元スレにこ「きっと青春が聞こえる」
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551 = 1 :
にこ「は、はは……」
絵里「に、こ?」
にこ「あは、あはは、あっははははははは!」
海未「ど、どうしたのですか? 落ち着いてください!」
そっかそっか、わかった。わかっちゃった。
「これ」、μ'sじゃないんだ。
そっかそっか、納得。
そうよね、そうに決まってるわよね。
じゃなきゃ、こんなことになってるはず、ないもんね。
あはは。
はは。
は……
552 = 1 :
それなら。
553 = 1 :
にこ「……なら」
希「にこっち?」
にこ「それなら!」
希「っ!」
それなら。
それならそれならそれなら!
にこ「それなら――」
554 = 1 :
私の中のきれいな心は、言っちゃダメって言ってる。
私の中のきたない心は、言っちゃえって言ってる。
それはどっちもおんなじくらい大きな気持ちで。
だから、私は。
自分の意志で、選んだ。
555 = 1 :
にこ「それなら――こんな集まり、もういらない!」
556 = 1 :
「――――」
誰かが息をのんだ。
みんな、だったのかもしれない。
決定的に走ったヒビに、とどめを刺したのは。
花陽「――わかりました」
意外な人物。
557 = 1 :
花陽「……私、にこ先輩は、本当にアイドルが好きなんだなって思ってました」
花陽「だからこそ、ひとりぼっちになっても、アイドル活動を続けられたんだなって」
花陽「だけど……違ったみたいですね。勘違いでした。ごめんなさい」
花陽「絵里先輩。今日からアイドル研究部の部長、お願いします」
花陽「ちゃんと、一生懸命になれる人に、引っ張ってもらいたいですから」
花陽「もう――こんな思い、したくないっ!」
絵里「花陽!」
湿った叫び声と共に、花陽は屋上を飛び出す。
それが、皮切り。
海未「……失礼します」
穂乃果「え、っと……私も」
ことり「あ、待って……」
ひとり、またひとりと。
絵里「……少し、頭冷やしなさい」
希「…………ごめん、にこっち」
屋上から去って行き。
そして、私は。
558 = 1 :
にこ「あ――あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!」
また、ひとりぼっちになった。
559 = 1 :
ここまで
ずいぶん間が空きましたごめんなさい
続きはできれば近いうち
561 :
乙です。いつもドキドキしながら読んでる
562 :
乙乙
胃が痛くなるな…
563 :
乙です。
バッドエンドになりそうで怖いのですが……そんなことはないと信じてこれからも続きを楽しみにしています。
564 :
乙
凛ちゃんはまだ部室に残ってるのかな?
565 :
ひえぇ…こっからどうなるんや…
566 :
それは、真水のようなものだった。
ぎゅっと掴んで、もう離さないと心に決めながら、それとは裏腹に指の隙間を零れ落ちていく。
どれだけ力を込めても。どれだけ願いを込めても。
それをあざ笑うかのように、手の中にはなにも残らない。
私にとって、μ'sとはそういうものだった。
567 = 1 :
夕暮れに沈む教室で、ひとり窓の外を眺める。
ガラス越しに聞こえる運動部の掛け声がいやに遠くて、どこか現実味を失わせた。
まるで。
この世界に、ひとりぼっちであるかのように。
にこ(……あほくさ)
センチになっているだけだ。すべてが徒労に終わり、すべてを失って、少しだけ疲れが顔をのぞかせて。
だから、こんなに虚しさが胸を占めている。
568 = 1 :
望みすぎてしまったのだろう。言い聞かせるように繰り返す。私は望みすぎてしまった。
私たち3年生の卒業が間近に迫って、μ'sは終わりにしようって決めて。
だけどアメリカでのライブが世間に与えた影響は、大きくて。
一躍スターになって、そう――望みすぎてしまった。
ああ。
もっと、続けたい。
569 = 1 :
だからある意味、この世界は好都合だったのかもしれない。
私にとってμ'sをやり直すチャンス。
あの輝いていた一年間を取り戻すチャンス。
訳が分からないなりにあがき続けられたのは、そんな希望があったからかもしれない。
――じゃあ、今は?
にこ「――――」
μ'sを再び築き上げる道は、絶たれた。
それどころか、私がこの世界でスクールアイドルとして活動できる可能性は、ほぼゼロ。
なら。
私がこの世界にいる意味って、なに?
570 = 1 :
思えばμ'sの再結成はひとつの現実逃避だった。
リアリティのない現象に遭遇して、絶望しかけた私を、すんでのところで花陽がすくい上げてくれた。
私の頑張る理由が、生まれた。
じゃあ、今の私が頑張る理由は?
この世界にいる理由は?
571 = 1 :
そもそも。現実逃避をやめた私は考える。そもそも、この世界はなんなのだろう。
本当に過去に戻ってきた?
だとしたら廃校の話がなくなっている理由がわからない。
少なくとも私の周りに関してのみ言えば、元の世界とは別のシナリオで進んでいる。
ただ単純に過去に戻っただけとは考えにくかった。
じゃあ、パラレルワールド?
たとえそうだとしても、今、このタイミングで私がこの世界に迷い込んだ理由は?
そうだ。考えてみれば見るほど、私という存在は異質。
私だけが元の世界の存在を知覚している。
私だけが、この世界で非常にイレギュラーな存在なんだ。
572 = 1 :
にこ「なんで……私ばっかり」
みんなが幸せそうにしているなかで、私一人がつらい思いをして。
理不尽じゃない、そんなの。
一生懸命頑張ったじゃない。何の説明もなくこんな世界に連れてこられて、それでもμ'sを作るためにあがいて。
なのになんなのよ。みんなみんな、私の邪魔ばっかり。
私は、私はただ……
にこ「――アイドルになりたかった、だけなのに」
不意にこぼれた、その言葉は。
573 = 1 :
「うそつき」
574 = 1 :
――――ピシリ、と。
世界に、大きな音を響かせた。
575 = 1 :
短いけどここまで
今月中には終わると思います
続きはまたすぐ
577 :
乙待ってた
579 :
乙。終わってしまうのか…
580 :
にこ「――え?」
声と、音が、同時。
どちらに反応すべきか。迷うほどの時間もなく、声の主は現れた。
「こんにちは」
にこ「あんた……!」
元アイドル研究部の、あの子。
「声をかけただけじゃない、そんな怖い顔しないでよ」
にこ「声をかけただけって……いや、そんなことどうでもいいわ」
にこ「あんたも聞いたでしょ? 今の音」
大きな音だった。何かにひびが入るような、決定的な音。
いつの間に現れたのかわからないけど、私に聞こえて彼女に聞こえていないとは考えにくかった。
581 = 1 :
「そうね」
返ってきた言葉はそっけない。
興味がないような……あるいは、別に不思議ともなんとも思っていないような。
にこ「……なんの音か、わかるの?」
「ええ」
答えはひどくシンプルだった。
そのかわりに。
「あなたには――なんの音に聞こえたの?」
続く言葉は、私を少しだけ悩ませた。
582 = 1 :
にこ「……なにかが、割れるような音」
考えた末に出た答えは、それだった。
いや。もっと正確な言葉を、私は思い浮かべたはず。
「ひびの入った音」
にこ「――――」
考えを読んだかのように、彼女は私の言葉を続けた。
「そうね、その通りよ。今のはひびが入った音」
「ひな鳥がその内側から卵をわるために」
「外の世界へ歩みだすために」
「自分を守る殻を?ぐために」
「ひびを入れた、音よ」
にこ「わけ……わかんない」
「うそつき」
にこ「嘘なんかじゃ、」
言いかけて、気づく。
私を罵るその言葉を、つい先ほど言われたばかりだということに。
583 = 1 :
にこ「あんた……さっきも私のこと」
「言ったわね。うそつき、って」
その言葉は、何に対しての?
その直前に、私が言った言葉は?
それは、たしか――
にこ「――嘘じゃ、ない」
「――――」
にこ「アイドルになりたいって言葉が……嘘なんかなはず、ないじゃない!」
「そう?」
私の大事な部分に触れて、だというのに、彼女は飄々としたまま返す。
「だけどそれは、あなたにとってとても大きな意味合いを持つ言葉よ」
「だからこそ、殻は破れ始めた」
にこ「……は?」
「あなたは嘘じゃないと言った。そうかもね、その言葉自体は嘘じゃないのかもしれない」
「だけどね」
「その奥に眠ってる想いを、言葉を、語ろうとせず蓋をしたままでいるのは――うそつきと同じじゃない?」
584 = 1 :
にこ「……待って。ついていけない」
入ってくる情報量の多さに目が眩む。
彼女の意図している部分の、きっと半分も、私は理解できていないんだと思う。
だけど、なんとなくわかったことがある。
わかったというか、察したというか。
あるいは、感じ取った。
にこ「あんた……この世界のこと、知ってるの?」
「ええ」
答えは、やっぱり、シンプルだった。
そして、続く言葉は。
585 = 1 :
「だって、この世界を作ったのは私だもの」
やっぱり、私を、悩ませた。
586 = 1 :
私の両手が彼女の肩へ伸びたのは、ほとんど衝動的なものだった。
にこ「教えなさい! なんなのよ、この世界は!」
にこ「なんのために作って!」
にこ「なんのために私を閉じ込めたの!」
にこ「教えなさいよ!」
「――痛いわ」
にこ「あっ、」
がくがくと揺さぶられるままになっていた彼女は、静かにそれだけ呟いた。
にこ「ごめん、なさい……」
「いいわよ、別に」
「それよりも……この世界がなんなのか、よね」
「その前にひとつ聞きたいのだけれど」
「それを聞いてあなたはどうしたいの?」
587 = 1 :
にこ「え?」
「この世界はこれこれこういうものでした。おしまい」
「それで、それを聞いてあなたはなにか満足するの?」
にこ「満足、っていうか……」
にこ「この世界を出る方法が、見つかるかもしれないじゃない」
「――そう、よね。あなたはこの世界から出たいのよね」
にこ「あ、当たり前じゃない」
「なぜ?」
にこ「なぜ、って……」
「この世界は、不都合?」
にこ「ふ、不都合よ! こんな、」
「μ'sがない世界?」
にこ「……そうよ」
――自分の言葉を先取りされるのは、ほんとに気持ち悪い。
588 = 1 :
「じゃあ、またやり直す?」
にこ「は?」
それはまるで、ゲームをリセットする? ってぐらいに気軽な言葉で。
思わず聞き流しそうになる。
「μ'sを作れなかったのが気に食わないんでしょう? なら、もう一度3月の「あの日」からやり直しましょう?」
「大丈夫よ、次はもっとうまく立ち回れるわ。今回の失敗をいかして、ね」
「そうすれば満足なんでしょう?」
にこ「そ、そんなこと……」
「可能よ」
にこ「…………や、でも、」
「今度はもっと、理想的なμ'sが作れるかもね」
にこ「…………」
彼女の言葉が、完全に私を黙らせる。
589 = 1 :
「――ここで黙ってしまうから、あなたはうそつきなの」
にこ「え?」
「なんでもないわ」
「そんなことよりも。今言った通り、この世界はあなたの思うようにやり直せる」
「そもそもがそういう世界なの」
「あなたがμ'sの一年をやり直したいと願ったから、この世界は生まれた」
ノゾミ
「あなたの希望が産んだ世界」
にこ「私の、のぞみ?」
「そう。もっとわかりやすい言葉を使った方がいいかしら?」
「意識の奥底、無意識の内側、そこに潜む自分の願望」
「眠りの中で触れる、自らの希望」
「そんな世界の名前。わかるでしょう?」
590 = 1 :
「ここは、あなたの見ている夢の中」
591 = 1 :
にこ「――――」
「3月のあの日。あなたはいつも通り眠りに落ちた」
「そしてこの夢に迷い込んだ。私が作った、この夢に」
「言うなれば、私は管理人といったところかしら」
「もちろんこの姿だって借り物」
ア ナ タ
「私は矢澤にこ。あなたの頭の中に棲む、あなた自身」
にこ「そん……な。だって……」
「信じられなくても、受け入れるしかないわ」
「認めなさい、この世界を」
「ここはあなたが夢見た場所」
ユメ
「あなたが手を伸ばした憧憬で」
ユメ
「あなたが掴もうとした希望で」
ユメ
「あなたがつくり上げた幻想で」
ユメ
「とてもとても甘い――悪夢よ」
592 = 1 :
「もう一度、改めて聞くわ」
「この世界の真実を知って。あなたは、どうしたい?」
「この夢から、醒めたい?」
にこ「私、わたし、は」
「……今決めろっていうのも、酷みたいね」
「だけどね、これだけは忘れないで。私がこの世界にあなたを招いたのには、意味がある」
「その意味をあなたが理解するまでは」
ワ タ シ
「その上で、あなたが矢澤にこを否定できなければ」
「私は、あなたをここから逃がすつもりはない」
にこ「意味、なんて、そんなの……わかんない……」
「うそつき」
三度目の、否定。
593 = 1 :
「さっきも言った通り。この世界には、ひびが入り始めた」
「少しずつ、あなたが目覚める準備が整い始めた」
「だからこそ私はこうしてあなたに真実を教えたの」
「あなたが真実を受け入れる準備が、整い始めたから」
「だけどね、それはあくまで準備でしかないの」
「あなたが自分に嘘をつき続ける限り、準備は準備のまま」
「雛が孵ることはない」
にこ「……わたし、どうしたら……」
戸惑う私の、その胸に。
彼女は――もうひとりの「私」は、優しく指を突いた。
ハコ
「ここにある匣。その蓋を開けなさい」
「その中にある現実に、目を向けなさい」
「あなたがアイドルを目指している。それは本当」
「だけど。それだけじゃ、ないでしょう?」
「それを――認めなさい」
それだけを言い残して、「私」は蜃気楼のように揺らめいて、消えた。
594 = 1 :
にこ「――――夢」
思わずほおをつねろうとして、やめる。この世界で痛い思いなんて、十分してきた。
体も。心も。
すごく、痛い思いをしてきた。
それが、私の望んだ世界?
にわかには信じられない――けど。
この世界に迷い込んだあの日。私はたしかに、望んでいた。
――いっそのこと、この一年間やりなおせたらなぁ
それを……自分の頭の中で実現したってこと、なの?
595 = 1 :
にこ「…………」
「私」が指さした場所を、ぎゅっと握りしめる。
ここにある、箱。
それがなにを指すのか。今の私にはわからない。
うん、わからない。
わからない。
…………
そっか。そういうことなんだ。
にこ「自分に嘘はつけないってこと、なのね……」
その中から、災厄があふれ出てくることを、知りながらも。
それでも私は、この匣を開けなきゃいけないの?
ノゾミ
この世界が、私の希望を叶えた世界だというなら――
にこ「誰か、教えてよ……」
596 = 1 :
ここまで
一応あと5、6回の投下で終わる予定
続きはまたすぐ
598 :
乙
クライマックスやね
599 :
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/kako/1402325332/
600 :
「にこっち」
にこ「えっ」
突然の声だった。
振り向くと、そこにはつい先ほどまでなかった人影。
問答なんてする余地もない。
私のことをそう呼ぶのは、たったひとりだけ。
にこ「希……」
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