元スレにこ「きっと青春が聞こえる」
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251 = 1 :
短いけどここまで
なかなか進まない
253 :
どうしてこんなことになっているのだろう。
絵里「――最後に、もう一度だけ言わせてもらうわ」
ピシリ。何度目かわからない、緊張感の走る音。
聞こえるはずのないそれは、だけど確実に、私の心を押しつぶす。
凛「――――」
黙って睨み付ける子がいて。
花陽「えっと、あの、その――」
涙目で困る子がいて。
希「うーん……」
悩まし気に首をかしげる子がいて。
穂乃果「え、えーと……?」
海未「ど、どういうことなのでしょう……?」
ことり「私たち、いちゃダメでしたか……?」
訳も分からず戸惑う子らがいる中。
にこ「――――」
私は――今、どんな顔をしているのだろう?
ほんと、誰か教えて。
絵里「ここにいる六人のグループで、一か月以内にスクールアイドルランキングで100位以内に入る」
絵里「それができなければ――私は、このグループには入りません」
どうして、こんなことになっているのだろう。
最初の最初のきっかけは。
今日のお昼までさかのぼる――
――――――
――――
――
254 = 1 :
――
――――
――――――
にこ(今日も今日とてぼっちめし、か)
ここ最近は一年生二人とご飯を食べていた私だったけど、今日はクラスの子と食べる約束をしたとのこと。
ま、それが自然な姿なわけで、私が口をはさめるような話でもなく。
今日はおとなしく部室へ引っ込もうという算段で、廊下をとぼとぼ歩く。
にこ(なんだかんだで、まだ絵里とコンタクトとれてないのよねぇ)
一昨日はすれ違いになり、昨日は音楽室へ逃避行。
早くもマンネリ化し始めたレッスンに幅を持たせるためにも、絵里の協力は早い方がいい。
にこ(わかってはいるんだけど……そううまくはいかないのよねぇ……)
こっちの世界の絵里の第一印象が『あれ』であったため、いまいちスムーズに話が進む未来が見えないのが正直な話。
だからといって、動かないわけにはいかないんだけどさ。
にこ(それと――残りの三人とも、早いとこ接触しないと)
二年生三人組。
穂乃果、海未、ことり。
あの子らは一体全体、今なにをしているのやら――
255 = 1 :
「いやー、今日もパンがうまい!」
「行儀が悪いですよ、歩きながらものを食べるなんて」
「というか教室に戻るまで我慢しようよぉ……」
にこ「…………」
なんていうか。
同じ学校なのだから、十分にあり得る可能性ではあるのだけど。
ふつーに。至極ふつーに。
今思い浮かべた三人が、廊下の向こうから歩いてきていた。
穂乃果「そうは言ってもね、ことりちゃん。パンは焼いてから時間が経てば経つほどどんどんおいしさが損なわれちゃうんだよ」
穂乃果「そう! まるでお刺身の鮮度が失われるかのように!」
海未「まったく……ご丁寧に袋にパッケージまでされたパンに、鮮度も何もないに決まっているでしょう?」
ことり「というか、焼いてる時点で鮮度とかって話じゃないよね……?」
穂乃果「わかってない! わかってないよ二人とも!」
にこ「…………」
どうしよう。思った以上にあっちの世界と同レベルのくだらなさだ。
256 = 1 :
だけど。
今の私は、そのくだらなさに茶々を入れることもできない。
にこ(何事もなく、すれ違わなきゃ)
それはある種の使命感。
こっちの世界では、彼女らは見知らぬ他人なのだから。
「あっ」とか、気軽に話しかけたりなんて、間違ってもできないのだから。
海未「あっ」
あっ?
え?
なに、ちょっとどうしたのよ海未。
なんで私の方を見ながら、気軽に話しかけてるわけ?
257 = 1 :
海未「あの……」
え、なになになに?
なんで海未が私に話しかけてるの?
だって彼女にとって、今の私は見知らぬ先輩で――
にこ(――ははーん)
あー、わかっちゃった。
これあれだ。自分が話しかけられてると思って返事したら実は自分の後ろの人に話しかけてましたってやつだ。
海未「えーっと……もしもし?」
はー、危ない危ない。危うく赤っ恥かくところだったわ。
まったく油断も隙もないわね。
海未「あの、矢澤先輩?」
ヤザワセンパイ!? 名前までおんなじなわけ!?
偶然って怖いわねー、危うく返事しちゃうところだったわ。
海未「…………」
それにしても、私の後ろにいたヤザワセンパイも酷いやつね。
結局私と海未たちがすれ違うまで返事してあげないなんて。
穂乃果「? 海未ちゃん、今の人知り合い?」
海未「知り合い、というわけではないのですけど。アイドル研究部の矢澤にこ先輩かと思ったのですが……人違いだったようです」
にこ「ってほんとに私のことかーい!」
258 = 1 :
はっ、ついツッコミ入れちゃった!
海未「え、えーと……? やはり矢澤にこ先輩、なのでしょうか?」
にこ「あ、そのー……まあ、そういうことになるわね……」
ぐぬぬ、なんかすごくみっともない……
ことり「あの、なんでずっと無視してたんですか?」
穂乃果「そうですよ! 海未ちゃんが必死に呼びかけてたのに!」
海未「穂乃果、そういう言い方はいけません。私も見知らぬ立場で不躾だったと反省すべきでした」
にこ「や、それについては申し訳なかったけど……でも、海未さん? の言う通りなわけよ」
ことり「どういうことですか?」
――あんまり、自分で口にしたくはないんだけどなぁ。
にこ「つまり――見知らぬ立場、ってことよ」
にこ「ぶっちゃけちゃうと、私に話しかけてるとは思わなかったの。知らない人だし」
ことり「そう言われれば……」
穂乃果「海未ちゃん、なんでこの……矢澤先輩? のこと知ってたの?」
海未「やはり二人とも覚えてませんか……まあ、ひと月ほど前の話だから無理もありませんが」
にこ「?」
なに? この子そんなに前から私のこと知ってたわけ?
259 = 1 :
ことり「ひと月前……あ、そっかぁ!」
ぽん、と手を叩くことりは、思い当たる節がある模様。
一方そのころ。
穂乃果「んんん……? ヒント! ヒントちょうだい!」
穂乃果は、まあ、穂乃果よねぇ。
海未「別にクイズを出しているわけではありません。私の部の先輩が、アイドル研究部でひとり奮闘している先輩を応援している話をしたでしょう?」
穂乃果「…………?」
海未「あなたに期待をした私が愚かでした……」
穂乃果は、うん、穂乃果よねぇ……
って。
にこ「私を、応援してる?」
これは聞き捨てならない。
海未の先輩――すなわち私と同じ学年の人間で、私のことを応援してる人間がいるなんて――
待った。
にこ「あなた、所属してる部って……」
海未「弓道部ですが?」
どくん。跳ねた心臓が、かぁっと頬を熱くさせる。
こんなところで。
こんなところで、あんたが関わってくれるのね。
ああ。今なら胸張って言える。
持つべきものは――
海未「ご存知だと思うのですが――後藤、という先輩なのですけど」
――友達、なのね。
260 = 1 :
ここまで
二年生編というべきかエリチカ編というべきか
まあしばらくそんな感じで続きます
262 :
乙だよ
面白い
ゆっくりでもいいので完結願います
263 :
ひょっとして私は自分のクラスより後輩のクラスで昼食を済ませることの方が多いのではなかろうか。
にこ(それはなんか……寂しいわね……)
結局、なんやかやで二年生三人組と一緒にお昼をすることになった私。
そりゃたしかに、この子らをμ'sへ誘いたい私としては大歓迎の展開なのだけど。
だけど、こうもいろんな教室へお邪魔してると、いい加減いたたまれなさも生まれてくるってもんである。
ことり「矢澤先輩? どうかしたんですか?」
にこ「えっ!? いやなんでもないわよ!? 別に私友達少ないなぁ寂しいなぁとか思ってないし!?」
ことり「え、えっと……?」
穂乃果「あ、矢澤先輩の卵焼き、」
にこ「あげないからね!?」
穂乃果「まだ何も言ってないんですけど……」
264 = 1 :
海未「そんなことよりも、です」
ぱんぱんと手を叩く海未。途端背筋がしゃきっとするんだから慣れってのは恐ろしいものである。
海未「矢澤先輩の……先ほどおっしゃってたことは本気なのですか?」
にこ「本気も本気、大マジよ」
肉団子をほおばりながらさもとーぜんとばかりに返す。
穂乃果とことりが戸惑い顔で顔を見合わせてるのが小気味いいわ。
海未「というのは、つまり――私たちに、アイドル研究部に入って欲しい、ということですか?」
にこ「ええ、その通りよ」
海未「はぁ……」
曖昧な返事のあと、海未の視線はうろうろと泳ぎ、やがて穂乃果に止まる。
穂乃果「…………?」
その視線の意味を理解しているのかはさておき、とりあえずメロンパンにかぶりついている場合ではないと悟ったようでもぐもぐと咀嚼を急ぐ。
穂乃果「ごくん……はむっ」
にこ「二口目いくんかーい!」
265 = 1 :
海未「……穂乃果は、興味ないのですか?」
穂乃果の察し能力に期待した自分が間違っているのに気付いたようで、海未は直接穂乃果に尋ねる。
穂乃果「アイドル、アイドルかぁ……はむ」
会話しながらの三口目に躊躇がない。
穂乃果「うーん、私はどっちでもって感じかなぁ。お店の手伝いなかったら放課後は暇だし」
穂乃果「そう言う海未ちゃんはどうなの?」
海未「私は弓道部があります」
穂乃果「だけどその弓道部の先輩が言ってたんだよね? 兼部してみてもいいんじゃないかって」
海未「それは、そうですが……」
穂乃果「まあ、やりたくないものを無理にやらせてもしょうがないよねぇ」
海未「やりたくないなど誰も言ってません!」
穂乃果「え、やりたいの?」
海未「や、ややや、やりたいなどと誰が言いましたか!」
穂乃果「じゃあやらないの?」
海未「~~、あなたは私を馬鹿にしているのですか!」
穂乃果「質問しただけなのに!」
海未「穂乃果がどうしてもと言うのならやぶさかではない、というだけです!」
穂乃果「じゃあどうしても! どうしても海未ちゃんとやりたーい!」
海未「むむむむむ……」
穂乃果「むむむむむ……」
にこ(話がトントン拍子に進むのは結構なんだけど)
にこ(おいてけぼり感がはんぱない)
266 = 1 :
と。
私と同様、おいてけぼりを食らっている人物が一名。
にこ「あなたはどうなの? ――南さん?」
ことり「えっ」
一人蚊帳の外でにこにことほほ笑むだけのことりに話を振る。
するとどうしたことか、「私も含まれてたんですか?」みたいな顔しちゃって。
にこ「そうよ。あなたは興味ない? アイドル」
ことり「私は……えっと……」
言いよどみながら視線を外すことり。
うん、まあこの時点でいい返事は来ないんだろうな、とは想像ついたけど。
穂乃果「あ……」
海未「…………」
穂乃果と海未が、必死に会話を繋げてた意味までは。
ことりに話題が飛ぶのを防ごうとしていた意味までは。
ことり「私は――ごめんなさい」
想像、できてなかった。
ことり「私――来月にはこの学校からいなくなっちゃうから。だから、無理です」
267 = 1 :
にこ「は、あぁ!?」
いなくなる? ことりが!?
なんでそんな急に!?
そんな話あっちの世界でだって影も形も――
にこ「……あ、」
あった。
ことりが音ノ木坂を去る理由。
だけどあれは、もっともっと後。
それこそ文化祭が終わってからで……
ことり「服飾関係のお仕事に興味があるんです、私」
ことり「それで、海外のデザイナーさんから、向こうで留学してみないかってお誘いがあって」
ことり「来月末から向こうの学校に転校することが決まってるんです」
ことり「だから――私は、参加できません。ごめんなさい」
にこ「――――」
嫌な予感ばっかり、あたるのよね。
268 :
こうやってみるとハードモードだなぁ
269 :
寝落ち
続きは後程
270 :
穂乃果「いなくなっちゃうんじゃ、しょうがないよね……」
海未「ええ……」
にこ「――っ、あんたたちは、」
あんたたちはそれでいいわけ?
飛び出そうになった言葉を、すんでのところで喉元に押しとどめる。
ことり「……矢澤先輩?」
にこ「なんでもないわ……」
いぶかしがることりに軽く首を振る。
熱くなっちゃダメ。凛の時に十分学んだでしょ。
私の言葉は。
『昨日会ったばかりの人に――なにがわかるんですか?』
初対面の人間の言葉は――届かない、って。
271 = 1 :
落ち着け。落ち着きなさい矢澤にこ。
考えないと。
ことりをつなぎとめる、何かを――
穂乃果「だけど、ことりちゃんの作った衣装でアイドルやってみたかったなぁ、なんて、ちょっと思ったり……」
海未「穂乃果! そういう話はもうしないとあの時決めたでしょう!」
穂乃果「わわ、わかってるよ海未ちゃん。ことりちゃんを困らせるようなことはもう言わないってば」
ことり「――――」
穂乃果の発言が彼女らの取り決めに引っかかったのか。海未が烈火のごとく怒りだす。
その原因が自分であることをわかっているためか、ことりも沈んだ表情。
この子たちの中では、もうそれを話題にするのもタブーになってるのね。
だけど、それじゃあ――
にこ「――っ、それ!」
海未「え?」
穂乃果「どれ?」
にこ「衣装! 日本にいるだけでも構わない、南さんには私たちの衣装づくりをお願いしたいの!」
ことり「えっ……私が、ですか?」
にこ「そう! あなたが!」
今はもうこれしかない。
真姫ちゃんと同じ、彼女の得意分野でつなぎとめる。
今はまだ彼女を止める手段がなくても、未来に可能性をつなげるために。
272 = 1 :
ことり「だけど私、あくまで趣味の範囲でしかできないし……」
にこ「大丈夫よ!」
それに関しては根拠は十分すぎるほどにある。
だってこの子は、あっちではあんなにすごい衣装を作ってたんだもん。
そもそもそ才能があるからこそ留学の話も出るわけだろうし。
海未「あの、先輩」
困った顔のことりに、助け舟を出したのは海未だった。
海未「先輩の気持ちもわからないではないのですが……この話は、私たちの間ではデリケートな問題で」
にこ「別に日本に残ってくれ、なんて言ってないわ。留学するまで協力してほしいってだけの話よ」
海未「そう、ですけど……ですが……」
穂乃果「私はいいんじゃないかなー、なんて思うんだけど」
海未「穂乃果、またあなたは!」
穂乃果「い、いや、だって矢澤先輩の言う通り、留学するまでの間私たちの衣装を作ってもらうってだけの話でしょ?」
穂乃果「別に問題があるわけじゃないと思うんだけど」
海未「その話だってそうです、私はまだアイドルをやると決めたわけではありません!」
穂乃果「もー、海未ちゃん素直じゃないんだから」
海未「一体なにを言って、」
穂乃果「ね、ことりちゃん。ことりちゃんはどうかな?」
273 = 1 :
ことり「私は……」
逡巡することりを見て、彼女の迷いはどこにあるのだろうとふと思う。
衣装を作ることに抵抗がある?
本人が言ったように自信がないから?
なんだか腑に落ちない。
そもそも迷いは、ひょっとして――
にこ「とりあえず。今日の放課後、練習見に来てみない?」
ことり「え?」
にこ「雰囲気見てみるだけでなにか変わるかもしれないし」
にこ「園田さんも実際にやってるとこ見たら気持ち固まるかもしれないしさ」
海未「わ、私はまだやるともやらないとも……」
にこ「だーから、それを固めなさいって言ってんのよ」
海未「う……」
にこ「どう? あんたはそれで文句ある?」
ことり「…………」
しばらくは、口をつぐんでうつむいていたことりだったけど。
ことり「……はい。行きます」
にこ「決まりね」
とりあえず、その顔を上げさせることはできた。
274 :
うーん
ことりはおしりの穴にうんこの拭き残しが残ってそう
276 = 1 :
【Side:海未】
午後の授業。数学教師の言葉が右から左へと流れていきます。
原因は、お昼の出来事。
『とりあえず。今日の放課後、練習見に来てみない?』
突然現れた先輩の、突然な申し出。
後藤先輩から聞いていた先輩の存在が、まさかこのような事態を招くとは夢にも思っていませんでした。
私たち三人の――あの日の決意を揺るがす、事態を。
海未「――――」
私の斜め前の席で教科書に視線を落としていることりは、一見変わった様子は見られません。
だけど――内心、戸惑っているはずです。
いけません。私たちは決めたのですから。
ことりがなんの未練もなく日本を発てるよう、最大限のサポートをしようと。
そう、誓ったのですから。
277 = 1 :
窓際一番前の席。私の視界の端では、穂乃果がうつらうつらと舟をこいでいるのが見えました。
ああは見えても、穂乃果もきっと内心では戸惑っているに違いありません。
正直先ほどはああ言ったものの、穂乃果の気持ちは十分理解しています。
少しでも長くことりとの時間を作りたい。
少しでも多くことりとの思い出を作りたい。
そして、あわよくば――
海未(いけません……!)
それは、望んではいけないことです。
私たちの都合で。
私たちの願いで。
私たちの欲望で。
ことりの未来を潰してしまうなど――言語道断です。
穂乃果もきっとそれを理解した上で、なおことりへの未練を断ち切れないのでしょう。
わかります。あのように眠たげにしながらも、頭の中ではことりのことを――
穂乃果「チョコクロワッサンが逃げていくぅ!」ガバッ
教師「高坂……百歩譲って居眠りは良しとしても、寝言で授業の邪魔するのはやめような?」
穂乃果「へ? あ、あはは……すいませーん……」
海未「…………」
前言撤回です。あの人はなにも考えていません。
278 :
乙
ほのか…
279 = 1 :
今回はここまでにします
進み遅くて申し訳ない
280 :
おっつー
穂乃果ちゃん可愛い
282 :
乙
とても面白い
283 :
ほのかわいい
284 :
すごい鬱陶しいわ
依頼出して終わりにしろ
285 :
待ってます
287 :
修道士存在が消滅しそう
288 :
終われ終われ
289 :
放課後。屋上に顔を出すとすでに一年生二人がストレッチを始めていた。
凛「あ、にこちゃんだにゃ」
花陽「にこ先輩、こんにち――いたたたた、凛ちゃん押すのストップストップ!」
凛「え? ここでキープってこと?」
花陽「あごめんうそ手を離してええええぇぇぇ……」
にこ「……死なない程度にしなさいよ」
凛「あははー、にこちゃんは大げさだにゃ」
花陽「――――」グデー
にこ「それは花陽の状況見てから言ってやんなさい……」
290 = 1 :
凛「新入部員?」
花陽「それも二年生の、ですか?」
にこ「まだ確定じゃないけどね」
グロッキーになってた花陽が息を吹き返したのを確認してから、昼休みの出来事をかいつまんで説明する。
凛「おおー、段々本格的な部活っぽい人数になってきたにゃ!」
花陽「き、緊張しちゃうな……」
にこ「そんなに肩肘張らなくて大丈夫よ、花陽。ゆるーい感じの子たちだから」
花陽「そう、なんですか?」
にこ「そーそー」
特に穂乃果なんかはあんな感じだし、すぐに馴染んでくれるでしょ。
291 = 1 :
花陽「…………」
にこ「……ん? どしたの花陽?」
花陽「あ、いえ……別に大したことじゃないんですけど……」
そう言うわりにちょっと考え込むような表情。
なにか引っかかることでもあるのかしら。
にこ「なに? なにか気になることでもあるなら――」
穂乃果「お邪魔しまーす……」
私の言葉を遮るように、開く屋上の扉。
見ると約束通り二年生が顔を出してくれたようであった。
にこ「ようこそ、待ってたわ」
海未「失礼します。約束通り伺わせていただきました」
ことり「……よろしくお願いします」
穂乃果に続き屋上へ姿を現す二人。
気持ちは――まあ、まだ固まらず、よね。
292 = 1 :
花陽「あ、わ、私、一年の小泉花陽って言います!」
凛「私は同じく一年の星空凛です。よろしくお願いします、先輩方」
一年生たちの自己紹介に、三人の目が向く。
穂乃果「お、あなたたちがアイドル研究部の一年生だね?」
穂乃果「そんなに気を使わなくていいよ、ここではあなたたちが先輩なんだから」
花陽「そそそ、そんな! 先輩だなんて言えるほどの器じゃ……」
凛「じゃあ遠慮しないにゃ!」
花陽「ちょ、凛ちゃん! 先輩に失礼だよ」
穂乃果「あはは、気にしなくていいよ、花陽ちゃん。私から言い出したんだし」
穂乃果「私は高坂穂乃果、二年生。気軽に穂乃果、でいいよ。私も下の名前で呼ぶし」
穂乃果「それから――」
海未「私は園田海未。穂乃果と同じ二年生です」
海未「まだ入部を決めたわけではありませんが……もしそうなれば弓道部との掛け持ち、ということになります」
海未「どうぞよろしくお願いしますね、二人とも」
293 :
退屈
294 :
寝落ち
続きはまた後程
295 :
そして。
誰からともなく、視線はことりに集まる。
ことり「私は――」
一瞬見せた逡巡は、期待に満ちた一年生に対する申し訳なさ、なのかもしれない。
ことり「ごめんなさい、入部するわけではないんです」
花陽「え?」
凛「入部希望じゃないにゃ?」
ことり「はい……ごめんなさい」
ことり「南ことりって言います。矢澤先輩に誘われてきました」
ことり「ちょっと理由があって一緒にアイドル活動をすることはできないけど、ひょっとしたら力になれるかもしれません」
ことり「だから……短い間になるかと思うけど、よろしくお願いします」
凛「あ……はい、よろしくお願いします」
花陽「…………」
微妙な立ち位置のことりにたじろぐ二人。
いけない、これを取り繕うのは私の役目だ。
296 = 1 :
にこ「だけどね、二人とも。この子は衣装作りができるのよ」
凛「え、ほんと!?」
ことり「できる、って言っても……趣味範囲だけどね」
凛「それでもすごいにゃ! 衣装ー衣装ー!」
ことり「え、えっと……そんなに期待されても……」
衣装と聞き急にテンションを上げる凛。
なにせそのために入部したようなものだもんね、あの子は。
しかし一方の花陽はというと。
にこ「……あんた、さっきからどうしたの? 花陽」
花陽「えっ?」
にこ「ずっと難しい顔しちゃって……」
花陽「…………」
297 = 1 :
花陽「矢澤先輩は……」
にこ「ん?」
花陽「矢澤先輩は、南先輩を衣装作りのために勧誘したんですか?」
にこ「え? ……いや、違うわよ? もちろん最初は一緒にアイドルをやってもらうために声をかけたわ」
にこ「というか、今もそれは諦めてないけどね」
花陽「そう、ですか……」
そう呟くと、またむつかしい顔でうつむいてしまう。
具合でも悪いのかしら?
まあ、本人が話さないなら問い詰めてもしかたないか。
それよりも今は。
にこ「それじゃあ、ギャラリーも揃ったことだしそろそろ練習始めましょうか」
298 = 1 :
凛「よっ、ほっと。えへへー、見られてると緊張してうまく動けないねー、っとぉ」
花陽「それでも、それだけ、動けるなら……っと、じゅうぶんだよ、凛ちゃん」
にこ「」
299 = 1 :
>>298はミスです、すいません
* * * * *
凛「よっ、ほっと。えへへー、見られてると緊張してうまく動けないねー、っとぉ」
花陽「それでも、それだけ、動けるなら……っと、じゅうぶんだよ、凛ちゃん」
にこ「ほらほら、無駄話しない。ペースあげるわよ。ワン、ツー、スリー、フォー」パンパンパンパン
凛「にゃっ、負けないよー!」
花陽「わ、わわわ……」
穂乃果「……へー、意外と本格的なんだねぇ」
海未「たしかに……稚拙さは感じられますが、素人としてはかなり動けている方なのでは?」
ことり「小泉さんはちょっとつらそうだけどね……」
穂乃果「でも、逆に言えばこれから始めたってまだまだ置いてかれる心配はないってことだよね?」
穂乃果「うん、やっぱり楽しそうだし私はやってみてもいいかな」
海未「私も……これくらいでしたら弓道部の方に影響はあまりないかもしれませんね」
穂乃果「だよね、だよね!」
穂乃果「それで、その……ことりちゃんはどうかな?」
300 = 1 :
ことり「私も……二人が入部するって言うなら、衣装作り、やってみてもいいかなぁ、なんて……」
穂乃果「ほんと!?」
海未「……よいのですか? ことり」
ことり「……うん。腕慣らし、って言ったら失礼かもしれないけど」
ことり「でも、実際に着てもらえるレベルの衣装を作る練習にはちょうどいいかなって」
海未「……そう、ですか……」
にこ「――――」
聞いている感じ、感触はかなりいいみたいね。
「このくらい」とか、ちょっと舐められてる感じがむかっとするのはあるけど。
だけど、実際に今の私たちの実力はその程度、ってことだしね。
それがあの子らのハードルを下げてくれてるっていうならむしろ好都合ってなもんよ。
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