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元スレ勇者「世界救ったら仕事がねぇ……」
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貴族「そういえば……ゆ、勇者殿は、魔物と手を結ばれたのですか」
勇者「ああ、その話? 魔王がいないなら、戦う理由もないって相手が言うからさ」
貴族「し、しかし、あの虎はこちらに戦いを挑んできましたぞ!」
勇者「それもそうだ。なんで、あの虎は戦いを挑んできたんだろうな?」
貴族「それは……魔物は人を襲う性質だからでしょう」
勇者「それなら、俺が魔物と不可侵条約を結べたわけがないだろ」
商人「なんすか、それ」
勇者「あー、お互いに手を出し合うのはやめようって約束だ」
商人「へぇ。魔物にも知恵が回るやつがいるんすね」
勇者「知恵が回る、ねぇ?」
貴族「……大体、魔物は生来凶暴な性質を持つとよく知られています」
勇者「そうでもないんじゃねぇか」
勇者「ああ、その話? 魔王がいないなら、戦う理由もないって相手が言うからさ」
貴族「し、しかし、あの虎はこちらに戦いを挑んできましたぞ!」
勇者「それもそうだ。なんで、あの虎は戦いを挑んできたんだろうな?」
貴族「それは……魔物は人を襲う性質だからでしょう」
勇者「それなら、俺が魔物と不可侵条約を結べたわけがないだろ」
商人「なんすか、それ」
勇者「あー、お互いに手を出し合うのはやめようって約束だ」
商人「へぇ。魔物にも知恵が回るやつがいるんすね」
勇者「知恵が回る、ねぇ?」
貴族「……大体、魔物は生来凶暴な性質を持つとよく知られています」
勇者「そうでもないんじゃねぇか」
勇者「そのー、俺が会ったのは竜の魔物だったな」
商人「はあ」
勇者「そいつが言うことには、魔物は人を一人襲うごとに、給料が入ると」
商人「歩合制っすか」
勇者「うん、確かにそう言ってた。だから人を襲っていたと」
商人「……仕事だから人を襲うってのも、嫌な話っすね」
貴族「そんなばかな話があるか!」
勇者「だって、魔物自身が言ってたんだもの」
商人「他に何か言ってました?」
勇者「後は、そうだな、魔界に戻れなかったら、いくらここで成績を上げてもなーとか、顔より年収とか言ってたぜ」
商人「ダメな勤め人かよ……」
商人「はあ」
勇者「そいつが言うことには、魔物は人を一人襲うごとに、給料が入ると」
商人「歩合制っすか」
勇者「うん、確かにそう言ってた。だから人を襲っていたと」
商人「……仕事だから人を襲うってのも、嫌な話っすね」
貴族「そんなばかな話があるか!」
勇者「だって、魔物自身が言ってたんだもの」
商人「他に何か言ってました?」
勇者「後は、そうだな、魔界に戻れなかったら、いくらここで成績を上げてもなーとか、顔より年収とか言ってたぜ」
商人「ダメな勤め人かよ……」
貴族「ならば、あの虎の魔物はなんだというのです」
商人「虎の魔物ってのは?」
勇者「なんか北の軍から逃げる途中で、僧侶さんを襲っててよ。そこそこ強かったぜ。ま、俺が追い払ったんだけど」
貴族「つまり、襲ってきたわけでしょう!」
勇者「あいつ、なんか言ってたっけ?」
貴族「……確か、勇者殿の仲間を探していました」
勇者「ふーん」
商人「それって、あれっすね。なんか、北国を手助けしているみたいな」
貴族「……もしや」
勇者「なるほど」
商人「え、え?」
商人「虎の魔物ってのは?」
勇者「なんか北の軍から逃げる途中で、僧侶さんを襲っててよ。そこそこ強かったぜ。ま、俺が追い払ったんだけど」
貴族「つまり、襲ってきたわけでしょう!」
勇者「あいつ、なんか言ってたっけ?」
貴族「……確か、勇者殿の仲間を探していました」
勇者「ふーん」
商人「それって、あれっすね。なんか、北国を手助けしているみたいな」
貴族「……もしや」
勇者「なるほど」
商人「え、え?」
勇者「つまり、北国は魔物を雇ったわけだな」
貴族「ど、どうしてそうなるのです! 魔物に支配されていると考えるのが筋でしょう!」
商人「……いや、どっちでもよくないっすか?」
勇者「そうだな。どちらにしても、魔物と北国が何かつながってることはありうるわけだ」
商人「仕事でやってるってことっすか」
貴族「くそっ! 王軍に魔物も加わっては、もう勝ち目がないぞ!」
僧侶「……勇者様、貴族様」
勇者「おお、僧侶さん。何か分かった?」
僧侶「ええ。まず、魔法使いさんの方ですが……」
勇者「なんて書いてあった?」
僧侶「それがですね……」
貴族「ど、どうしてそうなるのです! 魔物に支配されていると考えるのが筋でしょう!」
商人「……いや、どっちでもよくないっすか?」
勇者「そうだな。どちらにしても、魔物と北国が何かつながってることはありうるわけだ」
商人「仕事でやってるってことっすか」
貴族「くそっ! 王軍に魔物も加わっては、もう勝ち目がないぞ!」
僧侶「……勇者様、貴族様」
勇者「おお、僧侶さん。何か分かった?」
僧侶「ええ。まず、魔法使いさんの方ですが……」
勇者「なんて書いてあった?」
僧侶「それがですね……」
魔法使い『僧侶へ。おそらく、このままではあんたたちは負ける』
魔法使い『孤児院の襲撃を大々的に報道してもらって、北国を不利に追いやるはずだったのに、効いていない』
魔法使い『それどころか東国まで介入してきた。あそこには教会があり、そこから孤児院に支援も出ていたはず』
魔法使い『それを振り切ったということは、相当な力関係が働いているということ』
魔法使い『私の推測だけど、これは北国の方で何か裏があるとしか思えない』
魔法使い『私はこれから、魔物の残党の線で当たるけれど、新聞などの情報発信の部分が握られている可能性がある』
魔法使い『マイナスイメージが流されては、下手を打てば日に日に悪くなるばかり』
魔法使い『だから、この際、北国の国王を暗殺するくらいしかない』
魔法使い『あなたは嫌でしょうけど、正々堂々はもう無理に近い』
魔法使い『一応、使えそうな人間に当たってみるけど、考えておくこと』
魔法使い『孤児院の襲撃を大々的に報道してもらって、北国を不利に追いやるはずだったのに、効いていない』
魔法使い『それどころか東国まで介入してきた。あそこには教会があり、そこから孤児院に支援も出ていたはず』
魔法使い『それを振り切ったということは、相当な力関係が働いているということ』
魔法使い『私の推測だけど、これは北国の方で何か裏があるとしか思えない』
魔法使い『私はこれから、魔物の残党の線で当たるけれど、新聞などの情報発信の部分が握られている可能性がある』
魔法使い『マイナスイメージが流されては、下手を打てば日に日に悪くなるばかり』
魔法使い『だから、この際、北国の国王を暗殺するくらいしかない』
魔法使い『あなたは嫌でしょうけど、正々堂々はもう無理に近い』
魔法使い『一応、使えそうな人間に当たってみるけど、考えておくこと』
一同『……』
勇者「要するに、正面からじゃなくて、暗殺しろってことだよな」
商人「ドン引きだよ!」
貴族「承服しかねる!」
僧侶「でも、確かに私たちは追い詰められています」
勇者「ま、まあな~、いくら俺でも、東国も含めれば数千人の兵隊だしな~」
貴族「完全にテロを推奨しているではないか!」
勇者「まあまあ。でも、俺らが魔王城を攻めたやり口も、言っちまえばテロだったしな」
僧侶「神の裁きですよ!」
商人「そ、そうっすか」
勇者「で、で、女商人からも、来てるんだろ?」
僧侶「はい。こちらが、女商人さんからの、手紙です」
勇者「要するに、正面からじゃなくて、暗殺しろってことだよな」
商人「ドン引きだよ!」
貴族「承服しかねる!」
僧侶「でも、確かに私たちは追い詰められています」
勇者「ま、まあな~、いくら俺でも、東国も含めれば数千人の兵隊だしな~」
貴族「完全にテロを推奨しているではないか!」
勇者「まあまあ。でも、俺らが魔王城を攻めたやり口も、言っちまえばテロだったしな」
僧侶「神の裁きですよ!」
商人「そ、そうっすか」
勇者「で、で、女商人からも、来てるんだろ?」
僧侶「はい。こちらが、女商人さんからの、手紙です」
女商人『手短に。南国も動き出しました。勇者一行を相手に、このような動きは異常です』
女商人『おそらく、魔王を倒した数ヶ月の間に、勇者を排除する動きが作られたのでは』
女商人『戦後処理のための三国会談の参加者は、北国の国王、東国の王子、南国の大臣』
女商人『現在、積極的に動いている連中と一致します』
女商人『それでも勇者を排除することを可能にするためには、武力が必要』
女商人『つまり、それが魔物ではないかと思います』
貴族「魔王を倒した勇者殿を、魔物の力で追い払うなどと……!」
勇者「やっぱりな」
商人「やっぱりって、あんた」
勇者「でも、これってさ、魔物と手を組んだから、遠慮なく滅ぼしてくれってことじゃね?」
僧侶「そうなりますね」
貴族「そ、僧侶さん?」
女商人『おそらく、魔王を倒した数ヶ月の間に、勇者を排除する動きが作られたのでは』
女商人『戦後処理のための三国会談の参加者は、北国の国王、東国の王子、南国の大臣』
女商人『現在、積極的に動いている連中と一致します』
女商人『それでも勇者を排除することを可能にするためには、武力が必要』
女商人『つまり、それが魔物ではないかと思います』
貴族「魔王を倒した勇者殿を、魔物の力で追い払うなどと……!」
勇者「やっぱりな」
商人「やっぱりって、あんた」
勇者「でも、これってさ、魔物と手を組んだから、遠慮なく滅ぼしてくれってことじゃね?」
僧侶「そうなりますね」
貴族「そ、僧侶さん?」
女商人『北国のお城へ行く、裏のルートを記します。これは敵方にもあまり知られていないでしょう』
女商人『私も、魔法使いと同じように、北の城を直接攻撃することをオススメします』
商人「あー、この人もテロ推奨だよ」
貴族「ど、どいつもこいつも……!」
勇者「まあ待てよ、貴族」
商人「何か秘策でもあるんすか?」
勇者「元からお城に近づくつもりだったんだろ、それは間違ってないじゃねーか」
貴族「それは、確かに……」
勇者「その後、どうするつもりだったんだ?」
貴族「そ、それは、国王に不正義を認めさせ、退位していただくと」
商人「ふわっとしてんなー」
貴族「黙れ! では、他にどんな策があるというのだ」
女商人『私も、魔法使いと同じように、北の城を直接攻撃することをオススメします』
商人「あー、この人もテロ推奨だよ」
貴族「ど、どいつもこいつも……!」
勇者「まあ待てよ、貴族」
商人「何か秘策でもあるんすか?」
勇者「元からお城に近づくつもりだったんだろ、それは間違ってないじゃねーか」
貴族「それは、確かに……」
勇者「その後、どうするつもりだったんだ?」
貴族「そ、それは、国王に不正義を認めさせ、退位していただくと」
商人「ふわっとしてんなー」
貴族「黙れ! では、他にどんな策があるというのだ」
勇者「……」
僧侶「魔法使いさんなら、なんて考えるでしょうか……」
勇者「……これはチャンスだって言うだろうな」
貴族「ど、どこがチャンスだと言うのだ」
勇者「要するに、頭を使えってことだよ。北国と魔物は手を組んでいる」
僧侶「そうですわね」
勇者「だったら、お城に行く裏ルートで全速力で近づけば、どこかで魔物に出くわすわけだ」
僧侶「はい」
勇者「じゃあ、魔物に会ったらそいつを倒して……」
勇者「その魔物と北国がつながっていたことを大宣伝する、ってのはどうだ」
貴族「!」
商人「なるほど、自分が魔物と組んでたなら、正当性もないっすからね」
貴族「し、しかし、国王が認めるかどうか……」
勇者「それこそ、そのくらい認めさせなければ、退位なんか無理だろ?」
貴族「……」
僧侶「魔法使いさんなら、なんて考えるでしょうか……」
勇者「……これはチャンスだって言うだろうな」
貴族「ど、どこがチャンスだと言うのだ」
勇者「要するに、頭を使えってことだよ。北国と魔物は手を組んでいる」
僧侶「そうですわね」
勇者「だったら、お城に行く裏ルートで全速力で近づけば、どこかで魔物に出くわすわけだ」
僧侶「はい」
勇者「じゃあ、魔物に会ったらそいつを倒して……」
勇者「その魔物と北国がつながっていたことを大宣伝する、ってのはどうだ」
貴族「!」
商人「なるほど、自分が魔物と組んでたなら、正当性もないっすからね」
貴族「し、しかし、国王が認めるかどうか……」
勇者「それこそ、そのくらい認めさせなければ、退位なんか無理だろ?」
貴族「……」
商人「でも、倒すっていうけど、もし魔物に会えなかったらどうするんすか」
勇者「そんときゃ、王殺しでも何でもやればいいさ」
商人「バイオレンスだなぁ」
貴族「……」
僧侶「貴族様、ご決断ください」
貴族「む、うむ」
勇者「国を変えるのに、英雄はいらんって言ったよな、お前」
貴族「そうだ……」
勇者「英雄として言わせてもらうが、英雄なんか利用すればいいんだよ」
貴族「……」
勇者「どうせ、その後の『長い政治の戦い』をやるのはお前だ」
貴族「……分かった」
勇者「そんときゃ、王殺しでも何でもやればいいさ」
商人「バイオレンスだなぁ」
貴族「……」
僧侶「貴族様、ご決断ください」
貴族「む、うむ」
勇者「国を変えるのに、英雄はいらんって言ったよな、お前」
貴族「そうだ……」
勇者「英雄として言わせてもらうが、英雄なんか利用すればいいんだよ」
貴族「……」
勇者「どうせ、その後の『長い政治の戦い』をやるのはお前だ」
貴族「……分かった」
商人「よっしゃ! そうと決まれば、後は武器を売って、俺は帰りますよ」
勇者「は? 帰る?」
商人「な、なんで不思議そうに聞くんだよ」
勇者「いや、ここから無事に帰れるわけがないだろ」
貴族「その通りだ。アジトの場所は知られているんだぞ?」
勇者「出て行ったら、途中でとっ捕まるな」
商人「で、でも、俺はなんか分かったら、情報を持ってこいって女商人に言われてるんすよ」
勇者「完全に使いっ走りじゃねぇか……」
商人「か、帰るまでが修行の一環ってなわけでさ」
僧侶「……商人様、今は一人でも力がほしいのです」
僧侶「ぜひとも、力をお貸しいただけないでしょうか」
商人「そ、それは……」
勇者「まあ、どの道このクーデターが成功しなけりゃ、殺されるんだ」
貴族「あきらめるがよい」
商人「うおおお!? いつの間に道を誤ったー!」
勇者(どう考えても最初から女商人の生贄ルートだったろ……)
勇者「は? 帰る?」
商人「な、なんで不思議そうに聞くんだよ」
勇者「いや、ここから無事に帰れるわけがないだろ」
貴族「その通りだ。アジトの場所は知られているんだぞ?」
勇者「出て行ったら、途中でとっ捕まるな」
商人「で、でも、俺はなんか分かったら、情報を持ってこいって女商人に言われてるんすよ」
勇者「完全に使いっ走りじゃねぇか……」
商人「か、帰るまでが修行の一環ってなわけでさ」
僧侶「……商人様、今は一人でも力がほしいのです」
僧侶「ぜひとも、力をお貸しいただけないでしょうか」
商人「そ、それは……」
勇者「まあ、どの道このクーデターが成功しなけりゃ、殺されるんだ」
貴族「あきらめるがよい」
商人「うおおお!? いつの間に道を誤ったー!」
勇者(どう考えても最初から女商人の生贄ルートだったろ……)
―――海上。
男子1「海だー!」
女子1「うーみ、うーみっ」
男子2「うええっっぷ」
女子2「大丈夫?」
少女「水着、持ってくれば良かったかな」
武闘家「やれやれ、そんな暇はありませんよ」
弟子C「……大丈夫だ。順調に、進んでいる」
弟子D「船を操るのは初めてだが、まあ、なんとかなるんでは?」
スラ「ぴきーっ!」 ぴょいん
少女「うんうん、スラちゃんもいるしね」
武闘家「はあ……まったく、あの人が頼む仕事は面倒ばかりなんだから」
男子1「海だー!」
女子1「うーみ、うーみっ」
男子2「うええっっぷ」
女子2「大丈夫?」
少女「水着、持ってくれば良かったかな」
武闘家「やれやれ、そんな暇はありませんよ」
弟子C「……大丈夫だ。順調に、進んでいる」
弟子D「船を操るのは初めてだが、まあ、なんとかなるんでは?」
スラ「ぴきーっ!」 ぴょいん
少女「うんうん、スラちゃんもいるしね」
武闘家「はあ……まったく、あの人が頼む仕事は面倒ばかりなんだから」
少女「あの人って、あのおばさんのこと?」
武闘家「お、おばさん? いやほら、魔法使いさんですよ」
少女「ふーん、私、あのおばさん、嫌い」
武闘家「ま、まあまあ。魔法使いさんは僕より年下ですし」
少女「じゃあ、あんたはおじさん?」
武闘家「あ、あのですね……」
弟子C「……生意気盛りの年頃だ」
弟子D「容赦なく大人をけなすのは子どもの特権みたいなもんでしょ」
少女「むー、生意気とかじゃないもん!」
スラ「ぴっぴーっ」
武闘家「あははは……」
武闘家「お、おばさん? いやほら、魔法使いさんですよ」
少女「ふーん、私、あのおばさん、嫌い」
武闘家「ま、まあまあ。魔法使いさんは僕より年下ですし」
少女「じゃあ、あんたはおじさん?」
武闘家「あ、あのですね……」
弟子C「……生意気盛りの年頃だ」
弟子D「容赦なく大人をけなすのは子どもの特権みたいなもんでしょ」
少女「むー、生意気とかじゃないもん!」
スラ「ぴっぴーっ」
武闘家「あははは……」
弟子C「……おい、武闘家」
弟子D「ちょっと気になるんですがね」
武闘家「な、なんでしょうか」
弟子C「……この辺は、船の行き来はあるのか」
弟子D「要するに、航路になってるかどうかってことっす」
武闘家「いえ、西の方角は魔王の居城があった方角ですから、まだまだ開拓されてないはずです」
弟子C「……なるほど」
弟子D「そりゃまずいっすね」
武闘家「な、なんですか?」
弟子C「……右方、船影が」
弟子D「しかもこっちに向かってきてるし」
武闘家「う、うわわ」
弟子D「ちょっと気になるんですがね」
武闘家「な、なんでしょうか」
弟子C「……この辺は、船の行き来はあるのか」
弟子D「要するに、航路になってるかどうかってことっす」
武闘家「いえ、西の方角は魔王の居城があった方角ですから、まだまだ開拓されてないはずです」
弟子C「……なるほど」
弟子D「そりゃまずいっすね」
武闘家「な、なんですか?」
弟子C「……右方、船影が」
弟子D「しかもこっちに向かってきてるし」
武闘家「う、うわわ」
武闘家「と、とにかくまずは子どもたちに伝えないと……!」
少女「敵なの?」
武闘家「う、うわあ! お嬢さん、びっくりさせないでくださいよ」
少女「敵なのね?」
武闘家「まあ、おそらく。安全のため、隠れてもらわないと」
少女「分かったわ、みんなに伝えてくる」
スラ「ピキーッ!」
武闘家「つ、伝えてくるって」
少女「みんなー! 全員隠れて行動する準備よ!」
子どもたち『おおーっ!』
武闘家「良かった、ちゃんと隠れてくれる気らしい……」
少女「後の事は、私とおっさんどもに任せなさい!」
子どもたち『了解しました!』
武闘家「!?」
少女「敵なの?」
武闘家「う、うわあ! お嬢さん、びっくりさせないでくださいよ」
少女「敵なのね?」
武闘家「まあ、おそらく。安全のため、隠れてもらわないと」
少女「分かったわ、みんなに伝えてくる」
スラ「ピキーッ!」
武闘家「つ、伝えてくるって」
少女「みんなー! 全員隠れて行動する準備よ!」
子どもたち『おおーっ!』
武闘家「良かった、ちゃんと隠れてくれる気らしい……」
少女「後の事は、私とおっさんどもに任せなさい!」
子どもたち『了解しました!』
武闘家「!?」
武闘家「お、お嬢さん? 一緒に隠れてもらわないと」
少女「大丈夫よ! 私にはスラちゃんもいるし」
スラ「ぴーっ、ぴーっ」
武闘家「いやいやいや! それとこれとは別ですよ!」
少女「私ががんばるんだもん! 私がリーダーだし!」
武闘家「あ、あのね」
弟子C「……来るぞ」
弟子D「右舷に骸骨だ、やはり魔物の船だな!」
武闘家「ええいっ」ダッ
武闘家は、船の縁に駆け寄って、先にかかった白骨の手を叩き落した。
武闘家「もう、魔物は滅びたんじゃないんですかっ」
少女「大丈夫よ! 私にはスラちゃんもいるし」
スラ「ぴーっ、ぴーっ」
武闘家「いやいやいや! それとこれとは別ですよ!」
少女「私ががんばるんだもん! 私がリーダーだし!」
武闘家「あ、あのね」
弟子C「……来るぞ」
弟子D「右舷に骸骨だ、やはり魔物の船だな!」
武闘家「ええいっ」ダッ
武闘家は、船の縁に駆け寄って、先にかかった白骨の手を叩き落した。
武闘家「もう、魔物は滅びたんじゃないんですかっ」
弟子C「……俺が舵を取る」
弟子D「後方を守る! そっちは頼んだぜ」ダッ
武闘家「分かりました!」
武闘家は息を吐いた。
これでも元は冒険者の端くれだ。
幸いにして、魔物は弱い。
船上ながら、顎を突き出してきた骸骨に蹴りを放てば、会心の当たりだった。
だが、近づいてくる船影をにらむと、その甲板には、出番を待つ青白い光が満載されていた。
後に控えた骨の海賊たちもいる。
武闘家「ひ、人魂も!? 私の拳で、通じるのかな」
どぉおおんっ!
叫んだ途端、何かがぶつかる音と、激しい衝撃。
思わず武闘家はバランスを崩した。
弟子C「……砲撃だ!」
弟子D「だ、大丈夫かあーっ」
武闘家「くそっ」
弟子D「後方を守る! そっちは頼んだぜ」ダッ
武闘家「分かりました!」
武闘家は息を吐いた。
これでも元は冒険者の端くれだ。
幸いにして、魔物は弱い。
船上ながら、顎を突き出してきた骸骨に蹴りを放てば、会心の当たりだった。
だが、近づいてくる船影をにらむと、その甲板には、出番を待つ青白い光が満載されていた。
後に控えた骨の海賊たちもいる。
武闘家「ひ、人魂も!? 私の拳で、通じるのかな」
どぉおおんっ!
叫んだ途端、何かがぶつかる音と、激しい衝撃。
思わず武闘家はバランスを崩した。
弟子C「……砲撃だ!」
弟子D「だ、大丈夫かあーっ」
武闘家「くそっ」
武闘家が悪態をつく。
嫌な記憶がよぎる、仲間を失ったときの。
揺れる船の船室から、子どもたちが叫ぶ声がする。
武闘家は、船にしがみつきながら、なんとか立ち上がろうとした。
その瞬間、武闘家の横に、影が追いついた。
少女「スラちゃん!」
スラ「ぴいっ!」
武闘家「お、お嬢さん……!」
少女「あいつらを追っ払って!」
脇に抱えたスライムが、大きく息を吸い込む。
ぼうっという音がする。
その透き通った身体に火がともったように見えたのは、見間違いではなかった。
―――激しい炎がスライムから吐き出された!
嫌な記憶がよぎる、仲間を失ったときの。
揺れる船の船室から、子どもたちが叫ぶ声がする。
武闘家は、船にしがみつきながら、なんとか立ち上がろうとした。
その瞬間、武闘家の横に、影が追いついた。
少女「スラちゃん!」
スラ「ぴいっ!」
武闘家「お、お嬢さん……!」
少女「あいつらを追っ払って!」
脇に抱えたスライムが、大きく息を吸い込む。
ぼうっという音がする。
その透き通った身体に火がともったように見えたのは、見間違いではなかった。
―――激しい炎がスライムから吐き出された!
熱で、武闘家は思わず顔を背けた。
こちらの船に乗り出していた白骨は、炎をもろに食らって海に投げ出された。
近づいてきた船に、炎が移る。
待機していた人魂が、炎の勢いを食らって吹き飛ぶ。
骸骨たちは大慌てで、焼ける船の帆から、火の粉を払い出した。
弟子C「……チャンスだ!」
弟子D「全力で振り切れ、舵を切れ! みんな船につかまれーっ!」
武闘家「お嬢さん!」
少女「ひゃああ!」
スラ「ぴ、ぴーっ!?」
武闘家は、身を乗り出していた少女を引きずり倒した。
激しい揺れとともに、左方へと大きく船が曲がる。
勢いのついた船が、そのまま波に乗って、魔物の船を引き離していく。
こちらの船に乗り出していた白骨は、炎をもろに食らって海に投げ出された。
近づいてきた船に、炎が移る。
待機していた人魂が、炎の勢いを食らって吹き飛ぶ。
骸骨たちは大慌てで、焼ける船の帆から、火の粉を払い出した。
弟子C「……チャンスだ!」
弟子D「全力で振り切れ、舵を切れ! みんな船につかまれーっ!」
武闘家「お嬢さん!」
少女「ひゃああ!」
スラ「ぴ、ぴーっ!?」
武闘家は、身を乗り出していた少女を引きずり倒した。
激しい揺れとともに、左方へと大きく船が曲がる。
勢いのついた船が、そのまま波に乗って、魔物の船を引き離していく。
武闘家「はあっ、はあっ」
弟子C「……よし!」
弟子D「なんとか、なったかぁー?」
弟子C「……追っ手は離れてきている」
弟子D「ふう、はあ、助かったか……」
少女「……へへへ」
スラ「ぴぃ、ぴきーっ」
武闘家「……」
少女「私とスラちゃんのおかげだよね、これは」
スラ「ぴいっ!」
武闘家「お嬢さん」
少女「なに?」
ぱちん。
弟子C「……よし!」
弟子D「なんとか、なったかぁー?」
弟子C「……追っ手は離れてきている」
弟子D「ふう、はあ、助かったか……」
少女「……へへへ」
スラ「ぴぃ、ぴきーっ」
武闘家「……」
少女「私とスラちゃんのおかげだよね、これは」
スラ「ぴいっ!」
武闘家「お嬢さん」
少女「なに?」
ぱちん。
少女「え、え……」
武闘家「どうして前に出てきたんですか」
少女「だって、私」
武闘家「あなたはね、船室で隠れてる子たちのまとめ役でしょう」
少女「で、でも」
武闘家「あなたが死んだら、あの子たちをどうするつもりだったんですか!?」
少女「だって、私、役に立たなくちゃって……」
スラ「ぴいっ、ぴいーっ!」
武闘家「……船が大きく揺れて、ケガした子がいるかもしれません」
少女「!」
武闘家「早く、見に行ってあげなさい」
少女「はい……」
武闘家「どうして前に出てきたんですか」
少女「だって、私」
武闘家「あなたはね、船室で隠れてる子たちのまとめ役でしょう」
少女「で、でも」
武闘家「あなたが死んだら、あの子たちをどうするつもりだったんですか!?」
少女「だって、私、役に立たなくちゃって……」
スラ「ぴいっ、ぴいーっ!」
武闘家「……船が大きく揺れて、ケガした子がいるかもしれません」
少女「!」
武闘家「早く、見に行ってあげなさい」
少女「はい……」
少女「あ、あの」
武闘家「……」
少女「ごめん、なさい」
武闘家「……最初に、みんなを隠したのは、正しい判断です。それに、あの炎を指示したことも間違ってませんでした」
少女「……」
武闘家「でも、ああいうことができるなら、ちゃんと教えてください」
少女「……分かりました」タタッ
スラ「ぴきーっ!」
武闘家「はいはい、君は殊勲賞でしたよ」
弟子C「……キツすぎんか」
弟子D「かわいそうになー」
武闘家「知ってますよ」
武闘家「……」
少女「ごめん、なさい」
武闘家「……最初に、みんなを隠したのは、正しい判断です。それに、あの炎を指示したことも間違ってませんでした」
少女「……」
武闘家「でも、ああいうことができるなら、ちゃんと教えてください」
少女「……分かりました」タタッ
スラ「ぴきーっ!」
武闘家「はいはい、君は殊勲賞でしたよ」
弟子C「……キツすぎんか」
弟子D「かわいそうになー」
武闘家「知ってますよ」
知ってても言わずにはいられなかった。
手柄がたてたくて、前のめりに飛び込んで、仲間を死に追いやった自分に重なって見えたからだ。
勇者『誰かの役に立ちたかった? 認められたかった、の間違いだろ。お前は』
頭の中に、はっきりと勇者の顔が思い浮かぶ。
後にも先にも、勇者の軽蔑した顔を見れたのは自分くらいだろう、と武闘家は思った。
武闘家「でも、勇者さんじゃないんだから、あんなに前に出過ぎなくていいんです。僕らは」
弟子C「……それは納得」
弟子D「ま、確かにな」
武闘家「それはそれとして、やっぱりすごかったですよねぇ。あの度胸は」
弟子C「……ただの女の子にしておくには勿体ない」
弟子D「立派な魔物使いになれそうだよな」
武闘家「あ、村が見えてますよ!」
弟子C「……よし、近づくぞ」
弟子D「おう、準備するぞ!」
手柄がたてたくて、前のめりに飛び込んで、仲間を死に追いやった自分に重なって見えたからだ。
勇者『誰かの役に立ちたかった? 認められたかった、の間違いだろ。お前は』
頭の中に、はっきりと勇者の顔が思い浮かぶ。
後にも先にも、勇者の軽蔑した顔を見れたのは自分くらいだろう、と武闘家は思った。
武闘家「でも、勇者さんじゃないんだから、あんなに前に出過ぎなくていいんです。僕らは」
弟子C「……それは納得」
弟子D「ま、確かにな」
武闘家「それはそれとして、やっぱりすごかったですよねぇ。あの度胸は」
弟子C「……ただの女の子にしておくには勿体ない」
弟子D「立派な魔物使いになれそうだよな」
武闘家「あ、村が見えてますよ!」
弟子C「……よし、近づくぞ」
弟子D「おう、準備するぞ!」
おまけ。本日更新不可。
勇者人物評。
魔法使い「あいつ見てると何か思い出すのよね。バーサーカーとか首狩り族とか」
戦士「……まあ。いいやつ、じゃないか?」
僧侶「悪知恵、悪巧みさえなければ理想の御方なのですけど」
女商人「私は嫌いですけど、良い人なんじゃないですか? 私は嫌いですけど」
少女「かっこいいよ? 少しは…」
竜魔物「底の見えない人間だ」
側近「割りと魔王様に似てるわよねー」
遊び人「むかーし、一緒に飲んだんです。懐かしいなあ」
武闘家「 僕に似てませんか?」
盗賊「話の通じないやつよね。仲間がいなかったらどうなってたか」
姫「かっこいいです……」
勇者「全世界のあこがれだよな!」
勇者人物評。
魔法使い「あいつ見てると何か思い出すのよね。バーサーカーとか首狩り族とか」
戦士「……まあ。いいやつ、じゃないか?」
僧侶「悪知恵、悪巧みさえなければ理想の御方なのですけど」
女商人「私は嫌いですけど、良い人なんじゃないですか? 私は嫌いですけど」
少女「かっこいいよ? 少しは…」
竜魔物「底の見えない人間だ」
側近「割りと魔王様に似てるわよねー」
遊び人「むかーし、一緒に飲んだんです。懐かしいなあ」
武闘家「 僕に似てませんか?」
盗賊「話の通じないやつよね。仲間がいなかったらどうなってたか」
姫「かっこいいです……」
勇者「全世界のあこがれだよな!」
仮設「勇者の村」。
竜魔物「……誰か来たぞ」
盗賊「ホントね。馬車が一台、こっちに向かってくるわ」
遊び人「敵でしょうか?」
魔法使い「あれは女商人の馬車ね」
盗賊「女商人ねぇ」
魔法使い「含みがあるわね」
盗賊「私、ああいう頭が固そうな子って苦手なの」
遊び人「あはは、盗賊さんも固そうですからね」
盗賊「あんた、ところどころで私にきつくない?」
マスター「……到着しましたよ~」
勇者母「あらまあ、ずいぶん早く着いちゃったわ」
魔法使い「酒場のマスター、それに勇者のお母さんも! よく来てくれました」
マスター「ええ。結局、来ることにしたわ」
竜魔物「……誰か来たぞ」
盗賊「ホントね。馬車が一台、こっちに向かってくるわ」
遊び人「敵でしょうか?」
魔法使い「あれは女商人の馬車ね」
盗賊「女商人ねぇ」
魔法使い「含みがあるわね」
盗賊「私、ああいう頭が固そうな子って苦手なの」
遊び人「あはは、盗賊さんも固そうですからね」
盗賊「あんた、ところどころで私にきつくない?」
マスター「……到着しましたよ~」
勇者母「あらまあ、ずいぶん早く着いちゃったわ」
魔法使い「酒場のマスター、それに勇者のお母さんも! よく来てくれました」
マスター「ええ。結局、来ることにしたわ」
魔法使い「でも、女商人が見当たらないですね」
マスター「え、ええ。彼女、南国に残って情報収集を続ける、と」
魔法使い「情報収集ね……」
マスター「はい、代わりにお手紙」
魔法使い「ありがとうございます」
盗賊「……マスター、お久しぶり」
マスター「やだ、盗賊ちゃんじゃない!」
盗賊「ちゃんづけやめて!」
遊び人「お久しぶりです、マスター」
マスター「やだぁ、いかがわしい遊び人君じゃない!」
遊び人「それ、そのまくら言葉、いい加減はずしてくれませんか?」
マスター「でも……相変わらずやってるんでしょ?」
遊び人は、ぐっと親指を立てた。
マスター「え、ええ。彼女、南国に残って情報収集を続ける、と」
魔法使い「情報収集ね……」
マスター「はい、代わりにお手紙」
魔法使い「ありがとうございます」
盗賊「……マスター、お久しぶり」
マスター「やだ、盗賊ちゃんじゃない!」
盗賊「ちゃんづけやめて!」
遊び人「お久しぶりです、マスター」
マスター「やだぁ、いかがわしい遊び人君じゃない!」
遊び人「それ、そのまくら言葉、いい加減はずしてくれませんか?」
マスター「でも……相変わらずやってるんでしょ?」
遊び人は、ぐっと親指を立てた。
マスター「それで、魔法使いさん」
魔法使い「なんですか? できれば手紙を読んでおきたいんですが」
マスター「まあ、その前に。ここで酒場を作ってもいいって話を聞いてたんだけど」
魔法使い「ええ。『勇者の町』になる予定ですから」
マスター「それはいいのだけれど、ほっとんど何もないわよね、ここ」
魔法使い「……」
マスター「ただの野っ原よね、ここ」
魔法使い「こんな広い土地を無料で使い放題なんてすごいと思いませんか?」
マスター「誰が酒場を建ててくれるのよぅ!」
魔法使い「男勢がちょっと足りないんですよねー」
マスター「もう、女商人さんに言いくるめられちゃったわ」
魔法使い「あと、孤児院の子どもたちが十数名来て、一生懸命働くと」
マスター「児童労働させる気満々じゃない……」
魔法使い「なんですか? できれば手紙を読んでおきたいんですが」
マスター「まあ、その前に。ここで酒場を作ってもいいって話を聞いてたんだけど」
魔法使い「ええ。『勇者の町』になる予定ですから」
マスター「それはいいのだけれど、ほっとんど何もないわよね、ここ」
魔法使い「……」
マスター「ただの野っ原よね、ここ」
魔法使い「こんな広い土地を無料で使い放題なんてすごいと思いませんか?」
マスター「誰が酒場を建ててくれるのよぅ!」
魔法使い「男勢がちょっと足りないんですよねー」
マスター「もう、女商人さんに言いくるめられちゃったわ」
魔法使い「あと、孤児院の子どもたちが十数名来て、一生懸命働くと」
マスター「児童労働させる気満々じゃない……」
魔法使い「そういえば、男勢いますよ」
マスター「いかがわしい遊び人君? ちょっと大工仕事は頼りないのよねぇ」
遊び人「あはは、こう見えても、現場で肉体労働していたことはあるんですがね」
盗賊「……肉体で接待する労働の間違いじゃないの?」
遊び人「溜まってるお客さんが結構いるんですよね~」
盗賊「否定しなさいよ、あんたは」
魔法使い「そうじゃなくて、ほら、挨拶しなさい、あんた」
竜魔物「……」ペコリ
マスター「ま、魔物!?」
竜魔物「……魔王軍に所属していた、元兵士の竜です。故あってこちらで働かせていただくことになりました。よろしくお願いいたします」
マスター「ご、ご丁寧にどうも……」
竜魔物「その他、スライム隊も、土木工事に参加させていただいております」
スライム隊『ぴっぴきぴーっ!』
マスター「あ、かわいい」
マスター「いかがわしい遊び人君? ちょっと大工仕事は頼りないのよねぇ」
遊び人「あはは、こう見えても、現場で肉体労働していたことはあるんですがね」
盗賊「……肉体で接待する労働の間違いじゃないの?」
遊び人「溜まってるお客さんが結構いるんですよね~」
盗賊「否定しなさいよ、あんたは」
魔法使い「そうじゃなくて、ほら、挨拶しなさい、あんた」
竜魔物「……」ペコリ
マスター「ま、魔物!?」
竜魔物「……魔王軍に所属していた、元兵士の竜です。故あってこちらで働かせていただくことになりました。よろしくお願いいたします」
マスター「ご、ご丁寧にどうも……」
竜魔物「その他、スライム隊も、土木工事に参加させていただいております」
スライム隊『ぴっぴきぴーっ!』
マスター「あ、かわいい」
マスター「……いやいやいや、どういうことなのよ」
魔法使い「なかなか人手が足りませんので、基礎工事をお願いしています」
マスター「だ、だから、どういう経緯でこうなったの!?」
魔法使い「……あ、もう一匹、あそこにいる露出の高い悪魔も、働き手で」
側近「ん? ちはー」
マスター「あ、こんにちは……」
魔法使い「ちょっと顔色が悪いけど、魔王がいた頃はそれなりの地位にいたらしいから、大目に見てください」
マスター「何を大目に見たらいいのか分からないのだけれど」
魔法使い「……側近、あんたちゃんと挨拶しなさい。この町でお酒を売ってくれる人なのよ?」
側近「何よ、もう! 私はお酒よりもお菓子の方が好きだもん!」
マスター「クッキーならあるけど」
側近「かつては魔王様に仕えた身、しかしながら、これよりはあなたの従順なる僕となりましょう」
マスター「安い子ねぇ」
魔法使い「なかなか人手が足りませんので、基礎工事をお願いしています」
マスター「だ、だから、どういう経緯でこうなったの!?」
魔法使い「……あ、もう一匹、あそこにいる露出の高い悪魔も、働き手で」
側近「ん? ちはー」
マスター「あ、こんにちは……」
魔法使い「ちょっと顔色が悪いけど、魔王がいた頃はそれなりの地位にいたらしいから、大目に見てください」
マスター「何を大目に見たらいいのか分からないのだけれど」
魔法使い「……側近、あんたちゃんと挨拶しなさい。この町でお酒を売ってくれる人なのよ?」
側近「何よ、もう! 私はお酒よりもお菓子の方が好きだもん!」
マスター「クッキーならあるけど」
側近「かつては魔王様に仕えた身、しかしながら、これよりはあなたの従順なる僕となりましょう」
マスター「安い子ねぇ」
マスター「よく分からないんだけど、やっぱりよく分からないわ」
側近「うまうま」
魔法使い「魔王が死んで、魔界にも帰れなくなった。だから、もうここで生計を立てようということらしいです」
側近「らしいって何よ! あんたの提案に私は乗ってあげただけなんだからね!」
魔法使い「こいつは何の役に立つか分かりませんが、竜の方は力仕事で早速発揮してくれてまして」
側近「こいつって、おい!」
マスター「はぁ……魔物とも仲良くしようってことかしら?」
魔法使い「協力できるなら、種族は問わないということです」
側近「敵対するなら、同族でも容赦しないってことよね、それ」
マスター「……なんとなく、分かったわ」
魔法使い「酒場はすぐに用意できなくても、調理場はすぐにでも作って使っていただければいいなと」
マスター「うん、分かったわ」
側近「うまうま」
魔法使い「魔王が死んで、魔界にも帰れなくなった。だから、もうここで生計を立てようということらしいです」
側近「らしいって何よ! あんたの提案に私は乗ってあげただけなんだからね!」
魔法使い「こいつは何の役に立つか分かりませんが、竜の方は力仕事で早速発揮してくれてまして」
側近「こいつって、おい!」
マスター「はぁ……魔物とも仲良くしようってことかしら?」
魔法使い「協力できるなら、種族は問わないということです」
側近「敵対するなら、同族でも容赦しないってことよね、それ」
マスター「……なんとなく、分かったわ」
魔法使い「酒場はすぐに用意できなくても、調理場はすぐにでも作って使っていただければいいなと」
マスター「うん、分かったわ」
側近「ね、ねぇ。そこの酒の人間」
マスター「私? 私はマスターでいいわよ」
側近「ま、マスター。クッキーって、もうないのかしら」
マスター「なに、お菓子がほしいの?」
側近「ええ。素朴な味だけど、とってもおいしかったわ」
マスター「……素朴な味」
側近「魔界では魔界タワーの30階にスイーツバイキングがあるのよ! でも、もうこっちの世界に来たら、スイーツなんて二度と口に出来ないと思ってたわ」
マスター「ふふっ、まあ、調理場が出来れば、いろいろ作ってあげるわ」
側近「やったわ! ほら、竜! とっとと調理場を作るのよ!」
竜魔物「……まだ基礎工事だって言ってんでしょ?」
側近「マスター! 酒で作ったゼリーとかいいわよね!?」
マスター「はいはい」
マスター「私? 私はマスターでいいわよ」
側近「ま、マスター。クッキーって、もうないのかしら」
マスター「なに、お菓子がほしいの?」
側近「ええ。素朴な味だけど、とってもおいしかったわ」
マスター「……素朴な味」
側近「魔界では魔界タワーの30階にスイーツバイキングがあるのよ! でも、もうこっちの世界に来たら、スイーツなんて二度と口に出来ないと思ってたわ」
マスター「ふふっ、まあ、調理場が出来れば、いろいろ作ってあげるわ」
側近「やったわ! ほら、竜! とっとと調理場を作るのよ!」
竜魔物「……まだ基礎工事だって言ってんでしょ?」
側近「マスター! 酒で作ったゼリーとかいいわよね!?」
マスター「はいはい」
側近「そういえば、魔法使いの人間」
魔法使い「普通に、魔法使いでいいわよ」
側近「どうでもいいけど、海の方からも船が来てるわ」
魔法使い「何の旗を立ててるか分かる?」
側近「太陽のマークだったわ」
魔法使い「じゃあ、私の船だわ。きっと武闘家とかだ」
側近「どうするー? 沈めるー?」
魔法使い「私の船だっつってんでしょうが。準備に手間取るから、来るまで待ちましょう」
側近「はーい」スタスタ
魔法使い「さて、じゃあ、手紙を……」
勇者母「うふふ~、魔法使いちゃん」
魔法使い「あ、勇者のお母様」
魔法使い「普通に、魔法使いでいいわよ」
側近「どうでもいいけど、海の方からも船が来てるわ」
魔法使い「何の旗を立ててるか分かる?」
側近「太陽のマークだったわ」
魔法使い「じゃあ、私の船だわ。きっと武闘家とかだ」
側近「どうするー? 沈めるー?」
魔法使い「私の船だっつってんでしょうが。準備に手間取るから、来るまで待ちましょう」
側近「はーい」スタスタ
魔法使い「さて、じゃあ、手紙を……」
勇者母「うふふ~、魔法使いちゃん」
魔法使い「あ、勇者のお母様」
勇者母「もう、こんな大事なこと、どうして黙っていたのよ~」
魔法使い「はあ、すみません……どう転ぶか、分かりませんでしたので」
勇者母「まあ、そうよねぇ」
魔法使い「……?」
勇者母「それで、勇者はどうしているのかしら?」
魔法使い「ちょっと、仲間のところに飛んでしまって……」
勇者母「まあ、そうよねぇ。みんなに知らせないと行けないわよねぇ~」
魔法使い「はぁ」
勇者母「でも、勇者のお母様だなんて、そんな他人行儀に言わなくていいのよ~」
魔法使い「はぁ?」
勇者母「息子をよろしくね」
魔法使い「……は?」
勇者母「式の日取りはいつになるのかしら~」
魔法使い「……」
勇者母「女商人さんから聞いたのよ~」
魔法使い「はあ、すみません……どう転ぶか、分かりませんでしたので」
勇者母「まあ、そうよねぇ」
魔法使い「……?」
勇者母「それで、勇者はどうしているのかしら?」
魔法使い「ちょっと、仲間のところに飛んでしまって……」
勇者母「まあ、そうよねぇ。みんなに知らせないと行けないわよねぇ~」
魔法使い「はぁ」
勇者母「でも、勇者のお母様だなんて、そんな他人行儀に言わなくていいのよ~」
魔法使い「はぁ?」
勇者母「息子をよろしくね」
魔法使い「……は?」
勇者母「式の日取りはいつになるのかしら~」
魔法使い「……」
勇者母「女商人さんから聞いたのよ~」
……魔法使いは手紙を読み始めた。
女商人『魔法使いへ。おひさ』
女商人『魔法使いが頭を下げるなんて、初めてだよねv』
女商人『ぶっちゃけ~引き受けたくなかったんだけどぉ、しょーがないからやったげるよ』
魔法使い(イラッ……)
女商人『それでぇ、分かったことなんだけどぉ』
女商人『北、調査中。勇者との合流を確認。東の危険度は薄い。南、姫の侍女と接触』
女商人『南大臣が魔物に? 詳細をさらに確認すべく城内に潜入』
女商人『探検隊の計画、魔法の儀式、研究者を集めている。詳細不明』
魔法使い(やっぱり、私は行くべきかしら……)
女商人『それとぉ、マスターと勇者のお母様がそっちに行くから、よ・ろ・し・く♪』
女商人『それでねぇ、お母様がちょっと動きそうになかったから、魔法使いと勇者が結婚したからお祝いに来てって言っちゃった(汗 ごめりんこ』
女商人『でも、あんたたち、どの道するからいいわよね☆』
女商人『むしろ素直になれないあんたたちを後押ししてあげた私ってキューピッド?』
女商人『そんじゃあね。女商人より?』
魔法使い「……」びりぃっ ぼっ
女商人『魔法使いへ。おひさ』
女商人『魔法使いが頭を下げるなんて、初めてだよねv』
女商人『ぶっちゃけ~引き受けたくなかったんだけどぉ、しょーがないからやったげるよ』
魔法使い(イラッ……)
女商人『それでぇ、分かったことなんだけどぉ』
女商人『北、調査中。勇者との合流を確認。東の危険度は薄い。南、姫の侍女と接触』
女商人『南大臣が魔物に? 詳細をさらに確認すべく城内に潜入』
女商人『探検隊の計画、魔法の儀式、研究者を集めている。詳細不明』
魔法使い(やっぱり、私は行くべきかしら……)
女商人『それとぉ、マスターと勇者のお母様がそっちに行くから、よ・ろ・し・く♪』
女商人『それでねぇ、お母様がちょっと動きそうになかったから、魔法使いと勇者が結婚したからお祝いに来てって言っちゃった(汗 ごめりんこ』
女商人『でも、あんたたち、どの道するからいいわよね☆』
女商人『むしろ素直になれないあんたたちを後押ししてあげた私ってキューピッド?』
女商人『そんじゃあね。女商人より?』
魔法使い「……」びりぃっ ぼっ
勇者母「それでね~、もし良かったらと思って~」
勇者母「私のドレスも持ってきちゃった~」
勇者母「魔法使いちゃんも、若い頃の私の体型に似ているっていうか~」
魔法使い「しばらく待っていただけますか」
勇者母「え?」
魔法使い「私も、呼ばないと行けない人がいますので」
勇者母「そうなの~? まあ、しょうがないわね~」
魔法使い「では……」ダッ
魔法使い「ふざけんじゃねーよ、あの女ァ!」
側近「な、なによ」ビクッ
遊び人「ど、どうかしましたか」ビクッ
魔法使い「お前ら、後は任せたからな! これ、計画書!」バサッ
盗賊「うわっぷ」
魔法使いは移動呪文を唱えた!
勇者母「私のドレスも持ってきちゃった~」
勇者母「魔法使いちゃんも、若い頃の私の体型に似ているっていうか~」
魔法使い「しばらく待っていただけますか」
勇者母「え?」
魔法使い「私も、呼ばないと行けない人がいますので」
勇者母「そうなの~? まあ、しょうがないわね~」
魔法使い「では……」ダッ
魔法使い「ふざけんじゃねーよ、あの女ァ!」
側近「な、なによ」ビクッ
遊び人「ど、どうかしましたか」ビクッ
魔法使い「お前ら、後は任せたからな! これ、計画書!」バサッ
盗賊「うわっぷ」
魔法使いは移動呪文を唱えた!
盗賊「任せたってどーすんのよ……」
遊び人「計画書ってこの束ですか?」
側近「大体、私らがすることって、もう土木工事くらいじゃない?」
竜魔物「……分かってるんなら、ちょっとは手伝ってくださいっすよ」
側近「え? 何?」
竜魔物「……」
タッタッタ……
少女「おーい……!」
武闘家「みなさーん! 魔法使いさーん!」
側近「あ、おー、ちびっ子ー!」
少女「悪魔のお姉ちゃん!」
側近「何よ、ちょっとの間に背とか伸びちゃった?」
スラ「ぴきーっ!」
側近「やん、スライムもいる~」
竜魔物「……」
少女「竜のおじさんも」
竜魔物「久しぶりだな、人間の少女よ」
遊び人「計画書ってこの束ですか?」
側近「大体、私らがすることって、もう土木工事くらいじゃない?」
竜魔物「……分かってるんなら、ちょっとは手伝ってくださいっすよ」
側近「え? 何?」
竜魔物「……」
タッタッタ……
少女「おーい……!」
武闘家「みなさーん! 魔法使いさーん!」
側近「あ、おー、ちびっ子ー!」
少女「悪魔のお姉ちゃん!」
側近「何よ、ちょっとの間に背とか伸びちゃった?」
スラ「ぴきーっ!」
側近「やん、スライムもいる~」
竜魔物「……」
少女「竜のおじさんも」
竜魔物「久しぶりだな、人間の少女よ」
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