私的良スレ書庫
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元スレいろは「せんぱーい、いちゃいちゃしましょー」八幡「無理」
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>>102
サミットか生協には置いてあるな
サミットか生協には置いてあるな
こんばんは。お題や感想などありがとうございます。ありがたく読ませていただいております
>>94
過去作は
いろは「…あれ?もしかして比企谷せんぱいですか?」
いろは「せーんぱい♪」八幡「………」ペラ、ペラ
いろは「せんぱーい、そろそろ千葉ですよー。起きてくださーい」
八幡「君といるーのーが好きでー後はほとんど嫌いでー」
八幡「餞の詩」
小町「ねえお兄ちゃん。小町ね、結婚するよ。……小町的にポイント、低いかな?」
八幡「春の幽霊」
川崎沙希「恋」
で全てになります。機会があればよろしくおねがいします。
本日も少ないですが投下します。日曜はかなりまとめてあげられると思うので、初めの方でお題くれた方もう少しお待ちくださいませ。
>>94
過去作は
いろは「…あれ?もしかして比企谷せんぱいですか?」
いろは「せーんぱい♪」八幡「………」ペラ、ペラ
いろは「せんぱーい、そろそろ千葉ですよー。起きてくださーい」
八幡「君といるーのーが好きでー後はほとんど嫌いでー」
八幡「餞の詩」
小町「ねえお兄ちゃん。小町ね、結婚するよ。……小町的にポイント、低いかな?」
八幡「春の幽霊」
川崎沙希「恋」
で全てになります。機会があればよろしくおねがいします。
本日も少ないですが投下します。日曜はかなりまとめてあげられると思うので、初めの方でお題くれた方もう少しお待ちくださいませ。
【料理】
いろは「せんぱーい、ちょっと。かむかむひあひあ」
八幡「……なんだよ、今コナン君が推理を喋ってる最中なんだけど」テクテク
いろは「そんなことよりはい、味見して下さい。ビーフシチューです」
八幡「そんなことよりってお前。一瞬で気絶させるような命に関わる強い麻酔を打たれ続ける小五郎さんの気持ちがお前に分かるのかよ、そんなことだなんて言うな」
いろは「なんでちょっと小五郎さんに感情移入してるんですか……めんどくさ。それよりはい、あーん」
八幡「ん。……いいんじゃねえの、美味いぞ」
いろは「せんぱーい、ちょっと。かむかむひあひあ」
八幡「……なんだよ、今コナン君が推理を喋ってる最中なんだけど」テクテク
いろは「そんなことよりはい、味見して下さい。ビーフシチューです」
八幡「そんなことよりってお前。一瞬で気絶させるような命に関わる強い麻酔を打たれ続ける小五郎さんの気持ちがお前に分かるのかよ、そんなことだなんて言うな」
いろは「なんでちょっと小五郎さんに感情移入してるんですか……めんどくさ。それよりはい、あーん」
八幡「ん。……いいんじゃねえの、美味いぞ」
いろは「よかった~。でもせんぱいって何を作ってもそれだから、あんまり張り合いがないですよね」
八幡「いちいち文句言われるよりいいだろ」
いろは「それはそうですけどね」
八幡(一色は鼻唄まじりの慣れた手つきで料理を完成させていく。もともと要領のいい人間なので、あまり失敗するところというのを見たことがない)
いろは「よし、できましたよー。最後に、愛情をふりかけて完成です♪」
八幡「何そのドヤ顔……」
いろは「可愛いかなーって思って」
八幡「いや別に」
いろは「うわー冷たい反応。ビーフシチュー、どのくらい食べます?」
八幡「大盛りで」
いろは「はーい」
八幡(一色は大盛りいっちょ~なんてラーメン屋みたいに言いながら、ビーフシチューを皿いっぱいまで入れた)
八幡「いちいち文句言われるよりいいだろ」
いろは「それはそうですけどね」
八幡(一色は鼻唄まじりの慣れた手つきで料理を完成させていく。もともと要領のいい人間なので、あまり失敗するところというのを見たことがない)
いろは「よし、できましたよー。最後に、愛情をふりかけて完成です♪」
八幡「何そのドヤ顔……」
いろは「可愛いかなーって思って」
八幡「いや別に」
いろは「うわー冷たい反応。ビーフシチュー、どのくらい食べます?」
八幡「大盛りで」
いろは「はーい」
八幡(一色は大盛りいっちょ~なんてラーメン屋みたいに言いながら、ビーフシチューを皿いっぱいまで入れた)
いろは「はいせんぱい」
八幡「おう」
いろは「追加で大盛りいっちょ~」
八幡(自分の分をよそっている一色の後姿を見ていて、ふと思いついた)
八幡「なあ、まだ高校の制服って残ってるか?」
いろは「え、どうしたんですか。多分実家にあったと思いますけど……えっちの時に着てほしいんですか?」
八幡「いや、制服を着てエプロンつけて料理をつくってほしい」
いろは「……」
八幡「なんだよその顔」
いろは「…………ドン引きしている表情です」
八幡「……分かったよ、もう言わん」
いろは(表情こそあまり変わらなかったが、先輩はしょんぼりしたようにビーフシチューをとぼとぼとテーブルに運んだ)
いろは「……もう、仕方ないなぁ。せんぱいは。交換条件です」
八幡「え?」
いろは「せんぱいも制服きて、部屋の中でいいですから制服デートしましょうよ」
いろは(せんぱいは「等価交換の法則か……」なんて、よく分からないことを呟きながらも頷いた)
いろは(せんぱいの好きな食べものや嫌いな食べもの、好きなプレイに嫌いなプレイでも何でも。これからたくさんのことを知っていきたい)
いろは(そんなことを考えながら、今日も二人で手を合わせる)
八幡「いただきます」
いろは「おあがりください」
いろは(好きな人が私の目の前で美味しそうにごはんを食べてくれる。こんな日々が続けばいい、なんて思いながら)
【髪の毛】
いろは「……はあーきもちー」
八幡「……」
八幡(風呂からあがったばかりの一色の髪をドライヤー乾かしている。一緒に見てたクイズ番組で負けた罰ゲームだ)
いろは「あ、もっと優しくやってくださいね。気持ちを込めて日ごろの感謝を伝えられるように丁寧にやってください」
八幡「……はいよ」グシャー
いろは「うわぁあ!?何するんですかぁもう」
八幡「いや、なんかイラッとくる表情だったからつい」
いろは「もー……ちゃんとせんぱいの指で梳いてくださいね」
八幡「ん」
八幡(髪を指で流すように動かす。茶色がかったその髪はオレンジのライトに反射してきらきらと光っていた)
八幡「……」
八幡(何かとても綺麗なものに触れているような気がして、少し鼓動が早くなる)
いろは「ん、せんぱいの指きもちー。ずっとこうされてたいです」
八幡「……そしたらそのうちハゲるぞ、お前」
いろは「あは、それもそれでありかな~って」
八幡「なしだなし。俺がもたん」
八幡(腕の体力とか、あと理性とか)
いろは「終わったら頭なでてー」
八幡「……ん」ナデナデ
いろは「ちゅーしてー」
八幡「…………ん」チュ
いろは「えっちしましょー」
八幡「おやすみ」
いろは「せんぱーい、そんなお預けないですよ~」
八幡「明日の仕事、何時起きだと思ってんだよ。寝るぞ」
いろは「もー……」
八幡(一色は拗ねたような顔でドライヤーを片づけている)
八幡(だが、俺だってやりたかった。すぐに終わるなら。だけど、確信があった。もし今からやり始めたら、確実に朝まで止められないと)
八幡(……自分が髪フェチだということに気づいた、新婚生活三か月目の夜だった)
乙…え、新婚?同棲しゃなくて?
かなり進んだってことか?
あ、日曜日楽しみにしてる
かなり進んだってことか?
あ、日曜日楽しみにしてる
>>115
すみません。時系列がわりとバラバラで書いてるので同棲中の話や結婚後の話など入り混じってます。だいたいは三部作の二つ目と三つ目の間、三つ目の後(エピローグ前)らへんです。
乙ありがとうございます〜
すみません。時系列がわりとバラバラで書いてるので同棲中の話や結婚後の話など入り混じってます。だいたいは三部作の二つ目と三つ目の間、三つ目の後(エピローグ前)らへんです。
乙ありがとうございます〜
こんばんは。日曜はかなりまとめられるとか言っておきながら結局2つしか書けていません、すみません。
今日もよろしくお願いします、投下します
今日もよろしくお願いします、投下します
【海】
――某地方の海。比企谷八幡、大学四年。一色いろは、三年の夏。
八幡「……」カチ、シュボ、スパー
いろは「ちょ、着いてそうそう一服し始めないでくださいよ」
八幡「いいだろ、こっちは運転で疲れたんだよ」スパー
いろは「もー……。それにしても夜の海って、なんか少し怖いですよね。吸い込まれそうっていうか」
八幡「だな。しかし夜の海を眺めながら缶コーヒーと一緒にやる煙草は特別に美味しいからアレだ」スパー
いろは「ふーん、そういうもんですかー。男の人のそういうのっていまいち共感できないんですよねー」
八幡「だろうな」スパー
――某地方の海。比企谷八幡、大学四年。一色いろは、三年の夏。
八幡「……」カチ、シュボ、スパー
いろは「ちょ、着いてそうそう一服し始めないでくださいよ」
八幡「いいだろ、こっちは運転で疲れたんだよ」スパー
いろは「もー……。それにしても夜の海って、なんか少し怖いですよね。吸い込まれそうっていうか」
八幡「だな。しかし夜の海を眺めながら缶コーヒーと一緒にやる煙草は特別に美味しいからアレだ」スパー
いろは「ふーん、そういうもんですかー。男の人のそういうのっていまいち共感できないんですよねー」
八幡「だろうな」スパー
いろは「……花火します?せっかく買ったんだし」
八幡「ん」スパー
八幡(一色はごそごそと袋から花火を取り出して広げた)
いろは「せんぱいせんぱい、ライター」
八幡「はいよ」
八幡(一色はライターを受け取ると花火に火をつけた。カラフルに光るそれに横顔が照らされていて、綺麗だった)
いろは「せんぱいもしましょー。はい」
八幡(吸い終わった煙草を携帯灰皿に入れて、花火を受け取る。火をつけると、音を立てて燃え始めた)
いろは「ねーねーせんぱい、今から花火で文字書くから見て当ててください」
八幡「はぁ。……分かった」
八幡(あまりそういうバカップルのようなことは好きではないが、頷いてしまった。夏の海の持つ空気にあてられてしまったのかもしれない)
いろは「いきますよー。…………はい、分かりました?」
八幡「……」
八幡(分かったような気もするが、答える気にはならなかった)
いろは「もう、答えてくださいよ」
八幡「すき、だろ」
いろは「え?何て?せんぱい何て言いました?」
八幡「……お前って本当に腹立つよな」
いろは「そんなに褒めないでくださいよ~」
八幡「……今度は俺が書くから、見てろよ」
いろは「はーい」
八幡「…………ほい」
いろは「マックスコーヒー」
八幡「正解だ。次。…………ほいよ」
いろは「こまちあいしてる」
八幡「やるな。……ラスト」
八幡(空中に少し早く文字をつづっていく。分かるだろうか)
いろは「……んーちょっと分からなかったです。もう一回書いてください」
八幡(照れたようにはにかみながら、一色は要求してきた。こいつ、絶対に分かってやがる)
八幡「もうやんねえよ」
いろは「えーケチ~」
八幡「うっせ」
八幡(夏の夜空にはたくさんの星が浮かんでいた。ぬるい潮風が心地よい)
八幡(二本目の花火に手をのばしながら、少し笑っている自分に気づいた)
【喧嘩】
――婚約後。結婚を一か月後に控えた二人。比企谷八幡、24歳。一色いろは、23歳。一色いろはも大学を卒業し、二人で同棲している東京のアパート。
いろは「あの、どういうことですか……。先輩、嘘をついてたんですか?」
八幡「嘘じゃなくて、言う必要がなかったから言わなかっただけだ」
いろは「なんで言う必要がないんですか……女の子と二人きりで飲んだんですよね?しかも、雪ノ下先輩と。平塚先生と飲む、っていうのは嘘だったんですか」
八幡(一色は笑っていた。だがそれは、今にも泣き叫びそうな危うい笑みだった)
八幡(あの日、俺と雪ノ下がバーに入っていくのを見た一色の同級生がいたらしい。今日、一色は高校の同窓会に行っていた。そのときに俺と付き合っていることを聞いた女子がその目撃者らしく、一色はその子から聞いたそうだ)
――婚約後。結婚を一か月後に控えた二人。比企谷八幡、24歳。一色いろは、23歳。一色いろはも大学を卒業し、二人で同棲している東京のアパート。
いろは「あの、どういうことですか……。先輩、嘘をついてたんですか?」
八幡「嘘じゃなくて、言う必要がなかったから言わなかっただけだ」
いろは「なんで言う必要がないんですか……女の子と二人きりで飲んだんですよね?しかも、雪ノ下先輩と。平塚先生と飲む、っていうのは嘘だったんですか」
八幡(一色は笑っていた。だがそれは、今にも泣き叫びそうな危うい笑みだった)
八幡(あの日、俺と雪ノ下がバーに入っていくのを見た一色の同級生がいたらしい。今日、一色は高校の同窓会に行っていた。そのときに俺と付き合っていることを聞いた女子がその目撃者らしく、一色はその子から聞いたそうだ)
八幡(なぜ言わなかったのかは、自分でもよく分からない。ただ、話す気にはなれなかった。それくらい特別なことだったんだ、あれは。俺にとって)
八幡(だが、今のこのありさまはなんだ。俺のそんなくだらない感情で一色を傷つけている。今にもその大きな瞳から涙がこぼれそうになっている)
八幡(なら、全てを話そう。俺たち奉仕部に何があったのか。俺が何を考えてどういう選択をしてきたのか。そしてあの日、雪ノ下と何を話してどう思ったのか。それが今できる最善手であり誠実な対応であるように思えた)
八幡(思えば、話すタイミングはこれまでにいくらでもあった。いつかは話さなければいけないことでもあったと思う。一色が聞かないのをいいことに、その甘さに付け込んでいただけなのだと自覚した。何だ、それは。自分自身が気持ち悪くて吐き気がする)
八幡(一色はきっと、俺が話してくれるのをずっと待っていたのに)
八幡「あのな、一色。聞いてほしいことが――――」
いろは「聞きたくありません」
八幡「頼む。聞いてくれ」
いろは「嫌です」
八幡「一色!」
八幡(初めて一色に対して大きな声を出した。彼女は驚いたように体を震わせて、雫のたまった瞳をこちらに向けた)
いろは「ごめんなさい、ちょっと一人にしてください。お願いします。お願いします……」
八幡(制止することもできないほど、今にも壊れそうな表情だった。一色は逃げるようにアパートを出ていき、後には時計の秒針を刻む音だけが部屋には残されていた)
八幡(ソファーに深く座り込んで、長い息を吐く。何をしているんだ、早く追いかけろ。そう命令しても、足は動かなかった)
八幡(全てを話しても、許してもらえなかったら。それが決定打になり、このまま終わってしまったら。そんなことを一度考えてしまうと、もうこの両足は縫い付けられたように一歩も動けなくなってしまった)
――
いろは(行くあてもなくアパートを飛び出して、駅に向かう。とにかく少しでも離れたかった。あの場所から。あれ以上せんぱいを目の前にしていると、とても醜い言葉があふれ出しそうだった)
いろは(思えば私は、そのことについてずっと不安に思っていたのかもしれない。それは私には踏み込めない領域だったから。あの頃の奉仕部は、特別で触れられないものだったから)
いろは(来たばかりの電車に飛び乗って、適当な駅で降りた。自分でも何がしたいのか分からなかったが、とにかく今は確実に一人になれる場所で少しでも冷静になりたかった)
いろは(繁華街を歩いて、目についた喫茶店に入った。アメリカンブラックを一つ頼み、息を吐く。だが冷静になろうとすればするほど、頭の中がぐちゃぐちゃになるようだった)
いろは(ふと前のテーブルを見ると、どこかで見たことがあるような後姿があった。誰だろうと思ってじっと見ていると、その人が振り返って目があった)
いろは(それは私の好きだった人、葉山先輩だった)
――二人のアパート
八幡(一色が出ていって一時間ほど経った)
八幡(ようやく気持ちが落ち着いてきて、今やるべきことを冷静に考えられるようになった。とにかく連絡をして、一色と会わなければいけない)
八幡(こんなことで別れてたまるか。こんなことで諦められるくらいなら、初めから付き合うこともしない)
八幡(なんとか連絡を取ろうと、スマホを取り出す。指先が震えて、暗証キーを何度か間違える)
八幡(何度か誤操作をしながらもなんとか一色の連絡先を呼び出し、電話をかける。頼む、出てくれと願いながら)
八幡(電話は、繋がらなかった)
――喫茶店
隼人「いろは、本当に久しぶり」
いろは「お久しぶりです、葉山先輩」
いろは(久しぶりに見る葉山先輩は以前とあまり変わらない様子だった)
優美子「一色、だったよね。久しぶり」
いろは「ご無沙汰してます」
いろは(ただ以前と違うのはその隣に三浦先輩がいて、二人の薬指には同じ指輪がきらりと光っていた)
優美子「まさかこんなところで会うなんてね」
葉山「だな。ビックリしたよ」
いろは「わたしもです。そういえば、お二人が結婚していることもこの前聞きました。お祝いの言葉が遅れてごめんなさい。……おめでとうございます」
いろは(とても自然にその言葉が出てきたことに我ながら少し驚きつつも、私は笑っていた。お似合いの二人だと思う)
いろは(そのくらい二人の表情や空気、仕草はとても柔らかく、自然なものだった)
葉山「ありがとう」
三浦「サンキュ。てか隼人、これ言われるたび照れるのやめてよ、もう」
いろは(三浦先輩まで少し照れたように葉山先輩の頭を小突いた)
いろは「あは、お二人ともなんか可愛いです」
三浦「こら、からかうなし」
いろは「すみません」
いろは(頬を赤くして文句を言ってくる三浦先輩が可愛くて、思わず笑ってしまった)
三浦「もう。……てかあんた、なんか目が赤くない?大丈夫?」
いろは「え、大丈夫ですよ。さっきちょっと目にゴミ入っちゃって」
三浦「ふーん……」
いろは(三浦先輩は私の全体を観察するようにじろじろと見まわし、葉山先輩の肩を叩いた)
三浦「私ちょっと出てくるから。隼人、話聞いてやんな」
いろは「え?」
三浦「部活の後輩だったんだし、力になってあげて。任せたよ」
隼人「ああ、分かった」
いろは「え、あの」
いろは(二人はとても自然な様子でそう言って、私が止める間もなく三浦先輩はお店を出ていった)
隼人「じゃあ、聞かせてくれ。どうした?何があった?」
いろは(優しく笑いながらそう聞いてくる葉山先輩の顔を見て、私はとうとう我慢していた涙をこぼしてしまった)
――何があったのかを話した後
いろは(途中で何度も言葉がつっかえながらも、なんとか全てを話した)
いろは(葉山先輩は特に言葉を放つこともなく、時おり穏やかに相槌を打ちながら聞いてくれた)
隼人「そうだったのか。……いろはは本当に好きなんだな、比企谷のこと」
いろは(葉山先輩はぽつりとそう言って、笑った。私はしゃくりあげながらも、黙ってそれに頷く)
隼人「じゃあ、いろはが今するべき行動は一つだけだな。でもそれはいろはも分かっていると思う。……だからとりあえず、泣きやむまでここにいるよ。悪いけど、俺に手伝えることはなさそうだ」
いろは(葉山先輩は悪戯っぽくそう笑って、コーヒーに口をつけた)
いろは(久しぶりに触れる葉山先輩の優しさに心が満たされていくのを感じる。それは今の私にとって、何よりも力強い薬だった)
いろは(ふと、葉山先輩に振られた頃のことを思い出す。あの頃の私は自分が振られてしまったショックで泣いていた。もともと勝算が薄かったのは知っていたのに)
いろは(そしていつからかその記憶には蓋をするようになり、胸はあまり痛まなくなっていた。所詮初恋なんてこんなものだなんて、冷めた目で自分を見る私にも気づいていた。そうして自分の心を守っていたようにも思う)
いろは(せっかくお嫁さんと二人でデートをしていたのに、突然現れた邪魔者にも優しく笑いかけて、助けようとして)
いろは(ああ、どうして忘れていたのだろう)
いろは(こうやって、誰にでも優しくて。人の心を気遣って、気遣って。そうやって誰のことも見捨てられなくて、がんがらじめで動けなくなって)
いろは(たまに凄く苦しそうな表情を見せて。だから私がそれをほどきたいって。ほどける存在になりたいって)
いろは(そういう風に、私はこの人を好きになったんだ)
いろは(そうだ、きっと私のあの初恋は何も間違っていなかった。たしかに本物だったんだ。全然、「恋愛ってこんなものなのかな」じゃなかった。こんな葉山先輩のことが、私は本当に好きだったんだ)
いろは「あ……」
いろは(気づけば、頬からまた大粒の涙が伝っていた。それを見て葉山先輩はハンカチを差し出しながら、優しく笑う)
隼人「早くふきな。こんなところ比企谷に見られたら、俺が殴られそうだしね」
いろは(葉山先輩の目が笑っていた、小さい男の子みたいに。きっとそれが、本来の葉山先輩が持ちあわせているものなんだと思う)
いろは(それを見て、本当に嬉しく思っている自分に気づく。きっと、三浦先輩がほどいたんだ。ほどけたんだ、葉山先輩を)
いろは(それが少しだけ切なくて、心から嬉しい)
いろは(そして同時に、私がどれだけあのちょっと意地悪なせんぱいのことが好きなのかを自覚する)
いろは「……葉山先輩。ありがとうございました。もう、大丈夫です。先輩に連絡してみます。あの捻くれためんどくさい堅物と、絶対に仲直りしますから」
いろは(私が冗談めいて毒を吐くと、葉山先輩は驚いたように目を張った後、楽しそうに笑った)
隼人「ああ。……いろはは本当はそういう笑顔ができたんだな。今のいろはならきっと、大丈夫だと思う。頑張れ」
いろは「はい、頑張っちゃいます。それじゃあ葉山先輩、本当にありがとうございました。三浦先輩にもお伝えください。……ずっと、お幸せに」
隼人「ああ。いろはも、比企谷と仲良くな。……元気で」
いろは「はい。……さよなら、葉山先輩」
隼人「さよなら、いろは。……頑張れ」
いろは(喫茶店を出た。騒々しく街並みを歩く人々とすれ違いながら、駅に向かう)
いろは(そして、いつかの放課後を思い出す)
いろは『葉山せんぱーい、お疲れ様でーす。また明日~』
隼人『ああ、お疲れ。いろは、また明日』
いろは(また明日、って笑って手をふっていたあの時の二人はもうどこにもいない。目が合うたびに頬が赤く染まって、その度に夕陽のせいだってごまかしたりした私はもういない)
いろは(でもあの時の空の色や空気の匂い、サッカーボールの手触り、遠くから聞こえる吹奏楽部の演奏はきっと、いつまでも私の心に残り続ける)
いろは(そして思い出すたびに痛みと愛しさを感じさせてくれるのだろう)
いろは(そして、いつかの放課後を思い出す)
いろは『葉山せんぱーい、お疲れ様でーす。また明日~』
隼人『ああ、お疲れ。いろは、また明日』
いろは(また明日、って笑って手をふっていたあの時の二人はもうどこにもいない。目が合うたびに頬が赤く染まって、その度に夕陽のせいだってごまかしたりした私はもういない)
いろは(でもあの時の空の色や空気の匂い、サッカーボールの手触り、遠くから聞こえる吹奏楽部の演奏はきっと、いつまでも私の心に残り続ける)
いろは(そして思い出すたびに痛みと愛しさを感じさせてくれるのだろう)
いろは(ああ、早くせんぱいに会いたいなぁ)
いろは(自然とそう思った。スマートフォンを起動すると、せんぱいからの不在着信がいくつも溜まっていた。すぐにコールバックする)
いろは(すぐに出るかな。出てくれるかな。出たらまず、なんて言おう。怒ってごめんなさい?もう許します?どっちも違うような気がした)
いろは(そうだ、こんな気持ちのときに紡ぐ言葉なんて一つに決まってる。電話がつながった)
いろは「――――せんぱい、大好きです」
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