私的良スレ書庫
不明な単語は2ch用語を / 要望・削除依頼は掲示板へ。不適切な画像報告もこちらへどうぞ。 / 管理情報はtwitterでログインするとレス評価できます。 登録ユーザには一部の画像が表示されますので、問題のある画像や記述を含むレスに「禁」ボタンを押してください。
VIP以外のSS書庫はSS+をご利用ください。
元スレ剣士「依頼があれば……この剣でなんでも斬る!」
SS スレッド一覧へ / SS とは? / 携帯版 / dat(gz)で取得 / トップメニューみんなの評価 : ★
レスフィルター : (試験中)
第一話『若奥様を斬る』
< 剣士の家 >
剣士(──とかっこつけたところで)
剣士(こんな平和な田舎町で、物騒な依頼なんかあるわけもなく)
剣士(世間は、ついに王国軍と大盗賊団の抗争が本格化したとかで大騒ぎだが)
剣士(この町にはなんも関係ないしな……)
妻「すみませぇ~ん、剣士さん」
剣士「なんですか、奥さん」
妻「あの~、スイカを切って欲しいんですけど」
剣士「はいはい」
剣士(こんな仕事ばっか……)
< 剣士の家 >
剣士(──とかっこつけたところで)
剣士(こんな平和な田舎町で、物騒な依頼なんかあるわけもなく)
剣士(世間は、ついに王国軍と大盗賊団の抗争が本格化したとかで大騒ぎだが)
剣士(この町にはなんも関係ないしな……)
妻「すみませぇ~ん、剣士さん」
剣士「なんですか、奥さん」
妻「あの~、スイカを切って欲しいんですけど」
剣士「はいはい」
剣士(こんな仕事ばっか……)
スパンッ! スパンッ!
剣士「はい、斬れましたよ」
妻「ありがとう! 助かったわぁ~」
剣士「スイカぐらい自分でも切れるでしょうに」
剣士「こないだはキャベツの千切り、その前はリンゴをウサギさんにする、でしたっけ」
妻「でも、あたしって料理が下手なのよ~」
剣士(ウソつけ……少しでも手を抜きたいだけだろう)
剣士「だったら……さっきのお代はいりませんから、俺に料理を作ってくれませんか?」
剣士「味を見てあげますよ」
妻「そんなことならお安い御用よ。台所と材料を借りるわね」
剣士「どうぞどうぞ」
剣士(ラッキー、昼飯まだだったんだよな)
剣士「はい、斬れましたよ」
妻「ありがとう! 助かったわぁ~」
剣士「スイカぐらい自分でも切れるでしょうに」
剣士「こないだはキャベツの千切り、その前はリンゴをウサギさんにする、でしたっけ」
妻「でも、あたしって料理が下手なのよ~」
剣士(ウソつけ……少しでも手を抜きたいだけだろう)
剣士「だったら……さっきのお代はいりませんから、俺に料理を作ってくれませんか?」
剣士「味を見てあげますよ」
妻「そんなことならお安い御用よ。台所と材料を借りるわね」
剣士「どうぞどうぞ」
剣士(ラッキー、昼飯まだだったんだよな)
しばらくして、料理が出来上がった。
妻「さ、召し上がれ」
剣士(お、うまそうじゃん)
剣士「じゃ、いただきま──」パクッ
剣士「す!?」
剣士「お、おお……! なんだこれ……!? うげえええっ!」
妻「やっぱりダメ?」
剣士(ダメってレベルじゃない! どうなってんだ、これ!?)
剣士「これ……ちゃんと味見してるんですか?」
妻「もちろん。で、おかしいとこを直そうとすると、ますますおかしくなって……」
妻「でも、主人は美味しいって食べてくれるから……」
剣士(結果として、この劇薬が生まれたってわけか……)
剣士「……奥さん」
剣士「今日は帰しませんよ! 俺が徹底的に特訓します! この剣に賭けて!」
妻「ええっ、そんなぁ!」
妻「さ、召し上がれ」
剣士(お、うまそうじゃん)
剣士「じゃ、いただきま──」パクッ
剣士「す!?」
剣士「お、おお……! なんだこれ……!? うげえええっ!」
妻「やっぱりダメ?」
剣士(ダメってレベルじゃない! どうなってんだ、これ!?)
剣士「これ……ちゃんと味見してるんですか?」
妻「もちろん。で、おかしいとこを直そうとすると、ますますおかしくなって……」
妻「でも、主人は美味しいって食べてくれるから……」
剣士(結果として、この劇薬が生まれたってわけか……)
剣士「……奥さん」
剣士「今日は帰しませんよ! 俺が徹底的に特訓します! この剣に賭けて!」
妻「ええっ、そんなぁ!」
気づいた時には、もう夜になっていた。
剣士「ハァ、ハァ、ハァ……」
妻「ハァ、ハァ、ハァ……」
剣士「まあ、少しはマシになりましたね」
剣士「とりあえず、調味料をドバッと入れるクセと」
剣士「ミスった時に砂糖の甘さを塩で相殺させる、みたいなバカなマネをやめれば」
剣士「だいぶ、よくなると思いますよ」
妻「ええ、ありがとう!」
剣士(ふう……もう剣士の仕事じゃねえよな、これ)
剣士「ハァ、ハァ、ハァ……」
妻「ハァ、ハァ、ハァ……」
剣士「まあ、少しはマシになりましたね」
剣士「とりあえず、調味料をドバッと入れるクセと」
剣士「ミスった時に砂糖の甘さを塩で相殺させる、みたいなバカなマネをやめれば」
剣士「だいぶ、よくなると思いますよ」
妻「ええ、ありがとう!」
剣士(ふう……もう剣士の仕事じゃねえよな、これ)
数日後、町でおかしなウワサが広がっていた。
ザワザワ……
「あそこの若奥さんが剣士さんの家にずっといたとか……」
「今日は帰さない、とか声が聞こえたって……」
「二人して、息が荒くなってたとか……」
ザワザワ……
剣士(な、なんか……俺とあの奥さんが不倫したみたいになってやがる!)
剣士(しかも、小さな町だから、広がるのが早い!)
剣士(ま、まずいぞ……旦那の耳に入る前になんとかしねえと!)
夫「剣士君!」
剣士「ゲッ!?」
夫「君にいいたいことがある」
剣士「いや、その、あの……」オドオド…
ザワザワ……
「あそこの若奥さんが剣士さんの家にずっといたとか……」
「今日は帰さない、とか声が聞こえたって……」
「二人して、息が荒くなってたとか……」
ザワザワ……
剣士(な、なんか……俺とあの奥さんが不倫したみたいになってやがる!)
剣士(しかも、小さな町だから、広がるのが早い!)
剣士(ま、まずいぞ……旦那の耳に入る前になんとかしねえと!)
夫「剣士君!」
剣士「ゲッ!?」
夫「君にいいたいことがある」
剣士「いや、その、あの……」オドオド…
夫「あ、ありがとう……!」グスッ…
剣士「へ!?」
夫「やっと……やっとあの地獄の日々から解放された……!」
夫「君のおかげで、妻がようやく“料理”と呼べるものを作るようになってくれた!」
夫「惚れた弱みでマズくてもいえなかったんだ……なかなか」
夫「しかも、ボクは出されたものは全部食べないと落ちつかないタイプだから」
夫「本当に大変だった……!」
夫「これも、君が妻の料理下手をばっさり切ってくれたおかげだ! ありがとう!」
剣士「いやぁ~、いいんですよ」
剣士(斬るのは……なにも剣だけでなく、口でもできるってことか)
ちなみにウワサは七十五日どころか、七日で消えたという。
~おわり~
剣士「へ!?」
夫「やっと……やっとあの地獄の日々から解放された……!」
夫「君のおかげで、妻がようやく“料理”と呼べるものを作るようになってくれた!」
夫「惚れた弱みでマズくてもいえなかったんだ……なかなか」
夫「しかも、ボクは出されたものは全部食べないと落ちつかないタイプだから」
夫「本当に大変だった……!」
夫「これも、君が妻の料理下手をばっさり切ってくれたおかげだ! ありがとう!」
剣士「いやぁ~、いいんですよ」
剣士(斬るのは……なにも剣だけでなく、口でもできるってことか)
ちなみにウワサは七十五日どころか、七日で消えたという。
~おわり~
第二話『カップルを斬る』
< 剣士の家 >
剣士「オイオイ、俺はあくまで剣を使うのが仕事なんだぞ?」
町娘「えぇ~!? でも、外の看板に『なんでも斬ります』って書いてあるじゃない!」
剣士「そりゃ書いたけどさ……」
剣士「なんで君と、今付き合ってる彼氏の縁を切らなきゃならないんだよ」
町娘「だって……イマイチ頼りないんだもん」
剣士「別れたいんなら、自分で振ればいいだろうが」
町娘「でも、彼のどこが悪いか、具体的によく分からないし……」
町娘「なんかいいだしにくくって……ね、お願い! なんとかして!」
剣士「しょうがないなぁ……」
< 剣士の家 >
剣士「オイオイ、俺はあくまで剣を使うのが仕事なんだぞ?」
町娘「えぇ~!? でも、外の看板に『なんでも斬ります』って書いてあるじゃない!」
剣士「そりゃ書いたけどさ……」
剣士「なんで君と、今付き合ってる彼氏の縁を切らなきゃならないんだよ」
町娘「だって……イマイチ頼りないんだもん」
剣士「別れたいんなら、自分で振ればいいだろうが」
町娘「でも、彼のどこが悪いか、具体的によく分からないし……」
町娘「なんかいいだしにくくって……ね、お願い! なんとかして!」
剣士「しょうがないなぁ……」
しばらく考えた後──
剣士「じゃあ、こうしよう」
剣士「明日の夜、この町をちょっと出たとこにある森で」
剣士「君と彼氏とでデートするんだ」
町娘「うんうん」
剣士「で、俺が変質者のフリして襲いかかるから……」
剣士「そんなに頼りない彼氏なら、多分ビビりあがって、逃げちまうだろう」
剣士「そしたら、それを理由にして別れ話を切り出せばいい」
剣士「どうだ?」
町娘「悪くないわね! いいわ、それ採用!」
剣士(まったくひどい話だ……ま、別れた方が相手の男にとってもいいかもな)
剣士「じゃあ、こうしよう」
剣士「明日の夜、この町をちょっと出たとこにある森で」
剣士「君と彼氏とでデートするんだ」
町娘「うんうん」
剣士「で、俺が変質者のフリして襲いかかるから……」
剣士「そんなに頼りない彼氏なら、多分ビビりあがって、逃げちまうだろう」
剣士「そしたら、それを理由にして別れ話を切り出せばいい」
剣士「どうだ?」
町娘「悪くないわね! いいわ、それ採用!」
剣士(まったくひどい話だ……ま、別れた方が相手の男にとってもいいかもな)
翌日の夜──
< 森 >
青年「ホ、ホントにこんなところでデートするの……? やめようよ……」
町娘「だらしないわねぇ~、こういうとこでデートするのがスリルあるんじゃない」
剣士(来たな……覆面をかぶって、と)ガバッ…
覆面「ヒヒヒ……」ヌゥッ…
青年「うわっ!?」
町娘(来たわ!)
覆面「俺は人を斬るのが大好きなんだぁ~……斬らせてくれよぉ~……」チャキッ
町娘(なかなかの名演じゃないのよ!)
青年「う、う……う……」
< 森 >
青年「ホ、ホントにこんなところでデートするの……? やめようよ……」
町娘「だらしないわねぇ~、こういうとこでデートするのがスリルあるんじゃない」
剣士(来たな……覆面をかぶって、と)ガバッ…
覆面「ヒヒヒ……」ヌゥッ…
青年「うわっ!?」
町娘(来たわ!)
覆面「俺は人を斬るのが大好きなんだぁ~……斬らせてくれよぉ~……」チャキッ
町娘(なかなかの名演じゃないのよ!)
青年「う、う……う……」
青年「うおおおおおっ!!!」ガシッ…
覆面「!?」
青年「町娘ちゃん! 逃げてぇっ! 早く逃げてぇっ!」
町娘「えっ……」
青年「うわぁぁぁっ!!!」
覆面(コ、コイツ……力はないが、なんて気迫だ! こっちがビビっちまってる!)
青年「ボクは死んでもいい……彼女だけは絶対守るっ!」
覆面(だけど、なんとかしてビビらせないと……!)
覆面(仕方ない……やるしかない!)ビュアッ
ビシュッ!
次の瞬間、青年の服にべっとりと血がついていた。
覆面(どうだ……!?)
町娘「!?」
覆面「!?」
青年「町娘ちゃん! 逃げてぇっ! 早く逃げてぇっ!」
町娘「えっ……」
青年「うわぁぁぁっ!!!」
覆面(コ、コイツ……力はないが、なんて気迫だ! こっちがビビっちまってる!)
青年「ボクは死んでもいい……彼女だけは絶対守るっ!」
覆面(だけど、なんとかしてビビらせないと……!)
覆面(仕方ない……やるしかない!)ビュアッ
ビシュッ!
次の瞬間、青年の服にべっとりと血がついていた。
覆面(どうだ……!?)
町娘「!?」
町娘「な、なにやってんのよ……」プルプル…
町娘「やりすぎなのよ、アンタはァッ!」バッ
覆面「へ?」
ゴシャッ!!!
町娘のドロップキックが、覆面に炸裂した。
覆面「あがっ……!」ヨロッ…
覆面「ち、ちくしょう、覚えてやがれ!」ダダダッ
町娘(もう……ビビらせるだけっていったのに、まさか斬るなんて……!)ハァハァ…
町娘「大丈夫!? 血がついて……! どこを斬られたの……?」
青年「いや……ボクはどこも斬られてないよ」
町娘「そうなの!? でも、よかった……あなたが無事で……!」
町娘「ごめんなさい、ごめんなさい……全部あたしが悪いの……」グスッ…
青年「(なにがなんだかサッパリだけど──)いいんだよ」
町娘「やりすぎなのよ、アンタはァッ!」バッ
覆面「へ?」
ゴシャッ!!!
町娘のドロップキックが、覆面に炸裂した。
覆面「あがっ……!」ヨロッ…
覆面「ち、ちくしょう、覚えてやがれ!」ダダダッ
町娘(もう……ビビらせるだけっていったのに、まさか斬るなんて……!)ハァハァ…
町娘「大丈夫!? 血がついて……! どこを斬られたの……?」
青年「いや……ボクはどこも斬られてないよ」
町娘「そうなの!? でも、よかった……あなたが無事で……!」
町娘「ごめんなさい、ごめんなさい……全部あたしが悪いの……」グスッ…
青年「(なにがなんだかサッパリだけど──)いいんだよ」
剣士「いってぇ~……」ズキズキ…
剣士(相手を斬るフリして自分の腕を斬るわ、ドロップキックされるわ……散々だな)
剣士(だけど──)
町娘「行こっ!」
青年「う、うん……!」
剣士(俺の血が二人の赤い糸になったみたいだし、よしとするか)
剣士(あれはもう、俺の剣でも斬れないだろう)
~おわり~
剣士(相手を斬るフリして自分の腕を斬るわ、ドロップキックされるわ……散々だな)
剣士(だけど──)
町娘「行こっ!」
青年「う、うん……!」
剣士(俺の血が二人の赤い糸になったみたいだし、よしとするか)
剣士(あれはもう、俺の剣でも斬れないだろう)
~おわり~
第三話『斬られる剣士』
ギィンッ!
ワァァァ……! ワァァァ……!
友人「ハァ、ハァ……やったぞぉっ! 俺の勝ちだぁっ!」
剣士「ぐっ……!」
剣士(正面からまっすぐ攻めたけど、まっすぐ押し切られたか……!)
剣士(これで俺が王国軍の精鋭として、剣を振るう道は絶たれた……!)
……………
………
…
剣士「…………!」ガバッ
剣士(また……あの時の夢か……)ハァハァ…
剣士(もし、あの試合で勝てていたなら、今頃俺はどうなってたんだろうか……)
ギィンッ!
ワァァァ……! ワァァァ……!
友人「ハァ、ハァ……やったぞぉっ! 俺の勝ちだぁっ!」
剣士「ぐっ……!」
剣士(正面からまっすぐ攻めたけど、まっすぐ押し切られたか……!)
剣士(これで俺が王国軍の精鋭として、剣を振るう道は絶たれた……!)
……………
………
…
剣士「…………!」ガバッ
剣士(また……あの時の夢か……)ハァハァ…
剣士(もし、あの試合で勝てていたなら、今頃俺はどうなってたんだろうか……)
< 剣士の家 >
週一回、剣士の家では剣術の稽古が行われている。
剣士「みんな、木剣はちゃんと持ってきてるな?」
「はいっ!」 「はーいっ!」 「はいっ!」
剣士「じゃあ、今日は素振りからだ!」
ただし、生徒はみんな子供である。
剣士(くっ……今朝、あんな夢見ちまったから)
剣士(なんで俺が子供たちの相手しなきゃならない、とか思っちまってる)
剣士(くそっ……そんな自分にもイラついてきやがる……)
剣士(平常心、平常心……)
剣士「──ん?」
週一回、剣士の家では剣術の稽古が行われている。
剣士「みんな、木剣はちゃんと持ってきてるな?」
「はいっ!」 「はーいっ!」 「はいっ!」
剣士「じゃあ、今日は素振りからだ!」
ただし、生徒はみんな子供である。
剣士(くっ……今朝、あんな夢見ちまったから)
剣士(なんで俺が子供たちの相手しなきゃならない、とか思っちまってる)
剣士(くそっ……そんな自分にもイラついてきやがる……)
剣士(平常心、平常心……)
剣士「──ん?」
生徒の中で一人だけ、メチャクチャな素振りをしている少年がいた。
少年「えいっ、やぁっ、とおっ!」ブオンブオンッ
剣士(この子は……子供たちの中で一番才能を感じる生徒だ)
剣士(将来的には、多分だけど、俺より強くなるだろう)
剣士(だけど、こういう時は叱らないとな)
剣士「コラ、ちゃんと素振りしなきゃダメじゃないか! ふざけちゃダメだ!」
少年「ちゃんと……?」ピクッ
少年「だったら先生も、ちゃんと教えてよ。さっきからずっとイライラしてるじゃん」
剣士「なっ……!(見透かされてた……!?)」
少年「そういえば先生ってさ、むかし王国軍のエリート剣士を目指してて」
少年「いいところまで行ったけど、結局ダメだったんでしょ?」
少年「その時のことを思い出して、イラついてんじゃないのぉ~?」
剣士「…………」プルプル…
少年「えいっ、やぁっ、とおっ!」ブオンブオンッ
剣士(この子は……子供たちの中で一番才能を感じる生徒だ)
剣士(将来的には、多分だけど、俺より強くなるだろう)
剣士(だけど、こういう時は叱らないとな)
剣士「コラ、ちゃんと素振りしなきゃダメじゃないか! ふざけちゃダメだ!」
少年「ちゃんと……?」ピクッ
少年「だったら先生も、ちゃんと教えてよ。さっきからずっとイライラしてるじゃん」
剣士「なっ……!(見透かされてた……!?)」
少年「そういえば先生ってさ、むかし王国軍のエリート剣士を目指してて」
少年「いいところまで行ったけど、結局ダメだったんでしょ?」
少年「その時のことを思い出して、イラついてんじゃないのぉ~?」
剣士「…………」プルプル…
剣士「うるさいッ!!!」
剣士「お前みたいな子供になにが分かる!」
剣士「いくら才能があったって、まだまだお前は親のスネかじりなんだ!」
剣士「親の金で剣術習ってるんだから、大人しく俺のいうとおりに練習しろ!」
剣士「────!」ハッ
シ~ン……
少年「…………」
剣士(しまった……俺はなんてことをっ! なにやってんだ!)
剣士(自分の心をコントロールできないようじゃ、剣士失格だ、俺は……!)
少年「…………」ウルッ…
剣士「(涙!?)ご、ごめっ──」
少年「ありがとう、先生!」
剣士「へ!?」
少年「おかげで新技のヒントが掴めたよ! ちょっとやってみていい!?」
剣士「いいけど……」
剣士「お前みたいな子供になにが分かる!」
剣士「いくら才能があったって、まだまだお前は親のスネかじりなんだ!」
剣士「親の金で剣術習ってるんだから、大人しく俺のいうとおりに練習しろ!」
剣士「────!」ハッ
シ~ン……
少年「…………」
剣士(しまった……俺はなんてことをっ! なにやってんだ!)
剣士(自分の心をコントロールできないようじゃ、剣士失格だ、俺は……!)
少年「…………」ウルッ…
剣士「(涙!?)ご、ごめっ──」
少年「ありがとう、先生!」
剣士「へ!?」
少年「おかげで新技のヒントが掴めたよ! ちょっとやってみていい!?」
剣士「いいけど……」
木剣を構える剣士と少年。
少年「今からボクが殴りかかるから、反撃してみて!」ザッ…
剣士「わ、分かった……」
少年「えいっ!」ヒュッ
剣士「とうっ」ブンッ
少年は体の小ささを利用して剣をかわすと──
少年「ここっ!」シュッ
ボゴォッ!
剣士のスネに木剣をブチ当てた。
剣士「うっ……うごぉぉぉっ!」ゴロゴロ…
少年「やったぁ!」
少年「今からボクが殴りかかるから、反撃してみて!」ザッ…
剣士「わ、分かった……」
少年「えいっ!」ヒュッ
剣士「とうっ」ブンッ
少年は体の小ささを利用して剣をかわすと──
少年「ここっ!」シュッ
ボゴォッ!
剣士のスネに木剣をブチ当てた。
剣士「うっ……うごぉぉぉっ!」ゴロゴロ…
少年「やったぁ!」
少年「このところ、なにか新しい必殺技が思いつきそうで思いつかなかったんだけど」
少年「先生のおかげで思いつけたよ! ありがとう!」
剣士「いだだ……いやぁ~」ズキズキ…
剣士(みごとな一撃だった……本物の剣だったらスネを斬られてたところだ)
剣士(さっきの変な素振りは、それを模索してたってところか)
剣士(それに全く気づけなかったことといい、怒鳴っちまったことといい……)
剣士(俺もまだまだだな)
剣士(まだまだってことはつまり、この町でも俺は進歩できるってことだ!)
剣士「みんな、稽古を再開するぞっ! 君も今度はちゃんと素振りしろよ!」
少年「はいっ!」
「えいっ!」 「はあっ!」 「でやっ!」
剣士(エリートになれなくても……剣の道を歩むことはできる……)
~おわり~
少年「先生のおかげで思いつけたよ! ありがとう!」
剣士「いだだ……いやぁ~」ズキズキ…
剣士(みごとな一撃だった……本物の剣だったらスネを斬られてたところだ)
剣士(さっきの変な素振りは、それを模索してたってところか)
剣士(それに全く気づけなかったことといい、怒鳴っちまったことといい……)
剣士(俺もまだまだだな)
剣士(まだまだってことはつまり、この町でも俺は進歩できるってことだ!)
剣士「みんな、稽古を再開するぞっ! 君も今度はちゃんと素振りしろよ!」
少年「はいっ!」
「えいっ!」 「はあっ!」 「でやっ!」
剣士(エリートになれなくても……剣の道を歩むことはできる……)
~おわり~
第四話『エリートを斬る』
< 町 >
ザワザワ…… ガヤガヤ……
剣士「あの、なにかあったんですか?」
夫「今日から国から派遣された騎士が、町に駐在することになったんだ」
妻「で、みんなでどんな騎士なのか見にきてるのよ~」
剣士「へぇ~」
剣士(騎士といえば、生まれからしてちがう、エリート中のエリート……)
剣士(それが町に駐在するってことは、この町は国の保護下に入ったも同然ってことだ)
剣士(そりゃあ、盛り上がるよな……。さて、どんな奴なんだろ?)
女騎士「今日からこの町に駐在することになった。みんな、よろしく頼む」
剣士(お、女ァ!?)
< 町 >
ザワザワ…… ガヤガヤ……
剣士「あの、なにかあったんですか?」
夫「今日から国から派遣された騎士が、町に駐在することになったんだ」
妻「で、みんなでどんな騎士なのか見にきてるのよ~」
剣士「へぇ~」
剣士(騎士といえば、生まれからしてちがう、エリート中のエリート……)
剣士(それが町に駐在するってことは、この町は国の保護下に入ったも同然ってことだ)
剣士(そりゃあ、盛り上がるよな……。さて、どんな奴なんだろ?)
女騎士「今日からこの町に駐在することになった。みんな、よろしく頼む」
剣士(お、女ァ!?)
女騎士「さて……私が女ということで、不安に思っている人間も多いことだろう」
女騎士「そういえば、この町には半ば便利屋のような腕利きの剣士がいるときく」
剣士「!」ピクッ
剣士「あ……多分それは俺のことかと……(他に剣士なんていないしな)」
女騎士「フフフ……君か」
女騎士「なぁ、勝負をしないか? どちらが町一番の戦士か、この場で決めるんだ」
剣士「いや……俺は勝負なんて……」
女騎士「逃げるのか……まあいい」
女騎士「剣で戦う私と、剣で遊んでいる君では、勝負になるはずがないものな」
剣士「!」カチン
剣士「聞き捨てならないな……今の言葉」
剣士「いいだろう、受けて立ってやる!」
女騎士「そういえば、この町には半ば便利屋のような腕利きの剣士がいるときく」
剣士「!」ピクッ
剣士「あ……多分それは俺のことかと……(他に剣士なんていないしな)」
女騎士「フフフ……君か」
女騎士「なぁ、勝負をしないか? どちらが町一番の戦士か、この場で決めるんだ」
剣士「いや……俺は勝負なんて……」
女騎士「逃げるのか……まあいい」
女騎士「剣で戦う私と、剣で遊んでいる君では、勝負になるはずがないものな」
剣士「!」カチン
剣士「聞き捨てならないな……今の言葉」
剣士「いいだろう、受けて立ってやる!」
数十人の町民が見守る中、試合をすることになった剣士と女騎士。
剣士(こんな風に試合をするなんて、何年ぶりかな……)
女騎士「いくぞっ!」ダッ
キィンッ! ギンッ! キンッ!
剣士(速いっ! 口だけじゃないな、この女! さすがだ!)
女騎士「どうした、どうした!?」
ガッ! ギィンッ! キンッ!
剣士(あ、ヤバイ。これ以上下がったら、野次馬が危ない──)
女騎士「そこだっ!」シュッ
ピタッ……
一瞬のスキを突かれ、剣士の首筋に刃が突きつけられた。
剣士「ぐ……! ま、参った……!」
女騎士「フッ、私の勝ちだな」
剣士(こんな風に試合をするなんて、何年ぶりかな……)
女騎士「いくぞっ!」ダッ
キィンッ! ギンッ! キンッ!
剣士(速いっ! 口だけじゃないな、この女! さすがだ!)
女騎士「どうした、どうした!?」
ガッ! ギィンッ! キンッ!
剣士(あ、ヤバイ。これ以上下がったら、野次馬が危ない──)
女騎士「そこだっ!」シュッ
ピタッ……
一瞬のスキを突かれ、剣士の首筋に刃が突きつけられた。
剣士「ぐ……! ま、参った……!」
女騎士「フッ、私の勝ちだな」
< 剣士の家 >
剣士(完敗だな……)
剣士(試合は久しぶり、とか野次馬に気を取られた、なんて言い訳にもならない)
剣士(ま、元々強さをウリにしてたわけじゃないから、商売に差し支えないけど……)
剣士(やっぱへこむよなぁ……)フゥ…
剣士(それにしてもあの女騎士……)
剣士(あんなに強いのに、なんでこんな田舎町に来ることになったんだ?)
剣士(今、王国軍は大盗賊団と戦ってるハズだってのに……)
ワァァ…… キャァァ……
剣士「?」
「コソドロだァ!」 「またあいつ盗みやがった!」 「捕まえろおっ!」
剣士(またコソドロか……アイツも懲りないな)
剣士(どれどれ、俺が退治してやるか)
剣士(完敗だな……)
剣士(試合は久しぶり、とか野次馬に気を取られた、なんて言い訳にもならない)
剣士(ま、元々強さをウリにしてたわけじゃないから、商売に差し支えないけど……)
剣士(やっぱへこむよなぁ……)フゥ…
剣士(それにしてもあの女騎士……)
剣士(あんなに強いのに、なんでこんな田舎町に来ることになったんだ?)
剣士(今、王国軍は大盗賊団と戦ってるハズだってのに……)
ワァァ…… キャァァ……
剣士「?」
「コソドロだァ!」 「またあいつ盗みやがった!」 「捕まえろおっ!」
剣士(またコソドロか……アイツも懲りないな)
剣士(どれどれ、俺が退治してやるか)
< 町 >
剣士(お、いたいた)スッ…
剣士(また叩きのめしてやる)
コソドロ「へっへっへ~、オイラが捕まるもんかよォ!」スタタッ
コソドロ「──ん?」
女騎士「…………」チャキッ
剣士(なんだ女騎士がいたのか。なら任せるか……)
コソドロ「どけ、どけ、女ァ~!」タタタッ
女騎士「う、ううっ……」ガチガチ…
剣士(ど、どうしたんだ!?)
剣士(お、いたいた)スッ…
剣士(また叩きのめしてやる)
コソドロ「へっへっへ~、オイラが捕まるもんかよォ!」スタタッ
コソドロ「──ん?」
女騎士「…………」チャキッ
剣士(なんだ女騎士がいたのか。なら任せるか……)
コソドロ「どけ、どけ、女ァ~!」タタタッ
女騎士「う、ううっ……」ガチガチ…
剣士(ど、どうしたんだ!?)
女騎士(やはり……体が動かない! 試合であれば平気なのに──)ガタガタ…
女騎士(“本番”だと……緊張してしまって……)ガタガタ…
コソドロ「どけどけぇ~っ!」タタタッ
女騎士「ひっ……!」
ガンッ!
コソドロ「あぐっ……」ドサッ…
剣士が投げた剣の柄が当たり、コソドロは失神した。
女騎士「あ……」
ザワザワ……
「ありがとう、剣士さん!」 「コソドロめ!」 「とっつかまえろ!」
「今女騎士さん、ビビってなかった?」 「マジ?」 「エリートなのに……」
町民から、剣士への称賛と、女騎士への懐疑の声が入り混じる。
女騎士(うっ……)
剣士「…………」
女騎士(“本番”だと……緊張してしまって……)ガタガタ…
コソドロ「どけどけぇ~っ!」タタタッ
女騎士「ひっ……!」
ガンッ!
コソドロ「あぐっ……」ドサッ…
剣士が投げた剣の柄が当たり、コソドロは失神した。
女騎士「あ……」
ザワザワ……
「ありがとう、剣士さん!」 「コソドロめ!」 「とっつかまえろ!」
「今女騎士さん、ビビってなかった?」 「マジ?」 「エリートなのに……」
町民から、剣士への称賛と、女騎士への懐疑の声が入り混じる。
女騎士(うっ……)
剣士「…………」
類似してるかもしれないスレッド
- 美也「みゃーだって……女の子なんだよ?」 (351) - [45%] - 2012/7/13 23:16 ★
- 剣心「薫殿、お昼ご飯はまだでござるか・・・?」 (305) - [44%] - 2014/8/16 18:45 ☆
- 姉「あっ……あぁっ……あっあっあぁっあっっっ」 (394) - [44%] - 2011/3/2 2:15 ★★
- 上条「インデックス…暑いから裸にならないか?」 (148) - [44%] - 2012/8/26 3:01 ☆
- チルノ「ぜったいさいきょーの天才になってやる!」 (61) - [44%] - 2017/9/20 2:00
- 佐天「能力者なんて……みんないなくなればいいのに」 (181) - [44%] - 2010/2/10 17:15 ★★
トップメニューへ / →のくす牧場書庫について