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元スレ魔王「お前、実は弱いだろ?」勇者「……」
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今日はここまでです。三月はちょっと投稿のペースが落ちてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします。
# 翌日
僧侶「わあ、大きな船ね! 数学者さんって一体何者なのかしら!」
勇者「そりゃあ、学者なんじゃないか?」
僧侶「そういうことじゃなくって!」
勇者「ははは! わかってるよ。
でも学園都市の大学の総長とも知り合いみたいだし、きっとその世界では権威のある人なんじゃないかな?」
僧侶「へえ。道理で数学者さんのことをすっかり信頼してるってわけなのね!」
勇者「え? 別にキャリアがすごいから信頼しているってわけではないんだよ。
数学者さんは本当にすごい人だよ。
それに魔王と張り合うには僕自身もっと色々なことを学ばないといけないんだって思い知らされたんだ。
生半可な覚悟では魔王は倒せない」
そこへ、甲板から声が掛かった。
船長「勇者さんと僧侶さんですか? 今お迎えに上がりますね!」
勇者「はい! よろしくお願いします!」
# 船
勇者「船長さんに行先を知らせてきたよ。三日もあれば着くだろうってさ!」
僧侶「ふふ。私、実は船に乗るのって初めてなんだ!」
勇者「ははは。でも、これからうんざりするくらい船に乗ることになると思うよ」
僧侶「私は大好きな物なら一ヶ月晩御飯が同じでも平気よ!」
勇者「うん? その喩えはなんかおかしいような……」
僧侶「良いの!
そう言えば、勇者はどうしてアジトの場所を知ってるの?」
勇者「ああ、話してなかったかな。
前回僕は彼らの船に乗り込んでアジトまで行ったんだ。
それに手紙のやり取りもしたことがあるから住所も勿論知ってるよ」
僧侶「手紙ですって!」
勇者「うん。彼らは本当に悪い人たちというわけではなかったよ。
魔王が力を取り戻すにしたがって、滅んでいった町や村があることは僧侶も知っているだろ?」
僧侶「ええ。
十年前に魔王の封印が解けてから、魔物に襲われたって町はたくさんあるもの」
勇者「これは僕の推測なんだけどね、人さらいをするようになった人のほとんどは
魔物に住んでいる町を襲われた人たちなんじゃないかって思うんだ。
彼らも今していることには後ろめたさを感じているはずだよ。
それだから僕は前回彼らと和解してさらわれた人たちを解放することができたと思う」
僧侶「アジトに着いたらどうするつもりなの?」
勇者「僕に考えがあるんだ。
彼らが直ちに僕らに危害を加えるということはないと思う。
だから僧侶も、できればぎりぎりまで攻撃するような素振りは見せないでほしい」
僧侶「わかったわ……。でも――」
勇者「わかってるよ。僕の体力のことだろう?
これでも前は魔王の前まで行けたんだから、心配はいらないよ!」
# 三日後
船長「勇者さん、離島まではもうすぐですよ」
勇者「そうですか! では、早速上陸しましょう!」
船長「それがこの辺りは岩礁が多いので、夜の上陸はできないんですよ」
勇者「そうですか……では、いかだのようなものはありませんか?」
船長「救命用のものがありますが……どうなさるおつもりですか?」
勇者「ここからは僕たちだけで行こうと思います。
いずれにせよ、この船で上陸したのでは最悪の場合船長さんたちにも危害が及びかねませんし」
船長「そうですか。承知しました。どうか、くれぐれもお気を付けて」
勇者「はい。どうもお世話になりました。
僧侶、行こう!」
僧侶「うん。
どうもありがとうございました!」
#
勇者「僧侶は漕がなくても良いから、島の方でおかしな動きはないか見ていてくれないか?」
僧侶「うん……でも、一人じゃ大変でしょ?」
勇者「ははは! 体力は無くなっても腕力はしっかりあるんだぞ。
それに、もし腕が太くなっちゃったら着たい服も着られなくなるだろ?」
僧侶「え?」
勇者「ほらほら、こっちじゃなくてちゃんと前を見てね」
僧侶「う、うん」
…………
…………
勇者はアジトからやや離れた位置にある磯に漕ぎ着けた。
勇者「ここからは本当に気を付けて行こう。いいね?」
勇者は僧侶の手を握った。
僧侶「うん!」
…………
僧侶「真夜中だからかしら? 表には全然人がいないわね」
勇者「小さな島だから外に出てまで警備をする必要はないんだろうね。
それに彼らも一応は船乗りだ。夜は早いんじゃないかな」
僧侶「それもそうね」
勇者「アジトの前にも誰もいないね。
僕はここのリーダーと話がしたいんだ。
よし、行こう!」
「ひえええ!」
僧侶「ゆ、勇者、見付かっちゃったみたいよ!」
勇者「これくらい想定済みさ。
それにあの人はすごく気の小さい人なんだ。慌てることはないよ。
策も練ってある」
乙
ところで>>289の世界線のループを許容するような宇宙解も存在するってのも実際の数学と関係してるの?
ところで>>289の世界線のループを許容するような宇宙解も存在するってのも実際の数学と関係してるの?
#
「お、お前たち、ど、どこから来た!」
勇者「そんなことどうでも良いだろう? 僕たちはボスさんに用があるんだ」
「そ、そうはいかねえぜ」
男は腰元からナイフを取り出した。
勇者「よしてくれないか。僕たちに敵意はない」
勇者は両手を上げてそれを示す。僧侶もそれに倣った。
勇者「それに殺しても良いのかな?
僕たちはアジトの場所を知っていたんだよ」
「う、うるせえ! 二度と口が利けねえようにしてやらあ!」
男はナイフを握る手に力を込めた。
僧侶「勇者! どうするの!」
勇者「僕たちを殺せば、お前も死ぬ」
「な、何を言いやがる!」
勇者「だからさっきも言っただろう?
僕たちはアジトの場所を知っていた。
そんな人物を独断で始末すれば、当然罰せられる。
これほど重大なミスならば死罪も必至だろう」
「そ、そうなのか……?」
勇者「だが気にすることはないよ。必要とあらば僕たちは縄にでも縛られよう」
「くそ…………付いてこい! ボスが起きるまで牢屋にいろ!」
勇者「ははは。話の分かる人で助かったよ」
# アジト――牢屋
僧侶「ちょっと、勇者! 捕まっちゃったじゃないの!」
勇者「こっちの方が却って都合が良いんだよ」
僧侶「どういうことよ!」
勇者「僕にとっては不意に攻撃を受ける可能性の低い今の状態というのは願ったりかなったりなのさ。
それに大丈夫。ボスさんは必ずやってくる」
「何喋ってんだ。うるせえぞ!」
勇者「檻の前で見張ってないで寝てくれば良いじゃないか。
それとも心配なのか?」
「ば……だ、黙れって!」
「なんの騒ぎだ」
「ぼ、ボス! お騒がせしてすんません!」
ボス「だからなんの騒ぎなんだ?」
「は、はい。アジトの前に怪しい奴らがいたんで捕まえておきました!」
ボス「ほう。よくやったな。お前には後で金貨をくれてやろう」
「き、金貨ですか! どうもありがとうございます!」
ボス「明日も早いからな。お前はもう寝てて良いぞ」
「はい! お先に失礼します!」
男は欣喜雀躍して寝床へと走っていった。
ボス「それで、何しに来た。まさかわざわざ捕まりに来たわけじゃないんだろ?」
勇者「僕たちがなぜここの場所を知っていたのかは気にならないんですか?」
ボス「聞かれたことに答えろ」
勇者「ボスさんとお話をしに来たんです」
ボス「ふざけるな!」
勇者(まずはなんでも良いからこっちに関心を持ってもらわなくちゃ)
僧侶「私たちは大真面目ですよ!
ねえ、勇者」
ボス「勇者だ? まさかお前、魔物とつるんで町を荒らし回ってるって噂の勇者か?」
僧侶「ひ、ひどい。誰がそんなことを……」
勇者「ああ、そうですとも。僕がその勇者ですよ」
ボス「すると隣にいる女は魔物か」
僧侶「そんなわけないでしょ! 私も人間よ」
ボス「で、なんで魔物なんかとつるんでるんだ」
勇者(よし)
勇者「平和の為です」
ボス「おい! 馬鹿も休み休み言えよ」
勇者「ですから、僕たちはいたって真面目ですよ。
ここにいる人の多くはかつて魔物に町を襲われた人たちなのではありませんか?」
ボス「だったらなんだってんだよ」
勇者「ボスさんも、その一人だったのでは?」
ボス「な……俺のことは関係ねえ。さっさと質問に答えろ!
魚の餌にされてえのか!」
勇者(やはりそうだったか)
勇者「だから平和の為ですよ。
ここ数年で魔物はどんどん凶暴になってきています。
これは十年前に魔王の封印が解けた為だと言われていますが、
凶暴化しているのは果たして魔物だけなんでしょうか」
ボス「何が言いたい」
勇者「人間も凶暴になってきているとは思いませんか」
ボス「…………。
俺たちが魔王の影響でこんなことをしてるとでも言いてえのかよ」
勇者「いえ、これはそんな一元的な問題ではありません。
ですが悔しくありませんか?
魔王によって故郷を奪われ、魔王によって悪事を働き、魔王によって身を滅ぼす」
ボス「そんなの全部お前の予想じゃねえかよ!」
勇者「ではボスさんの中に確かなものはあるんですか!」
ボス「…………」
勇者「もしも今この瞬間に感じるものがあるのだとすれば、それを――」
ボス「うるせえ! 魔物の肩を持つ奴の話なんか聞かねえよ!」
僧侶はあまりの気迫に息を呑んだ。
勇者(このまま本心を聞き出せないかな)
勇者「魔物の中にも悪に染まりきっていない者がいて、
人間の中にも甚だ悪しき者がいるのだとすれば、
それでもなおこの二者を分かつものなどあるのでしょうか。
実はそこにそれほど違いはないのかもしれません」
ボス「…………」
勇者「僕は探しているんです。確かなものを。確かな正義を」
ボス「なんだ。お前も結局は他の奴らと一緒じゃねえか。
俺らに奴隷狩りをやめろって言うんだろ!」
勇者「そこまでは要求しません。
ただ、夏が終わるまで待ってくれませんか?
僕たちが魔王を倒します。
ですから、それまでは人をさらってきたり売ったりするのは一旦待ってもらえませんか。
それ以降のことは全てボスさんに任せますので」
ボス「……言いたいことは、それで全てか?」
勇者「え?」
ボス「お前にはわからねえよ。
ここまで来ちまったらなあ、もう後には戻れねえんだよ!」
ボスは懐からナイフを取り出し振り上げた。
僧侶「そんなことない!」
薄暗かった牢屋が急に明るくなる。
ボス「う、眩し……」
勇者(何だこの光は……まるで太陽の雫のような……)
僧侶「戻れないんじゃない。戻ろうとすらしていないのよ、あなたは!
いつまでも逃げているばっかりで、そんなんじゃ誰にもわかってもらえなくて当然よ!」
ボス「き、貴様、知ったような口を……!」
僧侶「あなたは自分の本当の心を知るのが恐いのよ。言い訳ができなくなるのが恐いの」
ボス「違う……俺はいつでも最善を尽くそうと努力してきた!
自分のことは自分が一番わかってる!」
僧侶「じゃあ、答えて。あなたはどこから来たの」
ボス「何を言っている……?」
僧侶「あなたは何者なの」
ボス「何を…………」
僧侶「あなたはどこへ行くの」
ボス「…………」
いつしか牢屋はまた闇に包まれた。
ボス「俺は…………家に帰りたい」
僧侶「家?」
ボス「山間の小さな村さ。お袋と兄貴と三人で暮らしてた。
でも魔物に家も家族も全部奪われちまったけどな」
勇者「ボスさん……」
ボスは牢を開けた。
ボス「島から出ていってくれねえか。
お前たちがいたんじゃ眩しすぎて敵わねえや」
#
勇者は来た時と同じように舵を取り、船長のいる船へと向かっていた。
勇者「僧侶、さっきのはなんだったんだ?」
僧侶「え、さっきのって?」
勇者「いや、あのさ、僧侶が話し出したら途端に明るくなっただろ?」
僧侶「ああ、やっぱり気のせいじゃなかったのね……」
勇者「気のせいで済むレベルの光じゃなかったよ?」
僧侶「それがよくわからないのよ。ボスさんの話を聞いてたら体が熱っぽくなってきちゃって……」
勇者「感情が昂って魔力が暴発したとか?」
僧侶「うーん、そうなのかなあ。
それよりも、ボスさんをあのままにしてきて大丈夫だったのかしら。
ほら、時間を繰り返す前は不幸になってたかもしれないって言ってたじゃない」
勇者「僕にはわからないや。でもボスさんは真剣に悩んでいたよ。
だからさ、きっと、それぞれが自分自身を知った上でそれぞれ行動するっていうのが一番善いのかもしれないよ」
僧侶「そっかあ」
勇者「だから僕はボスさんがどんな選択をしても、選択という行為それ自体を否定したりはしないよ。
ただ、奴隷狩りを続けるようならやめさせようとはするだろうけどね」
僧侶「ねえ、勇者。漕ぐのやめてこっちに来て」
勇者「なんだい?」
僧侶「星がすごく綺麗」
勇者「これはすごいや。この辺りは本当に真っ暗だから――あ、流れ星!」
僧侶「ホントだ!」
僧侶(この旅が終わったら……)
勇者「何をお願いしたの?」
僧侶「ふふふ。秘密よ」
勇者「ええ? じゃあヒントだけでも!」
僧侶「うふふ。だから秘密だってば!
ほら、船長さんをこれ以上待たせるのも悪いわ。もう行きましょう!」
勇者「まあ、確かにその通りだけどさ」
僧侶「早く学園都市へ行って数学者さんとも合流したいわね!」
僧侶はご都合主義と言う奇跡のような邪道以外に方法はなかったのか
ご連絡が遅れてしまい申し訳ありません。
四月になればまた投稿する時間が得られるだろうと思っていたのですが、諸般の事情によりなかなかそれが難しい状況にあります。
ここまで読んでくださった方には大変申し訳ないのですが、このままフェイドアウトするということはまずありえませんので、
どうかその点だけご了承いただきたく存じます。
四月になればまた投稿する時間が得られるだろうと思っていたのですが、諸般の事情によりなかなかそれが難しい状況にあります。
ここまで読んでくださった方には大変申し訳ないのですが、このままフェイドアウトするということはまずありえませんので、
どうかその点だけご了承いただきたく存じます。
長らくお待たせしてしまい本当にすみませんでした。
来週末を目処にまた再開できそうです。
取り急ぎ用件のみで失礼いたします。
来週末を目処にまた再開できそうです。
取り急ぎ用件のみで失礼いたします。
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