私的良スレ書庫
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元スレ咲「人にやさしく」
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暫くしてサキは泣き止み、落ち着きを取り戻しつつあったものの、未だ背に回した腕で強くしがみついていた。
智葉「サキ、ほら行くぞ」
サキ「ん、……もうちょっと」
このままでは埒があかない
いつまでも晴絵を待たせているのも悪いし、何よりもサキの髪ゴムの行方が気がかりだったのでそろそろ戻ろうと催促するが、サキは首を横に振り、頑なに立ち上がろうとしない。
仕方がないので抱きかかえたまま歩く事にした。
肩にかかる重さや、染みる温度が愛しさが込み上げ、つい頬が緩む。
智葉「ふふっ」
サキ「?」
どうやらこの数日で、サキをおぶる事に随分と慣れてしまったらしい。
己には似合わないと思いつつも、不思議と悪い気はしなかった。
駅の外に出る間、幾つかの人と擦れ違った。
その度に何やら好奇の視線を注がれる。
慈愛に満ちたような微笑みやら、熱に蝕まれたような眼差しやら、むず痒く落ち着かない。
そんな周囲の態度に萎縮して縮こまるかと思えば、サキはリラックスした様子で私に体を預けていた。
晴絵「お帰り。どうだった?」
改札口の前で、赤土晴絵は律儀に待ってくれていた。
私は無言で首を振るだけで結果を告げる。
晴絵「そっか……まあ仕方ない。車に乗りな、送ってやるよ」
追求するでもなく、察したような口振りで晴絵は私の背を小気味良く叩いた。
ただ一言、良かったな、と添えて。
絶句する私に対し、晴絵は更に追白する。
晴絵「だって、まださよならを言う準備も出来ていないだろ?」
それは心構えの話なのか。
辛いだとか、寂しいだとか……確かに今日、サキの姉と無事に出逢えていれば唐突な別れになっていただろう。
言葉の意図が掴めないまま私は、先を往く晴絵の後ろ姿を追い掛けた。
それから車内で連絡を取り、最寄りの公園で久や白望達と一旦合流した。
久は車から降りるサキの姿を見るや否や、飛びかかる勢いで抱き締め、互いの額を重ね合わせる。
久「サキ……見つかって良かった。心配させないでよもう!」
サキ「えへへ、ごめんなさい」
サキは柔和な笑みを浮かべてそれを受け入れた。
言葉の勢いほど、怒気が含まれてなく、純粋に心配されていたのを十分に理解しているようだった。
もしサキと離れ離れになったとしたら、久は泣くだろうか、それとも堪えて笑顔で見送るのか。
晴絵の言葉が頭に引っ付いて、未だ消えずに残っている。
私は傍らにいる白望に尋ねてみる事にした。
智葉「なあ……さよならを言う準備ってなんだと思う?」
白望は薄暗い雲に覆われた空を仰ぎ見る。
思案に耽るように。
白望「さあね」
そして、とぼけているのか本音なのか、見定まらない顔付きで呟くように口走った。
だが、その回答では私は満足を得られないから、更に追って問いを重ねていく。
智葉「白望は……準備は済んでいるのか?」
白望は空を見上げたまま、そうだなぁと小さく独白する。
白望「私は……智葉もそうだと思うけど、なんだかんだ折り合い付けて、普段の生活に帰っていくんだろうね」
他人行儀にも聞こえる白望の言葉は、きっと的確に未来を表していた。
白望「でも」
顔を降ろした白望はいつもと変わらない、眠たそうな表情だった。
視線を辿れば、久と戯れているサキがいる。
白望「サキは……どうなんだろ。一度疎遠になったら、もしかしたら二度と逢う機会がないとか、想像もしてないんじゃないかな」
白望の言葉は正しい。
サキの現状は姉と再会する事だけで手一杯で、また姉と再会できたのならば、それと同じように私達とだってまた再会できると考える筈だ。
でも、何故だろう。
私には信じることができなかった。
別離してしまったが最後、二度と逢えないのではないかと。
智葉「……」
ふと、白望の真似をして空を眺めてみると、真昼の空に透明な月が浮かんでいる。
白く、くすんだその色は、今の私の心情によく似ている気がした。
私は心の内が晴れないまま空を仰ぐのを止め視線を移すと、白望がサキの様子を眺めていた。
体を左右に揺らし、まるで早く彼女の傍に寄り添うことを待ち侘びしく我慢しているようだ
白望「智葉、久とサキが待ってる」
智葉「……そうだな」
私は小さく頷いと、それを合図に白望はサキの下へ早足で向かう。
本当にサキの事が気に入ったんだなと、口元が緩んだ。
久「ほら、智葉も早く! サキの髪留め探すんだから!」
智葉「ああ、今行く」
ひゅんと吹く木枯らしがブランコを揺らすと、自然と肩が小刻みに震えた。
あまりサキを寒い中に晒して置きたくない。
だから、一刻も早くサキの髪留めを見付けて終おう。
乙
原作回想のサキちゃんも可愛いけど更に可愛い!家なき子みたいな不憫な子を応援したくなる心理に近い可愛い!
原作回想のサキちゃんも可愛いけど更に可愛い!家なき子みたいな不憫な子を応援したくなる心理に近い可愛い!
インフル患いました
申し訳ないです。治り次第投下します(22日予定)
申し訳ないです。治り次第投下します(22日予定)
お大事にですのだ
聡明な読者は巨匠の仕事を急かしてはならない
聡明な読者は巨匠の仕事を急かしてはならない
長編は最初の勢いで1ヶ月以内で書ききらないと大体こうなる
安価と違ってすぐに反応があるわけじゃないし
あ、インフルで闘病生活送られてたんでしたっけ?
ご冥福をお祈りします
安価と違ってすぐに反応があるわけじゃないし
あ、インフルで闘病生活送られてたんでしたっけ?
ご冥福をお祈りします
そんな想いとは裏腹に時間だけが不条理に過ぎていく。
緩やかに曖昧になる影の色と夕闇の境。
完全に夜になってしまえば、最早見付けるのは不可能だろう。
久「サキ、もう明日にしましょう?」
膝を落とし、サキの目線と位置を合わせて久は問う。
サキ「……」
くしゃくしゃ歪むサキの顔。
大きく瞳を見開き、涙が零れそうになるのを堪えている。
咄嗟に「新しいの買ってあげるから」と紡ぎそうな久の口を、私と白望は強引に手で塞いで止めた。
白望「久、ストップ」
久「むむー、むーっ!」
久は不満げに眉を顰め、抗議の唸りを挙げる。
そんな私の姿を、サキは双眸の潤いをそのままに、縋るように見つめていた。
智葉「サキは、あの髪ゴムが良いんだろ」
私の問いに、サキは必死になって首を上下させる。
智葉「安心しろ。私は真剣な奴の味方だ」
サキ「……うん!」
炎が点る。
涙は何時の間にか引っ込んでいた。
久「仕方ないわね。いっちょ付きあってやりますか」
息をほぅっと吐いた久が苦笑混じりに袖を捲り、気合いを入れ直して。
白望「ダルいとか言ってる場合じゃないよね」
白望は各関節をぐるぐると回した。
久の言いたい事も分かってはいる。
諦めは時に肝心で、それを見極めることができるようになるのが大人になる一つのプロセスだ。
それは、間違いじゃあない。
けれども、私はサキに諦め上手にはなって欲しいとは思わない。
少なくとも、今は。
本当に大事な物を、大事にできるように。
──────
────
──
それからメグ達には流石にこれ以上付き合わすのは悪いと、感謝の意を添えて解散して貰い、そしてサキが歩いた道のりを何度も何度も往復して探し回った。
緩やかに人影が夜に溶けて、空に星の光がちらほらと浮かび始めている。
智葉「サキ、どうする?」
サキ「まだ、がんばります」
その声は弱々しく、表情には疲れが見える。
それでもサキが首を横に振るうから、私はとことん付き合おうと思う。
勿論手を抜いたりしない。
サキが見つかると信じるなら、私もサキを信じよう。
サキと手を堅く繋ぎ、縦横無尽に目玉を動かす。
花の髪ゴムで左右を結った彼女を心に描き、僅かでも見落としがないようにと。
「あら、貴女達」
そんな折りに不意に背後から声がかかった。
聞き覚えのある、……確か数日前に。
振り返れば、知り合いというか顔見知りというか。
白望「あ」
久「げ」
智葉「……ちっ」
私達は三者三様に一つの音節を口から漏らした。
美穂子「何ですか、その反応は……」
どうやらこの状況において、最も出逢いたくない人物に出逢ってしまったようだ。
彼女の性格からするに、次の言葉は容易に想像が付く。
サキ「あの、みほこせんせーこんばんは!」
美穂子「あらサキちゃん、こんばんは……って貴女達、小さな子をこんな遅い時間まで連れ回して」
久白智「「「………」」」
ほら始まったと言わんばかりに私達は顔を見合わせる。
こうなってしまったら、探索を続行する為には足留め役という名の生贄が必要だ。
白望「久」
智葉「まあ御前は今より印象が悪くなることはないだろ」
久「いやちょっと待ってよ。それはないんじゃない? 少し考え直しましょう?」
美穂子「私の話聞いてますか?」
聞く耳持たず。
白望「パス」
智葉「任せた。……サキ、走るぞ!」
サキ「は、はい!」
数瞬後、やいややいや喚く女性の声と宥める女性の声が背中を叩き、それが暫くの間耳に届いていた。
そろそろ二人の姿が見えなくなっただろうと足を止め、後方を確認すればやはり見えなくなっていた。
安堵に息を吐き、再び前を向く。
「おつかれ」
後ろを見るまでは間違いなく誰もいなかった筈だ。
それでも彼女、ネリー・ヴィルサラーゼは待ち構えるが如く其処に立ちはだかっていた。
智葉「先刻振りだな」
ネリー「そう、だね」
ネリーの薄い微笑みに何やら不穏な空気を感じ取り、私と白望は壁になるようにサキの前に立つ。
するとネリーは表情を曇らせ、背の後ろで手を組んで。
まるで、今にも泣き出しそうで。
ネリー「別に、そんな警戒しなくたって……私なんにもしないよ?」
震えを帯びた声が、私の心に爪を立てる。
今にも駆け寄りたくなる衝動を抑え、私は冷たい声でネリーに尋ねた。
智葉「それじゃあ御前は、何しに私達の前に現れたんだ?」
ネリー「私だって分からない……サトハがサキと一緒にいると、サトハはサキばかり見てて詰まんなくて、でもサキに私の占いをしたら、サキが喜んでくれて良かったと思ったんだよ?」
ネリーは握り拳をそっと開いて私達に差し出す。
ネリー「ねぇサトハ、私どうしたらいいのかな?」
その手の平の中には、サキの髪ゴムがあった。
よく見れば、ネリーの体は埃を被り薄汚れていた。
それに気付けば、ネリーがサキの為に尽力した事は瞭然の理で、彼女の事を疑ってしまった己が恥ずかしい。
智葉「ありがとう」
だからこそ、私はサキの為ではない言葉を紡ぐ。
智葉「それを見付けてくれた事もそうだが、何よりも本音をぶつけてくれた事が、私は嬉しい」
嘘偽りなく裸の心で。
智葉「でも、それを見つけなくとも、それをサキに渡さずとも……ネリー、御前は私の大事な人だよ」
ネリー「……本当に?」
親に叱られる前の子供のように、ネリーは恐る恐る視線を送る。
私は影に隠れるサキの背中をそっと押して、ネリーの前に立たせた。
智葉「ああ、だから私はこれ以上関与しない。ネリーの好きにすると良い……が、その前に少しだけサキの言葉を聞いてやってくれないか?」
サキは振り返り、私と顔を見合わせる。
その表情に迷いや困惑はなく、どうやら私が教えずともやるべきことを理解しているようだ。
サキ「……サトハさん、シロ」
智葉「行ってこい」
白望「頑張れ、サキ」
意志を決めたサキへ、私達は二人分のガッツポーズでエールを送った。
サキ「……うん!」
相対したサキはまず、ぺっこりんと深々御辞儀した。
ぱちくりと目を見開いて呆気に取られるネリー。
顔を上げ、凛々しさすら感じられる真っ直ぐな眼でネリーを見据え、そしてサキは有りっ丈の声で思いの丈をぶつける。
サキ「そのかみどめ、ヒサさんがかってくれたものなんです。 すごくだいじなたからものなんです。 だからおねがいします! そのかみどめをかえしてくださいっ!! おねがいします!!!」
固唾を飲み私と白望は二人を見守る。
暫くの静謐の後、ネリーは緊張を緩め、今まで見たこともないような優しい笑みをふと漏らした。
ネリー「仕方ないなぁ。……今度はなくさないようにするんだよ?」
サキの手の平の上に髪ゴムが置かれる。
サキ「あっ、ありがとう……!」
すると、連鎖するように笑顔の花が咲き誇った。
たまらず私は白望と高く掌を一つ、強く合わせ、髪ゴムを握り締めたサキを迎えて抱き締める。
サキ「えへへ、やったぁ!」
白望「よく頑張ったね、偉いよサキ」
智葉「ああ、立派だった……ネリーも、おいで」
その様子を微笑ましく眺めているネリーを手招きする。
初めは照れ臭そうに遠慮していたが、次第に観念してすっぽりと私の腕に収まった。
取り敢えず今日はここまでです
まず大変お待たせして申し訳ありません。また待っていただき誠にありがとうございます
済みません言い訳します
インフルは10日程で完治したのですが休んだ分、連勤が倍加して体力的に余裕が有りませんでした
応援のお言葉、お叱りのお言葉、どちらも力になっています。
重ね重ねありがとうございました
まず大変お待たせして申し訳ありません。また待っていただき誠にありがとうございます
済みません言い訳します
インフルは10日程で完治したのですが休んだ分、連勤が倍加して体力的に余裕が有りませんでした
応援のお言葉、お叱りのお言葉、どちらも力になっています。
重ね重ねありがとうございました
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