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    元スレ提督「怜悧盲目」

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    201 :


    ──────────────────

    ──────────────────


    提督「────失礼します」

    提督「お久しぶりです、元帥」

    元帥「……こうして面と向かって会うのは確かに久し振りだな」

    元帥「だがまずはその他人行儀な態度を止めて欲しい。お前がその態度だと……背中がぞわぞわするからな。気持ち悪いことこの上ない」

    提督「…………相変わらずの物言いですね。俺だっていつまでも子供じゃないってことですよ。受け入れて下さい」

    元帥「はぁ……まったく……」

    元帥「私を『ジジイ』と呼んでいた頃のことを懐かしく思う日が来るとはな……」

    提督「……えー、その節は、その……」

    元帥「安心したまえ。今更昔のことを掘り返すつもりはない。……態度次第だがな」

    提督「あ、あはは……」

    元帥「ところで今朝、私の元に合同演習の誘いが来たわけだが…………」

    元帥「私も忙しい身だ。参加出来そうにない。……代理を立てないといかんなぁ?」

    提督「……よ、喜んで参加させていただきます」

    元帥「うむ、お前ならそう言ってくれると思っていた。詳細は後で送るからよろしく頼んだぞ」

    提督「……はい」

    提督(満面の笑みまで浮かべて……)

    提督(弱みを握って面倒事を押し付ける癖は健在だな)

    提督(……まぁ昔も今もお世話になってる人だからな。これくらい何てことはないさ)


    202 = 1 :



    提督「ところで元帥、鳳翔さんの姿が見えませんが……」

    元帥「……彼女には席を外してもらっている」

    元帥「これから話すことは彼女にはあまり聞かれたくないからな……」

    提督「聞かれたくない……?」

    提督「……浮気ですか?」

    元帥「降格と前線行き、どちらが好みだ?」

    提督「ちょっとふざけただけです、すみません」

    元帥「……やっぱりお前は今の方がいい。昔みたいにふざけられると私が疲れてかなわん」

    元帥「だがまあこのくらいの空気が丁度良いか。最初から辛気臭くなってしまっては、最後まで体力が持たないからな」

    元帥「…………提督よ、今日お前を呼んだのは他でもない」

    元帥「先日、と言っても一ヶ月以上も前の話になるが、提督とその秘書艦が艦娘の凶行によって重体に陥った事件は知っているな?」

    提督(……えーと、ああ。時雨と一緒に居た時に見たニュースか)

    提督「はい、知っています」


    203 = 1 :



    元帥「それなら話は早い」

    元帥「そのニュースだが、提督が秘書艦とケッコンしたことに対し、提督に好意を抱いていた艦娘が嫉妬に狂ったというのが表の話だ」

    提督「表、と言いますと……?」

    提督(……凄く、嫌な予感がする)

    元帥「……これは他言無用のことだが、ケッコンに際して使用される指輪には、ケッコン相手への好意を増幅させる力がある」

    提督「…………っ!?」

    元帥「今まで冷たい態度を取っていた艦娘が、ケッコンを機に態度を軟化させたという話はよく聞くだろう?」

    元帥「原理は未だ解明されていないが、これは事実だ」

    提督「そ、そうだったんですか……」

    提督「…………ん?」

    提督(『ケッコン相手への好意を増幅させる』?)

    提督(それってもしかして……!)

    提督「……元帥、その力は提督にも働きますか?」

    元帥「……勘が良いな。もちろんだ」

    元帥「ただ艦娘用の指輪はともかく、通常の提督用の指輪にはそんな力は一切無い。身体能力の向上等の必要性の無さから本部の方でただの指輪に加工しているからだ」

    元帥「だから『本部の誰かが手を加えない限り』、提督にその力が働くことは無いと思ってくれていい」

    提督「……あのニュースの提督の指輪は違ったんですね」

    元帥「……そうだ。『秘書艦の圧力』によって、指輪はその力を持ったまま提督の手に渡ったという話だ」

    提督(秘書艦っ?!)

    提督(……そうか。それで他の艦娘が凶行に……!)


    204 = 1 :



    元帥「好かれる、というのも考え物だ」

    元帥「行き過ぎた恋情や愛情は時に憎悪や嫉妬に変わる」

    元帥「複数の艦娘と重婚した提督にはそういったトラブルが少ないと聞いているが、お前のように一艦隊全員と同時にケッコンするという提督は類を見ない」

    元帥「……十分に気を付けてくれ」

    提督「……肝に銘じておきます」

    元帥「私からの話は以上だ。下がって良いぞ」

    提督「はい、ご忠告ありがとうございました」

    提督「……あの、元帥」

    元帥「どうした?」

    提督「指輪の件は、どうなりましたか?」

    元帥「頼まれていた五つ目の指輪なら数日中に出来上がるそうだ。完成次第送らせてもらおう」

    元帥「そして最後の指輪は長門……戦艦用の指輪だったな。こちらは他と違って時間がかかる。もう一月はかかるぞ?」

    提督「いえ、それで大丈夫ですので、よろしくお願いします」

    提督「────失礼しました」

    元帥「……………………」


    205 = 1 :






    提督(指輪にそんな力があったとは……驚いたな)

    提督(うちの艦隊は……大丈夫だろう。皆良い子ばっかりだし、凶行に及ぶ姿なんて想像出来ない)

    提督(…………好意を増幅、か)

    提督(元帥と鳳翔さんがお互い指輪を付けていないのは、そういった力に干渉されるのが嫌だからなのかもな……)

    提督「────っと、そろそろ二人を迎えに行かないと」





    206 = 1 :







































    天龍「────また今度なー!」

    天龍「…………へへっ、見たか龍田?」

    天龍「あいつらすげえ嬉しそうにしやがって……。あんな笑顔、前の鎮守府じゃ見たこと無かったぜ?」

    龍田「うふふ、確かにそうねぇ……」

    天龍「……何だ? やけに機嫌良いな」

    龍田「うふ、だって……提督の素晴らしさを再認識出来たのよ?」

    龍田「私達だけじゃなくて、昔の仲間も救ってくれるなんて……」

    龍田「────ふふっ♪」


    207 = 1 :



    天龍「……あのオレにべったりだった龍田がこうなるなんてなぁ」

    天龍「『天龍ちゃんが一番好き』とか『天龍ちゃん以外何も要らない』とか言ってたんだぜ?」

    龍田「あら、ちゃんと覚えてるわよ?」

    龍田「でもほら、あの頃の私は何も知らなかったから……」

    龍田「それに今でも天龍ちゃんのことは一番好きよ?」

    天龍「へぇ、それじゃ提督は?」

    龍田「え? 一番好きに決まってるじゃない」

    龍田「当たり前のことを聞くなんて……変な天龍ちゃん」

    天龍「…………いやいや、それは可笑しいだろ?」

    龍田「んー……、天龍ちゃんが何を言いたいのか分からないんだけど……」

    天龍「マジかよ……」

    天龍「………………そうだ!」

    天龍「じゃあ龍田、もしもオレと提督が崖から落ちそうだったらどっちを救うんだ?」

    天龍「救えるのはどっちかだけだぜ?」

    龍田「そうねぇ……」

    龍田「そんな事態になんてそもそもならないとは思うんだけど……」

    龍田「もしそうなったら提督を救うわ」

    天龍「むっ、オレを見捨てるのか……」

    龍田「天龍ちゃんでもそうするでしょう?」

    龍田「────それに大丈夫」

    208 = 1 :




    龍田「提督を助けた後、天龍ちゃんとは一緒に落ちてあげるから♪」

    龍田「二人なら、天龍ちゃんも寂しくないよね?」



    209 = 1 :



    天龍「……………………ははっ」

    天龍「やっぱり龍田はオレの最高の相棒だな!」

    天龍「これからもよろしく頼むぜ!」

    龍田「────きゃっ……!」

    龍田「もう、天龍ちゃん……いきなり抱きつかれるとびっくりしちゃうでしょう?」

    龍田「………………こちらこそよろしくね♪」


    210 = 1 :
































    時雨「────ただいま」

    長門「今戻ったぞ…………と、大丈夫か? 夕立?」

    夕立「ひっ!? やっ、ご、ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! ごめんなさいっ────」

    長門「落ち着け、夕立。私は味方だ、お前を傷付けたりしない」

    長門「だから……な?」

    夕立「な、長門……?」

    夕立「────もう我が儘なんて言いません文句なんて言いません口答えもしません何でもします何でも受け入れます何でも出来ます」

    夕立「だから、だからっ────」

    長門「夕立、一緒に部屋に行こう。私が付いて居てやる」

    長門「…………こうなるだろうとは思っていたが……やり過ぎだぞ、摩耶」

    長門「────時雨、後は任せた」

    時雨「うん、任せてよ」

    時雨「……夕立のケア、よろしくね?」

    長門「ああ、了解した。ほら、行くぞ夕立」

    夕立「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい────」


    211 = 1 :



    時雨「………………」

    時雨「……摩耶」

    摩耶「あー、悪い……」

    摩耶「龍田の時以来だったから加減がどうも分からなくてさ……」

    摩耶「次はもっと上手くやるから、な?」

    時雨「……頼んだのは僕だから強く言えないけど」

    時雨「夕立も大事な仲間なんだ。次は許さないよ?」

    摩耶「……分かったって。だからそう睨むなよな」

    時雨「………………まったく、夕立が死んじゃったらどうするのさ」

    摩耶「あ? 演習じゃ死なないだろ?」

    時雨「そういう意味じゃないから……もう……」

    摩耶「────それよりさ、長門の奴どうしたんだ?」

    摩耶「角が取れたっていうか……丸くなったっていうか……」

    時雨「……分かるかい?」

    時雨「『これからは協力する』ってさ」

    摩耶「────おおっ、やったなぁ!」

    摩耶「いやー、ここまで長かったぜ……」

    摩耶「お前のおかげだな! お疲れ、時雨!」

    時雨「ふふっ。気が早いよ、摩耶?」

    212 = 1 :





    時雨「あと『三日』もあるんだから、ね?」





    213 = 1 :


    投下終了。

    幕間 最終話 しあわせなエピローグ

    で終わります。

    (皆あんまり病んでなくて)すみません。
    このくらいのソフトなのが好きなんです。


    それではまた。

    214 :

    ソフトってなんだっけ?(白目)

    215 :

    真綿で首を絞めることだろう

    217 :

    ソフト…?

    218 = 1 :


    ハード→提督に実害が出る
    ソフト→提督には実害が出ない

    どこからどうみてもソフトのはず。
    これがハード物ならて/い/と/くになってますから。

    221 :

    やっぱ実害の無いヤンデレは良いな

    222 :

    ほのぼのしてますねー(白目)

    223 :

    みんな良い子ばかりで嬉しいよ(震え声)

    224 :


    本編で説明しきれそうにないので補足説明。

    ・指輪による好意の増幅
    ・各艦種毎に専用の指輪

    どちらも独自設定です。

    指輪による好意の増幅は基本的に累積しません。何人と重婚しようともそれぞれの艦娘に対する好意が少しずつ増幅するだけです。数値で言うと6人分の指輪で好意が6増えたらそれぞれに1ずつ分配されます。誰かに6が行ったりそれぞれに6ずつ分配されたりはしません。特殊な加工・改造が行われない限りは。


    各艦種毎に専用の指輪があります。駆逐艦なら駆逐艦用、軽巡なら軽巡用といった具合です。専用の指輪でないとケッコンは成立しません。またケッコンが済んでいなければ誰でも使えます。あくまで一例ですが、軽空母用の指輪を戦艦が使っても意味がありませんし、ケッコン前の榛名の指輪を長門が使うことも出来るということです。


    そして艦娘のケッコン対象は指輪に最後に触れた提督が基準になります。事故防止のため提督が自ら嵌めてあげるのが常となっております。自分から蜘蛛の巣にひっかかりに行くスタイル、ロマンチックですね。


    長々と失礼しました。
    それではまた。

    225 :

    あわわわ…どう行き着いても修羅場じゃ…

    226 = 1 :


    ちょっと立て込むので次の投下は少し遅れます。すみません。

    そして川内と古鷹はいずれ病ませると言いましたが……幕間書いたらもう病んでました。(ほっこり)


    負のパワーがかなり満たされたので次回作は正のパワーたっぷりな甘えん坊の続きを書く予定です。服の裾を掴んでくる早霜とか拗ねて甘えてくる加賀さんとか乞うご期待下さい。安価も有りです。


    それではまた。


    227 :

    了解

    228 :

    甘えん坊なら安心だなぁ(血反吐

    229 :

    早霜とかウチにいないからどんな子かわからん

    230 :

    だからなんだ

    231 :


    かくていしんこくにころされる
    じゅうろくれんきんはきついです


    ……リアルがかなり立て込んでおります
    投下はもう少しお待ち下さい
    すみません

    232 :

    生存報告ご苦労様です
    いつまででも待ってやるぜ〜

    233 :

    待ってる…

    234 :

    了解

    待ってる

    235 :

    続き待ってます

    236 = 235 :

    続き待ってます

    237 :


    ようやくリアルの方が落ち着き始めました。

    早ければ明日にでも投下再開しますのでよろしくお願いいたします。

    それではまた。

    239 :

    おう

    240 :

    待ってるデー

    241 :

    待ってる…

    242 = 1 :



      幕間  1/7  天龍


    243 = 1 :



    『おはよう、天龍。早速だが出撃してもらうぞ?』


     オレがオレとして誕生したのは、固いベッドしかない無機質な部屋の中だった。
     目を開けて最初に飛び込んできたのは、蛍光灯の眩しい光とこちらを覗き込んでくる男の顔。影になっていてその表情は知れなかったけど、その目に何も感情が込められていないことだけは何となく分かってしまった。

     思えばその瞬間からオレの心は冷めてしまっていたのだろう。


     目覚めたその数時間後には出撃し、刻み込まれた本能が導くままに艦装を振るって敵を沈めた。
     オレと同じ境遇だったのだろう。
     しきりに「何で私が? どうして……?」と呟いている艦娘がいたが、そいつはその最初の出撃で沈んだ。

     生き残るのに必要なのは、生きていくのに必要なのは、納得する理由を探すことじゃない。どんな手を使ってでも自分を納得させることだ。

     例えそれが論理としてどれだけ破綻していても、納得させて無理矢理にでも飲み込んでしまえば、もう迷いなんか生じないのだから。


    244 = 1 :



     昼夜を問わない出撃。

     ────他に艦娘が居ないから仕方無い。逆らえない立場だから仕方無い。強くなるためだから仕方無い。人類を守るためだから仕方無い。


     提督による暴力。

     ────生意気な態度をとってしまったのだろう。虫の居所が悪かったのだろう。今日は運の悪い日なのだろう。これが普通のことなのだろう。


     何も感じなくなっていく心と体。

     ────たくさんの艦娘を見捨ててきたから。汚い人間の心を何度も見てきたから。傷の無い日なんて一日たりともなかったから。

     生きていくのに、必要じゃないから。


    245 = 1 :



     様々な理由を重ねて、自分を納得させて生きてきた。

     それが今では一つの理由で事足りてしまうのだから、人生というのは分からない。


    246 = 1 :



    ──────────────────

    ──────────────────


    247 :











    天龍「────悪い、待たせた」

    天龍「……龍田と古鷹はどうした?」

    川内「ん、お手洗いだってさ。それより、誰からの電話だったの?」


     とある飲食店の一角。
     提督と別れた後、オレ達は食事がてら世間話に花を咲かせていた。
     大体が空気の重くなるような苦労話だったけれど、それでも昔の仲間との会話には嬉しさや楽しさがあった。

     だがそんな時間もそろそろ終わりらしい。


    天龍「提督からだ。そろそろ終わるってよ」

    川内「……提督?」


     オレの告げた名前に、川内が反応を見せる。
     その目に黒い熱が灯ったのを、オレは見逃さなかった。


    天龍「ああ、名残惜しいけど今日のところはそろそろお開きだな。……楽しかったぜ?」

    川内「……うん、私も楽しかった」

    川内「…………ねえ、次は何時会えるかな?」

    天龍「────『提督に』か?」


     川内がにっこりと笑う。
     その目は決して笑っていない。


    248 = 1 :



    天龍「……近々会えるさ、必ずな」

    川内「…………意外。天龍のことだから、絶対邪魔しにくると思ってたんだけど……」


     驚いた表情で、川内がそう言葉を漏らす。
     昔のオレならばそうだったかもしれないが、生憎と今の事情ではそうもいかないのだ。

     わざわざ提督が助けてやった川内と古鷹。
     『もう会えなくなる』と知ったら悲しむことは想像に難くない。


    天龍「提督が悲しむようなことはしねえよ」

    川内「……本当に好きなんだ。何だか妬けるなぁ……」


     むすっとする川内に笑顔で応える。川内は更に表情を険しくさせて、それから大きなため息を吐いた。
     今はその目に熱は灯っていないが、些細なきっかけでその炎はまた燃え上がるに違いない。


    天龍(そうなったらまぁ……『仕方無い』か……)


     提督が幸せになるならそれはそれで構わない。

     提督のためなら、オレはどんなに割に合わないことだってやるし、命をかけることだって躊躇わない。見返りだってもちろん要らない。報われなくても恨まない。

     そういう生き方をすることに、既に納得してしまっているのだ。


    天龍(……惚れた弱味ってやつだな)


     そう考えて、クスリと笑う。
     その笑いを何か勘違いしたのか、川内は不機嫌そうに唇を尖らせるのだった。


    249 = 1 :




















     天龍は知らない。
     その感情がそのような可愛らしいものでは無いことを。

     そして知らないままに、彼女は同じ言葉を頭の中で何度も繰り返していくのだ。

     天龍の全ての行動────選択や思考や献身、あるいは暴力さえも────を肯定する、魔法の言葉を。


    250 = 1 :






      『提督のことが好きだから、仕方無い』






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