元スレ加蓮「私、たぶん死ぬの」
SS+覧 / PC版 /みんなの評価 : ☆
101 :
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-数週間後-
ガチャ
P 「ただいまー」
加蓮「おかえりなさい」
P 「市立図書館なんて、久々に行ったよ」
P 「本なら、また文香に借りればよかったんじゃないか?」
加蓮「だって、何冊も借りたら悪いじゃない」
加蓮「前の本だってまだ全部読みきってないのに」
P 「文香なら喜んで貸してくれそうな気もするけどな」
加蓮「まぁいいじゃない。それより」
加蓮「本、あった?」
102 = 101 :
P 「あったよ。ほら」ゴソ
加蓮「ん、ありがと」
加蓮「...あれ?」
P 「?」
加蓮「あっ、ううん。なんでもないの」
P 「どうした?頼まれてた本、それで良かったんだよな」
P 「ピーターラビットの」
103 = 101 :
加蓮「えっとね...」
加蓮「これ、確かにピーターラビットのシリーズだけど」
加蓮「私が借りてきて欲しかったのは別のなの」
P 「え、そうだったか?」
加蓮「これは”こわいわるいうさぎのおはなし”」
加蓮「私がお願いしたのは”フロプシーのこどもたち”だったんだ」
P 「で、でも、それでも良いんだろ?」
加蓮「うーんとね....」
P 「ちょっと待て、確かここにメモが...」クシャ
加蓮「あっ...」
104 = 101 :
P (どれどれ...)カサ
P 「げっ」
P (”こわいわるいうさぎのおはなし・・・×”)
加蓮「あちゃー...」
P 「良くなかったみたいだな...すまん」
P 「もう一回行って、借りなおしてくるよ」
加蓮「わっ。いいのいいの」
加蓮「今度また借りてきてくれればいいから」
P 「いや、いいんだ。間違えたのは俺だし」
105 = 101 :
加蓮「で、でも、今日はすごく寒いし」
加蓮「それに、今から出かけたら、帰る頃には日が暮れて...」
P 「大丈夫だよ」
P 「すぐ帰ってくるから」
加蓮「ほんとに行く気なの?」
P 「ああ、もちろん」
加蓮「...もう、病気が悪化しても知らないよ?私は止めたからね」
P 「わかってるよ。じゃ、行ってくる」
加蓮「......がんこなんだから」
ガチャ
106 = 101 :
-外-
P 「うぅ...さむっ」ブル
P (やべ、もう東の空が暗くなりかかってる)
P 「まいったな...。急がないと図書館が閉まるぞ」
P (加蓮にああ言った手前、もう失敗は出来ないし)
P 「...頑張るしかないか」
P 「はぁ...、こんなことならマイカー買っとくんだった」タタタタ
P (なんとなく身体が重い。具合が良くないんだろう)
P (これは来週の定期診断、もしかしたらひどい結果が出るかもしれないな)
P (ま、いいけど)
107 :
P (それよりも、この間から加蓮が時々見せるあの瞳)
P (瞳の中で黒い水がゆっくりと渦巻いているよな)
P (吸い込まれそうで、それでいてひどく切ないような、あの目...)
P (どうして、加蓮はあんな目をするんだろう)
109 :
おつ
当方三重県民、あそこであんなことがあって、いまだに衝撃が冷めぬところ
110 = 107 :
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-病院-
P 「結局、夕食の時間までに戻れなかった...」グゥー
P (ま、目的の本は借りられたから良しとするか...)
P (さっそく加蓮に渡さないと)
コンコン
P 「入るぞ」ガチャ
P (...あれ)
P (部屋がまっくらだ。電気、つけてないのか)
P 「加蓮?」
加蓮「.........」
111 = 107 :
P (窓からかすかに射しこむ外灯の光に)
P (加蓮の輪郭をうっすらと浮かびあがっている)
P 「明かり、つけないのか?どうしたんだよ?」
加蓮「............」
P 「............」
P (加蓮、またあの建物をじっと見つめて...)
112 = 107 :
P 「.........」
テクテク
P (本は...ベッドの上に置いとけばいいだろ)ポフ
P (さてと。俺はパイプ椅子に座って)
P (待つとするか)ギシッ
113 = 107 :
加蓮「.........」
P (みじろぎひとつしない)
P (なにも言わないし、こっちを振り向きもしない)
P (ただじっと、加蓮は外を眺めている)
P (...まるでこの部屋だけ、時間がゆっくり流れているみたいだ)
P (こんな状況にも、もう慣れちゃったな)
P (一日に一度くらい、こんな時間がある)
P (なんの前触れもなく、急に加蓮は黙り込んでしまう)
P (こうなったら、こっちが何を言ってもダメだ)
P (話しかけても加蓮は無視するし、よくても生返事がせいぜい)
P (こんな時、俺は、加蓮が遠くへと離れてしまったように思ってしまう)
P (俺の手は、もう加蓮には届かないんじゃないかと)
114 = 107 :
加蓮「.........」
P 「.........」
P (加蓮。今、なにを考えているんだ?)
P (なぜあのコンサートホールを見つめているんだ?)
P (また、ステージの上に立ちたいのか?)
P (それとも..)
115 = 107 :
加蓮「.........」
P 「.........」
P (加蓮の背中...)
P (.........痩せたな)
P (ただでさえ、ほっそりとした体系だったんだ)
P (今の加蓮は、細すぎる。哀しさを感じさせるほどだ)
116 = 107 :
P (加蓮の病気のことを、俺は知らない)
P (本人に聞くわけにもいかないし)
P (それに、正直言って)
P (聞くのが、怖い)
グウゥゥゥー
P 「あ」
117 = 107 :
P (腹の音が...。夕食、食べてないからなぁ)
加蓮「......。」クルリ
P 「あ、加蓮...。その、ごめん」
P 「って、なに謝ってるんだろうな。はは...」
加蓮「.........」
P (逆光になって、加蓮の表情が見えない)
P (もしかして怒らせたか?)
加蓮「それ、食べていいよ」
P 「え?」
118 = 107 :
加蓮「食べて」スッ
P 「あ、夕食...!」
P 「どうしたんだ、これ」
加蓮「プロデューサーさんの分。とっておいたの」
P 「俺のって......。わざわざ持ってきてくれたのか?」
加蓮「......」コクン
P (なんてことだ)
P (加蓮のやつ、看護婦さんに俺の夕食が回収されないように)
P (食事を持ってきておいてくれたんだ)
119 = 107 :
P 「..........」
加蓮「?」
加蓮「食べないの?」
P 「あ、いや、食べるよ!食べる」
P (ちょっと感動して呆けてしまった)
加蓮「ここ。ベッドのはじ、使って良いよ」スッ
加蓮「明かりもつけていいから」
P 「あ、ありがと」
P 「じゃあ、いただきます」
加蓮「ふふ、どうぞ」
120 = 107 :
P 「......」 ガツガツ
P (腹が減ってたせいかな)
P (すっげーうまい)
P (いや、もしかしたら、別の理由かもしれないけど)ガツガツ
加蓮「プロデューサーさんってばそんなにがっついて、犬みたい」クス
P 「犬って」チラ
P (なんでだろう。悪い気はしないな)
121 = 107 :
加蓮「ふふ...」ニコニコ
P (加蓮が嬉しそうに笑ってる)
P (笑っているときの加蓮は、天使のように綺麗だ)
P (ずっとこんな風に笑ってくれればいいのにな...)ジッ
加蓮「...?」
加蓮「どうしたの?」
P 「...すっげーうまい」
加蓮「病院のごはんがおいしいなんて」
加蓮「かわってるね、プロデューサーさん」
P 「い、いや、ほんとうまいって」
122 = 107 :
加蓮「よしよし、いっぱいたべなさい」ナデ
P (犬みたいに撫でられた)
P (でも、やっぱり悪い気はしない)
P (それどころか、髪を滑ってゆく加蓮の手の感触やその笑顔が、やたらと嬉しい)
P 「あー、うまい。ほんとうまい」ガツガツ
加蓮「たんとおたべ」ニコニコ
P (恥ずかしいから、言わないけど)ガツガツ
124 :
既につらい
125 :
ここまではまだなぞってるだけだから希望はある
126 :
肝炎で入院中は外出できないから退院してるはず
プロデューサーの分の夕食はどこから持ってきたの?
127 :
肝炎はぐぐったら十数日で外出許可が出ることもあるみたい
つまりご飯はプロデューサーの病室に配膳されたものを持ってきたんだろう
128 :
加蓮は立って動けるんだろうか
129 :
これって元ネタあるの?
130 :
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コンコン
加蓮「プロデューサーさん、いる?」ガチャ
P 「お。珍しいな、加蓮の方から俺の部屋に来るなんて」
加蓮「ちょっとね。...あ」
加蓮「その本、読んでるんだ」
P 「ああ。さすが文香の選んだ本だけあって面白いよ」
P 「なんていうか、ちょっと変わった人だよな」
P 「芥川さん」
131 = 130 :
加蓮「ふーん...」テクテク
P 「それで、なにか用でもあるのか?」
加蓮「.......」
加蓮「えいっ」パタン
P 「あーっ!なにするんだよ加蓮!」
P 「本をいきなり閉じたら、どこまで読んだかわからなくなっちゃうだろ!」
加蓮「んふふ」
P 「んふふじゃなくて!」
132 :
>>129
半分の月がのぼる空
133 = 130 :
加蓮「ごめんね、真剣に読んでるみたいだったから、つい」
P 「ついって...まったく。完全に油断してたよ」
P (今度からはしおりを用意しておこう)
加蓮「それよりさ」
加蓮「ね、プロデューサーさん。ちょっと付き合ってくれない?」
P 「え?」
加蓮「あのね、行きたいところがあるの」
134 = 130 :
P 「ずいぶん唐突だな」
P (病院なんて特にやることもないし、構わないけど...)
P 「.........」
P (どうしたんだ?今日の加蓮...)
P (はしゃいでいる...いや、違うな)
P (無理に、はしゃいでいるフリをしている)
P (そんな感じだ)
135 = 129 :
>>132
サンクス
136 = 130 :
加蓮「何してるの、プロデューサーさん。早くいこう?」
P 「それはいいけど...どこに行くんだ?」
加蓮「ふふ。ついてきたらわかるよ」
P 「...院内だよな?」
P 「というか、さっき奈緒が来てなかったか?」
P 「いいのか?放っておいたらかわいそうだろ」
加蓮「もうっ、細かいことはいいじゃない!」
加蓮「ほら、いいからいこうよ。プロデューサーさん」グイグイ
P 「どうしたんだ加蓮?なにかあったのか?」
加蓮「........」グイグイ
P 「ちょっ、わかった!行く、すぐ行くから!」
P (しょうがない。どのみち俺には)
P (加蓮を放り出すなんて、できるわけ無いんだ)
137 = 130 :
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テクテク ピタッ
加蓮「...ふぅ、到着ー」
P 「なぁ、加蓮」
加蓮「ん?」
P 「目的地って...ここか?」
加蓮「うん。そうだよ」
P 「..........」
P (自販機コーナーでジュースでも飲むのかと思ってたんだが)
P (...なんで、ここに?)
P (だって、1階の廊下の突き当たり.....ここは)
P (手術室じゃないか)
138 = 130 :
P (ランプが消えているところを見ると、今は使ってないみたいだけど)
加蓮「.........」ギィ
P 「!?」
P 「お、おい、加蓮!」
加蓮「........」スタスタ
P 「やばいって!怒られるぞ!」
加蓮「大丈夫だよ」
P 「え?」
P (もしかして、見学の申請でもしてあるのか?)
加蓮「怒られたら、プロデューサーさんに無理やり連れこまれたって言うから」
P 「なっ...!」
139 = 130 :
加蓮「表現力レッスンでずいぶん鍛えられたからさ」
加蓮「演技にはちょっと自信あるよ」フフ
P 「おいおい...勘弁してくれ」
P (冗談だよな?笑ってるけど...)
加蓮「.........」ニコニコ
P (.........)
P 「......はぁ」
P (しょうがない。もう、なるようになれだ)
P 「ちょっとだけだからな」
加蓮「わかってるって。ふふっ」
140 = 130 :
加蓮「ね、プロデューサーさんは手術室に入ったことある?」
P 「いや、ないよ」
加蓮「私も。こんなふうになってるんだね」
加蓮「いろんな医療機器がいっぱい」
P 「ああ、使い方のわからない機械ばっかりだ」
P 「俺がわかるのは、心電図と点滴台くらいだな」
加蓮「あはは、私もそうかも」
加蓮「あとわかるものって言ったら...やっぱりあれだね」チラ
P 「......だな」
P (部屋の中央)
P (緑のカバーがかけられてはいるが、間違えようがない)
加蓮「......手術台」
141 = 130 :
P 「.........」
加蓮「プロデューサーさん、寝てみてよ」ポンポン
P 「お、俺が?」
加蓮「うん。ね、ちょっとだけでいいから」
P 「........」
P (いいのかなぁ。いや、どう考えてもダメだけど)
加蓮「........」
P 「.....はぁ、ほんとにちょっとだけだぞ」
加蓮「やったっ」
P 「よいしょっ」ボス
P 「これでいいか?」
加蓮「うむ、よろしい」
142 = 130 :
加蓮「ごほん」
P 「?」
加蓮「では、手術を始めます」
P 「は?」
加蓮「まず胸の真ん中を喉仏の下から鳩尾まで切開し」
加蓮「胸骨も切開します。心臓が見えるようになったら」
加蓮「人工心肺装置で血液の流れを確保しつつ...」
P 「ちょ、ちょっと待て!加蓮、なに言ってるんだ!?」
143 = 130 :
加蓮「何って、手術の手順の確認だよ」スッ
P 「何でそんなの知って...っておい!」
P 「待てって!その光るものはなんだ!?」
P 「......まさか!!」
加蓮「信頼して。大丈夫だから」
P 「なにを信頼するんだ!なにを!」
加蓮「じゃあ、始めます」
P 「ちょっ、おい、加蓮、やめ...!!」
奈緒『加蓮?そこにいるのか?』
加蓮・P「!!」
P (この声は......奈緒!!)
144 :
そうか半月か。文庫画集に書籍版も揃えてるのに全く気づかなかった
145 = 130 :
P (助かった.....じゃない!)
P (この状況、どう説明するんだ!)
P 「隠れないと...!」
P (だがどこに....)
P (そうだ!手術台の下なら、カバーの内側に隠れられる!)
P 「そうと決まれば....ほっ!」ゴロン
ドサッ
P 「いたた......よしっ」バサッ
加蓮「きゃっ」
P 「か、加蓮!?おまえもここに隠れたのか」
146 = 130 :
加蓮「だって、ここしかなかったから...」
P 「それもそうか...」
加蓮「っていうか、プロデューサーさん近い...!」
P 「す、すまん...!出て、別の場所に...」
加蓮「そんな場所ないって...!それに私は別に...」
奈緒「し、失礼しまーす」ギィ
加蓮「っ!」
P 「......っ」
147 = 130 :
P (奈緒が入ってきた...!)
P (おおかた、加蓮がいなくなって心配で探しに来たんだろうが...)
P (まさか、手術室にまで)
加蓮「...........」
P (加蓮も息を殺している...)
148 = 130 :
奈緒「か、加蓮ー?ここにいるの...ですかー?」
P (場所が場所だからか、奈緒の言葉遣いがめちゃくちゃだ)
奈緒「誰も...いない、のか...?」
P (...今気づいたが)
P (このカバーは一番下まで垂れているわけじゃない)
P (もしかしたら、奈緒の位置からだと身体が少し見えてしまうかもしれない)
149 = 130 :
奈緒「..........かれんー...」キョロキョロ
P (頼む、気づかないでくれ...!)
P (......ん?)チラ
加蓮「..........」プルプル
P 「...お、おい!」ボソ
P (加蓮のやつ、頬をひくひくさせて、今にも笑い出してしまいそうだ)
P (わかる、わかるぞ加蓮)
P (笑っちゃいけない時に限って、意味もなく笑いがこみあげてくるよな)
P (でも、今はヤバいって!)
150 = 130 :
加蓮「.......」プルプル
P (....こうなったら、直接加蓮の口を押さえるしかない!)パッ
加蓮「っ!」モガ
加蓮「んーっ、んーっ...!」パタパタ
P (静かに...!)
加蓮「んーっ....」モガモガ
奈緒「......いないみたいだな」
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