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元スレ八幡「やはり俺のアイドルプロデュースはまちがっている。」凛「ぼーなすとらっく!」
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シオミー4代目シンデレラガールおめでとうー! そして凛ちゃんも総合9位クール部門3位おめでとうー!
いやーユニットCDが楽しみですなぁ。
……それだけです。更新は無いです、はい。すいません…
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いったいゆきのんは前川さんに何票投票したんだ…(みくにゃん総合2位おめでとう)
前回リンク先無かったから、今回は貼って欲しい!
個人的には八幡と楓さんとの絡みが見たい!
とにかく頑張れ!
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ある日の風景 比企谷家編
八幡「たでーまー」
小町「あ、お兄ちゃんおかえりー」 グデー
八幡「……どうかしたのか。そんな屍みたくなって」
小町「いやー集中力が中々続かなくってねー。……もう今日は色々限界」
八幡「ほーん、受験勉強中だったか。お疲れさん」
小町「いえいえ。ところでお兄ちゃんはいずこへ?」
八幡「それ使い方間違ってんぞ。ちょっとTSUTAYAにな」
小町「ツタヤ? なに、ラブライブのTカードでも作ってきたの?」
八幡「違う。いやそれも後々作るつもりだが……今回はこれだよ」 つDVD
小町「DVD?」
八幡「今日からレンタル開始だったからな。すぐに借りてきた」
小町「今日から……うーん分かんないなぁ。一体何を……っ!」
八幡「フッ」 にやり
小町「こ、これは……!」
八幡「そう、映画『眠り姫 THE SLEEPING BE@UTY』だ!!」
小町「買いなよ! お兄ちゃん!!」
八幡「言うな。今月厳しいんだ……」
小町「世知辛いね……」
八幡「まぁこればっかりは仕方がない。なんもかんも真骨頂クウガの出来が良過ぎるのが悪い」
小町「自業自得だったね……」
八幡「とりあえず俺は今から視聴開始するが、小町はどうする」
小町「……お兄ちゃん、受験生にそれ訊く?」
八幡「…………」
小町「たしかポップコーンとコーラがあったから持ってくるね!」
八幡「知ってた」
ー 視聴開始 ー
テレビ「ねぇ、知ってる? 桜の木の下には、女の子が眠ってるんだってーー。」
小町「奇麗な映像だねー」 もくもく
八幡「劇場にも見に行ったが、やっぱ何度見てもワクワクするな」 むしゃむしゃ
小町「始まり方が良いんだよね」 もくもく
八幡「しかし冷静に考えるとかなり怖いよな、この語り」 むしゃむしゃ
小町「確かに。春香さんが言ってるからそう感じないのかな」 もくもく
八幡「良いキャラしてるよな」 むしゃむしゃ
小町「キャラって言わないでよ。あれは素でしょ……たぶん」
八幡「別に批判してるわけじゃない。というかむしろ、765の中では俺はかなり好感を持ってる方だ」
小町「およ、そうなの?」
八幡「なんというか……自分の良い所、アピールポイントを理解してる、って言えばいいのか。あれが演技してるにしろ素なのにしろ、アイドルをあそこまで体現してる所は素直に凄いと思ってる」
小町「ふーん? よく分かんないや」
八幡「まぁ、これは星井にも言えることだがな」
小町「あー確かにミキミキは自分の可愛いところ分かってそうだね。ていうか実際カワイイし」
八幡「俺の場合あそこまで行くと逆に苦手だ」
小町「あはは、それお兄ちゃんが女の子に耐性無いだけじゃない?」
八幡「最近妹の言葉の端にトゲを感じる」
小町「別に前からでしょ」
八幡「それもそうだ」
テレビ「私たちの中から、アイドルが選ばれるかも知れないんだって!」
小町「ハム蔵が透明だよお兄ちゃん」
八幡「CGだろ。普通に考えて」
小町「最近の技術は凄いね」
八幡「けど確かに動きそっくりだし、もしかしたらモーションキャプチャーでも使ってんのかもな」
小町「もーしょん……? って、なに?」
八幡「G4Uでアッキーが協力してくれたやつだ」
小町「もっと分かんないよ」
八幡「お、あずささんが色っぽい」
小町「あのカーテンに二人で隠れるの、私でもやられたらドキドキするよ」
八幡「親父の気持ちが少し分かるな」
小町「あれ? お父さんってあずささんのファンなんだっけ?」
八幡「……そうか、お前はあの事件の時出かけてたからな。知らないのも無理はない」
小町「えっ。なにその不穏な語り口」
八幡「あれは俺と親父が竜宮小町のライブをテレビで見ていた時だった……」
小町「なんか始まった……」
八幡「その時リビングにおふくろがいなかったから、油断していたんだろうな。親父はふと呟いた」
小町「何を」
八幡「『あ~あずささんと結婚してーなー』、と」
小町「うわぁ……」
八幡「そしてその時、丁度背後に母がいたのを俺は端から見ていた、と」
小町「うわぁ…………」
八幡「これが世に言う『比企谷家あずささん罪な女事件』だ。完全に俺の中だけだけど」
小町「前にお父さんのご飯だけ一週間パンの耳だったのはそのせいだったんだね……」
八幡「まぁメシが出るだけ慈悲を感じるがな」
小町「そういえば、お母さんは誰かのファンとか言ってたっけ?」
八幡「……まこりん」
小町「……分かりやすいなー比企谷家」
テレビ「うぅぅぅ……うぅーーッ!!」
八幡「やよいちゃん、やよいちゃんっ!!」
小町「お兄ちゃんうるさい」
八幡「これが黙っていられるか。ってかよやいちゃん、完全にあれキメt」
小町「あー真さんカッコイイなー。雪歩さんも奇麗だし」
八幡「散髪シーンの告白は正直ビビったぞ。遂にか!? って。カップリングも狙いまくりだよな」
小町「そこがまた良いんじゃん。貴音さんが悪役ってのもまたね」
八幡「確かに。双海姉妹は最初思わず吹き出したが」
小町「あれは笑っても仕方ないね」
八幡「ってか、いおりんキャラまんま過ぎね?」
小町「そこはホラ、そーゆー需要を大事にしてるんじゃない?」
八幡「それを言われたら何も言い返せんな。涙目最高だったし」
小町「あと、今回は律子さんも出てたから嬉しかったね」
八幡「普段は竜宮のプロデューサーやってるもんな。たまにはこういう風に出てほしいもんだ」
小町「ん。この曲……挿入歌は新曲だったよね」
八幡「普通にカッコ良くて驚いた思い出」
小町「それで主題歌が題名にもなった眠り姫、ね。エンディングで流れた時は泣きそうになっちゃった……」
八幡「おい、エンディング前にそういうこと言うな。ホントに泣いちゃうだろ」
小町「ていうかお兄ちゃん普通に映画館で泣いてたよね」
テレビ「ハルカ、私、アイドルになるわーー!」
八幡「…………」
小町「…………」
八幡「……良いな、やっぱ」
小町「うん。……この間さ、ネットでメイキング映像見たんだ」
八幡「マジか。俺まだ見てねぇぞ」
小町「公式ホームページで見れるよ。それでね、その中で千早さんが言ってたんだ」
八幡「………」
小町「『最近は、色んなお仕事が楽しいんです』、って」
八幡「……へぇ、あの如月千早がねぇ」
小町「すっごい良い笑顔で言うもんだから、なんかこっちまで嬉しくなっちゃった」
八幡「前までは、歌にしか興味ありません! って感じだったのにな」
小町「うん。……でもきっと、良いことだよね」
八幡「……だな」
ー 視聴終了 ー
八幡「良い映画だった。掛け値なしに」
小町「お兄ちゃんほら、ティッシュ」
八幡「すまんな」
小町「こちらこそ。小町も良い息抜きになったよ」
八幡「そら良かった」
小町「お父さんとお母さんもそろそろ帰ってくるだろうし、小町はご飯の準備するね」
八幡「そんじゃ、俺は風呂でも沸かしますかね」 ピッ テレビ切り替え
小町「おや珍しい。どしたの?」
八幡「なに、良いもん見た後だからな。気分が良いだけだ」
小町「あはは、単純だなぁお兄ちゃんは」
八幡「うるせ。それより小町、飯にするならカレーを…」
テレビ「明日夜9時、シンデレラプロダクション特大企画を発表! お見逃し無く!」
765では一番春香さんが好きなので、正直本編書いてる時出したくて仕方なかったという。
でも一番良い所で出してあげたかったから、ずっと我慢してのあの最後でした。あのシーンだけはかなり初期から決めてたなぁ。
でも一番良い所で出してあげたかったから、ずっと我慢してのあの最後でした。あのシーンだけはかなり初期から決めてたなぁ。
乙
あの春香さんは涙が出るくらい素晴らしかった
そういや八幡は回転ずしで響に会ってるんだよね
八幡と響の会話も見てみたいな
あの春香さんは涙が出るくらい素晴らしかった
そういや八幡は回転ずしで響に会ってるんだよね
八幡と響の会話も見てみたいな
>>862でよやいちゃんという謎アイドルが爆誕してる
ってかよ、までで区切るとやいちゃんになる
ってかよ、までで区切るとやいちゃんになる
>>868
そろそろ夏だし 夏関係のイベントとかは?
そろそろ夏だし 夏関係のイベントとかは?
のまけ聞いてて「りんりんしぶりんの~」で可愛かったから
こんな感じのをヒッキーに見られて恥ずかしがるしぶりんを!
こんな感じのをヒッキーに見られて恥ずかしがるしぶりんを!
お前は後!
今回はpixivにも同時投下という初の試み。これで別人と疑われる事も無かろう。いや誰も疑ってないだろうけど。
小ネタのアイディアありがとうございましたーもしかすれば何個か拾うかも。
今回はpixivにも同時投下という初の試み。これで別人と疑われる事も無かろう。いや誰も疑ってないだろうけど。
小ネタのアイディアありがとうございましたーもしかすれば何個か拾うかも。
ある日の風景 その8
八幡「…………」
遂に、この時が来てしまったか。
凛「プロデューサー? どうかしたの?」
八幡「……いや、なんでもない」
呆然と立ちすくむ俺を不信に思ったのか、首を傾げる凛。
だが少しくらいは察してほしい。今、俺がどれだけ精神的に追い込まれているのかを。
凛「じゃあ、この辺で少し待っててくれる? 私はお父さんとお母さんに先に説明してくるから」
八幡「お、おお」
そう言ってさっさと店、もとい家の中へと入っていく凛。
俺に比べ、その様子は何とも余裕綽々と見える。なんか俺だけ意識してるみたいで嫌だ。つーか事前に話しておいてくれよ、更に緊張してきただろ。
八幡「……はぁ、憂鬱だ」
そう、今俺は担当アイドル渋谷凛の実家へと赴いている。
やはりプロデューサーとして親御さんに挨拶するのは当然とも言えるし、本来であればもっと早くに来なければいけなかったのだが……正直、とてつもなく気が進まなかった。
だって自分の娘がアイドルをやってるってだけで心配が尽きないだろうに、その担当プロデューサーが俺だぜ? こんなん紹介されたら不安が加速すること間違い無しだろ。俺だって俺で不安です。
八幡「…………」 そわそわ
意図せずして視線が彷徨う。身体が勝手に忙しなく動く。
ダメだ、考えれば考えるほど気持ちが沈んでくるな……
どうするよ、もし凛の父親が漫画に出てきそうなテンプレ頑固親父とかだったら。「お前みたいなガキに娘は任せられん!」みたいな。「お前なんかに娘はやらん!」みたいな。
……いや、それじゃまるで結婚の挨拶に来たみたいだろ。
違う違うそうじゃない。俺はあくまでプロデューサーとして、担当アイドルのご両親に挨拶に来ただけであって、他意は無い。他意は無いんだ。だから落ち着け俺の心拍数。
八幡「……花でも見て落ち着くか」
凛には店の中で待っていてくれと頼まれたし、特にする事も無いからな。気持ちを落ち着けるには丁度いい。
辺りを眺めてみれば、色とりどりの花が陳列してあった。見覚えのあるものもあれば、見た事が無いようなものも。俺は花にはそんな詳しくはないが、見事なもんだな。つーか、花屋自体そんな入った事が無いからそう見えるのかもしれんが。
八幡「…………」 きょろきょろ
歩きながら色んな花を見てみる。
しかし実家が花屋を経営しているのは知っていたが、よくよく考えてみれば凄い乙女チックだよな。将来の夢はお花屋さん、というか既にお花屋さん。それもあの凛が言ってたらと妄想するだけで色々捗る。
八幡「……まぁ、今じゃもっと女の子の憧れの的になれたがな」
お花屋さんよりも更に狭き門である、アイドルという存在。そんな誰もが一度は夢見る存在に、凛はなることが出来た。
そう考えると、凛は誰よりも女の子してるとも言える。
……それだけに、本当に親御さんは可愛がってんだろうなぁ。
八幡「やべぇな……一発殴られるくらいは覚悟しといた方がいいか」
だ、大丈夫だ。普段平塚先生のおかげで少なからず耐性は出来ているはず。もしもの時は応戦もやぶさかではない。俺にはサブカルで培った脳内格闘知識があるからな。脳内梁山泊に脳内勇次郎がついてるし、夜叉の構えから左手回して8時の方角で……
八幡「ん?」
ふと、視線を感じる。
最初は凛が戻ってきたのかと思ったが、見渡してみても姿は見えない。それどころか人の影も無い。
はて、ただの気のせいかしらと、そう思った時だった。
八幡「……お前か」
わんっ、という比較的小さな呼びかけに振り向いてみれば、その正体はすぐに分かった。
凛が入っていった家の方から、たったかと駆け寄ってくる一匹の犬。
パッと見はヨークシャーテリアかと思ったが、それにしては少し身体が長いな。ミックスか? しかし、小型犬ならではのこのトコトコ歩く感じはなんとも可愛らしい。
八幡「もしかしなくても、お前がハナコか?」
寄って来たワンコの頭を撫でながら訊いてみると、また一回わんっ、と小さく吠えた。当たりみたいだな。まぁ他に飼ってるとも聞かなかったし。
八幡「…………」 なでなで
撫でる毎に、くぅーんと気持ち良さそうに身をよじるハナコ。
ふむ。こう素直で従順な所を見せられると何とも愛らしく見えてくるな。全然敵対心を感じない。猫を飼っている俺でも、やはり犬は可愛いもんだ。あ、でもウサギ派になったんだっけ俺。
八幡「しかし、やけに懐いてくれるな。初対面だろ俺ら」
すり寄るように身体をくっつけて来るハナコに、悪い気はしないながらも不思議に思う。
そういや由比ヶ浜から一時期預かってたあの犬、なんつったっけな。なんかお菓子みたいな名前の犬。鳩サブレみたいな名前の……もう答え言ってんな。サブレだサブレ。あいつもやけに俺に懐いていた。
まぁ、あいつの場合は助けてやった恩があるからかもしれんがな。犬がそんな事を考えてるかはともかく、覚えてはいたのかもしれない。となると、なんでコイツはこんな懐いてんだ。不思議だ。
八幡「猫飼ってる奴は匂いが付いてるって言うし、その匂いに反応してんのかね」
それなら逆に嫌がりそうな気もするが、仲良くやってる犬と猫もたまにテレビで見るしな。そのパターンもありえる。
八幡「おーおーそんな尻尾振っちまって」 なでなで
フリフリと、可愛らしく尻尾が動き回る。
うちのカマクラもこんだけ素直ならな。
八幡「…………」 なでなで
ふと、考える。
初対面の俺にこんだけ懐くって事は、凛ともさぞ仲が良いのだろう。
話を聞く分じゃあいつも中々に可愛がってるみたいだし、仲睦まじい絵が想像出来る。
……ただ、それだけに。
八幡「……悪いな。ご主人様を連れ回して」
自然と、声が小さくなってしまった。
別に俺がアイツを独占しようとしてるわけじゃない。仕事上、凛の人気が上がれば上がる程忙しく、時間が取れなくなってしまう。それは凛も了承しているし、仕方の無いことだ。
だが、それがハナコに分かるとも限らない。
コイツからすれば、最近は凛の帰りが遅く、中々遊んで貰えないと不満を感じているかもしれない。
そう考えれば、その原因の一端である俺はハナコにとって、少なからず憎らしい存在と思われてるかもしれない。
それを知らずにこうして懐いてくれるのか。はたまた、知った上で俺に懐いてくれてるのか。それは俺には分からない。だから、一言謝っておく事にした。意味を成さなかったとしても、それでも、言っておいた方が良い気がしたから。
八幡「ま、アイツのことだ。どうせどんなに忙しくても遊んでやってんだろうな」
苦笑しつつ俺が一人呟くと、ハナコはまた一度小さく鳴いた。
八幡「なんだ、やっぱそうなのか」
抱え上げるようにして、自分と同じ目線まで抱き寄せる。
ちょっとダックスぽいな。
八幡「ってこら、やめんか」
ぺろぺろと顔を舐めてきたので、思わず引き離す。
だがそれでもじゃれて来ようとするハナコを見て、自然と笑みが零れてしまった。
なんなんだろうね。やっぱあれか、俺は犬にモテる体質なのか。そう考えれば色々と納得がいく。これはもう人より犬と添い遂げた方が幸せになれるんじゃね? いや待て、犬属性の女の子とかいればそれもう完璧じゃ……
凛「……プロデューサー?」
八幡「っ!?」
いきなりの呼びかけに、思わずビクッと身体が反応する。いつの間にか凛が戻ってきていた。
びっくりしたー……全然気付かんかった。
凛「ハナコ、随分プロデューサーに懐いてるね」
八幡「あ、ああ。本当にな」
台詞自体は普通なのだが、どこか凛の表情が暗い。いや暗いというよりは、しかめっ面と言えばいいのか。何となく不機嫌な気がする。ま、まさか親御さんの反応が芳しくなかったとか、そういう事なのだろうか。
俺が嫌な想像をしていると、凛は俺に近づき、抱えていたハナコを奪い去ってしまう。いやこの表現はおかしいな。どちらかと言えば奪っていたのは俺の方だ。
凛「ハナコ、プロデューサーにあんまり失礼な事しちゃダメだよ。一応お客さんなんだから」
凛の言葉に、心なし項垂れた様子でくぅーんと泣くハナコ。ていうか、別に一応ってつけなくていいんじゃないですかね……
凛「プロデューサーも」
八幡「え」
まさか自分にも矛先が向かって来るとは思わなかったので、少し驚く。
凛「ハナコにちょっとデレデレし過ぎじゃない? 変な物とかあげないでよ?」
八幡「いやそんな事しねぇよ……」
そりゃ確かに可愛いなとは思ってたけども。そんな施しを与えるような事を俺はしない。むしろ俺が養われたい。
しっかし、なんでそんな不機嫌なんかね。もしかしてあまりにハナコが俺に懐くもんだから、飼い主としてちょっとやきもち妬いちゃってんのか? それなら少し納得。
凛「……あんな顔、私と話してたってしないのに」 ボソッ
八幡「あ?」
凛「なんでもない!」
ぷいっとそっぽを向く凛。
いやはや、これだから最近の女の子はよく分からん。やっぱ犬か。犬なのか。
凛「……別に、プロデューサーが謝る必要なんて無いよ」
と、そこでまた凛が小さく呟く。
しかしその声は俺の耳までハッキリと聞こえた。謝らなくていいって……
八幡「……お前、聞いてたのか」
凛「…………」
こくんと、小さく首肯する凛。
ま、マジか。犬に話しかけてるのを見られるとか、恥ずかしいってレベルじゃねぇぞ。しかも会話の内容も内容なので、羞恥心がマッハである。フルスロットル!
凛「……確かに最近は忙しくなってきて、あまり散歩も行けてないよ」
八幡「…………」
凛「お店の手伝いも出来なくなってきたし、迷惑をかける事もあるかもしれない」
八幡「いや、それは…」
思わず声をかけようと、凛を見る。
だが、その言葉は途中で消えてしまった。凛の顔を見たら、口から出る事は無かった。
凛が、笑っていたから。
凛「でも、私は決めたから。もう覚悟は出来てるよ」
どこまでも真っ直ぐに、どこまでも強く。
その様子を見れば、俺の心配なんて必要ないのが分かってしまった。俺の不安や緊張なんて、とても小さく見えるくらいに。
そして凛は抱えていたハナコに向き合い、小さく微笑む。
凛「だからこれは、私が言わなきゃダメなんだよね」
八幡「…………」
凛「ごめんハナコ、あまり構ってあげられなくなっちゃうけど……待っててくれる?」
少しだけ哀しそうに笑って言う凛に、ハナコは小さく吠える。
まるで、愚問だとばかりに。
凛「……ありがとう」
凛は目を閉じ、ハナコのおでこと自分のおでこをくっつける。その様子を見ているだけで、なんつーか……ごちそうさまです。
凛「あ、こらっ。くすぐったいよ…」
ぺろぺろと今度は凛を舐め始めるハナコ。
お、おお……これはヤバイな。とても微笑ましい光景な筈なのにとてもいけない気持ちになってくる。気付けば自然と手が動いていた。
パシャっとな。
凛「っ! ちょ、ちょっとプロデューサー! なんで撮ってるの!?」
八幡「え? あ、いや、ほら。えーっと、こ、これも仕事のなんたらかんたらみたいな…」
凛「言い訳すら出来てない!?」
いやーだってこれは撮るでしょ。誰でも撮るでしょ。雪ノ下とか相手だったら即ゴミを見るような目で社会的抹殺されそうだけど、凛が相手なら渋々許してくれそうだし。渋谷だけに。
さっきまでとても良い話な雰囲気だったのに、それもどこかへ行ってしまった。俺のせいか。
凛「もう、プロデューサーったら……」
呆れたように笑う凛。
そうやって仕方なさそうに笑って許してくれる所、ちょっと小町に似てるな。
凛「……ちょっと勝手なのかな」
八幡「? 何がだ?」
凛「さっきみたいにさ、ハナコはこう言ってくれてるって、勝手に良い方に解釈しちゃうのが」
困った風に笑う凛を見て、なんだそんな事かと溜め息が出る。
そんなもん、ペットの飼い主なら誰もがやってる事だろ。自分の良い方に解釈しちまうのは当然だ。なんせ相手は言葉を発しない。
……でもよ。
八幡「良いんじゃねーか? 別に、悪いことじゃないだろ」
凛「え?」
八幡「もし後ろめたいと感じるなら、見方を変えてみればいい。ハナコはこう言ってると“決めつける”んじゃなく、きっとこう言ってくれてるって、“信じる”んだよ」
ただの言葉遊びだ。結局は良い方に考えようとしてる事に変わりは無い。
けど、それでも気持ちに折り合いをつける事は出来る。少しだけ、ハナコの気持ちを尊重する事が出来る。
たとえ言葉が通じなくたって、心が通じ合っていると、そう思えるから。
凛「“決めつける”んじゃなくて、“信じる”、か」
俺の言葉を反芻し、やがて凛は笑いを零す。
凛「ふふ……プロデューサーって、捻くれてるけどたまに良いこと言うよね」
八幡「捻くれてるもたまにも余計だ」
まったく、素直に褒めることは出来んのか。お前らがそんなん言うからどんどん捻くれていくんですよ? まぁお前が真っ直ぐな分、相方の俺が捻くれてる方が丁度いいかもな。
凛「……ハナコと、プロデューサーも。これからもよろしくね」
八幡「犬と一緒ってのもどうかと思うが……まぁ、こちらこそ、な」
たぶん、これから凛はもっと売れて、有名になって、忙しくなってくんだろう。
それこそ、休みも中々取れず、プライベートの時間が減っていくくらい。
なら、俺は俺に出来る事をやって、少しでも彼女の力になって、負担を減らしてやろう。
彼女が可愛い可愛い愛犬と、散歩に行けるくらい。
八幡「……そういや、親御さんはどうだったんだ?」
ふと、思い出す。
そういえば今日は凛のご両親に挨拶に来たんだった。何も愛犬と戯れる為に来たわけじゃない。
しかし俺の言葉を聞いても、凛は何も答えない。というより、俺の言葉を聞いて固まっているようだった。
八幡「凛……?」
一体何事かと思って顔を覗き込んで見てみると、凛の顔は青ざめていて、そしてその後瞬く間に赤くなっていく。え、なに、どういうこと?
俺が不信がっていると、凛はぷるぷると腕を上げ店の奥側へと指を指す。
俺は猛烈に嫌な予感を感じながら、追ってその方向へと顔を向ける。あー……
八幡「…………………………どもっす」 ぺこ
恐らくは凛の両親が、そこにいた。
アイエエエエ! リョウシン!? リョウシンナンデ!?
いやいやいつから!? いつからそこにいたのん!?
というか、凛の反応を見るに最初からいたのを今思い出しましたよね!
八幡「り、凛さん。何故早く言ってくれなかった……」 顔真っ赤
凛「だ、だって、プロデューサーがハナコと話してたから、そのこと聞いてたら、忘れちゃって……ぷ、プロデューサーのせいだよ!」 顔真っ赤
八幡「いやいやいやその理屈はおかしい。俺は悪くない。世界が悪い」 顔真っ赤
その後言い争う俺たちを、何故か凛のご両親が宥めるという珍妙な展開になってしまった。
しかし何故か二人とも微笑ましいものを見るかのような視線で、俺と凛は終始顔の熱が治まらなかったのは言うまでもない。いやニヤニヤし過ぎでしょあなたたち……
かくして、俺の担当アイドルお宅訪問は気恥ずかしさMAXで幕を閉じた。
あの後もお茶を淹れて貰ったり、少し話をしたりしたのだが、ただただ俺(と凛)が慌てふためいていただけなので割愛する。誰も自分の恥ずかしい経験を語りたくはないだろう。
でも、殴られたりしなかったのは助かったな。親父さん怖い人じゃなくて良かった……
まぁでも、よく考えてみれば当然か。あの凛を育ててきた両親だ。
良い人たちでない、はずがない。
帰り際、凛とハナコが見送ってくれた。
本当はご両親も付き添いたかったそうだが、凛が全力で止めていた。正直助かったな。
凛「それじゃ、また明日事務所でね」
八幡「おう。また明日」
凛「ほら、ハナコも」
抱えていたハナコを、少しだけ俺の方へと寄せる凛。
俺は特に迷いもせずその頭を撫でた。
気持ち良さそうにするハナコを見て、自然と頬が緩む。
八幡「んじゃ、またな」
名残惜しそうなハナコにそう言って、俺は歩き出した。
やがて少し離れた所で、誰に言うのでもなく、小さな凛の声が聞こえてくる。
「……ハナコは良いよね」
その言葉の意味はよく分からなかったが、俺は気にせず歩みは止めない。
返事は、きっとハナコがしてくれる事だろう。
おわり
乙
両親への挨拶とか高校生で体験する自称ボッチ八幡…末永く爆発しろ!
両親への挨拶とか高校生で体験する自称ボッチ八幡…末永く爆発しろ!
渋の検索窓に「短編集 たとえばこんなある日の風景。」入れて、小説タブにしたら出た
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