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元スレ淡「陽に照らされて星は輝く」
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原作設定や原作展開を無視してオリジナル展開や独自解釈があります
あくまでパラレルワールド的に捉えてください
麻雀そのものは弱いので、その辺は結構適当です。積み棒計算はできないので省きます
あくまでパラレルワールド的に捉えてください
麻雀そのものは弱いので、その辺は結構適当です。積み棒計算はできないので省きます
淡「ツモ。6000,3000」
プロ子「む……」
妹子「うぅ……」
爺「ほほ、これはこれは」
爺「終局じゃな。また淡のトップか。うむうむ、それでこそじゃ」
プロ子「本当に、お孫さんの実力は目を見張るものがありますね。これでまだ中学生とは、
将来が楽しみです」
爺「応とも。この子の両親は牌に触りもせず会社を大きくすることばかり考えておったから、
孫の代には期待しておらなんだが、よもやこれほどの逸材があの二人から産まれるとは。
ワシの遺伝子が受け継がれておる証拠じゃの。見てみい、ワシとて現役プロの君と比べても見劣りせん戦績じゃ」
プロ子「む……」
妹子「うぅ……」
爺「ほほ、これはこれは」
爺「終局じゃな。また淡のトップか。うむうむ、それでこそじゃ」
プロ子「本当に、お孫さんの実力は目を見張るものがありますね。これでまだ中学生とは、
将来が楽しみです」
爺「応とも。この子の両親は牌に触りもせず会社を大きくすることばかり考えておったから、
孫の代には期待しておらなんだが、よもやこれほどの逸材があの二人から産まれるとは。
ワシの遺伝子が受け継がれておる証拠じゃの。見てみい、ワシとて現役プロの君と比べても見劣りせん戦績じゃ」
プロ子「大星さんも、もう四十歳若ければスカウトがきていたでしょうね」
爺「ほっほ。言うようになったのう。――それに比べ、お前はなんじゃ妹子」
妹子「うっ……」ビク
爺「半荘五回打って全てラスとは……情けない。それでもワシの孫か?」
妹子「ご、ごめんなさい……」
爺「まあ、プロになるというワシの夢は淡が遂げてくれるじゃろうし、もうそれでよいわ」
淡「……」
淡「じゃあ、私部屋に戻って少し休むね」ガタ
爺「ああ待ちなさい淡。お前、本当に今年のインターミドルには出んのか?」
爺「ほっほ。言うようになったのう。――それに比べ、お前はなんじゃ妹子」
妹子「うっ……」ビク
爺「半荘五回打って全てラスとは……情けない。それでもワシの孫か?」
妹子「ご、ごめんなさい……」
爺「まあ、プロになるというワシの夢は淡が遂げてくれるじゃろうし、もうそれでよいわ」
淡「……」
淡「じゃあ、私部屋に戻って少し休むね」ガタ
爺「ああ待ちなさい淡。お前、本当に今年のインターミドルには出んのか?」
淡「……うん」
爺「何故じゃ。史上初のインターミドル個人戦三連覇……お前なら容易かろうに。のう、プロ子さん」
プロ子「確かに、貴女の実力は中学生の内では頭抜けているわ。絶対とは言わないまでも、
おそらく三連覇もできると思うわ」
淡「……だから嫌なのよ」ボソ
爺「む?」
淡「なんでもない。今年受験だしね、勉強しないと」
爺「……まあ、お前がそう決めたのなら強要はせんが。なら淡、お前どこに進学するつもりじゃ?」
淡「まだ決めてない。別にどこでもいいよ」
爺「何故じゃ。史上初のインターミドル個人戦三連覇……お前なら容易かろうに。のう、プロ子さん」
プロ子「確かに、貴女の実力は中学生の内では頭抜けているわ。絶対とは言わないまでも、
おそらく三連覇もできると思うわ」
淡「……だから嫌なのよ」ボソ
爺「む?」
淡「なんでもない。今年受験だしね、勉強しないと」
爺「……まあ、お前がそう決めたのなら強要はせんが。なら淡、お前どこに進学するつもりじゃ?」
淡「まだ決めてない。別にどこでもいいよ」
爺「そりゃいかん。高校は名門麻雀部のあるところに決まっておるじゃろう。高校で名門といえば……千里山なんかどうじゃ? あそこは強いぞ。ちょうど近くに別荘も持っておるしの」
淡「いやだよ、大阪なんて。東京から出る気はないから」
爺「そうか? じゃったら……やはり白糸台かのう。昨年は優勝しておるし、なにより昨年、強力な一年生が入ったらしいしの」
淡「強い一年?」
爺「うむ、確か名前は……宮永照、とかいったか」
淡「知らない。どうでもいいよそんなの。じゃあ私戻るから」ガチャ
爺「おい淡、進学先は白糸台でいいんじゃな?」
淡「まだ決めてないってば」バタン
淡「いやだよ、大阪なんて。東京から出る気はないから」
爺「そうか? じゃったら……やはり白糸台かのう。昨年は優勝しておるし、なにより昨年、強力な一年生が入ったらしいしの」
淡「強い一年?」
爺「うむ、確か名前は……宮永照、とかいったか」
淡「知らない。どうでもいいよそんなの。じゃあ私戻るから」ガチャ
爺「おい淡、進学先は白糸台でいいんじゃな?」
淡「まだ決めてないってば」バタン
自室
淡「はあ……」ゴロン
淡(インターミドル……やっぱり出るべきだったかな。もしかしたら今年は……)
淡(ううん、どうせ同じだよ。私より強い人なんているわけない……)
物心ついた頃から祖父の趣味の麻雀に付き合わされていた私は、気がつけば祖父を超えていた。
祖父は私のために家にプロを呼んで指導させてくれた。強い人と打つのは楽しくて、もっと強くなりたいと思った。それは私が一番麻雀を好きだった時期だ。
淡(……でも、二年前)
中学に入った私は一年生で麻雀部のレギュラーを取り、インターミドルに出場した。
――そして、愕然とした。同年代の子たちの、あまりの弱さに。
淡「はあ……」ゴロン
淡(インターミドル……やっぱり出るべきだったかな。もしかしたら今年は……)
淡(ううん、どうせ同じだよ。私より強い人なんているわけない……)
物心ついた頃から祖父の趣味の麻雀に付き合わされていた私は、気がつけば祖父を超えていた。
祖父は私のために家にプロを呼んで指導させてくれた。強い人と打つのは楽しくて、もっと強くなりたいと思った。それは私が一番麻雀を好きだった時期だ。
淡(……でも、二年前)
中学に入った私は一年生で麻雀部のレギュラーを取り、インターミドルに出場した。
――そして、愕然とした。同年代の子たちの、あまりの弱さに。
一年間戸惑い続けた私は再びインターミドルに出場して……結局、期待は落胆に散った。
淡(私と互角に戦える人なんてどこにもいなかった。全国にさえ)
淡(中学の麻雀部の皆は私を怖がって誰も私と打ちたがらなくなって、三年生に上がる前に私は退部した)
その時に私はようやく気付いた。私は他人とは違うのだと。
まるで星のように、見上げてくれる人はいても、隣にいてくれる人はいないのだと。
そうと気づいたら、もう麻雀なんて楽しくもなんともなくなった。麻雀への情熱も、すっかり冷めてしまっていた。
淡「プロ、かぁ」
淡(正直、プロの道にそこまで魅力を感じないんだよね)
確かにプロには私より強い人も大勢いるだろう。彼女らと打っている間は、きっと楽しく麻雀に没頭できると思う。
でも、五年後、十年後はどうか?
断言できる。十年もすれば、私はきっと世界最強の雀士になる。数多のプロを足蹴にもかけない、最強の打ち手に。
淡「……そんなことになったら、私はどうすればいいの?」
そしてきっとその時こそ、私は真の意味での孤独を味わうことになると思う。
淡「そんなのは……やだ」
淡「そんな思いを味わうくらいなら、もういっそ麻雀なんて……」
断言できる。十年もすれば、私はきっと世界最強の雀士になる。数多のプロを足蹴にもかけない、最強の打ち手に。
淡「……そんなことになったら、私はどうすればいいの?」
そしてきっとその時こそ、私は真の意味での孤独を味わうことになると思う。
淡「そんなのは……やだ」
淡「そんな思いを味わうくらいなら、もういっそ麻雀なんて……」
祖父は猛反対するだろうが、別にいい。だいたい、祖父は自分が遂げられなかった『プロになる』という夢を私に押し付けているだけだ。
淡「あれだけ手加減されて、わざと指し込んでもらってるっていうのに、『現役プロに見劣りしない戦績』だなんて、馬鹿みたい」
そんな人に私の進路をとやかく言われる筋合いなんてない。
別に白糸台に入らなくたっていい。どこの麻雀部に入ったって同じだ。
ただ、その年の優勝校が変わるだけ。
もう麻雀なんて、どうでもいい――。
淡「……イライラするなぁ……」
翌年
私は高校生になった。祖父の強い希望で、結局白糸台高校に入学することになった。
友「大星さん、おはよう!」
淡「おはよ」
友「ねえねえ大星さん、もう入る部活決めた?」
淡「うーん……一応、麻雀部に入ろうかなって」
淡(てか、おじいちゃんに絶対入れって言われたしなぁ……)
友「あ、大星さんもなんだ。私もだよ!」
淡「友ちゃんも?」
友「うん。やっぱり白糸台って言ったら麻雀部だよね。インハイ二連覇だよ、二連覇。すごいよね」
淡「あー……うん、そうだね」
淡(ふーん、二連覇してたんだ。興味なかったから知らなかった)
友「それになんと言っても、白糸台には宮永先輩がいるからね!」
淡「宮永? 誰?」
友「ええ!? 宮永照知らないの!? インハイ二冠王者の、高校最強の選手だよ!」
淡「ふーん」
淡(ああ、そういえばおじいちゃんが言ってたっけ)
友「あ、さては大星さん、初心者でしょ? これから麻雀をやろうっていうなら、宮永照は知っといた方がいいよ」
淡「……友ちゃんはどうなの?」
友「えへへ、私はこれでも小学三年生の頃から麻雀をやってるし、去年は個人戦で県ベスト16まで行ったんだよ!」
淡「ふーん」
友「ねえ、体験入部はどうするの?」
淡「体験入部?」
友「正式な入部までに、三回体験入部の機会があるんだよ。そのときに部の人と打ってもらったり
できるんだって。で、四回目に入部試験をするの。
すごいよね、気合い入ってるよね白糸台。さすがって感じ」
淡「それいつやるの?」
友「今日一回目があるよ。あーでも今日は私都合悪いから、二回目から参加するつもり」
淡「ふーん。行ってみようかな」
友「お、やる気だね。でも気をつけてね。間違っても二軍の人と打っちゃだめだからね。
白糸台は二軍でも県代表クラスの実力だって言うし」
淡「うん。分かった」
放課後
淡「麻雀部……ここか」ガラ
淡「すいません、体験入部しにきたんですけど」
A子「はーい。いらっしゃーい。どうぞ入って」
淡「失礼します」
淡(うわ、人多いな)
A子「はじめまして。入部希望の人だよね?」
淡「まあ、一応。――あの、宮永照っていう人がいるって聞いたんですけど」
A子「あら、ふふ。貴女も? みんな宮永さんのことを初めに訊くよね。でもごめんね、
いま一軍のメンバーは練習試合でいないの。次の体験入部の日にはいると思うけど」
淡「そうですか」
淡(まあいっか。二軍でも全国レベルらしいし)
A子「じゃあ、さっそく打とうか。中学で部活の経験は?」
淡「二年の終わりに辞めました」
A子「あら、どうして?」
淡「つまんなかったから」
A子「あー……そっか。うん、仕方ないよね。勝てなくて辞めてく子、実はうちも結構多いんだ」
A子「じゃあちょっと待ってね、今空いてる子探すから。――ねえ誰かー。三軍で手の空いてる子いるー?」
淡「あの」
A子「ん? なあに?」
淡「ここにいる中で一番強い人と打ちたいんですけど」
A子「え、でも……」
淡「誰が二軍で一番強いの?」
A子「えーっと、一軍っていうのがつまりスタメンのことで、五人しかいないんだ。
だから二軍のトップっていうと、白糸台で六番目に強いってことなんだけど……」
淡「それでいいよ。誰ですか?」
A子「一応、私……ってことになるんだけど。一軍のいない間、部を任されてるから」
淡「じゃああなたでいいです」
A子「う、うん……じゃあ、ちょっとまってね。二軍からあと二人連れてくるから」タタタ
淡(白糸台の二軍は県代表クラス。なら、彼女らと打てば、自然とインハイのレベルも見えてくる)
淡(もし二軍でも私と渡り合えるくらいに強いなら、高校生の麻雀のレベルにも期待できる)
A子「お待たせ。連れてきたよ」
B子「その子? 二軍と打ちたいなんて言ってるの」
C子「生意気だよね。自信過剰っていうか」
A子「コラ、そんなこと言わないの。この二人は二軍の八位と九位。ごめんね、この二人、
一軍に入れそうにないから最近気が立ってて」
B子・C子「「うるさい」」
A子「じゃあ打とっか。手加減はしなくていいんだよね」
淡「はい。よろしくお願いします」
淡(――見せてよ。白糸台の実力)ゴッ
一週間後
昼休み
友「はぁ~……」
淡「どうしたの? 今朝からずっと溜息ついて」
友「うん、昨日さ、麻雀部の二回目の体験入部行ってみたんだけどさ」
淡「あ、そっか。昨日二回目あったんだっけ」
友「うん。大星さんは来てなかったけど、私一人で行って、打ってもらったんだ。
でも……予想外すぎたよ」
淡「……うん。ほんとにね」
淡(ほんとに予想外だった。インハイ二連覇を達成した白糸台の実力……見誤ってた)
淡(まさか……あんなに弱いなんて)
淡『ツモ。8000オール』
B子・C子『……』
A子『……トびです』ジャラ
淡『……』
A子『あ、あなた……何者なの?』
淡『……失礼します』ガタ
A子『ちょ、ちょっと待って! ね、ねえ! 次はいつくるの?
一週間後にまた体験入部があるから、そのときなら一軍の人が――!』
淡『来ません』
A子『え……?』
淡『もう……ここには来ません』
友「大星さんさ、麻雀部入るの?」
淡「……分かんない。入らないかも」
友「だよね……。私も昨日体験入部行ってそう思った。あんな人たちと打つなんて嫌だよね」
淡「うん。ちょっと弱すg――」
友「強すぎるよね、白糸台。手も足も出なかったよ」
淡「……………………誰と打ったの?」
友「三軍のD子先輩とE子先輩と、体験入部の子。三軍であれだけ強いなんて予想外すぎるよ」
淡「……そっか」
友「あ、私このあと用事あるんだった。ごめん、先に教室戻るね」
淡「うん」
友「じゃあね。三軍に負けた私が言うのもなんだけど、大星さんみたいな初心者は麻雀部
やめといた方がいいよ。
あそこはほんとに強い人しかいないから、きっとすぐつまんなくなって辞めちゃうよ」
淡「……うん。そうだね」
淡「……」
淡(……もういい。入部なんてやめとこう)
淡(結局私は一人ぼっちなんだ。誰も私の隣を歩いてくれない)
そうだ。星は二つ並ばない。誰もいない闇の中で、一人孤独に在るしかない。
もう麻雀なんてやめよう。これ以上孤独感を味わわされるのなんて……耐えられない。
淡「……イライラするのよ。あんたたちが弱いせいで」
淡「弱い奴なんて、皆いなくなっちゃえばいいのに」
あるいは……。
淡(私が……もっと弱くなればいいのかな。そうすれば、もっと麻雀を楽しめるのかな)
淡(教えて……誰か教えてよ。麻雀、楽しくないよ……)
二週間後
放課後
友「じゃあ大星さん、また明日」
淡「うん。また明日」
淡「ふう……HR長引いちゃったな」
あれから、私は一度も牌に触っていない。祖父に何度か誘われたが、体調が悪いと断り続けた。
もう弱い祖父の相手をするのはうんざりだった。プロ子は祖父に気を遣って本気で打ってくれないし、
妹子は話にならないくらい弱い。そもそも、私はもう麻雀なんて打ちたくなかった。
淡(何もやる気がおきない。なんか人生がつまんないよ。はぁ……)
ガラッ
菫「失礼します。大星淡さんはいますか?」
淡「? はい、大星は私だけど」
菫「君か。はじめまして。私は三年の弘世菫だ。よろしく」
淡「なにか用?」
菫「ああ、少し話がある。時間いいか?」
淡「いいけど……」
菫「よし、じゃあ歩きながら話そう。ついてきてくれ」
淡「……?」
廊下
淡「あの」
菫「ん、なんだ?」
淡「もしかして、麻雀部の一軍の人?」
菫「へえ、どうして分かった?」
淡「空気で分かるよ、そんなの」
菫「それはすごいな。A子が言ってた通り、かなりの逸材らしいな」
淡「A子?」
菫「一度目の体験入部のときに、A子と打ったんだろ?」
淡「ああ……」
淡(三人と打ったけど、誰がA子なんだろ。まあいっか)
淡「で、今私たちは麻雀部に向かってると?」
菫「そういうことになるな。今日、入部試験があるんだ。それを受けてもらわないと、
いくら強くても入部できないからな」
淡「あの。申し訳ないんですけど、私麻雀部に入る気ないんで」
菫「どうして?」
淡「そんなの……決まってるでしょ」
淡「弱いからだよ。あなたたちが」
菫「……」
淡「もううんざりなの、弱い人と打つの。体験入部の日、ここで六番目に強い人と打ちました。
――雑魚でした。あれで六位なんて、一軍の実力もお察しって感じだね」
菫「……」
淡「ここって全国で一番強い高校なんでしょ? その高校の六位があんなんじゃ、
インハイのレベルも高が知れてるよ。そりゃ私が出れば全国優勝なんて余裕だろうけど、
でも私はごめんです。迷惑なの。あなたたちなんかと打ったって、きっと……」
きっと、私の中の孤独感が増すだけだ。そして対局の後、対局者は私を怯えた目で見上げるんだ。
まるで、決して手の届かない、宇宙の果てに輝く星を見つめるような目で。
淡「だから、もう麻雀部になんて行かない。用がそれだけなら、私は帰ります」
菫「……可哀想に」
淡「……は?」
菫「君は常に上を目指すタイプの人間なんだな。負けず嫌いだけど、でも常に自分より
強い人間を求めてる。一緒に歩く仲間を欲しがってる。
でも君は今まで、そういう人間に出会えなかったんだな。本当に、不憫でならない」
淡「……そんなの、いるわけないじゃん。星を目指す人なんているわけないでしょ」
菫「いるさ。たとえ宇宙の果ての星だって。あるいは暗い海の底だって。そこに
挑もうする人間はいるんだ。何度打ちのめされても、必死に食らいついて、目標にして、
〝それを楽しいと思える人間〟は、必ずいるんだ」
淡「……」
菫「だからこそ、私は君に麻雀部に入ってほしい」
淡「……どうして?」
菫「簡単だ。――あそこには、宮永照がいるからだ」
淡「宮永、照」
菫「今日の入部試験は、あいつとの対局の結果で合否を出す。もちろん勝てとは言わない。
実力を見るだけだ」
淡「やめた方がいいよ。その人、ここのエースなんでしょ? そんな人に一年生が
勝っちゃったら、申し訳ないし」
菫「ははは」
淡「……何が可笑しいの?」イラ
菫「いや、すまない。まあ一度打ってみるといい」
淡「体験入部の日、そんな風に私のことを小馬鹿にして笑った人と打ったよ。
もう顔も覚えてないけど」
どうやらこの菫とか言う人は、私が宮永照に勝てるはずがないと思っているらしい。
淡(いいよ。面白いじゃん)ゴッ
淡(高校生チャンピオン? 一万人の頂点? 笑わせる。私はそんな頂よりももっと高い、
遥か宙の果てにいるんだ)
それに、ちょうどいい。高校生チャンピオンと打てば、それで全国の高校生のレベルは
つまびらかになる。今日宮永照を下し、彼女より上はいないんだと理解すれば、
私は今度こそ何の未練もなく麻雀なんてやめられる。
淡(――もう終わりにしてやる。何もかも)
菫「さあ、ついたぞ。入ってくれ」ガラ
淡「失礼します」
淡(――あれか。宮永照)
後ろ姿しか見えないけど、どうやら打っているらしい。
周りに人垣ができていて、誰も何も話さない。不気味なほどの静寂だった。
照「――ツモ。12000オール」
淡「……っ」ピク
新入生A「……と、トびです」
新入生B「私も……」
新入生C「わ、私もです……」
菫「ちょうど終わったみたいだな」
照「じゃあ結果を発表します」
照「A子さん」
新入生A「は、はい……」
照「三軍」
新入生A「は、はい。ありがとうございます! よかったぁ……」パァ
照「B子さん」
新入生B「はい」
照「二軍」
菫「お」
部員たち「!」ざわ・・・ざわ・・・
新入生B「あ、ありがとうございます! やったあ!」
照「二軍のF子。繰り下がりで三軍」
F子「はい……」
部員「F子ちゃん、ついに落ちちゃったか……」ヒソヒソ
部員「覚悟してたと思うよ。うちって実力主義だし」ヒソヒソ
部員「でも、あんなに頑張ってたのに……」ヒソヒソ
照「C子さん」
新入生C「は、はい……」
照「――申し訳ないけど、あなたの実力じゃうちではやっていけない。不合格」
新入生C「……っ! は……はい……」
菫「あまり気を落とさないでくれ。うちは秋にもまた入部試験をやるから、そのときにまた来てくれればいい」
新入生C「……いえ、私は、その…………もう、いいです。ごめんなさい……!」タタタ
菫「あっ……ふー」
淡(フン)
淡(そうよ。弱いやつは消えればいい。トばされるような雑魚が麻雀なんかするのが悪いのよ)ツカツカ
淡(それになに? 三人トび? アホらしい。どんだけ弱いのよ。ほんとイライラす…………え?)ピタ
淡(と、東二局!? ちょ、まだ東場すら終わってないじゃない……!)
淡(そんな一瞬で三人をトばすなんて……この人、まさか私と同じ高火力麻雀……?)
照「ん?」
そのとき、背後の私の気配に気づいたのか、宮永照が後ろを振り向いた。
淡「――ッ!!」ゾクッ!
淡(な、なにこのプレッシャー……)
照「入部希望者?」
淡「……違います」
照「?」
菫「彼女は大星淡さん。お前と一局打ちたいそうだ。打ってやってくれ」
照「いいけど。東風でいいの?」
菫「ああ。君も、それでいいな?」
淡「なんでもいいよ」
菫「よし、じゃああと一人……一子。入ってくれ」
淡(そんな一瞬で三人をトばすなんて……この人、まさか私と同じ高火力麻雀……?)
照「ん?」
そのとき、背後の私の気配に気づいたのか、宮永照が後ろを振り向いた。
淡「――ッ!!」ゾクッ!
淡(な、なにこのプレッシャー……)
照「入部希望者?」
淡「……違います」
照「?」
菫「彼女は大星淡さん。お前と一局打ちたいそうだ。打ってやってくれ」
照「いいけど。東風でいいの?」
菫「ああ。君も、それでいいな?」
淡「なんでもいいよ」
菫「よし、じゃああと一人……一子。入ってくれ」
一子「え、私?」
菫「ああ。この四人で打つ」
部員「!!」ざわ・・・ざわ・・・
部員「そんな、新入生一人に一軍三人なんて……」ヒソヒソ
部員「ひどい……可哀想だよ」ヒソヒソ
部員「でも待って。あの子、ひょっとしてこの前の……」ヒソヒソ
菫「それじゃあ、始めようか」
四人「よろしくお願いします」
淡(じゃあ、お手並み拝見といこうかな)ゴッ
東一局
淡「リーチ」
菫「早いな。まだ四巡目なのに」
淡「あなたたちが鈍いんだよ」
淡(四巡もあれば十分。私の星の引力が、有効牌を引き寄せる)
淡(どんなに強くても、宙に投げ出されれば所詮、人は無力。より大きな力に翻弄されるしかない)
淡(――さあ、引きずり込んでやる。宇宙の闇へ――!)ゴォォォォォ!
一子「うっ……!?」ゾクッ
菫「これは……」ゾクッ
菫(予想以上だ。まさかこれほどとは……)
淡「――ふふ」カチャ
淡「――ツモ。リーチ一発ツモ三暗刻ドラ3。4000,8000」
三人「……」ジャラ
淡「…………」イラ
淡(なんなの? あれだけ息巻いておいて、このザマ? 結局この人たちも口だけか)
淡(イライラするなぁ……)イラ
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