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    元スレ京太郎「俺たちの……」マホ「可能性……?」

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    101 = 1 :

    ――――

    京太郎(この卓、全員清澄か……。まあ、色んな組み合わせでやってるし、おかしくはないか)

    マホ「……」タン

    「……んー、これ」トン

    京太郎(にしてもマホちゃん、無表情だな……。和の真似か?模倣は一局しか持たないって話だったけど……)

    マホ「……」チャッ

    京太郎(あるいは、昨日打ちまくったお陰で、集中が持続するようになったのかもな。
    ……全く、どんどん成長して……)

    マホ「ツモです」パラッ

    京太郎(――俺も、負けてらんねーな!)

    ――――

    「京太郎、やろうぜ。見てばっかじゃつまんねーだろ」

    京太郎「純さん。はい、東風で良いですか?」

    「なんだ、そんなに見学に時間取りたいのか?……まあいいさ。
    衣にまた挑もうってんだから、むしろ褒めてやりたいくらいだ」

    京太郎「褒めるのは、まだ早いですよ。……俺が天江さんに、勝ってからです」

    「言うねぇ」

    マホ「あ、先輩!見学しても良いですか?」

    京太郎「……ん、良いぞ。こっちも見せてもらったしな」

    ――――

    ――終局

    京太郎「ありがとうございました」

    「うん、やっぱ『理解』すると違うな。昨日も言ったけど、基礎は出来てるし」

    京太郎「……まだまだ、分からない事だらけですよ。だから、見に力入れてるんです」

    「そーかい。
    ま、お前が強くなるために、ちゃんと考えてしてる事なら何も言わねーよ。あいつらに追い付きたいんだろ?」

    京太郎「……あいつらって、まるで他人事ですね。純さん」

    「なんだ、オレも目標にしてくれるのか。嬉しいこった」

    102 = 1 :

    ――――

    そして京太郎が一番熱心に観察したのは……

    京太郎(天江さん、振り込まないな……)

    「……」タン

    京太郎(『能力』の存在を受け入れて、理解する……。
    純さんはヒントしかくれなかったけど、天江さんの力には絶対どこかに限界がある)

    たとえ山全てを支配していたとしても、牌の数は限られている。

    京太郎(三人がそれぞれ十七枚もツモって、一回も有効牌を引かせないなんて有り得ない。どこかに隙があるはず……)

    「……智紀、その牌だ。ロン」バラッ

    京太郎(事実、昨日の終盤。俺は飛ばされる直前、十八回目のツモで一向聴地獄から脱した!
    天江さんの力が、完全じゃない証拠だ)

    「リーチ!」タン

    京太郎(見極める……得体の知れない、『能力』ってやつを!)

    ――――

    京太郎「……」

    マホ(先輩、凄く集中してる……)

    「あ、マホちゃん。今日はあんまり打たないんだね?」

    マホ「はい。……というか、実はまだ一回しか打ってません」

    「へえ……。須賀君も今日はあんまり入らないし、何か心機一転するような事があったのかな?
    ――衣と打って、麻雀が嫌いになった、とかじゃなきゃいいけど……」

    マホ「……」

    マホ(先輩……)

    103 = 1 :

    ――――

    「流局。ノーテンだ」パタン

    「これで終局……」

    (やっぱり強いわね、天江さん……)

    「……いい加減、見るのをやめて打ったらどうだ?そこの」

    京太郎「……」

    (須賀君……)

    「早く打とう。元よりそのつもりだったのだろう?」

    京太郎「……少し、待って下さい。心の準備をしたいので」

    「……そうか」

    その応えに、何を感じたのか。

    「興醒めだよ。お前は、衣などと打ちたくないのだろう?
    ――衣が壊してきた雀士たちも、今のお前のような顔をしていた」

    京太郎「……後で、」

    「もういい。後など、あるものか!――咲、打とう」

    京太郎「後で、必ず!勝負して下さい!」

    「――うるさい男だ。そこまで言うなら……」

    ギロッ

    「この対局の後、もう一度誘ってやろう。――逃げるなよ?」

    104 = 1 :

    ――――

    京太郎(逃げるなよ、か……)

    先程あれだけの言葉を浴びせられたにも拘わらず、京太郎は衣と咲の勝負をそばで見ていた。

    「……」チラッ

    「……」タン

    咲は京太郎が居る事で気が散っているようだが、衣の方は完全無視を決め込んでいる。

    京太郎(逃げたと思われても、まあしょうがないな。だけど、びびったわけじゃない)

    「……」トン

    京太郎(ただ、本当に準備が出来ていないと思った。そして、この対局を見届けて、準備を終わらせる)

    「カン。……ツモ!」

    「流石だな、咲」

    ――――

    「――ロン!」

    「ああ、負けちゃった……。ありがとうございました」

    「うん、楽しかったぞ!またやろう!」

    京太郎(……よし、準備は整った……)

    ――――

    「――では、やろうか」

    京太郎「……はい。今、暇そうなのは……優希!それと……龍門渕さん!」

    優希「呼んだか?」

    透華「……衣と再戦しますの?」

    京太郎「はい。入ってくれますか?」

    透華「もちろん!」

    優希「私も、当然入るじぇ!」

    「よし、では――」
    マホ「先輩!」

    席順を決めようとした所に、声がかかる。

    優希「? どうした、マホ」

    マホ「あ、いえ……優希先輩じゃなくて、須賀先輩……」

    京太郎「俺?」

    見れば、マホは小さく手招きしていた。

    京太郎「……すみません、多分すぐに済むので」

    衣に断りを入れ、マホのもとへ。

    105 = 1 :

    ――――

    京太郎「どうしたんだ?マホちゃん」

    小声で尋ねる京太郎に、マホは答えなかった。
    代わりに、自分より大きな京太郎の手を両手で包むように取り、胸元に抱き寄せる。

    京太郎「マホちゃん……?」

    そのまま目を閉じ、一秒、二秒……。

    マホ「……先輩、恐くないですよ」

    京太郎「え?」

    マホ「麻雀は、恐くなんてないです。負けるのは辛いし、上手くいかない日もあるかも知れないけど……
    それも含めて、マホは麻雀が好きです。楽しいんです。だから……」

    目を開き、マホは真っ直ぐに京太郎を見た。

    マホ「先輩も、楽しんで下さい。……マホ、見てますから」

    そして、手を離す。

    京太郎「マホちゃん……」

    自由になった手を、マホの頭に乗せる。

    京太郎「ありがとな。でも、大丈夫だよ。別に麻雀が恐くなったんじゃない」

    マホ「……そうなんですか?」

    京太郎「ああ……」

    ゆっくりとマホの頭を撫でる。

    京太郎「むしろ、その逆……。俺は今、打ちたくてしょうがないんだ。
    麻雀を、俺より強い人たちと打つ事が楽しみでしょうがない。だから……」

    そこで言葉を切り、振り返る。――全国レベルの猛者達が、京太郎を待っていた。

    京太郎「……だから、見ててほしい。俺は……勝つ!」

    106 = 1 :

    東一局

    優希 (親)25000
    京太郎(南)25000
     衣 (西)25000
    透華 (北)25000

    まこ「わしも観戦するかの」

    マホ「染谷先輩。打たないんですか?」

    まこ「その言葉、そっくり返すぞ……っちゅうか、ちょうど十ニ人なんじゃから、抜ける奴が居れば当然打つ相手も居らんじゃろ」

    マホ「あ、そうですね。……マホのせいで……」

    まこ「なぁに、おんしだけのせいじゃない。ほら、見とる人は他にも居るじゃろ」

    「……」

    マホ「……あの人も、マホのせいじゃ……」

    まこ「いやいや、仮にそうだとしても、見学は大事じゃからな。おんしはなんも悪くない。
    どうじゃ、一緒に見んか?」

    マホ「一緒に?」

    まこ「ああ、解説しちゃる」

    マホ「じゃあ、早速良いですか?質問」

    タン……トン……

    マホ「なんで今日は、赤ドラ有りなんですか?」

    まこ「……ルールの解説からとは、本当にプロの試合解説みたいじゃな。
    まあ、深い理由は無いと思うぞ?最終日くらい、ルール変えてみるかって感じじゃろ」

    マホ「なるほど……」

    まこ「……ただ」

    マホ「?」


    優希「よし、リーチだじぇ!」

    京太郎「チー」トン


    まこ「優希はドラを絡めて手を高くする事が多い。赤ドラ四枚というのは、優希には有利かも知れんな」

    優希「――ツモ!リーヅモ平和ドラ2、4000オール!」

    107 = 1 :

    ――――

    京太郎「……」チャラ

    (さっきのチー……ツモずらしか。だがその次、透華の牌をポンする事も出来た)

    無論、それをした所で優希のツモを一度飛ばす事しか出来ないが。

    (オレなら鳴いたな。直接同卓してる訳じゃないから、流れははっきりとは分からないが――)

    優希「一本場だじょ」カチャ

    (今のあいつなら、一回鳴いた程度じゃ和了りは潰せない。一発消しにはなったが、詰めが甘かったな)

    ――――

    東一局一本場

    (不思議な物だ。力が満ちている……昨日もそうだったが、まるで満月の夜のようだ)タン

    透華「チー」カシャ

    (トーカは速攻か?ユーキの親を早く流したいのかもな)

    トン……タン……

    (――お、来たか)チャッ

    789m112378s789p北 ツモ北

    「リーチ!」つ一索

    (さて、まだユーキの力が強い東場の序盤だが……どちらが早く和了れるかな?)

    108 = 1 :

    ――――

    優希(リーチか……)

    透華「ふむ……」つ三索

    優希(ん……通ったか)チャッ

    そして優希も、テンパイ。

    優希(対面の捨て牌を見る限り……余ったこの牌は通りそうだじょ)

    しかし、東場――自分のホームとはいえ、衣のリーチは充分な脅威でもある。

    優希(ここはリーチせず、様子見で行くじぇ。この牌は今、暗刻だから、これを通せばオリる時も楽になる)つ七筒

    ――――

    (む……この気配、ユーキも張ったか)

    京太郎「……」チャッ

    (リーチをかけていないから、定かではないが……。もし張っていたら、大体、満貫か跳満といった所か)

    京太郎「……」トン

    透華「それ、ポンですわ!」タン

    (ん、もしやトーカも張ったか……?)

    優希の気配に紛れて分かりにくいが、自分の感覚は今までほとんどハズれた事はない。

    (まあ、安手だろう。それよりも――)

    今の鳴きで、本来は衣がツモる筈だった牌が優希に流れた。

    優希「……」チャッ

    (さあ、どうする?ユーキ……)

    優希「……」つ三索

    手出しの現物。

    (これはオリたか。気配も弱くなったし……)

    京太郎「……」トン

    「……」チャッ

    (三筒か……。やはり、あの透華のずらしが効いたか)トン

    優希「ロン!平和ドラドラ、6100だじぇ!」

    「……!」

    345(赤)m456789s45(赤)77p ロン3p

    (……なるほど、気配が弱まったのは衣の和了り牌を取り込んで打点が下がったからか。
    テンパイを崩したのではなかった……)

    気配の変化に注目しすぎて、絶対値を見誤ったのだ。

    (しかし、仮にそうだと気付いていても、既にリーチをかけていたからな……)

    そこでふと、違和感を覚える。

    (待てよ、あのポン……)

    優希「よし、ニ本場だじぇ!」

    109 = 1 :

    ――――

    東一局ニ本場

    優希 (親)44100
    京太郎(南)21000
     衣 (西)13900
    透華 (北)21000

    京太郎(展開は早いが……まあここまでは悪くない)トン

    トン……トッ……

    透華「……」トン

    京太郎(龍門渕さん、手が高くなったな……)

    昨夜の純との特訓の成果で、今の京太郎にはある程度『流れ』が分かる。

    京太郎(しかし、この流れを具体的にどう断ち切ればいいのかは……分からない。
    流石にそこは経験不足だ。ただ鳴けば良いってモンでもないしな)

    タッ……トン……

    透華「――ツモ!3200-6200ですわ」バラッ

    110 = 1 :

    ――――

    東ニ局

    京太郎「……」トン

    「……」パシッ

    透華「……」タン

    優希「……」トッ


    マホ「……急に静かになりましたね……」

    まこ「ふむ……天江は手を少しずつ変えているようじゃが、他三人はツモ切りが多いな……」

    マホ「昨日と、同じ……。天江さんの必殺技って、海底ですよね?」

    まこ「必殺技?まあ、確かにそんな感じはするな」

    マホ「誰も鳴かなかったら、海底牌を引くのは南家……。
    そう考えると、天江さんの上家は、海底ツモの親かぶりを受ける可能性が高くないですか?」

    まこ「しかし、それは誰も鳴かなかったら、の話……いや、確かに天江の支配はそれを可能にするな」

    事実、この局は誰にも鳴く機会が訪れないまま、海の底を迎えようとしていた。

    ――――

    十七巡目

    (当然、衣だけが張っているわけだが……)

    リーチを掛けるか掛けないか、それを迷っていた。

    (リーチを掛ければ一発・海底で三飜上乗せ出来るが、前々局の振り込み……)

    透華のポンで衣のツモが優希に、優希のツモが衣に流れ、リーチを掛けていた衣はその牌で優希に振り込んだ。

    (トーカがそこまで考えていたかは分からないが、少なくとも東場のユーキは侮れない)

    衣はリーチを掛けるべきではない(無言のツモ切り)

    111 = 1 :

    ――――

    透華(無言……衣の事だから、リーチするかと思いましたが)チャッ

    ツモは有効牌。とはいえこれでようやく一向聴である。

    透華(形式テンパイは取っておきたいですわね)トン

    優希「……」タン

    透華「それ、ポンですわ」トッ

    形式テンパイ。――同時に、これで衣の海底は消えた。

    ――――

    優希「……」タン

    京太郎(ズレたか……)チャッ

    25899m2244s66p西西 ツモ5m(赤)

    つまり、この赤五萬が海底牌――本来の衣のツモ。

    京太郎(要するに最悪の危険牌……。そしてテンパイを取れば打ち出されるのはその五萬のスジ……)

    出せる訳もない。抱え込み、安牌切り。

    「流局……テンパイだ」

    透華「テンパイですわ」

    優希「ノーテン」

    京太郎「……ノーテン」

    京太郎(天江さんの手牌は――)

    1111235577888m

    五・七萬のシャボ待ち。

    京太郎(……テンパイ、取っておくべきだったか?――いや、焦るな。結果論だ)

    もし衣がリーチをかけ、透華がポンをしなければ――数え役満に届いた手だ。

    京太郎(天江さんは基本的に、高火力の打ち手――さっきリスクを取ったのは、間違いじゃない)

    112 = 1 :

    東三局一本場

    (さて……衣の親だが、どう抑える?)

    「……」ジャッ

    衣が牌を立てる。

    (うお、配牌テンパイ……しかもダブリー掛ければ跳満確定かよ)

    衣の恐ろしい所は、ここだ。

    (速攻で和了る事もあれば、他家の手を遅らせて悠々と海底で和了る事もある)

    その緩急は変化が激しく、純でさえ流れを読めないほどだ。

    (しかも速攻だろうが変わらず高打点だから手に負えない)

    「……」タン

    しかし衣は、意外にもリーチをかけなかった。

    (衣らしくないな……)

    トン……タン……

    京太郎「チー」カシャ

    (ん……速攻で流す気か?だが……)

    京太郎「ポン」タン

    (上家のお前が鳴けば、衣のツモも増える事になるぞ……)

    「……」トン

    それぞれの手牌が見えている側からすれば、いつ衣がツモるかとヒヤヒヤさせられる。

    京太郎「――ツモ、400-600です」

    113 = 1 :

    ――――

    東四局

    透華 (親)34700
    優希 (南)36000
    京太郎(西)17700
     衣 (北)11600

    (衣の親を流すか……念のため、リーチをかけずにいたのは正解だったようだな)チラ

    京太郎「……」

    無表情は変わらないが、やはり昨日とは違うようだ。

    (感覚で分かる……本気で打っているかどうか。
    昨日のこいつは、ただ萎縮していただけでなく……本気で打つ事にためらいを感じている気配があった)

    だが今は違う。今の京太郎は、本気で衣と勝負をしに来ている。

    (しかし、それだけに妙だ……。何故こいつは一度、衣からの勝負の誘いを断った?)

    そこで一旦思考を切り、配牌を見る。理牌は無意識の内に済んでいた。

    (一向聴……親は流されたが、ツキは依然こちらにある。この程度の点差、すぐに覆してやる!)

    ――――

    (親を流した程度じゃ、衣は止まらない。さあ、次はどうする?京太郎)

    京太郎「……」チャッ

    九種八牌、六向聴。後ろから見ているだけでうんざりするような配牌だ。

    (ほんと、良くポーカーフェイスでいられるよコイツは……)

    京太郎「……」トン

    114 = 1 :

    ――――

    (ふむ……三巡目テンパイか。他はまだ追い付いていない……これはもらったな)

    「リーチ」タンッ

    透華「……」チャッ

    支配が卓の隅々まで行き渡っているのを感じる。

    透華「……」トン

    (今は誰も鳴けまい……)

    優希「……」トッ

    京太郎「……」スッ

    (ん?)

    今、上家の手がブレたような――


    バラッ

    京太郎「……っ、すいません」

    見れば、京太郎の伸ばした手が対面の山を崩していた。焦って直そうとし――

    ガチャッ

    ――今度は腕が自分の山にあたり、更に崩れる。

    京太郎「……」

    そろり、と他家の顔を窺う京太郎。――誰がどう見ても、満貫払い確定のチョンボだった。

    115 = 1 :

    ――――

    (まさか……今のはわざとか?)

    謝りながら罰府を払う京太郎――チョンボをした割りには、あまり動揺していないように見える。

    優希「……」チャラッ

    (誰も突っ込まないか……ならば何も言うまい)

    衣がリーチをかけ、その直後にチョンボで仕切り直し。これがわざとなら、イカサマも良い所だ。
    しかし、衣たちは満貫払いで納得している……なら外から言う事は何も無い。

    (なんにせよ、ここまで場を荒らされたら衣も堪ったもんじゃないな)チラ

    「……」

    116 = 1 :

    ――――

    東四局仕切り直し


    マホ「この場合、流局とかではないので、一本場にはならないんですよね」

    まこ「ルールにもよるが、大体それが一般的じゃろうな……良く知っとるな?」

    マホ「はい!マホ、チョンボには詳しいです!自分でよくするので!」

    まこ「自慢にならんな……。さっき天江がリーチをかけとったが、そのリー棒はどうなる?」

    マホ「えぇと、どうなるんでしたっけ?」

    まこ「……まだまだじゃな。まあこれもルールによるが、仕切り直しじゃから持ち主に返されるぞ」

    マホ「なるほど……」メモメモ

    ――――


    透華(罰府の得点差で、結果的にトップにはなりましたが……複雑な気分ですわ)タッ

    優希「……」チャッ

    二位との点差は僅か700。

    透華(片岡さん、集中が持続しないとの事でしたが……
    本人の言っていた『東場のあいだ』というのはどのくらい厳密な数字かしら……?)

    優希「……」タン

    117 = 1 :

    ――――

    優希(さて……京太郎が9700点か)

    自分の弱点は分かっている……南場の失速だ。当然、短期決着を狙いたい。

    優希(この手、和了りも近いけど……跳満まで伸ばせれば、京太郎を直撃でトばす事も出来る)

    「……」トッ

    さっきの仕切り直しから、衣の『支配』の影響もさほど感じなくなった。

    優希(よーし、この卓に南場は来ない!)

    トン……タンッ……

    ――――

    優希(七巡目にしてテンパイ……けど、まだツモ次第で三色もイーぺーコーもドラ取り込みも狙える)タンッ

    リーチかけず。東場の自分なら、もっと手を伸ばせる筈だ。

    京太郎「……」チャッ

    優希(ん、まさか……?)

    少し逡巡した後、京太郎は手出しの牌を起き――曲げる。

    京太郎「リーチ」チャラ

    「……」チャッ

    優希(ほう……京太郎が来たか。なら……)

    卓に意識を集中。今この瞬間にすべき事は――

    「……」トン

    透華「……」トッ

    優希(……悪いな、京太郎。リーチは流す!)スッ


    優希「――ツモ!タンピンドラ1、1300-2600!」

    118 = 1 :

    ――――

    南一局

    京太郎(リーチは失敗だったか……)

    流れを掴んだかと思ったが、どうやら勇み足だったようだ。

    京太郎(もっと、自然体……流れを見切ろうとするんじゃなくて、自然に感じ取るように……)

    純の教えを頭の中で繰り返す。

    京太郎(配牌が悪い……今は耐えよう。多分もう少しで来る、流れが……)

    ――――

    十七巡目

    「……チー」

    透華(これは……来ますわね)チャッ

    タン……トン……

    「――ツモ。海底タンヤオ三色、ドラ5。4000-8000」

    透華(ドラ5……全く、それでこそ、ですわ)ジャラ

    119 = 1 :

    ――――

    南二局

    京太郎(親)3400
     衣 (南)28300
    透華 (西)32100
    優希 (北)36200

    京太郎(かなり削られたが、待った甲斐は有ったな……)

    配牌は二向聴。

    京太郎(……流れが来てるかどうか、正直自信は無い。……けど、もうこの親で仕掛けるしかない)タン

    トン……トッ……

    京太郎(大丈夫だ……なんとなく、いける気がする……)タン

    なんとなく、の感覚を大事にしろ――純はそう言っていた。

    京太郎(悲観し過ぎず、楽観もし過ぎず……なんとなく、和了れる気がしている)

    京太郎「ポン!」

    タッ……トン……

    京太郎(感覚は、間違ってなかったみたいだな……)

    今の自分は、流れに乗っている――それも、なんとなく分かる。

    京太郎「……ツモ。3200オール

    120 = 1 :

    ――――

    南二局一本場

    (……なんだ?先程の倍満といい、いつも通りに打っている筈なのに……)

    何か、違和感がある。

    京太郎「……」タンッ

    (こいつのチョンボからか……?リズムを崩されたような……)チャッ

    手は三向聴、更にこの局は海底コースだ。

    (……今は、南場だ。ユーキの気配も、弱くなっている。なのに……)

    ――今は、海底に辿り着ける気がしない。

    (……そういえば以前、ジュンが言っていたな)タン

    『流れってのはもちろん、良い流れと悪い流れが有るんだが……悪い流れってのも色々有ってな』

    『悪い流れの時に、無理やり和了ったりしたら、もっと悪い流れになる事がある』

    タンッ……パシッ……

    「……」チャッ

    『そして……そうなったら、オレでもその悪い流れからは中々抜け出せなくなるんだ』

    (……つまり、前々局の倍満ツモが良くなかったのか?確かにあの時、ユーキを削ろうとして少し無理をした)トン

    自分で鳴いてまで海底コースに入ったのも、そうすれば和了れそうだったからだが――逆に言えば、

    (そうしなければ和了れる気がしなかった。いつもの衣なら、自然に和了れた筈なのに……)

    タン……トッ……

    (……いや、唯我を保て。それはジュンの考え方だ)チャッ

    自分は純のように流れを読む事は出来ないが、然りとて純に遅れを取る訳ではない。

    (衣は衣らしく、いつも通り打たせてもらうぞ!)パシッ

    121 = 1 :

    ――――

    京太郎(うん……良い感じだ)チャッ

    一向聴。

    京太郎(多分、今……俺は流れに乗ってる)タン

    トッ……タン……

    京太郎(それに比べて……天江さんはあんまり良くなさそうだな)タンッ

    「……」トッ

    だが、油断はしない。

    京太郎(適度な緊張感……意識すると難しいけど、今は出来てる。このまま……)

    ――――

    (……この気配。須賀、手が伸びたな)

    京太郎「……」タン

    手が進んだのとはまた違う。恐らくドラと入れ換えたのだろう。

    (しかし、それでも高くない……4000点前後か)タッ

    透華「ポン」トッ

    (……あれ?)

    海底コースからずれた。もちろん、それぐらいならよくある事だ。しかし――

    (戻れそうに、ない……)

    下家の牌をポンするか、暗カンで海底コースには戻れる。だが、手には対子が一つだけ……。

    (いや、関係無い。衣は海底だけじゃない!)

    普通に和了りを目指す。それで良い、何も問題は――

    「」ハッ

    京太郎「……」チャッ

    上家の、テンパイ気配。

    (さっきの透華の鳴きといい、衣の支配が弱くなっているのか……!?)

    京太郎の手はそう高くはなさそうだ。しかし――

    (……致し方無い、ここはオリる!)

    捨て牌を曲げる姿を見て――弱気に、流される。

    122 = 1 :

    ――――

    京太郎(今、昨日と同じ感覚だ……)

    麻雀を、打っている。

    京太郎「リーチ」チャラ

    「……」チャッ

    京太郎(そう、昨日のオーラス……あの時、分かったんだ。自分が無くしていた物が)

    蘇る、純の言葉。

    『あいつらに追い付きたいんだろ?』

    京太郎(違う……)

    タン……トン……

    京太郎(そうじゃない。俺は……勝ちたいんだ)パシッ

    ――それだけだった。

    京太郎(強くなりたい、追い付きたい、そんなのは全部飾りだ。ただ、勝ちたい……!)

    ストッ……タッ……

    京太郎(俺は、勝ちたかったんだ!咲や優希、和たちに最初に負けた時……一番に思ったはずなんだ。
    追い付きたいとか、並び立ちたいとかじゃなく、こいつらに勝ちたいって!)

    ――いつから、忘れてしまっていたのか。
    昨日、衣に絶望させられた時?マホとの対局で差し込みをした時?ポーカーフェイスを覚えた時?
    あるいは、もっと前――清澄で京太郎が負ける事が、当たり前になっていた時。

    京太郎(だけどもう逃げない。全力で取りにいく!今、この瞬間の勝利を!)

    久しく失っていた、勝利への渇望。それだけを胸に、京太郎は戦う。

    透華「……」ストッ


    京太郎「ロン!リーチ平和ドラドラ、裏……二枚!18300!」

    123 = 1 :

    ――――

    南二局二本場

    京太郎(親)31300
     衣 (南)25100
    透華 (西)10600
    優希 (北)33000


    優希(京太郎、ノってるな……。さっきまで飛ばす事も考えてたのに、今や二位だじょ)

    しかも、点差は1700。南場は守りに徹して逃げ切りたかったが……。

    優希(仕方ない、ちょっと無理してみますか!)

    ――――

    「ロン。5200の二本場は、5800」

    優希「……駄目だったじょ」チャラッ

    京太郎(これでトップにはなった……。でも僅差だ、油断は出来ない……)

    124 = 1 :

    ――――

    南三局

    透華「リーチですわ!」タンッ

    京太郎(龍門渕さん、攻めるな……当然か。最下位、それも一人沈みだもんな)

    トン……タッ……

    京太郎(けど、あの表情……)

    透華「……」パシッ

    堂々とした態度。

    京太郎(龍門渕さんは、負けてても堂々としてる事が多いけど……。今は、自信が有りそうな感じだな)

    恐らく、ここから巻き返せる具体的な根拠があるのだろう。


    透華「――ツモ!リーチ・ツモ・ホンイツ・ドラ1!」

    222345(赤)66778s南南 ツモ5s

    京太郎(うおっ、何面待ちだこれ……四面か?)

    透華「裏は――ひとつですか。点数は変わりませんわね、3000-6000です」

    125 = 1 :

    ――――

    オーラス

    透華 (親)22600
    優希 (南)24200
    京太郎(西)28300
     衣 (北)24900


    京太郎(平らだな……。二位との点数はさっきより広がったけど、最下位の龍門渕さんとの点差は5700……)

    ツモなら1500オール、ロンなら2900で捲られてしまう。
    飜数にすると、ツモなら三飜、ロンなら二飜程度。もちろん府が高ければそれ以下の飜数でも有り得る。

    京太郎(この卓のルールには、西入は無い。安い和了りでもトップに成りさえすればそこで終了だ)

    つまり、このオーラスはスピード勝負になる――少なくともこの時は、京太郎はそう思っていた。

    京太郎(気を引き締めて、いくぞ!)

    126 = 1 :

    ――――

    八巡目

    透華(無駄ヅモばかりですわ……)チャッ

    手が進まない……誰の仕業かは、明らかだ。

    「……」

    透華(衣の支配……ここに来ていっそう強くなりましたわね)タン

    スピード勝負。初めは透華もそう思っていた……だが。

    透華(衣は元々、高火力の打ち手……。和了率より打点を優先する傾向がある。
    早和了りも出来るとはいえ、他三人が全員早和了りを目指している今は、先に和了れる保証がありませんわ)

    だから、衣は実に単純な対策を打った。

    透華(一向聴、地獄……!自分の早和了りを狙うのではなく、他家の手を強引に遅らせて、先に和了る。衣らしい手ですわ)

    「……」つ東

    少し逡巡してからの、手出し。

    透華(重い手を、ゆっくりと進めているんでしょうね……)チャッ

    127 = 1 :

    ――――

    (……これは、まいったな)

    透華の予想に反し、衣は既にテンパイしていた。

    222m12378s33388p (ドラ:二索)

    (さっき引いた一索、これでテンパイにはなったが役が無い)

    今は安手で十分、しかし安すぎては意味が無い。

    (リーチをかけても裏が乗らなければ出和了り2600の手、ツモか一位からの出和了り以外に選択肢が無くなる。
    リーチはかけない……)

    トン……タン……

    しかし、そんな判断をした時に限って。

    (……!九索……っ)チャッ

    さっきリーチをかけていれば、と思うも後の祭りだ。当然これで和了ってもツモ・ドラ1で2000点にしかならない。

    (一位との点差は3400、捲るためにはやや足りない)タン

    断腸の思いでツモ切り。まさかツモ和了を見逃すことになるとは思わなかった。

    (だが、まだ八巡目だ。落ち着いて、手変わりを待てばいい……)

    どうせこの局は、誰も和了る事が出来ないのだから。

    128 = 1 :

    ――――

    十二巡目

    (くっ、来ない……)タン

    中々、手を変えるための牌が来ない。
    四索か六索が来ればタンヤオ、七・八索、八筒が入れば三暗刻を狙えるのだが……。

    透華「……」チャッ

    (それでも、まだ五回ツモれる。卓を支配しているのは衣だ、他家が和了る事は無い!)

    自分にそう言い聞かせるも、「手変わりをじっくり待つ」という方針に不安を感じ始めた――その時である。

    透華「……」つ九筒

    京太郎「ポン」パタン

    (何……?)

    ――まともに打っていれば、鳴く事も出来ない筈では?

    京太郎「……よっと」つ八索

    (何のつもりだ?)チャッ

    表情からは何も掴めないが、自分の(超人的な)感覚で――分かる。今のポンで、京太郎の手は進んでいないと。

    (ズラすため、という訳でもなさそうだ。つまり、自分の手を無意味に晒しただけ――いや、まて。『晒す』?)

    ――晒す事、そのものが狙いか。

    (衣には通用しないが、張っていると思わせれば他家をオロす事が出来るかもしれない)

    そうやって相手に誤認させて、逃げ切ろうとしているのか。

    (ふん、そう都合良くいくものか。この状況でオリる奴などいない!)タンッ

    残念ながら、京太郎の狙いは甘いと言わざるを得ない。それどころか――

    (今のポンで、海底まで衣に回してしまった。お陰で楽が出来る)

    今まで手変わりを待っていたが、もうその必要も無い。このまま進めば、海底・ツモ・ドラ1で1000-2000の和了り、リーチも無しで捲り切れる。

    (あとは意地でも鳴かせないように、支配力を集中させるだけだ!)

    129 = 1 :

    ――――

    マホ「染谷先輩、あの鳴きには何の意味が……?」

    まこ「いや、すまん。わしにもさっぱりじゃ」

    困惑。二人の目は、京太郎の手牌に向いていた。

    5(赤)67m46s119p南南 999p(ポン)

    京太郎「……」

    元々持っていた九筒の暗刻、それを崩してのポン。
    向聴数は変わっていないが、その後八索を切ったせいで有効牌の数が減ってしまっている。

    マホ「なんで、九筒を切らなかったんでしょう……」

    まこ「九筒をポンして九筒を切ったら、喰い替えになるじゃろ。
    たとえほぼ完全な不要牌だとしても、切れなかったんじゃ」

    マホ「ああ、なるほどです!」

    まこ「……しかし、そうなるとますますあのポンは不可解じゃ……」

    そして、再び京太郎のツモ巡である。

    京太郎「……」チャッ

    ツモは、八索。


    まこ「おお、取り戻したな」

    マホ「これで、九筒を切れば元通りですね」

    だが――

    京太郎「……」つ八索

    ツモ切り。


    マホ「???」

    混乱するマホ。まこもまた、京太郎の真意を読めずにいた。

    まこ(どういうことじゃ……?あの九筒ポンはまだ、分からん事もない。
    ズラすためにああいう鳴きをする事はあるからの。しかし何故、あの九筒を残す……?)

    130 = 1 :

    ――――

    (全く、ここに来てこの『支配』……本気で、他家の和了を潰しにいってるな)

    京太郎「……」タン

    ツモ切り。今は純の視界からは見えないが、京太郎も含め、衣以外の三人はまず間違い無く一向聴地獄の中にいる。

    (たとえ山の牌全てを操作出来るとしても、『他家の一向聴地獄』と『自分の和了』……両方を成立させるのは難しい。
    さっきの京太郎の鳴きなんかは予想外だったみたいだし、その辺は衣も限界が有る)

    だから、衣は自分の手を犠牲にして、他家のツモ牌に対する『支配』を優先した。

    (そのせいか、自分の打点が足りなくなったが……京太郎のポンで、その問題はクリアした)

    「……」タンッ

    他三人と同じ、ツモ切りの連続……。しかし、その顔には自信が有る。

    (衣のツモはあと二回……その間、衣の力は誰かがテンパイすることはもちろん、鳴くことも許さないだろう。
    ――そして最後は必ず衣が和了る)

    完全なる支配。――京太郎に、それを防ぐ事は出来ない。

    京太郎「……」トン

    「……」パシッ

    (あと一巡だが、リーチはかけないか……)

    透華「……」トッ

    優希「……」タン

    全員ツモ切り。そして京太郎も最後のツモ牌を取り――

    131 = 1 :

    ――――

    (……どうした?)

    京太郎の手が、止まっている。

    (早く切れ。それは有効牌ではない筈だ!)

    その事実は誰よりも――牌を引いた京太郎よりも、場の支配者たる衣が一番良く知っていた。

    「……おい、どうした?今になって、負けるのが恐くなったか?」

    京太郎「……」

    京太郎は全く表情を変えないまま――衣と目を合わせた。

    「……っ!」ゾクッ

    (なんだ、このプレッシャーは……!)

    京太郎「負ける?そんな事、考えてませんよ。俺はここに、あなたに勝ちに来たんですから――カン」

    九筒の、加カン。

    「四枚目の、九筒だと……!?」

    そして京太郎は、嶺上牌に手をかける。

    「……なるほど、あのポンでわざと衣に海底を狙わせ、それを止めるためにその一枚を温存したのか……!」

    カンで引く嶺上牌。それによって衣ではなく京太郎が最後の一枚をツモり、流局にする。

    京太郎「――それだけじゃ、ありませんよ」

    そう、それだけでは足りない。京太郎の勝利条件には――

    132 = 1 :

    京太郎「俺とあなたの点差は3400、ノーテン罰府で引っくり返りかねない。
    ――だから俺は、この嶺上牌で一向聴地獄を脱する」

    「なに……っ!」

    何を馬鹿な――そう言おうとして凍りつく。
    『有り得る』。何故ならその牌は――場の支配者である衣にさえ、分からないのだから。

    京太郎「ヒントは、最初から有ったんだ。昨日の対局、その最後に――あなた自身が言っていた」


    『和了りますか?』

    『いいや……残念ながら、誰もその牌では和了れないよ。どこぞの嶺上使いならば、話は別だがな』


    京太郎「咲があなたに勝てたのは、場を支配する力があなたより上だったから。そう思ってましたけど……」

    実際には、違う。

    京太郎「あの時あなたは、俺の切った牌を大明槓出来た。
    そしてもしあなたが咲なら、そこから、嶺上開花で和了る事が出来た……!
    それを『和了れない』と断言したという事は――」

    つまりそこが、天江衣の弱点。

    京太郎「あなたの支配は、嶺上牌までは及ばない。……それが、俺が辿り着いた答えです」

    「……っ!!」

    戦慄。嶺上牌を引く京太郎に、自分を打ち破った咲の姿が重なり合う――敗北の、予感。

    京太郎「……」チャッ

    しかし――

    京太郎「……」タンッ

    (この、気配……)

    133 = 1 :

    京太郎「……流局ですね。ノーテン」パタン

    ――京太郎は、引けなかった。

    「……テンパイだ」バラッ

    ほ、っと息をつくのも束の間。

    京太郎「……まだ、俺の勝ち筋は消えてませんよ」

    勝ちを諦めない声が、衣の臓腑に響く。

    京太郎「まだ、龍門渕さんがテンパイなら、親は流れず続行。
    そして、龍門渕さんが張っていなくても優希が張っていれば、俺と天江さんの収支の差は3000点。俺の逃げ切りです」

    (な、に……?)

    負け惜しみだ。衣には分かる、直感が教えてくれる。二人の手は、張ってなどいない。
    しかし、今この瞬間……衣はその感覚を、信じ切れなくなってきた。

    (まさか……!?)

    果たして、二人は。


    透華「……ノーテンですわ」パタ

    優希「悪いな、京太郎。ノーテンだじぇ」パタッ

     衣  27900
    京太郎 27300
    優希  23200
    透華  21600

    終局。

    「……っは、はぁ、はぁ……」

    一気に弛緩する。気付けば、緊張の余り息も出来ていなかった。

    京太郎「……ありがとうございました」

    透華「ありがとうございました」

    優希「ん、ありがとうございました」

    ばらばらと、席を立つ。――しかし、衣だけは座ったまま、ゆっくり息を吐き続けていた。

    134 = 1 :

    ――――

    マホ「先輩……!」

    対局が終わっても無表情のまま、京太郎はマホのもとに戻って来た。

    京太郎「ごめんな、マホちゃん。勝てなかった」

    そして、そのまま通り過ぎる。

    京太郎「……ちょっと、トイレ行ってくる」

    マホ「……!先輩!」

    呼び止めた時にはもう遅く、京太郎は走って部屋を出ていった。


    To be continued……

    135 = 1 :

    投下終了。感想(特に闘牌について)とか有りましたら言ってくれると>>1が喜びます。
    次の投下は京マホから入ります。

    136 = 1 :

    あ、もちろん闘牌以外でも感想はじゃんじゃん言って下さい。

    137 :

    この敗けが後の京太郎を大きく成長させることになるのだが、それはちょっと先の話である

    138 :

    ここで衣に勝てないのが京太郎らしい

    139 :

    京太郎が平らだな……と思ったときどうしても胸が平らだなと思ってしまった

    140 :

    >>137 >>138
    実際凄く惜しい所まで行ってるんだけどね。ここで京太郎が勝てないのは仕方無い
    この対局については後々京太郎が思い出してしっかり糧とします。

    >>139
    優希・透華「屋上」

    「……?大きい方が良いのか?」

    優希「……!!」

    透華「そんなことありませんわ!」

    「そうか、良かった~」

    マホ(そう、マホも胸が無いから>>105のような事が出来たのです。胸なんて……うぅ……)

    141 :

    たのしみにまってる

    142 :


    この対局は衣にも糧になるんだろうな

    143 :

    いやぁセンター試験は強敵でしたね!(まだ終わってない)
    投下はまた一週間ぐらいあとになる……かな?

    >>142
    そうですね。次の投下の時に京マホで解説シーン入れますけど、京太郎の勝ち筋は実は他に有って、
    衣も、京太郎が最後に点差の話(透華がノーテンで優希がテンパイなら~ってシーン)した時それに気付いてたんで、それでかなり動揺してます。

    まあ、次の衣VSマホの戦いの時までに、衣がすぐにそれを糧にして成長してるかと言ったら……分かりませんが。
    いずれ京太郎には衣にリベンジしてもらいたいので、その時衣の成長が書けると良いな……とは思ってます。

    >>141
    ありがとうございます。正直このスレ立てた後になって、闘牌ってあんまり需要ないんじゃないかって不安になりましたけど……。
    楽しんで頂けたら何よりです。

    このスレは少年マンガのノリを目指してますが、度々変な感じになるかもしれません。
    とりあえずエタらないよう頑張ります。

    144 :

    待ってます~

    145 :

    (一週間後に投下出来るとは言っていない)
    遅れてすいません、もう少しかかります

    146 :

    期限を自分で決めたのに守れないとか
    待ってられんわこんなん
    しんじらんねぇ
    てーれってれー

    147 :

    >>146
    このツンデレさんめ

    148 :

    もうちょっと頑張れよ

    149 :

    てーれってれーで不覚にも笑った
    投下します。次回予告はまだ書けてないけど

    150 = 1 :

    京太郎「……」ハァ

    人気の無い廊下――壁に背を預けて、そのままズルズルと座り込む。

    京太郎「……馬鹿か、俺は」

    高い天井を見上げて一人ごちた。

    京太郎(負けたからって、逃げ出すとか……ダッセぇ……)

    余りの情けなさに涙が出る。

    マホ「……先輩」

    京太郎「マホちゃん……」

    ――わざわざ、追いかけて来てほしくはなかった。

    マホ「ごめんなさい、でも……」

    京太郎「……」

    マホ「先輩、カッコ良かったです!……それを、伝えたくて……」

    京太郎「……へ」

    目を輝かせながら、マホは続ける。

    マホ「マホ、全然あんな事わかりませんでした!天江さんの能力に、弱点が有ったなんて!」

    京太郎「……あぁ」

    その気持ちは良くわかる。――昨日までの京太郎も、そんな事は考えもしなかったから。


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