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    元スレにこ「きっと青春が聞こえる」

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    151 = 1 :


     なんだか、置いてけぼりにされちゃったけど。

     まあ、いいわよね。

     だって、口なんてはさめるわけないじゃない。


    「うぁぁぁぁああああん!」

    花陽「うん……っく……大丈夫、だからね……ひっく」


     あんなきらきらした雫より、説得力のある言葉なんて、もってないもの。

     だから、そう。


     アイドル研究部の部員が三人になったのは、また別のお話、ってことで。

    152 = 1 :

    ここまで。凛ちゃん編終了
    猫のくだりとかはとりあえず漫画版SIDでも読んでもらえれば補完できます
    次はまた近々

    154 :

    りんぱな尊い

    155 :

    最初に仲間になるならりんぱなだよなぁ

    156 :

    おつ
    この世界のリーダーは何やってんだろ

    157 :


    【Side:真姫】

     白鍵に乗せた指から、すぅ、と緊張感が全身に染み渡る。

     どんな音を鳴らそう。

     どんな曲を紡ごう。

     そう考えるだけで、胸がどきどきしてくる。

     だというのに。

    「はぁ……」

     今日は――ううん、ここ最近はずっと、ため息ばかりが口をつく。

     ぽーん ぽーん

     意味なくピアノを鳴らしても、沈む気持ちは浮かばない。

     せっかく先生にお願いして、放課後に音楽室を開放してもらってるのに。

    158 = 1 :


    「―――――」

     すっ、と意識を指先に集中させる。


     大好きだばんざーい!

     まけないゆうき 私たちは今を楽しもう

     大好きだばんざーい!
     
     頑張れるから――


     よどみなく動いていた指が、いつもここで止まってしまう。

     まあ、歌詞ができてないんだから当たり前なんだけど。

     それでもいつもならいい歌詞がすらっと浮かんで問題なく続けられるのに。

    159 = 1 :


     不調、だから?

    「…………」

     そんなわけないし。

     それじゃまるで――友達ができないこと、私が気にしてるみたいじゃない。

     友達なんていらない。作らない。

     邪魔になるだけだもの。

     私はひとりがいいの。

     自分で選んでるの。

     友達なんて、友達なんて――

    「…………はぁ」


     私、誰に言い訳してるんだろ。

    160 = 1 :


    「あーもう、やめやめ!」

     今日の練習もうじうじするのも、おしまい!

     こんな調子じゃ日が暮れたって曲なんか作れやしないわ。

     ぱっと荷物をまとめ音楽室を出る。

     オレンジ色に染まった廊下は誰もいなくて、少し寂しげ。

     グラウンドから聞こえる部活の声だけが、遠く響く。

    「…………」

     私はひとりで歩き出した。
     

    161 = 1 :


     毎日ってこんなにつまらないものだったっけ。

     中学生のころから感じてた思い。。

     高校に入って増していく想い。

     同じ毎日が続いて。

     変わらない毎日が過ぎていく。

     
     今、私の視界を流れていく寂しげな廊下の風景は。

     きっと、私の人生の縮図。


    「――――」

     ひとりを、望んでいるはずなのに。

     泣きたくなるのは、なんでだろう。  

    162 = 1 :


    「かよちーん! はやく行くにゃー!」

    「ま、まってよ凛ちゃん……それじゃ矢澤先輩、お疲れさまでした」

     と。奥の教室から飛び出てくるふたつの人影。

     見覚えあるな、と思ったら、同じクラスの星空さんと小泉さんだった。

     あれ、あの二人って陸上部に入ったんじゃなかったっけ?

     たまに聞こえる会話では、そんなこと話してた気がするんだけど……

    「はいはい、お疲れさまー。気を付けて帰んなさいよ」

     続いて出てくる小さな人影。

     あの人……ついこの間、うちのクラスで一悶着起こしてた人だ。

     矢澤にこ……だっけ?

     風のうわさでは二年前にやらかしてひとりぼっちって話だったけど……

     ふーん。そういうこと。

     あの二人、矢澤先輩の部活に入ったんだ。

     別に、私には関係ないけど。

    163 = 1 :


     二人が走り去ったあと、矢澤先輩はひとりで部室のカギを閉めているようだった。

     私には気づいてないようで、そのまま廊下の奥へと進んでいく。

     なんだか浮かれてるみたいで、足取りは軽い様子。

     ほら、後ろくらい確認しなさいよ。人が見てるわよ、人が。

     もう、スキップなんかしちゃってみっともない。

    にこ「~♪」

     あーあ、ごきげんに歌まで歌いだしちゃって、見てるこっちが恥ずかし――

     え?


    にこ「愛してるーばんざーい! ここでーよかーあったー」

     
     え、なんで?

     私が作った、私だけの、私しか知らない曲を。

     なんで――あなたが歌えるの?

    164 = 1 :

    ここまで
    次はまた近いうち

    165 = 1 :

    途中酉はずれてた、すまぬ
    ID同じだから大丈夫やんな

    168 :


    二年組も気になるね

    169 :

    おつ
    おもしろい展開に

    170 :


    にこ「愛してるーばんざーい! ここでーよかーあったー」

     つい歌なんか歌いながらの帰り道。

     十人が見たら十人が浮かれてると思うことだろう。

     それ、大正解。

    にこ「とっきーどきーあーめーがーふーるけーど みっずっがーなーくーちゃたーいへーん」

     凛が仲間になってくれた。凛が認めてくれた。

     あんなに頑なだった凛が。

     私に、開いてくれた。

    にこ「さー大好きだーばんざーい! まけなーいゆーうーきー」

     これが喜ばずにいられる? いーえ、いられないわ。
     
     歌だって歌いたくなるってもんよ。

    172 = 1 :


    にこ「昨日ーに手ーをふーって ほらー 前向いてー」

     ごきげんになりながら一番を歌い終える。

     メロディの余韻は、誰もいない廊下にじんわりと染み込んでいった。

    にこ「ふぅ……」

     喉の痛さも、少し弾んだ動悸も、なぜだか心地いい。

     やり遂げたというか、やりつくしたというか。

     まだ淡い達成感が、だけど、たしかに胸の中にあった。

    にこ「あと六人」

     思わずこぼれたひとりごと。

     それは、遠いようで、でもきっと手が届かない場所じゃないと、思った。

     さ、今日はもう帰りましょう。

     気づけば止まっていた足を動かして、そして――


    「ちょっとあなた!」

    にこ「ひゃうっ!?」


     歩みはすぐに止められた。

    173 = 1 :


    「なんで! なんであなたか知ってるの!? なんであなたが歌えるのよ!」

    にこ「なっ、なっ、なぁ!?」

     懐かしい顔だ、なんて思う暇もなかった。

     急に飛んできた怒声に驚き振り向くと同時、私の両肩はがっしと掴まれた。

    「答えなさいよ! なんであなたがそれを歌えるの! なんで知ってるの!」

     言いながらがくがくと私を揺さぶる赤毛の女の子――真姫ちゃんは、必死の形相で繰り返す。

    にこ「ちょ、ちょっと落ち着きなさいよ!」

    「これが落ち着いていられるもんですか!」

    「あなたが今歌ってた曲――『愛してるばんざーい!』は、私が考えてる途中の曲なの!」

    「それを、なんであなたが歌えるわけ!?」

    にこ「っ!」

     ――やっちゃった。

     後悔が私の心を蝕む。

     浮かれてるからって、こんな致命的なミスをするなんて……

    174 :


    「答えて」

     揺さぶる手は、いつの間にか止まっていた。

     けれどその代わり。

    「――――」

     真剣な瞳が、まっすぐに私を射抜く。

    にこ「あ、ぅ……」

     考えろ、考えろ。

     なにかそれっぽい、納得できるような理由――

    にこ「あ、そ、そうよ!」

    「えっ?」

    にこ「あ、いや、そうよじゃなくて。あれよあれ、あんたいつも音楽室で練習してたわよね?」

    「――ええ」

     これだ、これしかない。

    にこ「それが偶然聞こえてたのよ! 廊下で! それでいい曲だなーって思ってつい口ずさんじゃったのよ!」

     

    175 = 1 :

    寝落ちってた
    続きはまた後程

    177 = 1 :


    「――私が歌ってるのを、聞いたから?」

    にこ「そう!」

    「――音楽室で、私が歌ってるのを?」

    にこ「そうそう!」

    「――最初から、最後まで?」

    にこ「そうなのよ!」

    「――――」

     いけるかも、って思った。

     真姫ちゃんが乗ってくれたと思った。

     ごまかせるかも、って、思った。

     それが全部勘違いだと気づいたのは。

    「――――っ」

    にこ「えっ?」


     真姫ちゃんの瞳から、ぽろりと涙がこぼれた瞬間だった。

    178 = 1 :


    「う、うう……」

    にこ「え……え!? ちょ、真姫ちゃんどうしたの!?」

    「なんで……なんで……!」

    にこ「なんでって、こっちのセリフよ! なんで急に泣き出しちゃうわけ!?」

     私の言葉に、真姫ちゃんはキッと鋭い視線を返す。

    「なんでって? 悔しいのよ!」

    にこ「く、悔しい?」

     なに? この子なんの話してるの?

     私の疑問を知ってか知らずか、真姫ちゃんはすぅっと息を吸う。


     大好きだばんざーい!

     まけないゆうき 私たちは今を楽しもう


     それは、ついさっき私が口ずさんでいた曲。

     唯一、違いがあるとするならば。


     大好きだばんざーい!
     
     頑張れるから――


    にこ「…………?」

     それが、最後の最後で止まったこと。 

    179 = 1 :


    「この曲はね、未完成なの!」

    「どうしても、最後のフレーズが浮かばなかった!」

    「この曲にぴったりの歌詞が見つからなかったの!」

    にこ「……あ、」

     荒ぶった感情が、びりびりと伝わってくる。

     言葉の意味を飲み込んだ私は、自分が思っていたよりもっと深い沼に足を踏み入れていたことに気づいた。

    「そう! でもあなたは歌った!」

    「昨日に手を振って。ほら――前向いて、って!」

    「なによ……なによそれ!」

    「それ以上ぴったりな歌詞――見つけられるわけないじゃない!」

    「それを聞いた瞬間、もうそれしかないって思った!」

    「この曲には、その歌詞しか合わないんだって感じ取った!」

    「まるで……まるで、最初からそう決められていたみたいに……」

    にこ「…………」

     そりゃ、そうよね。

     だってそれが、その歌詞が、この曲の「本来の形」なのだから。

    180 = 1 :


    「それが……なんであなたから教えられなきゃいけないわけ!?」

    「なんにも知らないあなたに!」

    「廊下で聞いた、なんて下手な嘘でごまかそうとしてるあなたに!」

    「なんの関係もない、あなたに……!」

    「これが悔しくなくて……なんだって言うのよ……」

    にこ「ぁ、う……」

     きっと、本当に悔しいんだと思う。

     人前で、しかも彼女にとって初対面の人間の前で。

     こんなに素直に涙をこぼすなんて――「あっち」の真姫ちゃんなら考えられない。

     だからこそ、不用意な言葉は返せなかった。

     この、ガラス細工みたいにもろい女の子に、どう触れたら壊さないで済むのか、見当もつかなかったから。

     

    182 :


    「……ちょっと待って」

     私がそうやってだんまりを決め込んでいたわけだから、言葉を続けたのは当然真姫ちゃんの方であった。

    「あなたさっき、私のこと……真姫ちゃん、って呼んだ?」

    にこ「ぎくー!」

     し、しまった! 

     あまりの急展開に呼び方を変えるの忘れてた!

    にこ「き、ききき、気のせいじゃない? なんで私が初対面の西木野さんのこと名前で呼ばなきゃ……」

    「いや、そうじゃなくって」

    にこ「へ?」


    「初対面のあなたが、苗字にしろ名前にしろ、何で知ってるの? ってことよ」

    にこ「…………」

     あ、ほんとだ。

     え、だって凛と花陽はそんなこと一言も――って、あの子らだもんなぁ……

    にこ「あ、あはは……」

    「――――ねえ」

    にこ「……はい」

    「あなた……何者なの?」

    にこ「えー、と……」

     ああ、これが年貢の納め時ってやつなのかしら。

     ま、いっか。話しても。

     どうせ信じてもらえないだろうしね。

    183 = 1 :

    また寝落ちってた
    続きはのちほど

    184 :

    おつ

    187 :


    「ふぅん? つまり私の知ってる言葉で表すなら、あなたは未来人ってことになるのかしら」

    にこ「あはは……まぁ、そういうことになるのかしらね」

    「…………」

     場所を移して、音楽室。

     腰を落ち着けて私の話を最後まで聞いた真姫ちゃんの反応は、正直予想外だった。

     ぶっちゃけ「頭のネジ、足りてないんじゃない?」とか鼻で笑われると思ってたのに。

     今目の前にいる真姫ちゃんは。

     私の言葉を、真剣に考えてくれていた。

     あの三人娘と友達になれた時も嬉しかったけど、それとは話が違う。

     「今の私」の真実を受け入れてくれる、仲間。

     すごく、すごく――救われた気がした。

    にこ「――ありがと」

    「な、何よ急に」 

    にこ「いえ、ごめんなさい。こんな話、まさか信じてもらえるなんて思ってなかったから」
     
     ちょっと涙目になった私の言葉を聞いて。

    「ばかね、あなた」

     真姫ちゃんは、からかうように笑った。



    「そんな話信じるわけないじゃない」



    にこ「ちょっとおおおぉぉぉぉぉおおおおお!?」

    188 = 1 :


    「目が覚めたら過去にいました? そんなのありえるわけないじゃない」

    にこ「はぁ!? さっきまでのいい雰囲気なんだったわけ!?」

    「頭のネジ足りてないんじゃない? あなた」

    にこ「予想通りの反応ありがとうございますぅ!」

    「あーもう、やかましいわね」

     いらだちを隠そうともしない真姫ちゃん。

     え、なんで私が怒られてるの?

    「常識で考えなさいよ、常識で。あなたそもそもそんな話信じてもらえると思ったわけ?」

    にこ「ぐ、ぐぬぬ……」

     はい、絶対信じてもらえないと思ってました。

    「ほら見なさいよ。自分でもわかってる答えが返ってきたのに騒がないでもらえる?」

    にこ「で、でも! じゃああんたはご丁寧になにを考え込んでたわけ!?」

     そもそも勘違いの原因はそこだ。

     紛らわしいことしてる真姫ちゃんにだって責任はあるはずだ、うん。

    189 = 1 :


    「……信じては、ないの」

     だけどね、と。

     迷うような表情を見せた後、真姫ちゃんはグランドピアノへと向かう。

     ぴぃん、と空気が張り詰めたような錯覚。

     そんな緊張感を振り払うように、真姫ちゃんの指は鍵盤の上を滑り始めた。

     果たして、流れ出したメロディは。

    にこ「――――!」

    「――――」

     それを察した私と、私が察したことを察した真姫ちゃん。

     一瞬のうちに視線が交わり、互いの意図を読み合う――なんてことはできなかったけど。

     私の体は、自然と反応していた。

    190 = 1 :


     
     I say...

     Hey,hey,hey,START:DASH!!

     Hey,hey,hey,START:DASH!!


     歌えないはずがなかった。

     それは、私たち九人が初めて講堂を一杯にした曲。

     μ'sのはじまりの歌。


    にこ「――ふぅ」

     ピアノの伴奏は、私が一番のサビを歌い終えたところで止まる。

     額にじんわり浮かんだ汗をぬぐうと、真っすぐにこちらを見つめる真姫ちゃんと視線がぶつかる。

    「信じては、ないの。だけどね、そんなの関係ないってわかった」

    「今の曲は、歌詞なんてワンフレーズもついてないメロディだけの曲」

    「でもあなたは、それを当然のように歌った」

    「その歌詞は、そうであるのが当然のようにぴったりだった」

    「あなたが未来人であることを、私がどれだけ信じようとしなくても、関係ない」

    「この事実は――捻じ曲げられないもの」

    191 = 1 :


    にこ「真姫ちゃん……」

    「μ's、だっけ? さっきのあなたの話に出てきた、私も所属してたアイドルグループって」

    にこ「え? ええ、そうだけど……ひょっとして!」

    「勘違いしないで」

     ぱぁっと輝いた私の言葉を、真姫ちゃんがぴしゃりと遮る。

    「別に信じたわけじゃないんだから、そんなグループに私が入る義理はないわ」

    にこ「いや、義理とかじゃなくて」

    「……ごめんなさい。変なごまかし方しちゃったわね」

    「私は、友達も作らないし、部活もやらない」

    「そう、決めてるの」

    「だから……μ'sには、入れない」

    にこ「なに、それ……」

     真姫ちゃんの告げる言葉は、どれも絶望的だった。

     真姫ちゃんがそんな信念を持っていたなんて話、聞いたことがない。

     また――変わってしまった。

    192 = 1 :


    「ちょっと、そんなに落ち込まないでよ」

    にこ「別に、落ち込んでなんか……」

    「いや、強がってるのばればれだし……」

    にこ「…………」

    「――あぁもう! あなたがそんなじゃ本題に入れないじゃない!」

    にこ「……本題?」

     情け無用の死刑宣告をした上で、この子はどんな本題に入ろうってつもりなの?

    「その、μ'sでは私が作曲してたんでしょ?」

    にこ「そう、だけど……」

    「作詞してた海未って人がどんな人なのか知らないけど……少なくともあなたはどんな歌詞になるのか知ってる」

    「つまり、あなたが作詞できるってことよね?」

    にこ「…………?」

     えっと。

     この子、何が言いたいの?

    「……もう、察し悪いわね!」

     しびれを切らしたのか、腰を持ち上げ私に歩み寄る真姫ちゃん。

    「μ'sに入るのは、その、難しいかもしれないけど……楽曲提供くらいはしてあげるって言ってるの!」

    193 = 1 :


    にこ「…………」

     ガッキョクテイキョウ。

     がっきょくていきょう。

     ――楽曲提供?

    にこ「それって!」

     再び差した光明にすがりつく私を、今度は誰も否定しない。

     それはつまり。

     真姫ちゃんがμ'sとのつながりを残すということ。

     今はまだ入るつもりがなくとも。

     可能性は――残る。

    にこ「だ、だけど、なんで?」

     妙なところで冷静になる私。

     だけど気になったのだからしょうがない。

     友達も作らない、部活にも入らない。

     他人を拒もうとする真姫ちゃんが、それでもこの提案をするメリットが、見当たらない。

    194 = 1 :


    「……さっきも言った通り。悔しかったのよ」

    にこ「へ?」

    「私がいくら考えても思いつかなかったフレーズを、あなたがぽんと放ってきたことが、悔しかった」

    「そう。悔しくなるくらい――『曲が完成した』って思えた」

    「その感覚を、もっともっと味わいたいって思った」

    「私のメロディに、もっともっとあなたの歌詞を乗せてもらいたい――それじゃ、だめかしら」

     まあ、あなたが考えた歌詞じゃないみたいだけど。

     そっぽを向いた真姫ちゃんの頬は、ほんのり朱に染まっていて。

     それが照れ隠しだなんてことくらい、私にだってわかる。

    にこ「だめなわけないでしょ。ていうか、むしろこっちがお願いしたいくらいだし」

    「矢澤先輩……」

    にこ「にこでいいわ」

    「え?」

    にこ「今さら真姫ちゃんに先輩扱いされてもくすぐったいのよね」

    にこ「だから、にこでいいわ」

    「え、えっと……にこ、ちゃん?」

    にこ「んふふー」

    「ちょっと、なに笑ってるのよ!」

    にこ「別にー?」

    「もう、意味わかんない!」



     ぷんぷんしてる真姫ちゃんを見て。

     ぷいってしてる真姫ちゃんをみて

     私のよく知ってる、真姫ちゃんの横顔を見て。

    にこ「――――」

     いつか九人は揃うんだろうなって、思えた。

    195 = 1 :

    ここまで
    次はまたそのうち

    196 :

    乙だよ

    198 :


    スタダは卑怯

    199 :


    にこ・凛「ライブ?」

    花陽「はい、ライブです」

    「っていうかなんでにこ先輩が普通にいるにゃ? ここ一年生の教室なのに」

    にこ「いーじゃないのよ別に、部の一年生と一緒にお昼食べるくらい」

    「凛たちは別にいいけど……」

    にこ「……なによ、憐れんだ目で私を見るのはやめなさい」

    「ほら、私のからあげあげるから元気出すにゃ」

    にこ「同情すなー!」

    花陽「あの、話進めてもいいですか……」

    200 = 1 :


    花陽「アイドル研究部も私と凛ちゃんが加わり三人となりました」

    花陽「これは言わずと知れたかの有名スクールアイドルA-RISEと同じ人数です」

    花陽「つまり! これだけ揃えばA-RISEと同じパフォーマンスだって可能ということです!」

    にこ「いや、それは盛りすぎだと思うけど……だけど」

     揃えば、ねぇ。

     私の感覚としては「まだ三人」といったところ。

     目標の三分の一、真姫ちゃんを入れても半分にも満たない。

     本来真っ先に考えるべきである「アイドル活動」について全く考えてなかったのもそれが理由である。

     だけど……九人揃うまでなにもしません、ってわけにはいかないもんねぇ……


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