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元スレ榛名「榛名だってイチャイチャしたい」
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提督「また喧嘩してるのか」
蒼龍「そうなんです! 止めてくださ~い!」
提督「赤城は……入渠中か。翔鶴はどうした?」
榛名「今日は非番で外出中です」
提督「そうだったか……祥鳳は?」
蒼龍「ずほちゃんを弄ってて取り合ってくれないんですよね……」
提督「……」
提督「仕方ないな……」
榛名「提督」スッ
榛名「ここは榛名にお任せください。提督のお手を煩わせることではありません」
提督「しかし……」
榛名「提督はそちらの書類を終わらせて、どうぞお休みになっていてください。今回は榛名が対応します」
提督「……わかった。ありがとな」
榛名「いえ。提督のお役に立てることが、榛名の喜びですから」ニコッ
榛名「榛名、ただいま戻りました」
提督「Zzz……」
榛名「提督? あ……」
榛名(榛名が戻ってくると、提督はソファに座ってうたた寝しているようでした)
榛名(最近忙しかったですし、やはりお疲れだったようです)
榛名「何かかけるものものは……」ゴソゴソ
榛名(見つけたタオルケットを提督にかけながら、ふと思う)
榛名(今なら、提督に触れられるのではないだろうか。身を寄せることができるのではないだろうか……と)
榛名(でもそれは、きっと卑怯なことで、もし提督にバレてしまったら……きっと困らせてしまう。もしかしたら、軽蔑されて距離を置かれるかもしれない)
榛名(そう思っているはずなのに、ダメだとわかっているのに……榛名の身体は提督の隣に身を寄せ、手は提督の頬をなぞっていた)
榛名「提督……」
榛名(小さく呟きながら、ほぅっと息を吐く)
榛名「卑怯な榛名をお許し下さい」
榛名(提督の左肩に頭を預け、右手を絡めるように重ねた)
榛名(提督の手はゴツゴツとして力強く、彼の心を表しているかのように暖かい)
榛名(頬が熱を持ち、胸は早鐘のように高鳴った)
榛名「榛名は今、提督に触れているんだ……」
榛名(ニヤけてしまいそうになる唇を必死に引き結びながら、榛名は自分の指を彼のそれとそっと絡めた)
提督「ん……Zzz」
榛名(提督の手ははまるで赤ちゃんのように榛名の手を握り返しくる)
榛名「ふわ……」
榛名(じわじわと滲み出てきた多幸感に榛名は包まれていった)
榛名「はふ……」
榛名(もしかしたら、夕張さんだと思ったのかもしれない。榛名とは全然関係のない夢をみているのかもしれない)
榛名(でも……それでも、今、提督の隣で彼の手を握っているのは間違いなく榛名なのだ。その事実は間違いなく榛名の心を満たしていた)
榛名「提督」
榛名(絡めた指にそっと力を込めながら私は最愛の人の名前を呼ぶ)
榛名(たったそれだけのことで、たしかに榛名の心は満たされた気がした)
榛名(最初に感じた罪悪感なんてもう消し飛んでいた。それぐらい嬉しかった。提督に寄り添うことができる、触れることができる……甘い蜜のように溢れ出る陶酔感に榛名は抗えなかった)
榛名「……」フフッ
榛名(絡めた指から伝わる温もりを感じながら、そっと目を閉じる)
榛名(やがて訪れたまどろみの中で、榛名はたしかに気付いていた。榛名はきっと、もう抗えない。抗いたくないのだということを――)
――――
――
榛名「提督、提督」ユサユサ
提督「ん……」
榛名「提督、起きてください」
提督「……榛名?」
榛名「はい。おはようございます、提督」
提督「ああ……」ポー
提督「はっ! 今何時だ!?」ガバッ
榛名「もう少しでちょうど1900です」
提督「嘘だろ!? 寝過ぎた!」
榛名「あの、提督……書類なら、榛名がやっておきました」
提督「へ?」
榛名「ですので、確認をお願いします」
提督「……マジ?」
榛名「お疲れのようでしたので」
提督「どれ……」パラパラ
提督(ざっとみた感じだと……完璧だ)
提督「榛名、お前……超優秀じゃん。ありがとう、助かった」
榛名「榛名には勿体無いお言葉、ありがとうございます。お役にたてたのなら嬉しいです」
提督「……」ペラペラ
提督(しかこの書類たち……本当に良い感じに仕上がってるな)
提督(秘書官をやり始めてまだそれほど経ってないのに、もう仕事覚えたってのか)パネェ
榛名「あの、提督……」モジ
提督「……ん?」
榛名「その、差し出がましいとは思ったのですが……」モジモジ
榛名「お夕飯、を……作らせていただきました。もし良かったら……召し上がっていただけますか」
提督「まじ?」
提督(普段夕飯は、鳳翔さんのところに行くか、夕張と食べることが多いが……)
榛名「……」フアンゲ
提督(せっかく作ってくれたのに無碍にはできないか)
提督「ああ、頂くよ」
榛名「」パァァァ
榛名「今お持ちしますね!」タタッ
榛名「……」ソワソワ
提督「じゃ、いただきます」
榛名「い、いただきます」
榛名「……」ジーッ
提督「」パクッ
榛名「……」ドキドキ
提督「」モグモグ
提督「……うまい」
榛名「本当ですか!?」ガタッ
提督「ああ、榛名は料理も上手なんだな」
榛名「」ヤリマシタ!
榛名「こちらは、榛名の一番得意な料理なんです!」
提督「たしかに美味い」モグモグ
榛名「これは隠し味に梅干しを入れてるんです。臭みが消えて、味も引き締まるんですよ」
提督「へぇ~」パクパク
榛名「それからこちらは――」
提督「ふんふん」
榛名「」ハッ
榛名「す、すみません食べてる時に。鬱陶しい、ですよね……」
提督「? そんなことはない」
榛名「提督はお優しいですね」
提督「俺は榛名と話しながら食べるの楽しいよ」
榛名「っ」カァァァ
榛名「……その」モジモジ
榛名「たくさん練習……したんです。だから、提督に美味しいって仰って頂けたことが本当に嬉しくて……」
榛名「榛名、今とっても幸せです」ニコッ
提督「」グハッ
提督(なにこれキュン死する)
――――
―― 翌日
夕張「……それで、榛名さんの手料理を堪能したわけですか」ムスッ
提督「うん」ポニテサワサワ
夕張「こんなの浮気ですよ浮気! 」カキカキ
提督「いやだって、せっかく作ってくれたのに断るのもさー……」カミノケサラサラー
夕張「提督は少し無防備過ぎます! 榛名さんの好意は明らかなんですからあんまり甘やかさないでください!」
大淀「……どうでもいいですけど、業務中にイチャつくのやめてくれません?」
提督「え?」
夕張「はい?」
大淀「そんな何言ってのみたいな顔されても困ります!」
夕張「でも私仕事してますよ?」
大淀「だったら、提督はどうして夕張さんの髪の毛を玩んでいるんですか!? そして夕張さんがそれを諌めないのは何故!?」
提督「いや、夕張の髪の毛さらさらで気持ちよくて……」
夕張「別にいつものことなので……」
提督「ポニテにしろロングにしろふわふわにしろ女性の艶やかな髪っていいよね」
大淀「そんなことは聞いてません! 少しは弁えてもらわないと困ります! だいたい、お二人は――」
ガミガミ
榛名「……」コソッ
榛名「……髪の毛」ジー
提督「……」カキカキ
榛名「」ソワソワ
提督「んー……」
榛名「」チラチラ
榛名「」ファサッ
提督「……榛名」
榛名「はい!」
提督「今日の演習なんだけどさ、摩耶の練度を――ん?」
―― ドアの隙間
霧島「」パクパク
提督(何やってんだあいつ)
霧島「」サッ
提督(何だあれ……カンペ?)
霧島『髪を褒めて』
提督「髪?」
榛名「」ピクッ
榛名「」スススッ
ドア<バタン
提督(なんだったんだ)
榛名「」サラッ
提督「……それで榛名、演習なんだけど」
榛名「……はい」ショボン
提督「?」
提督(なんか榛名が近い)
提督「……榛名、なんか近くない?」
榛名「気のせいかと」
提督「でもさ――」
榛名「……」ファサッ
提督「ああ、そういう……」
榛名「?」
提督「いや、こうして見ると榛名って綺麗な髪してると思ってな」
榛名「」パァァァッ
提督(とりあえず、霧島の言うように褒めてみたが……)
提督「……」ジーッ
提督(なるほど、こうして見ると榛名の髪はたしかに綺麗だ)
提督(濡羽色の髪の毛はその名の通り濡れたような艶を伴ってしっとりと波打ち、しかし彼女が身体を動かすとそれに合わせてサラサラと流れるように舞った)
提督(その美しさときたら、彼女の巫女服と美貌も相まってもはや神秘性まで感じるほどである。正直健全な日本男子としては胸ときめかずにはいられない)
提督「……」
提督(加えて、近くにいるせいで見え隠れする胸元とその肌や髪から立ちのぼる甘い香りに胸の高鳴りも止まらない)
提督「その、やっぱり良いシャンプーとか使ってるのか?」
榛名「どうでしょう……ただ、少し気を使っていはいます」
提督「そうか。なんか甘い香りもするしさ」
榛名「そうでしょうか……その、お嫌いですか?」
提督「いや、榛名によく合った良い匂いだと思うよ。でも、その……」
榛名「ありがとうございます!」
提督「ちょっと離れようか。流石に近い」
榛名「嫌です!」
提督「え、あれ? えぇー……?」
ドア<ガチャ
夕張「提督、装備改修のことで明石さんから提案があったんですけど」
提督「お、おお夕張! なんだ?」ガタッ
夕張「あら、なんです? わざわざ席を立って。座っててもそっち行きますよ?」
提督「いや、すこし身体を動かしたくてな」
夕張「ふぅん……?」チラッ
榛名「……」ムー
夕張「……」フム
提督「それで、明石がなんだって?」
夕張「あ、はい。それでですね――」
提督「それは――」
榛名「……」ジー
夕張「でも、それなら――」
榛名「!」
榛名「」ゴソゴソ
榛名「」ムスビムスビ
榛名「」ポニーテール
提督「――って感じで伝えてくれ」
夕張「わかりました」
榛名「あの、提督!」
提督「ん?」
榛名「……」モジモジ
提督「なんと……」
夕張「……榛名さん?」
榛名「榛名も髪を結ってみました……どうでしょうか?」
夕張「わ、私の真似したからって、提督が靡くわけじゃないですから」
榛名「別に真似したわけじゃありません。ちょっとした気分転換的なものです!」ムスッ
榛名「それで提督、どうでしょうか。似合いますか?」
提督「正直めちゃくちゃ可愛い」
夕張「おい」
提督「い、いや! もちろん夕張のポニテもかわいいよ!?」
夕張「そっ、そうじゃなくて――ん?」
榛名「」プルプル
夕張(ニヤけそうになるのを必死に堪えてる……)
提督「……榛名?」
榛名「は、ひゃい!」ニヘラ
榛名「」ハッ
榛名「す、すみません! 見ないでください! 今榛名、とてもだらしない顔してますから!」カオカクシ
夕張「……」
提督「……」
提督(なんだこれ俺に褒められたのがそんなに嬉しかったの?顔真っ赤にしてニヤけそうな唇を必死に引き結んで返事声裏返ってるしその拍子ににやけちゃってるしそれでまた照れちゃったりしてそのはにかんだ笑顔を写真におさめたい)
夕張(なんなんですかこれさっきからポニテ褒められたぐらいでそんなに嬉しそうにしてニヤけるの我慢したり顔隠したりしゃがみこんだりカリスマガードですかあざといにもほどがるでしょいい加減にしてくださいアニメじゃない萌がここにある)
提張「「可愛い」」
榛名「っ」カァァァ
提督「かわいい」
榛名「う、嬉しいです……」
夕張「かわいい!」
榛名「も、もう……!」テレテレ
提督「青葉! 青葉を呼べ!」
夕張「青葉さぁぁぁん!」
霧島「いい加減にしてください」ヒュッ
提督「ぶっ」
夕張「ぴっ」
提張「「」」
霧島「まったく……いくらなんでも騒ぎ過ぎです。ね、榛名?」
榛名「っ……っ」テレテレ
榛名「榛名褒められちゃった……提督にも夕張さんにも」モジモジ
霧島「……嬉しいのはわかったから、そのニヤけた面どうにかして」
榛名「うふふ」ニコニコ
霧島「金剛お姉様が呼んでるからおいで?」
榛名「でも榛名、今日の業務が……」
霧島「大丈夫。終わったら私も手伝うしさ。それに……」チラッ
提督「」シーン
霧島「司令もこんな状態だし、業務にならないでしょ?」ニコッ
榛名「はは……」
青葉(これが、霧島ネキと言われる所以ですねわかります)パシャパシャ
――金剛の部屋
金剛「……さて、今日こうして集まってもらったのは他でもありません。榛名と提督についてmeetingするためデス!」
比叡「おー」パチパチ
榛名「えっ」
金剛「以前私は言いました。各自、提督が榛名loveになるための案を考えてくること!と……」
金剛「そろそろいい頃合いです。みんな、当然考えてきましたヨネー?」
比叡「……」サッ
霧島「……」メガネキラッ
金剛「っと、そのまえに現状を聞きましょうか。どうなの? 榛名」
榛名「えっと……先ほど髪が綺麗だと褒めて頂きました!」
霧島「……」
金剛「……」
榛名「……」ニコニコ
比叡「え、終わり?」
霧島「……霧島の分析によると、これは何も進展していませんね」
榛名「そ、そんなことは……」
金剛「じゃあ進展したんデスカ?」
榛名「……こ、この前提督の手を握りました」テレッ
比叡「ほぅ……」
金剛「ふむふむ」
霧島「……」
榛名「……」エヘヘ
比叡「え、終わり?」
榛名「」テレッ
霧島「いや、照れるところじゃないでしょ」
金剛「だー! 全然話が進みません! ボーイ&ガールじゃあるまいし、もっとこう……ガッといきなさい!」
比叡「」ウンウン
霧島「ケッコン前までは虎視眈々と提督を狙う狩人の眼をしていたのに……どうしたの?」
榛名「それは……」
榛名「いざケッコンしてしまったら迫るのが恥ずかしくなったというか……」
霧島「本当は?」
榛名「……その、一度フラレてるし、勇気が出なくて」
金剛「ノー! そんなこと言ってたら、いつまで経っても進展しないヨ!?」
榛名「ですが……」
比叡「提督だって榛名のこと憎からず思ってるだろうし、ガンガンいっても良いと思うけど」
榛名「無理に迫ったら避けられてしまうような気がして……榛名は提督に未練たらしい面倒くさい女だと思われたくないのです……」
金剛「んー……」
霧島「はい!」
金剛「ハイ、霧島」
霧島「夕張さんという特定の相手がいる以上、提督を落とすのは難しいと思います」
榛名「……」シュン
霧島「ですが、だからこそ突破口があります!」
霧島「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ。提督を落とす前に夕張さんを味方につけたら良いんです! これが私の案です!」ドヤァ
比叡「おー」
金剛「悪くない考えネ! どのみち、バリちゃんと対立していては略奪愛しか道はなくなるわけだし?」
榛名「それは榛名も本意ではありません。艦隊に修復不可能な不和が生まれるのは榛名も嫌ですから」
霧島「問題はその方法ですが……」
金剛「ふむ……」
榛名「でも榛名はもう夕張さんと仲良しだと思う……」
比叡「たしかに……よく一緒に遊び行ってるもんね」
金剛「んー……うん。飲み会、partyしましょう!」
榛名「ぱーてぃ?」
金剛「イエース! 私達姉妹と提督、バリちゃんの6人でネ!」
金剛「たしかに榛名とバリちゃんは仲良しネ! But お互いまだ話してないこともあるはずデース。ここはお酒の力を借りちゃいましょー! 私たちでガンガン飲ませマース!」
榛名「えぇっ!?」
霧島「……そうですね。ノミニケーションとも言いますし、ここらで一度腹を割って話すのも必要かもしれません」
金剛「That's right! バリちゃんもここのところ何か考えてるみたいだし、その辺の話も聞きたいところデスネ! そしてあわよくば、酔った勢いで提督にアプローチ!」
榛名「夕張さんの前でですか!?」
金剛「フォローは任せて!」
榛名「で、ですが」
霧島「そうと決まれば日取りを決めて提督を誘わないとですね!」
榛名「ちょ、ちょっと話を」
比叡「なんだか燃えてきたね!」
榛名「……はい」モウヤルシカナイ
――――
―― 食堂
叢雲「……それで、最近どうなわけ?」モグモグ
提督「どうって?」
叢雲「そんなの夕張と榛名とのことに決まってるじゃない」ショウユトッテ
提督「いや、特に問題はないが……」ハイ
叢雲「ふぅん? 正直意外ね。ぐいぐい迫られてるのかと思ったわ」
提督「……まあ俺も最初はどうなることかと思ったけどな。でも榛名は分別もあるし」
提督「それに一応……ちゃんとフッてるからな」
叢雲「……」モグモグ
叢雲「ま、そうね。それよりあんた……私に何か言うことあるんじゃない?」
提督「ん? んー……」パクパク
提督「改二おめでとう?」
叢雲「ありがと。でもそれは実装当日に聞いたわ。ほら、改二になった私を見て何かないわけ?」
提督「う~ん……」
叢雲「……はあ。もういいわ。こういうのって催促することでもないと思うし」
提督「催促ってことは、俺がなんかお願いされたりしてるってことか?」
叢雲「違うわ。別に気にしなくて大丈夫よ。大したことじゃないし」
提督「そうか……むむ」
夕張「提督ー! そろそろ時間ですよ!」
提督「……っと、すまん。そろそろ行くな」
叢雲「はいはい。演習指揮頑張りなさい」
提督「そうは言っても相手は元帥殿だからな……」
叢雲「何言ってんの。あんただって甲勲章貰ってるんだから実力は遜色ないはずよ。負かしてやるぐらいの気持ちでいきなさい」
提督「……なんか叢雲ってオカンみたいだよな」
叢雲「へぇ……?」ニコッ
提督「おっと、もう行かないと」アワワ
提督「ああ、その新しい制服も似合ってるぞ。なんかエロいし」ガタッ
叢雲「……あんたはさっきから一言余計よね」
提督「じゃあな」タタッ
叢雲「まったく……」
叢雲「似合ってる、か。ちゃんと言えるじゃない」
叢雲「……」ニヘラ
――――
――
提督「……」カリカリ
榛名「提督、先の演習の件で元帥からお褒めの言葉と観艦式の依頼が来ています」
提督「観艦式ぃ? ちょっと見せて」
提督「……ちょっと張り切りすぎたな」
榛名「勝っちゃいましたもんね」
提督「でも元帥殿だって主力ではなかったはずだ」
榛名「それはこちらも同じです。もっとも、夕張さんが旗艦で提督が指揮を取るとなった時点で負けはないと榛名は思ってましたよ?」
提督「その信頼は素直に嬉しいが……この展開は正直面倒だな。光栄ではあるが……当然主力級を出さなければならないのだろうな」
榛名「それを期待されていると思います」
提督「しかしまさか主力全員でここを空けるわけにはいかないしな。少し考えるか……後で」
榛名「忘れちゃダメですよ?」
提督「わかってる。でも、忘れてても榛名が教えてくれるだろ?」
榛名「もう……ずるいです。そう言われては、榛名が忘れるわけにはいきません」
提督「はは、冗談だ。でも、頼りにしてるのは本当だよ」ニコッ
榛名「~っ」キューン
榛名「……あの、提督。今度お姉様たちとお酒を飲みに行くんです。と言っても、鳳翔さんのところでですが……もし良かったら提督もご一緒に如何ですか? もちろん、夕張さんも一緒に」
提督「ん……珍しいな。金剛が酒を飲むなんて」カキカキ
榛名「はい。ですので提督もご一緒にどうかと思いまして」
提督「そうだな。せっかくだから混ぜてもらおうかな」
榛名「はい! 夕張さんにも榛名から伝えておきますね」
提督「わかった。楽しみにしてるよっと……ふぅ」ノビー
榛名「……お疲れでしたら、少し仮眠なさいますか?」
提督「そうだな……」
提督(以前仮眠を取ってから、榛名はこうして度々休憩を進めてくるようになった)
提督「うん。20分ぐらいで起こしてくれ」
提督(秘書官としての榛名の働きぶりは素晴らしく、長い間秘書官を務めていた夕張と比較しても遜色ないレベルだ)
提督(その安心感もあり、緊急の用件が無い限り榛名の好意に甘えるようにしている)
提督「榛名も休んでていいからな?」
榛名「ありがとうございます。この報告書の確認が終わったら休憩させていただきます」
提督「うん。じゃあ、すまないが少し寝るな」
提督(仮眠を取るようになってから身体の調子はすこぶるよく、作業効率も上がっている。気付かないうちに疲労は溜まっているのだと実感した)
提督(ソファに腰掛けながら榛名をちらりと見やると、こちらを見ていた彼女とパチリと目が合った)
提督(彼女は照れたように微笑み、ごゆっくりおやすみくださいと優しく言った)
提督(瞼を閉じて数分と経たずに押し寄せてくる睡魔に俺が負けるのにそう時間はかからなかった)
榛名(書類を片付け、大きく伸びをする。提督は静かに寝息をたてていた)
榛名「……」チラッ
榛名(提督が眠りについてからまだ5分ぐらいしか経っていない。指定の時間まであと15分はある)
榛名「」ソーッ
榛名(提督を起こさないように静かに近付き、その隣に腰を降ろす)
榛名(提督の右手と榛名の右手を絡ませ、胸に顔を埋める)
榛名(大きく息を吸い込むと提督の匂いが鼻腔をくすぐり、ピリピリとした電流が身体中を荒々しく駆け巡った)
榛名「ん……ふぁ……」
榛名(頭の中が焼けるように熱い。眼の奥で光が瞬いて、じわじわとお腹に熱がこもった)
榛名「~っ」ビクッ
榛名(全身を駆け巡る刺激が徐々に治まるにつれて、身体が脱力していく。同時に甘い蜜のような幸福感がじんわりと浮き立った)
榛名(激しくなった動悸が収まるのを待ってから、榛名はそっと顔をあげた)
榛名(あれから、榛名はこの行為をやめられなくなっていた)
榛名(それどころか、どんどん積極的になっていく自分を抑えられないでいる)
榛名(最初は隣に座り、手を握るだけだった)
榛名(次は抱きついてみた。提督の胸に顔を埋めると胸が高鳴った)
榛名(身体をなぞり、頬を撫で、ともかく榛名は提督に触れた。提督の温もりを感じたかった。身体に、心に焼き付けたかった)
榛名「提督……」
榛名(頬に触れ、唇をなぞり、なぞった指にそっと口付ける)
榛名(頬が火照り、呼吸が少しずつ荒くなっていく。早鐘のように高鳴る心臓の音が鼓膜の奥でうるさいくらいに反響していた)
榛名「……」ゴクッ
榛名(接吻……をすれば、このドキドキは収まるのだろうか)
榛名(けど、それはあまりにもリスクが高過ぎる。そして卑怯極まりない)
榛名(……でも、こうして眠っている提督に近付き、触れている時点で榛名は卑怯で卑屈な女なのかもしれない)
――――
―― 居酒屋 鳳翔
榛名「……」コクコクッ
榛名「ぷは。はぁ……」
足柄「あら? 榛名じゃない。珍しいわね。1人で飲んでるなんて」
陸奥「ほんとね。今日は夕張や祥鳳はどうしたの?」
鈴谷「榛名さんちーっす」
榛名「榛名だってたまには1人で飲む時もあります。そちらも……なんだか珍しい組み合わせですね」
陸奥「そう? ま、たまにはね」
鈴谷「せっかく会ったんだし、榛名さんも一緒に飲もー?」
榛名「え、ですが……」
足柄「いいからいいから! 色々話聞かせなさいよ」
陸奥「それで? 提督と何かあった?」
足柄「え?」
鈴谷「そうなの?」
陸奥「いや、珍しく1人で飲んでるからさ」
榛名「いえ……そういうわけでは」
足柄「んー? 何々? なんかあるならここで全部吐き出しちゃいなさいよ」
榛名「……その」
榛名「提督と何かあったというわけではないのですが……少し、自己嫌悪を……」
鈴谷「自己嫌悪? 榛名さんみたいな良い人が?」
榛名「とんでもないです。榛名はそんな立派な人ではありませんから」
足柄「よくわからないけど、提督絡みではあるってことよね」
榛名「まあ……」
足柄「う……」
鈴谷「う?」
足柄「羨ましい!」
足柄「うわぁぁぁ! 私だってそうやって提督とのことで悩んだり落ち込んだりしたぃぃぃ!」
鈴谷「あはは、足柄さんじゃ無理っしょー」ケラケラ
足柄「なんでよ!?」
鈴谷「だってさー、明らかに練度低いじゃん」
足柄「うぐっ」
陸奥「……まあそうねぇ」←練度80
鈴谷「……」←練度59
榛名「……」←練度116
足柄「……」←練度1
足柄「なにこれおかしくない?」
足柄「べ、別に練度低いからって提督と良い関係になれないわけじゃないし!」
榛名「ええ。提督はこの鎮守府で嫌いな人はいないと仰っていましたよ?」
足柄「良いこと言った!」
陸奥「でも練度が私達にとって特別なものになってるのは確かよね」
足柄「はぁ……もう直談判しに行こうかしら。いい加減戦場に出ないとなまっちゃいそうだわ」
鈴谷「練度は大本営の認可がないと上がらないもんね」
足柄「そうなのよねぇ……ケッコンなんて遠すぎるわ。もうなんとかして既成事実を作るしかないのかしら」
陸奥「物騒なこと言うのね」
足柄「婚活よこんかつ!」
足柄「既成事実(こんかつ)」
鈴谷「なにそれこわい」
榛名「残念ですが、提督を陥落させるのは難しいですよ?」
足柄「私頑張る!」
鈴谷「ははぁ~ん。さては榛名さん、遠慮しちゃって提督と進展してないなぁ?」
榛名「う……遠慮と言いますか。その……」
足柄「何!? そんなんじゃ駄目よ! せっかくケッコンしたんだから突撃よ! 突撃!」
榛名「ですが、そう単純な話ではなくて……」
足柄「よくわかんないけど気にすることないわよ! 男と女だもの、それは色々なことがあるに決まってるわ!」
足柄「私もそうだもの」
陸奥「ん?」
鈴谷「え?」
榛名「……」
足柄「でも、そうやって色々あるうちにいつの間にか絆が生まれてるの。私もさ、昔はね……」フゥ
足柄「あれはそう、私が艦娘になる前……まだピッチピチのJKだった頃の話よ……ふふっ、懐かしい」
榛名「……」
足柄「……」
陸奥「……」
鈴谷「……」
足柄「……」
陸奥「……」モグモグ
足柄「……」
鈴谷「……」ゴクゴク
足柄「えぇそうよ! ないわよ! そんな経験全っ然ないわよ! 」
鈴谷「ぶふっ、急に切れないでよ」ゴホッ
陸奥「なんですぐにバレる見栄を張ろうとするのか理解に苦しむわ」
足柄「いいじゃないちょっとぐらい! イメージトレーニングはバッチリだから大丈夫よ!」
足柄「ともかく! 榛名はもっとグイグイ行きなさい! 姉の金剛をもっと見習うべきよ!」
陸奥「まあそれは同意するわ。榛名、あなたの働き次第では私達まとめて提督に愛してもらうことも夢じゃないの。わかるわね?」
陸奥「もちろんあなたがハーレムに反対していなければ、だけど」
榛名「そういうことでしたら、そもそも榛名は夕張さんと提督の中に割って入ろうとしているわけですから……ハーレムが嫌だという我儘は言えません」
榛名「ですが、提督はああいうお人なので……あまりハーレム、というのは好まないようです。そういうところも素敵ですが」
鈴谷「……でもさ、男の人的にはハーレムってやっぱ夢じゃないの?」
榛名「どうなのでしょう……」
足柄「実際のところさー、榛名がその身体を使って誘惑したらコロッといくんじゃない? 意外に」
陸奥「……コロッとはいかなそうだけど、なし崩し的に関係は持てそうよね」
鈴谷「そうだったらチョロ過ぎじゃん?」
榛名「そんな簡単にはいかないと思いますが……」
榛名「それに榛名、特段身体に自身があるわけではないですし。一応スタイルが崩れないよう気を使ってはいますが……」
足柄「あんたそれ、龍驤の前でも同じこと言えるの?」
榛名「う、えっと……りゅ、龍驤さんも引き締まった良い身体をしていると思いますよ?」
鈴谷「とりあえずさ、榛名さんはサラシやめてブラにしよ?」
榛名「え、急になんです?」
鈴谷「やっぱりさ、サラシより可愛いじゃん? それにせっかく立派なモノ持ってるんだからさ、サラシで潰しちゃうのは勿体無いよ」
榛名「ブラ……」
陸奥「何なら私が見繕ってあげるけど?」
榛名「本当ですか? それなら是非! 本当は少し憧れてたんです」
足柄「そしてその勝負下着で夜這いをかけるってわけね!?」
榛名「えっ」
陸奥「夜這い……は無理じゃないかしら。きっと夕張さんと一緒に寝てるだろうし」
足柄「なんて羨まけしからん」
鈴谷「一緒に、かぁ……」
榛名「……」
足柄「榛名負けてるじゃない! そんなんじゃ駄目よ!」
榛名「榛名はまだ大丈夫です……」
足柄「仕方ないわねぇ……カツを! カツを食べましょう!」
鈴谷「ぅえっ!? 重いよ!」
足柄「験担ぎよ! もちろん勝つためにね! しっかり食べて元気つけなさい」
榛名「足柄さん……」
陸奥「カツはまあ無理して食べなくてもいいけど」
足柄「なんでよ!」
陸奥「あなたの思うように、悔いがないように……頑張ってみなさい。お姉さん、応援してるからさ」
鈴谷「鈴谷も相談ぐらいなら乗れるし」
足柄「ケッコンしてるんだから、遠慮なんていらないのよ!」
榛名「みなさん……ありがとうございます」
榛名「榛名、頑張りますね!」
足柄「そうと決まればカツを食べましょう!」
鈴谷「もう自分が食べたいだけでしょ……」
榛名「はい! 榛名、カツ食べます!」
足柄「お、いいわね! ガンガン行きましょう!」
榛名「榛名、ガンガンいきます!」
榛名「榛名、気合!入れて!食べます!」
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