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    元スレ咲「キャバクラ行ったら世界が変わった」霞「ええ、よくってよ」

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    101 = 97 :


    東一局 親・原村和

    「紀家は私ですね・・・では言わせてもらいましょう」

    「?」

    「この対局に東二局は来ません」ババーン

    「え?」

    「え?」

    「ふふ・・・まあ見ていて下さい」


    三順目

    「ツモ・・・800オール」

    「はい」-800

    (速い・・・けど安いわね。当たり前だけど1翻でしか和了れないならツモの削りは微々たるもの)

    「・・・」ファサッ

    (けど、不気味・・・何か普通じゃない気配を感じるわ)

    (後ろから見てる分には普通に麻雀ゲームしてるだけ。でも、和ちゃんに少しだけ違和感があるような・・・)

    102 = 97 :


    東一局一本場

    「・・・カン」

    「!?」

    (私の捨て牌で大明槓?)

    「嶺上開花のみ・・・1500点の一本場は1800です」

    「はい」-1800

    (どういうこと? あの和ちゃんが嶺上開花なんて・・・ありえないよ)

    (掴まされていた? いえそれよりこの感じ・・・)

    「・・・」

    (人・・・じゃない?)

    103 :

    待ってました!

    104 = 97 :


    東一局二本場

    「ツモ・・・500オールの二本場は700オール」

    「う・・・はい」-700

    (守るのは得意だけど、こうも簡単にツモ和了りされてしまうと)

    (これ、本当に麻雀なの? 何かおかしいよ)

    「・・・」ファサッファサッ

    (この子はこの対局に東二局は無いと言った・・・)

    (まさか本当に、東一局で終わらせる気なの?)

    東一局三本場

    「ロン・・・1000点の三本場は1900です」

    「!?」

    (CPUからのロン和了り? 親番の積み棒を増やしたかったのかな? ん・・・?)

    (積み棒・・・まさか、和ちゃんの狙いって・・・)

    (・・・まずいわね)

    105 = 97 :


    「どうやら、気付いたようですね。おふたりとも」

    「ええ、1翻のみで和了する縛り、それでどうやって5万点を削る気でいるのか不思議だったけれど・・・こんな方法を取ろうとするなんて」

    「和ちゃんが狙ってるのは八連荘だよね?」

    「そうです、8回連続して和了した場合に成立するローカル役の役満。これならば1翻でのみ和了できるというハンデを覆すことができる」

    (設定で外していたのは和ちゃんが不利になるローカル役やローカルルールと言っていたから、これを残すのは当たり前よね)

    (でもおかしい。デジタル打ちの和ちゃんがそんな方法を取るなんて・・・麻雀にはどうやっても和了できない局があって当然なのは、分かりきっているはずなのに)

    「困惑していますね二人とも・・・分かりますよ、八連荘なんてよほどの偶然が重ならない限り、めったにお目にかかれる事ではありませんから」

    「しかし現実と違ってゲームは違います。その気になれば八連荘する事は難しくない・・・」

    「え?」

    106 = 97 :


    「開始時に乱数を調整して状況再現、配牌と山を望む形でスタートさせる」

    「次局へ移る為の決定権は、点数表示画面を終了できる和了した者にある為、そこでまた配牌と山の調整が可能。乱数のパターンを把握すれば常にゲーム内の卓上を私の望むものでスタートできる」

    「ゆえに今日の私はTASすら凌駕する存在です」

    (・・・和ちゃんが何を言ってるのか全然わからない)

    (・・・和ちゃんが何を言ってるのか全然わからないわ)

    「よくわからないけど、それってズルをしてるって事?」

    「違いますよ、仕様を理解し、それを活用する。私なりに本気で勝負に挑んでいるだけです」

    「さあ続けましょう、最後まで手は抜きません」


    こうして和は次局もその次も、連続和了を続ける

    フレーム単位で調整し、ツール無しで乱数を読み切るその姿はまさにデジタルの化身そのもの

    107 = 97 :


    東一局七本場


    「ツモ、500オールの七本場は1200オール」

    「はい・・・」-1200

    (とうとう七連続和了・・・ここから先の和ちゃんの和了は、すべて八連荘で役満になる)

    (ツモでも大きく削られ、直撃なら一発トビもあり得る)

    「霞さん・・・」

    「ふふふ、もう勝負は見えましたか?」

    「まだ、分からないわ」

    「強がりを言いますね、でもその減らず口がいつまで続くでしょうか」

    (何でちょっと悪役風の口調なの?)

    (でも和ちゃん、本気だ・・・ただのゲームなのに本気で勝ちにいってる)

    「・・・」

    (この勝負・・・受けるべきではなかったかもしれないわ)

    (ただの余興、最初はそうかもしれないと思っていたけれど。これはそういう類のものじゃない・・・)

    「・・・」ゴゴゴゴゴゴ

    (・・・私も覚悟を決める時、苦手分野いかせてもらおうかしら)

    108 = 97 :


    「!?」

    「だ、駄目です霞さん!」

    「!? 咲ちゃん?」

    「?」

    「それは・・・それだけはやっちゃいけない事です」

    (咲ちゃん・・・鋭い子ね。でも)

    「いいえ、やらせてもらうわ。この勝負、負けてはいけない・・・その為に、一度は捨てた石戸の力を使います」

    「そんな、だって祓う人はいないし・・・それに体も不調なのに大丈夫なんですか?」

    「どうかしらね、近所の神社で祓えるものが降りてくるかはわからない・・・」

    「ならやめてください! こんな勝負で危険な事をしなくても・・・」

    「・・・」


    「!?」

    (霞さんの顔つき・・・すごく真剣だ、霞さんも本気でこの勝負に挑んでる・・・)

    109 = 97 :


    「・・・」

    (それに和ちゃんに感じた違和感も・・・少しずつ増してきてるような気がする)

    「ごめんなさい咲ちゃん、いっぱいお世話してもらったのに・・・」

    「そんな・・・」

    (まさか霞さんは、和ちゃんに感じる違和感の正体に気付いてるの? だから今、無理をしようとしてるの?)

    (・・・わからない、けど・・・見てるだけなのはいけない・・・そんな気がする)

    「待ってください霞さん、せめてもう一局だけその力を使うのは」

    「いいえ・・・でも」

    「勝負所なのは分かってます、それでももう一局だけは・・・」ゴゴゴゴゴゴゴゴ

    「!?」ブルンブルン

    (この感じ、昔インハイの大将戦の時に感じた、咲ちゃんの支配?)

    「お願いします」ゴゴゴゴゴゴ

    「え、ええ・・・分かったわ」

    110 = 97 :


    東一局八本場


    (ありえません・・・ここにきて、ツモが狙ったものになっていない)

    「・・・」ゴゴゴゴゴ

    (背中が冷たい・・・こんなはずじゃ。こんなモノを敵に回すつもりは・・・)

    (・・・基本はネトマに近い、大事なのは応用を利かせる事。私に合う形で、私に合わせてもらう)

    (ツモが良いわ・・・やっぱりこれって咲ちゃんのおかげ? 昔よりもずっと支配の力が強く感じるわ)

    (他人の勝負に手出しするみたいで気が引けるけど・・・ごめんね和ちゃん、この局だけは霞さんの手助けをさせてもうよ)

    111 = 97 :


    「カン・・・」

    「!?」

    (暗槓? そんな・・・私の乱数調整が及んでいない・・・)

    「もう一つカンです・・・」

    「!?」

    「さらにもう一つ・・・カン」

    「!!」

    「ツモ・・・トイトイ、三暗刻、三槓子・・・いいえこれは」

    (このゲームには古今東西のローカルルールやローカル役が実装されてる・・・だから親の八連荘を阻止した子に与えられるあの役も、当然実装されてる)

    「破回八連荘(ポーホイパーレンチャン)・・・役満です」

    「ぐ・・・はい」

    (八連荘だけ設定で残すのはあからさま過ぎるので、あえて残したのが裏目に出ましたか・・・)

    そして親も移り、乱数も大きく変動した事で、和の1翻のみで和了するという縛りは守りの得意な霞には通用しなくなった


    ――ゲーム終了――

    112 = 97 :



    (ふう・・・なんとか守りきったわね)

    (恐ろしいものは降ろさずにすんだ・・・さあ後は・・・)

    「く、殺せ!」

    「・・・何言ってるの和ちゃん」

    「そうね、消えてもらおうかしら」

    「霞さん?」

    「戻るべき場所にお帰りなさい、ここは貴方のいるべき所ではないわ」

    「・・・石戸霞・・・覚えていなさい・・・この私が消えても、いずれ第二、第三の私が貴方の前に現れ・・・」スウ

    「!?」


    原村和の体が半透明になって、そして消えていく


    「和ちゃんが消えた!? え? どういう事?」

    「やっぱり・・・そうだったのね」

    「霞さん? 何か知って・・・」

    113 = 97 :



    ガンバッチャッタガンバッタワレワレトンナンシャーペーワーイワーイ


    「!?」ビクッ

    「あ、ケータイの着信・・・えっと・・・え!? 和ちゃんから!?」


    慌ててケータイの通話ボタンを押す咲


    「・・・もしもし」

    『あ、咲さん・・・テレビ見てましたか?』

    「え? テレビ?」

    『もう、その様子だと見てなかったんですね。凄いですよ国際戦! いまさっき日本代表の団体戦優勝が決まりました!!』

    「え・・・ちょっと待って、和ちゃん今どこから電話してるの?」

    『どこって、国際戦の会場に決まってるじゃないですか・・・私も一応補欠で選手登録されてるんですから』

    「???」

    114 = 97 :


    『私の出番はありませんでしたが皆凄かったですよ。先鋒のお義姉さんはドイツのドライブリレンのニーマン相手にプラス収支です。なぜかニーマンの眼鏡が割れてました』

    『次鋒戦は臼沢さんがリードを守り、体調が悪かったのか途中で倒れましたけど・・・交代した園城寺さんも決死の表情で一度も振り込まずに繋ぎ・・・』

    『中堅戦と副将戦は、野依さんと赤土さんが年長者の威厳をみせる見事な打ち回しでリードを広げ・・・』

    『大将戦は戒能さんがあのエヴァーグリーンをシャットアウトして、そのまま優勝です』

    「そう・・・なんだ」

    『もう、咲さんちゃんと聞いてました? もうすぐ表彰式なので電話を切らなければいけませんが・・・次は一緒に出られるように、お互い頑張りましょうね』

    「う、うん」

    『約束ですよ! こんな不確かな約束事を私がするのは、咲さんだけなんですからね!』

    「うん、うん・・・それじゃ」プチ


    そして電話が切れる

    先程まで目の前に居たはずの和からの電話が、遠く国際戦の会場からのものだと聞き、戸惑いを隠せない咲

    その疑問の答えを霞は知っていた

    115 = 97 :


    「今の電話の相手が本当の和ちゃんよ」

    「本当の?」

    「ええ、そして私に勝負を挑んできた和ちゃん、アレはおそらく悪霊の類・・・」

    「!?」

    「昔から寄ってきやすいの私、恐ろしいものや悪いものが・・・石戸の血がそういう運命を背負っているから」

    「あれが和ちゃんの姿をとっていたのは、彼女の思念も混ざっていたのでしょうね。遠くの地から届くほどの強い思念が、あるいは彼女の中に眠っているオカルトそのものが、ここに漂っていた悪いものと結びついた。モテモテね咲ちゃんは、うふふ」

    「わ、笑い事じゃないです!」

    (ドアを閉めたのに中に入ってきたり、私が違和感を感じたのは、そういう事なの?)

    「・・・じゃあ霞さんは、そういうものだって解っていて勝負を受けたんですか?」

    「そうね。そうじゃないかという予感めいたものだったけど、結局は当たっていたわね」

    「どうして・・・」

    「もう・・・言ったじゃない。私が咲ちゃんと友人関係を続けていくなら、この勝負は避けては通れない道だって」

    「あ・・・」

    「・・・もしかしたら、今後もこういう事があるかもしれないわ。さっきのは消えてくれたけど、最悪憑りつかれる事もあるかもしれない」

    「・・・」

    「気味が悪いでしょ? 子供の頃から交友関係が制限されていたって言うのは、そういう事なの。実際に起こるまでは、説明しても信じられないだろうから言わなかったけど・・・」

    116 = 97 :


    「気味が悪いだなんて・・・そんな事思ってません」

    「え?」

    「でも、ちょっと怒ってます。先に教えてくれなかった事には」ゴゴゴゴゴ

    「さ、咲ちゃん?」

    「・・・無理しないでください霞さん、さっきだって自分の負担を省みずに降ろそうとして・・・心配、してるんですよ」ウルウル

    「・・・うん・・・ごめんなさい」

    「悪霊とか別に気にしません・・・お姉ちゃんや小鍛冶さんと麻雀打つ方がきっと怖いです」

    (それはそれでどうなんでしょう)

    「次は私が戦います、何があっても霞さんを守ります。だから・・・」

    「咲ちゃん・・・」

    「・・・」

    117 = 97 :


    「・・・ええ、そうね。私も咲ちゃんを守るわ、もう大事な大事なお友達だもの」

    「うん、約束ですよ」

    「ええ」

    (そうよ、ここは霧島神宮とは違う・・・家を出たのに、私はまだ教えに縛られていたのね・・・)

    (でもこれからは違う・・・咲ちゃんと一緒に生きていくわ)


    障害を乗り越え、また一つ近づいた二人の距離

    そしてもう一つ、その場に残っていたものがあった

    118 = 97 :


    「あら? このゲーム・・・」

    「あ、ニセ和ちゃんが持ってきた物、置いて消えちゃったから残っていたんですね」

    「そうみたいね・・・でも使えるみたい」

    「本当ですね」

    「ねえ咲ちゃん・・・よかったら」

    「はい! 私もちょうど思ってたところです、一緒にゲームしましょう」

    「うふふ、嬉しい・・・でも手加減してね」

    「えへへ、それはどうでしょうかねえ」

    「もう! それなら私は水着の咲ちゃんを使わせてもらいます」

    「そ、それはダメです!」


    キャッキャ ウフフ


    このあと滅茶苦茶ゲームした


    119 = 97 :



    今日はここまでっす
    霞さん誕生日おめでとうの気持ちを込めました

    今日で完結できれば良かったんですが・・・不甲斐なくもまだ続きます

    120 = 103 :

    乙 次回も楽しみにしてます

    121 :

    乙乙

    122 :

    乙乙
    淫ピは淫ピじゃなかったんやな、よかった

    125 :

    来てたのか
    乙乙

    126 :

    乙ですよー
    日本代表は麻雀で死ぬという新たな過労死の可能性を世界に見せてくれそうだなぁ

    128 :

    ――1週間後・霞宅――

    平穏無事な一週間が過ぎた

    咲の助けもあり、霞はぎっくり腰を悪化させる事なく療養し、日常生活に戻れるまで回復できた


    「どうかしら?」クルクル

    「あ、かわいいです」

    「うふふ、ありがとう」ニコニコ

    「でもそうじゃなくて、私の調子、良くなったように見える?」

    「うん・・・そっちも、特に問題あるようには感じないです」

    「そう、良かったわ。咲ちゃんのお墨付きが貰えたなら、もう大丈夫ね」

    (・・・霞さんのぎっくり腰、完治したみたい)

    (嬉しい事なのに、なんだか寂しい気もする・・・それはやっぱり、私がここに来る理由がもうなくなっちゃうからなのかな)

    (・・・それに、霞さんが神境に戻らないとも限らないし)

    129 = 128 :


    「・・・ねえ咲ちゃん、これ貰ってくれないかしら?」

    「え?」


    霞は咲に向かって手を差し出した

    その手に握られていたのは、霞の家の合鍵


    「霞さん・・・これって」

    「良かったら持っていて・・・いつでも好きな時に来てね。私がここにいる時も、いない時でもいつでも大丈夫だから」

    「か、霞さん」ウルウル

    「ほ、ほら! 咲ちゃんみたいなかわいい子が、夜の街を徘徊するのは危ないし! キャバクラ通いに嵌ってしまったら金銭面でも大変だし! そういう意味で、お家に居ずらい時とかここを使ってもいいって事で・・・ね」

    「はい・・・」

    「あ、それと咲ちゃんにもう一つ、ちゃんと言っておかないといけないわね」

    「え?」

    「もう神境に帰るなんて言わないわ。ここでちゃんと私らしく生きられる道を探してみる・・・そう決めたわ」

    「霞さん・・・」

    130 = 128 :


    「ありがとう咲ちゃん、貴方のおかげで少し前向きになれた・・・駄目になりそうな時に支えてくれて、本当にありがとう」

    「そんな、私は大した事してないです」

    「いいの、私が大した事をしてもらったと思ってるから」

    「・・・はい」テレテレ

    「うふふ。あ! もうお店に出なくちゃいけない時間だわ、急がないと。復帰初日から遅刻なんて恥ずかしいものね」


    「それじゃ咲ちゃんまたしても慌ただしくてごめんなさい、いつかちゃんとお礼しますからね」パタパタ

    「ううん、行ってらっしゃい霞さん」

    「はい、行ってきます」

    パタン

    (お礼とか気にしなくていいのに・・・)

    (私は、この合鍵を貰えただけで十分だよ)

    (良かった、霞さんが帰ってくるのがこの場所で)

    131 = 128 :



    ヤクソクーノ バーショーヘ オーバーフューチャアアアアアアアアアアアアアア

    「!?」ビクンッ

    (あ、ケータイの着信だ・・・えっと、三尋木さんから? あの人から電話が来るなんて珍しいな)

    「もしもし宮永です」

    「おっす宮永ちゃん、三尋木だけどいま大丈夫かい?」

    「ええ大丈夫ですけど、何かあったんですか?」

    「うん、ちょっとねぇ。だけど、電話口じゃ言いたくない事なんだ・・・」

    「え?」

    「・・・悪いんだけど、いま出てこれるかい?」

    「構わないですけど・・・」

    (三尋木さん、ちょっと深刻そうだけど、何があったんだろう?)

    「じゃあ、いつも打ち上げとかで使ってるファミレスに来てねぃ」

    「解りました」


    132 = 128 :

    ――ファミレス――


    咲は三尋木咏に呼び出され、所属団体の打ち上げとかでよく使われているファミレスに来た


    「あ、宮永ちゃんこっちこっち!」パタパタ

    「はい、遅れてすいません」ハアハア

    えり「いいえ、いきなり呼び出したこの人が悪いんですよ。だから謝らなくていいと思います」

    手招きされて咲がついたテーブルには、放送局アナウンサーの針生えりも三尋木咏と並んで座っていた

    「あ、針生さん・・・どうも御無沙汰しています」ペッコリン

    えり「これはどうもご丁寧に。宮永プロは礼儀正しいですね、誰かさんも少しは見習うべきだと思いますよ」チラッ

    「誰かさんて誰の事かぜんぜんわかんねー、存じ上げぬ」パタパタ

    えり「」イラッ

    133 = 128 :


    (う、まさか針生さんもいるなんて・・・私、テレビ局と何か問題になるような事をやっちゃったのかな?)

    えり「コホン、ほら三尋木プロ。いきなり呼び出された宮永プロが困惑してます、早く本題を伝えるべきでは?」

    「えー、いきなり言っちゃうとかありえねー。もうちょっと勿体つけようぜ?」

    「な、何ですか。何かあったなら教えてください」

    「うーん、どうしようかねぃ?」

    えり「私から言ってもいいんですよ?」

    「あ、それは嫌だねぃ。しょーがない、えりちゃんにネタばらしされる前に教えてあげようか、知らんけど」

    (な、なんだろう。なんか三尋木さん電話と違ってニヤニヤして楽しそうな気がするけど・・・)

    134 = 128 :


    「なんと!」

    「!?」ビクッ

    「宮永ちゃんの国際試合の参加禁止処分が解けて、日本代表選抜への復帰が決まったらしーよ」

    「・・・え?」

    「うん」

    「え?」


    「??????」

    えり「・・・ほら、やっぱり最初からちゃんと伝えておけば良かったじゃないですか。宮永プロ、どんな顔していいか分からなくなってますよ」

    「あれー? もっと喜んでくれるかと思ってたんだけどねぃ」

    「・・・えっと、今の本当ですか?」

    えり「それどころか三尋木プロ・・・疑われているじゃないですか。普段の行いが適当だからこういうことになるんです」

    「う、流石にショックをうけるねぃ」グサッ

    「あ、違います! 疑ってる訳じゃなくて・・・その、実感がわかなくて・・・・・・すいません」

    135 = 128 :


    えり「・・・まあ、そうでしょうね。でも、三尋木プロの言っている事は本当です。発表はまだですが、局のデスクに聞いた話なので間違いありません」

    「ほらほらどうだぃ? あのえりちゃんが言うんだ、間違いないよねぃ? しらんけど」

    (・・・申し訳ないけど、針生さんが言った事で、三尋木さんよりも信憑性が増したのは本当だ・・・)

    (私がまた代表選抜に? でもなんで・・・)

    「なんで許されたのか、理由がわかんねーって顔してるねぃ?」

    「そう・・・ですね」

    「じゃあ教えてあげよーかぃ。宮永ちゃんの国際試合への復帰が決まったのは・・・今回の国際戦で日本が優勝できたからじゃねーかな、知らんけど」

    「え? えーと・・・でも日本が優勝した事と、私の謹慎が解けたのは関係ないような気がするんですけど・・・」

    「いやいや、関係あるんだよねぃこれが」

    「?」

    136 = 128 :


    「実は日本が世界大会の団体戦で優勝した事って、過去に何度かあったんだけどさぁ、連覇は一度もした事ないんだよねぇ」

    「だからこそ次も勝って初の連覇を狙う為、代表選抜も協会も本腰入れて動き出してる。まあそんな中、国内で三冠とってこの前のプロアマ交流戦でも大活躍した宮永ちゃんを、遊ばせておくわけにはいかんでしょって事かねぃ?」チラッ

    えり「・・・なんでそこで私を見るんですか?」

    「いやー私の可愛い後輩たる宮永ちゃんを、マスコミはボッコボコに叩いてくれたからねぃ、耳が痛いんじゃねー?」

    えり「・・・確かに一時期取り上げられてはいましたが、最近はそうでもないでしょう。それと、私をマスコミ代表みたいに扱うのやめてください」

    「ふーん、しらんけど」

    えり「」イラッ

    「あ、あの! なんとなく流れは解りました」

    「お、そうかぃ?」

    「はい。でも・・・実際、私がいなくても優勝してるのに、今更代表に復帰する意味はあるんでしょうか?」

    137 = 128 :


    「無いって事はないんじゃねー。優勝国ってのはそれだけ次からマークがきつくなるからさー、今回活躍した選手も今まで以上に分析、研究されて、厳しい事になるのは間違いないよねぃ」

    「その点、宮永ちゃんはしばらく国際戦に出てなかったし。こういっちゃなんだけど、国際戦で失格になった後から調子落としてたりしてたから、相手にとっちゃ未知数になるわけだ」


    「あ、なるほど・・・」

    「参加禁止処分も、国際連盟じゃなく日本の麻雀協会から、自粛する意味で出てただけだしねぃ。協会が良いって言うなら、宮永ちゃんが気にする事はもうないのさ」

    えり(・・・調子落としてても国内で三冠とってるのに、二人ともそれが当たり前のように話してる)

    えり(史上最年少で八冠をとった小鍛冶プロのように、トッププロと呼ばれる人達ってそういうものなの?)

    138 = 128 :


    「つーか、こまけぇことはいいんだよ!」

    「!?」

    「理由はともかく、代表選抜に宮永ちゃんが復帰できる! わかんねーことは後にしてさ、今はそれを喜ぶのがいいんじゃねー?」

    「は、はい」

    「という訳で、宮永ちゃんの日本代表復帰を祝う会の始まりー」

    「ええ!? これ、そういう集まりだったんですか!?」

    えり「・・・そうですよ。三尋木プロが変な言い方で呼び出したから誤解したでしょうけどね。まったく、普通に本当の事を教えてから呼び出せばよかったのに」

    「それじゃバイオレンス感足りなくねー?」

    えり「そんなものはいりません」キッパリ

    「ちぇー」

    139 = 128 :


    えり「祝いたいなら普通に祝えばいいのに・・・しかも自分が一番に祝いたいからって、知ったその日にすぐ呼び出すなんて、宮永プロの迷惑も少しは考えないと」

    「わ、わかんねー、全てがわかんねー」

    えり「しかも本当はファミレスじゃなく、お高い料亭でやろうとしてましたよね? 時間が時間だっただけに、当日予約を断られたって拗ねてましたよね?」

    「あーあー、それ言うなよぅ・・・じゃなかった、し、しらんし」プイッ

    (あ、三尋木さん照れてる)



    「そうだ、ドリンクバー頼んであるから行ってくるねぃ!」

    「私も行きますよ」スッ

    「いーっていーって、主賓は座ってなよ。ちゃんと三人分持ってくるから」タタタ

    えり(逃げたな)

    えり「ふう・・・まったくいい歳なのにまだまだ子供っぽいですね三尋木プロは。宮永プロもそう思いませんか?」

    「う、うーん。それはノーコメントでお願いします・・・」

    えり「相手が先輩だからって気を遣わないでいいんですよ?」

    「そ、そういうわけでは・・・祝ってもらえるのは嬉しいですし」

    えり「・・・そうですか」

    「・・・はい」

    140 = 128 :


    えり「・・・」

    「・・・」

    (き、気まずい、かも)

    (そういえば、針生さんとはあまり一緒の仕事したことないんだった。針生さん、三尋木さんと一緒の事が多いし)

    (なんというか・・・友達の友達と一緒にいるような、そんな感じに近いのかな?)

    えり「宮永プロ」

    「はい!?」ビクッ

    えり「・・・そんな固くならず楽にして頂いて結構ですよ。今日は宮永プロの為のお祝いなんですから」

    「は、はい。そうですね、えへへ」グギッ

    えり(!? こ、これは・・・なんていう下手な愛想笑い!?)

    えり(宮永プロの事、野依プロとはちょっと違ったタイプの人見知りだと三尋木プロは言っていたけど・・・一瞬、威嚇でもされたのかと思ってしまった)

    141 = 128 :


    「ど、どうかしました?」

    えり「い、いえ・・・なんでもありません。そういえばすいません、こういう場は気心を知れた仲だけで集まったほうがいいと、三尋木プロには言ったんですが。『せっかく祝うなら人数が多い方がいい』って強引に連れてこられてしまって・・・」

    「あ、そうだったんですね」

    えり「でも、嫌々ついてきた訳ではありませんよ? うちの局は宮永プロの所属団体とは親交が深いですし、それに個人的に興味もありました」

    「興味、ですか?」

    えり「ええ、三尋木プロから宮永プロの事はよく聞いていたので・・・あの人が言っていましたよ、自分とよく似た子がいるって」

    「私が・・・三尋木さんと似ている?」

    えり「ふふ、全然違うと思っていましたが、この間のプロアマ交流戦でちょっとだけ、それが分かりました」

    「う、うーん? 三尋木さんと私、麻雀の打ち筋も性格もあまり似てるとは思えないですが・・・」

    142 = 128 :


    えり「そうですね、三尋木プロと宮永プロ、一見すると似ても似つかないですが」

    えり「・・・でも裸足で打っていた時の宮永プロ。まるで子供のように楽しそうに、全力を出せることが嬉しそうに、麻雀を打っていました。そういうところ、三尋木プロによく似ています」

    「あ・・・」

    えり「考えてみると意外といないものです、過去に活躍したプロ、現在活躍中のプロを合わせても、心の底から楽しそうに打つ人は」

    えり「小鍛冶プロは鬱々とした顔で打ちますし、野依プロは怒っているように見えますし、戒能プロはクールですし、赤土プロはたまにメンタルの弱さが顔に出ますし、瑞原プロはなんか腹黒そうです」

    (うん・・・さらっと、いろんな人が切られたのは黙っておくとして。言われてみれば楽しそうに麻雀打つ人って、プロではあまりいないかも)

    143 = 128 :


    えり「貴重だと思います、楽しさを表現できるというのは。見ている人に楽しさを伝える事、それはきっと麻雀という競技にも必要な事だと私は思いますから」

    「・・・意識した事、ありませんでした」

    えり「宮永プロはそれでいいんです(むしろ意識して笑ったらやばい)。以前の国際戦のように『一緒に楽しもうよ』と声に出してしまい失格になったのは残念でしたが、そんな事を口に出さなくても、多くの人に麻雀の楽しさを教えられる。そういう素養があると思います」

    えり「そして私も放送に携わる者として、少しでもそれを伝える手伝いができたらと思います。これからの宮永プロの活躍、個人的にも応援してますから」

    「は、はい!」

    (なんか、すごく買いかぶられている気がするけど・・・でも、針生さんの言うように、麻雀の楽しさがもっと伝わってくれるなら、私も嬉しいな)

    えり「・・・それにしても三尋木プロ、戻ってきませんね。まさかいい歳した大人が、ドリンクバーで遊んでいるんじゃ・・・」

    (ありえるかも・・・というか、嬉しそうに混ぜてる姿が容易に想像できちゃう)

    144 = 128 :


    えり「そう言えば聞いてますか? 今回の国際戦に三尋木プロが不参加の理由」

    「え? いえ、そういえば聞いてないです。針生さんは知っているんですか?」

    えり「はい。どうやらあれ、三尋木プロなりの抗議だったみたいですよ。宮永プロが国際試合への参加禁止処分がいつまでも解かれない事への」

    「え・・・・・・・・・ええ!?」

    えり「まったく代表のエースが何をやっているんだって呆れますよ。『宮永ちゃんが出ないなら私も出ない』ってワガママ言って」

    (そうだったんだ・・・三尋木さん、私の知らないところでそんな事を・・・)

    えり「しかも出なかった割に日本が優勝しちゃったものだから、さっきまで拗ねてましたし。本当になにをやっているんだか・・・」

    えり「・・・でも、そういう風に自分のイスをかけてまで、後輩の為に行動できるって言うのは、少しだけ尊敬できるといいますか、羨ましい気もしますけど・・・」

    145 = 128 :


    「まーねぃ、えりちゃんは若い女子アナを見かけるだけで、妬みや嫉みが顔を出すからねぃ」ヒョコリ

    「!?」

    えり「うわ!? 三尋木プロいつの間に・・・・・・聞いてたんですか?」

    「まーねぃ。はいこれ、えりちゃんのドリンク、なんか色々混ぜたやつー」コト

    (やっぱり混ぜてたんだ・・・)

    えり「・・・どうも」

    「宮永ちゃんには、はいメロンソーダ」コト

    「ありがとうございます」

    「いやいやー、えりちゃんが珍しくなんか楽しそうに話してると思ったら私の事かー、照れるねぃ」パタパタ

    えり「白々しい・・・まさか、私にさっきの話をさせる為に席を外したんですか?」

    「わかんねー、すべてがわかんねー」パタパタ

    えり「ぐぅ・・・あなたという人は」イラッ

    (・・・針生さんは気付いてないみたいだけど、三尋木さんの照れ隠しみたい。素直じゃないなあ)

    146 = 128 :


    「三尋木さん、ありがとうございます」

    「うぇ? いきなりなんだい?」

    「だって、私の為に協会に抗議してくれて、こうして復帰を祝ってくれて・・・私、三尋木さんみたいな先輩をもって幸せです」ニコリ

    「・・・」ボッ

    えり(うわ、直球の感謝の言葉に赤面してる・・・それにしても宮永プロ、こういう時はちゃんと笑えたんだ)

    「私、こんどこそ日本代表としてしっかり闘えるように頑張ります。三尋木さんに負けないくらい、もっともっと麻雀を楽しめるように」

    「み、宮永ちゃん・・・」

    「一緒に楽しみましょう。ううん・・・一緒に楽しもうよ!」ゴウッ

    147 = 128 :


    「・・・・・・はは、まったく。一丁前の口をきいてくれるねぇ」

    えり「あなたが他人の言動を注意できるような人ですか?」

    「はいはい、わかってるよぅ。ふっ・・・代表復帰が決まっても、二の足踏むようなら活を入れようてあげようかと思ってたんだけどねぃ」

    「むしろ、活を入れられたのは私の方だって気分だよ」

    「三尋木さん?」

    「うん、一緒に楽しもうかねぃ」

    「はい!」

    「言っておくけど、日本代表のエースの座はまだまだ誰にも譲る気はないよー。たとえそれが宮永ちゃんでもねぇ」ゴゴゴゴゴゴ

    「どうでしょう? 今回はお姉ちゃんが先鋒で活躍したみたいですし、他の人もきっと大勢狙ってますよ」ゴゴゴゴゴゴ

    えり(なんかテーブルに置いてあるコップがひとりでにカタカタしてるけど、気のせい気のせい)

    148 = 128 :


    「ふふ、楽しいねー、小鍛冶さんの一強時代とは違う・・・今ならあの人が一線を退いて、教える側にまわった気持ちが少しは解るよ」

    そう言いながら、三尋木咏は席においてあった風呂敷を咲の前に差し出した

    「? これ、なんですか?」

    「私から宮永ちゃんに、復帰のお祝いの品だよ。良かったら受け取ってくれるかい? まあ、嫌だっつっても持って帰ってもらうけどねぇ」ハラリ

    「これ・・・振袖!?」

    「宮永ちゃんの為に選んだんだ。着なくてもいいけど、大事にはしてほしーかな、しらんけど」

    「三尋木さん・・・こんなすごいものを、ありがとうございます大事にします」ペッコリン

    えり(孫に晴着を送るおばあちゃんですか、なんて無粋な事を言うのはよそう)

    149 = 128 :


    「まあ、でもなんつーか、それ渡すのタイミングが悪かったかもねぃ」

    「え?」

    「だってほら、振袖って未婚女性が着るもんだろー? もしかしたら宮永ちゃん、もうそろそろ着れなくなるかもしれないからねぃ」ニヤニヤ

    えり「?」

    「そ、そんな事ありません!」

    「はっはっは、わかんねーすべてがわかんねー」ケラケラ



    何はともあれ宴もたけなわ

    しのぎを削りあう事を楽しみとするプロ雀士達は、きたるべき大きな闘い為にその楽しみを誓い合った

    150 = 128 :


    今日はここまでっす、霞さんの出番が少なめなのは次回の為の布石という事で、どうか許してください

    次回投下は霞咲のようななにかという注意書きに恥じぬよう、霞さんの出番と急展開やあるいは超展開も含めて終わりに向けて話が進む予定ですので、もうしばらくお付き合い頂けたら幸いです

    ※書けなかった部分のどうでもいい補足
    この咏えりはそれなりに仕事で組んで長いですが、咏がちゃんとした打ち合わせしないから(咲日和)いまだに実況解説が噛み合わないって設定。
    仲は、いい意味で遠慮しない感じで良好という具合



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