私的良スレ書庫
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元スレ上条「……なんでもう布団が干してあるんだ?」C.C「腹が減った。ピザをよこせ」
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今週は過ぎてしまいましたね…
とりあえず長いことお待たせしました
これより投下します
とりあえず長いことお待たせしました
これより投下します
学園都市・三沢塾南棟
自動ドアを抜けた先にあったのは、至って普通の予備校の風景であった。
その広く豪華な造りのロビーからは清潔感が溢れ、訪問者に対し好印象を与えている。
上条「これが、『三沢塾』、か……」
現在、玄関ロビーにはこれから帰宅、あるいは講義を受けようという生徒が多数見られる。
友達同士談笑しながら歩く姿を見れば、その様子からはとても魔術師に乗っ取られた状況だとは思えない。
上条「なんつーか、魔術師に乗っ取られたっていう割には通常営業してるんだな。
……なんかこっちがスゲー浮いてるみたいだ」
言いながら上条は隣にいるC.C.とステイルにチラリと視線を向けた。
緑の髪と赤い髪の外国人が二人。
……目立つ。とにかく目立つ。
それに加え、二人の風貌はどう見ても進学を望む学生のものとは思えない。
C.C.「……なんだその目は?」
上条「イエ、別ニナンデモアリマセンコトヨ?」
C.C.の威圧的な目を前に、上条は明後日の方向を見て答えた。
二人がそんな緊張感の欠いたやり取りをしていたその時。
横を歩いていたステイルが、不意にその足を止めた。
ステイル「……どうやら無駄口を叩けるのは、ここまでみたいだね」
上条「え?」
脇に立つステイルを見ると、彼は目を細めて、ある一点を見つめている。
その視線の先、そこにはこの場にそぐわない、奇妙なモノがあった。
上条「なんだありゃ……?」
視線の先にあるのは、備え付けられている四基のエレベーター。
その右から一基目と二基目の間の壁に、何か金属の塊が立てかけられていた。
否、よく見るとそれはロボットのようで、元は人の形を成していたのが分かる。
しかし、その四肢はひしゃげ、全身を覆う鎧のような装甲は大きく損傷している。
そして、その内部からは赤黒い液体が流れ出ており、その一帯の床を汚していた。
上条「なんであんなぐしゃぐしゃなロボットが置いてあるんだ?つーか、なんで誰も気にしてないんだよ?
元からあるオブジェってことはないだろうし……」
ステイル「何を言っている?あれはただの―――」
C.C.「死体、だな」
上条「……は?」
すぐ横に立つ彼女が呟いた言葉の意味を、上条は一瞬理解できなかった。
呟いた本人を見ると、一見して金属の塊にしか見えない、変わり果てた姿をしたその人間を感情の宿らぬ目で見つめている。
ステイル「何を呆けているんだい?ここは戦場だよ?死体の一つや二つ転がっていたって不思議じゃない。
もっとも、君みたいな一般人には珍しいかもしれないけどね」
タバコを咥えながら、別段何でもない事のように話すステイル。
その後も続けて、その人間の武装や所属する宗教などについて考察しているようであったが、上条の耳にはほとんど入ってこなかった。
C.C.「おい、お前大丈夫か?」
呆然とする上条に対し、C.C.はその顔を覗き込むようにして声を掛ける。
上条はそれにさえ気づかずに、その変わり果てた人の姿をただ見つめていた。
ステイルの言うとおり、ここは戦場だ。
上条も、建物全体の乗っ取り、少女の監禁などという強硬手段を取った相手に対し、説得で全部が解決できるとは思ってはいない。
だから上条自身も、それなりの『戦う覚悟』をしてきたはずだった。
だがしかし――――――。
上条「……ふざっけんな!」
人の『死』を易々と認め、黙ってその横を通りすぎる事など、上条当麻にはできない。
声を上げると同時に、上条はそこに向かって走り出す。
何ができるかはわからない。もう既に手遅れなのかもしれない。
だが、まだ死んでいない、という僅かな可能性に賭ける事はできる。
この学園都市の医療技術ならば、死んでさえいなければ何とかなるかもしれない、と。
ものの数秒程で近づいた上条は、まず全身を覆う西洋の鎧に目を向ける。
近くで改めて見ると、その関節はひしゃげ、装甲は所々へこみ、破損した部分からは赤黒い血が流れている。
上条(こんなんじゃ、脱がし方もわからねぇ……。とりあえずは生きてるかの確認を……)
そう思った上条は、兜に耳を近づける。
すると僅かにだが、空気が漏れる音、呼吸音が聞こえてくる。
上条「!おい!まだ生きてるぞ!もしかすれば助かるかもしれない!」
上条はステイルとC.C.に向けてそう叫ぶが、二人の返答は上条の期待するものではなかった。
ステイル「……上条当麻。残念だけど、そいつはもう助からない。とてもじゃないが助かるような状態じゃない」
C.C.「……同感だな。そいつはもう、死んでいるようなものだ」
感情の起伏を感じない、ただ冷酷な事実のみを告げる二人。
希望云々ではなく、もう助からない、という現実を見つめている答え。
上条「な!?ふ、ふざけんな!まだ息が――――――」
と、その時。
上条に一番近いエレベーターが音を立てて開いた。
中からは何人かの塾生と思われる学生たちがぞろぞろと降りてきて、友人と談笑しながらそこを歩き去ろうとする。
そう、そのすぐ横に倒れている、今まさに死の淵に瀕している者を一瞥することもなく。
瞬間、上条の頭が沸騰した。
上条「て、めぇ……!何やってんだッ!早く救急車を――――――ッ!」
叫びながら、上条は歩き去ろうとする一人の男子生徒の肩を掴む。
だがその瞬間―――。
上条「がっ―――!?」
上条の伸ばした腕に信じられない程の衝撃が走った。
それはまったく予想していなかった、凄まじい衝撃だった。
肩が外れてしまうのではないかと本気で思う程の。
上条「い、一体何が……」
驚きの表情を浮かべたまま、上条は自分が肩に手を置いた男子生徒を見る。
するとその生徒は、まるで何事もなかったかのように友人と笑いながら歩き去っていた。
上条はその光景に一瞬言葉を失った。
上条「……なん、なんだよ、今のは」
ステイル「……ふむ、そういう風に作られた結界なんだろうさ」
いつの間にか上条のすぐ後ろに立っていたステイルが、神妙な顔をして口を開いた。
上条「結界……?」
ステイル「言うなればコインの表と裏さ。何も知らない一般人は表側。外的として侵入した僕らが裏側。
彼らは僕らに、僕らは彼らに、お互い干渉できないんだろうね。だから、君が触ったという事
にさえ気づかない」
ステイルは結界の構造を説明しながら、おもむろに傍の壁に近づき、咥えていたタバコをそこに押し付けた。
にもかかわらず、壁には焼けた後どころか汚れも残らない。
ステイル「なるほど。この建物自体は表側みたいだね。要塞としてはいかにも魔術師的だ。
……となると、これで僕達は扉の一つも開けれなくなった訳だね」
C.C.「……やれやれ、お先真っ暗とはよく言ったものだな」
上条「……」
結界。魔術的構造。異能の力。
それならば。
上条は自身の右手の拳を握り締める。
上条「俺の『幻想殺し』なら……」
ステイル「無駄だと思うよ。結界を壊すには、その『核』を潰さないとダメだろうし。それにその『核』も、
おそらくこの建物の外にあるだろうね。魔術師の定石だよ」
上条「でも、それじゃあこの人が……ッ!」
ステイル「そこまで言うなら、試しにやってみればいいさ。十中八九、君のその自慢の拳が砕けるだけだろうけど」
上条「……くそっ!」
上条は拳を振り上げ、地面へと叩きつける。
―――痛い。
だが、ただ痛いだけだ。
結界自体には何の影響も見られない。
上条「……ちっ、くしょう。じゃあどうすりゃいいんだよ……」
ステイル「どうする必要もないさ。さっきも言ったように、彼はもう助からない」
C.C.「ああ。今、奴に必要なのは押し付けがましい同情や憐れみなどではなく、見送りと弔いだろう」
そう言うと、C.C.はステイルへと視線を送る。
ステイルは、わかっている、とでも言うように、何も言わずに騎士の前へと向き直り、床に片膝をついた。
その姿、所作は普段の彼の様子からは想像できないほど、どこか神聖で厳かなものだった。
ステイル「――――――、―――――――」
ステイルが騎士に向けて何かを告げた。
それが外国語だったため、上条に意味はわからない。
しかし、ステイルの言葉が届いたのか、今までピクリとも動かなかった騎士の右手がよろよろと動く。
そして、ステイルに向かってそれを伸ばして―――
「……――――、――――――――……」
彼は、何かを呟いた。
ステイルは一度だけ小さく頷く。
それを見届けたのか、騎士の体から一切の力が抜け、伸ばしていた右手はふっと床へ落ちた。
ステイルもそれを見届け、最後に胸の前で十字を切った。
そこには魔術師ではなく、紛れもない神父としての、ステイル=マグヌスの姿があった。
ステイル「……さぁ、行くよ二人とも。僕らは僕らの、仕事をしよう」
厳然とした声で、『魔術師』、ステイル=マグヌスはそう告げた。
―――――――――
――――――
―――
三沢塾南棟・5階
ステイル「……ふぅ、どうやら、ここが目的の階、みたいだね」
上条「……はぁ、やっと、着いたのか。……そっちは大丈夫か、C.C.?」
C.C.「……ふん、お前が素直に私を背負っていれば、こんなに疲労を感じることはなかったんだがな」
上条「無茶を言わないで下さい……」
あの後、ロビーから隠し部屋があると思われる階へと移動してきた上条達。
『コインの裏』にいる彼らが、『コインの表』の住人と共に密閉されてしまうエレベーターを使える訳もなく、
彼らは仕方なく階段を使って上の階へと上ってきていた。
しかし、このビル自体が『コインの表』に属するため、階段を登る時に自重により発生する抵抗、衝撃は、
作用反作用の法則に従い、全てそのまま自分に跳ね返ってきてしまう。
そのため、三人の疲労の色は普段階段を登るそれよりもずっと濃い。
C.C.「そもそもだ。そもそも私は、私だけはエレベーターを使っても構わないと言ったはずだ。
それを、どこかの誰かが無理矢理階段を登らせたんだろう」
上条「お前な、ステイルの話聞いてただろ?エレベーターなんか使ったら、最悪俺達は乗ってきた生徒達でぺちゃんこだぞ?」
C.C.「だから、私はそれでも大丈夫だと言ったんだ。お前も知っているだろう?」
C.C.は若干の呆れを含んだ目をして、上条に文句を言った。
しかし一方の上条は、C.C.のその発言を聞いて、ふいと黙り込む。
そして、少しの間を置いた後、上条はどこか物悲しい表情をしながら口を開いた。
上条「……なぁ、C.C.。そういう風に、『自分は傷ついても構わない』って考え、やめないか?」
C.C.「……何?」
上条「……確かにお前は、普通の人より治癒能力が高いのかもしれないけどさ、俺はお前が傷つく所なんて見たくない。
だから、もっと自分を大切にして欲しい」
C.C.「……」
上条はC.C.の目を真っ直ぐに見つめて話す。
対するC.C.も、上条の目を、その冷たく揺らぎのない目で捕らえて放さない。
そして、両者僅かな沈黙の後―――。
C.C.「……ふっ、口説き文句にしては随分と陳腐なものだな、坊や?」
開かれた口から出たのは、彼女らしいからかいの言葉だった。
上条「お、お前な……」
C.C.「……だが、お前の言いたいことはわかった。そこまで言うなら、―――お前が私を守ってみせろ」
上条「……はい?」
C.C.「私が傷つくのが嫌なのだろう?なら、そうならないようにお前が私を守れ」
彼女の言葉に一瞬言葉を失う上条だったが、すぐに頭を振ってC.C.に再度向き直り―――。
上条「……いやいや、お前、俺の言ったことちゃんと聞いてた?」
C.C.「ああ、もちろんだ」
傲岸不遜な笑みを浮かべながら、C.C.は上条を見やる。
そんな彼女の様子を見て、上条は、はぁーと深い溜め息をついた。
上条「……俺がお前を守るのは別にいいけどさ、とりあえず自分で自分を大切にしてください、切実に」
C.C.「努力はしよう。私だって傷つきたい訳じゃないからな。まぁ、いざとなったら、お前を盾にするよ。せいぜい役立ってくれ」
上条「はは、それはそれで問題あるけどな……」
不敵な笑みを浮かべながら話すC.C.に対し、上条は困ったように苦笑いを浮かべる。
しかし同時にこの時、上条は、『C.C.を守る』という確かな決意を人知れず抱いた。
ステイル「……まったく、イチャつくのは時と場所を考えてやってくれないか?」
二人のやり取りを横目で見ていたステイルは、呆れた様子で声を掛けた。
突入する前にも、油断するな、と念を押したはずなのだが、どうにも彼らは緊張感に欠けているように見える。
C.C.「ああ、すまなかったな。どうやら童貞坊やには、些か刺激が強すぎたようだな」
そして、そんなステイルの忠告にさえ、冷やかすようにして言葉を返すC.C.。
ステイルは、頬をピクつかせながらC.C.を睨むが、彼女は涼しい顔をしたままだ。
上条「えーと……と、とりあえず、その隠し部屋とやらを探そうぜ。このままじゃ捗るものも捗らない」
ステイル「……捗らないのは、主に君達のせいなんだけどね」
そんな緊張感を欠いた様相で、彼らは歩を進めていく。
各々、確かな想いを抱えながら―――。
―――――――――
――――――
―――
とりあえず今回はここまでです
長いこと更新できなくてホントすみませんでした…
次回の更新は再来週までにはなんとか…
それではまた次回に
長いこと更新できなくてホントすみませんでした…
次回の更新は再来週までにはなんとか…
それではまた次回に
遅くなったけどあけおめー
ってか今月で期限か…早く来てくれー
ってか今月で期限か…早く来てくれー
生存報告
えーと、どうもお久しぶりです
再来週っていつだっけ?というか、はい…
いや、本当にすみませんでした…
言い訳をさせて頂きますと、レポート課題多すぎワロエナイ…
週4でレポートっておかしいだろ…
しかもどんどん難しくなるって…
とりあえず2月の山を過ぎれば時間できるので、そこで投下します
本当に申し訳ありません…
えーと、どうもお久しぶりです
再来週っていつだっけ?というか、はい…
いや、本当にすみませんでした…
言い訳をさせて頂きますと、レポート課題多すぎワロエナイ…
週4でレポートっておかしいだろ…
しかもどんどん難しくなるって…
とりあえず2月の山を過ぎれば時間できるので、そこで投下します
本当に申し訳ありません…
えー、どうもお久しぶりです…
お待たせしてしまいホント申し訳ありません!
なんとか投下できる状況になったので投下したいと思います!
お待たせしてしまいホント申し訳ありません!
なんとか投下できる状況になったので投下したいと思います!
しばらくして、彼らは学生食堂へと足を進めていた。
道中、隠し部屋があると思われる壁を発見した上条達であったが、そこはあくまでも『壁』。
中に入るためのドアなど見当たらないし、そもそも『コインの裏』にいる彼らは、どうやっても干渉できない。
とりあえずは、隠し部屋の場所を特定し、把握しておこうというのがステイルの考えだ。
結界を敷いたアウレオルスさえ何とかすれば、いずれそこにも行けるようになる、と。
そして今、隠し部屋のおおよその場所、形状を確認するため、そこから最も近い空間のこの学生食堂に赴いている訳である。
ステイル「……とは言っても、正直この中には入りたくないね」
上条「……同感。お前の話がホントなら、俺達にとってこいつらみんな猛牛みたいなものなんだろ?下手すりゃ弾き殺されるくらいの」
ステイル「まぁ、そうならないように慎重に行くとしよう」
C.C.「図体ばかり無駄にデカいお前には中々に酷な場所だな」
C.C.の嫌味に、黙れ魔女、とステイルが短く切り捨てた後、彼らは歩を進める。
学生食堂は塾の生徒達で賑わい、多くの生徒がトレイを持って場を行き来している。
その合間を縫うようにして移動する上条達であったが、それにはかなりの神経を使う。
というのも、学生達には上条達が見えていないのだ。
つまり『避ける』という考えを持たず、その行為も当然しない。
日常的に人ごみを歩く時、他人がいかに自分を認識し、避けてくれているのかがよくわかる。
そうして気を使いながら進んでいくと、やがて隠し部屋のある面の壁を確認できた。
C.C.「……それにしても、随分と気分の悪い所だな、ここは」
C.C.は軽蔑するような眼差しで食堂を見渡しながら呟いた。
C.C.がそう言うのも無理もないと上条は思う。
食堂内を移動している時、学生同士の会話が少しばかり耳に入ってきたが、彼らの会話は不愉快なものが多かった。
やれあいつより成績が上だっただの、やれあの問題を理解できない馬鹿は居る価値がないだの。
彼らは学業競争という名の下、誰かを蹴落としたり、蔑んだりすることで自分の位置を確立しようとする。
上条から言わせれば、そんな会話で笑い合っている彼らの気が知れない。
と、そこで上条ははたと思い当たる。
上条「……なるほど、これが『新興宗教』の姿かよ」
ステイル「毒気に当てられたかい、上条当麻?悪いけど、本来の目的を忘れちゃいないだろうね?」
上条「あ、ああ、わかってる」
そう、本来の目的は『吸血殺し』、姫神秋沙の救出である。
アウレオルス=イザードやその他諸々の障害は、最悪それを阻害する場合のみ潰せば良い。
―――だが、上条は忘れられない。あの一階ロビーで死に絶えた騎士の姿を。
何故、彼はあそこで死ななければならなかったのか。
何故、アウレオルスはあそこまでしなければならなかったのか。
ステイルの言うように、ここは戦場だ。
それを理解はできても、決して納得はできるものではない。
上条(……考えてもしょうがない。とりあえず今は、あの巫女さんを助けなきゃな)
淀んだ思考を覚ますため、上条は目を閉じて一度両手で頬を叩いた。
頬の神経から伝わる痛みをじんわりと感じながら、上条はゆっくりと瞼を開ける。
その時。
C.C.「―――どうやら、向こうも動き始めたようだな」
上条「え?」
唐突に聞こえたC.C.のいやに平坦な呟き。
何事かと思い見ると、彼女はまるで睨むかのように食堂フロアをジッと見つめていた。
それに釣られ上条も食堂に目を向けると―――
そこにいる全ての学生が、自分達を無言で見つめているのに気が付いた。
上条「な、なんだ……?」
ステイル「……第一チェックポイント通過、ってところかな?『コインの表』の彼らが、『コインの裏』の僕らを
認識したってことは……まぁ、そういうことだろうね」
上条「……つまり、それは簡単に言うと―――」
そこで、上条達の会話を遮るように、ポツポツと声が聞こえ始めた。
「……熾天の翼は輝く光、輝く光は罪を暴く純白。純白は浄化「の証、証は行動の結」果。結「果は未来、未来」は
「「時間、時間は一」律。一律は」全て、全てを創「るのは過去。過」去は原因、原「因は一つ。一つは罪、罪」は人。
人は「「罰を恐れ、恐れる」は罪悪。罪悪とは」己の中に。己の「「「中に忌み嫌うものがある」ならば」、熾天の翼に
より己の罪を」暴き、内から弾け飛ぶべし―――ッ!」
C.C.「……迎撃態勢に入った、ということだな」
何十人という単位、否、建物にいる全ての人間が紡いだ大合唱のような言葉の渦。
それらがまるで嵐のように巻き起こり、戦場全てを揺るがしていた。
唐突に、上条の近くにいた一人の生徒の眉間から、ピンポン球大の青白い光の球が現れた。
それは狙いも確かではないようで、ふわふわと宙を彷徨った後、上条の横の床へと落ちた。
その光の球が落ちた床からは、強酸性の薬品を零した時にするような、ジュウ、という焼ける音と煙が上がる。
それ一つを見る限りでは、別段大したことはないと思われた。
ステイル「そら、君の出番だ!」
上条「は?………なっ!?」
だが、ステイルの声に促され振り返った先にあったのは、視界を覆い尽くすほどの、何百という数の光の球。
一個一個の質などまったく問題にならないほどの、圧倒的物量。
それが目と鼻の先に迫ってきていた。
上条「う、おまっ!……こ、こんなもん、いちいち相手にしてられっか!」
叫ぶやいなや、上条は食堂の出口へ向けて走り出した。
ステイル「な……、おい!上条当麻!何故逃げる!『竜王の殺息』をも止めた君の右手なら、
この程度どうとでもできるだろう!」
上条の逃走を想定していなかったのか、ステイルは虚を衝かれた様子で、慌てて自身も出口へと走り出す。
ちなみにC.C.はこの状況を見越していたのか、いつの間にか食堂を出て、廊下で待機している。
上条「逃げるに決まってんだろ!俺の右手一本で裁き切れる量じゃねぇ!」
ステイル「ふざけるな!じゃあ僕は何のために君を連れてきたんだ!」
上条「ふざけてんのはお前の方だろッ!?」
C.C.「お前達はこんな時に何をしている!黙って早く来い!」
お互いを罵倒しながら、上条とステイルはC.C.の待つ出口へと一目散に向かう。
そのまま食堂を抜け出し、合流した三人は元来た通路に向かって駆け出す。
背後からは、食堂を抜けた何十という数の光の球体が、尚も執拗に上条達を追ってきていた。
長い直線通路を走っている最中、ステイルからアウレオルス=イザードが生徒達を使って作り上げた、
『グレゴリオの聖歌隊』という大魔術の説明を受け、上条は戦力の違いを改めて感じていた。
そして、ようやく三人は階段の付近へと到着したが、さらに正面からも大量の青白い球が押し寄せてくるのが見えた。
すなわち、前後からの挟み撃ち。
ステイル「くっ……、階段、行くよ!」
上条「行くったって、上下どっちに!?」
ステイル「二手に分かれる!僕が上で、君達が下!依存はあるか!?」
上条「二手に分かれる!?この状況下で戦力分散させるのかよ!?」
上条の言うように、こちらとあちらの兵力を単純比較すれば、約2000対3。
戦力差は圧倒的だ。
それをさらに削るなど、正気の沙汰とは思えない。
ステイル「僕には『魔女狩りの王』があるし、君にはその自慢の右手があるだろう!僕らの目的はあくまでも『吸血殺し』、
姫神秋沙の救出だ。こいつら全員を相手にする必要はない!」
C.C.「……それに最悪、あいつ一人を倒せば、それで終わるだろうからな」
小さく呟いたC.C.にステイルは一瞬目を向けたが、何も言うことはなかった。
ステイル「術者か魔術の『核』のどちらかを潰せばこれは消える!どちらかが成功すればそれでいい!さぁ、どうする!?」
上条「くっ……、わかったよ!でも俺は魔術に関しては素人だから、そういうのわかんねぇぞ!?」
階段の上下へと分かれながら、上条は大声で叫ぶ。
階段を駆け上がり、少しずつ遠ざかっていくステイルからの返答はというと―――。
ステイル「ははは!元から期待しちゃいないさ!君はせいぜい、敵を引き付けてくれればいいよ!後は僕がなんとかするさ!」
聞こえてきたのは、少し楽しげな、けれど最低の返答。
上条は一瞬頭が真っ白になったが、すぐに状況を把握して―――。
上条「……は、嵌めやがったなぁあああああああああああああああああああああああッ!」
上条の叫びが、ビル全体に響き渡った。
そして、傍らのC.C.はというと。
C.C.「……良い度胸だ。この借りは必ず返すぞ、ステイル」
ステイルの消えた方向を睨みつけ、確かな復讐を誓っていた。
自分達を捨て駒にしたステイルに色々言いたいことはあれど、とりあえず下の階へと全力で駆ける上条とC.C.。
その背後からは数多くの青白い球体が迫る。
上条「ってかよ!ステイルより俺達の方がなんか追ってきてる球数多くないか!?」
C.C.「お前を追っているんだろう。ステイルの言うとおりなら、お前の存在そのものが発信機なんだからな」
上条「そ、そういうことかーっ!?」
依然、洪水のような勢いで二人を追う大量の光の球体。
それを背に逃げ続ける二人だったが、階段の下から新たな足音が聞こえてきた。
上条「……っ!」
下を見ると、階段の先に一人の少女が立ち塞がっていた。
知り合いでもなく、着用する制服にも見覚えはないが、見たところ上条より一つ二つ上の受験生だろう。
だが、その彼女の口から紡がれるのは、先程食堂にいた生徒達と同じ不気味な呪文。
「罪を罰するは炎。炎を司るは煉獄。煉獄は罪人を焼くために作られし、神が認める唯一の暴力―――」
言葉を紡ぐたび、彼女の眉間に作られた青白い球体は大きさを増し、獲物に向かって飛び出すのを今か今かと待ち望んでいる。
しかし、対する上条もそれを黙って見ている訳ではない。
元々、自分達は『コインの裏』の人間であり、『コインの表』の生徒達にはこちらを感知することはできなかったはずである。
だが今現在、彼らは上条達を明確に認識し、攻撃を加えようとしている。
それはすなわち―――。
上条(あの人はもう、俺達と同じ『コインの裏』の存在ってことだよなッ!)
何十、何百という数なら手に負えるはずもないが、目の前の彼女一人分だけなら、自分の右手で十分に防げるはず。
攻撃を無力化した後、彼女を押し倒すなり、体当たりでもして脇へどかすなりすればいい。
そうして、上条が右の拳を力強く握り締めたその時。
ばじっ!
破裂音と共に、少女の頬が内側から弾け飛んだ。
上条「なっ……!?」
突然の出来事に目を見開いて、驚きの声を上げる上条。
彼女の頬からは大量の血が流れ出し、その整った顔は血で塗れてしまっている。
しかもそれは顔だけに留まらず、指、鼻、足と体中に広がっているようだ。
上条「い、一体何だ!?何が起こって―――」
C.C.「―――超能力者に、魔術は使えない」
C.C.の呟きを聞いて思わず振り向く上条。
C.C.は振り向いた上条に一瞬目を向けた後、階段の下に佇む血塗れの少女に視線を送る。
C.C.「科学によって開発された超能力者には、魔術は使えない。私も詳しい理由はよくわからないが、
能力を使うそもそもの『回路』が違うらしい。……それでも、無理矢理に魔術を使おうとすれば―――」
上条はC.C.の説明を聞き、すぐさま下の階へと視線を送る。
「暴力は……死の、肯定。肯、て―――は、認識。に―――ん、し―――」
そこには、体中至る所から出血をしながらも、途切れ途切れに言葉を紡ぐ少女の姿。
C.C.「……その肉体は崩壊し、やがては死に至ることもあるようだ」
少女が言葉を紡ぐたび、その体は内側から次々と破裂していく。
しかし、少女は止まらない、否、止められない。
それはまるで、壊れて制御を失ってしまった機械のように。
上条「や、やめろ!あんた自分の体がどうなってるかわかってんだろッ!?」
自身の危機も忘れ、上条は思わず叫び、制止を促す。
しかし、対する少女はその言葉にも僅かな反応さえ見せず、ただ言葉を紡ぐ。
上条「おい!もうやめろって!」
C.C.「……無駄だ。あの娘には、自分の意思など存在しないのだろう。
自分に与えられた『侵入者の迎撃』という役割をただ演じるだけだ」
上条「なら、無理矢理にでも止めてやる……ッ!」
C.C.「止せ!お前、私達の状況を理解しているのか?あの娘は巻き込まれただけかもしれんが、
今は私達の敵であることに変わりはない」
確かにC.C.の言うように、今現在、彼女は間違いなく上条達の敵である。
現に今、こうして彼女は上条達の前に立ち塞がっている。
……だが、ここで彼女の様子が変わった。
「……き、は――己の、中に。中、とは―――世界。自己の内面と世界の外面、を、繋げ」
ブチン、という本能的に嫌悪感を抱く音が少女から発せられた。
それを境に、少女は呪文のような何かを紡ぐのをやめ、遂にその口を閉ざす。
そして、限界を迎えたのか、力を失った少女の体がぐらりと階段の段差に向かって今まさに倒れ込もうとする。
上条は考える。
体の力を失った人間の体は重いだろう。
たとえそれが小柄な少女だとしても。
それを支えながら、後ろの球体から逃れることなど不可能だ。
それに所詮、この少女は敵なのだ。
今まさに銃を撃ち合っている戦場で、倒れた敵兵を助け起こす馬鹿がどこにいる。
見捨てて、踏み付けてでも、自分の身のために先を急ぐのがここでは普通なのだ。
そう、それが普通。普通――――。
上条「……う、るっせえっ!」
C.C.「おい!お前、何を!」
自身の危機だから。敵だから。助かりそうもない怪我だから。
上条当麻という人間にとって、それらは少女を見捨てて良い理由にはならなかった。
―――だから、手を伸ばして、少女を胸に抱き止めた。
受け止めた少女の体は予想よりは軽いものだったが、やはりこの危機的状況においては余計な荷物である。
しかも階段の途中であったこともあり、その重さのせいで踏ん張りも利かず、そのまま転げ落ちそうになる。
それでも何とか階段を駆け下りようと、足に力を入れて走り出そうとした結果―――。
上条「……ッ!」
上条の体は少女を抱えたまま前方へと倒れ込んでいった。
元々不安定な体勢であったにもかかわらず、二倍近くになった重力が足を前に出すのを遅らせた。
焦っている中、上半身が先行し下半身の運動が遅れれば、階段で転倒するのは必然だった。
それでも何とか少女を守ろうと、上条は自分が下になるように咄嗟に体の体勢を入れ替える。
そして、そのまま強かに階段下の床へと背中を打ちつけた。
上条「かは……っ!」
一瞬、呼吸ができなかった。
残りの段数が少なかったのもあって、怪我自体はしていない。
だが、この状況で転倒したのは致命的だった。
上条は痛みを我慢し、すぐに階段の方に視線を向ける。
するとそこには―――。
C.C.「……」
C.C.が腕を広げ、上条と少女を守るように立っていた。
上条「な!?C.C.ッ!?」
上条は叫び、手を伸ばす。
だが、転倒直後で、上には少女が覆い被さっているのもあり、その手は届かない。
そうしている間にも、C.C.に向かって無数の青白い球体は迫り、そして遂に―――。
上条「しぃいいつぅううう―――っ!!」
C.C.「……うるさい。近くでそんなに叫ぶな」
そこには火傷も、他の怪我も一切していない、普段通りのC.C.の姿があった。
上条「え?……あ?」
C.C.「何を呆けている。よく前を見てみろ」
上条「……え?これって……」
C.C.の言葉に従って前を見ると、そこには不思議な光景が広がっていた。
先程まで洪水のような勢いで迫っていた無数の青白い球体。
それらが全て、C.C.の目と鼻の先で静止していた。
上条「一体、どうなって……?」
C.C.「おそらく、ステイルが上手い事やったのだろう。あいつはあれでも魔術師としては有能だからな」
その直後、空中に留まっていた全ての球体は床へと落下し始め、そのまま空気に溶けるようにして消えていった。
まるで全てが幻想だったかのように、そこにはもう何も残っていなかった。
と、その時。
「憮然、理解できぬ行動だな、少年。必然、敵ならば見捨てるのが自然だろうに」
背後から響いた男の声。
振り返った廊下の先には、今回の事件の首謀者、『錬金術師』アウレオルス=イザードが立っていた。
―――――――――
――――――
―――
とりあえず今日はここまでで…
お待たせしてしまってホントすみませんでした…
引越しやら、バイトやら、海外やらで意外と忙しく、ここまでかかってしまいました…
もっと計画的に投下できればいいんですが…
再来週にはまた投下できると思います、はい
いえ、今度こそ、間違いなく
お待たせしてしまってホントすみませんでした…
引越しやら、バイトやら、海外やらで意外と忙しく、ここまでかかってしまいました…
もっと計画的に投下できればいいんですが…
再来週にはまた投下できると思います、はい
いえ、今度こそ、間違いなく
その頃、ステイルはC.C.の予想通り、『グレゴリオの聖歌隊』の核を破壊し終えていた。
彼がいるのは何の変哲も無い廊下だったが、その壁の向こうに『グレゴリオの聖歌隊』の
核が隠されている事に気付いていた。
何百、何千という数の人間の魔力が『核』には集まっているのだ。
異常なまでに魔力が濃縮されている場所を、魔術師であるステイルが感知できぬはずはない。
さらに、彼が『炎』を使う魔術師であったのも幸いした。
何度も言うが、『コインの裏』の人間は『コインの表』には干渉できない。
この『三沢塾』の建物そのものは『コインの表』にあるものだから、壁の中などに完璧に『核』を
埋め込んでしまえば『コインの裏』からは手の出しようが無い。
しかし、ステイルの使う『炎』に形は無い。
故に、極々僅かな穴や空洞さえあれば、そこから核の破壊に十分な炎を送り込める。
斯くして、ステイルは形すら見ないままに、『グレゴリオの聖歌隊』の核を破壊することに成功したのである。
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