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元スレ魔王「お前、実は弱いだろ?」勇者「……」
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# 数時間後
勇者(遂に船が動き始めたぞ)
勇者(貨物室には人がほとんど来ないみたいだ。
下手に探索するよりも、このまま隠れて目的地まで行った方が賢明だろうか。船上での衝突だけは避けたい。
幸い、飲み水の入った樽もあったし、数日なら問題ない)
勇者(無事でいてくれよ、僧侶……)
…………
…………
勇者(どれくらい時間がたったんだろう。かなり経ったように感じるけど。ここからでは昼なのか夜なのかもわからない)
勇者(……上の方から人の声がするぞ)
「よーし、あとは貨物室の荷物だな」
勇者(接岸したのか)
勇者(どうしよう…………そうだ!)
…………
…………
「これが済んだら飯だとよ。早く終わらせちまおうぜ」
「グー」
「ふはは、腹も減るわな!」
「お? おう」
「じゃあ、行くぞ。せえの!」
「俺たちって樽運んでばっかりだよな」
「この仕事は割が良いから文句はねえけどな。奴隷は金になるらしい」
「田舎のお袋にも仕送りができるし助かってるわ」
「お前はただのびびりかと思ってたけど、マザコンまで拗らせてたか」
「なんだ、お前? やんのか」
「いやいや、悪かった。俺も似たようなもんなんだ。こっちは出稼ぎってことにしてある」
「こう、仕事がなくっちゃしかたねえよなあ」
「な」
…………
「これはそっちに置くぞ」
「おう」
「ふう、お疲れさん」
「お疲れさん」
…………
…………
勇者(……)
勇者(二回目ともなれば少しは慣れるかと思ったけど、心臓がばくばくだ。さっきお腹が鳴った時は死ぬかと思った)
勇者(人がいる気配は……ないな)
勇者は姿勢を整えると、おもむろに樽の蓋を押し開けた。
勇者(うわ、眩しい! 何日ぶりの陽の光だろう。視界がぼやけて全然見えない!)
勇者(もう樽の中なんてこれっきりごめんだね)
勇者(ここが奴らのアジトなんだろうか。ここは物置かな?)
勇者(何か食べ物があれば良いんだけどなあ)
勇者(光に慣れてきたら、捕まった人たちを助けに行くぞ!)
勇者(僧侶、無事でいてくれ……)
…………
勇者(保管されていたパンと水のお蔭で、体力も戻ってきた)
勇者(目はまだあまり慣れてこないけど……行こう!)
# アジト
勇者(人に見付かるのだけは避けたいな。ここは敵の本拠地なわけだし)
勇者(樽の中からの感じだと、ここは建物の結構奥の方みたいだったけど)
勇者(捕らえられた人たちがいたとすればどこだろう)
「おい、お前そこで何してる」
勇者「う……」
勇者(こうなったら、正面突破だ!)
勇者「ぼ、僕は捕まった人たちを助けに来たんだ!」
勇者は声の主の方へ振り返りながらそう言った。
「な、何だお前、その血は……。ま、まさか、門番のあいつを倒してここまで来たのか……?」
勇者「何?」
勇者はようやく慣れてきた目で確認してみると、全身が血まみれであることに気が付いた。
勇者(そうか、樽の臭いの正体は……)
「ひえええ」
勇者に声を掛けた男は奇声を発しながら逃げて行った。
勇者(なんとか、なった……のか? 相手がびびりな人で助かった)
勇者(急がなくちゃ!)
「何があった!?」
勇者(まずい! 今の叫び声に反応して人が……)
「侵入者だ! 捕らえろ!」
勇者は遮二無二走り出した。
しかし、広間に出たところでナイフを手にした男たちに囲まれてしまった。
「こいつも捕まえて売り飛ばしちまおうぜ」
「へへ、高く売れそうだな」
そこに他の男より一回りも大きな男が入ってきた。さるぐつわを噛ませた女を左手に抱えて。
勇者「僧侶!」
僧侶「んん! んんん!」
「ボス、こいつをどう致しましょうか」
ボスと呼ばれた大男はそれには応えずに言った。
ボス「なるほど、お前が勇者か」
勇者「なんで僕のことを!」
ボス「お前はこっち世界じゃちと有名でね。
『勇者は自ら手を下すまでもなく魔物を打ち負かす』
そんな噂まで立ってるくらいさ」
ボスは右手に握ったナイフを僧侶の頬に当てた。
勇者「おい! やめろ! その子を放せ!」
勇者は今にも襲い掛かりそうな様子だ。
ボス「なら、大人しくしていろ」
勇者「う……」
ボス「そのまま縄で縛られろ」
ボス「少しでも怪しい素振りを見せれば、この女の命はないものと思え」
周りにいた男たちが勇者を縛り付ける。
勇者「僕のことは良いから、その子には手を出すな!」
僧侶が悲しみに満ちた声を上げた。
ボス「俺はね、そういう薄っぺらい自己犠牲だとかが大嫌いなんだよ!」
ボスは僧侶の髪を掴んで立たせ、その頭めがけてナイフを振り下ろした。
勇者「や、やめろお!」
僧侶はその場に倒れた。
ボスの左手には、僧侶の大量の髪の毛が握られていた。
ボス「次、気に障るようなことを言ったら、髪ではなく首がなくなると思っておけ」
勇者「く……一体何が望みなんだ」
ボス「望みねえ、俺たちは金さえあればそれで良いんだよ」
勇者「その金で何をするって言うんだ?」
ボス「別荘でも買って毎日ばか騒ぎして過ごすさ」
勇者「……そいつは無理だな」
ボス「何!」
勇者「こんなことを続けて仮に大金を手にしたところで、
その頃にはお前は今にも増して多くの人から恨みを買うことになっているだろう。
違うか?」
ボス「そんなの知ったことか。人に恨まれるのが怖くて生きてられっかよ!」
勇者「本当にそうか?」
ボス「何を……」
勇者「そうなれば、お前は裏切りや暗殺の恐怖から仲間にすら猜疑の目を向け、
どれだけ多くの人といようが常に孤独のうちに過ごすことになるだろう。
そんな状態で精神の安寧が得られるとでも思っているのか?
そんな状態で生きていると言えるのか?」
ボス「くそ……じゃあ、こいつらはどうなるんだよ!
こいつらの中にはな、他に働く当てもなく、ここで精一杯生きてる奴だっているんだ!
奴隷の命は大事で、こいつらはどうでも良いのかよ!」
勇者「このままではここにいる人たちも、奴隷にされた人もみな不幸になる。
それだけは避けなくてはならないのではないか?」
ボス「く……」
勇者「僕が魔王を倒す。僕が魔王を倒せば…………世界も変わる!
だから、だから――」
ボス「何が変わるって言うんだよ! 口先だけなら誰だって言えるんだ!
お前に飢えた民が救えるのか。お前に世界の絶望が癒せるのか!」
勇者「やるよ。僕はやってみせる。
だから、信じて、待っていてくれないか。
お願いだ」
ボス「…………」
勇者「…………」
ボス「『信じる』か。あまり良い思い出のない言葉だが、その目は嘘を吐いてる奴の目じゃねえな。
約束だぞ」
勇者「ありがとう……」
ボス「やれやれ。お前たち! 聞いてただろ? 悪いが今日で俺らは解散だ! これからはみんな好きにしてくれて良い」
「ボス……俺たちゃみんなボスを慕ってここまで来たんだ! どこまでもついていきますよ!」
「そうですよ、ボス。身寄りのない俺を引き取ってここまで育ててくれたのはボスなんですよ。
今更どこへも行きようがありません!」
「そうだそうだ! 俺たちには船の技術があるんだ! これからはお天道様のもとで堂々と生きてきましょうよ!」
ボス「お前たち……ありがとうな。でもその前にやらなくちゃいけないことがある」
ボスは勇者と僧侶の拘束を解いた。
ボス「お前たちはもう自由だ」
僧侶「うう、勇者……怖かったよお。でも、絶対助けに来てくれるって信じてたよ」
僧侶は勇者の胸に顔をうずめた。その瞳からは絶え間なく涙が溢れ出ていた。
勇者「怖い思いさせてごめんな……もう二度と離さないから」
# アジトの一室
勇者(あれからボスは捕らえられた人たちを解放してくれると約束してくれた)
勇者(風呂に入って全身の血を落としたらようやく落ち着いてきた)
勇者(自分では気が付かなかったけど、血のせいで相当臭っていたようだ)
扉をノックする音。
勇者「どうぞ」
僧侶「勇者……どうかな?」
僧侶の艶のある栗色の髪は、肩に掛からない程の長さで綺麗に整えられていた。
僧侶「元は床屋だったっていう人がいたからお願いしたんだけど……」
勇者「うん。可愛いよ。僧侶って短い髪型も似合うんだな」
僧侶「ありがとう……。
そ、そうよね! 弘法筆を選ばずって言うし!」
勇者「それはちょっと違うんじゃないか?」
僧侶「良いのよ。
だけど、本当にありがとう。勇者の声が聞こえてきた時、すごく嬉しかった」
勇者「はは、僕も僧侶が無事でいてくれて嬉しいよ」
僧侶「あの時の勇者って、何と言うか……うまく言えないんだけど、普段と違う感じだったなあ」
勇者「そう? 僕はもう必死だったから何が何だか……」
僧侶「それで思ったんだけどね、勇者の力って、魔物だけじゃなくて人間も説得できる力なんじゃないのかなあ?」
勇者「おすわり」
僧侶「え?」
勇者「おて」
僧侶「え? え?」
勇者「いや、人間も説得できるって言うからさ、ひょっとしたらって思って」
僧侶「もう! 私は犬じゃないんだから!」
勇者「はは、悪かったよ」
僧侶「それで、これからどうするの?」
勇者「女神の加護のこともそうなんだけど、ちょっと調べたいことがあるから学園都市へ行ってみないか?
あそこの図書館の蔵書数は世界一って話だよ。
ボスが僕たちの為に船を出してくれるって言ってたからさ。連れて行ってもらおうと思うんだ」
# アジトの外
僧侶「うわあ、ここはこんな綺麗な離島だったのね」
ボス「準備は良いかい? 学園都市までなら三日もあれば着くだろう」
勇者「ありがとう。恩に着るよ」
ボス「良いんだよ。さ、出帆だ!」
# 三日後、港
ボス「ここから学園都市までは半日も歩けば着く。お達者でな」
勇者「世話になった。約束は必ず守ってみせる」
ボス「ああ。そうだ、もし俺たちの力が必要な時はいつでも言ってくれな」
ボスは身を屈め勇者に耳打ちした。
ボス「それと、あの子を大切にな。ありゃ、お前にべた惚れだぜ」
勇者「そ、そんな――」
ボス「あばよ! お二人さん」
僧侶「ばいばいー!」
勇者「……」
…………
僧侶「行っちゃったね」
勇者「そうだね。僧侶は疲れてない?」
僧侶「平気だよ! 船のベッドはふかふかだったし!」
勇者(僕らは雑魚寝だったんだよなあ)
僧侶「それよりも勇者の方が顔色悪いわよ?」
勇者「夕べ僧侶が寝た後に起こされて、したたか飲まされてね。
いや、それは良いんだ。じゃ、行こうか!」
#
僧侶「ねえねえ、お腹空いたよお。そろそろお昼にしない?」
勇者「そうだなあ。じゃあ、あそこの木陰で少し休もうか」
…………
「ウキ……」
僧侶「あれ? 何か聞こえなかった?」
勇者「え? 何も――」
「ウキキ……」
勇者「魔物か!」
僧侶「勇者! あそこ見て!」
勇者「あれは……魔猿の子供か?」
僧侶「足を怪我して動けないみたい。ねえ、手当をしてあげましょう?」
勇者「う、うん」
勇者と僧侶は、魔猿の怪我をした箇所を消毒して止血の処置を施した。
勇者「さあ、ここに食べ物と水も置いといてやるから、これからは気を付けるんだぞ」
魔猿「ウキー」
僧侶「早く元気になると良いわね」
勇者「ああ。僕たちも昼食にしよう」
…………
僧侶「ふう、お腹いっぱあい! 眠くなってきちゃった」
勇者「おいおい、のんびりしてたら今日中に着けなくなるよ」
僧侶「そうね。行きましょっか」
魔猿「ウキー! ウキキ」
僧侶「この子も親がいないのかしら……」
勇者「人間にやられたのかもしれないね。大人の魔猿は凶暴だから……。
僧侶、行こう」
僧侶「ええ……」
魔猿「ウキ、ウキッキー」
僧侶「……」
魔猿「ウキキ」
僧侶「ねえ、勇者……」
勇者「わかったよ。怪我が治るまでは面倒見てやるか」
僧侶「流石勇者!」
勇者「どうせ、僕が何を言っても連れていくつもりだったんだろ?」
僧侶「まあね! ほらほら、のんびりしてたら日が暮れちゃうわよ!」
勇者「やれやれ」
# 学園都市
僧侶「ここが学園都市……すごい。建物がびっしり」
勇者「ああ、世界中からいろんな人が集まってくるからね。
明日はここの大学図書館へ行こうと思うんだ」
僧侶「わあ、楽しみ!」
魔猿「ウキッキ!」
勇者「すっかり僧侶に懐いちゃったね」
# 宿
僧侶「ふう、疲れたあ」
勇者「魔猿の子を抱きながら歩いてきた僕はもっとくたくただよ」
魔猿「ウキ!」
僧侶「細かいことを気にしないの! この子もだいぶ元気になってきたみたいね」
魔猿「ウキ! ウキ!」
僧侶「ふふふ。かわいい顔してる」
勇者「はあ、子守の負担が倍になったようなものだよ」
僧侶「ちょっと、どういうこと!」
勇者「ははは、僕はもう寝るよ。おやすみ」
僧侶「うん、おやすみ……」
# 深夜
勇者(なんだろう。物音で目が覚めちゃった)
勇者(……僧侶が起きてる!)
勇者(鏡台に向かって何してるんだろう)
僧侶は鏡に映る自分の髪を見て、じっと忍び泣きを堪えている。
勇者(僧侶……)
# 翌朝
僧侶「勇者ー! 起きて! 朝ですよって、あら、珍しい。今日は先に起きてたのね」
勇者「はは……。僕だってたまにはきちんと起きるんだよ。
今日は魔猿は部屋において行っても大丈夫かな」
僧侶「この子は大丈夫よ。大人しくて良い子だから」
僧侶「そうよね?」
魔猿「ウキャッキャ、ウキ!」
# 図書館
勇者「――について調べたいんですが」
司書「学外の方でいらっしゃいますか? そちらの資料でしたら地下室にあるかもしれませんね。
入館許可証を発行致しますので、一時間後にまたお越しください。
また、地下室へお出での際は、マスクとゴーグル、長靴をご用意された方が良いでしょう」
勇者「はい、どうもありがとうございます」
# 図書館前
僧侶「長靴とかって何に使うのかしら?」
勇者「うーん、何だろうね。あ、そうだ。それは僕が用意しておくから、僧侶はちょっと時間潰しててくれないかな」
僧侶「え? うん、良いわよ」
勇者「じゃあ、一時間後にここで落ち合おう!」
僧侶「う、うん」
# 商店街
勇者(マスクはこんなので良いっか)
勇者(ゴーグルは……水泳用のでも良いのかな)
勇者(長靴はこれにしよう。お、僧侶にはこっちの方が良いかな?)
勇者(よし、あとはあれを探してっと……)
# 図書館前
勇者「お待たせ!」
僧侶「五分遅刻」
勇者「まあまあ。僧侶は何してたの?」
僧侶「画廊で絵を観てたわ。見てこれ! 絵葉書も買っちゃった」
勇者「どれどれ。
……うわ、何だこれ? 四角くオレンジ色を塗りたくっただけじゃないか」
僧侶「この橙色が織りなす孤独と郷愁がわからないとは、勇者君もまだまだ三流ですねえ」
勇者「はは、僧侶だってわかってないだろ」
僧侶「ふふふ、ばれちゃった?」
勇者「さあ、入館許可証はもうできてるかな。行ってみよう」
# 図書館
司書「勇者様と僧侶様ですね。入館のご用意が整いましたので、こちらへどうぞ」
勇者「はい。あの、地下室へはどうやって行けば良いのでしょうか」
司書「これからご案内致します。地下室は普段施錠しておりますので」
…………
司書「こちらでございます。ドアをお開けになる前にマスクとゴーグル、それに長靴をお召しになった方が良いでしょう。
それでは私はこれで失礼致します。
受付におりますので、お帰りの際はお声をお掛けください」
勇者「ありがとうございました」
勇者「さ、履き替えるか。僧侶のはこれね」
僧侶「これ、ちょっと小さくない?」
勇者「僧侶は足が小さいからそれでちょうど良いだろ?」
僧侶「まあ、確かにその通りだけどさあ……」
「プー」
僧侶「え?」
「プープー」
僧侶「え? 何これ!」
勇者「子供用の長靴がそれしか売ってなくてさあ」
僧侶「だからって、音が鳴る靴を買わなくたって良いじゃない!」
「プー」
勇者「ははは! 似合ってると思うけどなあ」
僧侶「勇者のバカ!」
「プー」
勇者「マスクとゴーグルはちゃんと着けたかい?」
僧侶「うん……」
勇者「じゃあ開けるよ?」
「プー」
# 図書館の地下室
勇者「うわあ、何だこれ……」
僧侶「すごい埃ね……まるで雪みたい」
地下室には靴底の厚さ程の埃が積もっていた。
勇者「これは確かに重装備で来る必要があるね」
僧侶「それで、何について調べるんだったかしら?」
勇者「まず魔王のことだな。実際、僕たちは魔王についてほとんど知らないからね。
それから、女神の加護についても。
今のところ、僕の力は人や魔物を説得できるらしいってことしかわかってないしさ。
僕はこっちから調べるから、僧侶は向こう側から調べてくれない?」
「プー」
勇者「じゃあ頼んだよ」
# 数十分後
僧侶「あ!」
勇者「何かあったかあ? こっちは全然だよ」
僧侶「一冊それらしいのがあったわ」
勇者「どれどれ」
勇者「あれ? そう言えば、さっきから靴の音がしないねえ」
僧侶「ふふ。埃でも詰まったんじゃない? まあ、そんなことどうでも良いじゃない。
見てこれ」
勇者「へえ……すごい物があるんだね。一旦閲覧室へ行こう」
# 図書館の閲覧室
勇者「僕の曾祖父に当たる人が書いたのかな」
それはおよそ百年前の勇者の冒険の書だった。
勇者「やっぱり勇者っていうのは昔から遍歴の旅を余儀なくされていたんだね」
僧侶「ねえ、見て見て、ここ!」
異形の物が人を襲いて久し。
異形の物をして悪たらしめんところのもの最果ての島にて現れたると聞こゆ。
此のもの超越者にして実体を持たず。
蓋し唯常ならざる力を以ってのみ討たれん。
預言者の曰く、苟も其は元来世にあらざるべき力なれば此のものと共に消え失せん。
嗚呼、平和の訪れんことを。
僧侶「この『異形の物』って魔物のことじゃないかしら?」
勇者「じゃあ、『異形の物をして悪たらしめんところのもの』っていうのは魔王のことかな。
『最果ての島』はどこのことなんだろう?」
僧侶「うーん、わからないわね。書いてあることもぼんやりしてて何だか難しいし」
勇者「それに冒険の書という割には魔王に関係がありそうな記述ってここだけじゃない?
他はなんか魔物による被害とか窮状が延々と書いてあるだけだし」
僧侶「ねえ。今、世界に魔王がいるってことはこの人は魔王を倒せなかったってことよね?」
勇者「うん、おそらくね」
僧侶「ひょっとしたらこの人は魔王のもとまでは行けなかったのかもしれないわ」
勇者「なるほど。
その先の『常ならざる力』ってのはさ、女神の加護のことを意味しているんじゃないかな?
そしてそれは魔王と共に消えてしまう、と」
僧侶「うんうん、それっぽいよ!」
勇者「うーむ……図書館でわかるのはこのくらいみたいだね」
僧侶「ねえ、勇者。私、もう一つすごく重要なことに気が付いちゃった」
勇者「え、何だい?」
僧侶「もうお昼ご飯の時間ってこと!」
# 大学の食堂
勇者「いくらビュッフェ形式だからってそんなに食べられるのかあ?」
僧侶「ふふふ。さっき頭使ったらいつもよりおなかが減っちゃったの!」
勇者「そうか。もう何も言うまい」
その時、勇者の背後から声が掛かった。
「正義緩慢なりとも遂には之悪を制す」
勇者(あれ? この言葉、どこかで……)
「奇遇ですね。こんなところでまた会うなんて」
勇者「あ、港町の酒場でお会いした――」
初老の男「その様子を見ると、万事上手く行ったみたいですね」
勇者「ええ、お蔭様で人さらいをやめさせることまでできました」
初老の男「そうなんですか! 良かったらお話を伺ってみたいですね」
僧侶「そう言えば、私もまだ詳しいことを聞いてなかったわ。
ねえ、ちょうど良い機会だし聞かせてよ!」
勇者「そ、そうかな? それじゃあ、僕が酒場に行ったところから話すね――」
…………
…………
勇者「――とまあ、こんなことがあったわけなんですよ。もう一生樽になんか入りたくないですね」
初老の男「ふはは、それでは君はまるで樽の賢人だ。
君からはどこかしら不思議なものを感じますよ」
僧侶「不思議っていうか何考えてるかわかんないっていうか――」
勇者「僧侶は食べてばかりで全然聞いてなかったじゃないか」
僧侶「ふふ。心配しなくてもちゃんと聞いてたわよ」
勇者「ふーん……」
勇者「ところで、この大学へはどういった事情で来られたんですか?」
初老の男「ああ、これは失礼。私の話がまだでしたね。
今日は教え子の――と言っても君たちの倍以上は年上ですが――主催するシンポジウムがあって
お呼ばれしたわけですよ」
勇者「教え子って……大学の先生ですか!」
初老の男「そうですね。もう第一線を退いた身ではありますが」
僧侶「すごい! インテリさんだ! 何の研究をしてるんですか?」
勇者「こら、失礼だろ」
初老の男「ははは。良いんですよ。私は数学者です。
数学の中でも、一口で言えば、幾何学に類する分野が私の専門ですね」
僧侶「キカガク?」
勇者「ほら、学校で正三角形の描き方とか習っただろ?」
僧侶「そう言えば、そんな記憶もあるような……ないような……」
数学者「おっしゃる通りですね。実際にはもう少し抽象的な分野なんですがね」
僧侶「何だかよくわかんないけど、すごいってことだけはわかったわ!」
数学者「いえいえ、そんな大仰なことではありませんよ。
君たちは、どうして旅をしているんですか?」
勇者「世界に平和を取り戻す為です」
僧侶「それで魔王について調べようと思って学園都市へ来たんです!」
数学者「もしや……君は今噂になっている勇者ではありませんか?」
勇者「ええ……一応そういうことになってますね」
数学者「やはりそうでしたか! これは光栄です。
二度もお目に掛かるなんて何かの縁かもしれませんね。何かお困りの際には力になりますよ」
そう言うと数学者は勇者に自分の連絡先を書いた紙を渡した。
数学者「昼食にお付き合いくださりありがとうございました。そろそろ会議が始まりますので、私はこれで」
勇者「いえいえ、こちらこそありがとうございました!」
僧侶「さようなら!」
僧侶「さあ、私たちも魔猿ちゃんにお昼ご飯をあげなくちゃね」
# 宿屋
僧侶「数学者さんってすごく気さくな人だったわね」
勇者「うん。僕らの学校の先生もあれくらい優しい人だったら、僕は今頃勇者じゃなくて学者になってたかもしれないね」
魔猿「ウー、ウキャ!」
僧侶「ほら、自惚れるなって言ってるわよ」
勇者「ははは。そんな、まさか。
あ、そうそう。今朝長靴とかを探してた時になかなか良さそうなレストランを見付けたんだよ。今夜行ってみないかい?」
僧侶「わあ、本当? 行く行くー!」
魔猿「ウーウー、ウキッキ」
# レストラン
僧侶「へえ、勇者が選んだにしてはお洒落なお店ね!」
勇者「はは、一言余計だぞ。まあ、ほら……たまには良いかなって」
僧侶「ふふふ」
…………
…………
僧侶「ああ、美味しかった! あとはデザートね」
勇者「パンがお代わりし放題だったからって食べ過ぎだよ」
僧侶「それは間違ってるわ。あんな美味しいソースをお皿にべっとり残した勇者こそもったいないのよ」
勇者「うーん、そうなのかなあ? でも、満足してくれたようで良かった」
僧侶「うん」
勇者「……」
僧侶「……」
勇者「あ、あのさ……ちょっと渡したい物があるんだけど良いかな」
僧侶「なあに?」
勇者は小さな包みを取り出すとテーブルの上に置いた。
勇者「開けてみて」
僧侶「う、うん……」
中には月桂樹を模した銀の髪飾りが入っていた。
僧侶「……」
勇者「どう……かな? 僧侶なら似合うかなって」
僧侶「ありがとう……とっても嬉しい」
僧侶は目に涙をたたえながら独り言つように言った。
勇者「うん」
僧侶「私もね、勇者に言わなきゃいけないことがあるの……」
僧侶「出発の時、神父様が『神託があった』って言ってたわよね?」
勇者「うん、確かそんなことを言ってたと思う」
僧侶「その神託を聞いたのって私だったんだ。出発の前の日にね」
勇者「そうだったんだ。それがどうかしたの?」
僧侶「『螺旋の果て 正義の士は愛を以って悪を滅ぼす』
これがその神託だったの」
勇者「それってどういう意味なんだろう?」
僧侶「…………」
勇者「え?」
僧侶「……私にもちょっとわからない、かな」
勇者「ははは、何だ。ひどく真面目な顔してるものだから、何かとんでもないことでも言うのかと思ったよ。
神様は僧侶の味方ってことじゃないか。
大丈夫、僕らが正義を貫く限り、悪は必ず滅びるさ」
僧侶「そうよね。勇者が急に柄にもないことするものだから、動揺しちゃったみたい。へへ」
勇者「そうそう。ここでちょっと着けてみてくれないかな」
僧侶「うん、わかった」
…………
僧侶「どう? お姫様になった気分! それとも、私の美しさの前では焼け石に水かしら」
勇者「はは、その言い方はちょっとおかしいと思うけど。
とにかく、すごく綺麗だよ」
僧侶「ふふ。ありがとう。
ショートヘアも悪くないかもね」
勇者「良かった。やっぱり僧侶は笑顔が一番似合ってるよ」
# 翌朝
勇者「今日は図書館に入館許可証を返して来ようと思うんだ。僧侶も一緒に行くかい?」
僧侶「もちろん!」
魔猿「ウキーオキャ!」
僧侶「怪我もだいぶ治ってきたみたいね。魔猿ちゃんは良い子にして待っててね」
# 図書館
勇者「こういう歴史のある図書館って好きなんだよね」
僧侶「どうして?」
勇者「例えば、自分が借りた本が前に借りられたのが五十年前とかだったりするとさ、何か不思議な感じがしない?」
僧侶「ええ? ただ昔の人も借りたってだけでしょう?」
勇者「その通りなんだけどさ。ほら、何て言うか、五十年前のその人と自分がまるで時を超えて出会ったみたいな――」
僧侶「あ、あのポスター見て! 図書館の最上階で魔法についての展示があるって!」
勇者「へえ、面白そうだね」
僧侶「行ってみましょ!」
短くてすみませんが、今日はここまでです。明日は少し長めに投稿したいと思います。
# 図書館の最上階
僧侶「展示って書いてあったのに、文字ばっかり。眠くなってきちゃう……」
勇者「んー、ここは魔法の歴史についてのブースだから仕方ないかもね。
向こうに行ってみようよ! 写真とか模型があるみたいだよ」
僧侶「あ、ちょっと待って、勇者。私この賢者っていう人のこと神父様から聞いたことあるかも。
現代魔法の発展はほとんどこの人の業績によるんだとかって」
勇者「どれどれ……。
へえ、七十年前に結界の魔法を発明した人なのかあ。この大学の総長まで務めたことがあるって書いてあるよ」
「賢者についてお調べなんですか?」
勇者「あ、司書さん。こんにちは。ちょっと息抜きに展示を見ていたんです」
司書「確か魔王についての資料をお探しでしたよね」
勇者「はい」
司書「賢者がかつて勇者に魔法を伝授したということはご存知ですか?」
勇者「そんなことがあったんですか!」
司書「賢者でしたら、魔王について何か知っているかもしれませんよ。
賢者は今年で齢百二十。現役の魔法研究者なんです」
勇者「まだご存命なんですね」
司書「ここ数年は独り静謐の森で研究をしていると聞きます」
勇者「僧侶、話を聞きに行ってみようよ!」
僧侶「そうね!」
司書「ただ、賢者は極度の人間嫌いとしても有名なんです。
ですから、申し上げ難いのですが、実際にお会いできるかどうかまでは保証できませんね」
勇者「いえいえ。とにかく一旦会いに行ってみたいと思います」
司書「そうですか。静謐の森はここからそう遠くはありませんから、それも良いかもしれませんね。
大学の前の道を山に向かって道なりに進んでいくと途中に分かれ道がありますので、
そこを左手へ行けばそのまま静謐の森へと通じています。
そこまで行けば賢者の住む庵はすぐに見付かるかと思いますよ」
勇者「どうもありがとうございました!」
# 山へ向かう道
僧侶「ねえ、勇者。人間嫌いって言ってたけど、会ってもらえるかしら?」
魔猿「ウーキャ! ウーキャ!」
勇者「それは行ってみなくちゃわからないよ。というかなんで魔猿を連れてきたんだよ」
僧侶「ふふふ。だって二日も続けてお留守番なんてかわいそうよ」
魔猿「ウキャ! オーキョ!」
勇者「うーん、まあ仕方がないか」
…………
…………
勇者「僧侶! 下がって! 魔物だ!」
僧侶「うん!」
オークはいきなりこん棒を振り下ろした。
勇者はそれをすんでのところでかわす。
勇者「オークよ。賢いオークがなぜ人を襲う!」
オーク「人間は我々の敵だ。それで十分であろう」
勇者「僕たちはオークの敵ではない!
さあ、これで襲わないには十分だろう?」
オーク「何をこしゃくな。
人間は我々の森を荒らし、仲間を殺す。
恨むなら、同じ人間を恨め!」
オークは棍棒を振りかざし腕に力を込めた。
僧侶「危ない! 勇者!」
僧侶はとっさに魔法を放ちオークの動きを封じた。
オーク「か、体が……動かぬ。
く、小賢しい人間どもめ。さあ、殺すなら殺すが良い!
たとえここで果てようとも、我らが恨みまで果てることはない」
勇者「それでも、僕たちがオークを襲うことはしない」
オーク「ならばお前は何をなすというのだ」
勇者「平和だ。この世界を平和にする為に、僕たちは正義を――」
オーク「正義だと? ふははは! いかにも人間の言いそうなことを。
正義とは何なのだ。所詮は強者が欲望を満たす為の道具であろう」
勇者「違う! 正義はそんな貧弱なものではない!」
オーク「ならば何だというのか。
お前のしていることは偽善に過ぎぬ」
魔猿「ウーウー……ウキ!」
突然、僧侶の腕の中で魔猿が吠えた。
オーク「これは……魔猿の子供。それも人間に懐いている……」
勇者「その子が怪我をしているところを手当てしてあげたんだ。
わかるだろう? 人間が必ずしも魔物の敵ではないと」
オーク「ふははは、面白い。ならばお前の思うままにやってみろ。
しかし忘れるな。我々から憎しみが消えることはない。
さあ、もう行け。この腕さえ動けば、すぐにでもお前を殺すだろう」
勇者「僧侶、行こう」
勇者は僧侶の手を取り、先を急いだ。
…………
勇者「僧侶、さっきはありがとう。僧侶がいなければ僕はあの時死んでいたよ」
僧侶「ううん。そんなことないよ。勇者がいなければオークは人と話すことだってしなかったと思う」
勇者「でも僕はわからなくなってきたよ。僕みたいな弱い人間が勇者だなんて。
それに正義が何なのかもわからなくなってきた。
さっきのオークだって僧侶の魔法がなければ僕を殺すって言ってたし……」
僧侶「それがおかしいのよ。
確かに私の魔法でオークは一時的に動けなくなったんだけど、その魔法は途中で解けていたの」
勇者「え?」
僧侶「ええ、だからきっとあのオークは勇者のことをわかってくれたんだと思う。
いや、わかろうと努力してたんじゃないかな。だからあれ以上攻撃してこなかったのよ。
それが、他の誰も持っていない、勇者の力よ」
勇者「ありがとう。本当にそうだったら良いな。
それからお前もありがとう」
魔猿「ウーキャ! オーキョ!」
# 静謐の森
僧侶「静かなところね」
勇者「うん。司書さんの話だと、森に入れば賢者の住む庵はわかるってことだけど……」
僧侶「あ、魔猿ちゃん。待って! 危ないよ」
魔猿は僧侶の手を離れて駆けていった。
魔猿「ウユー。ウーキャ!」
僧侶「もう、勝手に行ったら危ないじゃない!」
そう言いながら魔猿のもとへ駆け寄った二人の前には小さな庵があった。
勇者「あ……ここかな」
僧侶「どうしてこの子にわかったのかしら」
「どちら様でございましょう」
勇者「え? だ、誰?」
「すぐ目の前でございますよ」
扉のドアノブが二人に向かって話し掛けていた。
勇者「うわ、ドアがしゃべった!」
ドア「賢者様の御手に掛かれば、ドアであろうと屋根であろうと自分の意思を持ち話すことができるのでございます」
僧侶「それでこの扉からは強い魔力を感じるのね……」
ドア「ご用件をどうぞ。賢者様はとてもお忙しくしていらっしゃるのです」
勇者「僕たちは賢者さんに魔王のことについて聞きに来たんです」
ドア「ご予約はございますか?」
勇者「いえ。僕たち初めてここに来たんです」
ドア「どなたかの推薦状はお持ちでしょうか?」
勇者「推薦状なんて持ってないですよ」
ドア「では、お引き取り願います。賢者様はとてもお忙しくしていらっしゃるのです」
勇者「そんな……。一言だけでも言伝できないでしょうか?」
ドア「お引き取り願います」
僧侶「もう、なんなのよ! ちょっとくらい良いじゃない!」
ドア「お引き取り願います」
僧侶「ドアのくせに頑固なのね!」
ドア「軟弱なドアなど何の役にも立ちません。
お引き取り願います」
僧侶「頑固な上に生意気なドアね!」
勇者「僧侶、一旦学園都市へ帰ろう。これ以上はどうしようもないよ」
# 学園都市の宿屋
勇者「どうしたものだろうか……」
僧侶「予約はできないんだから、推薦状を用意するしかないんじゃないかしら?」
勇者「そうは言ってもなあ。誰が僕らなんかを推薦してくれる?
推薦状っていうのは権威のある人が書かなきゃ意味がないんだよ」
僧侶「権威……要は偉い人よね。王様がいるじゃない!」
勇者「うーむ、そうするしかないかな。でも今から頼むとなると結構時間が掛かるかもしれないね」
勇者はふと机の上に置かれた紙きれに目が留まった。
勇者「そうだ! 賢者は昔、大学の総長だったんだよね。適任の人が身近にいるじゃないか!」
# 学園都市のカフェ
勇者「――というわけでして、お力を貸していただけないでしょうか」
数学者「そういうことでしたらお任せください。
ただ、私よりも今の総長に推薦状を書いてもらった方が効果があるでしょう。
彼とはちょっとした顔見知りなんです。私の方から彼にお願いしておきますよ」
勇者「ああ、ありがとうございます! もう数学者さんか、僕たちの国の王に頼むしかないと思ってたんです」
数学者「賢者は王族や貴族を毛嫌いしているという話もありますから、頼っていただけて良かったですよ。
私からも一つ、お二人に頼みごとをしても良いでしょうか?」
勇者「ええ、僕たちにできることであれば喜んで!」
数学者「私を旅の仲間に入れた頂きたいんです」
勇者「え? そんなことは……。数学者さんを危険に巻き込むことは――」
僧侶「良いじゃない、勇者! いざとなれば私の魔法だってあるんだから!」
数学者「私も、旅の危険は承知しているつもりです。
ですがお二人を見ていると、年甲斐もなく胸の内から沸き立ってくるものを感じます。
私も平和の為に『正義』なるものについて一緒に考えてみたいんです」
勇者「そこまでお考えだったんですね。
わかりました、数学者さん。よろしくお願いします!」
僧侶「ふふ。私もよろしくお願いします! 数学はてんで駄目だけど」
数学者「ははは。どうもありがとうございます。
推薦状は明日の昼までには用意できるしょうから、それから出発ということにしませんか」
勇者「はい!」
# 翌日、学園都市入口
数学者「予定通り、現学長の推薦状を取り付けることができました。
さしもの賢者もこればかりは無下にできないでしょう!」
勇者「ありがとうございます。賢者には聞きたいことがたくさんあるんです!」
僧侶「みなさん、準備はよろしいですか? ではでは……」
僧侶はもったい付けるように、しかしとてもほがらかに言い放った。
僧侶「勇者一行の出発!」
僧侶の声を受け、勇者は喜び勇んで歩き出した。
そして仲間を振り返って言う。
勇者「どうした? みんな。早く行こう!」
数学者「魔物が勇者を避けていく……勇者の力がこれ程に強いとは!」
魔猿「ウキキ!」
僧侶「ふふふ」
かくして後に伝説となる三人と一匹の旅が、ここに始まった!
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