元スレ京太郎「俺が奴隷扱いされてるっていう噂が流れてる?」
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901 = 1 :
「へっ?」
女の子特有の丸っこい字で書かれたその一言の内容が理解できず俺は間抜けな声を漏らしてしまった。
先ほどまでの怒りはどこへやら、状況が理解できず顔を上げた。
するとそこには申し訳なさそうにする照さんと、満面の笑みで笑う大星。
その手にはいつの間に持っていたのだろう、段ボールで作ったであろう簡素なプラカードを持ち、そこにはこう書かれていた。
淡「ドッキリ大成功ーーーーーーーー!」
尭深「だ、だいせいこー!」バサッ
誠子「尭深、恥ずかしいのはわかるけど"う"をちゃんとつけて。いろいろとほら、まずい」バサッ
京太郎「うおぉっ!」ビクッ
大星の叫びと共に近くに置かれていた大きな段ボールのふたがいきなり開き、女の人が二人飛び出してきた。
1人はノートパソコン、もう1人はパソコンにつながっているWEBカメラを手に持っている。
素でビビった俺は情けない叫び声をあげつつ思わずのけ反った。
っていうか何、この状況?
菫「……案の定放心しているな」ガチャッ
そんな状況で扉を開けて入ってきた人がまた一人。
と言うかこの人たち、確か白糸台のレギュラー陣だよな?
京太郎「……あ、へ、その、ドッキリ?」
照「ごめん、須賀君を怒らせたのは、わざと」
淡「いえーい!」
菫「お前は煽りすぎだっ」ベシッ
京太郎「わざ、と?」
照「うん。須賀君の、演技でもなんでもない心からの気持ちを聞きたかった。須賀君がどれがけ部を大切に思っているのかっていうのを」
何故? Why?
わざとって何?
つーかどういう事よ?
何でそんなことをするのよ?
理解が追い付かない俺の脳みそはそろそろフリーズを起こしそうだった。
菫「まず、騙すようなことをしてしまったことを謝罪したい。人に訴えかける姿を撮るにはこういう手段を取らざる得なかった」
京太郎「な、なんでそんなことを?」
菫「当然の疑問だな。で、それについてもう一つ謝らなくちゃいけないんだが……」
そういうと髪の長いその人はちらりと段ボールから飛び出してきた人たちのほうを見て申し訳なさそうに告げた。
先ほども言ったがその手にはパソコンとWEBカメラ……待て待て待て! パソコンとWEBカメラ!?
菫「君が『俺にできることならします』って言った後からずっと、君の姿をUs○reamで生配信をさせて貰っていた」
淡「もちろん掲示板でもURL付で宣伝してるよ!」
京太郎「」
902 :
え?
904 :
これはさすがに殴っていい
905 = 1 :
(そのころの清澄)
まこ「鶴賀の部長が慌てて電話かけてきてこれを見ろとURL送ってきたから見てみたら……」パソコンカチカチ
咲「……京ちゃん」
優希「……ばーか」
久「まったくもう、何かこそこそとしてるなぁとは思っていたけどこんな事たくらんでたのね」クスクス
和「でも、どう見ても台本とかじゃなくて素ですよ、コレ。……まぁ、だからこそちょっと気恥ずかしいですけどね」
まこ「誰が考えた筋書きか知らんが……まったく。流石にここまでのものを見せられちゃそう悪く言うやつはおらんじゃろ」
久「あーあ、もうほんと。やってくれるわね。誰だかわからないけど、文句言わなくちゃ」
優希「そうだじぇ! うちの部員を騙した罪は重いじぇ!」
和「ですね。そもそも、肖像権の侵害ですよこれは!」
咲「(……言葉の割にはみんな嬉しそう)」
咲「(私もだけど)」クスッ
(そのころの姫松)
恭子「これって、奴隷って噂されてた子、やな?」
洋榎「せや。……この子の言うとること、ホンマか?」
漫「嘘には、見えませんでした。……つまり」
恭子「全部デマやった言うことか。土下座し損やん……」
絹恵「あ、あははは……」
由子「」コーホー
洋榎「というかいつまでそれ着とるんや」
漫「気にいったん?」
由子「」ノーヨー
(そのころの宮守女子)
エイスリン「ヤッパリ、ウソ!」ニコニコ
胡桃「エイスリンさん、前はあんなに怯えてたのに随分変わったね?」
エイスリン「アノ人、優シカッタ!」
塞「そういえば試合後は普通に話しできてたね」
エイスリン「ウン」ニコニコ
胡桃「それにしても、嘘だったなら私は結構ひどい態度とっちゃったな……」
豊音「私、泣いて土下座しちゃった……恥ずかしい……」
白望「(そもそもなんでみんな最初っから信じてたんだろう)」
白望「ダルい」
906 = 883 :
>>904
でも『何でもします(意訳)』って言っちゃったし、中心人物の心からの台詞だから効果抜群だろうし怒るに怒れないでしょ
907 = 1 :
(そのころの永水女子)
小蒔「あの……霞ちゃん?」
霞「」
巴「……ダメ、完全に魂が抜けてる」
初美「そりゃ、あれだけ啖呵切ったのにそれがそもそも勘違いだったとしたら」
春「恥ずかしさで立ち直れない……」ポリポリ
霞「」ガタガタ
小蒔「あぁ、霞ちゃんが! 霞ちゃんが!」
初美「これは立ち直るのにしばらく時間がかかりそうですよー」
霞「スミマセンスミマセンスミマセン」ガクガク
(そのころの阿知賀)
憧「」
隠乃「」
玄「」
灼「あー……」
宥「えっと、いい子だね、この子」
憧「でも、それってつまり、全部ガセネタだったってことだよね?」
晴絵「さすがにこの子の叫びが嘘とは考えにくいね」
灼「それに、冷静に考えれば信憑性に欠ける話ばっかりだった」
隠乃「ネットって怖い……」
玄「うぅ、信じちゃったことに反省」
憧「(あああああああああああああ、噂にかこつけていやらしいこと考えたああああああああああああああああああああああああ)」ブンブン
晴絵「決勝近いのに、大丈夫かねこれ……」
(そのころの新道寺)
煌「あー! あー!」ジタバタジタバタ
仁美「花田、どうしたんです?」
美子「さっきからソファーに寝そべってクッション被ってじたばたしてますけど」
姫子「あー、さっきの生放送? あれで清澄の噂が嘘ってわかったやろ? それでいろいろ自己嫌悪とか恥ずかしさとかで死にたくなっちょるみたい」
哩「花田、しっかりしろ」
煌「うー」ギュッ
哩「ほら、クッションから手ば離せ。勘違いだったんはしゃあないちゃろう」
煌「はい……」オズオズ
哩「なぁ、花田。うちとしても敗退したことは悔しいが、今回の大会で収穫はあったと思っちる」
煌「えっ?」
哩「花田、チャンプから3倍満打ち取ったじゃろ? それに、後半はすさまじい追い上げみしぇたしな」
煌「あれは……なんというか、無我夢中で。あはは、たまたまです」
哩「ふむ?」
哩「(……少し叩いて鍛えれば、変わるかもしれんな)」
――翌年度、恐るべき粘り強さと土壇場の火力の高さで全国に花田煌という名前を轟かすことになる
――かどうかは誰にもわからない
908 :
これはむしろ京太郎の株が上がりそう
909 :
いままでと今後の関わりを拒否するレベルですわ
910 = 1 :
淡「と言うわけで配信はここまでー。見てくれた人ありがとー」フリフリ
照「これを見てくれた人なら、あの噂が根も葉もないものだっていうのは、わかってもらえると思う」
菫「彼らとて、必死に戦ってここまでやってきたんだ。つまらない噂で彼らの努力に水を差すのはやめてあげてほしい。各自の良心に期待する」
淡「それじゃー、バイバイ!」
尭深「……はい、今配信を止めました。もう大丈夫です」カチカチ
誠子「ふぃー、肩こった。段ボールの中狭いから」
菫「やれやれ、こういうことはこれっきりにしたいな」
京太郎「あの……」
放心&置いてけぼりのダブルコンボの俺はしばらく口を閉ざしていたけど放送が止まったと聞いてようやく口を開いた。
この部屋へやってきて30分も経っていないのに怒涛の展開すぎるだろう。
照「改めて、ごめんね。騙すような真似をして」
京太郎「いえ、その、そんな」
正直怒るべきかどうなのか判断が付きかねていた。
恥ずかしい思いをするとは聞いていたが、まさか全世界に醜態を晒すことになるとは思いもしない。
菫「動揺するのはわかる。無茶苦茶な手段だしな。咎められても文句は言えないな」
尭深「ん……ただ、やっぱり結構な効果があったみたいですよ。掲示板見てるんですが結構な騒ぎになっています」
誠子「どれどれ。『感動した』『私は最初っから嘘だと信じていた』『つーかそもそもこの話言い出したの誰よ』 ……手のひら返し早いなぁ」
尭深「結果的にウチがこの放送をしたことがある程度の説得力を持たせたみたいですね。それでも悪く言ってる人はいますけど、少数派ですね」カチカチ
京太郎「そう、ですか。……それは、よかった」
いろいろ腑に落ちないものはあるがこの状況に一撃を加えてくれたことには感謝しなくちゃいけないだろう。
照さんの確認に「体張っても恥ずかしい思いをしてもいい」と返してしまった手前、強く出れないというのもある。
考えてみれば既に俺の名前、学校、顔写真までネットに出回っていたんだ。
それらは噂が沈静化したところで消えないわけでして。
今更ひとつ動画が増えても大して状況は変わるまい。
嫌な話だけど。
菫「しばらくは注目を浴びるかもしれないが、悪い感情は持たれないだろう」
照「本当に、上手くいってよかった」
それにしてもだ。
京太郎「その、もし俺が皆を悪く言われたときに何も言い返さなかったらどうしたんですか?」
照「そんなことは考えなかった」
京太郎「そんな無茶苦茶な……」
即答である。
おいおい、ちょっとそれはノープランすぎやしないか?
そう口に出そうと思ったが照さんは自信を帯びた口調で続けた。
911 = 904 :
なんでもしますって言ったからって悪質などっきり仕掛けられても許しますってのはおかしい
まあもうどーでもいいや
912 = 902 :
すばら先輩悪くないし
913 = 878 :
>>隠乃
スマン……これだけは間違ってるって指摘させてくれ
914 :
ここにきて残念な方向になっちゃった
915 = 1 :
照「須賀君が喫茶店で私に対してあの噂が嘘だって説明してくれた時の必死さと真剣さを見て、本当に仲のいい部だっていうことはわかったから」
照「絶対に反論してくるだろうって、確信していた」
淡「そーれーにー、あれだけ負けて顔真っ赤にしてる奴がそんなに気の長い奴なわけないじゃーん。絶対ガチギレすると思ったよ」ケラケラ
今までパソコンをいじりまわしていた大星がにやにや笑いながら口を挟んできた。
相変わらず憎たらしい奴め。
反論できないけど。
しかし、大星はともかく照さんとは今日会ったばかりだっていうのに俺と言う人間がいろいろ見透かされてるのにちょっと驚く。
やはり麻雀強い人と言うのはどっかそういう感覚が鍛えられているのだろうか?
まぁ、騙された感はあるし気恥ずかしさもあるけれど、結果が出たのならこれ以上どうこう言うこともあるまい。
ならば、言うことは一つだ。
京太郎「まぁ、その、すっごい無茶苦茶な手段ですし、これ訴えたら勝てるんじゃないかって気もしますけど」
尭深「(ぎくっ)」
京太郎「でも、効果はあったみたいですし……だからその、ありがとうございました。わざわざ俺たちのために」
菫「構わんさ。照の頼みだったし、何より決勝で戦う相手だ。盤外の事情で勝負に水を差すのは本意じゃない」
何この人男前。
これが王者の風格っていうやつですか。
全力を受け止めた上で叩き潰すとかいうそういう横綱相撲的な。
照「それに頑張ったのは須賀君だから。私たちは少し協力しただけ」
俺はただブチ切れて喚いていただけなのだが。
しかし、冷静に考えるとそんな姿をたくさんの人に見られたわけだ。
落ち着いてきて、今更ながらすごく恥ずかしくなってきた。
淡「ふふー、なかなかいいキレっぷりだったよ」
京太郎「こいつ……」
また何か突っかかってくるのかと思ったけどいきなり神妙な顔をしてこっちを見てくる。
思わずぎょっとして二の句が継げなくなってしまった。
淡「仲間をあんなふうに言われたら誰だって怒るよね。フリだったとはいえごめんね、酷いことを言って」
そう言って頭を下げてくる。
……この卑怯者め、そう素直に謝れると何も言えないではないか。
こういうタイプの人間が殊勝に謝ってくると効果は絶大だとひしひしと感じた。
京太郎「いいよ、別に。もう気にしてねーし」
淡「うん、よかったぁ!」
結局あっさり許してしまう自分のチョロさに若干自己嫌悪を覚える。
俺はちょちょぎれそうになる涙をこらえながら、これから控室に戻るのにどういう顔をして戻ればいいのか頭を悩ませていた。
916 = 1 :
以下エピローグですが、なんかちょっと重いのも思いのほか投下に時間がかかったためちょっと休憩させてください。
24時過ぎぐらいから投下します。
917 :
いったんおつ
918 :
いや、ギャグスレにマジレスしても………
919 :
一旦乙
まあ、こうするしかないよな
白糸台まで巻き込むとは予想外だったが
920 :
ギャグなら人を不快にさせてもいいのか
なるほど
922 = 904 :
ギャグだからこそ気分が悪いんだけどわかんねえよなそういうの
923 :
一旦乙です
924 :
こういう時って、一番とばっちりを受けた人間がご都合展開のためになぁなぁで相手を許しちゃうからね
ギャグとして扱う時には(善意とはいえ)陥れた側もある程度痛い目を見ないと笑えなくなっちゃう
925 :
最後の最後でやらかしたなあ
926 :
乙
だけどまあ、笑えなかった
927 :
待って待ってこれは…見る目なかったなぁ
928 :
ご意見等はもちろんあると思いますが、一度書いた作品は何とか書き切りたいと思います。
続き投下しますー。
929 = 1 :
(エピローグ)
あの後、噂は比較的速やかに収束していった。
あの生配信はどこかの誰かに他の動画サイトへ転載されてあれを見ていなかった人の目にも触れることになったのも一役買っている。
ちなみに転載を知った俺は削除申請の仕方を一時生真面目に調べたりもした。
っていうか誰だこの動画を使ってMAD動画を作りアップした奴は。
先生怒らないから名乗り出なさい。
……話が逸れた。
で、噂は沈静化されたが清澄高校麻雀部はしばらく注目を集めた。
全国決勝に進んだ時点で注目を浴びるのは当たり前だけど、何故か俺にまで注目が集まったのは言うまでもない。
とは言え、以前のように怖がられたり逃げられたり敵意を向けられたりと言った類のものではないので、比較的気は楽だったが。
全国大会決勝もようやく怯えられることもなく、敵意を向けられることなく、普通の試合になったのは大変喜ばしかった。
体を張った甲斐もあるというものであろう。
そんな全国大会も終わってしまえばあっという間に日常に逆戻りだ。
長野に帰って道端とかで噂とかされないかと思ったが意外とそんなこともなかった。
人は他人の顔なんぞはよく見ていないものなのだろう。
……新学期に入ってから友人の何人かにはからかわれたけどな。
そんなわけで日常生活に大きな変化があったかと言われるとそんなことはなかった。
いつも通り学校に行き、勉強をして、放課後は麻雀をする日々である。
何も変わらない。
ただ、大きな変化はなかったけど小さな変化はあった。
照さんや石戸さんとは時々メールをしている。
近況やお互いの住んでいるところの話なんかが主で、胸がときめくような展開ではないけれども。
冬の休みで練習試合でもしようかと言う話がまとまりそうなのでちょっと忙しくなりそうだ。
距離が距離なのでちょっと大変かもしれないけど。
あいつ、大星とは時々一緒にゲームをしている。
最近のネットの発達は偉大で東京と長野と言う距離でもネット環境さえあれば対戦ができてしまう。
淡「ウロボロス伸ばしちゃうwwwwwww0って書いてあるのが見えないのwwwwww」ガチャガチャ
京太郎「うるせー! ラグだラグ!」ガチャガチャ
まぁ、こんな感じでs○ypeを繋いでお互い罵りながらゲームをしたり時々ネト麻を一緒にしている。
……喧嘩しているわけじゃないよ?
930 = 1 :
そんなわけで大きな変化なんて特に何もない。
ほかの部員だってそうだ。
今までの通りにそれなりに仲良くやっている
(ある日の部室)
まこ「京太郎、あの牌譜じゃ……だけど」
京太郎「?」
まこ「う、あー、コピーってとって……くれない?」
京太郎「いや、それはいいんですけど」
まこ「なんじ……なぁに? 何か、おかしい……?」
京太郎「……そんな無理しなくても」
まこ「わ、た、し、別に無理なんか……」
京太郎「さっきからまともに喋れてないじゃないですか」
まこ「やかましい! あっ、しまった……」ガックリ
京太郎「どうしたんですか突然? いきなりしゃべり方変えようとして」
まこ「……別に。大した理由じゃないわ」
京太郎「その、可愛げないとか、地味とか、いろいろ書かれたのは気にしてます?」
まこ「口に出すなアホッ!」ガーッ
京太郎「す、すんません」
まこ「だから、大した理由じゃないって言うとるじゃろ? 標準語は喋れて損はないけぇ」プイッ
京太郎「そうですか……」
まこ「」ツーン
京太郎「その、先輩?」
まこ「なんじゃ?」ツーン
京太郎「俺、先輩の広島弁、好きですよ。だから聞けなくなるのはちょっと寂しいと言うか」
まこ「……」
京太郎「まぁ、どうしても直したいって言うなら、その、止められないですけど」
まこ「……」
京太郎「部活の間中ぐらいはいつもの喋り方でいてほしいかなー、なんて」アハハ
まこ「……アホ」クスッ
931 = 1 :
(またある日の部室)
京太郎「お疲れ様でーす」ガチャッ
久「わーーーーーーーーーーー!」ズザッ
京太郎「うあっ! びっくりしたっ!」
久「あっはっは! 須賀君は相変わらずいいリアクションね」
京太郎「……何やってんすか。っていうか受験勉強はどうしたんですか?」
久「今日は休憩?」
京太郎「なんで疑問形なんですか。そんなこと言って一昨日も来てましたよね?」
久「須賀くーん、お茶入れてー」
京太郎「聞いちゃいないし……まったくもう」カチャカチャ
久「皆は?」
京太郎「家の都合やら補修やらで皆遅れてくるらしいですね。……はい、どうぞ」
久「ありがと。んー、須賀君のお茶を淹れる腕はもう部内1ね」ゴクゴク
京太郎「そこを褒められても何にも嬉しくないっす」
久「ごめんごめん。感謝してるわよ。須賀君」
京太郎「はいはい、どーも」
久「何そのリアクション。せっかく感謝してるのに」
京太郎「今まで何度も痛い目見てるんで先輩不信にもなりますよ」
久「あららー。すっかりひねくれちゃって」
京太郎「教育の賜物です」
久「はいはい……ねぇ、須賀君」
京太郎「何ですか?」
久「皆で秋の連休に旅行でもいかない? 紅葉でも見に」
京太郎「旅行かぁ……。これからの時期だと紅葉狩りとかですか」
久「紅葉もいいけどシーズンだしリンゴやブドウもいいかもね」
京太郎「おぉ、いいですねそれ!」
久「ん、決まりね。皆で楽しい旅行にしましょ」ニコッ
932 = 1 :
(またまたある日の部室)
咲「えーっと、これが……うー」スッスッ
京太郎「だからガラケーにしとけって言っただろ? 無駄に最新型のスマホなんて買いやがって」
咲「だってぇ。LINEとかやってみたかったし……」
京太郎「ほら、見せてみろ。まずはこっからソフトをダウンロードして……」
咲「だ、大丈夫? ウィルスとかじゃない?」
京太郎「いちいちんなこと気にしてたら何にもできないっつーの。ほら、インストールできたぞ」
咲「や、やった!」
京太郎「後はいろいろ登録とかして……そう言えば照さんの携帯番号とかは聞いてるのか?」
咲「うん、ここメモがあるよ!」
京太郎「待て待て。メモリ登録してないのかよ」
咲「何度も挑戦したんだけどうまくできなくて……」
京太郎「お前本当に現代の女子高生か?」
咲「うー……京ちゃんのいじわる」
京太郎「ほらほら、手打ちするのもめんどくさいだろ? 赤外線で照さんの番号とアドレス送ってやるから」
咲「せきがいせん? あのコタツとかの?」
京太郎「」
咲「きょ、京ちゃん。『こいつ駄目だ……早く何とかしないと……』みたいな顔で見ないで」
京太郎「……せっかく照さんとメールできる環境になったのにいつになったら送れるんだろうなー」
咲「が、頑張るもん! 最近やっとメールソフトの起動の仕方がわかったし!」
京太郎「前途多難すぎるだろ……まっ、頑張るか。せっかくお姉さんと話せるんだもんな」
咲「……うんっ!」
933 = 1 :
(またまたまたある日の部室)
優希「おーっす。って、京太郎だけか」
京太郎「よぉ。咲は図書館に本を返しにってるからもうちょっとしたら来るぞ」
優希「そっか。京太郎は何を読んでるんだじぇ?」
京太郎「んー? 和にもらった指南本。なかなかためになるぜ」ペラッ
優希「ふーん」
京太郎「……」ペラッ
優希「……」
京太郎「……」ペラッ
優希「……」
京太郎「……(いつもだったらちょっかい掛けてくるのに静かだな)」ペラッ
優希「……なぁ、京太郎」
京太郎「ん、どうした?」パタン
優希「全国大会の時に流れてたあの噂……」
京太郎「?」
優希「あの噂、元凶の一つは恐らく私だじぇ」
京太郎「えっ!?」
優希「長野合同合宿の時、京太郎が牌譜を届けに来ただろ?」
京太郎「あぁ、行ったけど?」
優希「あの時、風越のキャプテンと池田に京太郎の彼氏が咲ちゃんかってからかわれたんだじぇ」
京太郎「おいおい、そんなことあったのかよ……」
優希「……その時、京太郎は咲ちゃんの彼女じゃなくて、ウチの部活の犬だ、みたいなこと言っちゃった」
京太郎「えっ……」
優希「多分、そこから広まった噂もあると思うじぇ。その、ごめん、京太郎」ペコッ
京太郎「別に今更謝られてもしょうがないし。別にもう気にしてないけど……つか、なんでそんなこと言ったんだ?」
京太郎「まぁ、お前が犬犬言うのは今に始まったことじゃないけど」
優希「……その何だかムカッときて」
京太郎「えっ?」
優希「何で腹が立ったのかは今でもわからないんだじぇ」
優希「ただ、その、京太郎が咲ちゃんの彼氏って扱いされてて、そういわれてあたふたしてる咲ちゃんを見たら……」
優希「黙って聞いてるのがどうしても嫌で、我慢ができなくて……」
優希「つい、言っちゃったんだじぇ」
京太郎「……そか」
優希「……軽蔑したか?」
京太郎「ん、そんなことねーよ」
優希「うん……なあ、京太郎」
京太郎「何だ?」
優希「……ありがとう」
京太郎「……おう」
934 = 1 :
まぁ、こんな感じで特に大きな変化はない。
皆で仲良くやっている。
部長はあと半年もしたら卒業してしまうし、来年になれば後輩もできるけど、これからも上手くやっていけると思う。
多分、なんとなくだけど。
和「須賀君?」
京太郎「ん、おぉ。和、来てたのか。早く来すぎてちょっとボーっとしてた」
和「咲さんとゆーきは2人そろって寝坊で1時間ほど遅れるそうです。まったく、大会が終わったからってたるみ過ぎです!」
京太郎「まぁまぁ、久しぶりの土曜練習だししゃーないだろ」
和「でも、今日は染谷せ……部長はこれはこれませんし、二人が来てくれなくちゃ麻雀になりません」
京太郎「んじゃ、しばらく二人でお勉強でもするか?」
和「そうですね。じゃあ、牌譜を……」
そう言いながら和は立ち上がって棚の牌譜に手を伸ばしたが、突然その動きがぴたりと止まった。
和「そっか。今、二人だけなんですよね。……そっかぁ」
京太郎「和?」
断片的に聞こえたその言葉について聞こうとする前に和はこちらを振り返った。
手を後ろに組み、普段しないようなどこかぞくっとする笑みを向けていた。
和「大会中は、いろいろ大変でしたよね」
京太郎「ん、あ、ああ。まぁ、な」
和「須賀君には感謝してます。私たちのためにいろいろ頑張ってくれて」
京太郎「な、なんだよ改まって」
あの生配信のことについてはひとしきりいじられた後、皆それ以降触れないようにしてくれていた。
精神衛生的にも大変助かっていたが、久しぶりにその話を持ち出されてちょっと動揺する。
和「酷い話でしたよね。私が女王様みたいな扱いで須賀君をいじめてるとか」
京太郎「あぁ、まぁ、な」
和は突然何を言い出しているんだろう。
話の流れが全く読めないが、なぜか背筋が冷える気がした。
和「私、最初それを見たときはすごく腹が立ったんですよ。私がそんなことするわけないって」
そこまで言い切った後、でも、と繋げた。
悪い予感がする。何故だろう。ただ話をしているだけなのに。
和「でも、掲示板の投稿の中にはよくできた書き込みとかもあったんですよね。もちろん捏造ですけど、私が須賀君をどう苛めているのか事細かに書いたものとか」
和が一歩近づいてきている。
まずい、何かわからないけどまずいことが起こる。
和「で、掲示板をチェックするとどうしてもそういうものが目に入っちゃうんですね」
立て。立って逃げろ。
もしくは口を開け。拒絶しろ。
そうしないと、まずいことがおこる。きっと。
和「そういう物を読んでいると……とってもいけないこととなのに。そんなの普通じゃないってわかってるんですけど」
和が笑う。
そんな顔で笑えるんだな、お前。
和「すごく、すごくドキドキしたんです」
何故、そんな顔をするんだろう。
あぁ、そんな顔をされたら、逃げられない。
拒絶できない。
和「私のこと軽蔑しますか?」
反射的に首を横に振ってしまう。
あぁ、何故俺はここで首を横に振ってしまったのだろう。
935 :
おや、のどっちの様子が・・・
937 :
来てたか乙
もうすぐ埋まるけど終わりかな?
938 = 1 :
和「よかった。……ねぇ、須賀君?」
京太郎「なん、だ?」
和「私、自分で思ったいたよりずっとずっといけない子なのかもしれません」
和「最近気が付けば恥ずかしいことばかり考えている自分がいるんです」
和「最初は考えないようにしていたんですけど、でも、どうしよもないんです」
和「だから、これから須賀君に対して酷い姿を見せるかもしれません」
和「とんでもないことを口走ったり、考えられないようなことをしてしまうかもしれません」
和「……それでも、やっぱり失望しないでいてくれますか?」
やめろよ。
さっきまではあんな、あんなぞくりとするような顔で笑ってたくせに。
何で今度はそんな縋り付くような顔をするんだよ。
捨てられた犬が見つめるような、親の愛が欲しい子供が見るような。
何でそんな目で見るんだ。
そんな顔されたら……
京太郎「大丈夫、失望したりしない。絶対に」
こう、言ってしまうじゃあないか。
和「ありがとう須賀君! とっても嬉しいです!」
和「だから、これからも、『よろしく』お願いしますね」
京太郎「……あぁ」
花のような笑顔の中に隠しきれない多幸感が浮かんでいる。
俺は不安の感情の中にわずかな期待の感情が芽生えたことに驚いていた。
前言撤回、これから先には何やら大きな変化が待ってそうな気がする。
まぁ、でも、みんなで仲良く、やっていける……よね?
939 :
嗚呼、もう引き返せない…
940 = 936 :
女王のどっち…ウッ
941 = 1 :
――おまけ――
(白糸台打ち上げ会場)
菫「ん、全員渡ったな。それでは全国大会お疲れ様。乾杯!」
一同「かんぱーい!」
ワイワイガヤガヤ
淡「いやー、あの時うまくいってよかったね!」
照「うん、よかった」
菫「全く……上手くいったからいいものを場合によっては大問題になっていたぞ?」
淡「結果オーライオーライ! 終わりよければすべてよし!」
菫「まぁ、結果としてまとまるところにまとまったから良しとしようか」
誠子「もう段ボールの中に隠れるのは勘弁してほしいですね」
尭深「私も……」
pipipipi...
照「ん、咲からだ」カチカチ
菫「おぉ、ようやく普通に送ってくるようになったのか。よかったな」
淡「携帯持ってない子っているんだねー。いまどき」
照「でも最近は慣れてきたみたいで……」カチカチ
照「……」
照「……!」
照「菫。今、咲から聞いたんだけど」
菫「ん? どうした」
照「これ……」
菫「ん? これってあの例のコミュニティサイト……」
【影の支配者】白糸台を語るスレpart236【暗黒皇帝】
菫「oh...」
942 = 926 :
あの話の流れで白糸台がそんな扱いにはならねえだろ
つくづくいい加減だな
943 = 1 :
投下は以上になります。
本当に投下感覚をあけすぎてしまって申し訳ございませんでした。
今夏の反省としてはやはりある程度勢いの中で書ききった方がいいなというのは痛感いたしました。
プロットやメモを取っておいたとは言え間が空くと行間がどんどん頭の中から抜けていき酷いことに……。
結果として起承転結の結が強引な展開になったことは反省しております。もっと精進いたします。
沢山のご意見、ご感想ありがとうございました。
咲SSはこれからも書いていくので次スレ以降もよろしくお願いいたします。
944 :
どうどう
946 :
‥‥‥ほんとかー?
ほんとに悪女書いた人かー?
947 :
色々言われてるけど、俺はいいクリスマスプレゼントになったと思うよ。
完結乙。
また時間出来たら新作、期待してもいいかな?
あ、勿論>>1の負担にならない程度で。
しかしのどっちを最後に持ってきたのはそのためだったのか。
949 :
女王覚醒したのどっちのその後が気になるな
950 :
乙、面白かったよ
次回作も楽しみにしてます
みんなの評価 : ★
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- 京太郎「俺が三年生?」初美「もっと傍にいてもいいですかー?」 (1002) - [50%] - 2018/8/20 0:30 ○
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- 京太郎「俺が三年生?」由暉子「ゆきみだいふく、食べませんか?」 (1001) - [48%] - 2015/8/12 13:15 ★★
- 京太郎「修羅場ラヴァーズ」照「ずっとずっと、愛してる」 (1001) - [48%] - 2014/6/22 6:45 ★★
- 京太郎「とにかく愛でてみたい、そう思ったんだ」 (344) - [48%] - 2016/3/12 22:00 ★
- 京太郎「抱かれ枕?そういうのもあるのか!」 (1001) - [47%] - 2014/7/17 19:15 ★★★×4
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