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元スレ京太郎「俺が三年生?」淡「えへへ、だーい好き!」
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京太郎「お、いたいた」
一「あれ、須賀くんもお買い物?」
京太郎「お前を探してたんだよ」
一「ボクを?」
京太郎「今日ってホワイトデーだろ。国広には手渡しときたくてさ」
一「え……そ、そんな、別にお返しなんていいのにさ」
京太郎「そう言うなよ。俺の気持ちも受け取ってくれ」
一「……開けてもいいかな?」
京太郎「ああ」
一「じゃあ……」ガサガサ
一「これって……アメ?」
京太郎「嫌いだったか?」
一「嫌いとかじゃないんだけど……本気?」
京太郎「本気もなにも、それが俺の気持ちだって言ったろ」
一「そ、そうなんだ……」
一(ホワイトデー、お返し、アメ……その意味ってたしか)
一(……ぼ、ボクもそういう気持ちがないって言ったら、ウソになっちゃうけどさ)
一(でも、やっぱりいきなりすぎるよ)
一(正直、心の準備がまだ……)
京太郎「あー、困らせちゃったか?」
一「ち、違うよ。嬉しいけど、戸惑っちゃって」
一「……うん、ありがと」
京太郎「受け取ってくれるか……」
一「ね、須賀くん……ボク――」
京太郎「じゃ、こっちも頼むわ」
一「え、こんなに?」
京太郎「ああ、屋敷の人たちの分な。今日はちょっとそっちに行く余裕がなさそうだからさ」
一「……もしかして、ボクを探してたのって」
京太郎「今日は買出しの当番だったろ。それだったらここら辺に来るんじゃないかってな」
一「……はぁ、そういえば須賀くんってそういう人だったよね」
京太郎「なんだ、遠い目して」
一「いいから早く行ったほうがいいんじゃないの? 余裕ないんでしょ?」
京太郎「そうだな、じゃあ行くわ」
一「……バーカ、須賀くんのバーカ」
――後日
京太郎「国広ー? ちょっとそれ取ってくんない?」
一「それぐらい自分で取りなよ」
京太郎「自分でってお前、手が塞がってるんだけど……」
一「じゃ、ボク忙しいから」スタスタ
京太郎「……俺、あいつが怒るようなことしたっけ?」
――おまけ
玄「あ、ああああっ、憧ちゃん!」
憧「なによ、騒がしいわね」
玄「キャンディからお返しの京太郎くんにホワイトデーが!」
憧「とりあえず日本語喋って」
宥「あ、クロちゃんももらったんだ」
憧「ということは宥姉も?」
宥「うん、アメの詰め合わせ」
玄「お姉ちゃんも? ま、まさか二人一緒にってことじゃ……」
憧「ふきゅっ!?」
憧(この前小走先輩とデートしてたくせに姉妹丼ってどういうことよっ)
玄「そんな……でも、お姉ちゃんとなら……」モンモン
憧「でもそういう浮気性なイケメンがマジになる展開って……ふきゅっ」
宥「あったか~い」
とかいうホワイトデー
もう日が変わってるけど気にしない
国広くんは一週間ぐらい冷たかったとさ
んじゃ、働いてきます
もう日が変わってるけど気にしない
国広くんは一週間ぐらい冷たかったとさ
んじゃ、働いてきます
京太郎がなぜかショタ太郎になっておねえさん方に可愛がられるのとか良いよね
こんばんはー
このまま雪が消えて欲しいと思う今日このごろ
もうちょっとしたら始めます
このまま雪が消えて欲しいと思う今日このごろ
もうちょっとしたら始めます
・三年、冬、ゆきどけ
爽「いよいよ明日か……」
誓子「ちょっと緊張するね……」
成香「チカちゃん、頑張ってくださいっ」
揺杏「爽も肩の力抜いてさ」
由暉子「……」
由暉子(もうすぐ二月が終わってしまいます)
由暉子(そして雪が消える頃には、二人はもう……)
揺杏「そうだ、これからみんなでご飯食べにいかね?」
成香「壮行会ですね、素敵ですっ」
爽「しょうがないなぁ、奢られてあげよう!」
誓子「こら、後輩にたからないの」
爽「無礼講だってば」
揺杏「無礼講だからって支払いを迫ってくる先輩かー」
成香「素敵じゃないです……」
爽「うわ、心象が悪くなってる」
誓子「しかたないと思うけど……ね、ユキ?」
由暉子「……」ボー
誓子「ユキ?」
由暉子「え……なんですか?」
誓子「眠い? ボーッとしてたけど」
由暉子「……漫画で見たんですけど、卒業する男子からボタンをもらうのって、どう言う意味があるんでしょうか?」
揺杏「あー、あるある。なんで第二ボタンなんだろ?」
成香「第一ボタンじゃダメなんでしょうか?」
誓子「そうだなぁ、一番上だと目立っちゃうからとか?」
爽「もう着なくなるのに目立つもなにもあるのかな?」
誓子「む、たしかに……」
爽「つまりあれだね、第二だけと言わずに全部むしっちゃえばお得感アップだ」
揺杏「むしろプレミアム感はダウンじゃね?」
成香「そうですよ。たった一つだからこそ特別なんだと思います」
爽「なるほど、供給が増えたら需要が下がる……まいったね、こんなところで勉強の成果がでちゃってるよ」
誓子「本番も頑張ってね」ニコッ
爽「ま、なるようになるさ! なるようにしかならないとも言うけどね!」
揺杏「開き直ってるねー」
爽「もうやけっぱちだね!」
成香「や、やけになるのはダメですよっ」
由暉子(もう、こんな光景も……)
爽「……」
爽(またユキがボーッとしてるね)
爽(第二ボタンの件、そんなに気になるのかな?)
爽(たしかにユキがもらいたい相手のは競争率高そうだなぁ)
爽(前期の試験が終わればすぐに卒業式か……よしっ)
爽(ダメ元だけど、頼んでみるかな!)
京太郎「見ろよ、世界が輝いてるぜ」
まこ「……なんじゃありゃあ」
咲「久々に顔出したと思ったら……」
優希「なんか気持ち悪いじぇ」
京太郎「はは、酷いなお前ら」
まこ「ここ最近のグロッキー具合を見とりゃあ当たり前じゃけぇの」
京太郎「ああ、そんなこともあったな」
咲「えっと、悩み事なら相談に乗るよ?」
京太郎「心配してくれてありがとな。でも大丈夫だからさ」ナデナデ
咲「え、あ……だ、大丈夫ならいいんだけど……」
優希「あたりがなんだか柔らかい……これなら!」
優希「先輩、タコス一丁!」
京太郎「タコスか? よし、ちょっと待ってろ」
優希「おおっ、ついに思いが通じたじぇ!」
咲「最近は自分で用意しろの一点張りだったのに……」
まこ「臨時収入でも入ったんかい」
久「それはあれでしょ、二次試験が終わったからよ」
優希「元部長!」
咲「あ、そっか。もう二次試験終わったんだ」
まこ「しかし後期日程は残っとるけぇ」
京太郎「後期か……はっ、そんなの俺には必要ないな」
優希「凄い自信だじぇ、合格確実と見た!」
京太郎「よせよ、そんなんじゃないって」
咲「じゃあ諦めちゃったとか?」
京太郎「全力でやったんだ、諦めるなんてできるかよ」
まこ「慢心でも諦念でもない……拾い食いでもしたんかいの?」
京太郎「そんなに飢えてないから」
久「ぶっちゃけると、後期には出願してないだけなのよねぇ」
咲「……大丈夫なんですか?」
久「さぁね、だけどもともとそういう約束だったから」
京太郎「つまり俺は自由の身ってわけだ」
京太郎「ってなわけで、行ってくるぜ!」
咲「行っちゃった……」
優希「あっ、タコスがまだだじょ!」
まこ「あがぁなこと言うとるがの、正直どうなんじゃ?」
久「どうともね……でも、無理に付き合わせてたから」
まこ「……ほうかの」
優希「タコスー!」
京太郎「この解放感……やべぇな、逆に何すればいいかわかんねぇよ」
京太郎「……しかし、試験が終わったら次は卒業か」
京太郎「いよいよか……ってか、どうしようか」
京太郎「この期に及んで何も決めてないとか……」
京太郎「ま、合否がはっきりしてからでいいか」
京太郎「とりあえず当面は資金不足の解消だな」
京太郎「また龍門渕にバイトに行って――」
和「――先輩っ」
京太郎「お、どうした?」
和「二次試験が終わったって聞いて……」
京太郎「ああ、これで晴れて俺は――」
和「うちに来てください!」
京太郎「うん?」
和「今日はお母さんもいますから、その……ちょうどいいかなって」
京太郎「ああ、そういや普段は東京にいるんだっけ。仕事の都合なんだってな」
和「やっぱりこれからのことを考えると、避けては通れませんから。お父さんも気にしてますし」
京太郎「そうなのか……」
京太郎(やっぱり恵さんは東京行きたがってるのか)
京太郎(夫婦だし、一緒にいたいのは当然だよな)
京太郎(難儀だな……いや、だからこそか)
京太郎(卒業前の一仕事だ。かわいい後輩のために一肌脱ぐのも悪くないよな)
京太郎「よし、わかった。部活終わってからでいいよな」
和「はい……でも、ちょっと緊張しちゃいます」
京太郎「安心しろ、俺もついてるから」
和「……そうですね」
和(お母さんに認めてもらえれば……)
和(先輩は十八歳で私は十六歳、もはやなにも問題はなしですねっ)
和(今、婚姻届を出せば……)
和「あ、そうでした」
京太郎「忘れ物か?」
和「ちょっと書いてほしい書類が……」ゴソゴソ
京太郎「書類って――うおっ!」
――バサッ
京太郎(なんだ、今の……窓の外になんかいるのか?)ガラッ
和「外になにかあります?」
京太郎「いや、最近あったかくなってきたと思って……」ガシッ
京太郎(え、なんかつかまれてない?)
京太郎(それにすごい力で引っ張られ――)
京太郎「――なんじゃこりゃぁぁああああっ!!」
和「先輩っ、先輩!」
和「……い、一体何が……」
優希「のどちゃん発見! 遅刻者には厳しいばつが必要だじぇ!」
和「ゆーき……先輩が、先輩がっ」
優希「そうだじぇっ、タコスの件で問いたださねば!」
和「飛んでっちゃいました!」
優希「そんなオカルトありえないじぇ」
和「事実です!」
――バサッバサッ
京太郎「……」グッタリ
京太郎(生身で空飛ぶとか考慮してねぇよ……)
京太郎(てかなんだよこいつ、よく見えないけど鳥か?)
京太郎(ダメだ、気が遠くなってきた……どこまで連れてく気だよ)
――バサッ
京太郎(止まった……? てか放され――)
京太郎「――マジかぁ……」
京太郎(寒い、空気薄い……そして落下中)
京太郎(うわぁ……俺死んだな)
京太郎(そりゃいつかは死ぬだろうけど、こんなわけのわからないことで死ぬなんて)
京太郎(あ、やばい。地面近づいてくる)
京太郎(雪の上なら大丈夫かな……って無理に決まってんだろっ)
京太郎「止まれ止まれ止まれ止まれっ、止まれぇぇええええっ!!」
――ゴウッ
京太郎(いきなり風が……減速した?)
京太郎(これならいけそうな気が……ってやっぱ怖いっての!)
京太郎「いや、無理無理無理無理っ――うぶっ」ズシャッ
爽「お、着地成功?」
京太郎「……」
爽「うんうん、ボタンも無事みたいだし良かった良かった」
京太郎「……」ブルブル
爽「おひさし、元気してた?」
京太郎「とりあえず、寒い……ストーブにあたりたい」ガタガタ
爽「あー、うん。じゃあ成香の家が近いし、そこ行こうか」
京太郎「……で?」
爽「でっていう?」
京太郎「それはこの前散々やったからいいんだよっ」グリグリ
爽「あだだだだっ、意味わかんないってば!」
京太郎「お前の仕業だってことはなんとなくわかってる」
爽「これもある意味の信頼だね」
京太郎「いいから言え、なんでこんなことした」
爽「いやぁ、明日卒業式でさ」
京太郎「卒業式だからって人を自由落下させたってのか!」グリグリ
爽「あだだだだっ、割れる割れる割れちゃうからっ!」
京太郎「なんであんなことした! 言え!」
爽「す、すごい剣幕だね……」
京太郎「本当に死ぬかと思ったんだからなっ」
爽「ごめん……ちょっとした出来心で」
京太郎「出来心だと!?」
爽「か、カムイにさ、軽い気持ちで連れてきてくれたらなーって」
爽『いやぁ、ちょちょっと連れてこれないかな?』
『オッケー、朝飯前よ』
爽『マジメに?』
爽「みたいな感じで」
京太郎「なんか軽すぎない?」
爽「まぁ、要約したらそんな感じってこと」
爽「でも、まさか本当に連れてくるなんて……」
京太郎「俺もまさか軽い気持ちのせいで死にかけるとは……」
爽「でも落ちて無事だったのもカムイのおかげだからさ」
京太郎「もしかして、あの時の風か?」
爽「レラカムイって言うんだけど」
京太郎「バスケチームしか思い出せないな」
爽「わかりやすく言うと風の神様だね」
京太郎「たしか臨海にそんなやついたなぁ」
爽「とにかく、命を助けたことに関しては感謝してもいいよ?」
京太郎「どの口で言ってんだ、どの口で!」ガバッ
爽「ひえっ、グリグリはもう十分だってば!」
成香「ホットミルクお待たせしました――はうわっ!」
京太郎「ちょっと待っててくれ、今こいつにお仕置きするから」
成香「み、身を縮める爽さんに覆いかぶさるように……」
京太郎「……言っとくけど、そんな色っぽいもんじゃないからな?」
爽「きゃー助けてー」
京太郎「おい、下手な演技はやめろ」
爽「せめてもの復讐だねっ」
京太郎「ひどい目にあわされたのはこっちだ! そもそもそんな大根っぷりで信じるわけ……」
成香「こ……こんなのユキちゃんたちには言えませんっ」ダッ
京太郎「……まあ、あいつだけなら後で誤解解いとけばいいか」
爽「あ、ちなみにもうすぐユキと揺杏も来るってさ」
京太郎「よし、今すぐ追うぞ!」
由暉子「積もりましたね」
揺杏「だなー」
由暉子(今日はアルバイトです)
由暉子(とは言っても成香先輩のお手伝いですけど)
由暉子(大雪が降って雪かきの手伝いがほしいみたいです)
由暉子(受験生の二人は忙しいからということで、今日は私と揺杏先輩だけです)
揺杏「でもさ、せっかくの日曜に雪かきとは……」
由暉子「アルバイト料はもらえるみたいですよ?」
揺杏「ま、気分転換にはいいかもね」
由暉子「なにかお悩みでも?」
揺杏「実は衣装のアイディアがさぁ」
由暉子「そういえば最近新作が少ないです」
揺杏「なんだかんだで爽が持ってきた話に合わせて作ってきたからなー」
由暉子「プロデューサー不在は深刻ですね……」
由暉子(そして誓子先輩や爽先輩と遊ぶ機会も減って寂しいのも事実)
由暉子(先輩たちと出会う前は、そういうのを気にしたことはなかったんですけど……)
由暉子(あのころと比べたら、少しは変われたということでしょうか?)
揺杏「牧場ともなると広いから大変だよなー」
由暉子「大部分は機械でやるんじゃないですか?」
揺杏「たしかに。置いてるね、おっきなの」
由暉子「そろそろ着きますね」
揺杏「げっ、結構量あるじゃん……」
由暉子「たまに身体動かすのも悪くないと思いますよ?」
揺杏「はぁ……諦めるか」
『待て、待ってくれ! 頼むから俺の話を……!』
『ごめんなさいっ、もうどうしたらいいかわかりませんー!』
由暉子「……目の錯覚でしょうか?」
揺杏「すごい、あんなに走ってるのに成香が転んでない……」
由暉子「あの、そこじゃなくて」
揺杏「うん……なんで今ここにいるんだろーな」
由暉子(その人はここにいるはずがない人で、でもそれよりも気になることがあって)
由暉子(雪を巻き上げながら走る姿は、まるで……)
揺杏「しっかしさぁ、あれじゃまるで逃げた恋人を追いかけてるみたいじゃね?」
由暉子「そんな、まさか成香先輩と……」シュン
揺杏「……とにかく二人を捕まえよっか」
成香「あうっ」ズシャッ
京太郎「はぁ、はぁ……もう逃がさないからな」
成香「うぅ……冷たいです」
京太郎「まったく……話も聞かずに飛び出すからだ」
成香「どうしたらいいかわからなくて……」
京太郎「ほら、立てるか?」
成香「あ……一人で立てます」
京太郎「さっきのはあいつの悪ふざけだ」
成香「……本当ですか?」
京太郎「むしろそこまで信用がないと落ち込みたくなるな……」
成香「あ、そんな……信じます、信じてますからっ」
京太郎「そうか、ありがとな」
京太郎(うわー、こいつきっと勧誘とか断れないタイプだな)
京太郎(なんか心配になってきた……)
京太郎「戻るか。ホットミルクが冷めちゃうし」
成香「そうですね――あっ」フラッ
京太郎「おっと……走りすぎて足に来てるんじゃないか?」
成香「ごめんなさい……」
京太郎「ちなみにさ、この場合もっと適切な言葉があるんだけど、なんだと思う?」
成香「え、ええっと……すみません、ですか?」
京太郎「違う違う」
成香「じゃあ……申し訳ありませんでした、とか」
京太郎「謝るって方向を変えてみようか」
成香「……苦しゅうない?」
京太郎「なんでいきなり偉くなってるんだよ……だからさ」
京太郎「ありがとうって、これだけでいいんだよ」
成香「……すみません、私なんかのためにって思うと申し訳なくて」
京太郎「そうじゃなくてさ、ほら」
成香「あ、ありがとうございます……」
京太郎「上出来だ。じゃ、戻ろうか」スッ
成香「あの、これって」
京太郎「手を握ってれば転びそうになっても平気だろ?」
成香「でも……」
京太郎「いいから行くぞ」グイッ
由暉子「……」
揺杏「でもさ、さすがににーさんと成香がってのは考えにくいと思うんだけど」
由暉子「……そうでしょうか?」
由暉子(あの人は面倒見がいい人です)
由暉子(誓子先輩や原村さんは綺麗だけど、そう言う意味で相性がいいのは……)
由暉子(どうしてでしょうか? こんなにネガティブになってしまうのは)
由暉子(言い知れない不安が、ずっと胸にわだかまっていて……)
揺杏「ユキ、大丈夫?」
由暉子「平気です」
揺杏「まぁ、あのにーさんがまぎらわしいことしてるのは、今に始まったことじゃないしさ」
由暉子「……」
揺杏「ありゃりゃ……」
由暉子(今の私には驚く程余裕がありません)
由暉子(インハイの時もここまではならなかったのに……)
京太郎「よう、久しぶり」
成香「あ……もう着いてたんですね」
揺杏「すごい勢いで走ってったから気になってさ。な、ユキ?」
由暉子「……手、つないでますね」
成香「こ、これは別に……」バッ
揺杏「あ、あはは……転んだら危ないからー、みたいな?」
京太郎「だな、さっき盛大に転んでたし」
成香「な、なんで言っちゃうんですかぁ!?」
揺杏「いや、言わなくてもわかるし」
成香「そんなっ」
由暉子(二人の手はもう離れていて)
由暉子(それなのに私の心は揺らいだままで)
由暉子(その焦りに突き動かされるように私は……)
京太郎「寒いから中入ろうぜ」
揺杏「今日はにーさんも手伝ってくれる感じ? てかなんでいるのさ」
京太郎「ホントなんでここにいるんだかな……」
成香「爽さんも笑ってごまかすだけなんです」
揺杏「なに、爽も来てんの?」
京太郎「そうだ、しっかり折檻しとかないとな」
揺杏「ははぁ、なんかやらかしたと」
京太郎「そういうことだ」
由暉子「……」クイクイ
京太郎「どうかしたか?」
由暉子「……です」ボソッ
京太郎「悪い、聞こえなかった。もう一回いいか?」
由暉子(彼の顔が近づいてきます)
由暉子(……ずるい手だというのはわかっています)
由暉子(でも、今の私にはこれ以外考えられなくて)
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