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元スレ胡桃「そーゆーのいーから幸せにする!」洋榎「ああ……絶対……!」
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いろんなことが、印象に残ってる。
多分知らない人に言っても、何が面白いのかさっぱりだと思う。
それでも、私にとってはとても楽しい思い出だ。
内輪ネタに過ぎなくても、本当に、楽しい一日だったと思う。
料理も、美味しかったしね。
哩ちゃんは本当にいいお嫁さん兼料理人になれると思う。
お酒もとっても美味しくて、何人かは居眠りするレベルで飲んでしまっていた。
私はそこまで飲んでなかったけど、なんとなく、気分が良くて。
軽く外に出て、風を浴びていた。
ひんやりとした風が酔いと眠気をつれていき、頭を再起動させる。
洋榎「よう大将、飲んどる?」
ケラケラ笑いながら、貴女が声をかけてきた。
胡桃「そういうセリフ、自分がたくさん飲んでから言うべきじゃない?」
貴女はいつでもハイテンションで、普段通り振る舞うだけで、誰もが飲んでいると思い込む。
ましてや貴女はあまり顔が赤くならないので、親しい者ほど飲んでるものと勘違いする。
洋榎「なんや、気付いとったん?」
けれども私は、貴女のことを目で追ってたから。
無意識に、ずっと見ていたから。
各自好き放題コップにお酒を注ぐ中、貴女はずっとソフトドリンクをついでいた。
まるでカクテルかチューハイですと言わんばかりに、必要もないマドラーをプラ製コップに突き刺して。
胡桃「気付くよ、これでも観察眼には自信があるし」
それで、貴女がお酒を飲む気がないことに気が付いた。
でも――その理由までは、分からない。
普段はあんなに率先して飲んでいるのに。
飲むようになっていたのに。
洋榎「……ちょっと、な」
洋榎「冷静に、話したいこととかあったから」
貴女は、頭を掻いて。
視線をあちこち泳がせて。
言い難いこと――それも多分、照れくさいことなんだろうと思わされて。
洋榎「まあ、なんや」
洋榎「ちょっと、時間とかあるかな」
こちらを向いて、頭を掻くのをやめて。
それでも視線は私でなく、やや上空――岩手に比べて星の見えない夜空を向いてて。
洋榎「ちょっと、歩かへん?」
視線というスコープは確かに上を向いてズレていたのに、
その言葉はまっすぐに私の心を撃ちぬいた。
胡桃「……ちょ、ちょっとだけならっ!」
夜空を見ながら他愛のない話をして。
そよ風のなか、クスクスと笑い合って。
公園で、一休みして。
洋榎「……最近、漫とよう遊んどるな」
急に貴女が、そんなことを切り出した。
胡桃「へ?」
漫ちゃんの恋の話は、秘密のことだ。
そう思ったから大分話をはぐらかしたのに、
どうやら漫ちゃんは酔ってそのことを教えてしまっていたらしい。
結局、こっそり恋の相談に乗っていたとカミングアウトしてしまう。
同性の後輩の恋愛相談に乗るのの何がまずいんですかねぇ(すっとぼけ)
洋榎「ふうん……」
洋榎「せ、せやったら、その……」
貴女の顔が、みるみる内に赤くなっていく。
洋榎「う、ウチの恋愛相談にも乗ってくれへんかな~~~……なんて」
胡桃「……へ?」
恋愛相談。
それは、貴女が誰かに恋しているということを意味していて。
その相手が誰なのか、その時はまだ分かっていなかったけど。
落ち込むというより、ちょっとだけ、嬉しくて。
少なくとも自分が、恋愛相談をする相手に選べるくらいの仲なのだと思うと、
胡桃「しょうがないなぁ」
としか言えなくて。
思わず笑みを零しながら、貴女の隣に改めて腰掛けた。
胡桃「それにしても……好きな人なんて、居たんだね」
洋榎「う……まあ、な」
洋榎「最初は……そんなんじゃなかってん」
洋榎「ただ、昔の知り合い。その程度やったんや」
洋榎「でも……」
洋榎「久しぶりに会ったら、すっごい話すんが楽しくて」
洋榎「ついつい、一緒に居てもうて」
洋榎「……最初は、ただの友情やと思っとったんやけどな」
洋榎「セーラの奴……一回、彼女と別れかけとんねん」
洋榎「遠距離で、いろいろあったらしくてな」
洋榎「そん時、復縁するまで色々話聞いとって――自覚、した」
洋榎「ああ、それじゃあウチのあの気持ちも、恋なのかもしれん――って」
洋榎「……そんで、な」
洋榎「その……」
洋榎「い、いいんちょは、えと……」
洋榎「な、なんて告白されると……嬉しい?」
胡桃「えっ」
言葉に、詰まる。
なんと答えたらいいのか。
ここに来て、哩ちゃんでカンニングしたツケが来た。
胡桃「あ、あの、その、えと」
貴女に告白されるシーンを試しに思い描いて見る。
顔が爆発するだけで、どれもこれも「すごくいい」以外の感想が出なかった。
役に立たないな、我ながら。
胡桃「……わ、私なら……」
胡桃「好きって気持ちを、ぶつけられるだけで、すごく嬉しいよ」
だから、言った。
素直な言葉を。
私なら、どうかって聞き方をされたから。
私なら、貴女の紡いだ言葉なら、何だって嬉しいから。
洋榎「そ、そう……?」
洋榎「あの、えと……」
洋榎「じゃ、じゃあ、ロールプレイングっちゅーかなんっちゅーか……」
洋榎「こ、告白のセリフ今考えて言ってみるから、その、添削してほしいなあ、なんて///」
珍しく、乙女チックに指とお指とでツンツンなんてするもんだから。
顔の赤みが増しているのをごまかすように、後ろを向いた。
胡桃「しょうがないねっ!」
胡桃「私が特別、聞いてあげるよっ!」
胡桃「だから、さあ。早く告白してよね!」
洋榎「あー、その、なんや」
洋榎「初めて会ったときはなんやねんこいつって思ったし」
洋榎「別にその、運命の出会いをびびっと感じたわけでもないねん」
洋榎「でも再会してみたら不思議とビビッと来たっちゅーかなんちゅーか……」
洋榎「一緒におるとめっちゃ楽しいし……」
洋榎「なんだか胸が高鳴っとってん」
洋榎「あ、見た目は別に好みってわけちゃうで!」
洋榎「最近まで自分はノーマルやと思っとったし」
洋榎「でもそーいうのをぶっ壊すっちゅーかなんちゅーか」
洋榎「まさにあの出会いはベルリンの壁をも乗り越えるっちゅーか」
洋榎「まあ、ベルリンの壁崩壊とかリアルタイム世代ちゃうし、教科書でちょろっと読んだだけやけd」
胡桃「そーゆーのいーから愛の告白!」
洋榎「あ……好きです……」
胡桃「ネタとか言わないから、素直な言葉でわかりやすく!」
洋榎「……ホンマに、好きです。ウチと付き合って下さい」
洋榎「……って、結局突っ込まれてもーたな」 ハハ
胡桃「もう」
胡桃「でも……その方が、らしいかもね」
洋榎「……そう、かな」
洋榎「伝わるかな」
胡桃「……きっとね」
洋榎「……」
胡桃「……」
洋榎「……」
胡桃「……あの、さ」
洋榎「ん?」
思わず、言ってしまった。
それから、急速に顔が真っ赤になるのを感じる。
次いで、顔が赤から青へと変色した。
胡桃(わ、わわ私何を言って――――!?)
貴女は、ちゃんと覚悟をしていたのに。
お酒もやめて、真面目に考え、相談してくれたのに。
私は、勢いなんてものだけで、聞いてしまった。
その告白対象は、私なのかと。
洋榎「……」
まさかそう言われるとは思っていなかっただろう貴女は目を丸くする。
でも、言った。
こんな私のそんな言葉にも、貴女は真摯に応えてくれた。
それは、チクリと胸を刺して。
それでも、なんとなく、分かっていたことで。
恋愛感情がなくても、一緒に遊んできたことや、
想ってくれたことは、嘘じゃないってことだから。
胡桃「……そう」
下心抜きで、一番の親友になれたのかもしれない。
そう、自分に言い聞かせて。
胡桃「なら、ほっとした、かな」
笑って、みせた。
それは、少し寂しいものだったかもしれないけど。
達観めいたものだったかもしれないけど。
でも嘘偽りのない、本当の笑顔。
胡桃「素直に、応援できるし」
よっこらせ、とややオーバーなリアクションで立ち上がる。
歩み寄って、座ったままの貴女の頭にそっと手を置く。
ここで相手がちゃちゃのんとかその辺りだったりして…
的な展開から胡桃ちゃんが猛アプローチして振り向かせるのもアリ
諦めて応援するってのもアリ
的な展開から胡桃ちゃんが猛アプローチして振り向かせるのもアリ
諦めて応援するってのもアリ
胡桃「……頑張ってよ」
胡桃「今日は、イブなんだから」
洋榎「……ああ」
胡桃「応援、してるからね」
洋榎「ありがとな」
胡桃「……ほんとだよ」
胡桃「でも、特別許してあげよう!」
胡桃「普段は煽り合ったりするけど、私は、大切な友達だって思ってるから」
洋榎「……ウチもやで」
本当は、友達以上になりたかったけど。
胡桃「ホント、フラれたりしないでよ」
胡桃「……誰よりも、幸せになってほしいと思ってるんだから」
――ねえ、この意味わかる?
洋榎「……照れるわ、そこまで言われると」
多分、一生、わかってもらえないままだろうね。
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