話っていうのはな、会話をした相手と繋がり始める行為なんだよ。好きな相手であろうが、嫌いな相手であろうが。告白だろうが、喧嘩だろうが」
男「今日お前はあいつらと会話をしただろう。会話を始めたのが不幸の始まりだった」
男「学生時代に学ばなかったのか。最初の会話がうますぎるくらいに噛み合ったやつとは、後々悪い関係になると。最初はやさしくはなしかけられたって、素性はどんなやつかわからん」
女「どうでしょう。よくわかりませんが、だったらあなたとも今後悪い関係になってしまうのでしょうか」
男「別にお前と噛み合った記憶はないが」
女「今日も私がワニに噛みつかれそうになった時に、あなたが噛み付いてくれました、あなたとワニが噛み合いました」
男「何が言いたいのか」
女「あなたに無視されて寂しかったってことですよ!わかってるんですか!」
男「まるで会話が噛み合わん……」
46 = 24 :
女「言ったでしょ。話し相手が欲しかったって」
男「ひよこかなんかと一緒だな。最初に見た方に親近感を覚える。俺がお前にやさしくしたのは今日だけで、今までは冷たいやつだったろう」
女「もしも最初に両手を広げて裸で独り言を叫んだ時に、後ろにいるのが今日のおじさん達だったとしたら、私はここの銭湯に浸かってから大学に行くのではなく、大学付近の温泉に入ってから大学に向かっているようになってますよ」
女「こんな隠れ家的な美し景色とはおさらばでしたね」
女「人が少ないことに加えて、あなたがここに来る理由の2つがわかった気がします。一つは刺青があっても入れるから。もう一つは、やはりここが美しいから」
女「その理由の一つに、私とおしゃべりができるというものを入れてみませんか?」
男「……本当に馬鹿なやつだな。お前みたいなやつが、付き合ったら暴力を振るうような男と付き合う」
男「間違い電話で一目惚れ、いや、一聴き惚れした女の子が、相手の男に人生をめちゃくちゃにされた話を知っているのか」
男「ゲームセンターで、カフェで、コンビニで、素性をよく知らない男と親密になって人生を狂わされた女がどれだけいると思っている」
男「お前が今話している男だってな、素性は冷徹な……」
女「お前が今話している女の子ですよ」
男「はぁ?」
女「私と繋がりたくなければ、黙ってるのが正解でしょう。私とあなたがつながらない理由を話している時点で、私とあなたは繋がり始めているんじゃないですか」
女「私は帰国子女で、誰にでもフレンドリーですからね。勝手に好きになってストーカーされたら困りますが、良い茶飲み仲間、ならぬ湯浴び仲間になりましょう」
47 = 24 :
男「……はぁー」
女「あっ、今幸せが一つ逃げました」
男「人がため息を付いてる所に追い打ちをかけるな」
女「あなたの残存幸せ数は残り18,000個です」
男「そんなにないだろ」
女「一年で365日で、残り50年生きるとして、ええと……」
男「1日1個くらいだ。多すぎる」
女「暗算早いですね」
男「のぼせるのもな。今日は失礼する」ザバァ
女「では私も失礼する」ザバァ
男「ついてくるな」
女「ついていきませんよ。更衣室は別ですし」
男「ああそう」
女「今日午後暇ですか?」
男「これから帰って寝るところだ」
女「お昼寝ですか」
男「俺にとっては夜だよ」
女「生活が不規則ですね。お仕事だからしょうがないですが。ご一緒にお茶できなくて残念です」
男「湯浴び仲間以上の関係になるつもりはない」
女「茶飲み仲間より親密そうじゃありません?」
男「じゃあな」
女「ええー、ちょっとー!」
48 = 24 :
女「はぁ、はぁ!」
男「どうした」
女「ほら、服着てそっこう出ていくと思いましたもん。私もお化粧せずにそっこう出てきました」
女「前髪伸ばしといてよかったー」
男「お前が伸ばさなくても俺が伸ばしてるから大丈夫だ」
女「本当長いですよね。寡黙な雰囲気と似合ってますよ」
男「そりゃどうも」
女「これから駅までですか?」
男「残念ながらこっちだ」
女「お家はこのへんで?」
男「眠いんだ俺は。じゃあな」
女「あーそうですか。それじゃあ」
男「またな」
女「!?」
女「はい!それでは、また早朝!」
49 = 24 :
読んでくれてありがとうございます。
ご支援本当にうれしいです。
今日はここまでです。おやすみなさいませ。
50 :
一歩前進したな
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