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    元スレ京太郎「夢の彼方」

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    みんなの評価 : ★★
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    151 = 1 :


     ■

    「…」ズーン

    「えっと…どうかしたんですか?」

    優希「元気ないじょ」

    「…京ちゃんが」

    「須賀君がどうかしたんですか?」

    優希「犬の奴、元気にしてたかー?」

    「……」

    「…これ、京ちゃんです」

     右目には眼帯。

     額には包帯。

     耳には髑髏のピアスという風体だ。

    「」

    優希「」





     そのころ、生活指導室では…

    「…いい加減、その珍妙な格好を止めなさい」

    京太郎「断る!」

     教員たちが代わる代わるでこじらせた彼の面倒を見ているのだった。

    152 = 1 :


    >>149 ―――だが奴は…弾けた。→ ―――そして奴は…弾けた。

    154 :

    途中まではいい感じにシリアスだったのになぁ…もうギャグの前振りにしかみえなくなってしまった
    さすがチームサティスファクションのリーダーだな

    155 :

    てっきりリアルトラップ発動して逆恨みして死んで生き返ってまた死んで生き返ってハーモニカ吹きながら町長になるのかと

    156 :


     ■

    京太郎「…」

    「おい須賀…聞いているのか、須賀!」

    京太郎「…聞いているさ」

    「なら質問に答えろ。その珍妙な姿は何だ?」

    京太郎「……」

    「…黙ってないで何か言え」

    京太郎「……」

    京太郎「―――答える必要は無い」

    「いいから答えてくれよ!」

    「麻雀部のお前に奇行なんてされたら、どうしたって見過ごせないんだよ…」

    157 = 1 :


    京太郎「…それはアンタらの都合だ。俺には関係無い」

    「何を馬鹿な…」

    「お前が麻雀部でなかろうが、どの道見過ごせはしない。常識的に考えて…」

    京太郎「…常識、か」

    京太郎「その常識が、俺を幸せにしてくれるのか?」

    「常識は、自意識を保つための盾だ」

    「…社会において、異質なものとして排除されやすくならない為のな」

    京太郎「ならばあの5人も異質だろう」

    京太郎「特に咲の奴はな…それこそ世界に名を馳せる事を期待されるレベルで」

    「……」

    「…そんな真似をしても、お前は宮永のようになれんぞ?」

    158 = 1 :


    京太郎「―――そんな、分かりきった事を言って!」

    京太郎「俺に全てを諦めろって言うのか、アンタ達は!」

    「…冷静に現実を見ろと言うことだ」

    「君の麻雀暦からして、そんなことはどだい無理でしょうに」

    京太郎「…だからって」

    京太郎「だからって…はいそうですかって諦められる訳、ないだろうが…!!」

    pipipi...

    京太郎「む、これは…」

    「…意味深に振舞わずに早く出ろよ」

    ピッ

    京太郎「…俺だ」

    159 = 1 :


    『ヌル、こちらアインスだ』

    京太郎「…お前か」

    『どうやらあの男は、俺たちとやる気らしい…』

    京太郎「ふむ、やはりな」

    京太郎「何となくだが、奴とは相容れないものだと確信していたよ」

    『…ああ、俺もだ』

    『優れた雀士と言えど、所詮は地球人類だ…我々の理想など理解は出来まい』

    京太郎「…ああ、分かってる。あいつなりの考えだな…」






    「『ラ・ヨダソウ・スティアーナ』」

    160 = 1 :


    京太郎「…」

    京太郎「…それが世界の選択、か」

    「…何言ってんだ?」

    「早く正気に戻って、それからとっととハンド部に転入してくれ」

    京太郎「…それもいいかもしれないな」

    京太郎「だが、今の俺に与えられた役割は…そんなことではない」

    シュタッ!


         ( \/ /_∧   <./|   /|       /\___
         ヽ/ /Д`/⌒ヽ  / .| / /     /    //
          / /\/ ,ヘ  i   ̄ > \_/   /____//
          し' \_/    i  />      ̄ ̄ ̄ ̄
             i⌒ヽ  ./   ̄>__         .|| |::
         /⌒ヽ i  i  \(    .|/  / /\    .|| |::
         i    | /ヽ   ヽ  ∠__/   ̄       .|| |::
         ヽ ヽ| |、 \_ノ  >   <>       || |::
           \|  )  ̄  ./V       ___    ..|| |::
    ____  .ノ ./⌒)∧ /  ...____[__||__]___||___
         / し'.ヽ ( .∨    /\________|__|
        //    し'  / /\   ̄:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::


    京太郎「…俺は、俺の役割を果たす」








    「…むう、あれが元ハンド部の実力か」

    「やるじゃないか」

    「麻雀を覚えた事で、その身体能力は更に増したらしいな…」

    161 = 1 :


    シュタタタタタタタッ

    京太郎「…」

     『あの男』

     『所詮は地球人類』

    京太郎(…宇宙からの侵略者、か)

    京太郎(どうやら奴らは地球人類すべてを討つ気らしい…だが、そんな事はさせてたまるか)

    京太郎(『所詮は』などと敵を蔑む者が、討つ覚悟など持っている筈は無いのだ…)

    京太郎「…」ギリッ

    京太郎(―――討っていいのは、討たれる覚悟がある奴だけだ!)

    162 = 1 :


    「…遅い」

    「ヌルの奴は何をしている…この計画に、失敗など許されないのに」

    「慢心、という奴か」

    「そのようだな。仮にも今回のターゲットは、あのお方に匹敵する程なのだがな」

    「…ミヤナガ、サキ」

    「アレを手に入れれば、地球の浄化はより捗る事だろう…」


    京太郎「…ここにいたか」


    「…何者だ」

    京太郎「おいおい、誰だはないだろう。俺だ、ヌルだよ」

    「ありえない。なぜならお前の雀力は、せいぜい5アーデルハイドに過ぎないのだから」ピピ...

    163 = 1 :


    京太郎「…試してみるか?」スゥ...

    「むっ!?」

    「…これは、ヤーパンにおいてNINJAと呼ばれる者の業か」

     …雀士とは、戦士。

    京太郎「これで、どうだああああぁっ!」

    「何ッ、いつの間に下…をうっ!!」

    「フュンフがやられた!?」

     実力行使に抵抗できぬ者では、決して生き残れない。

     そもそも、麻雀とは軍事に代わる新たな闘争のシステム。

     故に、麻雀で覇を競う者は…もれなく戦闘力が高い!

    164 = 1 :

    中断

    165 :

    どういうことなの……

    166 :

    マジどういうことなのwwww

    167 :

    一旦乙です

    170 :

    乙です
    ただ、すみませんが日本語でお願いします。

    171 :


    昔話をしよう。

    時は16世紀。天から日本にひとつの遊具が舞い落ちた。

    「麻雀」

    この遊戯は老若男女などを問わず、爆発的に広まった。

    無論、それは全国の戦国大名たちにも。

    その虜となった彼らは、武器を捨てて牌を握ることになる。

    戦よりも、麻雀に命を懸けた武将達。

    その志は滅んでおらず、社会構造の根幹として今も残っているのだ。

    172 = 1 :


    麻雀は、さまざまな異能持ちを引き寄せると言われている。

    甘いものを食べると能力が上昇する「織田信長」。

    矢が刺さったりしても命に別状の無い「豊臣秀吉」。

    片目を失って以来、牌などが透けて見えるようになった「伊達政宗」などなど。

    だから人が消えたりしても、本来それは何ら不思議な事ではない。

    しかし原因不明なのも事実。

    異能に関するエピソードは悉く伝説と化し、普遍なものではなくなっていった……。

    173 = 1 :


    今はオカルトと呼ばれる異能。

    それを否定する立場にあるのが、デジタル。

    だがデジタルも一枚岩ではない。

    オカルトとされるもの、その原理を究明し実用化しようとする者達もいる。

    デジタルと言う概念が生まれるよりも、ずっと前から。

    …一説によれば、麻雀は10世紀以前に存在していたとされる。

    真相は定かでないが、あらゆる宗教には少なからず麻雀が影響しているのも事実。

    ローマ教皇の選出に麻雀が用いられるのは、その最たる例だ。

    教皇は、神の代行者としてある程度の神格を有していなければならない。

    およそ人の領域ではない力を。

    それに習ってか、国の為政者達も麻雀によって決められるのが世界の慣習と化している。

    174 :


    麻雀は世界中に浸透している。それは間違いない。

    だがその割に流行ってもいない。

    …理由の一つに、異能による差別の抑制がある。

    異能持ちとそうではない者が、一方を虐げ…あるいは虐げられる事態。

    そんなことは幾度となくあったし、今でもなくなっていない。

    麻雀だけが人間の価値を決めるディストピアは、半世紀ほど実在していた。

    そこでなら、須賀京太郎は間違いなく奴隷の立場であったろう。






    …ならばこそ、奴隷でないはずの彼が改革を望んだのはあまりに皮肉。

    「していた」

    そのように形容されるであろう地獄への道を、躊躇うことなく突き進んでいく様は…見る者に哀れみさえ感じさせる。

    175 = 1 :


    「…おのれっ!」

    仲間を倒され、憤った集団の一人が京太郎を迎え撃つ。

    反応もその後の動きも迅速。

    迷いなく振るったナイフは、間違いなく敵の背中を袈裟斬りにした…そのはずだった、が。

    京太郎「…ふん!」

    「!?」

    京太郎は難なくこれをさばき、投げ飛ばす。

    そして、

    京太郎「はああァァァ…、もらったァッ!」

    手からオーラのようなものを出し、それを背中に直撃させた。

    「ぎ…」

    ほんの少し、うめき声をあげる敵。

    苦痛で顔を歪ませる間もなく、彼女の意識は刈り取られた。

    176 = 1 :


    京太郎「…この程度じゃねえだろ」

    不満げな声色だった。

    片方のグローブを外し、それを集団の方にぶらつかせる。余裕綽々といった所か。

    「むぅぅ…クソジャップが!」

    「――待て」

    「待てるかよ!こちとら二人もやられてんだぞ!」

    大柄の男が声を上げると、

    京太郎「くうゥゥッ!はあッ…はあッ……」

    京太郎が突然苦しみだした。

    手からは禍々しいオーラが溢れ、ガクリとうなだれている。

    「…どういうことだ」

    「力の反作用だな。どうやら奴は、邪気眼に目覚めて間もないらしい」

    「邪気眼…何だそれは?」

    細身の男が言う「邪気眼」なる言葉は、大柄な男は少しも知らなかった。

    「…持たぬ者には分からんだろう。まあいい、今のうちに撤退するぞ」

    それを意に介する事なく、彼は撤退を進言する。

    「撤退だと!?」

    「作戦は失敗だ。俺達二人だけでは実行困難だからな」

    「……」

    不本意ではあるが、納得したというような顔。

    大柄な男は倒れた仲間を背負うと、その巨体に見合わぬ俊敏さでその場を後にした。

    177 = 1 :


    細身の男が踵を返すと、

    京太郎「…ま、待てよ……」

    ようやくオーラを押さえ込んだ京太郎が、必死な形相をして彼を引き止めた。

    「……」

    男はただ沈黙していた。

    嘲るようでも、哀れむようでもない目で、京太郎の方をじっと見ていた。

    まるで…何かを懐かしむかのように。

    京太郎「…お前らのそのゴテゴテな格好、何なんだよ?」

    「これは軍服だ。それにお前の格好だって…そのポンチョに、一体何の意味がある?」

    京太郎「マントの代わりさ。マントほどヒラヒラはしないけど、動きやすいし」

    「非合理的だな」

    京太郎「かもしれねーけど…俺はこれ、結構カッコいいって思ってるぜ」

    京太郎「…それはお前だって同じだろ?お前だって、カッコいいと思うからその服を……」

    「……」

    「…一理ある、と言っておこうか」

    その時彼らは確かに分かり合っていた。出自から何もかもが違い、敵同士の二人が。

    まして、京太郎が邪気眼に目覚めてなければ出会いもしなかった。

    麻雀は…関係あるんだかないんだか。

    178 = 1 :


    「…ではな」

    京太郎「…貴様らの目的は何だ?」

    「さあな…」

    京太郎「ふん…まあいいさ、どうせろくでもないことだろう?」

    「何とでも言え…だが」ガッ

    京太郎「……」

    「お前が我々の前に立ちはだかるなら…その命を…罪を、穿つ!」 ゴ ゴ ゴ ゴ

    京太郎「…やってみろよ。俺はどこまでも…足掻いてやる!」







    ―――ズドン。

    180 = 1 :


    京太郎「…千里山の園城寺怜」

    「へえ、私のこと知っとったんやな」

    京太郎「インハイの中継見てましたし…一応俺も、あの大会には行ってましたからね」

    「…そうなんや。一度も見かけたことあらへんけど」

    京太郎「恥ずかしながら、出場選手になれるような力はないんで」

    「どうりでな…アーデルハイドが低いわけや」

    「そんな子に不覚を取られてまうとは、私の未来視でも予測出来んかった…」

    182 = 1 :


    京太郎「ええ、面白くは無いっすね」

    京太郎「…正直もう止めちゃってもいいんじゃないかって、そんな気もしてますし」

    「ならもう止めてもええんやで?」

    「何の因果でここにいるんか知らんけど、本当なら君が関わったってしゃあないんや…」

    「…『もたざるもの』の君では」

    京太郎「だが俺にはこの邪気眼がある」

    「残念な事に、機関の研究ではそれが無意味やって結果を出してる」

    「麻雀以外、それも運動系の競技でならかなりの成果を出せるみたいやけど」

    京太郎「……」

    「身体能力、そして執念だけであそこまで戦えたんや。悩む事なんかあらへんよ?」

    「―――止めてしもうたらええやん、麻雀」

    183 = 1 :

    中断

    184 :

    おつ
    麻雀とはいったいなんだったのか

    186 = 1 :


    京太郎「…俺は」

    「……」

    京太郎「俺は、麻雀を止めたりなんかしない!」

    「!?」

    京太郎「まだ…諦めるわけにはいかないんですよ」

    「…分からんなあ」

    京太郎「俺にだって分かりませんよ。止めてしまった方がいいのは変わらないでしょう」

    京太郎「園城寺さんが言ってることは正しいし、俺はそれに従うべきなんだ…」

    「そうしないのは、どうして?」

    京太郎「…諦めたくないってだけです」

    京太郎「仲間には、いい夢見させてもらいました。そしたら俺、今度は自分がその夢を叶えたいだなんて思っちゃって」

    京太郎「叶いっこないって、鼻で笑われるだけの願いでしかないのに…」

    187 = 1 :


    京太郎「…羨ましかったですよ」

    京太郎「仲間の才能が妬ましくて、身もだえしそうになってしまう」

    京太郎「だから少しでも追いつきたくて…俺なりに、色々頑張ってみたりして……」

    京太郎「けど、無駄だった」

    京太郎「地を這う蛇がどれだけ鎌首をもたげても、空を飛ぶ鳥には届かない…」

    京太郎「...Wanna be」

    京太郎「今の俺を物語るのには、この言葉がもっとも相応しい」

    京太郎「咲達の打つ姿を見て、それに憧れて…少し足掻いただけの俺には」

    「…頑張るウサギさんが相手やからな」

    「それに張り合おうと思ったら、多少は無茶をせなあかん」

    「けど…今の君ではどうやったって、宮永咲の所へは行けへんわ…近づけさえしない」

    「…君が憧れてるものは、そのくらい大変な存在なんや」

    188 = 1 :


    「―――だから、な」

    反応する間もなく、京太郎は頬に傷を付けられた。

    その後には、やはりズドンと言う音が響く。

    怜は銃を…それどころか、殺傷力のある武器自体持ち合わせていない。

    …京太郎は、先ほどまで立っていた場所を見る。

    棒の様なもの。

    だが彼にはそれが何かはっきり分かった。

    麻雀部員である彼には、非常に馴染み深く…そして、守らなければならないものだ。

    ―――点棒。

    それが彼女の…園城寺怜の、最大の武器。

    189 = 1 :


    「今のは警告や…次は外さへん」

    その目は京太郎の額を見据えていた。

    先ほどの投擲は実に正確だった…ならば、今しがたのように狙いを外したりはしないだろう。

    その事実に彼は身を震わせる。

    あの細身のどこにそんな力がとか、そもそも何故点棒なのか…そんなことを考える余裕はない。

    あまりにもリアリティに欠けた現実。

    それに浸っていたから京太郎は気付かなかった…自身が、死地に赴いている事実に。

    幸か不幸か、彼は運が良かった。

    あの集団が油断していなければ、間違いなくやられていたのは京太郎だ。

    「麻雀に…宮永咲に関わらなければ、五体満足は保障する」

    この提案に嘘はない。

    彼女は人を殺した事などないし、殺したくもない…それは洗脳された今でも変わらない。

    ただ…

    「もし君を殺す事になっても、それは私自ら望んで選んだ道…ためらいもない」

    洗脳された事自体は、園城寺怜自身の意思。

    無力な者に戻って、仲間と共に歩めなくなることを拒んだ結果だ。

    190 = 1 :

    ここまで

    191 = 1 :



     【萩原さんと!】


    ハギヨシ「須賀君は手際がいいですね」

    京太郎「そうですか?」

    ハギヨシ「それに、聞いたことはきちんとこなしてくれます」

    ハギヨシ「こちらの意図が伝わらないということも、ままありますからね。しかし貴方にはそれがない」

    京太郎「いやいやそんな…褒めすぎですよ、ハギヨシさん」

    ハギヨシ「…お嬢様はそうでなかったですから」トオイメ

    京太郎「え、龍門渕さんがですか?」

    ハギヨシ「はい…」

    京太郎「変だなあ…あの人って大抵のことは出来ますよね」

    ハギヨシ「勿論ですとも。なにせ彼女は、龍門渕家の次代当主ですからね」

    192 = 1 :


    京太郎「そんな人が利かん坊になるとは思えませんが…」

    ハギヨシ「なまじ何でもお出来になるから…ということでしょうか」

    ハギヨシ「兎にも角にも料理だけがその、あの方にしてはとても不出来で」

    京太郎(かなり言いよどんでるな…)

    京太郎「で、でも流石に不味いってことは無いでしょう?」

    京太郎「ここには何度かお邪魔させてもらってますけど、裁縫とかも普通にこなしてたし」

    ハギヨシ「…須賀君」ズイッ

    京太郎「は、はい!?」

    ハギヨシ「どうしたって無理なものは無理なのですよ。ゼロに何をかけても、所詮はゼロです」キッパリ

    京太郎「…珍しい」

    ハギヨシ「何がですか?」

    京太郎「ハギヨシさんって、龍門渕さんのことはいつも褒めちぎってますよね。それがどうして…」

    193 = 1 :


    ハギヨシ「…須賀君」

    京太郎「すみませんハギヨシさん…失言でした」

    ハギヨシ「分かっていただけるのなら」

    京太郎「……」

    京太郎「…あんな人でも、出来ない事はあるんですね」シミジミ

    ハギヨシ「誠に遺憾ながら」

    京太郎「…」

    京太郎「ハギヨシさんにも出来ない事って、あるんでしょうか?」

    ハギヨシ「…さあ」

    京太郎「ハギヨシさんに出来ない事って、あんまり想像付かないですけど」

    ハギヨシ「どうでしょうね…」

    京太郎「…俺好みの女性になってくれたら、なんて」

    ハギヨシ「それだと元は男ですが…」

    京太郎「ハギヨシさんなら、多分大丈夫な気がして…」ボーッ

    ハギヨシ「…早まってはいけませんよ?」

    194 = 1 :


    京太郎「冗談です、冗談」

    ハギヨシ「眼はマジでしたが」

    京太郎「けど、ハギヨシさんみたいになりたいとは思いますね」

    京太郎「あの仕事ぶりは格好いいですからね…見てて惚れ惚れする」

    ハギヨシ「…恐縮です」

    京太郎「それに、あんな風に出来たら女の子にモテる気がして」

    ハギヨシ「モテませんよ?」

    京太郎「えっ」

    ハギヨシ「いや、女性と縁はありますけれども…上手くいくかどうかは分かりませんね」

    ハギヨシ「ですが私の場合、相手のコンプレックスを刺激してしまうことが多かったもので…」

    京太郎「えっ…ろくに気遣いしなかったとか、そういうことではありませんよね?」

    ハギヨシ「…優しさは時に人を傷付けます」

    ハギヨシ「私はそれがどうも分かっていなくて、結果相手を惨めにしてしまうんです」

    195 = 1 :


    京太郎「…そういうこともあるんですね」

    ハギヨシ「私には、自分がやらなくてはという気持ちが根付いているのですよ」

    ハギヨシ「それは執事の職業病かもしれませんが…ただ相手に尽くすがままと言うのも、それはそれで身勝手なもの」

    ハギヨシ「極端な話、尽くされる側を貶めることにもなりかねませんからね…」

    京太郎「難しいなあ」

    ハギヨシ「『この人には私がいなくちゃ』みたいな思考にならなければ、問題ないかと」

    京太郎「……」

    京太郎「…それ、ダメンズにハマる女性の思考ですよね」

    ハギヨシ「恥ずかしながら、私もそれを笑える立場ではありません」

    京太郎「…どうしよう」

    京太郎「彼女を作るコツとか、ハギヨシさんには色々聞きたいことがあったのに…」

    ハギヨシ「はは、とんだ反面教師でしたね」

    京太郎「悲しい顔して言わないでっ!」

    196 = 1 :


    ハギヨシ「…ただ、アドバイスなら出来ます」

    ハギヨシ「時に須賀君、貴方に好きな人はいますか?」

    京太郎「あの、出来たらノーコメントで」

    ハギヨシ「はぐらかさないで下さい。貴方が誰かと向き合うなら、まずは自分と向き合って下さい」

    ハギヨシ「自分から目を逸らせば、結局は相手の気持ちからも目を逸らすでしょう」

    ハギヨシ「―――私もそうでしたから」

    京太郎「…います」

    京太郎「俺、好きな子がいるんです。高嶺の花みたいなもんですけど、どうしても諦められなくて」

    ハギヨシ「『諦められなくて』?」

    京太郎「何ていうか…そういう対象としては見られてないんですよ。いや、そもそも眼中に無いのかも」

    京太郎「同じ麻雀部だから、同じ部員として気遣っては貰ってますけど」

    197 :

    この京太郎乙女だわ

    198 = 1 :


    ハギヨシ「…須賀君はそれをどう思いますか?」

    京太郎「どうって、ありがたいと思ってますよ」

    京太郎「優しくしてもらえて…それだけで、心が満たされてしまうんじゃないかって」


    ハギヨシ「―――そこまでです」


    京太郎「は…」

    ハギヨシ「その先は言わなくていい。言ってしまえば、貴方はもっと悲しい思いをする」

    京太郎「……」

    ハギヨシ「先ほど私は、優しさが誰かを傷付けることもあると言いました」

    ハギヨシ「今の話はまさにそれだ。彼女には、貴方の想いに答える気持ちが…」

    京太郎「――やめてくれっ!」

    ハギヨシ「……」

    京太郎「それ以上は、何も言わないでくれ…お願いだ、俺は諦めたく」

    199 = 1 :


    ハギヨシ「須賀君!」カッ

    京太郎「!?」

    ハギヨシ「―――もう、やめましょう」

    ハギヨシ「この先に…未来に希望など無いのです。あるのは絶望だけ」

    ハギヨシ「それは須賀君、貴方が一番知っているはず」

    京太郎「…だけど俺は」

    ハギヨシ「諦めていないのは、絶望しつつも希望を失っていないからだとでも?」

    京太郎「なっ…」

    ハギヨシ「ですがそれはただの欺瞞。貴方は既に、その愛を諦めている」

    ハギヨシ「須賀君、貴方は先ほどこう言いましたね。優しくしてもらえただけで、心が満たされる気がしたと」

    ハギヨシ「―――そんなはずはない」

    ハギヨシ「好きになった相手と言うのは、自分が幸せにしたい者…そして、幸せを共にしたい者のこと」

    京太郎「――――ッ!」

    ハギヨシ「なのに貴方は、その相手に幸せにしてもらって…それで満足しようとした」

    ハギヨシ「与えられただけで満足し、飢えることを忘れようとした者が…誰かと求め合うなどありえない」

    ドンッ!

    ハギヨシ「……」

    京太郎「…うっ、うう……」

    ハギヨシ「多くから好意を持たれ、想い人の目を惹こうとしても…それは無駄だ」

    ハギヨシ「それでは誰も…何より貴方が幸せではない。幸せになど、決してなれはしない」

    ハギヨシ「―――だから、今は泣きなさい」

    ハギヨシ「誰に遠慮する事なく、思いっきり。惨めだった時間はもう終わりです」

    ハギヨシ「…さあ」

    200 = 1 :


    京太郎「―――ああ、畜生」

    京太郎「ハギヨシさんが優しすぎて…女だったら、どうにかなっちまいそうだ」

    ハギヨシ「……」ゾクッ

    京太郎「……」

    京太郎「けど俺…泣いたりなんかしませんよ」

    京太郎「俺はこの想いを決して忘れない。辛いからって、上書き保存したりしない」

    京太郎「あんな風に誰かを好きになれたことは…俺にとって、間違いなく宝物だから」

    京太郎「…本当に、好きだったんだ」

    京太郎「もう諦めちまったけど、俺はアイツに…和に振り向いて欲しくて……」

    京太郎「……」

    ハギヨシ「……」


     ―――その場をしばし静寂が支配した。

     男二人は空を見上げ、ただずむ。雲一つない空を…恨めしげ、或いは妬ましげな顔で。

     二人の心は曇っていた。

     ああ、空はあんなに青いのに――彼らは確かに、そう訴えかけていた。

     誰ともなしに。


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