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元スレ勇者「世界救ったら仕事がねぇ……」
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南大臣「まあ、君が魔王シンパであることは聞いていた」
鳥魔物「……」
南大臣「だが、個人では強大な力やシステムを使いこなす事は出来なかった」
南大臣「人間も同じことではないか、たった一人がすべてを決め、すべてをこなす」
南大臣「……実際に、魔王は敗れ去ったではないか」
鳥魔物「魔王様を侮辱しないでください」
南大臣「では、勇者殿でも良かろう」
勇者「俺がなんだってんだよ」
南大臣「……勇者殿。あなたは、魔王を倒した後、何をされていましたか」
勇者「ごろごろしてた」
南大臣「それ以後ですよ。わが城内に武器を持って押し入るまでの間です」
勇者「北国で、ほれ、戦ってた」
南大臣「……北国で内乱の手助けをしていましたな」
勇者「……ちょっと待て。魔法使い助けるから」ガラガラ
南大臣「……」
鳥魔物「……」
南大臣「だが、個人では強大な力やシステムを使いこなす事は出来なかった」
南大臣「人間も同じことではないか、たった一人がすべてを決め、すべてをこなす」
南大臣「……実際に、魔王は敗れ去ったではないか」
鳥魔物「魔王様を侮辱しないでください」
南大臣「では、勇者殿でも良かろう」
勇者「俺がなんだってんだよ」
南大臣「……勇者殿。あなたは、魔王を倒した後、何をされていましたか」
勇者「ごろごろしてた」
南大臣「それ以後ですよ。わが城内に武器を持って押し入るまでの間です」
勇者「北国で、ほれ、戦ってた」
南大臣「……北国で内乱の手助けをしていましたな」
勇者「……ちょっと待て。魔法使い助けるから」ガラガラ
南大臣「……」
南大臣「魔王を倒すほどの力を持ちながら、一国の争いを収めるどころか、内乱の火種を炎にする」
南大臣「各国の不安材料だった魔物を残したまま、それを討伐することもしない」
南大臣「……力を持て余して、秩序を乱す冒険者どもと同じだ」
勇者「いや、勇者は便利屋じゃねーし」
南大臣「便利屋ならまだマシですな! 救世の英雄が、わが国ではたかりのような生活を送ってはばからない!」
勇者「だから、仕事を探してただろうが」
南大臣「数ヶ月も経ってから、でしょう」
勇者「そりゃそうだろ。姫様と結婚して、永久就職いけるか! って思ってたし」
南大臣「……し、正直が過ぎるのではありませんか?」
南大臣「とにかく! お分かりでしょう」
南大臣「いかなる力の持ち主でも、それが個々人に属している限り、真に使いこなすことなどできないということが」
虎魔物「わけが分からんな」
勇者「まったくだ」
南大臣「各国の不安材料だった魔物を残したまま、それを討伐することもしない」
南大臣「……力を持て余して、秩序を乱す冒険者どもと同じだ」
勇者「いや、勇者は便利屋じゃねーし」
南大臣「便利屋ならまだマシですな! 救世の英雄が、わが国ではたかりのような生活を送ってはばからない!」
勇者「だから、仕事を探してただろうが」
南大臣「数ヶ月も経ってから、でしょう」
勇者「そりゃそうだろ。姫様と結婚して、永久就職いけるか! って思ってたし」
南大臣「……し、正直が過ぎるのではありませんか?」
南大臣「とにかく! お分かりでしょう」
南大臣「いかなる力の持ち主でも、それが個々人に属している限り、真に使いこなすことなどできないということが」
虎魔物「わけが分からんな」
勇者「まったくだ」
勇者「いいか、ハゲジジイ。だったらてめぇはどうなんだよ」
南大臣「私は、陛下とともに、人間の跳躍を目指しました」
勇者「はっ、ジャンプくらい、誰でもできるわ」
南大臣「比喩ですよ。勇者殿にしか出来ないことを、人類全てが出来たらどうなりますか」
勇者「俺にしか出来ないことは、雷呪文くらいなもんだろ」
南大臣「……魔王を倒すことが、誰にでも出来るなら」
勇者「勇者の価値がなくなる」
南大臣「そうではありません。誰もが活き活きと生きられるのです」
南大臣「そればかりではない、元来、力において人に勝る魔物とも共存し、生きていくことが可能だ!」
勇者「だってよ?」
虎魔物「気持ち悪いってのは強者の意見か、骨」
骨魔物「……少なくとも」
骨魔物は、カタカタと顎を鳴らす。
骨魔物「四天王の方々と違い、我々は魔王様の闇の力を無くしては、この世界では生きられぬ」
南大臣「私は、陛下とともに、人間の跳躍を目指しました」
勇者「はっ、ジャンプくらい、誰でもできるわ」
南大臣「比喩ですよ。勇者殿にしか出来ないことを、人類全てが出来たらどうなりますか」
勇者「俺にしか出来ないことは、雷呪文くらいなもんだろ」
南大臣「……魔王を倒すことが、誰にでも出来るなら」
勇者「勇者の価値がなくなる」
南大臣「そうではありません。誰もが活き活きと生きられるのです」
南大臣「そればかりではない、元来、力において人に勝る魔物とも共存し、生きていくことが可能だ!」
勇者「だってよ?」
虎魔物「気持ち悪いってのは強者の意見か、骨」
骨魔物「……少なくとも」
骨魔物は、カタカタと顎を鳴らす。
骨魔物「四天王の方々と違い、我々は魔王様の闇の力を無くしては、この世界では生きられぬ」
虎魔物「ふん! それは魔界に帰りそびれたのが悪いんだろうが」
鳥魔物「……」
南大臣「虎の方は気づいているようですな。ご自身の意見が、強者の論理だと」
南大臣の笑顔を見て、勇者は床に唾を吐き捨てた。
勇者「俺が馬鹿だと思って、煙に巻こうとしているだろ」
南大臣「……なんですかな」
勇者「仮にこれで全員が強くなっても、相対的に弱いやつらが苦しむだけだろ」
南大臣「……」
勇者「北国の内乱もさー、元は孤児院が襲撃されたから反撃したんだよ」
勇者「子どもが攻撃されたんだよ」
勇者「僧侶さんは、それで腹が立って戦っただけだ」
南大臣「それはしかし、政治的に影響力のある人間が孤児院を作っているからでしょう」
勇者「関係ないだろ、そんなもん」
鳥魔物「……」
南大臣「虎の方は気づいているようですな。ご自身の意見が、強者の論理だと」
南大臣の笑顔を見て、勇者は床に唾を吐き捨てた。
勇者「俺が馬鹿だと思って、煙に巻こうとしているだろ」
南大臣「……なんですかな」
勇者「仮にこれで全員が強くなっても、相対的に弱いやつらが苦しむだけだろ」
南大臣「……」
勇者「北国の内乱もさー、元は孤児院が襲撃されたから反撃したんだよ」
勇者「子どもが攻撃されたんだよ」
勇者「僧侶さんは、それで腹が立って戦っただけだ」
南大臣「それはしかし、政治的に影響力のある人間が孤児院を作っているからでしょう」
勇者「関係ないだろ、そんなもん」
勇者「間違うときは、集団でやっても間違うんだよ」
勇者「お前らが今やってんのも大間違いだ」
勇者「いいか、今すぐその変な球体を引っ込めろ!」
南大臣「……あなたには弱者の思いは」
勇者「知るか! 俺はエスパーじゃねーんだよ」
鳥魔物「……もういいです」
鳥魔物が静かにつぶやく。
鳥魔物「お前達は、魔王様を侮辱しました」
鳥魔物「それだけで、私にとっては十分すぎるほどです」
突然、鳥魔物がくわぇーッと奇声を発した。
勇者「お前らが今やってんのも大間違いだ」
勇者「いいか、今すぐその変な球体を引っ込めろ!」
南大臣「……あなたには弱者の思いは」
勇者「知るか! 俺はエスパーじゃねーんだよ」
鳥魔物「……もういいです」
鳥魔物が静かにつぶやく。
鳥魔物「お前達は、魔王様を侮辱しました」
鳥魔物「それだけで、私にとっては十分すぎるほどです」
突然、鳥魔物がくわぇーッと奇声を発した。
全員が驚いて固まる中、鳥魔物は翼を広げると、一直線に跳躍した。
南大臣が、身構える。
その横合いで、骨魔物が銃を乱射した。
銃弾を魔風によって吹き飛ばす。
鳥はその場にいた誰をも無視して、「くだらんクス玉」に爪を立てた。
がりっ、という引っかき音が鳴り、その右爪を叩くようにして左腕で球体を殴りつける。
南大臣「き、貴様!」
大臣のあせるような声。
骨の激しい銃撃。
そして、後に追いすがる虎の影。
それらを無視して鳥はひらりと舞い上がり、今度は球体の上部を殴りつけた。
鳥魔物「こんな、こんなくだらんものを……!」
うなりながら、さらに彼女の怒りが加速していく。
南大臣が、身構える。
その横合いで、骨魔物が銃を乱射した。
銃弾を魔風によって吹き飛ばす。
鳥はその場にいた誰をも無視して、「くだらんクス玉」に爪を立てた。
がりっ、という引っかき音が鳴り、その右爪を叩くようにして左腕で球体を殴りつける。
南大臣「き、貴様!」
大臣のあせるような声。
骨の激しい銃撃。
そして、後に追いすがる虎の影。
それらを無視して鳥はひらりと舞い上がり、今度は球体の上部を殴りつけた。
鳥魔物「こんな、こんなくだらんものを……!」
うなりながら、さらに彼女の怒りが加速していく。
上方に飛び跳ねた鳥に釣られて、全員の意識が勇者に向いていない。
そこで、勇者はようやく魔法使いの様子がまずいことに気づいた。
雷撃呪文でも撃つべきかと考えた勇者の腕の中で、魔法使いがぬる、と赤色をにじませている。
勇者の怪我から移った血ではない、彼女自身の頭部から流れている血だ。
荒い息を吐く魔法使いに、回復の呪文をかける。
勇者(やべぇ、なんだこれ)
思ったより、回復が効かない。
……いつのまにか、闇の力が広間に充満し、魔法が効きにくなっている!
魔法使い「……ハァ、ハァ」
勇者「ま、魔法使い!?」
魔法使い「……出た?」
勇者「うん、出た」
魔法使い「まずいわ……儀式を、済ませる、前に」
勇者「しゃべんな! どうするかだけ、言え!」
魔法使い「て、撤退……」
勇者「いやいやいや」
そこで、勇者はようやく魔法使いの様子がまずいことに気づいた。
雷撃呪文でも撃つべきかと考えた勇者の腕の中で、魔法使いがぬる、と赤色をにじませている。
勇者の怪我から移った血ではない、彼女自身の頭部から流れている血だ。
荒い息を吐く魔法使いに、回復の呪文をかける。
勇者(やべぇ、なんだこれ)
思ったより、回復が効かない。
……いつのまにか、闇の力が広間に充満し、魔法が効きにくなっている!
魔法使い「……ハァ、ハァ」
勇者「ま、魔法使い!?」
魔法使い「……出た?」
勇者「うん、出た」
魔法使い「まずいわ……儀式を、済ませる、前に」
勇者「しゃべんな! どうするかだけ、言え!」
魔法使い「て、撤退……」
勇者「いやいやいや」
勇者「だってあれ、壊れやすそうだぞ?」
見ているうちにも、鳥魔物が球体に傷を付けていく。
傷口から、黒い霧が噴出してきている。
魔法使い「暴走……」
勇者「ま、魔法使い!?」
連戦で疲労が溜まっていたためか、魔法使いは息を荒くしたまま気絶する。
勇者が仕方なく、彼女を引きずりながら移動しようとすると、虎魔物が飛び込んできた。
虎魔物「……勇者!」
勇者「おう、虎! まずいぞ、あれ、暴走するらしいぞ!」
虎魔物「ちっ、鳥のやつも暴走してやがるからな」
勇者「どうする、なんか魔法も弱まってるし!」
虎魔物「……」
勇者「とりあえず、俺があの骨をぶん殴って……」
虎魔物「いや、どうせなら一度撤退しろ」
勇者「お?」
見ているうちにも、鳥魔物が球体に傷を付けていく。
傷口から、黒い霧が噴出してきている。
魔法使い「暴走……」
勇者「ま、魔法使い!?」
連戦で疲労が溜まっていたためか、魔法使いは息を荒くしたまま気絶する。
勇者が仕方なく、彼女を引きずりながら移動しようとすると、虎魔物が飛び込んできた。
虎魔物「……勇者!」
勇者「おう、虎! まずいぞ、あれ、暴走するらしいぞ!」
虎魔物「ちっ、鳥のやつも暴走してやがるからな」
勇者「どうする、なんか魔法も弱まってるし!」
虎魔物「……」
勇者「とりあえず、俺があの骨をぶん殴って……」
虎魔物「いや、どうせなら一度撤退しろ」
勇者「お?」
虎魔物「その女がこの事態の知恵を握ってんだろ」
勇者「そりゃそうかもしれんが」
虎魔物「なら一旦、退いて、そいつの傷を癒せ」
勇者「おい……」
虎魔物「態勢を整えるだけだ、早くしろっ!」
勇者「バカ言え!」
虎魔物「鳥を押さえるのは、俺の役目だと言ったろう」
ずがあっ!
勇者「……今、なんかすげー音したぞ」
虎魔物「ほれ、もうそいつ死にそうじゃねーか。早く行け」
勇者「ばっか、お前、ここで逃げられるか」
虎魔物「あー、もういい」ヒョイ
勇者「ちょっと待て」
虎魔物が勇者と魔法使いを抱え上げる。
抗議を無視して、それを広間の向こう側へと、した投げで思い切り放り投げた。
勇者「そりゃそうかもしれんが」
虎魔物「なら一旦、退いて、そいつの傷を癒せ」
勇者「おい……」
虎魔物「態勢を整えるだけだ、早くしろっ!」
勇者「バカ言え!」
虎魔物「鳥を押さえるのは、俺の役目だと言ったろう」
ずがあっ!
勇者「……今、なんかすげー音したぞ」
虎魔物「ほれ、もうそいつ死にそうじゃねーか。早く行け」
勇者「ばっか、お前、ここで逃げられるか」
虎魔物「あー、もういい」ヒョイ
勇者「ちょっと待て」
虎魔物が勇者と魔法使いを抱え上げる。
抗議を無視して、それを広間の向こう側へと、した投げで思い切り放り投げた。
勇者「うおおおっ!」
空を飛んでいたのは何秒か。
勇者が着地をしたのは、広間の端を越えて廊下のあたりだ。
同じく投げ飛ばされた魔法使いも、妙な格好をして床に滑り込む。
勇者「魔法使い、無事かっ!」
商人「旦那!?」
勇者「うわ、お前ら」
女商人「どうしたのですか、ま、魔法使いまでこんな様で」
勇者「ちょっとしたうっかりミスだ! こいつは任せるっ!」
叫んで勇者が再度飛び込もうと、広間を覗き込む。
すると、その勇者の顔に、嫌な薄気味の悪い風が吹き寄せてきた。
奥の方が、完全に黒い霧に覆われている。
隙間から見える、その光景に、勇者は息を飲んだ。
球体がぱっくりと、割れている。
その中に、どろりとした人型のモノがうごめいている。
それも一つや二つではない、みっしりとつまっている……。
空を飛んでいたのは何秒か。
勇者が着地をしたのは、広間の端を越えて廊下のあたりだ。
同じく投げ飛ばされた魔法使いも、妙な格好をして床に滑り込む。
勇者「魔法使い、無事かっ!」
商人「旦那!?」
勇者「うわ、お前ら」
女商人「どうしたのですか、ま、魔法使いまでこんな様で」
勇者「ちょっとしたうっかりミスだ! こいつは任せるっ!」
叫んで勇者が再度飛び込もうと、広間を覗き込む。
すると、その勇者の顔に、嫌な薄気味の悪い風が吹き寄せてきた。
奥の方が、完全に黒い霧に覆われている。
隙間から見える、その光景に、勇者は息を飲んだ。
球体がぱっくりと、割れている。
その中に、どろりとした人型のモノがうごめいている。
それも一つや二つではない、みっしりとつまっている……。
割れた球体の周りで激しくぶつかり合う影。
しかし、それをはっきりと見る間もなく、鈍く腹に響く衝撃が、勇者たちに向かって来た。
ずずぅぅぅんん―――びりっ、びりぃぃぃ―――
肌に衝撃がまとわりついてくる。
皮膚を持っていかれるような重みを感じて、勇者は嫌なものを感じた。
とうとう、叫ぶ。
勇者「―――全員、撤退!!」
返事もしないで、女商人は軽い侍女を抱きかかえると、すぐさま走り出した。
その後を商人が追う。
勇者は魔法使いを背中に無理やり乗せて、全力で逃げ出した。
ぐったりと勇者にもたれかかってはいるものの、呼吸音が首筋にかかってくる。
勇者「ちっ、マジかよ、俺が、逃げる、とはな」
魔法使い「はっ、はっ、はぁっ……」
勇者「ったく、こいつを、背負うのも、久しぶり、だし……」
魔法使い「城下町……避難……」
勇者「しゃべんな! やるから!」
しかし、それをはっきりと見る間もなく、鈍く腹に響く衝撃が、勇者たちに向かって来た。
ずずぅぅぅんん―――びりっ、びりぃぃぃ―――
肌に衝撃がまとわりついてくる。
皮膚を持っていかれるような重みを感じて、勇者は嫌なものを感じた。
とうとう、叫ぶ。
勇者「―――全員、撤退!!」
返事もしないで、女商人は軽い侍女を抱きかかえると、すぐさま走り出した。
その後を商人が追う。
勇者は魔法使いを背中に無理やり乗せて、全力で逃げ出した。
ぐったりと勇者にもたれかかってはいるものの、呼吸音が首筋にかかってくる。
勇者「ちっ、マジかよ、俺が、逃げる、とはな」
魔法使い「はっ、はっ、はぁっ……」
勇者「ったく、こいつを、背負うのも、久しぶり、だし……」
魔法使い「城下町……避難……」
勇者「しゃべんな! やるから!」
城外。
ずぅぅんん、ん―――
戦士「……なんだ?」
弟子A「なんか、音しましたね」
弟子B「やばい感じがするっすね……」
勇者「―――うおおおおおい! 戦士ぃいいいいいい!」
戦士「あいつが血相変えるとは、何の冗談だ」
勇者「撤退ぃいいい! 避難んんんんんん!」
戦士「……おい、お前ら」
弟子ズ『へい!』
戦士「早く荷物まとめろ! 町の人に逃げるように指示を飛ばせ!」
弟子A「い、今からっすか!?」
弟子B「無理があるっすよ」
戦士「いいから行け、できる限り、俺たちの村の方まででも後退しろ!」
弟子ズ『……分かりやした!』ダッ
ずぅぅんん、ん―――
戦士「……なんだ?」
弟子A「なんか、音しましたね」
弟子B「やばい感じがするっすね……」
勇者「―――うおおおおおい! 戦士ぃいいいいいい!」
戦士「あいつが血相変えるとは、何の冗談だ」
勇者「撤退ぃいいい! 避難んんんんんん!」
戦士「……おい、お前ら」
弟子ズ『へい!』
戦士「早く荷物まとめろ! 町の人に逃げるように指示を飛ばせ!」
弟子A「い、今からっすか!?」
弟子B「無理があるっすよ」
戦士「いいから行け、できる限り、俺たちの村の方まででも後退しろ!」
弟子ズ『……分かりやした!』ダッ
戦士「……勇者!」
勇者「逃げるぞ! なんかやべー!」
商人「冗談やめてくださいよ!」
戦士「魔法使いは!?」
勇者「頭を打っただけだ! 多分!」
女商人「……向こうに丘があります。そこまで死ぬ気で走りましょう!」
戦士「おい、商人。姫様は俺が抱えてやるから、寄越せ!」
商人「頼みますっ、もう、人を抱えるのは、無理っ!」
戦士が姫の体を受け取ったとき、振動が城の奥から走り抜けた。
窓ガラスが次々と割れて、フレームはゆがんではぎ落ちていく。
石積みの城がごとごとと揺れ動き、まるで生き物のようにうねり始めた。
いよいよ時間がない。
勇者は全員を励ましながら、その後を追いかける。
ふらふらになって走るもの、がちゃがちゃと鎧を鳴らして駆けるもの。
それらの背後を守りつつ、勇者は振り返った。
闇色の球体が、城を包んで膨れ上がっていた。
勇者「逃げるぞ! なんかやべー!」
商人「冗談やめてくださいよ!」
戦士「魔法使いは!?」
勇者「頭を打っただけだ! 多分!」
女商人「……向こうに丘があります。そこまで死ぬ気で走りましょう!」
戦士「おい、商人。姫様は俺が抱えてやるから、寄越せ!」
商人「頼みますっ、もう、人を抱えるのは、無理っ!」
戦士が姫の体を受け取ったとき、振動が城の奥から走り抜けた。
窓ガラスが次々と割れて、フレームはゆがんではぎ落ちていく。
石積みの城がごとごとと揺れ動き、まるで生き物のようにうねり始めた。
いよいよ時間がない。
勇者は全員を励ましながら、その後を追いかける。
ふらふらになって走るもの、がちゃがちゃと鎧を鳴らして駆けるもの。
それらの背後を守りつつ、勇者は振り返った。
闇色の球体が、城を包んで膨れ上がっていた。
城内。
闇に包まれている中で、魔物たちは盛んに動いていた。
何しろ闇の力は、魔物たちを凶暴に、強力にさせる「システム」なのだ。
その球体から発せられる瘴気は、新たな魔物さえ産んでいた。
……しかし、虎はそれが制御されたものではなく、暴走した結果であることを知っている。
鳥がぱっくりと割った球体の中に、うごめく人型を見かけて、虎は思い当たった。
虎魔物(そういえば、あの人間が言っていたな。「わが国王」と)
虎魔物(国主を犠牲にしたというのか……それとも、良かれと思ったのか?)
その自慢げにしていた人間は、噴き上がる瘴気に当てられて、近くに倒れている。
虎はそれを足蹴にすると、闇雲に銃を放っている骨をぶん殴った。
続いて、跳ね回る鳥の姿を見やる。
見れば、彼女の全身は闇の力でぱんぱんに膨れ上がっている。
過剰なのだ。
虎も感じていた。
闇の力が全身に流れ込んでくる、それはいい。
問題は、その力が、自分でも操ることが出来ないほど、過剰に流れ込んでくることだ。
虎魔物「……鳥ぃっ!」
闇に包まれている中で、魔物たちは盛んに動いていた。
何しろ闇の力は、魔物たちを凶暴に、強力にさせる「システム」なのだ。
その球体から発せられる瘴気は、新たな魔物さえ産んでいた。
……しかし、虎はそれが制御されたものではなく、暴走した結果であることを知っている。
鳥がぱっくりと割った球体の中に、うごめく人型を見かけて、虎は思い当たった。
虎魔物(そういえば、あの人間が言っていたな。「わが国王」と)
虎魔物(国主を犠牲にしたというのか……それとも、良かれと思ったのか?)
その自慢げにしていた人間は、噴き上がる瘴気に当てられて、近くに倒れている。
虎はそれを足蹴にすると、闇雲に銃を放っている骨をぶん殴った。
続いて、跳ね回る鳥の姿を見やる。
見れば、彼女の全身は闇の力でぱんぱんに膨れ上がっている。
過剰なのだ。
虎も感じていた。
闇の力が全身に流れ込んでくる、それはいい。
問題は、その力が、自分でも操ることが出来ないほど、過剰に流れ込んでくることだ。
虎魔物「……鳥ぃっ!」
虎魔物「鳥、聞こえるだろうがっ!」
鳥魔物「……! ……!」
鳥魔物が何かを叫ぼうとしている。
しかし、頭の先から喉にいたるまで、無理やり物を詰め込まされたように彼女は腫れ上がっている。
虎も、頭が沸騰したように熱くなってくる。
虎魔物「鳥、とりっ!」
指先が腫れ上がって重みを増す。
爪が熱を持って、弾け飛ぶ。
弾け飛ぶ―――もう、活発に動くどころではない。
過剰な魔力が彼らの体を崩壊に導き始めていた。
虎魔物は、闇の中をもがきながら、割れた球体にしがみついた。
鳥魔物が、転がって虎の方に向かってくる。
鳥が、腫れ上がった腕で、球体の中にいる人型を引き裂いた。
虎は、その鳥を殴りつけて、押し倒す。
虎魔物(くそったれ、こんなつまらん―――)
虎の意識が途切れた。
鳥魔物「……! ……!」
鳥魔物が何かを叫ぼうとしている。
しかし、頭の先から喉にいたるまで、無理やり物を詰め込まされたように彼女は腫れ上がっている。
虎も、頭が沸騰したように熱くなってくる。
虎魔物「鳥、とりっ!」
指先が腫れ上がって重みを増す。
爪が熱を持って、弾け飛ぶ。
弾け飛ぶ―――もう、活発に動くどころではない。
過剰な魔力が彼らの体を崩壊に導き始めていた。
虎魔物は、闇の中をもがきながら、割れた球体にしがみついた。
鳥魔物が、転がって虎の方に向かってくる。
鳥が、腫れ上がった腕で、球体の中にいる人型を引き裂いた。
虎は、その鳥を殴りつけて、押し倒す。
虎魔物(くそったれ、こんなつまらん―――)
虎の意識が途切れた。
勇者サイドの人物評が終わったら魔物サイドの人物(魔物)評も見てみたい
とにかく>>1乙っっっっっっっっっっっっっ!!
とにかく>>1乙っっっっっっっっっっっっっ!!
>>923
なんか青と赤の仲良し兄弟みたいだな
なんか青と赤の仲良し兄弟みたいだな
>>850
制御できない力に頼った段階でクソ
制御できない力に頼った段階でクソ
―――山の中。
魔法使い『もう、降ろしてよ……』
勇者『アホか、今日中にもう一山越えるってのに、お前は歩けるのか』
魔法使い『山を越えるのにこんな調子じゃ、あんたが潰れるでしょ』
勇者『ぐははっ、俺の体力は人並み以上だからな!』
魔法使い(確かに、こいつ鎧の魔物に一人で突っ込んで、ぼっこぼこにされても死ななかったし……)
戦士『勇者、そうは言っても休憩しよう』
僧侶『少し寒くなってきましたし、無理をしてはいけません』
勇者『ええ~っ、ほこらが見えてるわけでもねぇのによー』
魔法使い『なに、それとも、私の胸が気になるって言うの』
勇者『投げ捨てるぞ』
戦士『まあ、体力ないくせに、魔法使いは大きいからな』
勇者『あ、それは俺も思うわ』
僧侶『お二人とも……休む覚悟はよろしいですか?』
魔法使い『もう、降ろしてよ……』
勇者『アホか、今日中にもう一山越えるってのに、お前は歩けるのか』
魔法使い『山を越えるのにこんな調子じゃ、あんたが潰れるでしょ』
勇者『ぐははっ、俺の体力は人並み以上だからな!』
魔法使い(確かに、こいつ鎧の魔物に一人で突っ込んで、ぼっこぼこにされても死ななかったし……)
戦士『勇者、そうは言っても休憩しよう』
僧侶『少し寒くなってきましたし、無理をしてはいけません』
勇者『ええ~っ、ほこらが見えてるわけでもねぇのによー』
魔法使い『なに、それとも、私の胸が気になるって言うの』
勇者『投げ捨てるぞ』
戦士『まあ、体力ないくせに、魔法使いは大きいからな』
勇者『あ、それは俺も思うわ』
僧侶『お二人とも……休む覚悟はよろしいですか?』
切り株。
戦士『まあ、しかし、なんだ。思ってたよりもお前らタフなんだな』
勇者『んあ?』
僧侶『そうでしょうか』
魔法使い『……馬鹿にしてるの?』
戦士『厭味じゃないから、聞いてくれよ』
勇者『ふっ、まあ、何しろ、勇者だからな』
戦士『ほら、俺はともかく、お前ら全員、冒険するのは初めてだろ?』
勇者『おい聞けよ』
魔法使い『そうでもないわ……私は父親の事業が失敗して夜逃げしてから、ずいぶん冒険まがいのことはしたし』
僧侶『なるほど! それで野宿支度の手際がお上手だったのですね!』
魔法使い『無自覚なのよね、それは』
僧侶『え? え?』
戦士『まあ、しかし、なんだ。思ってたよりもお前らタフなんだな』
勇者『んあ?』
僧侶『そうでしょうか』
魔法使い『……馬鹿にしてるの?』
戦士『厭味じゃないから、聞いてくれよ』
勇者『ふっ、まあ、何しろ、勇者だからな』
戦士『ほら、俺はともかく、お前ら全員、冒険するのは初めてだろ?』
勇者『おい聞けよ』
魔法使い『そうでもないわ……私は父親の事業が失敗して夜逃げしてから、ずいぶん冒険まがいのことはしたし』
僧侶『なるほど! それで野宿支度の手際がお上手だったのですね!』
魔法使い『無自覚なのよね、それは』
僧侶『え? え?』
戦士『それにしちゃ、ずいぶん体が弱いな』
魔法使い『この仕事を選んでからは、太陽を見る機会が少なくなったから。手に職をつけるのも大変だったわよ……』
勇者『不健康なやつだな。体も軽いし、ちゃんと食ってんのか』
魔法使い『そりゃあんたと比べれば食べてないけどさ』
僧侶『ダメですよ、勇者さん。各人の食べる分量は、度を越してはならないのです』
魔法使い『……僧侶の食べる分量は相当あるわよね』
僧侶『ええ。最近も少し、成長していまして』
戦士『ヒットマッスルがな』
勇者『上腕筋って言えよ』
僧侶『そうなんですよ~! 神父様に言われたとおり、肉体を鍛えれば神様は答えてくださると言うことですよね!』
戦士『女子力か』
勇者『女子力だな』
魔法使い『私、筋肉の話題で盛り上がるのは女子と違うと思う』
僧侶『筋肉は盛り上がってますよ?』
魔法使い『……』
魔法使い『この仕事を選んでからは、太陽を見る機会が少なくなったから。手に職をつけるのも大変だったわよ……』
勇者『不健康なやつだな。体も軽いし、ちゃんと食ってんのか』
魔法使い『そりゃあんたと比べれば食べてないけどさ』
僧侶『ダメですよ、勇者さん。各人の食べる分量は、度を越してはならないのです』
魔法使い『……僧侶の食べる分量は相当あるわよね』
僧侶『ええ。最近も少し、成長していまして』
戦士『ヒットマッスルがな』
勇者『上腕筋って言えよ』
僧侶『そうなんですよ~! 神父様に言われたとおり、肉体を鍛えれば神様は答えてくださると言うことですよね!』
戦士『女子力か』
勇者『女子力だな』
魔法使い『私、筋肉の話題で盛り上がるのは女子と違うと思う』
僧侶『筋肉は盛り上がってますよ?』
魔法使い『……』
勇者『まあでも、お前も筋トレくらいしろよ』
魔法使い『毎日冒険で移動しているのに、それに加えろと?』
戦士『いいじゃねぇか、お互いの弱いところは助け合うのがパーティーだ』
魔法使い『……それは傷の舐めあいって言わないかしら』
僧侶『魔法使いさん。私達に傷はありません』
勇者『そうだぞ。俺の親父も、一人で冒険して死んじまった口だからな。強がって死ぬより全然マシだ』
戦士『……』
魔法使い『そうね……ごめんなさい』
僧侶『むしろ、魔法使いさんがいなければ、私達、きっと生き残れませんでしたわ』
戦士『まあな。こいつが突っ込んで、遺跡の罠を作動させたりしたときは……』
勇者『ああー、うっせうっせ!』
魔法使い『じゃあ、私も、強がりはやめるわ』
勇者『当たり前だろ、そんなもん!』
魔法使い『とりあえず、町までおぶってもらおうかしら』
勇者『ま、町まで!? 山越えたら降りろよ!』
魔法使い『弱い私を助けるのがリーダーの務めでしょ』
勇者『弱くねぇよ、お前は。強かっつーんだよ、それ』
魔法使い『毎日冒険で移動しているのに、それに加えろと?』
戦士『いいじゃねぇか、お互いの弱いところは助け合うのがパーティーだ』
魔法使い『……それは傷の舐めあいって言わないかしら』
僧侶『魔法使いさん。私達に傷はありません』
勇者『そうだぞ。俺の親父も、一人で冒険して死んじまった口だからな。強がって死ぬより全然マシだ』
戦士『……』
魔法使い『そうね……ごめんなさい』
僧侶『むしろ、魔法使いさんがいなければ、私達、きっと生き残れませんでしたわ』
戦士『まあな。こいつが突っ込んで、遺跡の罠を作動させたりしたときは……』
勇者『ああー、うっせうっせ!』
魔法使い『じゃあ、私も、強がりはやめるわ』
勇者『当たり前だろ、そんなもん!』
魔法使い『とりあえず、町までおぶってもらおうかしら』
勇者『ま、町まで!? 山越えたら降りろよ!』
魔法使い『弱い私を助けるのがリーダーの務めでしょ』
勇者『弱くねぇよ、お前は。強かっつーんだよ、それ』
>>935
かえって余計な筋肉がつきすぎている感じがしますね
長距離選手に筋肉を載せたようなイメージなので、腕がふとすぎる気がします
強いて言うなら13番でしょうか? しかしこれも太すぎる感じがします
かえって余計な筋肉がつきすぎている感じがしますね
長距離選手に筋肉を載せたようなイメージなので、腕がふとすぎる気がします
強いて言うなら13番でしょうか? しかしこれも太すぎる感じがします
ホテルついて脱がせてそんなだったらとりあえず土下座するな。
ごめんなさい!!って。
そこまでいってりゃ服着ててもわかりそうだけど
なにより顔が恐い
ごめんなさい!!って。
そこまでいってりゃ服着ててもわかりそうだけど
なにより顔が恐い
僧侶はきっと健康的肉体美!
魔法使いは可愛いな~
勇者、ちょっと変われ!
安心しろ、ちゃんと宿泊施設につれてくから。なんか見た目まぶしいとこだけど
魔法使いは可愛いな~
勇者、ちょっと変われ!
安心しろ、ちゃんと宿泊施設につれてくから。なんか見た目まぶしいとこだけど
なぜ昨日は真面目に論評していたのか……しかも通常時を想定してるし
どーでもいいですが、スカラ的なモードを書いたくらいの頃から、寝る前の筋トレが日課になってます
どーでもいいですが、スカラ的なモードを書いたくらいの頃から、寝る前の筋トレが日課になってます
―――テント。
魔法使い「……」
魔法使い(夢か……)
魔法使い「……!」
魔法使い「夢!?」ガバッ
僧侶「いきなり動いてはいけません!」
魔法使い「そ、僧侶!? 北国にいるはずじゃ、あ、これも夢……?」
僧侶「違います。殴って確かめましょうか」
魔法使い「あんたに殴られたらまた夢を見そうだわ」
僧侶「そんなことはないと思いますが」
魔法使い「まあ、でも、どうしてここに」
僧侶「北国で私が為すべき事はめどがついたのです。南国の危機を聞きつけて、それで……」
勇者「……ん、お!」
魔法使い「ゆ、勇者」
勇者「目が覚めたのか! ちっきしょー、お前がいないと作戦会議できねーだろっ!」
僧侶「勇者様! お触り厳禁です!」
魔法使い「……」
魔法使い(夢か……)
魔法使い「……!」
魔法使い「夢!?」ガバッ
僧侶「いきなり動いてはいけません!」
魔法使い「そ、僧侶!? 北国にいるはずじゃ、あ、これも夢……?」
僧侶「違います。殴って確かめましょうか」
魔法使い「あんたに殴られたらまた夢を見そうだわ」
僧侶「そんなことはないと思いますが」
魔法使い「まあ、でも、どうしてここに」
僧侶「北国で私が為すべき事はめどがついたのです。南国の危機を聞きつけて、それで……」
勇者「……ん、お!」
魔法使い「ゆ、勇者」
勇者「目が覚めたのか! ちっきしょー、お前がいないと作戦会議できねーだろっ!」
僧侶「勇者様! お触り厳禁です!」
魔法使い「……勇者。どうなったのか、言いなさい」
勇者「あれ見ろ」
勇者がテントの外を指し示す。
その先には、城にぎゅうぎゅう詰めになっている黒色の球体が、今にも弾けんばかりに脈打っていた。
勇者「鳥の魔物があの中の球体を割って、ああなっちまった」
魔法使い「……そう」
勇者「あの状態で一時停止はしているが、どうしようもねー」
勇者「魔法も効かんし、武器もよく分からん」
勇者「大体、あの闇の中に入ってると、息苦しくて力が抜けるしな」
魔法使い「そりゃそうよ。魔王の、闇の力を再現したものなんだから」
僧侶「あれが、闇の力だと?」
魔法使い「魔王城に突入したときとか、魔王と戦ったとき、感じてたでしょ?」
勇者「おーおー! そういや視界も悪くなってたしな」
魔法使い「あれは魔王が薄めて世界中に張り巡らせていたけど、今はあそこに集中しているからとんでもなく濃いわ」
勇者「で、打つ手は?」
魔法使い「……多分、ないわ」
勇者「おいおい」
勇者「あれ見ろ」
勇者がテントの外を指し示す。
その先には、城にぎゅうぎゅう詰めになっている黒色の球体が、今にも弾けんばかりに脈打っていた。
勇者「鳥の魔物があの中の球体を割って、ああなっちまった」
魔法使い「……そう」
勇者「あの状態で一時停止はしているが、どうしようもねー」
勇者「魔法も効かんし、武器もよく分からん」
勇者「大体、あの闇の中に入ってると、息苦しくて力が抜けるしな」
魔法使い「そりゃそうよ。魔王の、闇の力を再現したものなんだから」
僧侶「あれが、闇の力だと?」
魔法使い「魔王城に突入したときとか、魔王と戦ったとき、感じてたでしょ?」
勇者「おーおー! そういや視界も悪くなってたしな」
魔法使い「あれは魔王が薄めて世界中に張り巡らせていたけど、今はあそこに集中しているからとんでもなく濃いわ」
勇者「で、打つ手は?」
魔法使い「……多分、ないわ」
勇者「おいおい」
魔法使い「だって、あの闇の力を振り払うとき、光の玉って使ったでしょ?」
勇者「ああ、使ったな」
僧侶「あの、魔王が魔法を食らうようになったあれですね?」
魔法使い「そう、あれ」
勇者「じゃあ、それを使えばいいじゃん」
魔法使い「魔王を倒すときに使っちゃったのに?」
勇者「……お、おう」ポン
魔法使い「だから、儀式を始めさせる前に止められればよかったんだけど……」
僧侶「……魔法使いさん」
魔法使い「なに?」
僧侶「この際、お聞きしますが、あの禍々しい力を、人間が復活させたというのは本当ですか」
魔法使い「本当よ、南大臣が、魔物と協力して」
僧侶「なんと愚かしいことを。魔物に操られていたとはいえ……」
勇者「いや、あの大臣は、自分でやってたけどな」
魔法使い「うん」
僧侶「なんてことを!」
勇者「ああ、使ったな」
僧侶「あの、魔王が魔法を食らうようになったあれですね?」
魔法使い「そう、あれ」
勇者「じゃあ、それを使えばいいじゃん」
魔法使い「魔王を倒すときに使っちゃったのに?」
勇者「……お、おう」ポン
魔法使い「だから、儀式を始めさせる前に止められればよかったんだけど……」
僧侶「……魔法使いさん」
魔法使い「なに?」
僧侶「この際、お聞きしますが、あの禍々しい力を、人間が復活させたというのは本当ですか」
魔法使い「本当よ、南大臣が、魔物と協力して」
僧侶「なんと愚かしいことを。魔物に操られていたとはいえ……」
勇者「いや、あの大臣は、自分でやってたけどな」
魔法使い「うん」
僧侶「なんてことを!」
魔法使い「なんてことをって言われてもねぇ」
勇者「あいつ、勇者が嫌いみたいだったからな」
僧侶「好き嫌いで世界を滅ぼそうとしたのですかっ!」
魔法使い「良かれと思ってやったんでしょ。多分」
勇者「ああ、そうっぽかったな」
魔法使い「……ま、敵を私達だけに設定したのがまずかったのね」
勇者「どういうことだ?」
魔法使い「人間の魔法や行動は制限されるけど、魔物は活発になるでしょ、あの力って」
魔法使い「だから、鳥の魔物が攻撃していたって聞いて、ああ、案の定って思ったわ」
勇者「魔物は味方だと思ってたから、対策を練ってなかったのか」
魔法使い「そういうことね」
僧侶「何の話か分かりませんが、あれを放置してはおけませんよ!」
魔法使い「いや、打つ手がね……せめて、何か、対抗できる道具があれば……」
勇者「……」
魔法使い「計画書に、何かあったかな……でも……」
勇者「やっぱり、俺が突入すっか」
魔法使い「はぁ?」
勇者「あいつ、勇者が嫌いみたいだったからな」
僧侶「好き嫌いで世界を滅ぼそうとしたのですかっ!」
魔法使い「良かれと思ってやったんでしょ。多分」
勇者「ああ、そうっぽかったな」
魔法使い「……ま、敵を私達だけに設定したのがまずかったのね」
勇者「どういうことだ?」
魔法使い「人間の魔法や行動は制限されるけど、魔物は活発になるでしょ、あの力って」
魔法使い「だから、鳥の魔物が攻撃していたって聞いて、ああ、案の定って思ったわ」
勇者「魔物は味方だと思ってたから、対策を練ってなかったのか」
魔法使い「そういうことね」
僧侶「何の話か分かりませんが、あれを放置してはおけませんよ!」
魔法使い「いや、打つ手がね……せめて、何か、対抗できる道具があれば……」
勇者「……」
魔法使い「計画書に、何かあったかな……でも……」
勇者「やっぱり、俺が突入すっか」
魔法使い「はぁ?」
勇者「ん……あの場では、お前も倒れたしな。撤退は間違ってなかったとは思うが」
勇者「闇の力に対抗するなら、光の力といえば、俺の雷撃呪文が一番だろ?」
僧侶「そ、そうですよね」
魔法使い「あんた一人の魔法で足りるわけないでしょ」
勇者「それはどうか分からん。とにかく、核さえぶち抜けば、どうにかなるんじゃね」
魔法使い「……核を叩く必要はあるわ。でも、下手を打てば、国一つ滅ぶわよ」
勇者「もう城が滅んでるんだから、いいじゃねぇか」
魔法使い「良くない! 万一のことがあれば、世界中に飛び散る可能性もある!」
勇者「放っておいても、いつぶっ壊れるかわからんだろうが」
魔法使い「あ、あんたね……頭を使いなさいよ」
勇者「だから、使った結果だ」
僧侶「ゆ、勇者様……」
魔法使い「何、もしかして、責任を感じちゃってるわけ?」
勇者「あ?」
魔法使い「あのハゲジジイに責められたこととか、気にしてるとか」
勇者「別にあのジジイに言われたからじゃないが……」
勇者「俺も考えてはいたんだ」
魔法使い「何をよ」
勇者「闇の力に対抗するなら、光の力といえば、俺の雷撃呪文が一番だろ?」
僧侶「そ、そうですよね」
魔法使い「あんた一人の魔法で足りるわけないでしょ」
勇者「それはどうか分からん。とにかく、核さえぶち抜けば、どうにかなるんじゃね」
魔法使い「……核を叩く必要はあるわ。でも、下手を打てば、国一つ滅ぶわよ」
勇者「もう城が滅んでるんだから、いいじゃねぇか」
魔法使い「良くない! 万一のことがあれば、世界中に飛び散る可能性もある!」
勇者「放っておいても、いつぶっ壊れるかわからんだろうが」
魔法使い「あ、あんたね……頭を使いなさいよ」
勇者「だから、使った結果だ」
僧侶「ゆ、勇者様……」
魔法使い「何、もしかして、責任を感じちゃってるわけ?」
勇者「あ?」
魔法使い「あのハゲジジイに責められたこととか、気にしてるとか」
勇者「別にあのジジイに言われたからじゃないが……」
勇者「俺も考えてはいたんだ」
魔法使い「何をよ」
勇者「なんつーかさ、俺は、それなりに力のある人間だって自負はあるわけよ」
僧侶「それはもちろん、勇者様ですから」
勇者「うん。でもな、魔法使いが言ってたみたいに、俺って存在だけで、疎ましがられるっつーか」
魔法使い「……」
勇者「なんか、俺が魔王を倒さなければ良かったんだ、みたいなことも言われるし」
勇者「ばっさり切り捨てるより、魔王と共存したほうが良かったんじゃね、みたいにも思ってな」
魔法使い「あのね」
勇者「まあ、聞けや」
勇者「だから、ほれ、連れてきてたけど、虎の魔物。あと竜魔物とかも」
勇者「話してみると変な連中だが、まあまあ面白いやつらだったし……魔王とも、そうできたのかなーって思うとな」
僧侶「ま、魔王は子ども達の親を奪い、村や国を襲ったのですよ」
勇者「まーな! 俺も親父をやられたし、復讐心もあって一生懸命だったし」
勇者「けど、そうじゃない未来もあったのかもしれねーと思うと」
勇者「ちょっと、嫌な気分になる」
僧侶「それはもちろん、勇者様ですから」
勇者「うん。でもな、魔法使いが言ってたみたいに、俺って存在だけで、疎ましがられるっつーか」
魔法使い「……」
勇者「なんか、俺が魔王を倒さなければ良かったんだ、みたいなことも言われるし」
勇者「ばっさり切り捨てるより、魔王と共存したほうが良かったんじゃね、みたいにも思ってな」
魔法使い「あのね」
勇者「まあ、聞けや」
勇者「だから、ほれ、連れてきてたけど、虎の魔物。あと竜魔物とかも」
勇者「話してみると変な連中だが、まあまあ面白いやつらだったし……魔王とも、そうできたのかなーって思うとな」
僧侶「ま、魔王は子ども達の親を奪い、村や国を襲ったのですよ」
勇者「まーな! 俺も親父をやられたし、復讐心もあって一生懸命だったし」
勇者「けど、そうじゃない未来もあったのかもしれねーと思うと」
勇者「ちょっと、嫌な気分になる」
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